JP2002048097A - 遠心式の多翼送風機 - Google Patents

遠心式の多翼送風機

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スクロール室の拡大角を従来品より小さくし
てケーシングの小型化を図ることができ、しかも、送風
効率及び騒音レベルを従来品と同程度に維持することも
できる遠心式の多翼送風機を提供する。 【解決手段】 多翼送風機1には、スクロール室4aを
流れる送風がケーシング4の吸入側ケース板4dと多翼
ファン2との間の吸入側隙間G1から空気吸入口4bへ
逆流するのを抑える第1逆流抑止手段10を設ける。ま
た、前記送風がケーシング4のモータ側ケース板4eと
多翼ファン2との間のモータ側隙間G2からスクロール
室4aの上流側へ逆流するのを抑える第2逆流抑止手段
20も設ける。そして、スクロール室4aのモータシャ
フト3a軸方向の長さL1を、多翼ファン2のモータシ
ャフト3a軸方向の長さL2より長くすると共に、ケー
シング4の送風吐出口4cへ向かって徐々に拡大させ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として自動車用
の空気調和装置に用いられる遠心式の多翼送風機に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】図6は、従来品の一例を示す平面図であ
る。図7は、図6に示すもののX−X矢視断面図であ
る。図6,図7に示す遠心式の多翼送風機aは、特許公
報第2690731号に記載されているものであり、多
数のブレードb1を有する多翼ファンbと、この多翼フ
ァンbがモータシャフトc1に取り付けられたファンモ
ータcと、多翼ファンbが内部に収容されて多翼ファン
bの外周に渦巻き状のスクロール室d1が形成されたケ
ーシングdとを備えている。そして、このケーシングd
は、空気吸入口d2を有する吸入側ケース板d3と、多
翼ファンbを挟んで吸入側ケース板d3の反対側に位置
しファンモータcのモータ本体c2が組み付けられたモ
ータ側ケース板d4とを備えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ケーシング
dの対数らせん形状の半径Rは、前記特許公報にも記載
されているように、R=Rexp{n(θ+θ)}で
表される。この式において、Rは、多翼ファンbの半
径を示し、θは、ケーシングdの舌部d5の中心Pを起
点とする多翼ファンb回転方向への角度を示している。
θは、送風吐出口d6側のケーシングdにおいてスク
ロール室d1のモータシャフトc1軸方向の長さL1が
拡大し始める位置(図6のQ点)から舌部d5の中心P
点までの角度を示している。
【0004】nは、拡大角と呼ばれ、自動車用の空気調
和装置で使用される多翼送風機では5度〜8度(8.7
2×10−2〜14.0×10−2ラジアン)が一般的
とされている。この拡大角nは、スクロール室d1の多
翼ファンb径方向への拡がりの大きさを表しており、拡
大角nが大きくなる程、スクロール室d1は容積が増大
し、ケーシングdは多翼ファンb径方向へ拡大する。そ
して、拡大角nが小さくなる程、スクロール室d1は容
積が減少し、ケーシングdは多翼ファンb径方向へ縮小
する。
【0005】このため、多翼送風機aでは、スクロール
室d1の拡大角nを小さくすると、ケーシングdの小型
化を図れる反面、スクロール室d1の容積が小さくなっ
てしまい、スクロール室d1を流れる送風は、多翼ファ
ンbと吸入側ケース板d3との間の吸入側隙間G1から
空気吸入口d2への逆流量と、多翼ファンbとモータ側
ケース板d4との間のモータ側隙間G2からスクロール
室d1の上流側への逆流量とが増大する。
【0006】従って、多翼送風機aでは、スクロール室
d1の拡大角nを小さくしてケーシングdの小型化を図
ると、送風効率が低下すると共に、スクロール室d1内
の圧力が不安定となり多翼ファンbの振動が増大して騒
音レベルも増大する。
【0007】そこで、本発明では、スクロール室の拡大
角を従来品より小さくしてケーシングの小型化を図るこ
とができ、しかも、送風効率及び騒音レベルを従来品と
同程度に維持することもできる遠心式の多翼送風機を提
供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
多数のブレードを有する多翼ファンと、該多翼ファンが
モータシャフトに取り付けられたファンモータと、多翼
ファンが内部に収容されて多翼ファンの外周に渦巻き状
のスクロール室が形成されたケーシングとを備え、該ケ
ーシングは、空気吸入口を有する吸入側ケース板と、多
翼ファンを挟んで吸入側ケース板の反対側に位置しファ
ンモータのモータ本体が組み付けられたモータ側ケース
板とを備えている遠心式の多翼送風機において、スクロ
ール室を流れる送風が多翼ファンと吸入側ケース板との
間の吸入側隙間から空気吸入口へ逆流するのを抑える第
1逆流抑止手段と、前記送風が多翼ファンとモータ側ケ
ース板との間のモータ側隙間からスクロール室の上流側
へ逆流するのを抑える第2逆流抑止手段とを備え、スク
ロール室は、そのモータシャフト軸方向の長さが、多翼
ファンのモータシャフト軸方向の長さより長く形成され
ていると共に、ケーシングの送風吐出口へ向かって徐々
に拡大していることを特徴としている。
【0009】請求項2記載の発明は、請求項1記載の遠
心式の多翼送風機であって、第1逆流抑止手段は、多翼
ファンに設けられ多翼ファンから吸入側隙間へ多翼ファ
ン周方向全周に亘り連続して突出するファン第1リブ
と、吸入側ケース板に設けられ吸入側ケース板から吸入
側隙間へ突出すると共に多翼ファン周方向全周に亘り連
続してファン第1リブに僅かの間隔で近接するケース第
1リブとから形成され、第2逆流抑止手段は、多翼ファ
ンに設けられ多翼ファンからモータ側隙間へ多翼ファン
周方向全周に亘り連続して突出するファン第2リブと、
モータ側ケース板に設けられモータ側ケース板からモー
タ側隙間へ突出すると共に多翼ファン周方向全周に亘り
連続してファン第2リブに僅かの間隔で近接するケース
第2リブとから形成されていることを特徴としている。
【0010】請求項3記載の発明は、請求項2記載の遠
心式の多翼送風機であって、スクロール室内の圧力が比
較的高いスクロール室の高圧領域とモータ本体内とを連
通させる連通部を備え、ケース第2リブには、前記高圧
領域より圧力が低いスクロール室の低圧領域を臨む部位
に、多翼ファンとモータ側ケース板とによって包まれモ
ータ本体が露出する空間内と前記低圧領域とを連通させ
る切欠部が設けられ、ファンモータには、モータ本体内
を保護する保護ケースの前記空間内への露出部分に、モ
ータ本体内と前記空間とを連通させる連通孔が設けられ
ていることを特徴としている。
【0011】請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何
れかに記載の遠心式の多翼送風機であって、ケーシング
は、スクロール室の拡大角が略3.3度に設定されてい
ることを特徴としている。
【0012】
【発明の効果】請求項1記載の発明では、スクロール室
は、そのモータシャフト軸方向の長さが、多翼ファンの
モータシャフト軸方向の長さより長く形成されていると
共に、ケーシングの送風吐出口へ向かって徐々に拡大し
ているので、拡大角を小さくすることによりケーシング
の多翼ファン径方向の大きさを従来品より小さくしてケ
ーシングの小型化を図っても、モータシャフトの軸線か
ら放射線状に広がる放射平面でのスクロール室の断面積
を従来品と同程度にすることができる。
【0013】また、スクロール室の拡大角を小さくして
も、スクロール室を流れる送風は、空気吸入口を有する
ケーシングの吸入側ケース板と多翼ファンとの間の吸入
側隙間から空気吸入口への逆流が第1逆流抑止手段によ
って抑えられ、多翼ファンを挟んで吸入側ケース板の反
対側に位置するケーシングのモータ側ケース板と多翼フ
ァンとの間のモータ側隙間からスクロール室の上流側へ
の逆流が第2逆流抑止手段によって抑えられる。このた
め、送風効率を従来品と同程度に維持することができる
と共に、多翼ファンの振動を抑えて騒音レベルを従来品
と同程度に維持することもできる。
【0014】従って、スクロール室の拡大角を従来品よ
り小さくすることによりケーシングの多翼ファン径方向
の大きさを従来品より小さくしてケーシングの小型化を
図ることができ、しかも、送風効率と騒音レベルとを従
来品と同程度に維持することもできる。
【0015】請求項2記載の発明では、第1逆流抑止手
段は、多翼ファンに設けられ多翼ファンから吸入側隙間
へ多翼ファン周方向全周に亘り連続して突出するファン
第1リブと、吸入側ケース板に設けられ吸入側ケース板
から吸入側隙間へ突出すると共に多翼ファン周方向全周
に亘り連続してファン第1リブに僅かの間隔で近接する
ケース第1リブとから形成されているので、スクロール
室を流れる送風が吸入側隙間から空気吸入口へ逆流する
のを、ファン第1リブとケース第1リブとの間の僅かの
間隙によって確実に抑えることができる。
【0016】また、第2逆流抑止手段は、多翼ファンに
設けられ多翼ファンからモータ側隙間へ多翼ファン周方
向全周に亘り連続して突出するファン第2リブと、モー
タ側ケース板に設けられモータ側ケース板からモータ側
隙間へ突出すると共に多翼ファン周方向全周に亘り連続
してファン第2リブに僅かの間隔で近接するケース第2
リブとから形成されているので、スクロール室を流れる
送風がモータ側隙間からスクロール室の上流側へ逆流す
るのを、ファン第2リブとケース第2リブとの間の僅か
の間隙によって確実に抑えることもできる。
【0017】請求項3記載の発明では、スクロール室内
の圧力が比較的高いスクロール室の高圧領域を流れる送
風の一部は、連通部を通ってモータ本体内へ流入し、モ
ータ本体内を保護する保護ケースに設けられた連通孔か
ら、多翼ファンとモータ側ケース板とによって包まれた
空間内へモータ本体内を通って流出した後、ケース第2
リブに設けられた切欠部を通って、前記高圧領域より圧
力が低いスクロール室の低圧領域へ空間内から環流す
る。従って、スクロール室を流れる送風の一部によって
ファンモータのモータ本体内を冷却することができる。
【0018】請求項4記載の発明では、ケーシングはス
クロール室の拡大角が略3.3度に設定されているの
で、従来品と比べて拡大角が小さい。従って、ケーシン
グの多翼ファン径方向の大きさが従来品より小さくな
り、ケーシングの小型化を確実に図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の形態の一
例である第1実施形態を示す斜視図である。図2は、図
1に示すもののA−A矢視断面図である。図1,図2に
示す遠心式の多翼送風機1は、自動車用の空気調和装置
に用いられるものであり、多数のブレード2aを有する
多翼ファン2と、この多翼ファン2がモータシャフト3
aの先端部に取り付けられたファンモータ3と、このフ
ァンモータ3のモータ本体3bが組み付けられたケーシ
ング4とを備えている。
【0020】多翼ファン2は、モータシャフト3aに取
り付けられてモータ本体3bを覆う円錐状の円錐プレー
ト2bを備え、ケーシング4内に収容されている。ファ
ンモータ3は、モータ本体3b内のロータやステータを
保護する保護ケース3cを備え、この保護ケース3cに
よってモータ本体3b全体が覆われている。
【0021】ケーシング4内には、多翼ファン2の外周
に渦巻き状のスクロール室4aが形成され、ケーシング
4には、その内部へ空気を吸い込むための空気吸入口4
bと、スクロール室4aからケーシング4外へ送風を吐
出する送風吐出口4cとが設けられている。そして、ケ
ーシング4は、空気吸入口4bを有する吸入側ケース板
4dと、多翼ファン2を挟んで吸入側ケース板4dの反
対側に位置しモータ本体3bが組み付けられたモータ側
ケース板4eと、吸入側ケース板4dとモータ側ケース
板4eとを連結してスクロール室4aの外周壁を形成す
る周壁板4fとを備えている。
【0022】スクロール室4aは、そのモータシャフト
3a軸方向の長さL1が、多翼ファン2のモータシャフ
ト3a軸方向の長さL2より長く形成されていると共
に、スクロール室4aの最狭部を形成するケーシング4
の舌部4k(図1参照)から送風吐出口4cまで送風吐
出口4cへ向かって徐々に拡大している。
【0023】図3は、スクロール室のモータシャフト軸
方向への拡大を示す説明図である。この図において、直
線M1は、多翼ファン2の外周を示している。近似直線
M2は、多翼ファン2の外周を直線表示した場合のスク
ロール室4aのモータシャフト3a軸方向の上下両面を
示している。角度αは、スクロール室4aの長さL1が
ケーシング4の舌部4kから送風吐出口4cへ向かって
徐々に拡大する拡がり角を示している。多翼送風機1で
は、拡がり角αは略6度に設定されている。
【0024】従って、多翼送風機1では、図1,図2に
示すように、スクロール室4aは、ケーシング4の舌部
4kから送風吐出口4cまでモータシャフト3a軸方向
に沿った上下両方向へ略6度の拡がり角αで均等に拡大
している。このため、スクロール室4aは、図6,図7
図示の従来品と比べて、モータシャフト3a軸方向へ容
積が増加しており、この増加容積分と同等の容積分だけ
容積が減少するように拡大角nが小さく設定されてい
る。すなわち、多翼送風機1では、ケーシング4は、ス
クロール室4aの拡大角nが3.3度に設定されてい
る。
【0025】図2に示すように、多翼ファン2と吸入側
ケース板4dとの間の吸入側隙間G1には、スクロール
室4aを流れる送風が吸入側隙間G1から空気吸入口4
bへ逆流するのを抑える第1逆流抑止手段10が設けら
れている。この第1逆流抑止手段10は、多翼ファン2
に設けられ多翼ファン2から吸入側隙間G1へ多翼ファ
ン2周方向全周に亘り連続して突出するファン第1リブ
11と、吸入側ケース板4dに設けられ吸入側ケース板
4dから吸入側隙間G1へ突出すると共に多翼ファン2
周方向全周に亘り連続してファン第1リブ11に僅かの
間隔で近接するケース第1リブ12とから形成されてい
る。
【0026】ファン第1リブ11は、多翼ファン2のモ
ータシャフト3a先端側の先端部外周に設けられ、ケー
ス第1リブ12は、吸入側ケース板4dの空気吸入口4
b周縁部に設けられている。ケース第1リブ12は、フ
ァン第1リブ11を覆う逆U字状の断面形状を有し、フ
ァン第1リブ11を挟んで互いに対向する一対のリブ壁
が僅かの間隔でファン第1リブ11に近接していると共
に、内側部分が空気吸入口4bのベルマウス部4gを形
成している。
【0027】多翼ファン2とモータ側ケース板4eとの
間のモータ側隙間G2には、スクロール室4aを流れる
送風がモータ側隙間G2からスクロール室4aの上流側
へ逆流するのを抑える第2逆流抑止手段20が設けられ
ている。この第2逆流抑止手段20は、多翼ファン2に
設けられ多翼ファン2からモータ側隙間G2へ多翼ファ
ン2周方向全周に亘り連続して突出するファン第2リブ
21と、モータ側ケース板4eに設けられモータ側ケー
ス板4eからモータ側隙間G2へ突出すると共に多翼フ
ァン2周方向全周に亘り連続してファン第2リブ21に
僅かの間隔で近接するケース第2リブ22とから形成さ
れている。ただし、多翼送風機1では、ケース第2リブ
22は、後述する切欠部23を有し、一部が欠落してい
る。
【0028】ファン第2リブ21は、多翼ファン2の円
錐プレート2bにおけるモータシャフト3a後端側の後
端面2cに設けられ、ケース第2リブ22は、円錐プレ
ート2bの後端面2cと対面するモータ側ケース板4e
の板面に設けられている。モータ側ケース板4eには、
その中央部に、ファンモータ3を保持する有底筒状のモ
ータ保持部4hが形成されている。このモータ保持部4
hは、ファン第2リブ21とケース第2リブ22とに周
囲を取り囲まれている。
【0029】ファンモータ3は、そのモータ本体3bが
モータ保持部4hに嵌入されてモータ側ケース板4eに
組み付けられている。そして、モータ側ケース板4eと
多翼ファン2の円錐プレート2bとによって包まれた空
間S内に、モータ本体3bのモータシャフト3a先端側
の先端部が露出し、この露出部分の保護ケース3cに、
モータ本体3b内と空間Sとを連通させるモータ第1連
通孔3d(連通孔)が設けられている。また、ファンモ
ータ3の保護ケース3cには、モータ保持部4h内に密
嵌されてモータ保持部4hの奥部に位置する部位に、モ
ータ本体3bの内外を連通させるモータ第2連通孔3e
も設けられている。
【0030】モータ保持部4hには、モータ第2連通孔
3eが位置する部位に、モータ第2連通孔3eを介して
モータ本体3b内とモータ保持部4h外とを連通させる
保持部連通孔4iが設けられている。モータ側ケース板
4eには、ケーシング4の送風吐出口4c近傍に位置す
る部位に、スクロール室4aの内外を連通させるケース
連通孔4jが設けられている。そして、保持部連通孔4
iとケース連通孔4jとは、モータ側ケース板4eに取
り付けられた連通部材5によって互いに連通している。
【0031】ところで、スクロール室4aは、ケーシン
グ4の送風吐出口4cへ向かって断面積が徐々に拡大
し、空気吸入口4bからケーシング4内へ吸い込まれた
空気に多翼ファン2が付与した運動エネルギーの一部を
静圧に変換している。このため、スクロール室4aの送
風吐出口4c近傍は、スクロール室4a内の圧力が最も
高い高圧領域となっている。ケース連通孔4jは、この
高圧領域に設けられている。従って、ケース連通孔4
j,連通部材5,保持部連通孔4i,モータ第2連通孔
3eは、スクロール室4aの高圧領域とファンモータ3
のモータ本体3b内とを連通させる連通部6を形成して
いる。
【0032】ケース第2リブ22には、スクロール室4
aの高圧領域より送風下流側に位置し高圧領域より圧力
が低いスクロール室4aの低圧領域を臨む部位に、この
低圧領域と空間S内とを連通させる切欠部23が設けら
れている。このため、スクロール室4aの高圧領域を流
れる送風の一部は、連通部6を通ってモータ本体3b内
に流入し、モータ本体3b内を通ってモータ第1連通孔
3dから空間S内へ流出した後、ケース第2リブ22の
切欠部23からスクロール室4aの低圧領域へ環流す
る。
【0033】図4は、図1に示すものの送風性能を示す
グラフである。図4において、縦軸は、ケーシング4の
送風吐出口4cに接続された直管ダクト内における送風
吐出口4cから所定距離だけ離れた地点の吐出圧力を示
している。横軸は、送風吐出口4cから吐出される毎分
の吐出風量を示している。実線の折れ線は、多翼送風機
1の送風性能を示している。破線の折れ線は、第1及び
第2の両逆流抑止手段10,20を備えていない点を除
けば多翼送風機1と同一構造の多翼送風機の送風性能を
示している。
【0034】図4に示すように、多翼送風機1は、両逆
流抑止手段10,20を備えていない点を除けば多翼送
風機1と同一構造の多翼送風機と比べると、全ての吐出
風量域で吐出圧力が上回っている。そして、実線の折れ
線で示される多翼送風機1の性能曲線は、スクロール室
の拡大角nが6.3度程度でスクロール室の容量が多翼
送風機1のスクロール室4aと同容量である従来品の性
能曲線とほぼ一致している。
【0035】このことから次のことが分かる。すなわ
ち、多翼送風機1では、スクロール室4aの拡大角nが
3.3度であり、拡大角nが6.3度程度の従来品と比べ
て、ケーシング4の周壁板4fと多翼ファン2との間の
距離は短くなっている。このため、第1及び第2の両逆
流抑止手段10,20を備えていない場合には、拡大角
nが6.3度程度の従来品と比べて、スクロール室4a
を流れる送風は、吸入側隙間G1から空気吸入口4bへ
の逆流量とモータ側隙間G2からスクロール室4aの上
流側への逆流量とが増大し、送風性能は、図4に破線の
折れ線で示すように悪化する。しかし、多翼送風機1
は、第1及び第2の両逆流抑止手段10,20を備えて
いるので、拡大角nが6.3度程度の従来品の送風性能
を維持することができる。
【0036】以上の説明を以下にまとめる。多翼送風機
1では、スクロール室4aは、そのモータシャフト3a
軸方向の長さL1が、多翼ファン2のモータシャフト3
a軸方向の長さL2より長く形成されていると共に、ケ
ーシング4の送風吐出口4cへ向かって徐々に拡大して
いる。このため、拡大角nを小さくすることによりケー
シング4の多翼ファン2径方向の大きさを従来品より小
さくしてケーシング4の小型化を図っても、モータシャ
フト3aの軸線から放射線状に広がる放射平面でのスク
ロール室4aの断面積を従来品と同程度にすることがで
きる。
【0037】また、スクロール室4aの拡大角nを小さ
くしても、スクロール室4aを流れる送風は、吸入側隙
間G1から空気吸入口4bへの逆流が第1逆流抑止手段
10によって抑えられ、モータ側隙間G2からスクロー
ル室4aの上流側への逆流が第2逆流抑止手段20によ
って抑えられる。このため、送風効率を従来品と同程度
に維持することができると共に、多翼ファン2の振動を
抑えて騒音レベルを従来品と同程度に維持することもで
きる。
【0038】従って、多翼送風機1では、スクロール室
4aの拡大角nを小さくすることによりケーシング4の
多翼ファン2径方向の大きさを従来品より小さくしてケ
ーシング4の小型化を図ることができ、しかも、送風効
率と騒音レベルとを従来品と同程度に維持することもで
きる。
【0039】また、多翼送風機1では、第1逆流抑止手
段10は、多翼ファン2から吸入側隙間G1へ多翼ファ
ン2周方向全周に亘り連続して突出するファン第1リブ
11と、吸入側ケース板4dから吸入側隙間G1へ突出
すると共に多翼ファン2周方向全周に亘り連続してファ
ン第1リブ11に僅かの間隔で近接するケース第1リブ
12とから形成されている。このため、スクロール室4
aを流れる送風が吸入側隙間G1から空気吸入口4bへ
逆流するのを、ファン第1リブ11とケース第1リブ1
2との間の僅かの間隔によって確実に抑えることができ
る。
【0040】同様に、第2逆流抑止手段20は、多翼フ
ァン2からモータ側隙間G2へ多翼ファン2周方向全周
に亘り連続して突出するファン第2リブ21と、モータ
側ケース板4eからモータ側隙間G2へ突出すると共に
僅かの間隔でファン第2リブ21に近接するケース第2
リブ22とから形成されている。このため、スクロール
室4aを流れる送風がモータ側隙間G2からスクロール
室4aの上流側への逆流するのを、ファン第2リブ21
とケース第2リブ22とによって確実に抑えることもで
きる。
【0041】なお、ケース第2リブ22には切欠部23
が設けられている。しかし、この切欠部23は、ケース
第2リブ22におけるスクロール室4a内の比較的圧力
が低い低圧領域を臨む部位に設けられているので、スク
ロール室4aを流れる送風の切欠部23からスクロール
室4a上流側への逆流は殆ど生じない。従って、スクロ
ール室4aを流れる送風がモータ側隙間G2からスクロ
ール室4aの上流側へ逆流するのを、ファン第2リブ2
1とケース第2リブ22とによって確実に抑えることが
できる。
【0042】また、多翼送風機1では、スクロール室4
aの送風吐出孔4c近傍の高圧領域を流れる送風の一部
は、連通部6を通ってモータ本体3b内に流入し、モー
タ本体3b内を通ってモータ第1連通孔3dから空間S
内へ流出した後、ケース第2リブ22の切欠部23から
スクロール室4aの低圧領域へ環流する。従って、スク
ロール室4aを流れる送風の一部によってファンモータ
3のモータ本体3b内を冷却することもできる。
【0043】更に、多翼送風機1では、ケーシング4は
スクロール室4aの拡大角nが3.3度に設定され、従
来品と比べて拡大角nが小さい。このため、ケーシング
4の多翼ファン2径方向の大きさが従来品より小さくな
り、確実にケーシング4の小型化を図ることもできる。
【0044】加えて、多翼送風機1では、ファン第1リ
ブ11は、多翼ファン2のモータシャフト3a先端側の
先端部外周に設けられている。このため、ケーシング4
の空気吸入口4bの開口面積を広くして、ケーシング4
内へ空気を吸入する際の空気吸入口4bでの通気抵抗を
小さくすることができる。従って、この点でも送風効率
の向上と騒音レベルの低減とを図ることができる。
【0045】図5は、本発明の実施の形態の他の一例で
ある第2実施形態を示す断面図である。なお、以下に行
う第2実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成
要素には同一の符号を付し、第1実施形態の説明と重複
する説明は省略する。
【0046】第1実施形態では、図2に示すように、第
1逆流抑止手段10のファン第1リブ11は、多翼ファ
ン2のモータシャフト3a先端側の先端部外周に設けら
れている。第1逆流抑止手段10のケース第1リブ12
は、ファン第1リブ11を覆う逆U字状の断面形状を有
し、ファン第1リブ11を挟んで互いに対向する一対の
リブ壁が僅かの間隔でファン第1リブ11に近接配置さ
れている。
【0047】これに対し、第2実施形態では、図5に示
すように、第1逆流抑止手段10のファン第1リブ11
は、多翼ファン2のモータシャフト3a先端側の先端面
外周部に設けられている。ケース第1リブ12は、ファ
ン第1リブ11を覆う逆U字状の断面形状を有しファン
第1リブ11に僅かの間隔で近接配置された第1リブ部
12aと、多翼ファン2先端面の外周縁部分に僅かの間
隔で近接配置された第2リブ部12bと、多翼ファン2
のモータシャフト3a先端側の先端部外周に僅かの間隔
で近接配置された第3リブ部12cとからなっている。
【0048】このため、第2実施形態では、第1実施形
態と比べて、第1逆流抑止手段10の逆流抑止のための
微小隙間の長さが長く、スクロール室4aを流れる送風
が多翼ファン2と吸入側ケース板4dとの間の吸入側隙
間G1から空気吸入口4bへ逆流する逆流量を低減させ
ることができる。従って、第1実施形態と比べて、多翼
送風機1の送風効率を向上させることができ、多翼ファ
ン2の振動を抑えて騒音レベルの低減を図ることもでき
る。
【0049】なお、以上説明した第1及び第2の両実施
形態では、スクロール室4aは、ケーシング4の舌部4
kから送風吐出口4cまでモータシャフト3a軸方向に
沿った上下両方向へ略6度の拡がり角αで均等に拡大し
ている。しかし、スクロール室4aは、ケーシング4の
舌部4kより送風吐出口4c側に位置する所定の部位か
ら送風吐出口4cまで、モータシャフト3a軸方向に沿
った少なくとも一方向へ所定の拡がり角αで拡大してい
ても良い。
【0050】ただし、スクロール室4aは、ケーシング
4の所定の部位から送風吐出口4cまでモータシャフト
3a軸方向に沿った上下両方向へ所定の拡がり角αで均
等に拡大させた方が、送風吐出口4cから吐出される送
風の風速の偏りが少なくなるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すもののA−A矢視断面図である。
【図3】スクロール室のモータシャフト軸方向への拡大
を示す説明図である。
【図4】図1に示すものの送風性能を示すグラフであ
る。
【図5】本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【図6】従来品の一例を示す平面図である。
【図7】図6に示すもののX−X矢視断面図である。
【符号の説明】
1 多翼送風機 2 多翼ファン 2a ブレード 3 ファンモータ 3a モータシャフト 3b モータ本体 3c 保護ケース 3d モータ第1連通孔(連通孔) 4 ケーシング 4a スクロール室 4b 空気吸入口 4c 送風吐出口 4d 吸入側ケース板 4e モータ側ケース板 6 連通部 10 第1逆流抑止手段 11 ファン第1リブ 12 ケース第1リブ 20 第2逆流抑止手段 21 ファン第2リブ 22 ケース第2リブ 23 切欠部 G1 吸入側隙間 G2 モータ側隙間 L1 スクロール室のモータシャフト軸方向の長さ L2 多翼ファンのモータシャフト軸方向の長さ n 拡大角 S 空間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F04D 29/66 F04D 29/66 N (72)発明者 矢島 利夫 東京都中野区南台5丁目24番15号 カルソ ニックカンセイ株式会社内 Fターム(参考) 3H022 AA02 BA01 BA02 BA03 CA34 DA02 DA11 3H034 AA02 AA15 BB02 BB06 BB19 CC03 DD02 DD08 EE03 EE06 EE08 EE12 EE13 3H035 AA02 AA06 DD04 DD05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多数のブレード(2a)を有する多翼フ
    ァン(2)と、該多翼ファン(2)がモータシャフト
    (3a)に取り付けられたファンモータ(3)と、多翼
    ファン(2)が内部に収容されて多翼ファン(2)の外
    周に渦巻き状のスクロール室(4a)が形成されたケー
    シング(4)とを備え、該ケーシング(4)は、空気吸
    入口(4b)を有する吸入側ケース板(4d)と、多翼
    ファン(2)を挟んで吸入側ケース板(4d)の反対側
    に位置しファンモータ(3)のモータ本体(3b)が組
    み付けられたモータ側ケース板(4e)とを備えている
    遠心式の多翼送風機において、 スクロール室(4a)を流れる送風が多翼ファン(2)
    と吸入側ケース板(4d)との間の吸入側隙間(G1)
    から空気吸入口(4b)へ逆流するのを抑える第1逆流
    抑止手段(10)と、前記送風が多翼ファン(2)とモ
    ータ側ケース板(4e)との間のモータ側隙間(G2)
    からスクロール室(4a)の上流側へ逆流するのを抑え
    る第2逆流抑止手段(20)とを備え、スクロール室
    (4a)は、そのモータシャフト(3a)軸方向の長さ
    (L1)が、多翼ファン(2)のモータシャフト(3
    a)軸方向の長さ(L2)より長く形成されていると共
    に、ケーシング(4)の送風吐出口(4c)へ向かって
    徐々に拡大していることを特徴とする遠心式の多翼送風
    機。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の遠心式の多翼送風機であ
    って、第1逆流抑止手段(10)は、多翼ファン(2)
    に設けられ多翼ファン(2)から吸入側隙間(G1)へ
    多翼ファン(2)周方向全周に亘り連続して突出するフ
    ァン第1リブ(11)と、吸入側ケース板(4d)に設
    けられ吸入側ケース板(4d)から吸入側隙間(G1)
    へ突出すると共に多翼ファン(2)周方向全周に亘り連
    続してファン第1リブ(11)に僅かの間隔で近接する
    ケース第1リブ(12)とから形成され、第2逆流抑止
    手段(20)は、多翼ファン(2)に設けられ多翼ファ
    ン(2)からモータ側隙間(G2)へ多翼ファン(2)
    周方向全周に亘り連続して突出するファン第2リブ(2
    1)と、モータ側ケース板(4e)に設けられモータ側
    ケース板(4e)からモータ側隙間(G2)へ突出する
    と共に多翼ファン(2)周方向全周に亘り連続してファ
    ン第2リブ(21)に僅かの間隔で近接するケース第2
    リブ(22)とから形成されていることを特徴とする遠
    心式の多翼送風機。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の遠心式の多翼送風機であ
    って、スクロール室(4a)内の圧力が比較的高いスク
    ロール室(4a)の高圧領域とモータ本体(3b)内と
    を連通させる連通部(6)を備え、ケース第2リブ(2
    2)には、前記高圧領域より圧力が低いスクロール室
    (4a)の低圧領域を臨む部位に、多翼ファン(2)と
    モータ側ケース板(4e)とによって包まれモータ本体
    (3b)が露出する空間(S)内と前記低圧領域とを連
    通させる切欠部(23)が設けられ、ファンモータ
    (3)には、モータ本体(3b)内を保護する保護ケー
    ス(3c)の前記空間(S)内への露出部分に、モータ
    本体(3b)内と前記空間(S)とを連通させる連通孔
    (3d)が設けられていることを特徴とする遠心式の多
    翼送風機。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れかに記載の遠心式の
    多翼送風機であって、ケーシング(4)は、スクロール
    室(4a)の拡大角(n)が略3.3度に設定されてい
    ることを特徴とする遠心式の多翼送風機。
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