【発明の詳細な説明】
眼科用組成物 発明の背景
1.発明の分野
本発明は、眼科用組成物、より詳しくは2価カチオンと非ステロイド系(非ス
テロイド性)抗炎症剤とを含有する眼科用組成物、ならびに/または保存剤系を
含有する眼科用組成物に関する。
2.関連技術の説明
非ステロイド系抗炎症剤は、眼の組織の炎症およびそれに伴う疼痛の治療とい
った多様な眼科治療に使用することができる。別の用途としては、(i)手術外傷
の特定の副作用(例、手術減数分裂を防ぐ瞳孔上で)の防止、(ii)白内障手術後
の眼後部での液体の蓄積(手術後黄斑水腫)の防止、ならびに(iii)前眼房の脈
管漏れおよび炎症細胞の出現の防止が挙げられる。ジクロフェナク、スプロフェ
ン、およびフルルビプロフェンが、白内障摘出手術を受けた患者の手術後炎症の
治療にこれまで用いられてきた非ステロイド系抗炎症剤の具体例である。非ステ
ロイド系抗炎症剤の眼内での局所投与はまた、アレルギー性結膜炎によるある種
の痒みを軽減するようである。
従来、抗炎症剤は、一般に中性pHの溶液状で投与されてきた。抗炎症剤を懸
濁液の形態で注射することも提案された。懸濁液は、その薬剤の可溶性があまり
高くない場合に、局所眼科投与用に使用されてきた。しかし、薬剤が許容される
pHで可溶性である場合には、懸濁液の粒子により引き起こされる刺激の可能性
を避けるために、溶液が通常は使用される。下記の特許に、ジクロフェナクを包
含する非ステロイド系抗炎症剤を含有する眼科用溶液が例示されている。
Nagyの米国特許第4,960,799号は、眼炎症の局所治療用のオルト−(2,6−ジク
ロロフェニル)アミノフェニル酢酸ナトリウム(これはジクロフェナクナトリウ
ムの化学名である)の貯蔵安定性のある水溶液に関する。Nagyが教えるこの溶液
のpHは約7.0〜7.8である。
Doulakasの米国特許第4,829,088号は、水溶液状態のジクロフェナクナトリウ
ムを含有する眼科用薬剤に関する。この水溶液剤は保存剤として2−アミノ−2
−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを含有する。
Cherng-Chyiらの米国特許第5,110,493号は、第4級アンモニウム系保存剤およ
び非イオン性界面活性剤を含有する眼科用非ステロイド系抗炎症性薬剤処方組成
物に関する。
特開昭58−174309号(1983年10月13日発行)に関する日本特許抄録,Vol.8,N
o.7,Abs.Gp.C-204は、(1)その構造内にカルボキシル基を有する非ステロイ
ド系消炎剤ならびに(2)生理学的に許容されるカルシウムもしくはマグネシウム
塩を含有する消炎性点眼組成物に関する。この塩は、刺激緩和剤であると説明さ
れ、普通は非ステロイド剤1モル当たり1〜1.5モルの量で添加される。非ステ
ロイド系消炎剤としてジクロフェナクナトリウムが具体的に挙げられており、組
成物のpHは好ましくは7〜8の範囲に保持される。
しかし、上記特開昭出願において認識されているように、非ステロイド系抗炎
症剤の使用に伴う1つの問題点は、眼に局所投与した後の最初の数分間は、刺す
ようなまたは焼けるような感じを一般に経験することである。このような刺痛を
経験した患者は、その投薬治療を規則的に行うことを避けがちになるだけでなく
、この投与により受ける利益(薬効)も低下することになる。具体的には、刺痛
により涙液が出るが、この涙液でその薬剤が洗い流されてしまう。涙液が出るこ
とにより薬剤の一部が眼から物理的に除去されてしまうと、その薬剤の生体内利
用率が低減する。
刺痛の問題の対処策として、1994年5月24日に出願され、本出願人に譲渡され
た係属中の米国出願連続番号08/248,500号(その全内容をここに援用する)に記
載されているように、非ステロイド系抗炎症剤の一部を懸濁液形態で供給するこ
とが提案された。懸濁状態の粒子は、眼を治療することができる前に溶解する必
要がある。有効薬剤の一部を粒子として供給することにより、眼への薬剤の流れ
が遅くなる。即ち、有効薬剤の一部を粒子として供給すると、眼と接触する薬剤
の初期濃度が低くなる。この薬剤供給の遅れを、pHが7〜8であるために薬剤
の全てが溶液状であって、それにより高濃度の薬剤が角膜にすぐに供給される、
従来の組成物と対比してみた。眼への高濃度の該薬剤の供給は、この薬剤の焼け
るようか、刺すような作用を悪化させると信じられる結果となった。
このような手法によって、上述した刺痛の問題に関していくらかの改善はなさ
れたが、非ステロイド系抗炎症剤を含有する眼科用組成物を局所投与する時に刺
痛を経験する患者はなお残っている。従って、さらなる改善が望ましい。
また、非ステロイド系抗炎症剤を含有する眼科用組成物の保存にも問題がある
場合がある。塩化ベンザルコニウム(BAK)のような慣用の広範囲抗菌剤は、時間
がたつと非ステロイド系抗炎症剤と相互作用する傾向があり、それにより投薬の
薬効が低減する。実際、全般的な問題として、眼科用組成物における保存剤は完
全には満足できない。有効な広範囲抗菌剤は、この種の組成物の貯蔵安定性を低
減させるか、および/または他の成分との有害な相互作用を行う傾向がある。
これらの欠点の一部を克服するように試みている有用な保存剤系が、米国特許
第5,576,028号および第5,607,698号に開示されている。これらの保存剤系は、保
存剤として少量の過酸化水素または過酸化水素供給源を、ペルオキシ安定剤と組
合わせて使用している。この安定剤は好ましくは、モンサント社からデクエスト
(DEQUEST)なる商品名で市販されている、ジエチレントリアミンペンタ(メチレ
ン−ホスホン酸)等といったホスホン酸類である。この保存剤系は極めて有用で
あるが、貯蔵安定性におけるある種の改善が望ましい。
発明の要約
本発明の目的は、局所有効量の非ステロイド系抗炎症剤を含有し、慣用の点眼
剤より刺激性が強くない眼科用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、大多数の患者が刺痛や刺激を経験させずに使うことがで
きる、非ステロイド系抗炎症剤を含有する眼科用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、貯蔵(保管)中に良好な安定性を示す保存剤含有眼科用
組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、非ステロイド系抗炎症剤を含有する眼科用組成物を、治
療を必要とする眼に局所投与することにより、炎症を含む眼の疾患を治療する方
法を提供することである。
本発明の好適形態は、上記目的の少なくとも一部を解決する。本発明の1態様
は、その少なくとも約80モル%が沈殿の形態にある有効量の非ステロイド系抗炎
症剤と、この非ステロイド系抗炎症剤1モル当たり少なくとも約0.5当量の薬理
学的に許容される2価カチオンとを含有する水性媒質からなり、この水性媒質の
pHが約4.0〜6.7である眼科用組成物である。本発明の別の態様は、このような
眼科用組成物の有効量を治療を必要とする眼に投与することからなる、眼の治療
方法に関する。本発明のさらに別の態様は、このような眼科用組成物の製造方法
に関する。本発明の別の好ましい態様は、少なくとも(1)ジクロフェナクナトリ
ウム、(2)2価金属塩、(3)水不溶性、水膨潤性のポリマー、および(4)水、を混
合することにより作製された眼科用組成物に関する。
本発明のさらに別の態様は、水、約0.01〜0.5wt%の過ホウ酸塩、約0.001〜0.
06wt%のポリホスホン酸ペルオキシ安定剤、および約0.01〜0.1wt%のエチレン
ジアミン四酢酸を含有する眼科用組成物である。この態様の組成物は、非ステロ
イド系抗炎症剤のような薬剤有効成分をさらに含有していてもよい。
図面の簡単な説明
図1は、本発明および比較用の眼科用組成物についての薬剤放出速度曲線に関
する実施例21の結果を示す。
発明の詳細な説明
本発明者らは、非ステロイド系抗炎症剤(NSAI剤)を固体として2価カチオン
の存在下で供給すると、中性pHでは最初の数分間のNSAI剤の溶解が十分に遅く
なって、眼の刺痛がさらに避けられるようになることを発見した。理由は完全に
は明らかではないが、刺すか、焼けるような刺激は、十分に高濃度のNSAI剤と接
触した後の最初の数分間だけに起きるのが普通である。この最初の時間が過ぎた
後は、眼はもはやNSAI剤に対して、その濃度水準に関係なく明らかに感受性では
なくなる。従って、最初の数分間の間のNSAI剤の溶解を遅らせることにより、眼
での初期NSAI剤濃度を、刺激を避けるのに十分な低濃度に抑えることができる。
その後、固体NSAI剤沈殿の溶解により生じる高濃度は、刺激を引き起こすには遅
すぎる。こうすると、局所有効投与量のNSAI剤を供給しながら、刺すような刺激
の問題を効果的に避けることができる。
これに対して、従来の典型的な眼科用組成物は、NSAI剤の全量を溶質として供
給するのが普通であり、従って眼の表面にすぐに高濃度のNSAI剤が触れる。この
ような投与方法では患者に刺痛を誘発する可能性が最大となる。上述した係属中
の米国出願には、懸濁液状態と溶液状態の両方のジクロフェナクナトリウムの同
時使用が記載されており、これは良好な結果を与えるが、本発明に従って2価カ
チオンをさせると、刺痛の回避がさらに改善される。2価カチオンは、水性媒質
中のNSAI剤の溶解度を低減させ、従って投与後の最初の数分間の間の固体NSAI剤
の沈殿の溶解速度を低減させる。
本出願において使用した「2価カチオン」なる用語は、+2の電荷を有するカ
チオンを意味する。2価カチオンは、固体形態と溶解形態のいずれかでよく、ま
たはは両方でもよい。固体形態では、2価カチオンはあるアニオンにイオン結合
することによって塩を形成している。溶液状態の場合、2価カチオンは特定のア
ニオンと直接結合ないし会合している必要はない。典型的には、このカチオンは
金属であるか、金属を含有している。即ち、「金属2価カチオン」である。適当
な2価カチオンの例としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のIIA族
元素(アルカリ土類金属)が挙げられる。特に好ましい2価カチオンは、Ca++お
よびMg++である。本発明の組成物中の2価カチオンおよび任意のその塩は、眼ま
たは患者を害することがないように薬理学的に許容されるものである。典型的な
アニオンとしては、塩素イオン(塩化物)、硫酸イオン(硫酸塩)、およびNSAI
剤が挙げられる。
2価カチオンは、組成物中に存在させることが必要なだけであり、NSAI剤と会
合させるかまたは何らかの方法で結合させる必要はない。1態様において、全て
または本質的に全ての2価カチオンが溶液状態であり、固体NSAI剤中にはカチオ
ンは存在しない。
2価カチオンの量は、NSAI剤1モル当たり、少なくとも約0.5当量であり、一
般には約0.5〜10当量、より好ましくは1.0〜5.0当量の範囲内である。NSAI剤が
1価であって、2価カチオンはNSAI剤の半分のモル量しか化学量論的に必要な
い場合があるので、2価カチオンをモル当量で規定したことに留意されたい。例
えば、ジクロフェナクアニオン1モル当たり1モルのMg++は、2.0当量のMg++で
ある(カチオンの2倍が要求される)。
ここで用いた「非ステロイド系抗炎症剤」とは、病気または医学的症状を治療
または緩和するのに有用な任意の非麻酔性鎮痛作用/非ステロイド系抗炎症作用
を持つ化合物を意味するものである。この薬剤(NSAI剤)は、眼それ自体もしく
は眼周囲の組織の症状を治療するための薬剤と、眼が関係する以外の局所症状を
治療するために眼経路を経て投与される薬剤とを包含する。好ましくは、NSAI剤
はシクロオキシゲナーゼ阻害剤として有用である。シクロオキシゲナーゼは、多
くの動物モデルにおいて眼内炎症の媒介物(メディエータ)であることが示され
てきたプロスタグランジン類の生合成に必須の酵素である。NSAI剤は典型的には
その分子内に少なくとも1つのカルボキシ基を含有する。
本発明において有用なNSAI剤の例としては、アスピリン、ベノキサプロフェン
、ベンゾフェナク、ブクロキシン酸、ブチブフェン、カルプロフェン、シクロプ
ロフェン、シンメタシン、クリダナク、クロピラク、ジクロフェナク、エトドラ
ク、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェノプロフェン
、フェンチアザク、フルノキサプロフェン、フラプロフェン、フルルビプロフェ
ン、フロブフェン、フロフェナク、イブプロフェン、イブフェナク、インドメタ
シン、インドプロフェン、イソキセパク、ケトロラク、ケトロプロフェン、ラク
トロラク、ロナゾラク、メチアジニク、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサ
プロジン、オキセピナク、フェナセチン、ピルプロフェン、ピラゾラク、プロチ
ジン酸、スリンダク、スプロフェン、チアプロフェン酸、トルメチン、およびゾ
メピラックが挙げられる。好ましくは、NSAI剤剤はジクロフェナク、スプロフェ
ン、フルルビプロフェンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれる。
本発明の組成物は、NSAI剤の少なくとも80%を沈殿の形態で含有する。これは
、モルでNSAI剤の80%が固体状態にあることを意味する。残り(存在するなら)
は溶液状態である。これに関して、「沈殿」とは、その固体が沈殿生成プロセス
により生成したものであることを意味しない。但し、通常の場合はそうである。
好ましくは、NSAI剤の85〜95%が沈殿の状態にある。沈殿は通常は水性媒質中に
分散されているか、またはポリマー粒子のような分散キャリアー上に担持されて
いる。しかし、このような分散状態は必須ではない。
本発明の1態様において、この沈殿は遊離酸形態(または遊離塩基形態)であ
って、NSAI剤の塩の形態ではない。一般に、たとえNSAI剤の2価塩溶液から生成
させても、この遊離酸はほとんど常に生成する。例えば、当初は、ジクロフェナ
クのカルシウムまたはマグネシウム塩が沈殿として生成したと考えられていた。
しかし、その後の研究により、この沈殿は実際にはジクロフェナクの遊離酸であ
ることが示された。2価カチオンは溶液状態にとどまっていた。この2価カチオ
ンの存在が、NSAI剤の溶解度を低減させる作用を果たし、それにより所望の放出
の遅れを引き起こす。或いは、この沈殿は2価カチオンとNSAI剤との塩であるか
、塩形態と遊離酸形態との混合物であってもよい。
NSAI剤の残りの部分(もしあれば)は、溶液状態(溶質)であり、これは典型
的には、例えばジクロフェナクナトリウムまたはジクロフェナクマグネシウムの
ような塩の形態である。
本発明の薬剤組成物中に存在するNSAI剤の合計量は、目的とする所定の症状の
治療に有効な量である。一般に、その濃度は組成物の約0.001〜5.0重量%であろ
う。好ましくは、薬剤の濃度は組成物の約0.005〜3.0重量%であり、より好まし
くは組成物の約0.1〜1.0重量%である。これと同じ範囲の薬剤濃度が、炎症の治
療に加えて、上述したような広範囲の症状の治療にも適当であると考えられる。
水性媒質のpHは4.0〜6.7の範囲内に設定する。重要な点として、このpH範
囲は眼のpHより低い。こうすると、この組成物を眼に局所投与した時にpHの
上昇が起こり、それによりNSAI剤の溶解度平衡が変化し、沈殿の溶解を生ずる。
投与後の最初の数分間は遅い溶解が望ましいので、4.0〜6.5といった低めのpH
の使用が好ましい。
最も好ましい組成物は遊離酸形態の固体のジクロフェナクを含有し、2価カチ
オンの全部ならびに残りのジクロフェナクを溶液状態で含有する。2価カチオン
は好ましくはカルシウムまたはマグネシウムである。この組成物の利点の1つは
、眼内の滞留時間が十分でありながらpH7.0以上で完全に(100%)再溶解可能
であるという点である。これは、組成物を眼に入れた時に、ジクロフェナクの全
量が回収され、生体利用可能になることを意味する。
本発明で使用する水性媒質は、生理学的または眼科学的に有害な成分を含んで
いない水から作られる。典型的には、精製水または脱イオン水が使われる。pH
は、任意の生理学的または眼科学的に許容されるpH調整用の酸、塩基または緩
衝剤を添加することにより調整される。酸の例としては、酢酸、ホウ酸、クエン
酸、乳酸、リン酸、塩酸等が挙げられ、塩基の例としては、水酸化ナトリウム、
リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、
乳酸ナトリウム、トロメタミン、THAM(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)
等が挙げられる。塩および緩衝剤としては、クエン酸/デキストロース、重炭酸
ナトリウム、塩化アンモニウム、および前述の酸と塩基との混合物等が挙げられ
る。
本発明の組成物の浸透圧(π)は、約10ミリオスモル(mOsM)から約400mOsMま
でとすることが好ましい。必要であれば、生理学的および眼科学的に許容される
塩または賦形剤を適量使用することにより浸透圧を調整することができる。必要
な場合には、塩化ナトリウムが生理学的液体に近似させるのに好適であり、組成
物の全重量に基づいて約0.01〜1重量%、好ましくは約0.05〜0.45重量%の範囲
の塩化ナトリウムの量が典型的には使用される。上記範囲内の浸透圧を得るのに
、塩化ナトリウムに加えてまたは代えて、カリウム、アンモニウム等のカチオン
と、塩素、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、重炭酸、硫酸、チオ硫
酸、重硫酸、重硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどのアニオンとから構成さ
れた当量の1種もしくは2種以上の塩を使用することもできる。マンニトール、
デキストロース、グルコースなどの糖類または他のポリオールを添加して浸透圧
を調整してもよい。
本発明の組成物は、懸濁剤として、水溶性ポリマーまたは水不溶性ポリマーを
含有していてもよい。このような水溶性ポリマーの例は、デキストラン、ポリエ
チレングリコール類、ポリビニルピロリドン、多糖類ゲル、ゲルライト(Gelrit
ならびに他の高分子粘滑剤(demulcents)である。水不溶性ポリマーは好ましくは
架橋カルボキシ−ビニルポリマー類である。
本発明の1好適態様は、薬剤を時間をかけて、即ち1時間またはそれ以上かけ
て放出する、水不溶性で水膨潤性のポリマーを含有する、ゲル剤または液状点眼
剤(点眼液)のいずれかとしての眼科用組成物を提供する。好ましくは、このポ
リマーは、組成物の全重量に基づいて約0.1〜6.5重量%、より好ましくは約0.5
〜1.3重量%の量で含有させる。このようなポリマー担体としては、平均乾燥粒
径が典型的には等積球径(equivalent spherical diameter)で約50μm以下、よ
り好ましくは等積球径で約20μm以下である、軽度に架橋させたカルボキシ含有
ポリマー[ポリカーボフィル(polycarbophyl)(ノベオン<Noveon>AA-1)または
リマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等といったカルボキシ含有モ
ノエチレン性不飽和モノマーと、ジビニルグリコール、ジビニルベンゼン、2,5-
ジメチル-1,5-ヘキサジエンおよびポリアルケニルポリエーテル化合物をはじめ
とする2官能性架橋剤のような適当な架橋剤とから形成することができる。この
カルボキシ含有ポリマーの主鎖は、ホモポリマーでも、2種以上のモノマー種か
らなるコポリマーでもよい。2種以上のモノマーを使用する場合には、アクリル
酸エステルおよびメタクリル酸エステル(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチ
ル等)、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等といったカルボキシ非含有モノマ
ーも使用することができる。このようなカルボキシ非含有コモノマーは、存在す
るモノマーの合計重量に基づいて40wt%以下、より好ましくは0〜20wt%の量で
存在させることが好ましい。架橋剤の使用量は、好ましくは存在するモノマーの
全重量に基づいて約0.01〜5%であり、より好ましくは0.1〜1.0%である。本発
明で使用するのに適したカルボキシ含有ポリマーとその製造方法は、Davisらへ
の米国特許第5,192,535号に記載されており、この米国特許をここに援用する。
本発明の組成物中に使用するのに適したカルボキシ含有ポリマー系は、ポリカ
あり、これは制御された速度で薬剤を放出する持効性局所眼科用薬剤供給系であ
る。
本発明の眼科用組成物は、選択した投与経路に適合した粘度を有する。点眼剤
については、約30,000cpsまでの粘度が有用である。リボン形態で眼に投与する
のに有利な粘度範囲は約30,000〜100,000cpsである。粘度は当業者には既知の多
くの方法により調節することができる。
1態様において、不溶性の軽度に架橋させたポリマー粒子の量、pH、および
浸透圧を、相互に、およびポリマーの架橋度と相関させて、25番スピンドルと13
R少試料アダプターとを取り付けたブルックフィールドディジタルLVT粘度計を1
2rpmで用いて室温(約25℃)で測定した時に、粘度が約500〜100,000cps、好ま
しくは約1,000〜30,000cpsまたは約1,000〜10,000cpsの範囲内である組成物を得
ることができる。或いは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような水溶性
ポリマーを使用した場合には、粘度は典型的には約10〜400cps、より典型的には
約10〜200cpsまたは約10〜25cpsであろう。
本発明の眼科用組成物は、眼に投与する前のその組成物の粘度と同じか、実質
的に同じである粘度を眼内で保持するように処方することができる。或いは、本
発明の眼科用組成物は、涙液と接触するとゲル化が増大するように処方すること
ゲル化増大により、懸濁した薬剤粒子の捕捉が起こり、眼内における組成物の滞
留時間が長くなる。薬剤の溶解度は涙液中ではより高いので、懸濁粒子が時間と
ともに溶解するにつれて薬剤が徐々に放出される。これらの全ての結果として、
患者の快適さが増し、薬剤が眼組織と接触している時間が長くなるので、薬剤吸
収の程度と眼内における処方組成物の作用の持続時間が増大する。
点眼液からから生ずる粘稠なゲルは、典型的には約2〜12時間、例えば、約3
〜6時間の範囲内の眼内の滞留時間を示す。このような薬剤供給系に含まれる薬
剤は、薬剤自体およびその物理的形態、系の薬剤含有量の程度およびpH、なら
びに使用した場合には薬剤供給用佐薬(例えば、眼表面と適合性のあるイオン交
換樹脂を存在させることもできる)の種類、といった要因に依存した速度でゲル
から放出されよう。好ましくは、この眼科用組成物は、約10-8〜10-4M、より好
ましくは10-7〜10-5Mの範囲内のNSAI剤の持続した濃度を、水性または治療した
眼組織中に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも3時間にわたって与える。
本発明の組成物は、通常は界面活性剤を含有しており、所望により追加の薬剤
、緩衝剤、酸化防止剤、張力調整剤、保存剤、増粘剤もしくは粘度調整剤等を包
含するアジュバント(佐薬)を含有していてもよい。この処方組成物中の添加剤
は、望ましくは、塩化ナトリウム、EDTA(エデト酸二ナトリウム)、ホスホン酸
、BAK(塩化ベンザルコニウム)、過ホウ酸塩、ソルビン酸、メチルパラベン、プ
ロピルパラベン、および/またはクロロヘキシジンを含んでいてもよい。BAKは
本発明の眼科用組成物においてジクロフェナクと予想外にも適合性があることが
見出されたことに注目すべきである。その理由は完全には明らかではなく、また
何らかの理論に拘束されることを望むものでもないが、BAKが系からのジクロフ
ェナクを複合化するのを2価カチオンの存在が防止するものと考えられる。
本発明の2価カチオン−非ステロイド系抗炎症剤含有眼科用組成物において好
ましい保存剤は、約0.01〜0.5wt%、より好ましくは0.03〜0.3wt%の量の過ホウ
酸ナトリウムである。
これに関して、出願人は、ポリホスホン酸ペルオキシ安定剤とEDTAの両者の存
在により過ホウ酸塩を効果的に安定化できることも発見した。この発見は、EDTA
の存在がポリホスホン酸安定剤の複合化作用を妨害することが予測されうるだけ
に予想外であった。さらに、EDTAの存在は意外にも本組成物の安定性を向上させ
る。この3成分保存剤系は、塩類溶液、眼用滑剤、薬用組成物等を包含する、任
意の水性眼科用組成物に適用でき、非ステロイド系抗炎症剤との併用に限定され
るものではない。この保存剤系は、該組成物の全重量に基づいて、(1)約0.01〜0
.5wt%、好ましくは0.03〜0.3wt%の過ホウ酸塩、(2)約0.001〜0.06wt%、好ま
しくは約0.003〜0.3wt%のポリホスホン酸ペルオキシ安定剤、および(3)約0.01
〜0.1wt%のEDTAを含む。この保存剤系はさらに0.05〜0.2部のBAKを含有してい
てもよい。過ホウ酸塩は、好ましくは過ホウ酸ナトリウムである。
「ポリホスホン酸ペルオキシ安定剤」とは、少なくとも2つの−PO3H2部分を
含有し、ペルオキシ化合物を安定化することができる、任意の化合物またはその
薬理学的に許容される塩を意味する。このような化合物は一般に従来技術におい
て周知である。好ましくは、ポリホスホン酸ペルオキシ安定剤は次の一般式Iま
たはIIで示される化合物またはその薬理学的に許容される塩である: 式中、xは0〜3の整数であり、k、m、n、o、およびpはそれぞれ別個に
1〜4の整数である。好ましくはxは2であり、k、m、n、o、およびpはそ
れぞれ1または2である。
式中、q、r、s、およびtはそれぞれ別個に0〜4の整数である。好ましく
はq、r、s、およびtは0または1であり、最も好ましくは全て0である。
一般式IおよびIIで示される多くの化合物がモンサント社よりDEQUESTなる商
品名で販売されている。好ましい化合物はジエチレントリアミンペンタ(メチレ
ン−ホスホン酸)であり、この化合物は一般式Iに対応し、DEQUEST 2060として
市販されている。
本発明の保存剤含有眼科用組成物に使用する水は普通には滅菌水である。保存
剤含有眼科用組成物は、既に説明した成分を包含する追加の成分を含有すること
ができる。例えば、塩化ナトリウムを塩類溶液の一部として存在させることがで
き、ポリカーボフィルのようなカルボキシ含有ポリマーを安定な保存剤含有懸濁
液を形成するために存在させることができる、等々。後者の懸濁液状組成物に関
しては、好ましい形態は、該ポリマーおよび過ホウ酸/ポリホスホン酸ペルオキ
シ安定剤/EDTA保存剤系に加えて、さらにマグネシウムイオン(Mg++)を含有す
る。マグネシウムの量は特に制限されないが、典型的には約0.005〜0.5wt%、好
ましくは0.02〜0.2wt%の範囲である(ポリマーの量は上述したのと同様であ
る)。かかる組成物は、十分に保存でき、また貯蔵中に安定な粘度を示す。
或いは、薬学的有効成分を薬用組成物の1成分として存在させてもよい。これ
に関して、「薬学的有効成分」とは、NSAI剤より広義であり、眼の治療のために
使用できるか、または患者の病気もしくは症状の治療において眼を経て投与する
ことができる薬学的有用性を持つ任意の薬剤を包含する。
上記の保存剤系は、コンタクトレンズ洗浄用の塩類溶液、洗眼液、眼潤滑用お
よびもしくは湿潤用組成物、ならびに薬用組成物といった多様な水性眼科用組成
物中に使用することができる。本発明の保存剤系は好ましくは上述した2価カチ
オン含有眼科用組成物に組合わせて使用する。
本発明の組成物は、既知の材料から、当業者により公知の手法を適用して過度
の実験をせずに調製することができる。一般に、本組成物は、NSAI剤、2価カチ
オン供給源、任意成分のポリマー、および水を混合することにより形成される。
1態様において、必要であればpHまたは温度を調整しながら、2価カチオンを
最初に水性溶液中に完全に溶解させる。2価カチオンの供給源は典型的には塩の
形態であるが、任意の水溶性形態が許容される。好ましい2価カチオン供給源は
、CaCl2、MgCl2およびMgSO4といった2価金属塩である。次にNSAI剤を、典型的
には塩の形態(これは必須ではないが)で添加すると、NSAI剤の沈殿を生ずる。
一般に、この沈殿は溶液を調整せずにすぐに起こる。しかし、沈殿生成を助ける
か増進させるために、種晶添加などの沈殿生成の援助を、単独で、またはpH調
整剤に加えて、使用してもよい。
NSAI剤の沈殿後、この水性組成物にポリマー(使用するなら)を常法により添
加することができる。得られた組成物を滅菌し、次いで緩衝剤、界面活性剤等の
残りの成分をこれに添加する。沈殿が生成した後は加熱滅菌を行うことは好まし
くない。沈殿の再溶解および再結晶が起こることがあり、沈殿に悪影響(例、結
晶寸法の増大)を与えることがあるからである。或いは、沈殿を含有する溶液を
、任意に緩衝剤、界面活性剤、保存剤および/または他の成分を含有する滅菌し
た水性ポリマー分散液と混合することもできる。
別の態様では、2価カチオン供給源と任意に分散ポリマーとを含有する溶液に
NSAI剤を添加して、沈殿を含有する組成物を形成する。この溶液は予め滅菌して
おくことができ、好ましくはNSAI剤(および場合により水の最終部分)以外の全
成分をNSAI剤添加の時点で含有している。
カルボキシ含有ポリマーを組成物に添加する予定がある場合は、遊離2価カチ
オンの添加量を、化学量論量を著しくは超えないように調節すべきである。具体
的には、大過剰の遊離カルシウム、マグネシウム等の2価カチオンは、ポリマー
と反応してこれと複合化することがあり、それにより懸濁液が崩壊して、NSAI剤
の放出を妨げる。或いは、過剰の2価カチオン(例、カルシウム、マグネシウム
等)を全てキレート化するために、EDTAのようなキレート剤を組成物中に存在さ
せるべきである。このようなキレート剤は、所望により分散ポリマーを含有する
溶液中に存在させることができる。キレート剤の量は、NSAI剤と2価カチオン供
給源の量に部分的に依存し、上記の崩壊を避けるのに十分な量だけが必要である
。
上述した方法が本発明の眼科用組成物を作製するのに適しているが、これが唯
一の方法ではない。本発明の組成物を作製するのに他の方法も利用できる。
本発明に係る眼科用組成物は、当業者が熟知している手法に従って局所投与す
ることができる。完成した処方組成物は、光への露出から保護するために不透明
または褐色の容器に入れて、不活性雰囲気下に使用時まで保管することが好まし
い。本発明の組成物は、保存剤を含有しない1回用の再密閉できない容器に封入
することができる。これは、1回量の薬剤を眼に点眼またはリボン形態で供給す
ることができ、使用後に容器は廃棄される。このような容器を用いると、特に水
銀系保存剤を含有する眼科用薬剤で起こることが認められてきたような、保存剤
が関係する角膜上皮の刺激や過敏の可能性が排除される。所望により、多数回用
の容器を使用することもできる。これは、特に本発明の組成物では比較的低い粘
度を得ることができるので、点眼により一定した正確な用量の薬剤を必要なだけ
一日に何回も眼に投与できるすることができるためである。
下記の制限を意図しない実施例は本発明の或る種の特徴を例示するのに役立つ
ものである。実施例1〜5
600mLのビーカー内の精製水100gにポリカーボフィル2.3gまたはカーボポ
ーを調製する。次いで、エデト酸二ナトリウム0.2gを添加し、5分間混合した
後、塩化ナトリウム1gを添加し、やはり5分間混合する。別の50mLのビーカー
内で、精製水15g中に種々の量のポロキサマー(poloxamer)407を溶解する。この
溶液を次いで、上記ポリカーボフィルまたはカーボポール分散液に加え、5分間
混合する。得られた分散液のpHを2N水酸化ナトリウムを用いて4に調整した
後、これを121℃で20分間オートクレーブ処理して滅菌する。別の100mLのビーカ
ー内で、精製水40g中に種々の量のジクロフェナクナトリウム、マンニトール2
g、および各種の量のCaCl2二水和物を混合して薬剤溶液を調製する。得られた
懸濁液を次いで、上記ポリカーボフィルまたはカーボポール分散液に加え、15分
間混合する。この処方組成物を、そのpHを2N水酸化ナトリウムを用いて6.0
に調整することにより中和する。それによりゲル化を生ずる。最後に、精製水を
加えてこの溶液の重量を200gにする。
実施例6〜9
600mLのビーカー内の精製水100gにポリカーボフィル2.3gを添加し、頭頂攪
拌機で30分間混合することにより水和ポリカーボフィル(ノベオンAA-1)を調製
する。次いで、エデト酸二ナトリウム0.2gを添加し、5分間混合した後、塩化
ナトリウム1gを添加し、5分間混合する。別の50mLのビーカー内で、精製水15
g中に種々の量のポロキサマー407(市販界面活性剤)を溶解する。この溶液を次
いで、上記ポリカーボフィル分散液に加え、5分間混合する。得られた分散液の
pHを2N水酸化ナトリウムを用いて4に調整した後、これを121℃で20分間オ
ートクレーブ処理して滅菌する。別の100mLのビーカー内で、精製水40g中に種
々の量のジクロフェナクナトリウム、マンニトール2g、および各種の量の硫酸
マグネシウム七水和物を混合して薬剤溶液を調製する。得られた懸濁液を次いで
、上記ポリカーボフィル分散液に加え、15分間混合する。この処方組成物を、そ
のpHを2N水酸化ナトリウムを用いて6.0に調整することにより中和する。そ
れによりゲル化を生ずる。最後に、精製水を加えてこの溶液の重量を200gにす
る。実施例5〜8の各成分の量を表2に列挙する。 実施例10〜13
600mLのビーカー内の精製水100gにポリカーボフィル1.6gを添加し、頭頂攪
拌機で30分間混合することにより水和ポリカーボフィル(ノベオンAA-1)を調製
する。次いで、エデト酸二ナトリウム0.2gを添加し、5分間混合した後、塩化
ナトリウム1gを添加し、5分間混合する。別の50mLのビーカー内で、精製水20
g中に塩化ベンザルコニウム0.02gを溶解する。この溶液を次いで、上記ポリカ
ーボフィル分散液に加え、5分間混合する。別の50mLのビーカー内で、精製水15
g中に種々の量のポロキサマー407を溶解する。この溶液を次いで、上記ポリカ
ーボフィル分散液に加え、5分間混合する。得られた分散液のpHを2N水酸化
ナトリウムを用いて4に調整した後、これを121℃で20分間オートクレーブ処理
して滅菌する。別の100mLのビーカー内で、精製水40g中に種々の量のジクロフ
ェナクナトリウム、ソルビトール3.0g、グリセリン0.4gおよび各種の量の塩化
カルシウム二水和物を混合して薬剤溶液を調製する。得られた懸濁液を次いで、
上記ポリカーボフィル分散液に加え、15分間混合する。この処方組成物を、その
pHを2N水酸化ナトリウムを用いて6.0に調整することにより中和する。それ
によりゲル化を生ずる。最後に、精製水を加えてこの溶液の重量を200gにする
。実施例9〜12の各成分の量を表3に列挙する。 実施例14〜17
600mLのビーカー内の精製水100gにポリカーボフィル1.6gを添加し、頭頂攪
拌機で30分間混合することにより水和ポリカーボフィル(ノベオンAA-1)を調製
する。次いで、エデト酸二ナトリウム0.2gを添加し、5分間混合した後、塩化
ナトリウム1gを添加し、5分間混合する。別の50mLのビーカー内で、精製水20
g中に塩化ベンザルコニウム0.02gを溶解する。この溶液を次いで、上記ポリカ
ーボフィル分散液に加え、5分間混合する。別の50mLのビーカー内で、精製水15
g中に種々の量のポロキサマー407を溶解する。この溶液を次いで、上記ポリカ
ーボフィル分散液に加え、5分間混合する。得られた分散液のpHを2N水酸化
ナトリウムを用いて4に調整した後、これを121℃で20分間オートクレーブ処理
して滅菌する。別の100mLのビーカー内で、精製水40g中に種々の量のジクロフ
ェナクナトリウム、ソルビトール3.0g、グリセリン0.4gおよび各種の量の塩化
カルシウム二水和物を混合して薬剤溶液を調製する。得られた懸濁液を次いで、
上記ポリカーボフィル分散液に加え、15分間混合する。この処方組成物を、その
pHを2N水酸化ナトリウムを用いて6.0に調整することにより中和す
る。それによりゲル化を生ずる。最後に、精製水を加えてこの溶液の重量を200
gにする。実施例13〜16の各成分の量を表4に列挙する。
実施例18〜19
600mLのビーカー内の精製水100gにポリカーボフィル1.6gを添加し、頭頂攪
拌機で30分間混合することにより水和ポリカーボフィル(ノベオンAA-1)を調製
する。次いで、エデト酸二ナトリウム0.2gを添加し、5分間混合した後、塩化
ナトリウム1gを添加し、5分間混合する。別の50mLのビーカー内で、精製水20
g中に塩化ベンザルコニウム0.02gを溶解する。この溶液を次いで、上記ポリカ
ーボフィル分散液に加え、5分間混合する。別の50mLのビーカー内で、精製水15
g中に種々の量のポロキサマー407を溶解する。この溶液を次いで、上記ポリカ
ーボフィル分散液に加え、5分間混合する。得られた分散液のpHを2N水酸化
ナトリウムを用いて4に調整した後、これを121℃で20分間オートクレーブ処理
して滅菌する。精製水40gを入れた別の100mLのビーカー内にて、スプロフェン
またはフルルビプロフェンナトリウム、ソルビトール3.0g、グリセリン0.4gお
よび該薬剤の沈殿を生ずるのに十分な量の硫酸マグネシウム七水和物ま
たは塩化カルシウム二水和物のいずれかを混合して薬剤溶液を調製する。得られ
た懸濁液を次いで、上記ポリカーボフィル分散液に加え、15分間混合する。この
処方組成物を、そのpHを2N水酸化ナトリウムを用いて6.0に調整することに
より中和する。それによりゲル化を生ずる。最後に、精製水を加えてこの溶液の
重量を200gにする。
実施例20
水和したヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、600mLのビーカー内
の精製水100gにHPMC 2.0gを添加し、頭頂攪拌機で4時間混合することにより
調製する。次いで、塩化ナトリウム1g、二塩基性リン酸ナトリウム0.242gお
よび一塩基性リン酸ナトリウム0.055gを添加し、5分間混合する。別の50mLの
ビーカー内で、精製水20g中に塩化ベンザルコニウム0.02gを溶解する。この溶
液を次いで、上記HPMC分散液に加え、5分間混合する。別の50mLのビーカー内で
、精製水15g中に種々の量のポロキサマー407を溶解する。この溶液を次いで、
上記HPMC分散液に加え、5分間混合する。これを121℃で20分間オートクレーブ
処理して滅菌する。精製水40gを入れた別の100mLのビーカー内で、ジクロフェ
ナク、スプロフェンまたはフルルビプロフェンナトリウムのいずれかを、ソルビ
トール3.0g、グリセリン0.4gおよび該薬剤の沈殿を生ずるのに十分な量の硫酸
マグネシウム七水和物または塩化カルシウム二水和物のいずれかと混合して薬剤
溶液を調製する。得られた懸濁液を次いで上記HPMC分散液に加え、15分間混合す
る。この処方組成物を、そのpHを2N水酸化ナトリウムを用いて6.0に調整す
ることにより中和する。最後に、精製水を加えてこの溶液の重量を200gにする
。
実施例21
本発明の予想外の効果を実証するために、2種類の眼科用組成物を調製する。
これらは、2価カチオンの有無に関して互いに本質的に異なる。本発明に従って
作製した組成物Aには2価カチオン(Mg++)が存在している。比較用の組成物B
は2価カチオンを含有していないが、1価カチオン(Na+)を含有し、1994年5
月24日出願の上述した係属中の米国出願連続番号08/248,500号に記載されている
例示組成物と同様のものである。これらの組成物は下記の表に列挙した成分から
調製したものである。
各組成物を試験して、その薬剤放出速度を経時的に求める。試料をセル内に収
容した緩衝液の中に入れる。セルの大きさは0.6mLであり、緩衝液はNaCl 0.9%
と10mMのリン酸塩を含有するpH7.4のリン酸緩衝食塩水液である。その後、眼内
の自然の液体回転のモデルとなるように、追加の緩衝液を適当な流量、ここでは
6mL/hr、で蠕動ポンプにより定常的にセルを通過させる。温度は約37℃(体温
)に保持する。溶離した緩衝液中の薬剤濃度を分光法により経時的に測定して、
薬剤の放出速度曲線を作製する。顕著な結果を図1に示す。
本発明に従った組成物Aについて示した放出速度曲線は初期放出に遅れを示し
ている。これに対して、組成物Bについて示した放出速度曲線は初期放出中によ
り高いピークを示す。従って、本発明に係る組成物は、重要な眼との初期接触期
間中に放出の遅れという改善を与え、それにより刺痛の傾向が低減する。実施例22
次の表に記載した成分を組合わせて、本発明の別の態様を得る。 ジクロフェナクナトリウム以外の成分は、ポリマー懸濁液を形成するように混
合しておくことが好ましい。その後、ジクロフェナクナトリウムを添加すると、
ジクロフェナク遊離酸の沈殿が起こる。その後、最後の部分の水を加えて組成物
を完成させる。
本発明の上記説明は、主に本発明の好適態様とその実施に向けられている。こ
こに説明した技術思想の実際の実施にあたっては、以下の請求の範囲により規定
される本発明の精神および範囲から逸脱せずに、さらなる変化および変更を容易
になすことができ、また本発明の実施により学習しうることは当業者には自明で
あろう。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61K 47/02 A61K 47/02
47/24 47/24
47/32 47/32
A61P 27/02 A61P 27/02
29/00 29/00
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ
,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,
NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L
S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ
,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL
,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,
BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,E
E,ES,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU
,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,V
N,YU,ZW
(72)発明者 メマーザデー,エリック・ビー
アメリカ合衆国、カリフォルニア州94070、
サン・カルロス、チェストナット・ストリ
ート574、ナンバー6
(72)発明者 ロイ,サミール
アメリカ合衆国、カリフォルニア州94583、
サン・ラモン、ノースランド・プレース
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