JP2002020851A - 溶融ガラス塊の搬送用部材およびその製造方法 - Google Patents
溶融ガラス塊の搬送用部材およびその製造方法Info
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Abstract
部材およびその製造方法を提案すること。 【解決手段】 溶融ガラス塊と接触する鋼鉄製基材の表
面に対して、金属を被覆した黒鉛からなる粒子または金
属を被覆した黒鉛粒子とNi,W,TiおよびAlから選ばれ
る少なくとも一種の金属もしくはそれらの合金粒子とか
らなる混合物の複合溶射皮膜を形成してなる搬送用部
材、およびそのような複合溶射皮膜をプラズマ溶射法ま
たは可燃性ガスの燃焼炎を熱源とするフレーム溶射法に
よって形成する方法。
Description
する鋼鉄製基材の表面に、溶融ガラスに対する優れた潤
滑性を有する溶射皮膜を形成してなる溶融ガラス塊の搬
送用部材およびその製造方法に関するものであり、ガラ
ス壜製造工程における搬送部材や金属部材だけでなく、
ガラスの成形用金型の表面や、溶融状のガラスシートな
らびに熱処理ガラスを搬送するローラ類の表面にも適用
できる技術を提案する。
程によって行われている。すなわち、ソーダ灰、石灰
石、ガラス屑などを主原料とし、これに副原料として、
芒硝 (Na2SO4) 、各種着色剤、消色剤などが適宜添加
された原料を1500〜1600℃の高温で完全溶解した後、作
業室を通して気泡などを除去し、さらにフィーダーヘ供
給する。ここでは壜の重量・形状に応じた温度(通常11
00〜1200℃)に調整されたガラス塊がつくられ、製壜機
へ供給される。
の概要を示したものである。ここに、1は溶融ガラス、
2はガラスの溶解炉、3は作業室、4はフィーダー、5
はガラス塊を示している。上記溶解炉2の溶融ガラス1
は作業室3において適宜調整された後、フィーダー4に
よって溶融ガラス塊5として排出され、さらに切断機6
によって適当な大きさに調整、切断された後、ファンネ
ル7、スクープ8、トラフ9、デフレクター10と呼ば
れる一連の雨樋形状の搬送部材を介して製壜金型11へ
正確に送り込まれるようになっている。溶融ガラス塊5
は搬送部材の内面を滑るような状態で製壜金型11へ供
給されるが、特に、高温の溶融状態のガラス塊5と接触
する鋼鉄製基材の表面には次のような性質が要求されて
いる。 (1)溶融ガラスとの摩擦係数が少なく、滑り性が良好な
こと。 (2)耐摩耗性に優れ、初期の性能を長期間維持するこ
と。 (3)汚れが付着しにくく、また溶融ガラスに対しても汚
染しないこと。 (4)保守点検が容易で再生が可能なこと。 (5)経済的であること。
の搬送用部材の内面には、黒鉛粒子を泥状にした後、こ
れを塗布、乾燥した処理が施されている。この方法によ
ると、溶融ガラス塊の滑りは良好であるとともに、ガラ
スの品質にも悪影響を与えないなどの利点があるもの
の、黒鉛皮膜の消耗が速く、その上運転中に黒鉛皮膜が
局部剥離するなどの問題点がある。さらに黒鉛の塗布作
業を行う作業環境が保全上好ましいものではないなどの
解決すべき課題を有している。
しては、前述した製壜工程を例にとれば、成型用各種金
型、同プランジャーなどがある。これらの金属部材に対
しては、それぞれの機能を高め、長寿命化を図るため
に、以下の(1)〜(3)のような表面処理皮膜が適用されて
いる。 (1) 成型用プランジャー表面に、Ni系もしくはCo系の自
溶合金皮膜を形成したもの(特開昭54−146818号公報、
特開平 4−139032号公報)、Cr3C2を含有させたCo系
自溶合金を肉盛させたもの(特開平2−111634号公
報)、 (2) CVD(化学蒸着法)、PVD(物理蒸着法)によって、
TiN,TiC,TiCN,TiB 2,SiCなどの皮膜を形成させたも
の(特開平1−239029号公報)、 (3) 自溶合金皮膜とセラミックス皮膜を併用したもの
(特開平 3−290326号公報)、さらに、ガラス製品成型
用金型などに対しては、炭化物または炭化物サーメット
を溶射成膜したもの(特開平2−146133号公報)があ
る。
する部分については、以下の(4)〜(7)のような表面処理
皮膜が適用されている。 (4) ガラス溶融用電極に珪化モリブデン溶射皮膜を形成
したもの (特開昭62−171927号公報) (5) 溶融ガラス成形用工具に対して、硼化物、炭化物、
窒化物、珪化物、酸化物などの皮膜を施したもの(特開
昭63−297223号公報)、 (6) 板ガラス成形用ロ−ル表面に耐熱・耐食性合金を成
膜したもの(特開平3−137033号公報) (7) 溶融ガラス供給治具に、窒化物セラミツク溶射皮膜
を形成したもの(特開平2−102145号公報) 上記(4)〜(7)に記載の表面処理皮膜の多くは、現実に各
部材に適用されているが、それぞれの部材の運転条件、
要求機能が異なることもあって、すべての部材に適用可
能で、かつ優れた性能を発揮するような皮膜は開発され
ていない。
ガラス塊と接触する搬送用部材の表面上に黒鉛粉末塗布
法によって形成される黒鉛皮膜は、寿命が比較的短く、
しかもその黒鉛皮膜の局部剥離による不良ガラス製品の
発生や、黒鉛塗布を行う作業環境を汚染するなどの問題
がある。また、溶融ガラス塊と接触する搬送用部材以外
の金属部材の表面上に、従来の各種の耐熱・耐食合金、
酸化物系セラミックス、非酸化物系セラミックスまたは
炭化物を分散させたCo系自溶合金の肉盛などの皮膜を形
成するのに採用されている溶射法を、溶融ガラス塊の搬
送部材やそれ以外の金属部材で溶融ガラスに接触するよ
うな表面を有する部材にそのまま応用しても、溶融ガラ
スとの接触抵抗が大きく、滑り性が悪いという問題があ
り、さらに、ガラス塊にキズや気泡などの欠陥が生じや
すいなどの問題があるため、局部的な採用にとどまって
いるのが現状である。本発明の目的は、従来技術が抱え
ている上記問題点を解決できる溶融ガラスに対して優れ
た潤滑性を備える搬送用部材およびその製造方法を提案
することにある。
めに鋭意研究した結果、発明者らは以下の内容を要旨構
成とする発明に想到した。すなわち、この発明の溶融ガ
ラス塊の搬送用部材は、(1)溶融ガラスと接触する鋼
鉄製基材の表面に対して、金属を被覆した黒鉛からなる
粒子または金属を被覆した黒鉛粒子とNi,W,Tiおよび
Alから選ばれる少なくとも一種の金属もしくはそれらの
合金粒子とからなる混合物の複合溶射皮膜を形成してな
ることを特徴とする。
材は、(2)溶融ガラスと接触する鋼鉄製基材の表面に
対して、Cr,Ni,Al,Mo,Fe,YおよびCoから選ばれる
2種以上からなる耐熱合金をアンダーコートとして溶射
施工して耐熱合金皮膜を形成し、その耐熱合金皮膜上に
金属を被覆した黒鉛粒子、または金属を被覆した黒鉛粒
子とNi,W,TiおよびAlから選ばれる少なくとも一種の
金属もしくはそれらの合金粒子とからなる混合物の複合
溶射皮膜を形成してなることを特徴とする。
材において、前記金属を被覆した黒鉛粒子を構成する金
属が、Ni,CoおよびWから選ばれる少なくとも一種から
なり、かつその金属の含有量が95%〜10wt%であり、残
部が黒鉛からなることが望ましい。
送用部材において、前記金属を被覆した黒鉛粒子に混合
するNi,W,TiおよびAlから選ばれる少なくとも一種の
金属もしくはそれらの合金粒子の割合は、前者が50〜80
vol%、後者が50〜20vol%であることが望ましい。
搬送用部材において、前記金属を被覆した黒鉛粒子また
は金属を被覆した黒鉛粒子とNi,W,TiおよびAlから選
ばれる少なくとも一種の金属もしくはそれらの合金粒子
との混合物を用いて形成した複合溶射皮膜の厚さは、30
〜3000μmにあることが望ましい。
の搬送用部材を製造する方法は、(3)溶融ガラスと接
触する鋼鉄製基材の表面に、金属を被覆した黒鉛粒子ま
たは金属を被覆した黒鉛粒子とNi,W,TiおよびAlから
選ばれる少なくとも一種の金属もしくはそれらの合金粒
子との混合物からなる複合材料を用いて、プラズマ溶射
法または可燃性ガスの燃焼炎を熱源とするフレーム溶射
法によって複合溶射皮膜を形成することを特徴とする。
造する方法は、(4)溶融ガラスと接触する鋼鉄製基材
の表面に、アンダーコートとして、Cr,Ni,Al,Mo,F
e,YおよびCoから選ばれる2種以上の耐熱合金を用い
て、溶射法によって膜厚が30〜300μmの耐熱合金溶射
皮膜を形成した後、その皮膜上に、金属を被覆した黒鉛
粒子または金属を被覆した黒鉛粒子とNi,W,Tiおよび
Alから選ばれる少なくとも一種の金属もしくはそれらの
合金粒子との混合物からなる複合材料を用いて、プラズ
マ溶射法または可燃性ガスの燃焼炎を熱源とするフレー
ム溶射法によって、膜厚が30〜3000μmの複合溶射皮膜
を形成することを特徴とする。
用部材」とは、溶融ガラス塊に接触する鋼鉄製表面を有
し、溶融ガラス塊を搬送するために製壜工程において使
用されるフィーダー、スクープ、トラフ、デフレクター
等の搬送部材や、搬送目的ではないが溶融ガラス塊に接
触する鋼鉄製表面を有する成型用各種金型、成型用プラ
ンジャー等の金属部材、さらに、溶融状態のガラスシー
トや熱処理ガラスを搬送する目的で使用され、溶融ガラ
スシート等に接触する鋼鉄製表面を有するローラ類をも
含み、製壜工程以外の各種ガラス製造工程において溶融
ガラス塊と接触する鋼鉄製基材を含む概念である。
構は、一般的にはプラズマや可燃性ガスの燃焼エネルギ
ーを用いて、金属(合金)、セラミックス、サーメツ
ト、ガラスなどの固体の微粒子を溶融体として基材表面
に吹き付けることによって行われることは周知であり、
このような溶射法に利用される材料(以下、「溶射材
料」という)も、熱源中で安定した溶融状態を示すもの
に限定されるということも周知である。
融ガラスと接触する鋼鉄製基材の表面に、金属を被覆し
た黒鉛からなる粒子、または金属を被覆した黒鉛粒子と
Ni,W,TiおよびAlから選ばれる少なくとも一種の金属
もしくはそれらの合金粒子とからなる混合物を用いて複
合溶射皮膜を形成してなることを特徴とする。
との潤滑性に優れている黒鉛を含んだ複合材料、すなわ
ち、黒鉛粒子の表面を合金を含む適切な金属で被覆した
材料を、基本的な溶射材料として選定した。その理由
は、黒鉛粒子を単独でそのままの状態で溶射熱源中へ投
入した場合には、溶融することなくガス化 (CO2、CO )
し、また非常に軽いため、熱源の流速を有効に利用でき
ず、周囲に飛散するだけで成膜することができないから
である。
属と非金属の黒鉛からなる溶射粒子を用いて成膜するに
際し、溶射熱源中における両成分の挙動を次のように推
定し、この現象を再現するための溶射条件を選定するこ
ととした。すなわち、黒鉛粒子の表面を覆っている金属
は、溶射熱源中において、軟化もしくは溶融状態となる
が、金属によって被覆された内部の黒鉛粒子は環境ガス
に直接的に曝されないため、燃焼して気体 (CO2、CO)
となる割合が非常に少なく、たとえ熱源のガス体と接触
したとしても、溶射法では熱源中を飛行する時間が非常
に短い (0.01〜0.001秒)ため、大部分の黒鉛は金属成分
と一緒になって被処理体に衝突して成膜を形成すること
ができる。
射皮膜の表面は、面積的に大部分が多孔質な黒鉛で構成
され、この中に金属成分が混在して、被処理体との密着
性向上あるいは皮膜を構成する金属粒子どうしの結合力
を高める作用をするので、溶融ガラスの搬送部材に適用
した場合、次のような機能を発揮する。
成分は、もっぱら溶融ガラスとの潤滑剤としての機能を
果たすとともに、良好な熱伝導性によって高熱の溶融ガ
ラスとの接触にも変質することなく、また従来の黒鉛塗
布皮膜に比べても共存する金属成分が被処理体との密着
性を高めるため、皮膜が剥離することがなく、長期間に
わたってその機能を発揮することができる。
被覆する金属の選択は重要な因子であり、Ni,Coおよび
Wから選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合
金が好ましい。これらの金属 (合金を含む) は、ガラス
との反応性が悪いうえ、耐熱性に優れているため、黒鉛
粒子を皮膜中に保持する役割を果たすからである。
る方法として、Niめっき処理による場合を一例にとって
説明する。
ケル (NiSO4) の3〜5wt%水溶液中に、次亜りん酸ナト
リウム (NaH2PO2)や水素化硼素ナトリウム (NaBH4)
またはヒドラジン (N2H4) などの還元剤を添加して50
〜95℃の状態に維持したものの中に、黒鉛粒子を入れる
と、その表面に金属Niが析出する。
50μmの範囲内であることが望ましい。その理由は、5
μm未満では粒子の流動性が悪く、溶射ガンへの供給が
不連続となるため、均等な膜厚が得られず、また金属と
黒鉛の比が大きくなって(金属が大となる)本発明の目
的に合致しなくなるからであり、150μmを超えると金
属成分の軟化、溶融現象が不均等となり、相互の結合力
が弱くなるからである。このような黒鉛粒子を予め界面
活性剤によって水との親和性を高めたり、塩化錫水溶液
に浸漬して化学活性力を向上させておけば、Niの析出は
さらに容易となる。また、Niの析出量は化学めっきの温
度や時間によって調整することが可能である。
ラジンを使用する場合は99.9%以上、NaH2PO2の場合は
りん(P)を5〜10wt%、NaBH2の場合は2〜5wt%のほう素
を含むが、この程度の還元剤成分の含有量では、特に本
発明による溶射皮膜の特性を損なうものではない。
属で被覆する方法について説明したが、Ni、CoおよびW
から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金
は、CVD法やPVD法によっても製造することが可能
であるので、本発明において用いられる材料は化学めっ
き法によって製造されるものに限定されるものではな
い。
成は,黒鉛が5〜10wt%、残部が金属質(正確には化学め
っき析出物)であるような範囲が好ましい。その理由
は、黒鉛成分が5wt%より少ない場合は、溶射皮膜中に占
める黒鉛成分が少なくなって溶融ガラスの滑り性が悪く
なり、10wt%より多いときには溶射皮膜の形成が困難と
なり、皮膜の密着性が低下するからである。このような
金属被覆黒鉛粒子を、溶融ガラスと接触する鋼鉄製表面
に対して溶射施工する条件は、溶射熱源中に投入された
粒子温度が1000℃以上で、少なくとも金属成分は軟化
し、相互に結合する最低温度であることが好ましい。そ
の理由は、長時間熱源中に滞留すると、金属成分が完全
に溶融し、被覆が破れ黒鉛が燃焼し消失するからであ
る。最も好ましい金属被覆粒子の加熱は、熱源中では金
属成分が軟化し、鋼鉄製表面に衝突した際に破れて、内
部の黒鉛が露出する状態の温度条件を選定すべきであ
る。
で溶射施工してもよいが、溶融ガラス塊の温度、重量、
接触時間などの作業条件によっては、これらの金属被覆
黒鉛粒子にさらにNi,W,TiおよびAlから選ばれる少な
くとも一種の金属あるいはそれらの合金粒子を混合した
複合材料を製造し、このような複合材料を溶射材料とし
て用いて複合溶射皮膜を形成することもできる。
黒鉛を含む溶射皮膜の機械的強度を向上させるととも
に、特にNiおよびWは溶融ガラスとの反応性に乏しく、
またNi−Al、Ni−Al−Ti合金等の合金は、高温雰囲気下
でその表面にAl2O3の薄膜が形成されるので、その耐
酸化性を向上させることができる。
i,W,TiおよびAlから選ばれる少なくとも一種の金属
もしくはそれらの合金粒子の混合割合は,前者(金属被
覆黒鉛粒子)が50〜80vol%、後者(金属あるいは合金粒
子)が50〜20vol%になるように混合したものが好まし
い。金属を被覆した黒鉛粒子の割合が50vol%未満では、
黒鉛の潤滑作用が有効に機能することができず、また80
vol%を超えると金属(合金)成分の割合が20vol%未満と
小さくなり、溶射皮膜の機械的強度を向上させることが
できず経済的でないからである。
は、溶射熱源中に投入された粒子温度が1000℃以上で、
少なくとも金属成分は軟化し、相互に結合する最低温度
であることが好ましく、その際の複合溶射皮膜の膜厚
は、30〜3000μmであることが好ましい。膜厚が30μm
未満では寿命が短く、3000μmを超えると溶融ガラスに
対する潤滑性能は良好なものの、経済的でないからであ
る。
の金属粒子あるいはNi-Al合金等の合金粒子とを混合し
た複合材料は、鋼鉄製基材の表面に直接溶射しても良好
な密着性を発揮するが、Cr,Ni,Al,Mo,Fe,Yおよび
Coから選ばれるいずれか2種以上の金属を含む耐熱合金
を予めアンダーコートとして溶射施工し、その上に複合
溶射皮膜を形成しても好適に用いることができる。
皮膜は、たとえば、Ni-Al合金、Ni-Cr合金、Ni-Cr-Al合
金、Ni-Cr-Al-Y合金、Co-Cr-Al-Y合金、Co-Ni-Cr-Al-Y
合金のような耐熱合金を溶射材料として用いることが望
ましい。上記耐熱合金溶射皮膜を鋼鉄製表面に形成する
溶射法は、水素、Ar、Heなどのガスを用いるプラズマ溶
射法、可燃性ガス(含液体燃料)の燃焼エネルギーを利
用したフレーム溶射法および爆発溶射法であることが望
ましく、またその溶射皮膜の膜厚は、30〜300μmである
ことが好ましい。その理由は、膜厚が30μm未満ではア
ンダーコートとしての効果を維持する期間が短く、300
μmを超えても格別アンダーコートとしての機能が向上
せず、経済的でないからである。
金の溶射皮膜の上に、複合溶射皮膜を形成することによ
って、鋼鉄製基材の表面に対してはアンダーコート皮膜
が強固に付着し、一方、溶融ガラスと接触する側の表面
には常に黒鉛が露出するので潤滑性が向上するととも
に、その黒鉛粒子を保持する金属もまた溶融ガラスと反
応せず、しかも高温での耐酸化性が向上する。
表面に以下の〜に示すような各種溶射材料を用いた
溶射皮膜を形成し、その溶射皮膜の溶融ガラス塊との潤
滑性を調べる試験を行った。その際に、以下の〜に
示すような比較材および処理を用いて、比較用溶射皮膜
を形成し、〜と同一条件にて試験を行った。
1〜4) Coを被覆した黒鉛粒子(黒鉛含有量20〜50wt%:適合
例5、6) Wを被覆した黒鉛粒子(黒鉛含有量20〜50wt%):適合
例7、8) Niを被覆した黒鉛粒子とNi-Al合金粒子との混合物
(適合例9、10)
2O3-40%TiO2:比較例3〜5) Ni系自溶合金を溶射後フェージング処理(SFNi4:比
較例6)
したものであり、トラフ形状を模擬するために、直径65
mm、長さ800mmの炭素鋼管を縦に半割れにしたものを製
作した。さらに、半割れした鋼管の内面に、本発明によ
る各種金属被覆黒鉛材料を用いて溶射皮膜を形成し、さ
らに各種の金属(合金)やセラミックス材料を用いて溶
射皮膜を形成して、それぞれを試験用部材とした。
材、22は各種皮膜を施工した部分、23は炭素鋼製半
割れ部材の長さ方向の中心点を支える部材(支点部材:
高さ150mm)であり、この支点を中心に両端が上下する
ようになっている。
らかじめAl2O3粒子を用いてブラスト処理した後、プ
ラズマ溶射法(溶射条件:Arガスを用い38kW出力)に
よって成膜した。また、のNi系自溶合金は、成膜後、
酸素−アセチレンの燃焼炎によってフェージング処理
(処理条件:1070〜1100℃)を施した。
射施工した炭素鋼管半割れ部材の一端に1000〜1100℃に
加熱した100〜150gのガラス塊を置き、支点部材を利用
して両端を上下に移動させることによって、その都度ガ
ラス塊を半割れ部材の内面に沿って移動させ、その滑り
状態と試験後の皮膜表面の外観変化から優劣を調べた
(目視による評価)。その結果を表1に示す。
の各含有量はwt%である。 (2*)適合例9、比較例3〜5におけるアンダーコート
としての耐熱Ni-Cr合金中のNiとCrの各含有量はwt%で
ある。 (3*)適合例9および10におけるNi被覆黒鉛粒子とNi-
Al合金粒子との混合比はvol%である。 (4*)比較例6における自溶合金はJIS H8303規定のSFN
i4を使用した。
%、50wt%および90wt%だけそれぞれ含有したNi被覆黒鉛
粒子から形成される適合例1〜4による溶射皮膜、黒鉛
を20wt%および50wt%だけそれぞれ含有したCo被覆黒鉛粒
子から形成される適合例5および適合例6による溶射皮
膜、黒鉛粒子をそれぞれ5wt%および50wt%だけ含有したW
被覆黒鉛粒子から形成される適合例7および適合例8によ
る溶射皮膜、さらに、適合例2のNi被覆黒鉛粒子75vol%
にNi-Al合金(Ni80wt%-Al20wt%)粒子を25vol%を混合し
た複合材料から形成される適合例9による溶射皮膜、同
じく適合例4によるNi被覆黒鉛粒子75vol%にNi-Al合金
(Ni80wt%-Al20wt%)粒子を25vol%を混合した複合材料
から形成される適合例10による溶射皮膜を有する、すべ
ての試験用部材については、滑り状態が良好であるとと
もに、皮膜表面の外観変化が全く認められなかった。
は、滑り状態が不良であるとともに、試験後の外観が黒
色に変化し、比較例2で示すような従来から使用されて
きた黒鉛塗布した試験用部材は、ガラス塊の流れが良好
であるとともに、試験用部材の表面にも外観の変化は認
められなかった。しかしながら、比較例2のような人工
的な黒鉛の塗布の繰り返しによって、作業環境を甚だし
く汚染するという欠点がある。
ス材料を用いて溶射皮膜を形成した試験用部材は、ガラ
ス塊の流れが良好であるかやや良好であるが、そのガラ
ス塊によって微細な割れが発生したことが認められ、比
較例6による自溶合金を用いた溶射皮膜を形成し、その
後フュージング処理した試験用部材は、ガラス塊の流れ
がやや良好であるとともに、外観の変化も認められなか
った。
に示した製壜機械に使用されるスクープ、トラフ、デフ
レクター等の各部材に対して、以下の〜に示すよう
な溶射材料を用いて所定の膜厚の各種溶射皮膜を形成さ
せ、実環境下で耐久性試験を行った。 Niを被覆した黒鉛粒子(黒鉛含有量:40wt%):膜厚4
00μm 上記のNi被覆黒鉛粒子75vol%に、Ni-20%Al合金粒子
25vol%を添加した混合物:膜厚400μm Ni-20%Cr耐熱合金(アンダーコート:膜厚200μm)+
上記の皮膜(300μm) 22%Cr-10%Al-1%Y-67%Ni耐熱合金(アンダーコート:1
00μm)+上記の皮膜(300μm)
れている黒鉛塗布では、2〜3日の操業運転で塗布層が
消失し、その都度再塗布を繰り返していたが、本発明に
よる溶射皮膜〜を形成したスクープ、トラフの各部
材では6ヶ月以上、デフレクター部材では1年以上の長期
運転に耐え得ることが実証された。また、この期間に製
造されたガラス壜には全く欠陥が認められず、高い品質
を維持することができた。
例2と同様に、図1に示した製壜機械に使用されるスク
ープ、トラフ、デフレクター等の各部材に対して、以下
の〜に示すような溶射材料を用いてプラズマ溶射法
によって所定の膜厚の各種溶射皮膜を形成させ、実環境
下で耐久性試験を行った。 Niを被覆した黒鉛粒子(黒鉛含有量:40wt%)80vol%
に、W粒子3vol%とNi粒子17vol%とを添加した混合物:膜
厚500μm Niを被覆した黒鉛粒子(黒鉛含有量:30wt%)80vol%
に、Ni粒子80wt%−Al粒子8wt%−Ti2wt%からなる合金粒
子を20vol%だけ添加した混合物:膜厚600μm
れている黒鉛塗布では、2〜3日の操業運転で塗布層が
消失し、その都度再塗布を繰り返していたが、本発明に
よる溶射皮膜〜を形成したスクープ、トラフおよび
デフレクターの各部材では、6ヶ月以上の連続運転に耐
え得ることが実証され、またこの期間に製造されたガラ
ス壜にも全く欠陥が認められず、長期間にわたって優れ
た性能を発揮することが確認され、生産性の向上、作業
環境の改善に大きな効果が認められた。
ガラス塊の搬送用部材は、溶融ガラス塊に接触する鋼鉄
製表面に、金属を被覆した黒鉛からなる粒子または金属
を被覆した黒鉛粒子とNi,W,TiおよびAlから選ばれる
少なくとも一種の金属もしくはそれらの合金粒子とから
なる混合物の複合溶射皮膜を形成してなるので、溶融ガ
ラス塊に対する潤滑性能に優れ、長期にわたって高品質
なガラス壜を生産することに寄与することができる。そ
の結果、ガラス壜の生産性を向上させ、しかも従来の黒
鉛塗布作業に伴う作業環境の汚染を解消できるので、安
全衛生面での寄与も極めて大きいという効果がある。
融状態を呈している工程の概要を示したガラス壜製造装
置の概略図である。
ラフ形状を模擬した試験部材の概略図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 溶融ガラス塊に接触する鋼鉄製基材の表
面に、金属を被覆した黒鉛からなる粒子または金属を被
覆した黒鉛粒子とNi,W,TiおよびAlから選ばれる少な
くとも一種の金属もしくはそれらの合金粒子とからなる
混合物の複合溶射皮膜を形成してなることを特徴とする
溶融ガラス塊の搬送用部材。 - 【請求項2】 溶融ガラスに接触する鋼鉄製基材の表面
に、Cr,Ni,Al,Mo,Fe,YおよびCoから選ばれる2種
以上からなる耐熱合金をアンダーコートとして溶射施工
して耐熱合金皮膜を形成し、その耐熱合金皮膜上に金属
を被覆した黒鉛粒子、または金属を被覆した黒鉛粒子と
Ni,W,TiおよびAlから選ばれる少なくとも一種の金属
もしくはそれらの合金粒子とからなる混合物の複合溶射
皮膜を形成してなることを特徴とする溶融ガラス塊の搬
送用部材。 - 【請求項3】 前記金属を被覆した黒鉛粒子を構成する
金属が、Ni,CoおよびWから選ばれる少なくとも一種か
らなり、かつその金属の含有量が95〜10wt%であり、残
部が黒鉛からなることを特徴とする請求項1および2に
記載の溶融ガラス塊の搬送用部材。 - 【請求項4】 前記金属を被覆した黒鉛粒子に混合する
Ni,W,TiおよびAlから選ばれる少なくとも一種の金属
もしくはそれらの合金粒子の割合は、前者が50〜80vol
%、後者が50〜20vol%であることを特徴とする請求項
1または2に記載の溶融ガラス塊の搬送用部材。 - 【請求項5】 前記金属を被覆した黒鉛粒子または金属
を被覆した黒鉛粒子とNi,W,TiおよびAlから選ばれる
少なくとも一種の金属もしくはそれらの合金粒子との混
合物からなる複合皮膜の厚さは、30〜3000μmであるこ
とを特徴とする請求項1または2に記載の溶融ガラス塊
の搬送用部材。 - 【請求項6】 溶融ガラスと接触する鋼鉄製基材の表面
に対して、金属を被覆した黒鉛粒子または金属を被覆し
た黒鉛粒子とNi,W,TiおよびAlから選ばれる少なくと
も一種の金属もしくはそれらの合金粒子との混合物から
なる複合材料を用いて、プラズマ溶射法または可燃性ガ
スの燃焼炎を熱源とするフレーム溶射法によって複合溶
射皮膜を形成することを特徴とする溶融ガラス塊の搬送
用部材の製造方法。 - 【請求項7】 溶融ガラスと接触する鋼鉄製基材の表面
に対して、アンダーコートとして、Cr,Ni,Al,Mo,F
e,YおよびCoから選ばれる2種以上の耐熱合金を用い
て、膜厚が30〜300μmの耐熱合金溶射皮膜を溶射法に
よって形成した後、その皮膜上に、金属を被覆した黒鉛
粒子または金属を被覆した黒鉛粒子とNi,W,Tiおよび
Alから選ばれる少なくとも一種の金属もしくはそれらの
合金粒子との混合物からなる複合材料を用いてプラズマ
溶射法または可燃性ガスの燃焼炎を熱源とするフレーム
溶射法によって、膜厚が30〜3000μmの複合溶射皮膜を
形成することを特徴とする溶融ガラス塊の搬送用部材の
製造方法。
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