JP7304624B2 - 電子顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、電子顕微鏡に関する。
光電子顕微鏡などの電子顕微鏡を用いて、例えば測定試料に含まれる素子に電流を流すなどして素子の特性を変化させている最中や、電気特性などの素子の特性を計測している最中に素子を観察(いわゆるオペランド観察)する技術が注目されている。
電子顕微鏡での電気特性の測定については、種々の技術が開発されている(特許文献1、5~8、非特許文献1参照。)電子顕微鏡での観察においては、従来から、試料が帯電して観察に影響が出ることが知られている。素子の帯電については、電子顕微鏡に限らず、種々の対策技術が開発されている(特許文献1~4参照)。
特許文献1には、電子放出素子を評価する上で統一された測定システムを用いて、電子放出像の記録と電気特性の測定を実行し、かつデータ処理できる装置を提供するエミッション顕微鏡が開示されている。試料表面から放出された電子を結像するための電子レンズと結像された電子放出像を実時間で記録する手段とを有し、かつ該試料にパルス電圧を印加する手段と、このパルス信号の発生と前記電子放出像の取り込みとを同期させる手段が開示されている。
特許文献2には、光電子分光分析における試料のチャージアップ(帯電)の対策手法として、金の微粒子同士が電気的に絶縁されるように薄膜試料に金の微粒子を担持させて光電子分光測定し、測定結果に表れた金の光電子スペクトルと、バルクの金を光電子分光測定して得た光電子スペクトルを比較して、チャージアップにより生じる光電子スペクトルのシフトを補正することが開示されている。特許文献2では、このようにすることで、薄膜試料の表面に金の微粒子の代わりに金の薄膜を設けた場合と比較して、金の薄膜中の自由電子による光電子分光スペクトルへの影響を抑制できるので好ましいことが開示されている。
特許文献3には、X線光電子分光法において、導電性基板上に形成された絶縁性担体層に、粒子状に形成された試料を担持させることで、試料の帯電を抑制することが開示されている。
特許文献4には、光電子分光分析において、絶縁性の試料の上方に、試料から所定距離だけ離して金属メッシュを配置することで、金属メッシュの金属部に当たって発生した光電子の一部を用いて試料の表面に発生したチャージアップを除去することが開示されている。
電子顕微鏡内での試料の電気的特性評価方法として、試料に照射された電子の吸収を、試料に接続された配線の電流で検出する電子ビーム吸収電流法が知られている。特許文献5においてはその装置の構成、特許文献6においては、電子ビーム吸収電流の計測による抵抗変化素子の評価方法が開示されている。
具体的に、特許文献5には、電子顕微鏡内で試料の電気的特性を評価する技術が開示されている。特許文献5には、走査型電子顕微鏡において、測定対象物である半導体基板に電子ビームを照射し、測定試料から放出された2次電子を利用して半導体基板を観察すると共に、この電子ビームによって半導体基板に誘起された基板電流を測定し、基板電流から半導体基板に形成された微細構造の評価値を得る半導体検査装置が開示されている。特許文献5の半導体検査装置では、基板電流を増幅する電流増幅システムを備える電流測定装置が、半導体基板を載置するトレイ近傍に配置されており、半導体基板に流れる基板電流を、トレイを介して検出し、電流増幅システムにより増幅して測定するようになされている。
特許文献6には、支配的に電流が流れる領域(フィラメントが形成されやすい領域)である局所領域の物理パラメータ(径φ、長さl、高抵抗状態での欠陥充填率pHR、低抵抗状態での欠陥充填率pLRなど)が参照量である局所領域のモデルから理論的に導出される抵抗状態の分布である理論分布と、局所領域の抵抗状態を複数回変化させたときの各変化の後の抵抗状態の分布である測定分布とを比較し、理論分布と測定分布とが所定の度合いで合致するときに、物理パラメータの評価量を参照量に決定する抵抗変化素子の評価方法が開示されている。
電子顕微鏡内での試料の電気的特性評価方法として、電子顕微鏡装置内で電子線を照射することにより試料内で発生した電子が、試料内部電界などでドリフトし、起電流として外部に取り出せることを応用した電子線誘起電流法が知られている。特許文献7に関してはその装置の構成、特許文献8においては、半導体素子に電位を印加して実動作状態とし、電子線を走査して2次電子像を得る評価解析方法が開示されている。
具体的には、特許文献7には、金属製の2本のマイクロ探針を備え、当該マイクロ探針の位置を確認しながら2本のマイクロ探針を試料表面の所定位置にそれぞれ接触させ、一のマイクロ探針から他のマイクロ探針へと電流を流して試料の電気特性を測定できる走査型電子顕微鏡が開示されている。
特許文献8には、走査型電子顕微鏡において、断面が上面となるように半導体素子をステージに載置し、先端径が数十nmオーダーの複数のプローブを半導体素子の必要な箇所に接触させてプローブ間に所望の電圧を印加すると共に、半導体素子断面に対して電子線を照射し、半導体素子断面のドーパントプロファイルに応じた電位差を、2次電子検出器にて2次電子量として検出して画面上のコントラストとして可視化する半導体素子の解析装置が開示されている。
非特許文献1には、レーザー励起光電子顕微鏡と半導体パラメータ・デバイス・アナライザを組み合わせ、超高真空中で抵抗変化メモリ(ReRAM:Resistive Random Access Memory)に電圧を印加しながら、光電子顕微鏡観測を行った実験結果が開示されている。電圧印加前後の電子顕微鏡の差分をとると、メモリ素子全体で光電子強度が増加し、素子のエッジに接した部分では光電子強度の低下がみられたことが報告されている。
特開2000-251825号公報 特開2009-180598号公報 特開2015-75472号公報 特開2019-2750号公報 特開2010-123934号公報 特開2014-207046号公報 特開平10-214584号公報 特開2008-210987号公報
川北純平, 島久, 内藤泰久, 秋永広幸, 谷内敏之, 辛埴, "レーザー励起光電子顕微鏡によるReRAM の化学状態の非破壊operando 観測",第65回応用物理学会春季学術講演会予稿集, p.05-084 (2018).
ここで、電子顕微鏡を用いてオペランド観察するにあたっては、観察対象となる素子の電気的特性が変化する過渡現象の観察が求められているが、過渡現象を観察するためには、電子顕微鏡体内における試料への電圧印加の制御手法や、試料に電圧を印加する際の放電、試料自身の帯電など解決すべき問題がある。
特許文献1に開示されている電子顕微鏡においては、試料に流れる電流等の電気信号の検出を電子放出像の取り込みと同期させる手段は開示されているが、電子顕微鏡体内で試料を観察し易くするために試料に印加する電圧や、試料の電気特性評価用の電圧などの試料への電圧印加の制御方法については開示されていない。
また、特許文献2~4には、試料の帯電対策については開示されているが、試料の過渡現象を観察するための他の手法については開示されていない。
特許文献5~8においては、電子顕微鏡内での試料の電気的特性評価方法が開示されているが、特許文献1と同様に、電子顕微鏡体内で試料を観察しやすくするために試料に印加する電圧や、試料の電気特性評価用の電圧などの電圧制御方法については開示されていない。
また、非特許文献1にて、試料のオペランド観察による電気的特性評価に関して、半導体デバイスパラメータアナライザと光電子顕微鏡とを組み合わせることが開示されているが、試料における電気的特性が変化する過渡現象の顕微鏡像を取得してオペランド観察を実現するための具体的な方策は開示されていない。
このように、特許文献1~8及び非特許文献1のいずれにおいても、電子顕微鏡においてオペランド観察を実現するための問題については解決されていない。
そこで、本発明は、オペランド観察できる電子顕微鏡を提供することを目的とする。
本発明の電子顕微鏡は、光又は放射線を測定試料に照射することで前記測定試料から出射した電子を検出し、検出した前記電子に基づいて前記測定試料の画像を生成する電子顕微鏡であって、前記測定試料に含まれる素子部の第1電極と第2電極の間に電圧を印加する又は電流を流す電気特性測定回路と、前記第1電極又は前記第2電極の電位と、前記測定試料を載置するホルダの電位とを等電位にする電位制御装置とを備える。
本発明によれば、素子部の第1電極又は第2電極の電位と、測定試料を載置するホルダの電位とを等電位にすることで、電子顕微鏡での測定試料の観察中に、電気特性測定回路により測定試料の素子部に印加する電圧又は流す電流を制御でき、電圧や電流を測定できる。そのため、測定試料の素子部を観察中に、素子部に電圧を印加する又は電流を流すことにより素子部の電気特性を変化させたり、電気特性を測定しつつ、電子顕微鏡にて測定試料を観察できるので、測定試料をオペランド観察できる。
本発明の実施形態の電子顕微鏡を示す概略図である。 本発明の実施形態の測定試料を示す概略図である。 本発明の実施形態の測定試料の素子部の断面を示す概略図である。 本発明の変形例1の測定試料を示す概略図である。 本発明の変形例2の測定試料を示す概略図である。 本発明の変形例3の測定試料を示す概略図である。 本発明の変形例5の電流を流す方法を説明する図である。 本発明の変形例6の電子顕微鏡を示す概略図である。 本発明の変形例11の電子顕微鏡の一部構成を示す概略図である。 本発明の変形例10の電位制御装置を示す概略図である。 検証実験で観察した抵抗変化メモリの素子部を示す画像である。 検証実験で測定した素子部の電流電圧特性を示すグラフである。 図12に示した電流電圧特性各点における変化分の画像である。
(1)本発明の概要
本発明の電子顕微鏡は、光又は放射線を測定試料に照射することで測定試料から出射した電子を検出し、検出した電子に基づいて測定試料の画像を生成する電子顕微鏡であって、測定試料に含まれる素子部の第1電極と第2電極の間に電圧を印加する又は電流を流す電気特性測定回路と、第1電極又は第2電極の電位と、測定試料を載置するホルダの電位とを等電位にする電位制御装置とを備えることで、オペランド観察できるようにしたものである。本発明は、例えば、レーザー光やX線を測定試料に照射して測定試料から出射した光電子を検出して測定試料を観察する光電子顕微鏡、電子線を測定試料に照射して測定試料から出射した2次電子を検出して測定試料を観察する走査型電子顕微鏡、電子線を測定試料に照射して測定試料を透過することで測定試料から出射した電子を検出して測定試料を観察する透過型電子顕微鏡などに適用できる。
本明細書では、光電子顕微鏡に適用し、光電子顕微鏡により測定試料として抵抗変化メモリを観察する場合を例として、本発明の電子顕微鏡を説明する。抵抗変化メモリは、電圧の印加により抵抗値が変化する。抵抗変化メモリは、遷移金属酸化物などの酸化物層を下部電極と上部電極とで挟んだ構造をしており、セットプロセスで上部電極と下部電極の間に電圧を印加することにより酸化物層内に電流誘起酸化・還元反応などによる導電パス(フィラメント)が形成され低抵抗状態となる素子である。また、この抵抗変化メモリは、リセットプロセスで電極間に調整された電圧を印加することにより抵抗変化層内の導電パスが電流誘起酸化・還元反応などによって断裂し高抵抗状態となる素子である。抵抗変化メモリは、例えば、低抵抗状態を0、高抵抗状態を1に対応させ、このサイクルの繰り返しによって、0と1を繰り返し記憶する。
(2)本発明の実施形態の電子顕微鏡の全体構成
本実施形態の電子顕微鏡は、測定試料から出射した電子として光電子を検出して測定試料を観察するレーザー光電子顕微鏡である。図1に示すように、本実施形態の電子顕微鏡1は、レーザー光源2と、波長板3と、集光レンズ4及び対物レンズ6で構成される照射レンズ系と、ビームセパレータ5と、チャンバー10と、高圧電源14と、投影電子レンズ系24と、電子ビーム検出器25とを備えている。電子顕微鏡1は、さらに、電気特性測定回路40と、電位制御装置44と、制御装置50を備えている。
電子顕微鏡1は、レーザー光源2で生成されたCW(Continuous Wave)レーザー7を、チャンバー10内に配置された測定試料30に照射レンズ系を介して照射し、測定試料30から光電子を放出させる。電子顕微鏡1は、当該光電子をビームセパレータ5で投影電子レンズ系24の方向へ分離し、投影電子レンズ系24で光電子を電子ビーム検出器25に投影する。電子顕微鏡1は、投影された光電子を電子ビーム検出器25で検出し、検出した光電子の強度に基づいて制御装置50で測定試料30の画像を生成する。本実施形態の測定試料30は抵抗変化メモリであり、その構成は後述する。
続いて、電子顕微鏡1の各構成要素について説明する。レーザー光源2は、CWレーザー7を生成するレーザー発振器である。CWレーザー7の波長は、CWレーザー7の照射により測定試料30から光電子が放出されるように、CWレーザー7のエネルギーhνが測定試料30の仕事関数φよりも高くなるように選定している。より具体的には、測定試料30の観察領域の最表層(例えば、測定試料30に含まれる素子部を観察したい場合は、当該素子部の最表層)を構成する材料の仕事関数φよりも高くなるようにする。本実施形態の場合、レーザー光源2は、波長が266nm(エネルギーhν=4.66eV)のCWレーザー7を生成する。波長板3は、CWレーザー7の偏光を、直線偏光と左右円偏光とに切替えるための素子である。通常は、波長板3によりCWレーザー7を直線偏光とするが、磁気円二色性を利用して測定試料30の磁気特性を測定する場合、波長板3によりCWレーザー7を左右円偏光とする。
照射レンズ系は、集光レンズ4でCWレーザー7を対物レンズ6に集光し、対物レンズ6でCWレーザー7を測定試料30の表面に集光して、CWレーザー7を測定試料30に照射させる。対物レンズ6は、測定試料30の表面近傍に焦点位置が来るように配置されている。集光レンズ4、対物レンズ6は、公知のレンズであり、CWレーザー7の照射領域、すなわち、測定試料30において観察したい領域のサイズなどに応じて適宜選定することができる。
チャンバー10は、気密性が高い構造をした容器であり、図示しないターボ分子ポンプなどの真空ポンプが接続されている。チャンバー10は、真空ポンプにより、内部空間を所定真空度(例えば、1.0×10-5~10-11Torr)にされる。チャンバー10内には、測定試料30を保持するホルダ11と対物レンズ6とが配置されている。測定試料30は、チャンバー10内のホルダ11の載置面11aに載置され、固定具によって固定される。測定試料30は、ビームセパレータ5を通過してチャンバー10に入射したCWレーザー7が対物レンズ6を介して測定試料30の表面に垂直に照射される。なお、本実施形態の場合、チャンバー10とビームセパレータ5とが接続されており、ビームセパレータ5に対物レンズ6が固定されているが、図1では便宜上、ビームセパレータ5と対物レンズ6とを別体の構成として示している。ホルダ11には図示しない駆動機構が接続されており、駆動機構によりホルダ11を互いに直交する3軸方向に移動させることができる。本実施形態の場合、ホルダ11は、測定試料30を載置する載置面11aがCWレーザー7の光軸と直交するように配置されている。また、チャンバー10は、測定試料に接続された配線を外部に引き出す窓部(不図示)や端子(不図示)などが設けられていてもよい。
このようなチャンバー10内で測定試料30の表面にCWレーザー7が照射されると、CWレーザー7のエネルギーhνが測定試料30の最表層の仕事関数φよりも高くなるようにCWレーザー7の波長が選定されているので、測定試料30において光電効果が生じ、測定試料30の電子が励起されて測定試料30から光電子が放出される。CWレーザー7が照射された領域から多数の光電子が放出されるので、本明細書では、放出された多数の光電子をまとめて電子ビーム27と称する。
さらに電子顕微鏡1は、測定試料30に対して光電子を放出し易くする高電圧を印加する高圧電源14を備えている。高圧電源14は、負極側が導線45によってホルダ11に接続され、正極側がグラウンドGに接地され、負の高電圧をホルダ11に印加するように構成されている。これにより、ホルダ11に高電圧が印加されることで、ホルダ11に保持された測定試料30にも高電圧が印加される。高圧電源14は、例えば、-20kV程度の高電圧を出力できる一般的な電源である。電子顕微鏡1は、高圧電源14が測定試料30に高電圧を印加することにより、測定試料30とビームセパレータ5や対物レンズ6との間に電界を生じさせ、この電界により、測定試料30から光電子を放出し易くすると共に、放出された光電子をビームセパレータ5へ加速し、光電子をビームセパレータ5へ引き込むようにしている。
ビームセパレータ5は、電子ビーム27が入射すると、電子ビーム27を偏向させ、CWレーザー7のパスと電子ビーム27のパスとを分離させる。ビームセパレータ5は、偏向した電子ビーム27を、出射口に接続された投影電子レンズ系24に入射させる。
投影電子レンズ系24は、複数の電子レンズで構成されており、入射した電子ビーム27を電子ビーム検出器25に投影する。電子ビーム検出器25は、2次元の光電子検出器であり、投影された電子ビーム27の光電子を検出する。電子ビーム検出器25は、検出した光電子の強度を電子データに変換する。制御装置50は、電子ビーム検出器25と、後述する電気特性測定回路40に接続されている。制御装置50は、電子ビーム検出器25から光電子の強度の電子データを取得し、当該電子データから画像を生成し、測定試料30の画像を生成する。電子ビーム検出器25は、測定試料30から光電子が放出されている間中、電子ビーム27が投影されており、投影された電子ビーム27の光電子の強度の電子データを生成し続ける。そのため、制御装置50は、電子ビーム検出器25から光電子の強度の電子データを連続して生成できるので、連続して画像を生成して動画を作成することもできる。本実施形態では、制御装置50は、PC(パーソナルコンピュータ)である。制御装置50は、PCの記憶装置に画像を保存させたり、画像をPCのモニタに表示して電子顕微鏡1の操作者に確認させたりできる。なお、制御装置50は、PCで実行可能なソフトウエアによって実現されてもよく、専用のハードウエアとして構成されてもよく、専用のハードウエアに搭載されたプロセッサで実行可能なプログラムとして構成されてもよい。
電気特性測定回路40は、測定試料30と接続されており、後述する測定試料30の素子部に電圧を印加する又は電流を流すことにより素子部31の電気特性を変化させたり、電気特性を測定したりできる。電気特性測定回路40は、電圧を出力する又は電流を流す機能と電圧及び電流の少なくとも1つを測定できる機能を有していれば、その構成は特に限定されない。本実施形態の場合、電気特性測定回路40はソースメジャーユニットであり、上記の制御装置50によって制御される。
ここで、本発明の実施形態の電子顕微鏡1で観察する測定試料30について、図2、図3を参照して説明する。本実施形態では、測定試料30は、2つの素子部31a、31bを有する抵抗変化メモリである。図2の左図は、測定試料30の上面図であり、図2の右図は、左図中の領域J1を拡大して示す図である。図2に示すように、測定試料30は、表面が絶縁性を有する基板32上に形成されており、第1電極としての上部電極35a、35bと、第2電極としての下部電極33と、2つの素子部31a、31bと、放電防止マスク38を備える。下部電極33は、基板32上に形成され、2つの五角形状に形成された電極基部が頂点同士向かい合って対向配置され、頂点同士が細線部によって接続された形状をしている。下部電極33は、電極基部が同形状に形成された放電防止マスク38でほぼ覆われており、細線部上に酸化物層(図2に不図示)が形成されている。下部電極33の形状は、導線が引き出せる程度の面積を有する領域(例えば上記の電極基部)と、後述の素子部を構成する領域(例えば上記の細線部)が設けられていればその形状は特に限定されないが、図2に示すように、電子顕微鏡1による観察部位において、上部電極35a、35bの電極基部37a、37b及び細線部36a、36bを中心に下部電極33が対称的に形成されることが好ましい。放電防止マスク38は、導電性金属で形成されており、ホルダ11と等電位となっている。放電防止マスク38は、上部電極35a、35b及び下部電極33の内、帯電しやすい材料で形成された電極(ここでは導電性の低い電極)を覆うようにする。これにより、放電しやすい材料の露出が減り、放電が生じることを抑制できる。本実施形態では、放電防止マスク38は、下部電極33の表面に形成されており、下部電極33に接続する導線は、放電防止マスク38の表面から引き出される。
上部電極35a、35bは、電極基部37a、37bと、細線部36a、36bとで構成されている。電極基部37aと電極基部37bは、基板32上に、下部電極33と電気的に絶縁された状態で、下部電極33を挟んで対向配置されている。上部電極35a、35b及び下部電極33とで、基板32の表面をほぼ覆っている。細線部36aは、細線形状の部材であり、下部電極33の細線部と交差し、かつ、上部電極35bと接触しないように、上部電極35aの電極基部37aから突出して配置されている。そして、細線部36aが下部電極33の細線部において、酸化物層上に配置されるので、図3に示すように、基板32に隣接して、下部電極33、酸化物層34、上部電極35aがこの順に形成されて素子部31aが形成される。素子部31bについても同様である。
このように、本実施形態では、上部電極35a(細線部36a)/酸化物層34/下部電極33で構成される素子部31aと、上部電極35b(細線部36b)/酸化物層34/下部電極33で構成される素子部31bとの2つの素子部を有している。なお、本実施形態では、素子部31aと素子部31bは、酸化物層34と下部電極33を共有しているが、酸化物層34、下部電極33を素子毎に個別に設けてもよい。
本実施形態では、基板32は、表面に酸化シリコン(SiO)が形成されたシリコン(Si)で形成されている。下部電極33は、チタンナイトライド(TiN)で形成されている。上部電極35a、35bは、細線部36a、36bと電極基部37a、37bとが、異なる材料で、別体に形成されている。細線部36a、36bは、白金(Pt)で形成され、電極基部37a、37bは、金(Au)/チタン(Ti)の積層膜である。酸化物層34は、酸化タンタル(Ta)で形成されている。放電防止マスク38はAu/Tiの積層膜である。測定試料30を構成する各部材の材料は特に限定されず、測定試料30の種類に応じて適宜選択できる。また、上部電極35a、35bの細線部36a、36bと電極基部37a、37bとが、同じ材料で形成されていてもよく、一体に形成されていてもよい。このような測定試料は、例えば、基板32上への各種材料の物理的蒸着と、リソグラフィ技術による成形によって作製できる。
再び、図1、図2に戻り、電気特性測定回路40と測定試料30の接続について説明する。本実施形態では、上部電極35aに接続する場合を例に説明するが、上部電極35bに接続する場合も同様である。図1では、便宜上、1つの素子部にのみ配線している場合を示している。両方の電極に接続する場合は、後述の導線42を2本用意し、2つの素子部へ電圧を印加する又は電流を流すことと、2つの素子部の電気特性の測定とに適合した電気特性測定回路40を用意すればよい。
上部電極35aは、導線42によって電気特性測定回路40に接続されている。導線42は、上部電極35aの電極基部37aの表面に、例えば、銀ペースト等の導電材料でなる固着部によって固定されて、上部電極35aと電気的に接続されている。なお、上部電極35aと導線42の接続方法は特に限定されない。
下部電極33は、電位制御装置44によって、導線45に接続され、ホルダ11と等電位にされている。電位制御装置44は、下部電極33上に設けられた放電防止マスク38に接続されている。本実施形態では、電位制御装置44は、同軸ケーブルであるが、下部電極33をホルダ11と等電位にすることができれば、その形態は特に限定されない。電位制御装置44として通常の導線を用いることができるが、例えば、同軸ケーブルや導電性の高い導線を用いるなどして、ノイズの発生源とならないようにすることが好ましい。このようにすることで、通常の導線を用いるより精密に素子部に電圧を印加する又は電流を流したり、電気特性を測定したりすることができる。なお、下部電極33から引き出された電位制御装置44の接続先は、下部電極33をホルダの電位と等電位にすれば特に限定されず、下部電極33とホルダ11を電位制御装置44で接続するようにしてもよい。
さらに、導線45には、導線43が接続されている。導線43は、電気特性測定回路40に接続されている。電気特性測定回路40は、測定試料30の上部電極35a及び下部電極33に接続され、測定試料30の素子部31aに電圧を印加する又は電流を流したり、素子部31aの電気特性を測定したりすることができる。なお、本実施形態では、上記のようにして下部電極33をホルダ11と等電位になるようにしているが、導線42を下部電極33に接続し、電位制御装置44を上部電極35aに接続して、上部電極35aをホルダ11と等電位になるようにしてもよい。
続いて、電子顕微鏡1での測定試料30のオペランド観察について説明する。ここでは、素子部31aに電圧を印加し、素子部31aの電気特性を変化させる場合を例として説明する。まず、高圧電源14により、測定試料30に-20kVの高電圧が印加され、測定試料30から光電子が放出されやすくするために、測定試料30と対物レンズ6の間に-20kVの高電圧がかかった状態にされる。そして、レーザー光源2からCWレーザー7を出射すると、照射レンズ系によって測定試料30の素子部31aの表面にCWレーザー7が照射され、素子部31aから光電子が放出される。放出された多数の光電子は、ビームセパレータ5で投影電子レンズ系24に導かれ、電子ビーム検出器25に投影される。制御装置50としてのPCは、電子ビーム検出器25から検出した光電子の強度の電子データを取得し、モニタ(図1、図2には不図示)に表示させる。
次に、この状態で、制御装置50は、電気特性測定回路40を制御し、電気特性測定回路40に素子部31aに対して電圧を印加させる。このとき、電子顕微鏡1では、下部電極33がホルダ11と等電位にされているので、電気特性測定回路40の基準電位が下部電極33の電位となる。そのため、電気特性測定回路40は、電気特性測定回路40の基準電位をグラウンドGとした場合と比較して、素子部31aに印加する電圧をより容易に、精密に制御することができる。すなわち、基準電位をグラウンドGとした場合、電気特性測定回路40は、素子部31aの上部電極35aと下部電極33の間に例えば1Vの電圧がかかるようにしようとすると、素子部31aに-20kV+1Vの電圧を印加しなければならず、印加電圧を例えば1V単位など精密に制御することが難しい。場合によっては、1Vの電圧がノイズに埋もれてしまい、1V単位で電圧を調整することができない。
これに対して本発明では、下部電極33とホルダ11とを等電位とすることで、電気特性測定回路40の基準電位が下部電極33の電位となるので、素子部31aに例えば1Vの電圧がかかるようにするために、素子部31aに1Vの電圧を印加すればよく、-20kV分の電圧を印加しなくてよい分、出力する電圧をより精密に制御することができる。電気特性測定回路40が電流を出力する場合も同様で、高圧電源14が出力する高電圧に相当する電流を出力しなくて済むので電流を精密に制御できる。
さらに、電気特性測定回路40で電圧、電流を測定する場合も同様であり、電圧、電流の測定から高圧電源14が出力する電圧、当該電圧に相当する電流の影響を排除でき、より精密に、電圧、電流を測定できる。
よって、本実施形態の電子顕微鏡1は、制御装置50のモニタに素子部31aを表示したまま、素子部31aに電圧を印加し、その電圧値を増加していくことで、素子部31aの酸化物層の状態が変化していく様子(例えばフィラメントの形成など)を観察したり、その変化に合わせて電気特性を測定したりでき、測定試料30をオペランド観察することができる。さらに、電子顕微鏡1は、光電子顕微鏡とし、CWレーザー7のエネルギーを調整することで、上部電極35aの下部の酸化物層34を非破壊で観察することができる。
さらに、電子顕微鏡1では、導電性金属で形成され、下部電極33と等電位にされた放電防止マスク38を備えている。そのため、下部電極33がチタンナイトライドのような帯電しやすい材料で形成されていても、帯電しにくい導電性金属で形成された放電防止マスク38で下部電極33の表面が覆われているので、外部に露出する下部電極33の領域が減少し、放電が抑制され、帯電も抑制される。同時に、下部電極33の表面にたまった電子が放電防止マスク38へと移動するので、空気との界面にとどまる電子が減少し、放電や帯電が抑制される。加えて、本実施形態では、下部電極33のほぼ全体が放電防止マスク38で覆われているので、より放電及び帯電を抑制できる。また、本実施形態では、上部電極35aと放電防止マスク38とで基板32がほぼ覆われているので、基板32表面からの放電及び基盤32表面の帯電も抑制される。
(3)作用及び効果
以上の構成において、本実施形態の電子顕微鏡1は、CWレーザー7(光又は放射線)を測定試料30に照射することで測定試料30から出射した電子としての光電子を検出し、検出した電子に基づいて測定試料30の画像を生成し、測定試料30に含まれる素子部31a、31bの上部電極35a、35b(第1電極)と下部電極33(第2電極)の間に電圧を印加する又は電流を流す電気特性測定回路40と、下部電極33の電位と、測定試料30を載置するホルダ11の電位とを等電位にする電位制御装置44とを備えるように構成した。
よって、電子顕微鏡1は、素子部31a、31bの下部電極33の電位と、測定試料30を載置するホルダ11の電位とを等電位にすることで、電子顕微鏡1での測定試料30の観察中に、電気特性測定回路40により測定試料30の素子部31a、31bに印加する電圧又は電流を制御でき、電圧や電流を測定できる。そのため、電子顕微鏡1は、測定試料30の素子部31a、31bを観察中に、素子部31a、31bに電圧を印加する又は電流を流すことにより素子部31a、31bの電気特性を変化させたり、電気特性を測定しつつ、測定試料30を観察できるので、測定試料30をオペランド観察できる。
ここで、例えば、電子デバイス(以下、単にデバイスと称する)では、デバイス内の各素子において、電流を流す前後、又は、電圧印加の前後で素子の微小な物性変化を観察したり、変化の過程を観察したりすることは、デバイス動作の基本的な理解を助けるだけでなく、デバイスの歩留まり向上にとって重要なものとなる。しかしながら、従来では、デバイス観察中に、電流を精密に流したり、電圧を精密に印加したりすることが、レーザーPEEMでは不可能であった。また、仮に観察中に、電流を流したり、電圧を印加することができても、これにより発生した電場によってレーザーPEEM像が歪んだり、移動(シフト)したりするため、過渡現象の精密な観察が不可能であった。これに対して、本実施形態による電子顕微鏡1では、測定試料30としてデバイスを適用することができ、非破壊で、観察対象であるデバイス(測定試料30)の電気的特性を評価することが可能となり、デバイスに関して、電流を流す前後、又は、電圧を印加する前後の変化や過渡現象をその場(オペランド)観察することができる。
(4)変形例
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
(変形例1)
上記の実施形態では、測定試料30として、基板32上に1つの抵抗変化メモリが形成されたものを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば図4に示す測定試料30aように、測定試料30aは、複数の抵抗変化メモリ301が形成されたウエハ300であってもよい。この場合、複数の抵抗変化メモリ301を同時に観察することができる。図4に示す測定試料30aでは、ウエハ300上に、9個の抵抗変化メモリ301が形成されている。
(変形例2)
上記の実施形態では、2つの素子部31a、31bを備える抵抗変化メモリである測定試料30について説明したが本発明はこれに限られない。図5に示すように、変形例2の測定試料60は、3つの素子部61a、61b、61cを備える抵抗変化メモリである点、それに伴い、上部電極65a、65b、65cの形状及び下部電極63の形状が変わった点で、上述した本実施形態の測定試料30と異なる。図5の左図は、基板62上に形成された測定試料60の全体を示し、右図は、左図に示す領域J2を拡大して示している。左図に示すように、変形例2では、上部電極65a、65b、65cは、正方形上に形成された電極基部67a、67b、67cと、電極基部67a、67b、67cからそれぞれ突出した細線部66a、66b、66cとを備えている。電極基部67a、67b、67cは、基板62上に、所定の間隔を空けて、互いに絶縁されるように配置されている。
下部電極63は、電極基部が正方形の頂点の1つが欠けた形状をしており、欠けた部分が基板62の中心部に向くように配置されている。下部電極63は、電極基部の全域が放電防止マスク68によって覆われている。下部電極63は、上部電極65b、65cと所定の間隔を空けて、上部電極65b、65cと絶縁されるように配置されている。そのため、基板62の表面がクロス状に露出している。領域J2に示すように、下部電極63は、頂点の欠けた部分から上部電極65aに向かって細線部が突出している。また、基板62の表面が、上部電極65a、65b、65cと放電防止マスク68とによってほぼ覆われている。
下部電極63の細線部上には、酸化物層(不図示)が形成されている。基板62の中心部では、電極基部67a、67b、67cから細線部66a、66b、66cが、下部電極63の細線部と交差するように突出している。そのため、上部電極65a、65b、65cの細線部66a、66b、66cと下部電極63の細線部が交差する領域では、上部電極65a、65b、65c(細線部66a、66b、66c)/酸化物層/下部電極63の多層構造となり、3つの素子部61a、61b、61cが形成される。この変形例では、電極基部67a、67b、67c表面に、銀ペースト等でなる固着部69により導線42が固定されている。同様に、放電防止マスク68の表面に、固着部69によって電位制御装置44が固定されている。その他、測定試料60を構成する部材の材料などは、上記の実施形態と同様である。
なお、ここでは、固着部69を銀ペーストにより形成した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、金ペーストや、導電性テープなどを適用してもよく、また、各種ワイヤ・ボンディング法により形成される固着部を適用してもよい。
(変形例3)
図6に示すように、変形例3では、測定試料70が4つの素子部71a、71b、71c、71dを備える抵抗変化メモリである点と、それに伴い、上部電極75a、75b、75c、75dの形状、下部電極73の形状及び放電防止マスク79の形状が変わった点と、導電性部材でなるカバー体78が測定試料70の上方に配置された点とについて、上述した本実施形態と異なる。図6の左図は、測定試料70を覆うように設けられた球帯状のカバー体78を仮想的に示し、基板72上に形成された測定試料70の全体の構成を示している。図6の右図は、左図に示す領域J3を拡大した概略図である。左図に示すように、測定試料70では、下部電極73が、略二等辺三角形状に形成された4つの電極基部と、クロス形状の細線部とで構成される。放電防止マスク79は、下部電極73の略二等辺三角形状に形成された4つの電極基部にそれぞれ設けられている。下部電極73は、電極基部が基板72の各辺に沿ってそれぞれ1つずつ配置され、細線部のクロスの4つの先端部に電極基部の三角形の頂点部が接続された配置となっている。細線部は、クロスの交差部で線幅がさらに細くなっており、素子部が形成される領域(基板72中央)が形成されている。下部電極73は、クロスの交差部の線幅が細くなった部分において、酸化物層(図6には不図示)が積層されている。
上部電極75a、75b、75c、75dは、このような下部電極73によって4つに分けられた基板72上の領域に、それぞれ形成されている。変形例3では、上部電極75a、75b、75c、75dは、下部電極73と絶縁され、かつ、基板72の表面をほぼ覆うように形成されている。右図に示すように、上部電極75a、75b、75c、75dは、電極基部77a、77b、77c、77dから、細線部76a、76b、76c、76dが下部電極73の細線部の線幅が細い部分と交差するように突出している。
上部電極75a、75b、75c、75dの細線部76a、76b、76c、76dと、下部電極73の細線部が交差する領域では、上部電極75a、75b、75c、75d(細線部76a、76b、76c、76d)/酸化物層/下部電極73の多層構造となり、4つの素子部71a、71b、71c、71dが形成されている。
カバー体78は、例えば、金属部材などの導電性部材により球帯状に形成され、頂上部に円形状の貫通孔78aが形成された部材である。カバー体78で覆われた領域は外部から視認できないものの、カバー体78の貫通孔78aから、測定試料70の4つの素子部71a、71b、71c、71dが外部に露出している。これにより、貫通孔78aから、内部空間にある測定試料70にCWレーザー7が照射される。測定試料70の酸化物層からの電子ビームの検出は、カバー体78の貫通孔78aを介して行われ、素子部71a、71b、71c、71dを観察できるようになされている。
変形例3では、カバー体78が測定試料70上に設置され、下部電極73の電極基部を覆っている。カバー体78は、下部電極73の電極基部の表面に添付された導電性テープ81(例えば、カーボンテープ)によって、測定試料70に固定されると共に、下部電極73と導通して等電位にされている。また、導電性テープ81により、カバー体78と測定試料70の表面との間に隙間が形成され、カバー体78と、上部電極75a、75b、7bc、75dとが絶縁される。さらに変形例3では、上部電極75a、75b、7bc、75dの表面に、非導電性テープ80(例えばカプトンテープ)によって導線42を固定して、測定試料70から導線42を引き出している。そのため、非導電性テープ80がスペーサーの役割を果たし、上部電極75a、75b、7bc、75dとカバー体78との間に隙間が形成され、上部電極75a、75b、7bc、75dとカバー体78との絶縁がサポートされる。電位制御装置44は、下部電極73に接続してもよく、カバー体78に接続してもよい。なお、カバー体78と測定試料70の表面との間の隙間、及び、上部電極75a、75b、7bc、75dとカバー体78との間の隙間、については、好ましくは10μm~1000μmの範囲が良い。
(変形例4)
なお、このように、測定試料と別体でなる変形例3のカバー体78を、実施形態の測定試料30又は変形例2の測定試料60を用いた場合にも適用してもよい。この場合、カバー体78を対物レンズ6と測定試料30又は測定試料60との間に挿入する。その結果、カバー体78により、測定試料30、60と、導線42及び電位制御装置44との接続部を覆うことで、接続部の導線から放電が生じるのを防止できる。
(変形例5)
上記の実施形態では、制御装置50のモニタに素子部31aを表示したまま、素子部31aに電圧を印加し、その電圧値を増加していくことで、素子部31aの酸化物層の状態が変化していく様子を観察できることを説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、制御装置50が、素子部31aへの電圧又は電流の出力と休止を繰り返し、かつ、電圧又は電流の出力毎に、出力電圧又は出力電流を増加させていくように電気特性測定回路40を制御し、電圧又は電流の出力が休止状態にあるときに、素子部31aの画像を生成するようにして、素子部31aの酸化物層の状態が変化していく様子を観察してもよい。
例えば、図7の上図に示すように、制御装置50が、酸化物層の状態を変化させるために、素子部31aに時間と共に電流量が増加する電流を流すように電気特性測定回路40を制御し、電流を流している間に所定の時間間隔で画像を生成するようにする。そうすると、オペランド観察するうえでは問題はないが、素子部31aを流れる電流による試料の電位の変化や電流が生み出す磁場などの影響により、像が移動したり、歪んだりしてしまうという不都合が生じる恐れがある。図7中の上図の画像を見ると、素子部31a(画像中の白色部)の画像中の位置が移動していることが確認できる。
これに対して、図7の下図に示すように、制御装置50が、酸化物層の状態を変化させるために、素子部31aにパルス電流を出力し、パルス電流の出力毎に電流値を上昇させるように電気特性測定回路40を制御する。そして、制御装置50が、パルス電流が出力されていないときに、画像を生成するようにする。このようにすることで、素子部31aの画像中での位置が移動することを抑制できる。図7中の下図の画像を見ると素子部31a(画像中の白色部)がほぼ同じ位置に写っていることが確認できる。なお、この例のように、素子部31aの抵抗値測定や電流電圧特性測定のために電圧を印加する又は電流を流しているときも外して画像を生成するようにするのが好ましい。
(変形例6)
上記の実施形態で説明した電子顕微鏡1は、エネルギー分析器を有し、特定のエネルギーの光電子を検出して画像を生成することもできる。図1と同じ構成には同じ番号を付した図8に示す電子顕微鏡100は、光電子をエネルギー毎に分離するエネルギー分析器22と、ビームセパレータ5で分離された光電子をエネルギー分析器22に導く導入電子レンズ系21と、所定のエネルギーの光電子を通過させるエネルギースリット23と、電子のエネルギーを調整するエネルギー調整機構13を備える点で、実施形態の電子顕微鏡1と異なる。以下では、実施形態の電子顕微鏡1と異なる点を中心に電子顕微鏡100について説明し、同じ構成の説明は省略する。
まず、CWレーザー7の波長について説明する。電子顕微鏡100では、CWレーザー7の波長は、実施形態の電子顕微鏡1と同様に、測定試料30の最表層の仕事関数φに応じて選定すればよいが、好ましくは、266nm以下であり、さらに好ましくは、213nm以下である。このように波長を選定することで、仕事関数φがより大きな試料も測定することができるようになり汎用性が向上する。また、CWレーザー7のエネルギーhνと測定試料30の最表層の仕事関数φの差分をΔE(=hν-φ)とすると、ΔEが0eV~0.5eVとなるように、CWレーザー7の波長を選定するのが好ましい。このようにCWレーザー7の波長を選定することで、深い位置の材料(例えば、素子部31aの上部電極35a(細線部36a)の下に存在する酸化物層34)についても解像度よく観察することができる。
これは、光電子が試料表面から脱出する際に感じるエネルギー障壁の影響が、光電子のエネルギーが小さいほど大きいためであり、この影響で斜出射する光電子は表面で全反射されやすくなり垂直出射に近い光電子だけで結像することができるのが理由である。例えば、多層構造の素子部31aの最表層である上部電極35aよりも下層の酸化物層34に形成されたフィラメントを観察する場合は、このようにするのが有利である。なお、ΔEは、レーザー光電子顕微鏡を用いて測定試料30内の所望の測定位置を計測し、エネルギー分析器22を用いて得られた当該測定位置の電子エネルギー分布から計測する。ΔEは、電子エネルギー分布内のバンド構造の幅(後述するカットオフからフェルミ準位E)に相当する。
電子顕微鏡100は、高圧電源14とホルダ11の間にエネルギー調整機構13を備えている。エネルギー調整機構13は、所定電圧STVを出力する電源であり、制御装置50によって制御される。エネルギー調整機構13と高圧電源14とは、直列に接続されており、STVと高圧電源14の出力電圧との合計電圧をホルダ11に印加することで、測定試料30にも同じ電圧をかけることができる。エネルギー調整機構13は、STVの値を調整することで、測定試料30から放出された光電子のエネルギーEpを調整できる。なお、光電子のエネルギーEpは、本実施形態の場合、光電子の運動エネルギーをEkとすると、Ep=20kV+Ek-STVとなる。光電子の運動エネルギーEkは、測定試料30内の電子がCWレーザー7により励起されたことにより生じた運動エネルギーの値であり、材料中での電子のエネルギーEにより変わる。そのため、光電子のエネルギーEpも、材料中での電子のエネルギーEに依存する。
電子顕微鏡100では、ビームセパレータ5に導入電子レンズ系21が接続されている。そのため、測定試料から放出された光電子は、電子ビーム27として高圧電源14の高電圧によりビームセパレータ5に引き込まれ、ビームセパレータ5によって偏向され、導入電子レンズ系21に引き込まれる。導入電子レンズ系21は、複数の電子レンズで構成されており、入射した電子ビーム27を集束さる。導入電子レンズ系21は、他端がエネルギー分析器22に接続されており、電子ビーム27を集束させてエネルギー分析器22に入射させる。
エネルギー分析器22は、公知のエネルギー分析器であり、入射した電子ビーム27を光電子のエネルギーEpごとに分離し、エネルギーEpごとに分離された電子ビーム27を出射する。エネルギー分析器22は、半球形状をしており、半球の平面部にビームの入射口と出射口とが設けられている。エネルギー分析器22は、入射口に導入電子レンズ系21が接続され、出射口に投影電子レンズ系24が接続されており、導入電子レンズ系21から入射した電子ビーム27を、光電子のエネルギーEpごとに分離し、投影電子レンズ系24に出射する。
エネルギー分析器22の出射口には、エネルギースリット23が設けられている。エネルギースリット23は、板状部材の表面に、貫通した溝部が直線状に形成された通常のスリットである。エネルギースリット23は、溝部に照射された電子ビーム27を通過させ、板状部材に照射された電子ビーム27を遮断する。なお、実際上、板状部材に照射された電子ビーム27が完全に遮断されるわけではなく、これらの電子ビーム27の一部もエネルギースリット23を通過する。そのため、エネルギースリット23により溝部に照射された電子ビーム27以外の電子ビーム27の強度が低下する。本実施形態では、エネルギースリット23の溝部の幅を40μmとしている。
このようなエネルギースリット23が、エネルギー分析器22の出射口に配置されているので、エネルギー分析器22で分離された電子ビーム27の内、エネルギースリット23を通過した電子ビーム27が投影電子レンズ系24に入射する。このとき、エネルギー分析器22で光電子のエネルギーEpごとに電子ビーム27が分離されているので、電子ビーム27の出射口内の通過位置も、光電子のエネルギーEpごとに決まっている。そのため、エネルギースリット23の位置を調整することで、電子ビーム検出器25で検出する光電子のエネルギーEpを選択できる。光電子のエネルギーEpは、材料中(測定試料30中)での電子のエネルギーEに依存するので、エネルギースリット23の位置を変えることで、測定試料30中でのエネルギーEを選択し、検出する測定試料30中の電子を選択できる。
一方で、光電子のエネルギーEp=20kV+Ek-STVであるので、STVの値を変えることで、光電子のエネルギーEpを変えることができる。したがって、STVの値を変えることで、電子ビーム検出器25で検出する光電子のエネルギーEpを選択でき、検出する測定試料30中の電子を選択できる。
ここで、光電子としてエネルギースリット23を通過できる電子のエネルギーEの帯域を帯域EBとする。この帯域EBは、帯域EB内のエネルギーEの電子がより多くエネルギースリット23を通過することを意味しており、帯域EB外のエネルギーEの電子の一部もエネルギースリット23を通過できる。そうすると、測定試料30を構成する各材料の状態関数において当該帯域EB内に電子の状態が存在する材料である場合、その材料は、帯域EB内のエネルギーEの電子を有するので、制御装置50で生成する画像において、輝度値が高くなり明るく写る。状態の数が多いほど、多くの電子が存在するので、より輝度値が高くなる。一方で、状態関数において帯域EB内に電子の状態が存在しない材料は、画像において暗く写る又は写らない。
そのため、状態密度関数に基づいて、エネルギースリット23の位置を動かして、帯域EBの位置をずらすことで、観察したい材料を選択することができる。
また、上記のように、STVの値を変えることで、電子ビーム検出器25で検出する光電子のエネルギーEpを選択でき、検出する測定試料30中の電子を選択できる。すなわち、STVの値を変えることで、上記の帯域EBを通過できる電子のエネルギーを変えることができる。よって、エネルギー調整機構13が、素子部31aを構成する材料の状態密度に基づいて測定試料30に印加する所定電圧(STV)を決定し、決定したSTVを出力することで、観察したい材料を選択することができる。
さらに、状態の数が多いほど画像において輝度値が高くなるので、光電子としてエネルギースリット23を通過できる電子のエネルギーEの帯域EBが、検出したい特定の材料の状態密度が高いエネルギー帯域になるようにSTVを決定することで、特定の材料から放出される光電子の量を増やして、当該光電子を検出し易くでき、特定の材料を選択的に観察することができる。なお、実施形態1の電子顕微鏡1においても、エネルギー調整機構13を備えるようにし、エネルギー調整機構13が、素子部31aを構成する材料の状態密度に基づいて測定試料30に印加する所定電圧(STV)を決定し、STVをホルダ11に印加するようにすることもできる。
(変形例7)
上記の実施形態では、測定試料30に対して垂直にCWレーザー7を照射し、測定試料30から放出された光電子による電子ビーム27のパスをビームセパレータ5でCWレーザー7のパスと分離した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、電子顕微鏡1は、ビームセパレータ5を備えていなくてもよい。この場合、例えば、光電子を測定試料30に対して垂直方向に放出させて、光電子を検出する場合は、測定試料30の垂直方向に対して、CWレーザー7のパスが所定角度(例えば45度)傾くようにレーザー光源2を配置して、CWレーザー7を測定試料30に照射するようにする。
(変形例8)
また、上記の実施形態では、ホルダ11に高圧電源14を接続し、測定試料30に対して負の電圧を印加し、測定試料30とビームセパレータ5の間に電界を生じさせて光電子が放出されやすくした場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、投影電子レンズ系24など電子ビーム検出器25側に高圧電源14の正極側を接続し、負極側をグラウンドGに接地して、電子ビーム検出器25側を正の電圧に帯電させ、測定試料30とビームセパレータ5の間に電界を生じさせて、測定試料30から光電子が放出されやすくしてもよい。この場合、測定試料30に電圧を印加しないで済むので、工業利用上有利である。
(変形例9)
上記の実施形態では、電気特性測定回路40そのものの電位に、高圧電源14との関係において自由度があったが、高圧電源14と電気特性測定回路40のシャーシの電位を等電位にすることもできる。ここで、図9は、変形例9における電子顕微鏡の一部構成を示した概略図である。図9では、オペランド観察の対象となる測定試料30の周辺の回路を詳細に説明するために、図1に示した構成と同じ構成である、レーザー光源2、波長板3、集光レンズ4、対物レンズ6、ビームセパレータ5、投影電子レンズ系24及び電子ビーム検出器25等は省略してある。なお、ここでは図1に示した構成と同じ構成についての説明は省略し、図1に示した電子顕微鏡1との相違点に着目して以下説明する。
図9に示すように、変形例9では、測定試料30の下部電極33とホルダ11とを等電位にする電位制御装置44を備え、電気特性測定回路40のLow端子(図9中、「Low」と表記)と、電位制御装置44と、を導線43により接続した構成を有する。これにより、変形例9では、エネルギー調整機構13の出力側と、電気特性測定回路40のLow端子と、導線43と、電位制御装置44とを等電位にすることができる。電気特性測定回路40から出力される電圧は、この等電位上に加わることになり、その形状がパルス状に変化した場合においても、測定試料30の電気特性を安定的に測定することができる。なお、制御装置50により、エネルギー調整機構13、電気特性測定回路40の制御を行う接続(図中の点線)には、電気的な接続を伴わない方法、例えば、光ファイバーによる通信を適用することができる。
(変形例10)
上記の実施形態では、測定試料30周辺の電位について自由度があったが、ホルダ11と、第1電極又は第2電極としての下部電極33と、を電気的に直接接続する構成を設けることもできる。ここで、図10は、変形例10の電子顕微鏡に設けられる、ホルダ91aを備えた電位制御装置91を示した概略図である。図10は、電位制御装置91の周辺の構成について詳細に説明するための概略図であり、図1に示した構成と同じ構成である、レーザー光源2、波長板3、集光レンズ4、対物レンズ6、ビームセパレータ5、投影電子レンズ系24、電子ビーム検出器25、電気特性測定回路40、高圧電源14等は省略してある。なお、ここでは図1に示した構成と同じ構成についての説明は省略し、図1に示した電子顕微鏡1との相違点に着目して以下説明する。
変形例10における電位制御装置91は、ホルダ91aと、ホルダ91aを覆うカバー体91cとを備えている。電位制御装置91は、ホルダ91a及びカバー体91cで囲まれた内部空間を形成し、当該内部空間内におけるホルダ91a上に測定試料30が載置された構成を有する。電位制御装置91のカバー体91cには、天面に貫通孔91dが形成されており、貫通孔91dから、内部空間にある測定試料30にCWレーザー7が照射される。測定試料30の酸化物層34からの電子ビーム27の検出は、カバー体91cの貫通孔91dを介して行われる。
ホルダ91aでは、測定試料30が載置されることで、測定試料30の下部電極33が接触し、下部電極33と電気的に接続する。このように、電位制御装置91は、ホルダ91aを下部電極33と接触させることで、下部電極33とホルダ91aとを等電位にする。また、この電位制御装置91には、ホルダ91a又はカバー体91cの所定位置に導線43が接続されている。これにより、電位制御装置91では、下部電極33と、ホルダ91aと、導線43とが等電位となる。一方、上部電極35a、35bは、電位制御装置91内に設けられた絶縁性の導入端子(図示せず)を経由して導線42と接続されることになる。図10においては、図中に挿入した素子顕微鏡像における上部電極35a、35bと下部電極33の交点を強調して、その断面を図10の上部に記載している。例えば、この変形例10の場合、上部電極35a、35bはPtで、その膜厚は20ナノメートルであるが、その厚みを強調してある。
ここにおいて、電位制御装置91は、上部電極35a、35bの絶縁性を高めるために、カプトンテープなどの電気的絶縁サポート93を、カバー体91cと測定試料30の上部電極35a、35bとの間に挿入することもできる。図10に示した変形例10では、ホルダ91aに段差部91bが形成されており、電気的絶縁サポート93によって測定試料30を段差部91bに押し付け、段差部91bに測定試料30が位置決めされている。
変形例10でもCWレーザー7の波長を、測定試料30の最表層の仕事関数φに応じて選定することにより、酸化物層34からの電子ビーム27を検出することができる。即ち、測定試料30の表面全域に導電性金属を設けることができるので、放電防止、さらには、測定試料30の帯電防止も行える。また、測定試料30のCWレーザー7側の面に設ける導電性金属(上部電極35a、35b及び下部電極33)の形状を、面内においてより高い対称性を持つように設けることにより、放電防止、帯電防止の効果を持たせることもできる。また、この実施形態においては、図10の挿入図において、上下、左右からAu(100ナノメートル)/Ti(5ナノメートル)積層膜にて放電防止マスク38を形成しているが、Au、Tiの他にも、Cu、Ir、Pt、Ta、Wやそれらの合金、化合物、積層膜など素子に合わせた導電性金属を選ぶこともできる。なお、図10に示した36a、36bは、上述した実施形態と同様、上部電極35a、35bの細線部を示す。
(5)検証実験
検証実験として、素子部31a、31bにおいて上部電極35a、35bがPt、酸化物層sがTa、下部電極33がTiNで形成された測定試料30(抵抗変化メモリ)について、電流値を時間と共に増加させながら素子部31a、31bに電流を流していき、酸化物層34が変化していく様子を、電子顕微鏡1を用いて観察した。同時に、電流電圧特性も測定した。その結果を図11から図13に示す。
図11は、電子顕微鏡1により取得した素子部31aの画像である。31bにおいても同様な画像が取得できる。実際には、連続して複数の画像を取得しているが、図11では代表して、素子の電気抵抗が低抵抗状態のときの画像(上側の領域(a))と、高抵抗状態のときの画像(下側の領域(b))と、を示している。検証実験では、右側の素子部31aに電流を流して酸化物層34を変化させている。図12は、電流電圧特性の結果である。図13は、図12における各点(図12中、[A]点~[G]点)での輝度値の変化分を示す画像である。
図12に示すように、素子部31aに流す電流を増加させていくと、80μA程度の電流を流したとき([C]点付近)、電流電圧曲線が下方にシフトしていることがわかる([C]点から[D]点)。これは、酸化物層34に高抵抗部分が出現し、素子部31aの抵抗値が増加したと考えられる。その後、電圧値を-7Vまで掃引させたのち、0Vまで電圧値を戻したが([D]点から[G]点)、高抵抗化したままであった。
図11は、このような電流電圧曲線のシフトが起きる前後の画像を示しており、上側がシフトが起きる前の画像を示し、下側がシフトが起きた後の画像を示している。2つの画像を比較すると、素子部31aでは、シフト後に、上部電極と下部電極が交わる四辺状の領域の近傍で変化が見られており、この現象は、電流電圧曲線のシフトに起因するものであると考えられる。また、抵抗値が上がったことから、高抵抗部位の形成が示唆される。このように、電子顕微鏡1により、素子抵抗の様子がリアルタイムで観察でき、オペランド測定できることが確認できた。
図13の領域(a)の画像は、図11の低抵抗状態の画像と同じであり、上部電極と下部電極が交差する素子部31aが存在する。図12の電流電圧曲線に記載された[A]点から[G]点までの各点における画像を取得して、[A]点と比較した変化分を示したものが、図13における領域(b)から領域(g)に示す画像である。[D]点以降の画像で局所的に黒い点が出願しており、素子の高抵抗化の過程をオペランド観察できていることが端的に示されている。
本検証実験においては、素子観察と同時に電気特性を計測するオペランド観察となっており、パルス電圧を印加した際に電流値を取得している。また、電圧印加がなされていない間に画像を取得するという方法でなされても良く、図7中の下図で示したように、電圧印加がなされていない間に画像取得と電気抵抗値計測を行うという方法でなされても良い。図13は、このようにオペランド観察ができるようになった電子顕微鏡1により初めて得られた結果である。
従来の手法では、測定試料の素子部の酸化物層の変化を観察する場合、素子部の画像を生成後、一度チャンバーから測定試料を取り出して電流を流し、再度チャンバー内に測定試料を配置して、再度素子部の画像を生成する作業を繰り返し行う必要があった。そのため、チャンバーから測定試料を取り出すことによって素子部の特性が変化したり、素子部に不純物が付着したりし、その影響が画像に表れることがあり、電流を流したことに起因する素子部の特性の変化による画像の変化との峻別が難しい場合があった。また、測定条件の変化などにより同じ位置で素子部の画像を生成することが難しく、素子部が極めて小さい場合には同じ素子部を観察するができず、図13のような画像を得ることができなかった。
これに対しで、本発明の電子顕微鏡1は、オペランド測定できるので、電圧を印加する又は電流を流すことによる素子部の酸化物層の変化を確実に観察でき、さらには、酸化物層の変化の前後での輝度値の差分を表す画像など、従来の手法では得ることのできない観察結果も得ることができる。
1、100 電子顕微鏡
10 チャンバー
11 ホルダ
25 電子ビーム検出器
30、30a、60、70測定試料
40 電気特性測定回路
44 電位制御装置
50 制御装置

Claims (13)

  1. 光又は放射線を測定試料に照射することで前記測定試料から出射した電子を検出し、検出した前記電子に基づいて前記測定試料の画像を生成する電子顕微鏡であって、
    前記測定試料を載置するホルダと、
    前記ホルダに接続され、前記測定試料に対して光電子を放出し易くする高電圧を印加する高圧電源と、
    前記測定試料に含まれる素子部の第1電極と第2電極の間に電圧を印加する又は電流を流し、前記素子部の電気特性を変化させ前記電気特性を測定する電気特性測定回路と、
    前記第1電極及び前記第2電極のいずれか一方の電位と、前記ホルダの電位とを等電位にする電位制御装置と
    を備える
    電子顕微鏡。
  2. 前記電位制御装置は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれか一方と、前記ホルダとを等電位にする導線である
    請求項1に記載の電子顕微鏡。
  3. 前記電位制御装置は、前記ホルダを備えており、前記第1電極及び前記第2電極のいずれか一方を前記ホルダに接触させ、前記ホルダに接触する側の前記第1電極及び前記第2電極のいずれか一方と、前記ホルダとを等電位にする
    請求項1に記載の電子顕微鏡。
  4. 前記測定試料を覆う放電防止マスクを備える
    請求項1~3のいずれか1項に記載の電子顕微鏡。
  5. 前記放電防止マスクは、導電性金属で形成されている
    請求項4に記載の電子顕微鏡。
  6. 前記放電防止マスクは、前記第1電極及び前記第2電極の内、導電性が低い方の電極を覆う
    請求項4又は5に記載の電子顕微鏡。
  7. 前記電気特性測定回路は、ソースメジャーユニットである
    請求項1~6のいずれか1項に記載の電子顕微鏡。
  8. 前記測定試料の画像を生成し、前記電気特性測定回路を制御する制御装置を備え、
    前記制御装置は、素子部への前記電圧又は前記電流の印加と休止を繰り返すように前記電気特性測定回路を制御し、前記電圧又は前記電流の印加が休止状態にあるときに、前記素子部の画像を生成する
    請求項1~7のいずれか1項に記載の電子顕微鏡。
  9. 前記光として、CWレーザーを生成するレーザー光源と、
    前記電子として、前記CWレーザーの照射によって前記測定試料から出射した光電子を検出する電子ビーム検出器とを備える
    請求項1~8のいずれか1項に記載の電子顕微鏡。
  10. 前記CWレーザーにより前記測定試料から出射した前記光電子をエネルギーごとに分離するエネルギー分析器と、
    所定エネルギーの前記光電子を通過させるエネルギースリットと、を備え、
    前記電子ビーム検出器は、前記エネルギースリットを通過した前記光電子を検出する
    請求項9に記載の電子顕微鏡。
  11. 前記CWレーザーのエネルギーと前記測定試料の仕事関数の差が0~0.5eVである
    請求項9又は10に記載の電子顕微鏡。
  12. 前記測定試料に所定電圧を印加し、前記光電子のエネルギーを調整するエネルギー調整機構を備える
    請求項9~11のいずれか1項に記載の電子顕微鏡。
  13. 光又は放射線を測定試料に照射することで前記測定試料から出射した電子を検出し、検出した前記電子に基づいて前記測定試料の画像を生成する電子顕微鏡であって、
    前記測定試料に含まれる素子部の第1電極と第2電極の間に電圧を印加する又は電流を流す電気特性測定回路と、
    前記第1電極及び前記第2電極のいずれか一方の電位と、前記測定試料を載置するホルダの電位とを等電位にする電位制御装置と、
    前記光として、CWレーザーを生成するレーザー光源と、
    前記電子として、前記CWレーザーの照射によって前記測定試料から出射した光電子を検出する電子ビーム検出器と、
    前記測定試料に所定電圧を印加し、前記光電子のエネルギーを調整するエネルギー調整機構と
    を備え、
    前記エネルギー調整機構は、前記素子部を構成する材料の状態密度に基づいて前記測定試料に印加する所定電圧を決定する
    子顕微鏡。
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