JP2001516204A - 他の乳タンパクの存在下での乳タンパクの選択的分解方法 - Google Patents
他の乳タンパクの存在下での乳タンパクの選択的分解方法Info
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Abstract
(57)【要約】
本願は、カゼイン/カゼイネートおよび少なくとも1つのさらなるタンパク成分をカゼイン/カゼイネートの加水分解のための条件下でタンパク分解酵素に接触させる、カゼイン/カゼイネート以外の少なくとも1つのさらなるタンパク成分の存在下でのカゼイン/カゼイネートの選択的加水分解方法であって、カゼイン/カゼイネートが、そして好ましくは少なくとも1つのさらなるタンパク成分もまた、実質的に溶解した状態にあること、およびタンパク分解酵素が、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方でさらなるタンパク成分が実質的にインタクトなままであるように、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロテイナーゼであることを特徴とする方法に関する。この方法は、特に、加水分解されたカゼイン調製物の調製のために、あるいはカゼイン/カゼイネートが除かれた乳タンパク調製物、特にホエータンパク調製物の調製のために用いることができる。本発明は、さらに、乳タンパクに対するアレルギー反応および糖尿病に関して有益な特性を有する、かくして得られる調製物に関する。
Description
【発明の詳細な説明】
他の乳タンパクの存在下での乳タンパクの選択的分解方法
本発明は、乳タンパクの選択的分解方法に関し、特にカゼイン/カゼイネート
以外の少なくとも1つのさらなるタンパクの存在下でのカゼインおよび/または
カゼイン/カゼイネートの選択的加水分解方法に関する。
本発明は、さらに具体的には、さらなるタンパク成分が、カゼイン以外の乳タ
ンパク(成分)であり、特にホエータンパク(成分)であるような方法、および
/またはカゼイン/カゼイネートが、そして好ましくは少なくとも1つのさらな
るタンパク成分もまた、基本的に溶液中、特に基本的に水性溶液中にあるような
方法に関する。
本発明の方法にしたがえば、カゼイン/カゼイネートは、少なくとも1つのさ
らなるタンパク成分の存在下で特異的に分解され、このさらなるタンパク成分は
このプロセスにおいて基本的にインタクト(無傷)のままである。これは、さら
なる分離工程において、基本的にインタクトのままである1または2以上のさら
なるタンパク成分から、カゼイン加水分解フラグメントが分離されることを可能
にする。
本発明は、ある種のブロテイナーゼが、他のタンパクの存在下で、特にホエー
タンパクのような他の乳タンパクの存在下でカゼインに関して非常に高い特異性
を示す、という驚くべき発見に基づいている。本発明は、さらに、カゼイン含有
タンパク調製物、特にカゼイン調製物または乳のような乳タンパクの(水性)溶
液の加水分解における、これらの特異的プロテイナーゼの使用に基づいている。
本発明の方法は、第一の態様においては、カゼイン以外の1または2以上の免
疫原性タンパク成分が除かれているカゼイン加水分解物の調製のために用いるこ
とができる。第二の態様においては、本発明は、乳、ホエーまたは乳もしくはホ
エータンパクの溶液のようなカゼイン含有乳タンパク調製物から出発する、実質
的にカゼイン/カゼイネートが除かれている乳タンパク調製物、特にホエータン
パク調製物の調製のために用いることができる。カゼインが除かれているこれら
のホエータンパク調製物は、同様に免疫学的観点から有益な特性を有する。
本発明を、これらの具体的な、制限的でない態様「A」および「B」(図6に
模式的に示す)を参照しながら、さらに説明する。両態様とも、少なくとも1つ
のさらなるタンパク様成分の存在下で選択的にカゼインを分解する工程、および
非分解タンパクから加水分解されたフラグメントを分離する工程を含むが、用い
る出発物質、望む生成物、ならびに意図される用途およびその生成物の必要な(
免疫学的)特性において異なる。これらは、以下において明らかとなる。
EP−A−0,250,501号には、以下の工程:
a) ホエータンパク出発物質からカゼインを除去し;
b) 少なくとも1つのプロテイナーゼを用いて(a)で得られたカゼインを含
有しないタンパク物質を加水分解し;
c) 20,000ダルトンを超えない「カットオフ」値を有する膜を用いて(b)
の加水分解物を限外ろ過すること;
および場合によりそのようにして得られたろ液をさらに加工するプロセスを含
むホエータンパク加水分解物の製造方法が記載されている。
工程(a)において、カゼインは、沈殿またはろ過のような物理的分離;また
は「カゼインに対して高い活性を有するが、ネイティブおよび熱変性ホエータン
パクの両方に対しては活性を持たない、または弱い活性しか有さない」と言われ
ているバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の中性メタロプロテイナー
ゼ(Neutrase(登録商標)、Novo Industrie A/S)の使用による酵素的分離、のい
ずれかによって、ホエータンパク出発物質から除去される。
酵素的加水分解は、4〜9のpH、好ましくはpH7.5で、30〜60℃の
温度、好ましくは50℃で、「完了」まで(これは、総タンパクに基づいて約4
%の加水分解度(DH)であると言われている)、行われる。次に、カゼインフ
ラグメントが、遠心分離、または(ホエータンパク出発物質が熱処理されていな
い場合には)20,000を超えない「カットオフ」値を有する膜を用いる限外
ろ過の手段により除去される。
異なるカゼインの分子量(19.5〜25kDa)は、ネイティブなホエータ
ンパク、α−ラクトアルブミン(14.2kDa)およびβ−ラクトアルブミン
(18.2kDa(モノマー))の分子量と同じ範囲内にあるので、20kDa膜
の使用によりホエータンパクからの加水分解カゼインの分離がもたらされるかは
疑わしい。
このようにして得られた「カゼインを含有しない」ホエータンパクを、次に、
アルカラーゼ(Alkarase(登録商標))2.4Lおよびローザイム(Rhozyme)P4
1(登録商標)のような酵素を用いてさらに加水分解し、次いでろ過する。この
開示によれば、ホエータンパクを加水分解する前に選択的にカゼインを除去する
ことにより、最終的なホエータンパク加水分解物は、苦みが減少したものとなる
。
しかし、上記の工程a)の後に得られるカゼインを破壊したホエータンパク調
製物は、中間生成物にすぎず、最終生成物ではない。したがって、この中間生成
物のアレルゲン性特性の免疫学的決定は与えられていない。EP−A−0,25
0,501号の方法においては、得られたタンパクがさらに加水分解され、その
後、あらゆる残存する抗原性フラグメントは限外ろ過によって除去されるので、
これは本質的でもない。しかし、工程a)の低度(4%)の加水分解から、少な
くともいくらかの抗原性カゼインフラグメントが上記の中間生成物中に存在する
であろうことが予想される。
EP−A−0,384,303号には、アスペルギルス(Aspergillus sp.)か
らのプロテイナーゼ調製物および細菌のアミノペプチダーゼの組み合わせを用い
る、タンパク、特に乳タンパクおよびホエータンパクの加水分解方法が記載され
ている。この組み合わせの使用は、高い加水分解度の苦みの少ない最終生成物を
提供する。この組み合わせを用いて、「苦みポイント(bitter point)」は4.4
%のDHに達し、一方、プロテイナーゼのみを用いた場合には、苦みポイントは
1.2%に達すると言われている。
EP−A−0,610,411号には、カゼインまたはカゼイネートを水性媒体
中に懸濁し、以下の3つの群:
1)1または2以上のバチルス(Bacillus)の中性エンドプロテイナーゼ(例えば
ニュートラーゼ(Neutrase;登録商標));
2)1または2以上のBacillusの塩基性エンドプロテイナーゼ(例えばアルカラ
ーゼ(登録商標)、エスペラーゼ(Esperase;登録商標)およびサビナーゼ(Sav
inase;登録商標);および
3)Aspergilusのエンドプロテイナーゼ(例えばノボザイム(Novozym;登録商標
)515)
からのプロテイナーゼの組み合わせを用いて15〜35%のDH、好ましくは2
2〜28%のDHまで加水分解する、カゼイン加水分解物を得る方法が開示され
ている。
この文献によれば、プロテイナーゼのこのような組み合わせの使用、および(
EP−A−0,250,501号に開示された4.4%ならびに例えばEP−A−
0,384,303号と比較して)15〜35%のDHへの加水分解は、改良され
たカゼイン加水分解物を提供する。それにもかかわらず、このようにして得られ
た加水分解物の抗原性特性の免疫学的測定は、まったく開示されていない。また
、使用される酵素はBacillus subtilisから得られるが、これは食品等級の微生
物ではない。
EP−A−0,631,731号には、4〜10%のDHへのホエータンパクお
よびカゼインの混合物の酵素的加水分解による乳タンパクの部分的加水分解物の
製造方法が記載されている。80%以上の抗原性の低減が得られたが、実施例に
よれば、得られる加水分解物は、ELISAにより決定される、いくらかの残存
する抗原性を有する。
EP−A−0,421,309号には、ペプシン予備加水分解およびそれに続く
カチオン性セリンエンドプロテイナーゼのタイプ、エラスターゼ2の存在下での
トリプシン−キモトリプシン加水分解による、アレルギー原性物質を含まないホ
エータンパク加水分解物の調製方法が記載されている。
ダウエント(Dewent)・アブストラクトAN−96−471202およびAN−
94−337356(JP−08238059−AおよびJP−0626169
1−Aに対応する)には、菌類、特にムコール(Mucor)属およびクラドスポリ
ウム(Clados Dorium)属由来プロテイナーゼを用いてα−カゼインを選択的に分
解する、低アレルゲン性乳タンパク調製物の製造方法が開示されている。
ダウエント・アブストラクトAN−95−307065(JP−027203
844−Aに対応する)には、Bacillus subtilis由来のエンドタイププロテイ
ナーゼ、トリプシンおよびパパインの混合物を用いる乳ホエータンパクの溶液の
加水分解により得られる、良好な温度安定性およびELISAにおいて0.00
01までの残留抗原を有する乳化ホエータンパク加水分解物の調製方法が開示さ
れている。
EP−A−0,601,802号には、組成物中のタンパクをタンパク分解酵素
を用いて20〜60%の加水分解度を有するタンパク加水分解物に分解し、続い
てこのようにして得られた加水分解物を、好ましくは遠心分離または限外ろ過に
より、清澄化する、タンパク様組成物からのアレルゲン性化合物の除去方法が記
載されている。
このようにして得られた中間生成物中になお残存するマクロペプチド(表2に
よれば、これはELISAにより示されるβ−ラクトグロブリンをなお含有する
)を、次に、吸収樹脂を用いて除去する。タンパク分解酵素として、トリプシン
、パンクレアチン、またはBacillus licheniformis由来のアルカラーゼ(登録商
標)0.6Lのような微生物プロテイナーゼを用いることができる。
B.Kiefer-PartschらのAppl.Microbiol.Biotechnol.(1989)31:75-78には、ラク
トコッカス・ラクテイス種クレモリス(Lactococcus lactis sp.cremoris)の細
胞壁タンパク分解系からのX−プロリル−ジペプチジルアミノペプチダーゼの精
製が記載されている。この酵素は、金属非依存性の高度にβ−カゼイン特異的な
プロテイナーゼとして記載されている。L.lactis、ストレプトコッカス・サーモ
フィルス(Streptococcus thermophillus)由来の同様の酵素が参照される。し
かし、これらの酵素は、カゼイン加水分解物を製造するため、またはホエータン
パク混合物からカゼインを特異的に除去するためには用いられない。A.カゼイン以外の1または2以上のタンパク成分が除かれたカゼイン加水分解 物の調製
本発明のこの態様は、カゼイン以外の1または2以上の免疫原性タンパク成分
が除かれたカゼイン加水分解物の調製に関する。
この態様は、特に、ABBOSエピトープを含まないカゼイン加水分解物の調
製方法、およびそのようにして得られたABBOSエピトープを含まないカゼイ
ン加水分解物に関する。
ABBOSエピトープは、以下において、ABBOSペプチドに対する抗体と
反応するウシ血清アルブミン(BSA)の抗原性ABBOSペプチド/フラグメ
ントのその部分として理解されるべきものである。
ABBOSエピトープを含まないカゼイン加水分解物は、以下において、AB
BOSエピトープに対する抗体との結合を形成することができる(交差反応)ペ
プチドまたはペプチドフラグメントを含まないカゼイン/カゼイネート加水分解
物として理解されるべきものである。
牛乳由来のタンパクは、その抗原性特性のため、特に新生児/幼児において、
免疫学的反応を起こし得ることが知られている。これらの免疫学的反応は、例え
ば過敏症(牛乳タンパクアレルギー)として現われ得る。
近年、多大な注目を集めている牛乳由来タンパクに対する免疫学的反応の1つ
は、幼児におけるウシ血清アルブミン(のエピトープ)に対する反応であり、こ
れは、この免疫反応がI型糖尿病の発病において果たしている役割のためである
。
幼児においては、BSAの特異的領域(アミノ酸126〜144、いわゆるA
BBOSペプチド)に対する免疫グロブリンG(IgG)抗体が生成され得、こ
れが、ある種の条件下で、膵臓のβ細胞の表面のP69タンパク中の相同な構造
と交差反応性であることが示されている。これは、β細胞の破壊をもたらす自己
免疫反応を起こす可能性があり、結果としてインシュリン産生の障害をもたらし
得る。
これらの知見は、特に、ABBOSエピトープが、胃腸管中のタンパク分解酵
素のための可能性のある多数の攻撃/切断部位を含んでいても、消化管において
完全に分解されない、という事実に基づいている。初期の研究は、特に、以下の
結果を生み出した:
- 糖尿病と診断された幼児の血液中に、BSA、特にABBOSペプチドに対
する抗体が検出され得る;
- BSAの生理学的消化は、幼児においては、胃のpHが高いために、大人に
おけるよりも悪い効率で進行する;
その結果は、ABBOSペプチドのインタクトなエピトープを含有するBS
Aのフラグメントが消化の後にもなお存在する、ということである。幼児に
おけるように、粘膜バリアのいくらかの部分は、未だ完全に開発および/ま
たは協調されておらず、これらの大きいペプチドフラグメントは、腸壁を通
過して血流に達することができる。次いで、これらの外来性タンパクは、幼
児の免疫系を刺激し、ABBOSエピトープに対する可能性がある抗体を産
生させるであろう。
免疫学的反応をもたらし得る牛乳中の他のタンパクとしては、中でも、α−ラ
クトアルブミン(α−Lac)、β−ラクトグロブリン(β−Lg)、ウシ免疫グロ
ブリンG(IgG)およびカゼイン、ならびにそれらの抗原性フラグメントがあ
る。
したがって、従来技術においては、特に幼児フォーミュラ(調合乳)用の、食
品が開発されており、これらは、ある種の酵素により分解/加水分解され、乳タ
ンパクの抗原性特性の低減がもたらされた牛乳タンパクに基づいていた。同様に
、このような食品の調製のための乳タンパク加水分解物(「低アレルゲン性加水分
解物」)は、市販されている。
このような加水分解物は、(乾燥物質により決定した)タンパクに関して乳タン
パクの主要な成分(>80%)を形成するカゼインおよび/またはカゼイネート、
ならびに存在する他のすべてのタンパク(抗原性タンパクおよびそれらのエピト
ープを含む)の分解をもたらすタンパク分解酵素(プロテイナーゼ)による乳タ
ンパクの処理により得られる。
しかし、本出願人による研究は、市販の乳タンパク加水分解物が、一般に、特
に酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)のような特異的インビトロ免疫学的
アッセイにおいて、なお交差反応を与え、および/または抗原性特性を呈するこ
とを示した。例えば、これらの公知の加水分解物は、ABBOSペプチドとの交
差反応性を呈するBSAフラグメントを含有し、および/またはインタクトなA
BBOSエピトープを含有する。本出願人による研究は、ABBOS特異的抗体
を用いる免疫学的アッセイ技術の手段によりこれらのエピトープの存在を明らか
にした。
これらの交差反応性フラグメント/免疫原性成分は、理論的には、より高い程
度の乳タンパク加水分解物の加水分解により除去することができる。しかし、こ
れは、最終生成物中に、過剰に高いレベルの望ましくない「遊離」アミノ酸をも
たらし、それは、腸壁を通じて吸収されにくく、そのうえ、特にその濃度および
浸透性において、生成物の特性を損ない得る。公知の加水分解方法は、この点に
おいて適切に制御され得ない。
したがって、改良された免疫学的特性を有する乳タンパク調製物、特にカゼイ
ン/カゼイネート加水分解物を提供することは、本発明の第一の目的である。
許容可能な低レベルの遊離アミノ酸を有するような調製物を提供することは、
本発明のさらなる目的である。
特に、ABBOSペプチドの抗原性成分が実質的に存在しない/検出可能でな
いカゼイン/カゼイネート加水分解物を提供することは、本発明の1つの目的で
ある。
本発明のさらなる目的および利点は、以下の記載から明らかになる。
我々は、ラクトコッカス由来のある種のプロテイナーゼがカゼイン/カゼイネ
ートに対して非常に高い特異性を呈すること、すなわち、それらは乳タンパク中
のカゼイン/カゼイネートを非常に選択的に分解する一方、抗原性エピトープを
有する、存在する他のタンパク成分は実質的にインタクトのままであることを見
出した。
この驚くべき発見は、乳タンパクの先の加水分解の後、なお本質的にインタク
トな抗原性(ホエー)タンパクから、(比較的)小さいカゼイン加水分解生成物
を簡便な方式で分離し、抗原性ホエータンパクのような1または2以上の特異的
抗原性成分、特にABBOSペプチドのエピトープのようなBSAの抗原性成分
が実質的に除かれたカゼイン加水分解物を得ることを可能にする。
したがって、本発明は、第一の側面においては、80重量%を超える、好まし
くは90重量%を超えるカゼイン/カゼイネート、および少なくとも1つのさら
なる(乳)タンパク成分を含む乳タンパク調製物から出発する、乳タンパク調製
物を、カゼイン/カゼイネートの加水分解のための条件下でタンパク分解酵素に
接触させる、加水分解された乳タンパク調製物の調製方法であって、カゼイン/
カゼイネートが、そして好ましくは少なくとも1つのタンパク成分もまた、実質
的に溶解された状態にあること、およびタンパク分解酵素が、カゼイン/カゼイ
ネートが分解される一方、少なくとも1つの前記(乳)タンパク成分が実質的に
インタクトなままであるように、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロ
テイナーゼであること、を特徴とする方法に関する。
さらなる側面においては、本発明は、80重量%を超える、好ましくは90重
量%を超えるカゼイン/カゼイネート、および少なくとも1つの抗原性タンパク
成分を含む乳タンパク調製物から出発して、以下の工程:
a) カゼイン/カゼイネートが分解される一方、少なくとも1つの抗原性タン
パク成分が実質的にインタクトなままであるように、カゼイン/カゼイネ
ートが、そして好ましくは少なくとも1つのタンパク成分もが実質的に溶
解した状態で、前記乳タンパク調製物を、カゼイン/カゼイネートに対し
て特異的なプロテイナーゼに接触させる工程;
b) カゼイン加水分解フラグメントと、実質的にインタクトなままである少な
くとも1つの抗原性タンパク成分とを分離する工程
を含む、少なくとも1つの抗原性タンパク成分が除かれた乳タンパク加水分解物
の調製方法に関する。
特に、本発明は、BSA(の抗原性成分)、特にABBOSペプチド(のエピト
ープ)を含まない加水分解されたカゼイン調製物の調製方法に関する。
本発明は、さらに、本発明の方法にしたがって得られる乳タンパク加水分解物
、特に「ABBOSエピトープを含まない」加水分解物に関する。
本明細書および特許請求の範囲において、これに反する記述がない場合には、
タンパク含量は、総タンパクに基づいて、すなわち、特に、乾燥物質として測定
した、総タンパク含量に基づいた重量%により表現される。
本発明によれば、カゼイン/カゼイネートは、実質的に溶液、好ましくは水性
溶液の状態にある。少なくとも1つのさらなるタンパク成分、および好ましくは
存在する(本質的に)すべてのさらなるタンパク成分は、同様に、好ましくは溶
液、より好ましくは水性溶液の状態にある。「実質的に溶液の状態」という用語
は、乳業産業において習慣的に用いられるとおりに、すなわち、問題の成分が本
質的
にまったく溶解しているか、または、例えばミセルの懸濁液として、本質的にま
ったく溶解している状態にあることと理解されるべきである。
これは、偶然に、用いる媒体中でのカゼインの溶解度に応じて、出発物質の(
総溶液に基づいて)カゼイン/カゼイネート濃度に上限があることを意味する。
一般に、カゼイン濃度は、総組成物に基づいて20重量%未満であり、特に15
重量%未満である。
カゼイン特異的プロテイナーゼは、特に、1または2以上のホエータンパク、
α−Lac、β−Lg、BSAおよびIgGの存在下で選択的にカゼインを分解
するプロテイナーゼとして理解されるべきである。このようなプロテイナーゼの
選択性は、好ましくは一定の時間内に、酵素/基質の等しい比が与えられた場合
に、プロテイナーゼは、90%を超えるインタクトなカゼイン、および言及した
ホエータンパクの各々の5%未満を分解するようなものである。
しかし、特に分子量または分子サイズに基づいて、分離が起こり、加水分解の
後に得られるカゼインフラグメントから抗原性タンパクフラグメントが分離され
得る限りにおいて、本発明は、除去されるべき抗原性タンパクが、より低い程度
で(カゼイン/カゼイネートよりもはるかにゆっくりとではあるが)切断されて
(大きい)タンパクフラグメントを生じる可能性を除外するものではないことは
理解されるべきである。
本発明において用いられるプロテイナーゼ(プロテイナーゼともいう)は、好
ましくはラクトコッカス由来であり、より好ましくは「食品等級」のラクトコッ
カス由来であり、あるいはおそらくは他の好適な「食品等級」微生物由来である。
ラクトコッカスにおいては、特に、細胞壁の外側にプロテイナーゼが存在する。
好適なプロテイナーゼの非制限的な例(食品等級微生物由来であってもなくて
もよい)としては、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus l actis
subsp.cremoris)、Wg2株の細胞壁プロテイナーゼ、コラゲナーゼ(特
にクロストリジウム・ヒストリチカム(Clostridium histolyticum)由来のもの
)およびディスパーゼ(特に、バチルス・ポリミクサ(Bacillus polymyxa)由
来のもの)等、ならびに、望ましい基質特異性を有するのであれば、組換えDN
A技術により得られるそれらの変異体がある。
本発明における使用に好適な市販の酵素の例としては、ニュートラーゼ(Neut
rase(登録商標);Novo Industri)があるが、これはおそらく上述の酵素と比較
していくらか苦みのある、および/または選択性が低い生成物を与える。
当業者は、本開示に基づいて、および/またはカゼインおよび乳タンパクのさ
らなるタンパク成分に関して特異性/活性を決定するための簡便な試験の手段に
より、ネイティブ(天然)であっても組換え体であってもよい、他の好適なタン
パク分解酵素を見出すことができる。
これらの多数のプロテイナーゼおよびチーズ生産におけるそれらの用途が従来
技術において記載されていたが、カゼインに関するそれらの驚くべき基質特異性
は、以前には報告も利用もされていなかった。
プロテイナーゼは、(それ自体公知の方法により得られる、および/または市
販の)酵素調製物または酵素単離物、ならびに固定化形態を含む、任意の形態で
用いることができる。2以上のプロテイナーゼの混合物も、カゼイン/カゼイネ
ートに関する望ましい特異性が維持されている限りにおいて、同様に用いること
ができる。
その特異性のため、プロテイナーゼは、カゼイン中のタンパク結合を、特に切
断/加水分解する;しかし、最も広い意味において、本発明は、特定のタイプの
酵素反応に限定されない。
さらなる側面において、本発明は、80重量%を超える、好ましくは90重量
%を超えるカゼイン/カゼイネート、および少なくとも1つのさらなるタンパク
成分を含み、カゼイン/カゼイネートが、および好ましくは少なくとも1つのタ
ンパク成分もまた、実質的に溶解した状態、好ましくは水性溶液の状態である、
乳タンパク調製物の転換における上述の特異的プロテイナーゼの用途に関する。
本発明において用いられる乳タンパク調製物、特にカゼイン調製物またはカゼ
イン富化乳もしくは乳タンパク調製物は、市販されており、および/または、(
牛)乳または乳製品から出発してそれ自体公知の方法で入手することができる。
しかし、本発明は、特定の動物由来の乳または乳調製物に限定されない。例えば
、牛乳に加えて、ヤギ、ヒツジ、または他の任意の哺乳類由来の乳、またはそれ
らの混合物もまた、出発物質として用いることができる。
カゼイン/カゼイネート(>80重量%、好ましくは>90重量%)に加えて、
これらの調製物は、一般に、BSA、α−Lac、β−LgおよびIgGのよう
なさらなる乳タンパクを、20重量%未満、特に10重量%未満の量で含有する
。しかし、当業者には、適切な場合には、低カゼインレベルの、例えば40重量
%までの低さのカゼインを含有する、乳または他のタンパク調製物もまた、用い
ることができることは明らかであろう。しかし、これは、いくつかの適用におい
ては、出発物質に基づいて、カゼイン加水分解物の低い収率、したがって効率の
劣る方法をもたらし得る。
例えば、出発物質は、カゼインまたはカゼイン含有タンパク調製物と、大豆タ
ンパクまたは大豆タンパク調製物のような非乳タンパクとの混合物であることが
できる。大豆タンパクを、幼児フォーミュラを含む食品に、その食品のアレルギ
ー性特性を低減させるために、動物由来タンパクまたはタンパク生成物の代わり
に使用することができることが公知である。このような食品において、大豆タン
パクは、カゼイン加水分解物または他の乳タンパク加水分解物と一緒にすること
ができる。
このような食品は、本発明にしたがっても調製することができ、例えば本発明
にしたがって得られたカゼイン加水分解物を所望の量の大豆タンパクおよびそれ
自体公知のさらなる成分と混合することによって調製することができる。
あるいは、このような食品は、カゼインまたはカゼイン含有調製物(乳または
乳タンパク調製物等)および大豆タンパクの混合物を用意し、本明細書中で記載
する選択的プロテイナーゼを用いてその混合物中のカゼインをインサイチュで(
その場で)選択的に加水分解することによって調製することができる。必要であ
れば、次に、本明細書中で記載するような任意の大きいインタクトなタンパクを
、選択的に除去することができる。本発明のこの後者の態様においては、出発混
合物中のカゼイン濃度は一般に80%未満であることは、当業者には明らかであ
ろう。
したがって、さらなる態様において、本発明は、本明細書中に記載したような
、少なくとも1つの非乳タンパクまたはタンパク成分(例えば大豆タンパク)を
含有する混合物中のカゼインを選択的に加水分解して、少なくともその非乳タン
パ
クおよび加水分解されたカゼインフラグメントを含有するタンパク調製物を与え
る方法に関する。
出発調製物中のカゼイン濃度が80%未満であることができる本発明の別の態
様は、カゼインまたはカゼイン含有調製物と、例えば混合物の5〜50重量%、
好ましくは20〜40重量%の量の乳タンパクまたは乳タンパク調製物との混合
物を含む出発物質の使用を含む。ここでも、このような混合物中で、カゼインを
、本明細書中に記載した方法を用いてインサイチュで選択的に加水分解し、その
後、場合により望ましくないペプチドを除去することができる。
乳タンパク調製物の加水分解は、それ自体公知の方法で、20〜40℃の温度
、4〜16時間、および6〜8のpHのような、望ましい酵素的変換に好適な条
件下で、公知の装置および技術を用いて行う。プロセスにおいて、特異的プロテ
イナーゼの使用により、酵素的変換の改良された制御が付加的に提供され得る。
加水分解は、好適な程度まで、すなわち加水分解されたフラグメントが非分解
タンパク成分から分離されることを可能にする程度まで行い、これは、除去する
べき抗原性成分、用いるべき分離方法(特に用いるべき限外ろ過膜の分子量カッ
トオフ値)のような因子、および当業者には明らかな他の因子に依存する。
加水分解の程度は、好ましくは後続する限外ろ過工程が(ろ過速度、収率等に
関して)技術的/工業的に許容可能な方法で行われ得るような程度である。
加水分解は、高すぎるレベルの「遊離」アミノ酸が得られる前に終了させる。
加水分解後に得られる調製物中の遊離アミノ酸のレベルは、習慣として、5重量
%未満である。
加水分解の進行は、必要であれば、例えばアルカリの消費を測定することによ
るDH(加水分解度)アッセイのような好適な技術によって、またはOPA(O
−フタルアルデヒド)法の助けを借りて、あるいはRP−HPLC(逆相高速液
体クロマトグラフィ)解析のようなクロマトグラフィ法の助けを借りて、モニタ
リングすることができる。
加水分解後、加水分解されたカゼインフラグメントを、(本質的に)インタクト
な分解されていない他のタンパクまたは大きいタンパクフラグメントから分離す
ることができる。この目的のために、任意の好適な分離方法、特に、分子量およ
び/または分子サイズに基づく分離方法、特に限外ろ過を用いることができる。
このプロセスは、有利には、乳業界において一般に公知の(しばしば既に乳業界
自体に存在する)限外ろ過装置を利用することができる。
限外ろ過においては、除去すべき抗原性タンパク/タンパク成分のサイズに応
じて、好適な分子カットオフ値、好ましくは30kDa以下、より好ましくは1
0kDa以下、好ましくは1kDa未満の分子カットオフ値を有する膜を利用す
る。
ABBOSエピトープを含まない調製物を得るためには、一般に、30〜10
kDaの分子カットオフ値を有する膜を用い、IgG(分子量146,000)
が同時に除去される。他のタンパク、特にα−Lacおよびβ−Lgのようなよ
り小さい免疫原性成分を除去するためには、5kDaまで、またはそれ未満の分
子カットオフ値を有する膜を用いることが可能である。
習慣として、加水分解物の免疫学的純度は、カゼインが加水分解されるほど、
および/または用いる膜の分子カットオフ値が低くなるほど、増大する。限外ろ
過速度(膜を通したスループット)、および収率もまた、同様に加水分解の度合い
および用いる限外ろ過膜の組み合わせに依存する。
加水分解物の免疫学的純度は、好適な免疫学的アッセイの手段により、特に問
題の抗原性タンパクまたはそのフラグメント、および/またはエピトープに対し
て特異的な1または2以上の抗体を用いて、アッセイすることができる。ELI
SAのような好適な技術および好適な特異的抗体は、当業者には公知であり、お
よび/またはそれ自体公知の方法により入手することができる。
本発明によれば、加水分解物は、このような免疫学的アッセイ、特にELIS
Aを用いて、もはや抗原性反応を観察/検出できない場合、抗原性成分を含まな
いと認められる。
本発明は、BSA/ABBOS、α−Lac、β−Lgおよび/またはIgG
のような乳タンパク中に存在する免疫原性成分の1つ以上またはすべてを実質的
に含まない、そしてカゼイン/カゼイネートそれ自体の免疫原性成分/エピトー
プをさえも含まない、免疫学的に高純度の加水分解物が入手されることを可能に
するが、本発明の方法は、「BSA無含有」または「ABBOSエピトープを含
ま
ない」加水分解物の調製に特に好適であり、それを意図している。
このような「BSA/ABBOS無含有」加水分解物の調製においては、(BS
Aが比較的大きいタンパクであることからして、)α−Lacまたはβ−Lgの
ようなより小さい抗原性タンパクの(同時)除去のために必要とされるほど高い
程度で加水分解することは必要ではない。また、上述のように、より高い分子カ
ットオフ値を有する限外ろ過膜を用いることができる。これは、利用可能な装置
の占拠が少なく(加水分解のための反応時間がより短く、限外ろ過におけるスル
ープットがよりよい)、単位時間あたりのより高い生産という利点を有する。
したがって、本発明にしたがった「ABBOSエピトープを含まない」加水分
解物においては、他の抗原性タンパク(の成分/エピトープ)、特に小さいもの、
例えばα−Lacおよびβ−Lgがなお検出可能である可能性があることは、除
外されない。同様に、本発明の調製物が、カゼイン/カゼイネートそれ自体の抗
原性成分をなお含有することがあり得る。
本発明にしたがったカゼイン加水分解物は、それ自体公知の方法で、例えば、
牛乳タンパクアレルギー、特にBSA/ABBOSに対する免疫学的反応により
引き起こされるI型糖尿病の予防および/または治療に用いることができる、幼
児フォーミュラおよび腸溶性食品のような低アレルゲン性食品の製造のために、
さらに使用および/または加工することができる。B.カゼイン/カゼイネートが除去されたホエータンパク調製物の調製
本発明の第二の態様は、カゼイン含有乳タンパク調製物、特にホエーまたはホ
エータンパク溶液から出発する、実質的にカゼイン/カゼイネートが除去された
乳タンパク調製物、特にホエータンパク調製物の調製に関する。
特に、この態様は、少なくとも1つのタンパク成分およびカゼイン/カゼイネ
ートを含むタンパク調製物から出発して、出発調製物を、カゼイン/カゼイネー
トの加水分解のための条件下でタンパク分解酵素と接触させる、低減されたカゼ
イン含量を有し、カゼイン/カゼイネート以外の少なくとも1つのタンパク成分
を含むタンパク調製物を調製する方法であって、カゼイン/カゼイネートが、そ
して好ましくは少なくとも1つの他または成分もまた、実質的に溶解した状態に
あること、およびタンパク分解酵素が、カゼイン/カゼイネートが加水分解され
る一方で少なくとも1つの他または成分が実質的にインタクトなままであるよう
に、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロテイナーゼであることを特徴
とする方法に関する。
本発明のこの態様においては、上述のようなカゼイン特異的プロテイナーゼを
、特に少なくとも1つのさらなるタンパク成分の存在下でのカゼイン/カゼイネ
ートの特異的分解のために、同様に用いる。
しかし、上述の態様以外に、続いて、実質的にインタクトのままであるこの1
または2以上のさらなる(乳)タンパク成分が、カゼイン加水分解フラグメント
の代わりに得られる。
カゼインエピトープは、本明細書中に、カゼインに対する抗体と反応する、出
発物質中のカゼイン分子またはカゼインフラグメントの部分として理解されるべ
きである。
カゼインエピトープを含まないタンパク調製物は、以下において、カゼインエ
ピトープに対する抗体との結合を形成することができる(交差反応)あらゆるタ
ンパクまたはタンパクフラグメントを含まないタンパク調製物と理解されるべき
である。
カゼイン、カゼインフラグメントおよび/またはカゼインエピトープが除かれ
たこのような調製物は、その低減された免疫学的特徴のため、重要である。した
がって、Cavalloら、The Lancet,1996;348:926-928は、牛乳の初期の消費がβ−
カゼインに対する特異的免疫応答を引き起こすことができ、その細胞性および体
液性抗β−カゼイン免疫応答が、特にβ−カゼインと種々のβ細胞分子との配列
間の高い相同性のために、膵臓のβ細胞上のタンパクとの交差反応を生成するこ
とができるので、β−カゼインがインスリン依存性糖尿病におそらく関与してい
ることを報告している。この点に関して、カゼインが除かれた乳タンパク調製物
は、非免疫原性幼児フォーミュラの製造において重要な部分を果たすことができ
る。
本発明のこの態様は、一般に以下の工程を含む:
a) 少なくとも1つの所望のタンパク成分およびカゼイン/カゼイネートを含
むタンパク調製物を、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方で所
望のタンパク成分が実質的にインタクトなままであるように、カゼイン/
カゼイネートに対して特異的なプロテイナーゼと接触させる工程、および
b) カゼイン加水分解フラグメントを、実質的にインタクトなままである所望
のタンパク成分から分離する工程。
本発明のこの態様は、カゼイン含有タンパク調製物からカゼイン/カゼイネー
トを選択的に除去してカゼインが除かれたタンパク調製物を提供するために用い
ることができ、低〜超低レベルのカゼインの選択的除去さえ、プロセス中で可能
である。
この態様は、特に、乳または乳タンパクの溶液から、特に、ホエーまたはホエ
ータンパクの溶液から、カゼインを除去するために用いることができる。
出発調製物のカゼインレベルは、習慣として、少なくとも0.1重量%、特に
1重量%以上であるが、さらに低レベルのカゼインであってもまた、選択的に除
去することができる。カゼイン含量についての上限は、重要ではないが、実務的
には、出発物質中のカゼイン含量は、一般に50重量%未満、好ましくは20重
量%未満、より好ましくは10重量%未満であってよい。
加水分解工程は、同じカゼイン特異的プロテイナーゼを用いて、基本的に態様
aについて上述したように行う。用いる出発物質によって、必要な任意の適合は
、当業者には明らかであり、本記載にも利用される。
加水分解の程度は、好ましくは、加水分解工程の完了の後、90%を超えて、
より好ましくは99%を超えて、および最も好ましくは出発調製物に存在する実
質的にすべてのカゼインがより小さいフラグメントに切断されるようなものであ
る。加水分解工程の後なおインタクトなカゼイン分子のレベルは、好ましくは0
.1重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満である。
加水分解は、好ましくは、抗原性カゼイン加水分解フラグメント(切断されて
いない/インタクトなカゼインを含む)のレベルが1重量%未満、好ましくは0
.1重量%未満であるような程度まで行う。
特定の態様によれば、加水分解の後に得られる、カゼイン加水分解フラグメン
トを含有するタンパク調製物は、既にカゼインエピトープを含まないものであり
、
これは、カゼインおよび/またはその(抗原性)フラグメントが、カゼイン特異
的抗体を用いて、ELISAのような好適な免疫学的アッセイにおいてカゼイン
エピトープがもはや検出され得ないような程度にまで切断されていることを意味
する。
しかし、習慣として、このような広範な加水分解は、カゼインエピトープを含
まないタンパク調製物を得るためには必要ではない。これは、なお存在する小さ
い抗原性カゼイン加水分解フラグメントは、同様に以下に記載するようなその後
の分離工程の過程において除去され得るからである。
この態様は、インタクトなカゼイン分子を除去/分離するためのみでなく、カ
ゼインフラグメント、特に抗原性カゼインフラグメントを除去/分離するために
も用いることができることもまた、当業者に明らかである。
加水分解により得られるカゼインフラグメントを分離するためには、任意の好
適な分離方法を用いることができ、分子量および/または分子サイズに基づく分
離方法がここでも好ましい。特に、限外ろ過または同様の技術を用いることがで
き、所望のフラクションは、(上記の態様aにおけるように)透過液(permeate
)ではなく、1または2以上の所望のタンパク成分を含有する保持液(retentat
e)である。
限外ろ過においては、好適な分子カットオフ値を有する膜を用いる。このカッ
トオフ値によって、カゼイン加水分解フラグメントのみを分離することができ、
あるいは、(好適な、より高いカットオフ値を用いることにより)インタクトな
ままである1または2以上の小さい(より小さい)さらなるタンパク成分もまた
同時に除去することができる。
実質的にカゼイン加水分解フラグメントのみの除去は、一般に、加水分解度に
よって、10kDaまたはそれより小さい分子カットオフ値を有する膜の使用を
包含する。
加水分解度および用いる限外ろ過膜の分子カットオフ値は、好ましくは、限外
ろ過の後に得られる保持液中の(抗原性)カゼイン加水分解フラグメントおよび
/またはカゼインエピトープのレベルが0.1重量%未満、好ましくは0.01重
量%未満であるように選ばれる。
最も好ましくは、加水分解度および分子カットオフ値は、ELISAのような
カゼイン特異的抗体を用いる好適な免疫学的アッセイの手段によって、限外ろ過
後に得られる他または調製物中に何らのカゼインエピトープも検出され得ないよ
うに、すべての抗原性カゼイン加水分解フラグメントおよび/またはカゼインエ
ピトープが分離されるように選ばれる。このような調製物を、本明細書において
「カゼインエピトープを含まない」という。
出発物質が乳、ホエーまたは乳タンパクもしくはホエータンパクの溶液である
場合、カゼイン加水分解フラグメントが分離された後に得られるものは、一般に
、タンパクの混合物である。この混合物は、別個のタンパク成分を精製された、
または実質的に純粋な形態で得るために、それ自体公知の方法にしたがって、さ
らに分離してもよい。これは、例えば沈殿、クロマトグラフィ技術によって、ま
たは分子量または分子サイズに基づくさらなる分離により、行うことができる。
したがって、膜の分子カットオフ値を増大させる連続的な限外ろ過工程により、
乳タンパクの分画を達成することが可能である。
本発明のこの態様は、特に、乳タンパク調製物、特にα−Lac、β−Lg、
BSAおよびIgGのような1または2以上のホエータンパクを含む調製物を得
るために用いることができる。しかし、この態様はまた、カゼイン含有媒体から
出発する、天然乳に生来存在するものではないタンパクの精製または単離のため
にも用いることができる。これらすべてのタンパク調製物は、好ましくは上述の
ようにカゼインエピトープを含まない。
このようにして得られた(ホエー)タンパク調製物、特にカゼインエピトープ
を含まない調製物は、カゼイン、特にβ−カゼインに対する免疫学的反応を防止
するために、幼児フォーミュラのような食品調製物を調製するために用いること
ができる。
本発明に関して、加水分解中のカゼイン/カゼイネートが、そして好ましくは
さらなるタンパク成分もまた、濃縮されていてもいなくてもよい、一般に水性で
ある溶液中にあることにおいて、それが、チーズの熟成中の細菌プロテイナーゼ
の作用(これは本発明の範囲外である)とは異なることは、さらに注目される;
チーズの製造においては、カゼイン切断酵素は、カード中の沈殿したカゼインに
対して作用する。
さらに、チーズミルク中のカゼインの切断は、特異的酵素(キモシンのような
凝固酵素)の影響下で起こる。しかし、本発明にしたがって用いられるプロテイ
ナーゼの作用、特に特異性は、このような凝固酵素のそれとは明らかに異なる。
したがって、本発明の1つの側面によれば、特にフェニルアラニン/メチオニン
結合の切断に関して、カゼインに対するキモシンの特異的作用は、最も広い意味
における本発明が特定のタイプの酵素反応に限定されないとしても、特許請求の
範囲に入らない。
本発明を2つの異なる態様に関して上記で説明したが、これらの態様はまた、
カゼイン/カゼイネート含有(乳)タンパク調製物の特異的加水分解の後、カゼ
イン加水分解フラグメントおよびインタクトなままであるタンパクの両方が、上
述のような好適な分離技術の手段により2つの別個のフラクションとして得られ
ることにおいて、組み合わせることもできることは理解されるべきである。次に
、これらのフラクションは、上述のようにして、さらに加工および/または使用
することができる。本発明の教示の他の適合および用途は、以下の特許請求の範
囲に内包され、当業者には明らかである。
本発明を、以下で、この非制限的な例および以下のものを示す添付の図面を参
照しながら説明する。
図1:インタクトなタンパクのパーセンテージで表した、プロテイナーゼWg
2(15単位/mgタンパク)とのインキュベーション中の種々の乳タンパクの
分解。(+)BSA;(△)BSA(90単位/mgタンパク);(○)β−Lg;(■)
IgG;(▲)α−La;(●)総カゼイン;(▽)総カゼイン(90単位/mgタン
パク)。
図2:総カゼインおよびBSAの混合物をプロテイナーゼWg2(90単位/
mgタンパク)で加水分解した、加水分解物のRP−HPLC解析。その後、イ
ンタクトなBSAおよびカゼインフラグメントを、限外ろ過(カットオフ値30
kDa)の手段により分離した。(A)カゼインおよびBSAの混合物、t=0時
間;(B)カゼインおよびBSAの混合物、t=22時間;(C)t=22時間の加
水分解物の30kDa透過液フラクション;(D)t=22時間の加水分解物の
30kDa保持液フラクション。
図3:プロテイナーゼWg2(90単位/mgタンパク)で加水分解した総カ
ゼインおよびBSAの混合物の限外ろ過(カットオフ値10および30kDa)
後に得られた保持液および透過液フラクションのABBOS残存抗原性;(■)合
成ABBOSペプチド;(△)10kDa保持液;(○)30kDa保持液;(+)1
0kDaろ液;(▲)30kDaろ液。
図4:牛乳タンパクアレルギー患者および乳タンパクに対してアレルギーでは
ない人からの血清のカゼインおよびホエータンパクに対する特異的IgE結合。
図5:カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリンの混合物、ま
たはプロテイナーゼWg2(90単位/mgタンパク)で加水分解されたナトリ
ウムカゼイネートの限外ろ過(カットオフ値3および5kDa)の後に得られた
保持液および透過液のIgE残存抗原性;(○)インタクトな乳タンパク:上段、
左から右に、α−La、β−LgおよびBSA、下段、左から右にIgGおよび
カゼイン;(◇)カゼイン、α−Laおよびβ−Lgの混合物の5kDa保持液;
(●)ナトリウムカゼイネートの5kDa保持液;(△)カゼイン、α−Laおよび
β−Lgの混合物の5kDa透過液;(t)ナトリウムカゼイネートの5kDa透
過液;(+)カゼイン、α−Laおよびβ−Lgの混合物の3kDa透過液。
図6:本発明の態様「A」および「B」の模式図。例 a.プロテイナーゼの調製および精製
生物ラクトコッカス・ラクテイス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris
)、WG2株(Collection Netherlands Institute for Dairy Research
B1021)を、ExterkateによりAppl.Environ.Microbiol.47:177-183(1990)に記載
されているように、乳中で生育させ(30℃、一晩;最終pH4.6〜4.8)、続
いて、定常期の細胞を収穫した。基本的にMills and ThomasのN.Z.J.Dairy Sci.
Technol.13:209-215(1978)にしたがって、細胞をカルシウム無含有緩衝液中で3
0℃でインキユベートすることによって(20mMイミダゾール−HCl緩衝液
、pH6.4)、ラクトコッカスの細胞エンベロープのプロテイナーゼWg2
(プロテイナーゼWg2)を自己タンパク分解的に放出させた。インキュベーシ
ョン後、遠心分離(15,000rpm、15分間)により細胞を沈降させた。
上清フラクションをプールし、10mM CaCl2を添加した同じ緩衝液で充
分に洗浄し、濃縮した。さらなる精製のために、この粗プロテイナーゼWg2濃
縮物を、遠心分離し(48,000rpm、30分間)、ろ過し(0.45μm)、1
0mM CaCl2を添加した20mMイミダゾール−HCl緩衝液(pH6.4
)で平衡化したMonoQ HR10/10(Pharmacia,Uppsala,Sweden)ア
ニオン交換カラムに適用した。非結合物質の溶出の後、同じ緩衝液中、0〜0.
3MのNaClグラジエントを用いて2ml/分でタンパクを溶出した。酵素活
性を含有し、細胞内エキソペプチダーゼPepNの活性を有さないフラクション
をプールし、濃縮し、アリコートに分けて、−20℃に保存した。使用前に、ラ
クトコッカスプロテイナーゼWg2の酵素活性を定量し、細胞内エキソペプチダ
ーゼPepNの夾雑を、2つの異なる色原性基質、S−2586およびLys−
pNAをそれぞれ用いて、ExterkateらによりAppl.Microbiol.Biotechnol.33
:401-403(1990)に記載されているように試験した。1プロテイナーゼ単位は、3
0℃で1分間あたり1nmolのp−ニトロアニリドの形成を表す。b.加水分解実験
2つの異なるシリーズの加水分解実験を行った。第一のシリーズにおいては、
種々の乳タンパク、総カゼイン、α−La、β−Lg、BSAまたはIgGを、
プロテイナーゼWg2とのインキュベーションのために50mMイミダゾール−
HCl緩衝液(pH6.5)中に別個に溶解した。最終タンパク濃度は10mg/
ml、酵素活性は15または90単位/mgタンパク、および温度は30℃であ
った。20μlのアリコートを、ラクトコッカスプロテイナーゼWg2の添加後
0、1、3、5および22時間の時点でインキュベーション容器から採取した。
第二のシリーズの加水分解実験においては、市販のナトリウムカゼイネートお
よび総カゼイン、α−La、β−Lgの(タンパクベースで)等量の混合物を、
50mMイミダゾール−HCl緩衝液(pH6.5)中に溶解し、プロテイナー
ゼWg2のための基質とした。総タンパク濃度は6mg/ml、および酵素活性
は
90単位/mgタンパクであった。30℃で22時間の加水分解の後、加水分解
物を、3〜30kDaの範囲のカットオフ値を有する膜(Omega-type,Filtron,N
orthborough,MA,USA)を用いて限外ろ過した。
BSAは、免疫学的検出用にABBOSエピトープを露出するために必要な加
熱後、イミダゾール−HCl緩衝液中で不溶性となるので(以下参照)、総カゼイ
ンおよびBSAの等量混合物を蒸留水に溶解し、Adler-Nissen J.Chem.Tech.
Biotech.32:138-156(1982)により記載されているようなpH−stat技術を
用いて加水分解した。プロテイナーゼWg2での加水分解中、0.05M Na
OHの添加によってpHを7.0に一定に保った。総タンパク濃度は4mg/m
l、および酵素活性は90単位/mgタンパクであった。30℃で22時間の加
水分解の後、3〜30kDaの範囲のカットオフ値を有する膜(Omega-type,Filt
ron,Northborough,MA,USA)を用いて加水分解物を限外ろ過した。c.加水分解物の物理化学的および免疫学的特徴づけ
加水分解中の乳タンパクの分解を追跡するために、VisserらによりJ.Chromato
gr.548:361-370(1991)に記載されたようなRP−HPLCを適用した。インタク
トタンパクのピーク領域の減少を、積分によって定量した(Turbochrom,Perkin E
lmer,Co.,Cupertino,CA,USA)。
ABBOSペプチドと種々のプロテイナーゼWg2加水分解物との間の交差反
応性の出現を、ウサギ抗ABBOS血清を用いて、Beresteijn and Meijerによ
りDiabetes Care 19:1364-1369(1996)に記載されたようにして競合的酵素結合免
疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定した。ABBOSエピトープを露出
させるために、加水分解物を95℃で5分間加熱した。同じ方法を適用して、す
べての個別の乳タンパクに対して高いIgE抗体タイターを有する牛乳アレルギ
ー患者からのヒト抗血清を用いて、BeresteijnらによりJ.Allergy Clin.Immunol
.96:365-374(1995)に記載されたように、種々のプロテイナーゼWg2加水分解
物中の交差反応性乳タンパク特異的IgE抗体結合部位の存在を決定した(図4)
。d.結果 酵素特異性
種々の乳タンパクについてのラクトコッカスプロテイナーゼWg2の特異性を
図1に示す。選択した条件下でのタンパクの分解は、基質として総カゼインを用
いた場合にのみ検出可能であった。ホエータンパクであるα−La、β−Lg、
BSAおよびIgGはインタクトのままであった。IgGについてのRP−HP
LCのピーク領域の見かけの増大(図1)は、説明できないが、加水分解物試料
を融解した後に観察されたIgGの不溶化に関連している可能性がある。酵素濃
度を90単位/mgタンパクに増大させると、総カゼインは5時間以内に分解さ
れた(図1)。カゼインおよびホエータンパクの分離
ホエータンパク(α−La、β−Lg、BSAおよびIgG)の存在下でのカ
ゼインの特異的分解をもたらすプロテイナーゼWg2の差別的な挙動は、より小
さいカゼインフラグメントとなおインタクトなホエータンパクとの間の分子量の
差異の増大を引き起こした。膜のカットオフ値によって、カゼインフラグメント
からのインタクトなホエータンパクの特異的除去が可能であった。30kDaま
でのカットオフ値を有する膜は、プロテイナーゼWg2での処理後、総カゼイン
およびBSAの混合物から、または市販のナトリウムカゼイネート(一般にホエ
ータンパクで汚染されている)から、BSAを選択的に除去した。図2は、BS
Aの存在下でのプロテイナーゼWg2による総カゼインの特異的分解およびその
後の30kDa膜を用いるインタクトなBSAの除去を示す。
残存ABBOS抗原性
RP−HPLC解析によっては、プロテイナーゼWg2を用いての総カゼイン
とBSAとの混合物またはナトリウムカゼイネートの加水分解およびその後の限
外ろ過後に得られた透過液フラクション中に、BSAまたはそのフラグメントを
検出できなかった(図2)。より感度の高い免疫学的方法を用いて、これらの結果
を確認した。図3は、ウサギ抗ABBOS血清が、1g/lの阻害剤濃度まで透
過液フラクションについて結合阻害を示さなかったことを示す。これとは対照的
に、保持液フラクションおよび対照(合成ABBOSペプチド)は、そのタンパ
ク濃度で100%阻害を示した。
残存IgE抗原性
総カゼイン、α−Laおよびβ−Lgの混合物、またはナトリウムカゼイネー
トのプロテイナーゼWg2での処理およびその後の低カットオフ値(5kDaま
たは3kDa)を有する膜を通す限外ろ過により、さらに、低分子量抗原性ホエ
ータンパクを除去した。図5は、これらの加水分解物についてのα−La、β−
Lg、BSA、IgGおよび総カゼインの阻害ELISAの典型的な例を示す。
ヒト抗血清は、1g/lの阻害剤濃度まで、透過液フラクションについてIgE
結合阻害を示さなかった。これとは対照的に、保持液フラクションおよびそれぞ
れのインタクトな乳タンパクは、そのタンパク濃度で100%阻害を示した。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成10年12月28日(1998.12.28)
【補正内容】
請求の範囲
1. カゼイン/カゼイネートおよびカゼイン/カゼイナート以外の少なくとも1
つのさらなるタンパク成分を含有する媒体を、カゼイン/カゼイネートの加
水分解のための条件下でタンパク分解酵素と接触させる、この媒体中でカゼ
イン/カゼイネートを選択的に加水分解する方法であって、タンパク分解酵
素が、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方でさらなるタンパク成
分が実質的にインタクトなままであるように、カゼイン/カゼイネートに対
して特異的なプロテイナーゼであること;およびさらに、カゼイン/カゼイ
ネートが、そして好ましくは少なくとも1つのさらなるタンパク成分もまた
、実質的に媒体中に溶解していることを特徴とする方法。
2. 前記媒体が、カゼイン/カゼイナートを、特に40重量%を超える、好まし
くは80重量%を超える、より好ましくは90重量%を超える量で含む乳タ
ンパク調製物であることを特徴とする、加水分解された乳タンパク調製物を
調製するための請求項1記載の方法。
3. 少なくとも1つの抗原性タンパク成分が除かれた乳タンパク加水分解物を調
製するための請求項1または2記載の方法であって、以下の工程:
a) 特に40重量%を超える、好ましくは80重量%を超える、より好ましく
は90重量%を超える量の、カゼイン/カゼイナートと、少なくとも1つ
の抗原性タンパク成分とを含む乳タンパク調製物であって、カゼイン/カ
ゼイネートが、好ましくは少なくとも1つの抗原性タンパク成分もまた、
この乳タンパク調製物に実質的に溶解しているものを用意する工程;
b) 前記乳タンパク調製物を、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方
で少なくとも1つの抗原性タンパク成分が実質的にインタクトなままであ
るように、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロテイナーゼと接
触させる工程;
c) 実質的にインタクトなままである少なくとも1つの抗原性タンパク成分お
よびカゼイン加水分解フラグメントを分離する工程
を含む方法。
4. 前記工程c中に、分子量および/または分子サイズに基づく分離方法、特に
限外ろ過を用いる、請求項3記載の方法。
5. さらなる抗原性タンパク成分が、ウシ血清アルブミン、または、特にABB
OSエピトープを含む、その抗原性フラグメントである、請求項3または4
記載の方法。
6. 10〜30kDa以下の分子カットオフ値を有する限外ろ過膜を用いる、請
求項4または5記載の方法。
7. 低減されたカゼインレベルを有するタンパク調製物を調製するための請求項
1記載の方法であって、以下の工程:
a) 少なくとも1つの所望のタンパク成分およびカゼイン/カゼイナートを含
むタンパク調製物であって、カゼイン/カゼイネートが、好ましくは前記
少なくとも1つのタンパク成分もまた、実質的に溶解した状態にあるもの
を用意する工程;
b) 前記少なくとも1つの所望のタンパク成分およびカゼイン/カゼイナート
を含むタンパク調製物を、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方
で少なくとも1つの所望のタンパク成分が実質的にインタクトなままであ
るように、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロテイナーゼと接
触させる工程;
c) 実質的にインタクトなままである前記少なくとも1つの所望のタンパク成
分からカゼイン加水分解フラグメントを分離する工程
を含む方法。
8. 前記工程bの加水分解を、加水分解された調製物中の抗原性カゼイン加水分
解フラグメント(なお存在する切断されていないカゼインを含む)の含量が
、1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満である程度まで行う、請求項
7記載の方法。
9. カゼイン/カゼイネートおよび少なくとも1つのタンパク成分の溶液が、乳
または乳タンパクの水性溶液、特にホエーまたはホエータンパクの水性溶液
を含む、請求項7または8記載の方法。
10.カゼイン加水分解フラグメントを分離する工程が、分子量および/または分
子サイズに基づく分離技術、特に限外ろ過を含む、請求項7〜9のいずれか
1項記載の方法。
11.10kDa以下の分子カットオフ値を有する限外ろ過膜を用いる、請求項1
0記載の方法。
12.カゼイン/カゼイネートおよびカゼイン/カゼイナート以外の少なくとも1
つのさらなるタンパク成分を含有する媒体を、カゼイン/カゼイネートの加
水分解のための条件下でタンパク分解酵素と接触させる、この媒体中でカゼ
イン/カゼイネートを選択的に加水分解する方法であって、タンパク分解酵
素が、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方でさらなるタンパク成
分が実質的にインタクトなままであるように、カゼイン/カゼイネートに対
して特異的なプロテイナーゼであること;およびさらに、少なくとも1つの
さらなるタンパク成分が、大豆タンパクのような少なくとも1つの非乳タン
パクまたはタンパク成分を含むことを特徴とする方法。
13.加水分解されたカゼイン調製物の調製、カゼインが除かれたタンパク調製物
の調製、および/または請求項1〜12記載の方法における、カゼイン/カ
ゼイナートに対して特異的なプロテイナーゼの用途。
14.カゼイン特異的プロテイナーゼが、「食品等級」微生物、特に「食品等級」
ラクトコッカス由来である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法、
または請求項13記載の用途。
15.カゼイン特異的プロテイナーゼが、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモ
リス、Wg2株の細胞外プロテアーゼである、請求項14記載の方法または
用途。
16.請求項1〜6、12、14および/または15記載の方法または請求項13
〜15のいずれか1項記載の用途により得られる、ABBOSエピトープに
対して特異的な抗体を用いて免疫学的アッセイ技術の手段によりアッセイし
た場合に、実質的にABBOSエピトープを含まない、タンパク加水分解物
、特に乳タンパク加水分解物。
17.さらに、ホエータンパク、特にα−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリ
ンおよびウシ免疫グロブリンのような、カゼイン/カゼイネート以外の1ま
たは2以上の牛乳由来のさらなる抗原性成分を、1または2以上のこれらの
抗原性成分に対して特異的な抗体を用いて免疫学的アッセイ技術の手段によ
りアッセイした場合に、実質的に含まない、請求項16記載の乳タンパク加
水分解物。
18.牛乳アレルギーの子防および/または治療のための幼児フォーミュラおよび
腸溶性食品のような食品の調製における、請求項16、好ましくは請求項1
7記載の乳タンパク加水分解物の用途。
19.BSA/ABBOSに対する免疫学的反応により引き起こされるI型糖尿病
の予防のための幼児フォーミュラの調製のための、請求項18記載の用途。
20.1または2以上のカゼイン特異的抗体を用いて好適な免疫学的アッセイ技術
の手段によりアッセイした場合に、実質的にカゼインのエピトープを含まな
い、かつ、請求項7〜9、14および/または15のいずれか1項記載の方
法、または請求項13〜15のいずれか1項記載の用途にしたがって得られ
る、カゼインが除かれた乳タンパク調製物、特にカゼインが除かれたホエー
タンパク調製物。
21.カゼインに対する免疫学的反応の予防のための食品、特に幼児フォーミュラ
の調製における、請求項20記載の乳タンパク調製物の用途。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
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TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V
N,YU,ZW
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1. カゼイン/カゼイネートおよび少なくとも1つのさらなるタンパク成分をカ ゼイン/カゼイネートの加水分解のための条件下でタンパク分解酵素と接触 させる、カゼイン/カゼイネート以外の少なくとも1つのさらなるタンパク 成分の存在下でカゼイン/カゼイネートを選択的に加水分解する方法であっ て、カゼイン/カゼイネートが、そして好ましくは少なくとも1つのさらな るタンパク成分もまた、実質的に溶解した状態にあること、およびタンパク 分解酵素が、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方でさらなるタン パク成分が実質的にインタクトなままであるように、カゼイン/カゼイネー トに対して特異的なプロテイナーゼであることを特徴とする方法。 2. カゼイン/カゼイネートおよび少なくとも1つのさらなるタンパク成分をカ ゼイン/カゼイネートの加水分解のための条件下でタンパク分解酵素と接触 させる、カゼイン/カゼイネート以外の少なくとも1つのさらなるタンパク 成分の存在下でカゼイン/カゼイネートを選択的に加水分解する方法であっ て、少なくとも1つのさらなるタンパク成分が、少なくとも1つの大豆タン パクのような非乳タンパクまたはタンパク成分を含むこと、およびタンパク 分解酵素が、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方でさらなるタン パク成分が実質的にインタクトなままであるように、カゼイン/カゼイネー トに対して特異的なプロテイナーゼであることを特徴とする方法。 3. 乳タンパク調製物をカゼイン/カゼイネートの加水分解のための条件下でタ ンパク分解酵素と接触させる、特に40重量%を超える、好ましくは80重 量%を超える、より好ましくは90重量%を超える量のカゼイン/カゼイネ ート、およびカゼイン/カゼイネート以外の少なくとも1つのさらなるタン パク成分を含有する乳タンパク調製物から出発して、加水分解された乳タン パク調製物を調製する方法であって、カゼイン/カゼイネートが、そして好 ましくは少なくとも1つのさらなるタンパク成分もまた、実質的に溶解した 状態にあること、およびタンパク分解酵素が、カゼイン/カゼイネートが加 水分解される一方でさらなるタンパク成分が実質的にインタクトなままであ るように、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロテイナーゼである ことを特徴とする方法。 4. 乳タンパク調製物をカゼイン/カゼイネートの加水分解の条件下でタンパク 分解酵素と接触させる、特に40重量%を超える、好ましくは80重量%を 超える、より好ましくは90重量%を超える量のカゼイン/カゼイネート、 および少なくとも1つの抗原性タンパク成分を含有する乳タンパク調製物か ら出発して、少なくとも1つの抗原性タンパク成分が除かれた乳タンパク加 水分解物を調製する方法であって、以下の工程: a) 乳タンパク調製物を、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロテイ ナーゼと接触させる工程、ここでカゼイン/カゼイネートが加水分解され る一方で少なくとも1つの抗原性タンパク成分が実質的にインタクトなま まであるように、カゼイン/カゼイネートが、そして好ましくは少なくと も1つの抗原性タンパク成分もまた、実質的に溶解した状態にある、 b) 実質的にインタクトなままである少なくとも1つの抗原性タンパク成分お よびカゼイン加水分解フラグメントを分離する工程 を含む方法。 5. 工程b中に、分子量および/または分子サイズに基づく分離方法、特に限外 ろ過を用いる、請求項4記載の方法。 6. さらなる抗原性タンパク成分が、ウシ血清アルブミン、または特にABBO Sエピトープを含む、その抗原性フラグメントである、請求項3〜5のいず れか1項記載の方法。 7. 10〜30kDa以下の分子カットオフ値を有する限外ろ過膜を用いる、請 求項5または6記載の方法。 8. 少なくとも1つのタンパク成分およびカゼイン/カゼイネートを含むタンパ ク調製物から出発し、出発調製物を、カゼイン/カゼイネートの加水分解の ための条件下でタンパク分解酵素と接触させる、カゼイン/カゼイネート以 外の少なくとも1つのタンパク成分を含む低減されたカゼインレベルを有す るタンパク調製物を調製する方法であって、カゼイン/カゼイネートが、そ して好ましくは少なくとも1つのさらなるタンパク成分もまた、実質的に溶 解した状態にあること、およびタンパク分解酵素が、カゼイン/カゼイネー トが加水分解される一方で少なくとも1つのタンパク成分が実質的にインタ クトなままであるように、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロテ イナーゼであることを特徴とする方法。 9. 以下の工程: a) 少なくとも1つの所望のタンパク成分およびカゼイン/カゼイネートを含 むタンパク調製物を、カゼイン/カゼイネートが加水分解される一方で少 なくとも1つの所望のタンパク成分が実質的にインタクトなままであるよ うに、カゼイン/カゼイネートに対して特異的なプロテイナーゼと接触さ せる工程; b) 実質的にインタクトなままである少なくとも1つの所望のタンパク成分か らカゼイン加水分解フラグメントを分離する工程 を含む、請求項8記載の方法。 10.加水分解を、加水分解された調製物中の抗原性カゼイン加水分解フラグメン ト(なお存在する切断されていないカゼインを含む)の含量が、1重量%未 満、好ましくは0.1重量%末満である程度まで行う、請求項8または9記載 の方法。 11.カゼイン/カゼイネートおよび少なくとも1つのタンパク成分の溶液が、乳 または乳タンパクの水性溶液、特にホエーまたはホエータンパクの水性溶液 を含む、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。 12.カゼイン加水分解フラグメントを分離する工程が、分子量および/または分 子サイズに基づく分離技術、特に限外ろ過を含む、請求項8〜11のいずれ か1項記載の方法。 13.10kDa末満の分子カットオフ値を有する限外ろ過膜を用いる、請求項1 2記載の方法。 14.加水分解されたカゼイン調製物、カゼインを除かれたタンパク調製物の調製 、および/または請求項1〜13のいずれか1項記載の方法における、カゼ イン/カゼイネートに対して特異的なプロテイナーゼの用途。 15.カゼイン特異的プロテイナーゼが、「食品等級」微生物、特に「食品等級」 ラクトコッカス由来である、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法、ま たは請求項14記載の用途。 16.カゼイン特異的プロテイナーゼが、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモ リス、Wg2株の細胞外プロテイナーゼである、請求項15記載の方法また は用途。 17.請求項1〜7、15および/または16のいずれか1項記載の方法または請 求項14〜16のいずれか1項記載の用途により得られる、ABBOSエピ トープに対して特異的な抗体を用いて免疫学的アッセイ技術の手段によりア ッセイした場合に実質的にABBOSエピトープを含まない、タンパク加水 分解物、特に乳タンパク加水分解物。 18.さらに、ホエータンパクおよび特にα−ラクトアルブミン、β−ラクトグロ ブリンおよびウシ免疫グロブリンのような、カゼイン/カゼイネート以外の 1または2以上の牛乳由来抗原性成分を、1または2以上のこれらの抗原性 成分に対して特異的な抗体を用いて免疫学的アッセイ技術の手段によりアッ セイした場合に実質的に含まない、請求項17記載の乳タンパク加水分解物 。 19.牛乳アレルギーの予防および/または治療のための幼児フォーミュラおよび 腸溶性食品のような食品の調製における、請求項17、好ましくは請求項1 8記載の乳タンパク加水分解物の用途。 20.BSA/ABBOSに対する免疫学的反応により引き起こされるI型糖尿病 の予防のための幼児フォーミュラの調製のための、請求項19記載の用途。 21.1または2以上のカゼイン特異的抗体を用いて好適な免疫学的アッセイ技術 の手段によりアッセイした場合に実質的にカゼインのエピトープを含まない 、かつ、請求項8〜13、15および/または16のいずれか1項記載の方 法、または請求項14〜16のいずれか1項記載の用途にしたがって得られ る、カゼインが除かれた乳タンパク調製物、特にカゼインが除かれたホエー タンパク調製物。 22.カゼインに対する免疫学的反応の予防のための食品、特に幼児フォーミュラ の調製における、請求項21記載の乳タンパク調製物の用途。
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