JP3364551B2 - 低アレルゲン性乳蛋白質の製造法 - Google Patents

低アレルゲン性乳蛋白質の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乳蛋白質中に含有する
αs-カゼインを選択的に分解して得られる低アレルゲン
性の乳蛋白質の製造法に関する。本発明で得られた乳蛋
白質は、αs-カゼインが選択的に分解されているのでア
レルゲン性が低く、しかも栄養学的に優れており、各種
食品の蛋白質源として利用することができる。
【0002】
【従来技術】牛乳中の蛋白質は、カゼインと乳清(ホエ
ー)蛋白質に大別され、そのカゼインは、主としてαs-
カゼイン、β−カゼイン、κ−カゼインから構成されて
いる。また乳清蛋白質は、主としてα−ラクトアルブミ
ン、β−ラクトグロブリンから構成されている。これら
の蛋白質の成分中、αs-カゼインとβ−ラクトグロブリ
ンは人乳中にほとんど存在しない蛋白質で、乳蛋白質を
蛋白質源として用いた育児用栄養組成物は、人工栄養児
のアレルゲンとなることがある。このため乳蛋白質から
上記のαs-カゼインやβ−ラクトグロブリンを分画また
は分解等の手段により可及的に低減化する検討が従来よ
り行われている。
【0003】例えばカゼインからαs-カゼインを分画す
る方法としては、αs-カゼインとβ−カゼインを主成分
とするカゼイン画分に0乃至10℃の温度で二価塩を添加
することによりαs-カゼインを主成分とする画分とβ−
カゼインを主成分とする画分に分ける方法(特開昭59-9
1849号公報) やゲル濾過にてカゼインを分画する方法
(R. D. Hill et al.; J.Dairy Res., 31, 291 (196
4))、そして又、カゼイン成分のαs-カゼインを蛋白質
分解酵素によって選択的に加水分解する方法(特開平6-
261691号公報)が知られている。一方、β−ラクトグロ
ブリンを分解するために乳清蛋白質水溶液に動物由来又
は微生物由来の蛋白質分解酵素を添加しβ−ラクトグロ
ブリンを選択的に分解する方法(特開平 2-265441 号公
報)も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来、乳蛋白質中のア
レルゲンとなる一成分のαs-カゼインは、二価塩と作用
させた後沈澱して分画するかゲル濾過法で分画してい
た。このため大量生産ができないあるいはコストが高く
なるといった生産上の点で問題を有していた。また得ら
れた製品自体も二価塩と作用させた後沈澱して分画した
ものは、塩濃度の高いβ−カゼインの分画物となり問題
があった。
【0005】一方、最近になって乳蛋白質中のαs-カゼ
インを蛋白質分解酵素によって選択的に加水分解する方
法が試みられているものの、使用するムコール属菌又は
クラドスポリウム属菌の産生する粗蛋白質分解酵素は、
その主体がpH6に至適活性を有するプロテアーゼであ
り、乳蛋白質中のαs-カゼインのみならずβ−カゼイン
の分解力をも有しているので、作用時間の経過と共にβ
-カゼインの残存率が著しく低下してしまう欠点があっ
た。そこで、乳蛋白質中からαs-カゼインのみを選択的
に分解する酵素が依然として求められていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、この課題
を解決するため、鋭意検討した結果、ムコール属菌の産
生する粗蛋白質分解酵素中には、pH6付近に至適活性を
有するプロテアーゼとpH3付近に至適活性を有するプロ
テアーゼとが混在しており、pH3付近に至適活性を有す
るプロテアーゼは、乳蛋白質中のαs-カゼインを選択的
に分解するがpH6付近に至適活性を有するプロテアーゼ
は、αs-カゼインのみならず、β−カゼインも同程度に
分解してしまうことを知った。そこで、新たに、ムコー
ル属菌の産生する粗蛋白質分解酵素を精製することによ
って、該粗酵素中に含まれるpH6付近に至適活性を有す
るプロテアーゼを可及的に除去して、pH3付近に至適活
性を有するプロテアーゼ画分を取得したのち、該pH3付
近に至適活性を有するプロテアーゼを乳蛋白質溶液に添
加することによって、αs-カゼインを選択的に分解し、
αs-カゼインの低減された低アレルゲン性乳蛋白質を得
ることができ、本発明を完成した。即ち、本発明は、ム
コール属菌の産生する、pH3付近に至適活性を有するプ
ロテアーゼ(以下本発明の「pH3付近に至適活性を有す
るプロテアーゼ」という。)を乳蛋白質溶液に作用させ
て、乳蛋白質中のαs-カゼインを選択的に分解させるこ
とを特徴とする低アレルゲン性乳蛋白質の製造法であ
る。
【0007】本発明で使用する出発原料としての乳蛋白
質は、全脂乳、脱脂乳或いはこれらの乳原料から分画し
たカゼインの何れをも使用することができるが、好まし
い乳蛋白質は、カゼインである。
【0008】次に乳蛋白質溶液に蛋白質加水分解酵素と
して、本発明のpH3付近に至適活性を有するプロテアー
ゼを添加して酵素処理をする。酵素処理の条件は、本発
明のpH3付近に至適活性を有するプロテアーゼが、その
活性を保持する条件で有ればいずれにてもよく、特に限
定されないが、より好ましくは、中性pH付近で30〜70
℃、30分〜30時間処理するのがよい。
【0009】本発明のpH3付近に至適活性を有するプロ
テアーゼを生産する菌株は、ムコール属に属する菌株で
あり、例示すれば、ムコール・アングリスポーラス(Muc
or angulisporus)、ムコール・ヒエマリス(Mucor hiema
lis)、ムコール・ジャンセイン (Mucor janssein)、ム
コール・ラマンニアヌス(Mucor ramannianus)、ムコー
ル・ルキシアヌス(Mucor rouxianus)及びムコール・ル
キシー(Mucor rouxii)が挙げられる。
【0010】これらの微生物のうち、例えば、ムコール
・ジャンセイン(M. janssein) を用いて固体培養を行っ
て、粗酵素を調製し、次いで精製し、本発明のpH3付近
に至適活性を有するプロテアーゼを得る方法を以下に例
示するが、他のムコール属菌からも同様にして、本発明
のpH3付近に至適活性を有するプロテアーゼを得ること
ができる。
【0011】ふすま 180gに水 150 mlを添加し、殺菌
後ムコール・ジャンセイン(M. janssein)IAM 6100の種
麹を接種し、30℃で 4日間培養した。培養後得られた麹
に水を500 ml加え、低温度で一夜抽出を行い 300 mlの
粗酵素液を得た。この粗酵素液のpH3のプロテアーゼ活
性は、16.7 u/mlであり、pH6のプロテアーゼ活性は6.3
u/mlであった。次いで得られた粗酵素液300 mlを硫安塩
析を2回行い、夾雑蛋白質を除去し、膜にて脱塩し、脱
塩液をリン酸緩衝液(pH 7.0)にて緩衝化したDEAE-ト
ヨパールカラムに吸着させ、洗浄後0〜600 mMのNaClに
て濃度勾配法で溶離を行ない、活性分画区分1、2及び
3を分取した。活性分画区分1よりpH3付近に至適活性
を有するプロテアーゼ液を得(pH3のプロテアーゼ活性
は、7.4u/mlであった。)、活性分画区分2及び活性分
画区分3より、それぞれpH6付近に至適活性を有するプ
ロテアーゼ液を得た(pH6のプロテアーゼ活性は 、そ
れぞれ4.2 u/ml及び6.4 u/mlであった。)尚、得られた
精製酵素のDEAE-トヨパールクロマトグラフ及び該クロ
マトにより得られた各活性分画区分の至適pH曲線は、図
1及び図2に示される。
【0012】このようにして調製した活性分画区分1由
来の本発明のpH3付近に至適活性を有するプロテアーゼ
の酵素化学的性質は、次の通りである。 (1)作用:カゼイン等の乳蛋白質に作用してペプチドを
生成する。 (2)基質特異性:乳蛋白質中のαs-カゼインをよく分解
するが、β−カゼインの分解力は弱い。 (3)至適pH:3.0付近 (4)至適温度:60℃付近 (5)pH安定性:pH2.5〜6.0で安定。 (6)耐熱性:45℃、10分処理で75%残存する。 (7)等電点:PI=6.1(等電点クロマトによる。)
【0013】本発明においては、上記の酵素を用い、そ
して添加量としてはカゼイン g当たり、pH7のプロテア
ーゼ活性として 0.01〜100単位添加して処理することに
より、乳蛋白質中のβ−カゼインの分解を少なくし、α
s-カゼインを選択的に加水分解することができる。この
ような方法によって得られた、αs-カゼインの分解され
た乳蛋白質は、そのまま或いは乾燥粉末化して、食品や
乳幼児栄養組成物等の蛋白質源として用いることができ
る。そして、これらの食品や乳幼児栄養組成物は、アレ
ルゲンが低減され、且つ、栄養学的に優れたものであ
る。また乳幼児の栄養組成物に用いると、予めカゼイン
蛋白質中のαs-カゼインが酵素で分解されているため、
胃内で柔らかいカードが形成され、消化し易くなる。
【0014】上記の如くして得られた本発明のpH3付近
に至適活性を有するプロテアーゼ活性分画区分1、活性
分画区分2及び活性分画区分3の各成分のそれぞれを用
いて、カゼイン蛋白質中のαs-カゼイン分解率及びβ−
カゼイン分解率を比較した結果を試験例1に示す。
【0015】試験例1 乳蛋白質溶液の反応 pH 7.0に調整した5%カゼイン溶液に、DEAE-トヨパール
クロマトグラフの活性分画区分1(本発明のpH3付近に
至適活性を有するプロテアーゼ)、活性分画区分2及び
活性分画区分3のそれぞれの酵素液(何れもカゼインg
当たりpH7のプロテアーゼ活性で1単位づつ)を添加し
て40℃で、30分、60分、90分、120分、150分及び180分
の各時間反応後、各々を90℃で15分間加熱して反応を停
止させ、それぞれの蛋白質分解率とαs-カゼインの残存
率およびβ−カゼインの残存率との関係を調べた。その
結果は、図3、図4及び図5に示される。尚、蛋白質の
分解率、αs-カゼインとβ−カゼインの残存率およびプ
ロテアーゼ活性(pH3、pH6及びpH7の各プロテアー
ゼ活性)の測定は、次の方法に従って行った。
【0016】(1)分解率の測定法 分解液2.5ml に精製水7.5ml を加え、40℃の恒温槽に5
分間放置する。その後、10%酢酸溶液1mlを加え、40℃
で5分間放置後、1N酢酸ナトリウム溶液1ml を加え、40
℃で10分間放置後、精製水にて50mlにメスアップし、東
洋濾紙No.5C で濾過する。この濾液および分解前のカゼ
イン溶液について、フォーリン試薬反応を行い、分解率
を算出した。
【0017】(2)αs-カゼインとβ−カゼインの残存率
の測定法 試料を4.5M尿素及びメルカプトエタノールを含むトリス
−塩酸緩衝液にて処理し、次に4.5M尿素を含むポリアク
リルアミドゲルを用いて電気泳動を行った。泳動して染
色・脱色を行った後、デンシトメトリーを行い、αs-カ
ゼイン、β−カゼインの各ピーク面積より残存率を求め
た。
【0018】(3)プロテアーゼ活性の測定方法 pH3のプロテアーゼ活性測定用基質 カゼイン溶液pH3.0の調製:ミルクカゼイン(メルク製
ハマーステインNo.2242)を1.5g秤量し、0.1 M乳酸溶
液60 mlを加え、90〜95℃で加温溶解した後冷却する。
冷却後、希水酸化ナトリウム試液(0.1N)でpH3.0に調
整し、0.1 M乳酸・水酸化ナトリウム緩衝液(pH3.0)20
ml及び水を加えて100 mlとする。
【0019】pH6のプロテアーゼ活性測定用基質 カゼイン溶液pH6.0の調製:ミルクカゼイン(メルク製
ハマーステインNo.2242)を1.5g秤量し、希水酸化ナト
リウム試液(0.1N)20 mlを加え、90〜95℃で加温溶解
した後冷却する。冷却後、0.1Nリン酸溶液でpH6.0に調
整し、0.1 Mリン酸緩衝液(pH6.0)20 ml及び水を加え
て100 mlとする。
【0020】pH7のプロテアーゼ活性測定用基質 カゼイン溶液pH7.0の調製:ミルクカゼイン(メルク製
ハマーステインNo.2242)を1.5g秤量し、希水酸化ナト
リウム試液(0.1N)20 mlを加え、90〜95℃で加温溶解
した後冷却する。冷却後、0.1Nリン酸溶液でpH7.0に調
整し、0.1 Mリン酸緩衝液(pH7.0)20 ml及び水を加え
て100 mlとする。
【0021】各プロテアーゼ活性の測定方法:1.5 %ミ
ルクカゼイン溶液(pH3.0、pH6.0又はpH7.0)1mlを試
験管にとり、37 ℃の恒温水槽中に入れ、5分間放置し
た後、試料溶液1mlを加え、よく混合して直ちに37 ℃
の恒温水槽中に入れ、30分間反応する。これに0.4Mトリ
クロロ酢酸溶液2mlを加え、よく混合して室温で10分間
放置した後、濾紙(東洋NO.131.7cm)で濾過し、濾液1
mlを試験管にとり、0.55M 炭酸ナトリウム溶液5mlおよ
びフォーリン試液1mlを加えよく混合し、50℃の恒温水
槽中で5分間反応して発色させた後、水を対照として波
長660nm における吸光度Atを測定する。別に空試験
(ブランク)として、ミルクカゼイン溶液1mlを試験管
にとり、0.4Mトリクロロ酢酸溶液2mlを加え、よく混合
した後、試料溶液1mlを正確に加えたものにつき、以下
同様に操作して吸光度Abを測定する。
【0022】活性表示:本条件下、60分間に反応濾液1
mlにチロシン 100μg に相当する呈色物質を生成する酵
素量をプロテアーゼ活性1単位とし次式により算出す
る。 プロテアーゼ(u/g) =( At−Ab )× F × 1/100 × n × 2 F:チロシン検量線より求めた吸光度差が1.0 の時のチ
ロシン量(μg) F=100 2, 1/100 :単位換算係数 n:試料溶液の希釈倍数
【0023】図3から明らかなように、本発明のpH3付
近に至適活性を有するプロテアーゼは、乳蛋白質中のα
s-カゼインをよく分解するが、β-カゼインをほとんど
分解しないことが分かる。それに対し、図4及び図5よ
り明らかなように、pH6付近に至適活性を有するプロテ
アーゼを主として含むDEAE-トヨパールクロマトグラフ
の活性分画区分2及び活性分画区分3は、いずれもαs-
カゼインの分解力が弱く、且つαs-カゼインとβ-カゼ
インの分解を同程度に行うことが分かる。従って、ムコ
ール属菌の産生する粗蛋白質分解酵素から、pH6付近に
至適活性を有するプロテアーゼを可及的に除去して得ら
れた、本発明のpH3付近に至適活性を有するプロテアー
ゼは、乳蛋白質中のαs-カゼインを選択的に分解する本
願発明の目的に、効率的に使用できることが分かる。
【0024】次に、特開平6-261691号公報の記載に準じ
て調製せられた粗蛋白質分解酵素(pH6付近に至適活性
を有するプロテアーゼとpH3付近に至適活性を有するプ
ロテアーゼとの混合物である。)と本発明のpH3付近に
至適活性を有するプロテアーゼとを用いて、カゼイン蛋
白質中のαs-カゼイン分解度及びβ−カゼイン分解度を
比較した。その結果を試験例2に示す。
【0025】試験例2 乳蛋白質溶液の反応 pH6.5又はpH 7.0に調整した5%カゼイン溶液 100gに
特開平6-261691号公報の記載に準じて調製せられた粗蛋
白質分解酵素液及び本発明のpH3付近に至適活性を有す
るプロテアーゼ液(それぞれカゼインg当たりpH7のプ
ロテアーゼ活性0.5単位ずつ)を添加して40℃で30分間
反応後、90℃で15分間加熱して反応を停止させた。それ
ぞれのαs-カゼインの残存率およびβ−カゼインの残存
率を図6、図7、図8及び図9に示す。
【0026】図6及び図7から明らかなように、特開平
6-261691号公報の記載に準じて調製せられた粗蛋白質分
解酵素を使用した場合には、pH6付近に至適活性を有す
るプロテアーゼが多量存在しており、pH6.5及びpH7.0の
何れの反応条件下にても作用時間の経過とともに、αs-
カゼインのみならずβ−カゼインの分解も進んでしまう
ことが分かる。しかし、図8及び図9から明らかなよう
に、本発明のpH3付近に至適活性を有するプロテアーゼ
を用いた場合には、pH6.5及びpH7.0の何れの反応条件下
にても作用の経過と共に、αs-カゼインの分解は進むも
のの、β−カゼインの分解は遅く進行する。そして、一
定時間反応経過後の、反応生成物中に残存するβ−カゼ
インとαs-カゼインの差をとると、約40〜50%の一定値
を示し続けることが分かる。即ち、図6、図7及び図
8、図9を比較した結果から、本発明のpH3付近に至適
活性を有するプロテアーゼを用いることによって、乳蛋
白質中のβ−カゼインを残存させつつ、αs-カゼインを
選択的に分解させ得ることが分かる。
【0027】尚、本発明のpH3付近に至適活性を有する
プロテアーゼによる分解物(分解率は約13%)のアレル
ゲン性を抗αs-カゼイン血清を用いたエライザ(ELI
SA:Enzyme linked immunosorbent assay )抑制試験
法により測定した結果、抗原性は1/100に低下してい
た。尚、アレルゲン性試験は次の方法によって行った。
【0028】アレルゲン性の試験方法 抗原性は、酵素免疫測定法(Enzyme-linked immunosolbe
nt assey:ELISA) の抑制試験法により行った。96穴プレ
ート(ヌンク社製)にαs-カゼインをコーティングして
洗浄し、ウサギ抗αs-カゼイン血清と加水分解物試料の
混合液をプレートの穴に供給して反応させ、洗浄後アル
カリホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギIgG 抗体(ツァイ
メド・ラボラトリー社製) を反応させたのち洗浄し、p-
ニトロフェニルリン酸ナトリウムを添加し、30分後に5N
水酸化ナトリウムを添加して反応を停止させ、反応生成
物をマイクロプレートリーダーで測定した。(日本小児
アレルギー学会誌、第1巻、第36頁、1987年)
【0029】以下に本発明の実施例を示すが、これらの
実施例によって本発明は限定されるものではない。
【0030】実施例1 pH 7.0 に調整した5%カゼイン溶液に、ムコール・ジ
ャンセイン(M. janssein)IAM 6100 由来のpH3付近に至
適活性を有するプロテアーゼ液(カゼインg当たりpH7
のプロテアーゼ活性で0.5単位)を添加して、50℃にて6
0分間反応後、90℃で15分間加熱して反応を停止させ
た。αs-カゼイン及びβ−カゼインそれぞれの残存率
は、23 %と72%であった。また、αs-カゼインを指標
とする抗原性は、1/100以下に低下した。このようにし
て処理された蛋白質分解溶液を熱風温度 173℃、排風温
度98℃で噴霧乾燥して蛋白食品粉末とし、乳幼児栄養組
成物の蛋白源として用いた。
【0031】実施例2 pH 6.5に調整した 5%カゼイン溶液に、ムコール・アン
グリスポーラス(M. angulisporus)IAM 6151由来のpH3
付近に至適活性を有するプロテアーゼ液(カゼインg当
たりpH7のプロテアーゼ活性で0.6単位)を添加して、4
0℃にて90分間反応後、90℃で15分間加熱して反応を停
止させた。αs-カゼインおよびβ−カゼインのそれぞれ
の残存率は、22 %と65%であった。また、αs-カゼイ
ンを指標とする抗原性は、1/100以下に低下した。
【0032】実施例3 pH7.0 に調整した5%カゼイン溶液に、ムコール・ヒ
エマリス(M. hiemalis) IAM 6090 由来のpH3付近に至
適活性を有するプロテアーゼ液(カゼインg当たりpH7
のプロテアーゼ活性で0.5単位)を添加して、50℃にて7
0分間反応後、90℃で15分間加熱して反応を停止させ
た。αs-カゼイン及びβ−カゼインそれぞれの残存率
は、25 %と69%であった。また、αs-カゼインを指標
とする抗原性は、1/100以下に低下した。このようにし
て処理された蛋白質分解溶液を熱風温度 173℃、排風温
度98℃で噴霧乾燥して蛋白食品粉末とし、乳幼児栄養組
成物の蛋白源として用いた。
【0033】実施例4 pH 6.5に調整した 5%カゼイン溶液に、ムコール・ラマ
ンニアヌス(M. ramannianus) IAM 6128由来のpH3付近
に至適活性を有するプロテアーゼ液(カゼインg当たり
pH7のプロテアーゼ活性で0.4単位)を添加して、40℃
にて120分間反応後、90℃で15分間加熱して反応を停止
させた。αs-カゼインおよびβ−カゼインのそれぞれの
残存率は、28%と68%であった。また、αs-カゼインを
指標とする抗原性は、1/100以下に低下した。
【0034】実施例5 pH 7.0 に調整した5%カゼイン溶液に、ムコール・ル
キシアヌス(M. rouxianus) IAM 6132 由来のpH3付近に
至適活性を有するプロテアーゼ液(カゼインg当たりpH
7のプロテアーゼ活性で0.5単位)を添加して、45℃に
て60分間反応後、90℃で15分間加熱して反応を停止させ
た。αs-カゼイン及びβ−カゼインそれぞれの残存率
は、30 %と71%であった。また、αs-カゼインを指標
とする抗原性は、1/100以下に低下した。このようにし
て処理された蛋白質分解溶液を熱風温度 173℃、排風温
度98℃で噴霧乾燥して蛋白食品粉末とし、乳幼児栄養組
成物の蛋白源として用いた。
【0035】実施例6 pH 6.5に調整した 5%カゼイン溶液に、ムコール・ルキ
シー(M. rouxii) IAM1066由来のpH3付近に至適活性を
有するプロテアーゼ液(カゼインg当たりpH7のプロテ
アーゼ活性で0.6単位)を添加して、45℃にて100分間反
応後、90℃で15分間加熱して反応を停止させた。αs-カ
ゼインおよびβ−カゼインのそれぞれの残存率は、27%
と69%であった。また、αs-カゼインを指標とする抗原
性は、1/100以下に低下した。
【0036】
【発明の効果】本発明のpH3付近に至適活性を有するプ
ロテアーゼを乳蛋白質溶液に作用させて、β−カゼイン
の分解を少なくし、αs-カゼインを選択的に加水分解す
るため、大量生産が可能であり、生産コストを低減させ
ることができ、かつ得られた加水分解物は、アレルゲン
が低減されると同時に、栄養学的にも優れたものとな
る。そして、このように処理された乳蛋白質は、食品あ
るいは乳幼児栄養組成物の蛋白源として有用に利用され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ムコール・ジャンセイン IAM 6100を培養して
得られた粗蛋白質分解酵素液をDEAE−トヨパールカラム
に吸着した後、食塩溶液で溶離した精製蛋白質分解酵素
のパターン図である。図中点線は、pH3のプロテアーゼ
活性を、実線はpH6のプロテアーゼ活性をそれぞれ示
す。
【図2】DEAE−トヨパールクロマトグラフの各活性分画
区分の至適pH曲線を示す。
【符号の説明】
図中の白四角は活性分画区分1の、白丸は、活性分画区
分2の、そして黒丸は活性分画区分3のそれぞれの酵素
のpH活性曲線を示す。
【図3】試験例1における本発明のpH3付近に至適活性
を有するプロテアーゼにより分解された乳蛋白質分解率
とαs-カゼインの残存率及びβ−カゼインの残存率との
関係を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸はαs-カゼインの、白三角はβ−カゼインの
残存率である。
【図4】試験例1におけるDEAE−トヨパール活性分画区
分2により分解された、乳蛋白質分解率とαs-カゼイン
の残存率及びβ−カゼインの残存率との関係を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸はαs-カゼインの、白三角はβ−カゼインの
それぞれの残存率である。
【図5】試験例1におけるDEAE−トヨパール活性分画区
分3により分解された、乳蛋白質分解率とαs-カゼイン
の残存率及びβ−カゼインの残存率との関係を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸はαs-カゼインの、白三角はβ−カゼインの
それぞれの残存率である。
【図6】試験例2における特開平6-211691号公報の記載
に準じて調製せられた粗蛋白質分解酵素によりpH6.5で
分解された、乳蛋白質分解物中のαs−カゼインの残存
率及びβ−カゼインの残存率を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸はαs-カゼインの、白三角はβ−カゼインの
それぞれの残存率である。
【図7】試験例2における特開平6-211691号公報の記載
に準じて調製せられた粗蛋白質分解酵素によりpH7.0で
分解された、乳蛋白質分解物中のαs−カゼインの残存
率及びβ−カゼインの残存率を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸はαs-カゼインの、白三角はβ−カゼインの
それぞれの残存率である。
【図8】試験例2における本願のpH3付近に至適活性を
有するプロテアーゼによりpH6.5で分解された、乳蛋白
質分解物中のαs-カゼインの残存率及びβ−カゼインの
残存率を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸はαs-カゼインの、白三角はβ−カゼインの
それぞれの残存率である。
【図9】試験例2における本願のpH3付近に至適活性を
有するプロテアーゼによりpH7.0で分解された、乳蛋白
質分解物中のαs-カゼインの残存率及びβ−カゼインの
残存率を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸はαs-カゼインの、白三角はβ−カゼインの
残存率である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 哲郎 埼玉県入間市下藤沢580−5 (72)発明者 平野 賢一 愛知県西春日井郡西春町大字九之坪西城 屋敷51 天野製薬株式会社 中央研究所 内 (56)参考文献 特開 平6−261691(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23J 3/34 A23J 3/08 - 3/10 A23L 1/305 C12P 21/06 BIOSIS(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ムコール属菌の産生する、pH3付近に至適
    活性を有するプロテアーゼを乳蛋白質溶液に作用させ
    て、乳蛋白質中のαs-カゼインを選択的に分解させるこ
    とを特徴とする低アレルゲン性乳蛋白質の製造法。
  2. 【請求項2】ムコール属菌が、ムコール・アングリスポ
    ーラス、ムコール・ヒエマリス、ムコール・ジャンセイ
    ン、ムコール・ラマンニアヌス、ムコール・ルキシアヌ
    ス及びムコール・ルキシーよりなる群から選択される菌
    種である請求項1記載の製造法。
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