JP2005282043A - 山留め壁の補強方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 掘削孔に充填した充填材の強度発現前に、掘削孔に補強芯材を挿入して構築される山留め壁を、建物の水平抵抗材として設計に取り込む場合に好適な経済的な山留め壁の補強方法を提供する。
【解決手段】 掘削孔1に充填した充填材の強度発現前に、掘削孔に補強芯材2を挿入して構築される山留め壁Aの鉛直方向における複数部位のうち、水平抵抗が要求される部位に高強度充填材3bを用い、一般部には低強度充填材3aを用いて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げる山留め壁Aの補強方法であり、掘削孔1の底部から低強度充填材3a、高強度充填材3b、低強度充填材3aの順に充填し、これらの充填材の強度発現前に補強芯材2を挿入する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、山留め壁の補強方法に関し、詳しくは、掘削孔に充填した充填材の強度発現前に、掘削孔に補強芯材を挿入して構築される山留め壁を、建物の水平抵抗材として設計に取り込む場合に好適な山留め壁の補強方法に関する。
ソイルセメント柱列山留め壁の水平力に対する補強を行う方法としては、特許文献1に見られるように、機械攪拌により深層地盤改良体である底盤改良部を造成し、その外周にラップしてソイルセメント柱列を造成し、ソイルセメント柱列の強度発現前に補強芯材を挿入し、場所打ち杭などの支持杭が施工される空間(底盤改良部が造成されない部分)に面したソイルセメント柱列の補強芯材と補強芯材との間に剪断補強材を挿入する方法、特許文献2に見られるように、ソイルセメント柱列にH型鋼(補強芯材)を、H型鋼の強軸方向がソイルセメント柱列山留め壁の面と平行になるように挿入する一方、H型鋼の地盤掘削側の面にシアコッタを形成して、建物の躯体と構造的に一体化する方法、特許文献3に見られるように、深度の浅い外周山留め壁と、その内側に所定の間隙を隔てて深度の深い深い内周山留め壁とを施工し、外周山留め壁と内周山留め壁との間を外周部の床付け面まで掘削し、外周山留め壁の脚部から内周山留め壁の頭部までの間に必要厚のコンクリートを打設して、水平RC梁を構築し、内周山留め壁の内側地盤を所定深度まで掘削する方法などが知られている。
しかしながら、これらの方法では、従来の一般的なソイルセメント柱列山留め壁と同様に、山留め壁の鉛直方向における充填材強度や補強芯材強度が均一であり、地震時に水平力(曲げモーメント)が大きく作用する部位が、杭頭部(建物の底盤レベル)と地中部中央部であることを考え合わせると、不経済である。
特開平7−305337号公報 特許第3063673号公報 特許第2570566号公報
本発明は、上記の事柄に留意してなされたもので、その目的とするところは、掘削孔に充填した充填材の強度発現前に、掘削孔に補強芯材を挿入して構築される山留め壁を、建物の水平抵抗材として設計に取り込む場合に好適な経済的な山留め壁の補強方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次のとおりである。即ち本発明は、掘削孔に充填した充填材の強度発現前に、掘削孔に補強芯材を挿入して構築される山留め壁の鉛直方向における複数部位のうち、水平抵抗が要求される部位に高強度充填材を用い、一般部には低強度充填材を用いて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げることを特徴としている(請求項1)。
具体的には、請求項2に記載のように、掘削孔の底部から低強度充填材、高強度充填材、低強度充填材の順に充填し、これらの充填材の強度発現前に補強芯材を挿入して、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げることを特徴としている。
尚、請求項1又は2に記載の山留め壁の補強方法において、低強度充填材としては、例えば通常のソイルセメントが用いられ、高強度充填材としては、例えば高強度ソイルセメント(請求項3)やコンクリート(請求項4)などが用いられる。請求項4に記載のように、高強度充填材としてコンクリートを用いる場合、当該コンクリートにだけ補強鉄筋を埋設して、当該補強鉄筋と、通常のソイルセメントとコンクリートとにわたって挿入された補強芯材としてのH型鋼とによりコンクリートを補強したSRC造としてもよい(請求項5)。
請求項1に記載の発明によれば、山留め壁の鉛直方向における複数部位のうち、水平抵抗が要求される部位にだけ高強度充填材を用い、一般部には低強度充填材を用いて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げるので、山留め壁の鉛直方向における充填材強度や補強芯材強度を均一に増大させて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げる場合に比べて資材の無駄がなく、経済的である。
従って、山留め壁を建物の水平抵抗材として考慮した経済的な設計が可能となり、山留め壁の内側に、建物の杭基礎となる場所打ち杭を造成する場合には、杭の鉄筋量の低減が可能となり、PC杭を打設する場合には、杭種の変更(例えばC種からB種への変更)が可能になる。
請求項2に記載の発明によれば、山留め壁の構築後、山留め壁の内側地盤を高強度充填材の深度まで掘削して、建物を構築することにより、請求項1に記載の発明と同じ結果となる。即ち、地震時に水平力(曲げモーメント)が大きく作用する建物の底盤レベルと地中部中央部の断面性能(剛性)が効果的に向上し、山留め壁の鉛直方向における充填材強度や補強芯材強度を均一に増大させて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げる場合に比べて資材の無駄がなく、経済的である。
従って、山留め壁を建物の水平抵抗材として考慮した経済的な設計が可能となり、山留め壁の内側に、建物の杭基礎となる場所打ち杭を造成する場合には、杭の鉄筋量の低減が可能となり、PC杭を打設する場合には、杭種の変更(例えばC種からB種への変更)が可能になる。
図1〜図3は、本発明に係る山留め壁の補強方法の一例を示す。図1において、Aは掘削孔1に充填した充填材の強度発現前に、掘削孔1に補強芯材としてのH型鋼2を挿入して構築される柱列式の山留め壁を示し、Bは地下階を有する建物を示す。この山留め壁Aは、鉛直方向における複数部位のうち、図1の右側に地震時の水平力による曲げモーメント図Mを記載したように、水平抵抗が要求される部位に、充填材として高強度充填材(この例では高強度ソイルセメント)3bを用い、一般部には、充填材として低強度充填材(この例では通常のソイルセメント)3aを用いて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げた点に特徴がある。
通常のソイルセメント(低強度充填材3a)は、一般的なソイルセメント柱列山留め壁に使用されるソイルセメントと同じであり、圧縮強度は概ね5〜10kg/cm程度である。高強度ソイルセメント(高強度充填材3b)は、減水剤の添加による水セメント比の調整や骨材となる土壌の選定などによって強度を3〜4倍に高めたもので、高強度ソイルセメントの圧縮強度は概ね15〜40kg/cmである。高強度ユニットと低強度ユニットを交互に配置すれば、通常の掘削機での施工が可能であるので、高強度充填物強度を更に高めることができる。
具体的には、図2の(A)に示すように、オーガヘッド4と攪拌翼5を備えた中空の回転軸6を、先端から低強度充填材用のセメントミルクaを注入しつつ引き抜くことにより、掘削孔1内で土壌とセメントミルクaを混合攪拌して、通常のソイルセメント(低強度充填材3a)の柱体を造成し、通常のソイルセメントの柱体が所定高さに達したら、図2の(B)に示すように、回転軸6の先端から注入するセメントミルクaを高強度充填材用のセメントミルクbに切り替えて、当該セメントミルクbと土壌を掘削孔1内で混合攪拌し、高強度ソイルセメント(高強度充填材3b)の柱体を造成する。
そして、高強度ソイルセメント(高強度充填材3b)の柱体が所定高さに達したら、図2の(C)に示すように、再び、低強度充填材用のセメントミルクaに切り替えて、当該セメントミルクaと土壌を掘削孔1内で混合攪拌して、通常のソイルセメント(低強度充填材3a)の柱体を造成し、これらの通常のソイルセメント(低強度充填材3a)及び高強度ソイルセメント(高強度充填材3b)に強度が発現する前に、掘削孔1に、一つ置きに補強芯材としてのH型鋼2を挿入して、ソイルセメント柱列式の山留め壁Aを構築し、ソイルセメントの強度発現後、山留め壁Aの内側地盤を高強度ソイルセメント(高強度充填材3b)の柱体の天端を含む所定深度まで掘削して、図1に示した建物Bを構築するのである。
上記の構成によれば、山留め壁Aの鉛直方向における複数部位のうち、水平抵抗が要求される部位にだけ高強度ソイルセメントを用い、一般部には通常のソイルセメントを用いて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げるので、山留め壁Aの鉛直方向における充填材強度や補強芯材強度を均一に増大させて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げる場合に比べて資材の無駄がなく、経済的である。
従って、山留め壁Aを建物Bの水平抵抗材として考慮した経済的な設計が可能となり、山留め壁Aの内側に、建物Bの杭基礎となる場所打ち杭を造成する場合には、杭の鉄筋量の低減が可能となり、PC杭を打設する場合には、杭種の変更(例えばC種からB種への変更)が可能になる。
図3、図4は、本発明の他の実施形態を示し、山留め壁Aの鉛直方向における複数部位のうち、水平抵抗が要求される部位に充填される高強度充填材3bとしてコンクリートを用い、一般部に充填される低強度充填材3aとして通常のソイルセメントを用いた点に特徴がある。Bは地下階を有する建物、2は通常のソイルセメントやコンクリートの強度発現前に、掘削孔1に挿入された補強芯材としてのH型鋼である。
コンクリートの充填作業は、図2に示した回転軸6を利用し、注入するセメントミルクbをコンクリートに切り替えて行ってもよいが、攪拌翼5による混合攪拌が不要なため、一旦、回転軸6を引抜き回収し、トレミー管を用いて行ってもよい。
上記のコンクリートは無筋でもよいが、図示の例では、コンクリートにだけ補強鉄筋7を埋設して、当該補強鉄筋7と、通常のソイルセメントとコンクリートとにわたって挿入された補強芯材としてのH型鋼2とによりコンクリートを補強したSRC造としてある。
これは、図4に示すように、掘削孔1内に充填した通常のソイルセメント(低強度充填材3a)やコンクリート(高強度充填材3b)に強度が発現する前に、予め長手方向の所定位置に支持鉄筋8を介して補強鉄筋7が取り付けられたH型鋼2を掘削孔1に挿入することによって施工される。
補強鉄筋7が取り付けられたH型鋼2は、図5に示すように、掘削孔1の一つ置きに挿入してもよく、多軸掘削機(例えば3軸掘削機)で掘削孔1を掘削形成する場合は、図6
に示すように、複数(例えば3本)の掘削孔1にわたる長さの補強鉄筋7が取り付けられたH型鋼2を挿入してもよい。また、図7に示すように、H型鋼2を挿入しない掘削孔1のコンクリートに、別の鉄筋籠9を挿入して、このコンクリート部分をRC造としてもよい。この場合、鉄筋籠9を吊り込むための鉄筋が必要であり、コンクリートの上方に位置する通常のソイルセメントにも、例えば、鉄筋籠9を吊り込むのに必要な最少本数の鉄筋が埋設されることになる。
尚、上述した実施形態では、何れも柱列式の山留め壁Aを例にあげて、本発明を説明したが、掘削孔に充填した充填材の強度発現前に、掘削孔に補強芯材として親杭(H型鋼)を挿入し、強度発現後、内側地盤を掘削しつつ親杭間に横矢板を挿入して構築される親杭横矢板式の山留め壁やソイルセメント連続地下壁にも、本発明は適用可能である。
本発明に山留め壁の補強方法を説明する概略縦断面図である。 山留め壁の構築方法を説明する概略縦断面図である。 本発明の他の実施形態を説明する概略縦断面図である。 山留め壁の構築方法を説明する概略縦断面図である。 高強度充填材としてコンクリートを用いた山留め壁の横断平面図である。 高強度充填材としてコンクリートを用いた山留め壁の横断平面図である。 高強度充填材としてコンクリートを用いた山留め壁の横断平面図である。
符号の説明
1 掘削孔
2 補強芯材
3a 低強度充填材(通常のソイルセメント)
3b 高強度充填材(高強度ソイルセメント、コンクリート等)

Claims (5)

  1. 掘削孔に充填した充填材の強度発現前に、掘削孔に補強芯材を挿入して構築される山留め壁の鉛直方向における複数部位のうち、水平抵抗が要求される部位に高強度充填材を用い、一般部には低強度充填材を用いて、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げることを特徴とする山留め壁の補強方法。
  2. 掘削孔の底部から低強度充填材、高強度充填材、低強度充填材の順に充填し、これらの充填材の強度発現前に補強芯材を挿入して、水平抵抗が要求される部位の剛性を上げることを特徴とする山留め壁の補強方法。
  3. 低強度充填材が通常のソイルセメントであり、高強度充填材が高強度ソイルセメントである請求項1又は2に記載の山留め壁の補強方法。
  4. 低強度充填材が通常のソイルセメントであり、高強度充填材がコンクリートである請求項1又は2に記載の山留め壁の補強方法。
  5. コンクリートを充填した部位がSRC造である請求項4に記載の山留め壁の補強方法。
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