JP2001343340A - 光電子分光装置および測定方法 - Google Patents

光電子分光装置および測定方法

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JP2001343340A
JP2001343340A JP2000167976A JP2000167976A JP2001343340A JP 2001343340 A JP2001343340 A JP 2001343340A JP 2000167976 A JP2000167976 A JP 2000167976A JP 2000167976 A JP2000167976 A JP 2000167976A JP 2001343340 A JP2001343340 A JP 2001343340A
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Hisami Nakamura
久美 中村
Shigeki Yoshida
茂樹 吉田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 微小部の分析、特に分析領域の限定性を向上
させ、特定領域からのみの信号を信頼性高く検出する光
電子分光装置を提供する。 【解決手段】 X線もしくは紫外線をプローブとして試
料に照射し、試料から放出される電子の量を運動エネル
ギー別に検出する光電子分光装置において、試料1の所
望の分析箇所を決定する手段と、該分析箇所の周囲を集
束イオンビーム装置9でエッチングする手段と、該試料
にバイアスを印加する手段3と、該バイアスの印加によ
る信号ピークの移動量をもとにバイアスを調整する手段
15とを具備する光電子分光装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、物質表面の元素分
析やその状態などを分析する光電子分光装置に係り、特
に微小部分析において、入射線照射領域や検出系の光学
系で決定される分析領域より小さい領域を分析したり、
分析領域の限定性を高めたり、分析領域を任意に設定で
きる手段を具備した光電子分光装置及び光電子分光測定
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子分光法とは試料から放出される電子
のエネルギーや強度分布を調べることにより、その試料
に含まれる元素やその化学結合状態、あるいは試料の電
子構造に関する情報を得る方法である。試料表面から電
子が放出されるための励起線には、電子線,X線,紫外
線,イオンを用いるが、例えばX線を照射して表面から
放出される光電子を観測する場合はX線光電子分光(X
PS又はESCA)法と呼ばれ、試料の極表面の元素分
析やその化学結合状態を与える手法としてよく知られて
いる。この他にも紫外光を用いる紫外線光電子分光(U
PS)法、集束電子線を用いるオージェ電子分光(AE
S)法もよく知られている。
【0003】近年、微小部の分析に対するニーズも一層
高まってきており、これまで微小部分析が不得手であっ
たX線光電子分光(XPS)や紫外線光電子分光(UP
S)においても数十ミクロン程度の分析領域が実用とな
ってきている。電子分光装置、とりわけXPS、UPS
などの電子分光装置における微小部分析手段は、 分光結晶による集光方式(例えば、Surf.an
d InterfaceAnal.6,215(198
4)) 制限視野方式(例えば、Surf.and Int
erface Anal.5,217(1983)) 試料表面へのマスキングによる分析領域の限定 のような手段で行われるのが一般的である。
【0004】の手段は、アノードで発生したX線を分
光結晶により単色化すると同時に、試料表面上に焦光照
射することで微小部分析を実現する方法である。現在で
は、照射領域は<100μmサイズ程度まで実現されて
おり、X線の照射された局所領域のスペクトル解析が可
能である。ただし、通常このように数字で表されるビー
ム径は定義によつて示されるものであり、実際はビーム
の”ぼけ”によって、照射領域は数字以上に広いものと
なる。
【0005】の手段は、アナライザーのインプットレ
ンズに制限視野アパーチャーを設けることにより、局所
領域から発生した光電子のみを選択的に検出する。これ
により、局所領域のスペクトル解析が可能となる。この
方法はに比べると、はるかに分析領域の限定能力が高
く、現在微小部分析において最も一般的に使用されてい
る手段である。
【0006】の手段は、試料表面にマスクを形成し、
分析領域を限定しようとする方法である。例えば、金属
等で電子分光装置の分析領域よりも小さい穴をパターニ
ングしたマスクを作製し、これを試料表面に設置し、分
析する方法が挙げられる。あるいは、逆のパターニング
を施したマスクを作製し(すなわち、分析領域以外の領
域をパターニングする)、これを利用して、試料表面の
分析領域の周囲に任意の金属薄膜などを形成し、分析領
域を限定する方法も考えられる。これらの方法は、大幅
な装置の改造が必要ないため、上記のような機能を
具備していない装置であっても、比較的簡便により小さ
な領域からの信号を分析することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記各種微小部の測定
方法において、集光X線照射による方法では、上記の
ようにX線の広がりで分析領域がぼけてしまうため、実
際の分析領域の限定性はかなり低下してしまう。制限
視野による方法は、よりは分析領域の限定能力は高い
が、投影モードによる結像系を利用するため、やはりレ
ンズ系の収差のため”ぼけ”が生じ、制限した視野より
も、やはりやや広い領域を分析してしまう。の方法
は、簡便ではあるが、以下に示すような問題点がある。
【0008】すなわち、穴を形成したマスクを試料表面
に設置して測定する方法では、a)分析試料面とマスク
表面の共通元素は区別が付かないなどがあり、また、分
析個所周囲に薄膜を形成する方法では、分析試料面にマ
スクを接して配する場合は、b)分析試料面とマスクが
接する事による試料表面の汚染等があり、試料表面とマ
スクを離して設置する場合は、c)蒸着材料の回り込み
によるパターニング精度の低下、などが挙げられる。
【0009】上記a)のようにマスクを設置する場合、
導電物と絶縁物を分離して分析するにはロックイン技術
が有効である。例えば、導電物試料表面の所望の分析箇
所周辺に絶縁膜を形成し、導電性の該試料に電圧変調を
かけ、これに同調する信号のみをロックインアンプで検
出する。このようにすれば、所望の分析箇所の信号を信
頼性高く分析することができる。ただし、この方法は、
絶縁物試料上の所望の分析箇所周囲に導電膜を形成した
時には、分析箇所を直接分析することはできない。この
ような時は、電圧変調をかけずに普通に該分析箇所とそ
の周囲に形成した導電膜を両方含むように測定し、その
後電圧変調をかけ、ロックイン方式で測定した導電膜か
らの結果を先に測定した結果から差し引くなどの手段を
とれば分析可能である。しかし、変調手段やロックイン
アンプなど装置設備がやや複雑になったり、2度測定し
なければならないなど手間もかかる。
【0010】本発明は、上記問題点を鑑みてなされたも
のであり、より微小部の分析、特に分析領域の限定性を
向上させ、特定領域からのみの信号を信頼性高く検出す
る光電子分光装置および測定方法を提供することを目的
としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の第一の発
明は、X線もしくは紫外線をプローブとして試料に照射
し、試料から放出される電子の量を運動エネルギー別に
検出する光電子分光装置において、試料の所望の分析箇
所を決定する手段と、該分析箇所の周囲を集束イオンビ
ーム装置でエッチングする手段と、該試料にバイアスを
印加する手段と、該バイアスの印加による信号ピークの
移動量をもとにバイアスを調整する手段とを具備するこ
とを特徴とする光電子分光装置である。
【0012】前記バイアスを印加したことによって移動
する信号ピークを検出する手段を具備することが好まし
い。
【0013】本発明の第二の発明は、X線もしくは紫外
線をプローブとして試料に照射し、試料から放出される
電子の量を運動エネルギー別に検出する光電子分光測定
方法において、試料の所望の分析箇所の周囲を集束イオ
ンビーム装置によってエッチングしてエッチング領域を
形成した後、該試料の所望の分析箇所とその周囲のエッ
チング領域の両方に電離放射線を照射すると共に、試料
の導電部にバイアスを印加することによって、所望の分
析箇所とその周囲のエッチング領域からの信号を分離
し、該所望の分析箇所からの信号を抽出することを特徴
とする光電子分光測定方法である。
【0014】前記所望の分析箇所からの注目信号ピーク
のバックグラウンド強度が増加しないように試料へのバ
イアス印加を調整することが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光電子分光装置は、X線もしくは紫外線をプロ
ーブとして試料に照射し、試料から放出される電子の量
を運動エネルギー別に検出する光電子分光装置におい
て、試料の所望の分析箇所を決定する手段と、分析箇所
の周囲を集束イオンビーム装置でエッチングする手段
と、該試料にバイアスを印加する手段と、該バイアスに
よる信号ピークの移動量をもとにバイアスを調整する手
段とを具備する事を特徴とする光電子分光装置であり、
バイアス印加したことによって移動する信号ピークを検
出する手段を具備することを特徴とする光電子分光装置
である。
【0016】また、本発明の光電子分光測定方法は、X
線もしくは紫外線をプローブとして試料に照射し、試料
から放出される電子の量を運動エネルギー別に検出する
光電子分光測定方法において、試料の所望の分析箇所周
囲を集束イオンビーム装置によってエッチングし、試料
の所望の分析箇所とその周囲のエッチング領域の両方に
X線もしくは紫外線を照射し、試料の導電部にバイアス
を印加することによって、所望の分析箇所とその周囲の
エッチング領域からの信号を分離し、所望の分析箇所か
らの信号を抽出することを特徴とする光電子分光の測定
方法であり、所望の分析箇所からの注目信号ピークのバ
ックグラウン強度が増加しないように、試料へのバイア
ス印加を調整することを特徴とする。
【0017】次に、本発明の実施の形態をX線光電子分
光分析装置及び測定方法を例にとって以下に述べる。本
発明による光電子分光装置を図1に示した。本発明によ
る光電子分光装置の構成および測定方法は以下の通りで
ある。
【0018】図1は本発明の実施形態を示す説明図であ
る。図1において、1は試料、2は試料の導電部、3は
直流電源、4はX線源、4’は照射X線、5は中和電子
銃、5’は照射電子線、6は試料から放出される光電
子、7は真空チャンバー、8は試料観察装置、9は集束
イオンビーム装置、11は電子エネルギー分析器、12
は真空ポンプ、13は制御装置、14はディスプレイ、
15は試料に印加する電圧値を最適化する調整装置であ
る。また、図2において、16は光電子取り込み領域、
16’は所望の分析箇所である。
【0019】なお、光電子取り込み領域16は、先に述
べた「分光結晶による集光方式」により照射X線自体
で決定する場合と、アパーチャーや取り込みレンズ等を
用いた「制限視野方式」で決定する場合の両者を包含
する。
【0020】まず、試料を装置内に導入したら、試料観
察装置8により、試料の所望の分析箇所の特定を行う。
分析箇所の特定をするための手段は試料表面にダメージ
を与えないものであれば何でも良いが、例えば光学頭微
鏡、CCDカメラ、走査電子顕微鏡等が良い。その後集
束イオンビーム装置9で所望の分析箇所16’の周囲を
エッチングする。
【0021】集束イオンビーム装置9は所望の特定領域
にGaイオンを集束させて、その領域だけをスパッタエ
ッチングする方法である。集束イオンビーム装置(以下
FIB装置と略す)では高電圧で加速したイオンビーム
(通常はGaイオン)を試料表面上に集束し(ビーム径
0.01〜0.1μm)、走査させる事で”任意の”箇
所をマスクレスでスパッタエッチングし、サブミクロン
の精度で平滑な断面をつくることができる。
【0022】本発明においては、イオンビーム装置の各
種条件は通常断面TEM用試料加工等に用いる条件を適
用すれば良く、例えば加速電圧30kV、電流は数pA
〜数十μAを用いる。
【0023】図2は、本発明による試料の加工形態の例
を示す図である。図2(a−1),図2(b−1),図
2(c−1)は各々の加工形態例の平面図を示し、図2
(a−2)はAA’線断面図,図2(b−2)はBB’
線断面図,図2(c−2)はCC’線断面図を示す。
【0024】エッチングのパターンは分析箇所の周囲を
閉じた形で形成されている事が望ましい(図2(a))
が、開放系のパターニングであっても、分析領域内にお
ける所望の分析箇所以外でエッチングされていない領域
が十分小さければ構わない(図2(b))。
【0025】具体的には、所望の分析箇所16’が導電
体上の絶縁物である場合は、所望の分析箇所16’の周
囲全域をエッチングし、また、所望の分析箇所16’が
絶縁体上の導電物である場合は、所望の分析箇所16’
の周囲を一部の導通を残してその他の周囲の領域をエッ
チングする。但しエッチングのパターンは少なくとも電
子分光装置の光電子取り込み領域16よりも大きい範囲
をエッチングするようなパターンが必要である。
【0026】また、切り出した試料片において、所望の
分析箇所16’の周囲全てをエッチングしてしまっても
良いし(図2(a))、所望の分析箇所16’の周囲で
あって光電子取り込み領域16より十分大きな領域をエ
ッチングすれば、全てがエッチングされていなくても良
い(図2(c))。また、エッチング時の所望の分析箇
所16’の形状は何でもよく、例えば四角形等の多角
形、円形、楕円形、一方向に長い形状など所望の形が選
択できる。
【0027】なお、本発明の測定方法に適用可能な試料
については、少なくとも所望の分析箇所16’部を含む
光電子取り込み領域16の領域において、導電性物質と
絶縁性物質が積層された構造のものに適用する事ができ
る。例えば導電性基板上の絶縁膜、もしくは絶縁体のガ
ラス基板上の金属膜、あるいは、Au/SiO2 /Si
基板、等のように3層以上の積層構造を持つものでも良
い。
【0028】また各導電膜、あるいは絶縁膜の厚みにつ
いては、測定したい最表面層と、これと著しく電気抵抗
の差がある層(最表面層が導電性ならば絶縁性膜の層、
表面が絶縁性膜ならば導電性の層)までの間の層につい
ては、最も下層の基板を除き、それぞれ数μm以下、特
に絶縁層については、1μm以下の厚みである事が望ま
しい。これはエッチング時間が長くなりすぎるとイオン
ビームにドリフトが生じて位置ずれを起こす可能性があ
ること、また、絶縁層については、厚くなりすぎるとチ
ャージアップによリエッチングできなくなる可能性があ
るためである。
【0029】イオンビーム加工終了後は、真空度が良く
なるまで真空引きを行い、試料1をX−Y微動ステージ
(不図示)により電子エネルギー分析器11の下部に移
動し、XPS測定を行う。XPS測定時の到達真空度に
ついては装置によって所定の真空度、例えば1×10-6
〜1×10-8Pa程度まで真空引きする。
【0030】次に試料にX線を入射させ、試料から放出
される光電子を電子エネルギー分析器11で分析を行
う。X線光電子分光法(XPS)はX線を試料に照射
し、各軌道にある電子を真空中に放出させ、その運動エ
ネルギーを測定する分光法である。これは、入射プロー
ブがX線であるため、絶縁体試料も測定可能である一
方、X線は細く絞る事が難しいため、分析領域を限定す
るためには分光結晶で集光したり、制限視野モードを用
いる事が必要になる。
【0031】X線の照射については、集光X線、あるい
は制限視野で所望の分析箇所16’を中心に光電子取り
込み領域16を定める(図2(a))。集光X線を用い
る場合はあらかじめX線の位置を光学顕微鏡またはCC
D、走査電子顕微鏡(SEM)による像などと対応させ
ておき、試料表面の光学顕微鏡像またはCCD、SEM
による像を見ながら分析箇所を設定する事ができる(不
図示)。
【0032】次に測定手順を図1で説明する。ここでは
試料1が導電体上の絶縁物のものである場合を想定して
説明する。この場合は、所望の分析箇所16’の周囲全
域をエッチングして下層の導電体を露出させる。先述の
ような方法で、FIBで所望の分析箇所16’周囲の絶
縁膜を少なくとも制限視野で検出される光電子取り込み
領域16の範囲内以上の領域を全てエッチングした後、
基板に試料の導電体部分にバイアス電圧を印加するため
の直流電源3を接続し、X線源4より所望の分析箇所1
6’とエッチングにより露出した下層導電体基板の両方
にX線4’を照射する。中和のための電子線5’の照射
も併用するのが望ましい。特にX線源がモノクロ化され
ている場合や集光されている場合は電子線の照射の併用
が原則である。試料6から放出される光電子をエネルギ
ー分析器11で分光し、制御装置13により、信号をス
ペクトルの形に処理し、ディスプレイ14に表示する。
同時にその結果を、調整装置15により適切なものかど
うか判断し、分析領域と導電膜からの信号が分離されて
いなければ、適切なバイアスになるように直流電源3の
電圧値を調整する。スペクトル形状を高精度に測定した
い場合は、中和銃5の照射条件を最適化する必要があ
る。試料が絶縁体上の導電物の場合は、導電体の膜の周
囲を―部を残してエッチングし、該導電性膜に適宜バイ
アスを印加することで、分析領域と該導電性膜の分離を
行なう。
【0033】X線の照射については、集光X線あるいは
制限視野で所望の分析領域を中心に分析領域を定める。
集光X線を用いる場合は、あらかじめX線の位置を光学
顕微鏡像などと対応させておき、試料表面の光学顕微鏡
像を見ながら分析箇所を設定することができる(不図
示)。ただし、このとき、分析箇所16’周囲をエッチ
ングした領域の外側にX線が照射しないようにする。ま
た、制限視野で分析領域を特定する場合は、所望の分析
箇所16’周囲をエッチングして表面に現れた下層膜
(導電体基板)からの信号強度の強い元素の信号を利用
しマッピングを行い、確実に所望の分析箇所16’が制
限視野の中に含まれていることを確認する。
【0034】次に、直流電源3に10〜30V程度のバ
イアス電圧を印加する。バイアスの大きさは注目ピーク
が分離すればよく、対象とするピークの幅や形状および
その前後のスペクトルの形によって適宜設定される。極
性はプラス/マイナスのどちらでもよいが、バイアス印
加することによって注目元素信号のバックグラウンドが
大幅に増加する場合は、できるだけその影響を軽減する
ような極性にするのが望ましい。
【0035】例えば、試料1が絶縁体上の導電物で、分
析個所周囲をFIBでエッチングして絶縁体を露出させ
た場合(図3)、試料1にプラス電圧を印加すると、導
電物の酸素ピークは酸化膜からの酸素ピークが形成する
バックグラウンド上に重畳することになる(図4
(a))。この影響が大きい場合は、バイアスはマイナ
スにして、導電物である試料1からの酸素ピークを絶縁
体2aである酸化膜の酸素ピークよりも低結合エネルギ
ー側にして、両者を分離するほうがよい(図4
(b))。ただし、上述したように基本的には極性は境
界の両側からの信号を分離できればよく、バックグラウ
ンドの大幅な増加などのなんらかの支障がある場合に、
バイアスの極性や絶対値を調整すればよい。
【0036】このような調整は、操作する者がマニュア
ル操作で逐次行ってもよいが、調整装置15を利用し、
自動で行うこともできる。すなわち、バイアス印加前の
スペクトルにおいて、指定した注目ピークの検出されて
いるエネルギー範囲を求める(例えば、微分することに
よって求めることができる)。次に、そのピークの高エ
ネルギー側と低エネルギー側の任意範囲の信号強度を把
握し(例えば、±30eVの範囲の信号強度)、注目ピ
ークから先に求めたエネルギー範囲以上の上記任意範囲
の高エネルギー側と低エネルギー側の信号強度を比較
し、どちらかの強度が大きく異なる場合は、小さいほう
の信号強度のエネルギー領域に注目ピークをシフトさせ
るように、バイアスの値と極性を決める。高低どちらか
のエネルギー範囲が約2割以上大きいような場合は、信
号強度の小さいほうに注目ピークがシフトするようにバ
イアスの極性と値を選ぶほうが好ましい。
【0037】また、X線電子分光に本発明を適用する場
合、照射X線の波長や単色化/非単色化であることは特
に限定しない。なお、本実施形態においては、XPSに
ついて述べたが、紫外光を用いたUPSにおいても同様
である。
【0038】
【実施例】以下に実施例を挙げて更に本発明を詳述す
る。但し本発明は下記の実施例に限定されるものではな
い。
【0039】実施例1 図5は、本発明の実施例1における試料の加工形態を示
す図である。大きさ約20mm2 の青板ガラス基板20
上に印刷法にてPt電極21を形成した試料を、長期間
大気中で放置したところ、Pt電極上、ガラス基板上の
両方に数十μm程度の大きさの異物22が出現した(図
5(a))。このPt電極上の異物の分析を次のように
して測定した。
【0040】まず、図1の装置内に、試料1である青板
ガラスを導入した。試料を試料台に固定する際には、押
さえ板(不図示)を用いて、ガラス基板表面のPt電極
と試料台の導通を取るようにした。
【0041】次に、試料観察装置であるCCDカメラ8
で異物22の位置を確認後、集束イオンビーム装置9で
異物22の周囲のPt電極をエッチングした。まず、図
5(b)における辺a部(所望の分析箇所16’の一
辺)のエッチングを行った(図5(c))。次にCCD
カメラで位置を確認しながら辺b部の位置に試料をロー
テーションさせて、集束イオンビーム装置でエッチング
を行った(図5(d))。同様にして辺c部、d部につ
いてもエッチングを行った。辺d部については、辺の全
域をエッチングで除去してしまうのではなく、一部を導
通をとるために残した(図5(e))。即ち、完全に閉
じた系ではなく、少し開いた系とした。
【0042】イオンビーム加工終了後は、真空度が良く
なるまで真空引きを行い、試料1をX−Y微動ステージ
(不図示)により電子エネルギー分析器11の下部に移
動しXPS測定を行った。XPS測定時の到達真空度に
ついては2×10-7Paまで真空引きした。
【0043】次に試料の位置をCCDカメラで確認し、
周囲にエッチング加工を施した所望の分析箇所16’が
XPS検出器の下部に来るように移動した。照射X線に
ついては、1mm×0.5mmに集光したモノクロ化し
たAl−Kα線を用いた。
【0044】光電子の検出の際には、帯電中和のための
電子線照射を行なったそして、試料台にマイナス15V
を印加することで試料台と導通を取ったPt電極21に
マイナス15Vを印加し、Ptからの信号を見かけ上低
結合エネルギー側ヘシフトさせた。すると、C−1s、
及びO−1sのピークが2本に分離した。このうち、低
結合エネルギー側がPt電極上からの信号である。Pt
の信号は、通常の結合エネルギー値よりも約15eV低
結合エネルギー側に現れていることから、所望の分析個
所からの信号を識別した。その結果、Pt電極上の異物
は、N、S、Oから構成されており、青板ガラス中のN
aと印刷電極中に残留するSが反応してNaとSからな
る化合物(硫酸ナトリウム)を形成したと考えられた。
【0045】このように集束イオンビーム加工によっ
て、所望の分析領域周囲のエッチングを行い、所望の領
域のみの試料表面からの信号を取り出す事により、表面
を汚染することなく、微少な領域のXPS測定を行う事
が可能であった。
【0046】実施例2 図6は本発明の実施例2における試料の加工形態を示す
図である。図6において、大きさ約20mm2 のSi基
板23上にSiO2 絶縁層24をはさんでNi電極25
とこれと接してAg配線26が形成されている。該配線
はAgペーストをスクリーン印刷で形成し、480℃で
大気焼成して形成した。焼成後表面を観察したところ、
Ag配線とNi電極の境界付近のNi電極上において、
Ag配線に沿ってしみ27が見られた。このしみの分析
を行った。
【0047】まず、図1において、試料1であるSi基
板を装置内に導入した試料を試料台に固定する際には、
押さえ板を用いて、ガラス基板表面のAg配線と試料台
の導通を取るようにした(不図示)。
【0048】次に、走査電子顕微鏡8でしみの位置を確
認後、FIB加工を行った。FIB加工の際はあらかじ
め加工位置をFIBの走査制御プログラムに記憶させて
おき、ステップ加工を用いる事により、一度の加工で所
望の分析箇所16’周辺の薄膜をエッチングした(図6
(c))。これによりしみを含む短冊状の形態が得られ
た。即ち、本実施例では完全に閉じた系ではなく、少し
開いた系とした。
【0049】イオンビーム加工終了後は、真空度が良く
なるまで真空引きを行い、試料をX−Y微動ステージ
(不図示)によりXPS検出器の下部に移動しXPS測
定を行った。XPS測定時の到達真空度については8×
10-8Paまで真空引きした。次に試料の位置を走査電
子顕微鏡で確認し周囲にエッチング加工を施した所望の
分析箇所16’がXPS検出器の下部に来るように移動
した。照射X線については、1mmφ程度に集光したモ
ノクロ化したAl−Kα線を用いた。
【0050】光電子の検出の際には、帯電中和のための
電子線照射を行なった。そして、試料台にマイナス15
Vを印加することでNiからの信号を見かけ上低結合エ
ネルギー側ヘシフトさせた。すると、C−1s、及びO
−1sのピークが2本に分離した。このうち、低結合エ
ネルギー側がNi電極上からの信号である。Niの信号
は、通常の結合エネルギー値よりも約15eV低結合エ
ネルギー側に現れていることから、所望の分析箇所から
の信号を識別した。その結果、Ni電極上のしみは、P
b、S、Oから構成されており、Agペースト中のPb
と印刷電極中に残留するSが反応してPbとSとOから
なる化合物を形成したと考えられた。
【0051】このように集束イオンビーム加工によっ
て、所望の分析箇所周囲のエッチングを行い、所望の領
域のみの試料表面からの信号を取り出す事により、表面
を汚染することなく、微少な領域のXPS測定を行う事
が可能であった
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、照射X線スポット径や
レンズ系で決定される光電子取り込み領域よりも微小な
分析領域を分析でき、しかも、所望の分析箇所を高い識
別性をもって分析できる。さらに、分析領域を任意に設
定できる自由度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電子分光装置の一実施態様を示す図
である。
【図2】本発明による試料の加工形態の例を示す図であ
る。
【図3】本発明の光電子分光装置の一適用例を説明する
図である。
【図4】本発明による光電子分光測定結果を示す図であ
る。
【図5】本発明の実施例1における試料の加工形態を示
す図である。
【図6】本発明の実施例2における試料の加工形態を示
す図である。
【符号の説明】
1 試料(導電物あるいは絶縁物) 2 試料上の導電性薄膜、又は導電性基板 2a 薄膜(絶縁物) 3 直流電源 4 X線源 4’ 照射X線 5 中和電子銃 5’ 照射中和電子線 6 試料から放出される光電子 7 真空チャンバー 8 試料観察装置 9 集束イオンビーム装置 11 エネルギー分析器 12 真空ポンプ 13 制御装置 14 ディスプレイ 15 試料に印加する電圧値を最適化する調整装置 16 光電子取り込み領域 16’ 所望の分析箇所 17 プラスバイアスで高結合エネルギー側にシフトし
た導電物試料からの信号 18 絶縁物薄膜からの信号 19 マイナスバイアスで低結合エネルギー側にシフト
した導電物試料からの信号 20 青板ガラス基板 21 Pt電極 22 異物 23 Si基板 24 SiO2 絶縁層 25 Ni電極 26 Ag配線 27 しみ
フロントページの続き Fターム(参考) 2G001 AA01 AA05 AA07 AA09 BA08 CA03 DA09 FA12 GA01 GA09 JA11 JA13 JA14 KA01 KA03 LA02 LA06 MA05 NA03 NA08 NA11 NA17 RA04

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線もしくは紫外線をプローブとして試
    料に照射し、試料から放出される電子の量を運動エネル
    ギー別に検出する光電子分光装置において、試料の所望
    の分析箇所を決定する手段と、該分析箇所の周囲を集束
    イオンビーム装置でエッチングする手段と、該試料にバ
    イアスを印加する手段と、該バイアスの印加による信号
    ピークの移動量をもとにバイアスを調整する手段とを具
    備することを特徴とする光電子分光装置。
  2. 【請求項2】 前記バイアスを印加したことによって移
    動する信号ピークを検出する手段を具備することを特徴
    とする請求項1に記載の光電子分光装置。
  3. 【請求項3】 X線もしくは紫外線をプローブとして試
    料に照射し、試料から放出される電子の量を運動エネル
    ギー別に検出する光電子分光測定方法において、試料の
    所望の分析箇所の周囲を集束イオンビーム装置によって
    エッチングしてエッチング領域を形成した後、該試料の
    所望の分析箇所とその周囲のエッチング領域の両方に電
    離放射線を照射すと共に、試料の導電部にバイアスを印
    加することによって、所望の分析箇所とその周囲のエッ
    チング領域からの信号を分離し、該所望の分析箇所から
    の信号を抽出することを特徴とする光電子分光測定方
    法。
  4. 【請求項4】 前記所望の分析箇所からの注目信号ピー
    クのバックグラウンド強度が増加しないように試料への
    バイアス印加を調整することを特徴とする請求項3項に
    記載の光電子分光測定方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008111800A (ja) * 2006-10-31 2008-05-15 National Institute For Materials Science 電圧印加下における電子分光測定装置
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JP2009121841A (ja) * 2007-11-12 2009-06-04 Kobelco Kaken:Kk 電子分光分析複合装置、及び電子分光分析方法
JP2010112873A (ja) * 2008-11-07 2010-05-20 Jeol Ltd 分光分析装置
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