JP3112597B2 - 低アレルゲン性乳蛋白質の製造法 - Google Patents

低アレルゲン性乳蛋白質の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乳蛋白質中に含有する
αs-カゼインを選択的に分解して得られる低アレルゲン
性の乳蛋白質の製造法に関する。本発明で得られた乳蛋
白質は、αs-カゼインが選択的に分解されているのでア
レルゲン性が低く、しかも栄養学的に優れており、各種
食品の蛋白質源として利用することができる。
【0002】
【従来技術】牛乳中の蛋白質は、カゼインと乳清(ホエ
ー)蛋白質に大別され、そのカゼインは、主としてαs-
カゼイン、β−カゼイン、κ−カゼインから構成されて
いる。また乳清蛋白質は、主としてα−ラクトアルブミ
ン、β−ラクトグロブリンから構成されている。これら
の蛋白質の成分中、αs-カゼインとβ−ラクトグロブリ
ンは人乳中にほとんど存在しない蛋白質で、乳蛋白質を
蛋白質源として用いた育児用栄養組成物は、人工栄養児
のアレルゲンとなることがある。このため乳蛋白質から
上記のαs-カゼインやβ−ラクトグロブリンを分画また
は分解等の手段により可及的に低減化する検討が従来よ
り行われている。例えばカゼインからαs-カゼインを分
画する方法としては、αs-カゼインとβ−カゼインを主
成分とするカゼイン画分に0乃至10℃の温度で2価塩を
添加することによりαs-カゼインを主成分とする画分と
β−カゼインを主成分とする画分に分ける方法(特開昭
59-91849号公報) やゲル濾過にてカゼインを分画する方
法(R. D. Hill et al.; J.Dairy Res., 31, 291 (196
4)) あるいはβ−ラクトグロブリンを分解するために乳
清蛋白質水溶液に動物由来又は微生物由来の蛋白質分解
酵素を添加しβ−ラクトグロブリンを選択的に分解する
方法(特開平 2-265441 号公報) が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のように乳清蛋白
質成分のβ−ラクトグロブリンを蛋白質分解酵素によっ
て選択的に加水分解する方法は知られているが、カゼイ
ン成分のαs-カゼインを蛋白質分解酵素によって選択的
に加水分解することについてはまだ知られていない。こ
れは、通常の蛋白質分解酵素では本来必要とするカゼイ
ン成分のβ−カゼインをも同時に分解するためにであ
る。従って乳中やカゼイン中からαs-カゼインのみを除
去あるいは低減する場合は、分画や除去という方法が採
用されていた。しかしこれらの方法は、工程が煩雑とな
るばかりでなく、大量生産が困難であり、コスト上昇の
要因となる等の課題があった。本発明はこれらの課題を
解決し、アレルゲン性が低く、かつ栄養学的に優れた乳
蛋白質を得るために研究したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴は、乳蛋白
質溶液にクラドスポリウム属菌及び/又はムコール属菌
が産生する蛋白質加水分解酵素を添加し、αs-カゼイン
を選択的に分解し、αs-カゼインを全くあるいはほとん
ど含まない低アレルゲン性乳蛋白質を得ることにある。
本発明で使用する出発原料としての乳蛋白質は、全脂
乳、脱脂乳あるいはこれらの乳原料から分画したカゼイ
ンを使用することができる。好ましい乳蛋白質は、カゼ
インである。これらの乳蛋白質を蛋白質の固形率が 0.1
〜15重量%の水溶液になるように調製する。固形率が
0.1重量%以下では蛋白質の固形率が低いために生産性
が悪くなり、一方15重量%以上になると蛋白質溶液の粘
度が高くなり、酵素溶液を加えても均一にできなくなる
からである。次に蛋白質の固形率を上記の範囲内に調製
した水溶液に蛋白質加水分解酵素としてグラドスポリウ
ム属菌が産生する蛋白質加水分解酵素及び/又はムコー
ル属菌が産生する蛋白質加水分解酵素を添加して酵素処
理する。酵素処理の条件は、pHを 6〜10に調整し、30
〜70℃で30分〜20時間処理することが望ましい。
【0005】上記のクラドスポリウム属菌としては、ク
ラドスポリウム・ヘルバラム(Cladolorium herbarum)
、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス (Cladosp
oriumcladosporioides)およびクラドスポリウム・レシ
ナエ (Cladosporium resinae)が挙げられる。またムコ
ール属菌としては、ムコール・アングリスポーラス(Muc
or angulisporus) 、ムコール・ヒエマリス(Mucor hi
emalis) 、ムコール・ジャンセイン (Mucor janssein)
、ムコール・ラマンニアヌス(Mucor ramannianus)
ムコール・ルキシアヌス(Mucor rouxianus)およびムコ
ール・ルキシー(Mucor rouxii) が挙げられる。これら
の微生物は、下記に示すように寄託機関に寄託し登録番
号が付与されている。
【0006】 菌株名 登録番号 1.クラドスポリウム・ヘルバラム(C. herbarum) IFO 5059 2.クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(C. cladosporioides) IFO 6368 3.クラドスポリウム・レシナエ(C. resinae) IFO 6367 4.ムコール・アングリスポーラス(M. angulisporus) IAM 6151 5.ムコール・ヒエマリス(M. hiemalis) IAM 6090 6.ムコール・ジャンセイン(M. janssein) IAM 6100 7.ムコール・ラマンニアヌス(M. ramannianus) IAM 6128 8.ムコール・ルキシアヌス(M. rouxianus) IAM 6132 9.ムコール・ルキシー(M. rouxii) IAM 1066
【0007】これらの微生物から蛋白質分解酵素を得る
には、これらの微生物を固体培養あるいは液体培養し、
得られる培養物又はその培養液から酵素を採取する。培
養物の水抽出物、菌体を除去した培養液あるいはその乾
燥物よりなる粗酵素をそのまま用いることもできるし、
またこれらの粗酵素を通常の酵素の精製方法に従って精
製して精製酵素として用いてもよい。たとえば、ムコー
ル・ジャンセイン(M. janssein) を用いて固体培養を行
い、またクラドスポリウム・クラドスポリオイデス(C.
cladosporioides)を用いて液体培養を行って、それぞれ
粗酵素を調製した。その方法を以下に例示する。 a.(固体培養) ふすま 180gに水 150mlを添加し、殺菌後ムコール・ジ
ャンセイン(IAM 6100)の種麹を接種し、30℃で 4日間培
養した。培養後得られた麹に水を500ml 加え、低温度で
一夜抽出を行い 300mlの粗製酵素液を得た。この酵素液
を遠心分離後、凍結乾燥を行い酵素粉末4.2gを得た。こ
の粉末のプロテアーゼ活性は、1,760u/gであった。 b.(液体培養) グルコース0.5 %、大豆蛋白質 2.0%、ポリペプトン0.
2 %、酵母エキス0.2%、リン酸二カリウム0.1 %、硫
酸マグネシウム0.05%、塩化カリウム0.05%の組成の培
地 100mlにクラドスポリウム・クラドスポリオイデス(I
FO 6368)を接種し、30℃で 4日間振盪培養を行った。遠
心分離により菌体を分離し、酵素液を得た。この溶液の
プロテアーゼ活性は、3.4u/ml であった。
【0008】本発明においてはこのようにして調製した
粗酵素の蛋白質分解酵素の一種または二種以上を用いる
こともできるし、また、これらの酵素をプロテアーゼあ
るいはペプチダーゼにそれぞれ分画精製したものを用い
ることもできる。さらに複合酵素として用いることもで
きる。そして添加量としては 0.3〜10単位添加して処理
することにより、乳蛋白質中のβ−カゼインをほとんど
分解することなくαs-カゼインのみを選択的に加水分解
することができる。このような方法によって得られたα
s-カゼインが分解された乳蛋白質は、そのままあるいは
乾燥粉末化して食品や乳幼児栄養組成物等の蛋白質源と
して用いることができる。そしてこれらの食品や乳幼児
栄養組成物は、アレルゲンが低減され、かつ栄養学的に
優れたものである。また乳幼児の栄養組成物に用いる
と、予めカゼイン蛋白質中のαs-カゼインが酵素で分解
されているため、胃内で柔らかいカードが形成され、消
化しやすくなる。
【0009】
【発明の効果】従来、乳蛋白質中のアレルゲンとなる一
成分のαs-カゼインは、二価塩と作用させた後沈澱して
分画するかゲル濾過法で分画していた。このため大量生
産ができないあるいはコストが高くなるといった生産上
の点で問題を有していた。また得られた製品自体も二価
塩と作用させた後沈澱して分画したものは、塩濃度の高
いβ−カゼインの分画物となり問題があった。これに対
して本発明の方法は乳蛋白質溶液に特定の菌株由来の基
質特異性を有する蛋白質分解酵素を作用させて、β−カ
ゼインをほとんど分解することなくαs-カゼインのみを
選択的に加水分解するため、大量生産が可能で生産コス
トを低減させることができ、かつ得られた加水分解物は
アレルゲンが低減されると同時に栄養学的にも優れたも
のとなる。そしてこのように処理された乳蛋白質は食品
あるいは乳幼児の栄養組成物の蛋白源として有用に利用
される。
【0010】次に本発明で使用する蛋白質分解酵素を特
定した試験例を示し、更に詳しく説明する。
【試験例1】 乳蛋白質溶液の反応 pH 7.0に調整した 5%カゼイン溶液 100gにそれぞれ
表1に示される8種類の市販の酵素を酵素液として添加
して40℃で30分間反応後、90℃で15分間加熱して反応を
停止させた。酵素はカゼインg当たりプロテアーゼ活性
を10単位添加した。添加した酵素の種類、起源、菌株お
よび蛋白質全体の分解率、αs-カゼインの残存率、β−
カゼインの残存率を表1に示す。尚、蛋白質の分解率、
β−カゼインの残存率およびプロテアーゼ活性の測定は
次の方法に従って行った。
【0011】(1)分解率の測定法 分解液2.5ml に精製水7.5ml を加え、40℃の恒温槽に5
分間放置する。その後、10%酢酸溶液1mlを加え、40℃
で5分間放置後、1N酢酸ナトリウム溶液1ml を加え、40
℃で10分間放置後、精製水にて50mlにメスアップし、東
洋濾紙No.5C で濾過する。この濾液および分解前のカゼ
イン溶液について、フォーリン試薬反応を行い、分解率
を算出した。
【0012】 (2)αs-カゼインとβ−カゼインの残存率の測定法 試料を4.5M尿素及びメルカプトエタノールを含むトリス
一塩酸バッファーにて処理し、次に4.5M尿素を含むポリ
アクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行った。泳動し
て染色・脱色を行った後、デンシトメトリーを行い、α
s-カゼイン、β−カゼインの各ピーク面積より残存率を
求めた。
【0013】(3)プロテアーゼ活性の測定方法 1.5 %ミルクカゼイン溶液1mlを試験管にとり、37±0.
5 ℃の恒温水槽中に入れ、5分間放置した後、試料溶液
1mlを正確に加え、よく混合して直ちに37±0.5 ℃の恒
温水槽中に入れ、30分間反応する。これに0.4Mトリクロ
ロ酢酸溶液2mlを加え、よく混合して室温で10分間放置
した後、濾紙(東洋NO.131.7cm)で濾過する。 濾液1
mlを試験管にとり、0.55M 炭酸ナトリウム溶液5mlおよ
びフォーリン試液1mlを加えよく混合し、50℃の恒温水
槽中で5分間反応して発色させた後、水を対照として波
長660nm における吸光度Atを測定する。別に空試験
(ブランク)として、ミルクカゼイン溶液1mlを試験管
にとり、0.4Mトリクロロ酢酸溶液2mlを加え、よく混合
した後、試料溶液1mlを正確に加えたものにつき、以下
同様に操作して吸光度Abを測定する。
【0014】プロテアーゼ活性 本条件下、60分間に反応濾液1mlにチロシン 100μg に
相当する呈色物質を生成する酵素量をプロテアーゼ活性
1単位とし次式により算出する。 プロテアーゼ(u/g) =(At−Ab)×F×1/100
×n×2 F:チロシン検量線より求めた吸光度差が1.0 の時のチ
ロシン量(μg) F=100 1/100 :単位換算係数 n:試料溶液の希釈倍数 2:30分間の反応
【0015】
【表1】 注)表中Asp.はAspergillus 、Bac.はBacillus、Pi. は
Pineapple 、Car.はCarica、Por.はPorcine をそれぞれ
表す。
【0016】表1から明らかなように、上記の微生物起
源、植物起源及び動物起源の市販酵素では、ブロメライ
ンが比較的αs-カゼインを選択的に分解している以外、
β−カゼインの残存量を高く、かつαs-カゼインの残存
量を低くする酵素は見当らない。また、これらの酵素に
よる分解率は8 〜11%程度であり、これらの分解物のア
レルゲン性を抗αs-カゼイン血清を用いたエライザ(E
LISA:Enzyme linked immunosorbent assay )抑制
試験法により測定しても、αs-カゼイン及び全カゼイン
と何等変わらず、抗原性の低下が全く認められなかっ
た。尚、アレルゲン性試験は次の方法によって行った。
【0017】アレルゲン性の試験方法 抗原性は、酵素免疫測定法(Enzyme-linked immunosolbe
nt assey:ELISA) の抑制試験法により行った。96穴プレ
ート(ヌンク社製)にαs-カゼインをコーティングして
洗浄し、ウサギ抗αs-カゼイン血清と加水分解分解物試
料の混合液をプレートの穴に供給して反応させ、洗浄後
アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギIgG 抗体(ツ
ァイメド・ラボラトリー社製) を反応させたのち洗浄
し、P-ニトロフェニル燐酸ナトリウムを添加し、30分後
に5N水酸化ナトリウムを添加して反応を停止させ、反応
生成物をマイクロプレートリーダーで測定した。(日本
小児アレルギー学会誌、第1巻、第36頁、1987年)
【0018】
【試験例2】乳蛋白質中のαs-カゼインを選択的に分解
する酵素をスクリーニングする目的で、10種の属から選
ばれた22菌株の微生物を培養し、これから回収した粗酵
素を用いて更に試験例1と同様に実験を行った。その結
果ある特定の微生物が産生する酵素にαs-カゼインを選
択的に分解する作用のあることを見出した。その試験結
果を表2に示す。
【0019】
【表2】
【0020】表2から明らかなように、大半の酵素はα
s-カゼインよりβ−カゼインの方をより選択的に分解し
ていることが判る。特に、リゾープス (Rhizopus) 属菌
由来とアブシデイア (Absidia) 属菌由来の蛋白質分解
酵素では、αs-カゼインの残存量が8割以上でもあるの
にかかわらずβ−カゼインをほぼ 100%分解し、本発明
の目的と全く反対の作用をしていることが判った。しか
し、ムコール (Mucor)属菌由来の蛋白質分解酵素だけ
は、αs-カゼインの残存量にくらべてβ−カゼインの残
存量が高くαs-カゼインを選択的に分解している。
【0021】このため、ムコール・ジャンセイン(Mucor
janssein)(IAM 6100) の産生する蛋白質分解酵素をカ
ゼインg当たり、プロテアーゼ活性で 1、2 、3 、4 、
5 及び10単位添加して、αs-カゼインとβ−カゼインの
分解率を調べた。その結果、表3のようになった。
【0022】表3から明らかなようにムコール・ジャン
セイン(IAM 6100)由来の蛋白質分解酵素は、特定の添加
量の範囲においてβ−カゼインの分解率が低いにもかか
わらず、αs-カゼインを分解していることが判る。
【0023】
【表3】
【0024】またこの蛋白分解物を、エライザの抑制試
験法により抗原性試験を行ったところ、全カゼインの分
解率が約10〜15%であるにもかかわらず、アレルゲン性
が低い。その結果を図1に示す。図1に示すようにαs-
カゼイン又は全カゼインの10分の1 以下に低下すること
が判った。そしてこれらの分解物は、ほとんど苦味がな
かった。すなわち、図は、縦軸は吸光度(405nm) を、横
軸は蛋白質当量(蛋白質濃度log 〔ng/ml〕) を示す。
吸光度の最大値が 2.0前後になった時の吸光度の値を作
図したものである。カゼインについて説明すると、蛋白
質当量が低い時は、吸光度の値が高く、蛋白質当量が高
くなるにつれて吸光度の値が低下する。これは試料中に
ウサギ抗αs-カゼイン抗血清に反応するものが多くなっ
ていることを示すものである。同様に分解物についても
試験したところ同じパターンになった。しかし、吸光度
の値で丁度中間の1.0 の付近ではカゼインに比較して分
解物の蛋白質当量が高くなっている。横軸は対数で示さ
れているので、全ての分解物の蛋白質当量は、カゼイン
の蛋白質当量に比較して10倍以上であることを示してい
る。一方これは、蛋白質濃度が同じであれば、アレルゲ
ン性が1/10以下に低減していることを意味するものであ
る。
【0025】
【試験例3】本発明者らは、αs-カゼインを選択的に分
解する蛋白質分解酵素を更に探索した。その結果、クラ
ドスポリウム(Cladosporium)属菌が産生する蛋白質分解
酵素がαs-カゼインを選択的に分解することを見出し
た。試験例1と同様に、pH7.0 に調整した5%カゼイ
ン溶液 100gに、クラドスポリウム・クラドスポリオイ
デス(C. cladosporioides)(IFO 6368)が産生する酵素液
を添加して、40℃にて60分間反応後、90℃で15分間加熱
して反応を停止させた。この酵素はカゼインg当たりプ
ロテアーゼ活性で0.3 、0.6 、1 、2 、3 及び5 単位添
加した。得られた分解物のαs-カゼインとβ−カゼイン
の残存量を表4に示す。
【0026】
【表4】
【0027】表4から明らかなようにクラドスポリウム
(Cladosporium)属菌由来の蛋白質分解酵素は、プロテア
ーゼ活性で0.6 単位添加すると全カゼイン中のαs-カゼ
インを 100%消失できることが判った。またβ−カゼイ
ンはプロテアーゼ活性で0.6単位では、95%残存してい
た。更にこの蛋白質分解物のアレルゲン性について測定
したが10分の1 以下に低下することが判った。その結果
を図2に示す。
【0028】試験例3と同様にクラドスポリウム・ヘル
バラム(C. herbarum)(IFO 5059) とクラドスポリウム・
レシナエ(C. resinae)(IFO 6367)についても実験した結
果β−カゼインの分解率が低く、αs-カゼインを分解し
ていた。また分解物のアレルゲン性について測定したが
同じ様に低下していることがが判った。
【0029】以下に本発明の実施例を示す。
【実施例1】pH7.0 に調整した5%カゼイン溶液 100
gに、蛋白質分解酵素液を添加して、40℃にて60分間反
応後、90℃で15分間加熱して反応を停止させた。酵素
は、ムコール・ジャンセイン(M. janssein)(IAM 6100)
由来の酵素をカゼインg当たり2.0単位添加した。αs-
カゼインおよびβ−カゼインそれぞれの残存量は、酵素
添加量2.0u/g−カゼインの時、0 %と72%であった。ま
た、αs-カゼインを指標とする抗原性は、1/10以下に低
下した。このようにして処理された蛋白質分解溶液を熱
風温度 173℃、排風温度98℃で噴霧乾燥して蛋白食品粉
末とし、乳幼児栄養組成物の蛋白源として用いた。
【0030】
【実施例2】pH 7.0に調整した 5%カゼイン溶液 100
gに、蛋白質分解酵素液を添加して、40℃にて60分間反
応後、90℃で15分間加熱して反応を停止させた。酵素
は、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(C. clad
osporioides)(IFO 6368)由来の酵素をカゼインg当たり
0.6単位添加した。αs-カゼインおよびβ−カゼインの
それぞれの残存量は、0 %と95%であった。また、αs-
カゼインを指標とする抗原性は、1/10以下に低下した。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例2によるムコール・ジャンセイン由来の
蛋白質分解酵素により分解された蛋白質分解物中のαs-
カゼインの吸光度と蛋白質当量との関係を示す。
【図2】試験例3によるクラドポリウム・クラドスポリ
オイデス由来の蛋白質分解酵素により分解された蛋白質
分解物中のαs-カゼインの吸光度と蛋白質当量との関係
を示す。
【符号の説明】
−●− 酵素無添加 ─△─ 酵素0.3U/g−カゼイン添加 ─□─ 酵素0.6U/g−カゼイン添加 ─▽─ 酵素1.0U/g−カゼイン添加
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 島谷 雅治 埼玉県狭山市新狭山3−1−2 レジデ ンス新狭山303号室 (72)発明者 中村 哲郎 埼玉県入間市下藤沢580−5 (72)発明者 平野 賢一 愛知県岩倉市稲荷町稲荷西212番地11 (56)参考文献 特公 昭50−10396(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23J 3/34 A23J 3/08 A23L 1/305 C12P 21/06 BIOSIS(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乳蛋白質溶液にクラドスポリウム属 (Cl
    adosporium sp.) 及び/またはムコール属 (Mucor sp.)
    に属する微生物の産生する蛋白質分解酵素を作用させて
    乳蛋白質中のαs-カゼインを選択的に分解させることを
    特徴とする低アレルゲン性乳蛋白質の製造法。
  2. 【請求項2】 クラドスポリウム属に属する微生物が、
    クラドスポリウム・ヘルバラム(C. herbarum) 、クラド
    スポリウム・クラドスポリオイデス(C. cladosporioide
    s)及びクラドスポリウム・レシナエ(C. resinae)よりな
    る群から選択される微生物である請求項1記載の製造
    法。
  3. 【請求項3】 ムコール属に属する微生物が、ムコール
    ・アングリスポーラス(M. angulisporus) 、ムコール
    ・ヒエマリス(M. hiemalis) 、ムコール・ジャンセイン
    (M. janssein) 、ムコール・ラマンニアヌス(M. ramann
    ianus)、ムコール・ルキシアヌス(M. rouxianus)及びム
    コール・ルキシー(M. rouxii) よりなる群から選択され
    る微生物である請求項1記載の製造法。
  4. 【請求項4】 酵素が、クラドスポリウム属及び/又は
    ムコール属微生物の培養物からの水抽出物である請求項
    1記載の製造法。
  5. 【請求項5】 酵素が、クラドポリウム属及び/又はム
    コール属の微生物の培養液である請求項1記載の製造
    法。
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