JP2002048741A - 光電子分光測定装置及び測定方法 - Google Patents

光電子分光測定装置及び測定方法

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JP2002048741A
JP2002048741A JP2000234209A JP2000234209A JP2002048741A JP 2002048741 A JP2002048741 A JP 2002048741A JP 2000234209 A JP2000234209 A JP 2000234209A JP 2000234209 A JP2000234209 A JP 2000234209A JP 2002048741 A JP2002048741 A JP 2002048741A
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Kazuhiro Takada
一広 高田
Shigeki Yoshida
茂樹 吉田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 絶縁性試料の微小領域を精度よく分析するこ
とが可能な光電子分光測定方法及び装置を提供する。 【解決手段】 軟X線から真空紫外線までの波長領域の
うち、所定波長の光を励起源として絶縁物から成る試料
に照射し、該試料から放出される光電子の量を運動エネ
ルギー毎に検出する光電子分光装置であって、絶縁物か
らなる試料の分析領域を制限するために試料上に設置さ
れ、励起源からの光及び光電子を通過させる開口部を有
し、透明導電体材料からなる導電層を少なくともその表
面に有する分析領域制限用マスクと、試料から放出され
る光電子の量に対応する信号と分析領域制限用マスクか
ら放出される光電子の量に対応する信号とを分離するた
めに、分析領域制限用マスクに所定のバイアス電圧を印
加する直流電源とを有する構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光電子分光装置を用いて
絶縁性試料の微小領域を分析するための光電子分光測定
装置及び測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】表面分析方法として、従来、試料から放
出される電子、X線等の運動エネルギーや強度分布を観
測することにより、その試料に含まれる元素や化学結合
状態、あるいは試料の電子構造を調べる分光分析法が知
られている。
【0003】分光分析法では、試料表面から電子やX線
等を放出させるための励起源として、X線、真空紫外
線、電子線、イオンビーム等の電離放射線が用いられ、
試料に軟X線を照射して試料表面から放出される光電子
を観測し、試料の極表面層の元素分析やその化学結合状
態を調べるX線光電子分光法(XPSまたはESC
A)、真空紫外光を照射する紫外線光電子分光法(UP
S)、あるいは集束電子線を照射するオージェ電子分光
法(AES)等が知られている。
【0004】近年、微小領域の分析ニーズは様々な分野
で高まってきており、これまで微小領域の分析が比較的
不得手であったX線光電子分光法(以下、XPSと称
す)も数十ミクロン程度の微小領域の分析に用いられる
ようになってきている。
【0005】XPSにより微小領域を分析するためは、
例えば、以下の(1)〜(3)に示すような手法によ
り、照射するX線を集光するか、分析する領域を限定す
る必要がある。
【0006】(1)分光結晶による集光方式(例えば、
Surf.and Interface Anal.6,215(1984)) (2)制限視野方式(例えば、Surf.and Interface Ana
l.5,217(1983)) (3)試料表面へのマスキングによる分析領域の限定方
式 分光結晶による集光方式は、アノードで発生したX線を
分光結晶により単色化すると共に、試料表面上に集光照
射することで微小領域を分析する方法であり、X線を集
光することで照射された局所領域のみ解析が可能にな
る。なお、現在では軟X線を100μm程度のビーム径
まで集光可能であるが、このような数値で表されるビー
ム径は定義によって示される値であり、実際には、いわ
ゆるビームの“ぼけ”によって照射領域が数値以上に広
がってしまう。
【0007】制限視野方式は、光電子検出器のインプッ
トレンズに視野を制限するアパーチャを設けることによ
り、微小領域から発生した光電子を選択的に検出する方
法である。制限視野方式は分光結晶による集光方式に比
べると、分析領域の限定能力が高いため、現在、微小領
域分析で最も一般的に使用されている手法である。
【0008】試料表面へのマスキングによる分析領域の
限定方式は、例えば、分析領域に相当する小さな穴をパ
ターニングしたマスクを作成し、そのマスクを試料表面
に設置して分析領域を限定する方法、逆に分析領域以外
の領域をパターニングした露光用マスクを作成し、その
露光用マスクを用いて試料表面の分析領域の周囲に金属
薄膜などを形成して分析領域を限定する方法がある。こ
れらの方法は、X線光電子分光装置の大幅な改造が不要
であるため、上述した分光結晶による集光方式、あるい
は制限視野方式の機能を備えていない装置構成であって
も、比較的容易に微小領域を分析することができる。
【0009】ところで、表面分析の測定対象として絶縁
物(絶縁性試料)を選定した場合、絶縁性試料は電子を
放出することで生じた電荷のアンバランスを速やかに回
復することができないため、励起源を照射すると試料が
チャージアップ(帯電)する問題が発生する。
【0010】帯電した試料から放出された電子は、試料
と光電子検出器の間に生じた電位差により運動エネルギ
ーが変化し、スペクトル波形が結合エネルギー(電子の
運動エネルギー)軸方向にシフトしてしまう。このと
き、シフト量が大きいと、検出しようとする元素のスペ
クトルのピークが測定範囲外に移動してしまうため、再
測定するか、測定範囲を広く設定する必要があり、測定
時間が長くなってしまう等の不都合が生じる。
【0011】また、試料表面上に照射する励起源の強度
むらや試料の層構造に由来して、面方向、あるいは深さ
方向に不均一に帯電した場合には、シフト量の異なるス
ペクトル波形の重ね合わせによりスペクトルが変形した
り、スペクトルのピーク幅が広がるといったテーリング
が生じる。試料が帯電することで現れる影響は、特に励
起源に電子線やX線を用いた場合に顕著になる。
【0012】このような試料の帯電による影響を防止す
るために、従来、様々な方法が提案されている。これら
の方法は、 (4)測定後に帯電によるスペクトルのシフト量を補正
する方法 (5)積極的に帯電そのものを中和する方法 に大別できる。
【0013】スペクトルのシフト量を補正する方法のう
ち、例えば、X線光電子分光法では、試料表面上にある
結合エネルギーが既知の元素(状態も既知)を利用する
方法がよく用いられる。すなわち、自然に吸着した炭化
水素汚染による炭素から放出される電子、表面に薄く蒸
着された金から放出される電子、あるいはArイオンで
スパッタした場合等ではArから放出される電子を基準
にしてスペクトルのシフト量を補正する。
【0014】一方、試料の帯電を中和する方法には、試
料が置かれた真空の分析室内にわずかな希ガスを導入
し、それから放出される電子を利用する方法(特開平3
−26948号公報)や、試料に近接する金属部分に励
起源を照射し、そこから放出される電子を利用する方法
(特開平3−113354号公報)等がある。
【0015】しかしながら、中和条件(供給電子量や照
射範囲等)の制御が容易であるという利点から、最も普
及し、かつ有効な方法として、中和電子銃により試料に
電子線を照射する方法がある。
【0016】中和電子銃による中和方法では、照射する
電子量、照射する電子の運動エネルギー、及び電子線の
照射位置(範囲)をそれぞれ制御するための制御手段を
備え、測定者は測定したスペクトルあるいは画面に表示
されるスペクトルを見ながら、帯電によるスペクトルの
シフトや変形がなくなるように中和条件を調整する。
【0017】例えば、試料表面上、または表面近傍内部
に埋め込まれた基準元素による放出電子のピークを測定
し、その測定結果に基づいて照射する電子量や電子の運
動エネルギー等を自動的に調整する技術が特開平9−2
43579号公報に開示されている。特開平9−243
579号公報で開示された技術によれば、測定毎あるい
は測定中の帯電状態の変化に対応して中和条件を設定す
るため、比較的短時間で正確な表面分析が可能になる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、絶縁
性試料の微小領域を分析するためには、微小領域を分析
するときに発生する問題点と絶縁性試料を分析するとき
に発生する問題点の双方を解決しなくてはならないた
め、非常に困難であることが理解できる。
【0019】微小領域を分析するための方法のうち、分
光結晶による集光方式では、上述したようにX線ビーム
の“ぼけ”により照射領域が広がってしまうため、分析
領域を限定するための性能が低いという問題がある。
【0020】また、制限視野方式では、分光結晶による
集光方式よりも分析領域を限定するための能力は高い
が、投影モードによる結像を利用するため、レンズ系の
収差により“ぼけ”が生じ、制限した視野よりもやや広
い領域を分析してしまう問題がある。
【0021】また、試料表面へのマスキングによる分析
領域の限定方式のうち、穴を形成したマスクを試料表面
に設置する方法では、マスキング精度が十分に得られな
いという問題がある。また、分析領域の周囲に薄膜を形
成する方法では、分析領域の周囲に蒸着する材料の回り
込みによりパターニング精度が低下する問題がある。さ
らに、これらに共通する問題点として、分析試料面とマ
スク表面の共通元素を区別できないこと、分析領域を自
由に変えられないこと等がある。
【0022】一方、絶縁性試料を分析するための方法の
うち、スペクトルのシフト量を補正する方法では、不均
一な帯電によるスペクトルの変形を補正することができ
ないという問題がある。また、表面が清浄で吸着炭化水
素がない試料や金を蒸着できない試料には適用できない
という問題がある。
【0023】また、試料の帯電を中和する方法では、中
和条件を見出すのに時間や手間を要したり、中和処理に
より測定精度や測定効率を低下させるなどの問題があ
る。特に、試料面方向及び深さ方向に発生した不均一な
帯電は中和銃による電子線の照射だけでは中和しきれず
に低結合エネルギー側に裾をひくような場合があった。
すなわち、中和銃により電子線を照射し試料の帯電を中
和する方法は、中和マージンが狭いという問題がある。
特に、励起源として単色化X線を用いた場合にこの問題
が生じやすくなる。
【0024】本発明は上記したような従来の技術が有す
る問題点を解決するためになされたものであり、絶縁性
試料の微小領域を精度よく分析することが可能な光電子
分光測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の光電子分光測定装置は、軟X線から真空紫外線
までの波長領域のうち、所定波長の光を励起源として絶
縁物から成る試料に照射し、該試料から放出される光電
子の量を運動エネルギー毎に検出する光電子分光装置で
あって、前記絶縁物からなる試料の分析領域を制限する
ために前記試料上に設置され、前記励起源からの光及び
前記光電子を通過させる開口部を有し、透明導電材料か
らなる導電層を少なくともその表面に有する分析領域制
限用マスクと、前記試料から放出される光電子の量に対
応する信号と前記分析領域制限用マスクから放出される
光電子の量に対応する信号とを分離するために、前記分
析領域制限用マスクに所定のバイアス電圧を印加する直
流電源と、を有する構成であり、前記直流電源から出力
される前記バイアス電圧を調整するための調整装置を有
する構成である。
【0026】ここで、前記分析領域制限用マスクは、可
視光を透過させる透明な導電体材料から成るもの、ある
いは、可視光を透過させる透明な絶縁物から成る支持体
と、前記支持体の表面に成膜された、可視光を透過させ
る透明な導電体材料から成る導電層とを有するものが好
ましく、このとき、前記分析領域制限用マスクは、前記
開口部の位置を容易に認識するための識別手段を有する
ものが好ましい。
【0027】また、前記開口部は、前記光電子を取り込
むことが可能な取り込み領域よりも開口サイズが小さく
形成されていることが好ましい。
【0028】一方、本発明の光電子分光測定方法は、励
起源からの光及び光電子を通過させる開口部を有し、透
明導電体材料からなる導電層を少なくともその表面に有
する分析領域制限用マスクを、前記開口部が被測定試料
の所定の分析領域を囲むように前記試料上に設置し、軟
X線から真空紫外線までの波長領域のうち、所定波長の
光を前記分析領域制限用マスクの開口部内及び該開口部
の周辺にそれぞれ照射し、前記試料から放出される光電
子の量に対応する信号と前記分析領域制限用マスクから
放出される光電子の量に対応する信号とを分離するため
に、直流電源から前記分析領域制限用マスクに所定のバ
イアス電圧を印加しながら測定することを特徴とする。
【0029】上記のような光電子分光測定装置及び測定
方法では、試料から放出される光電子の量に対応する信
号と分析領域制限用マスクから放出される光電子の量に
対応する信号とが分離するように、分析領域制限用マス
クに所定のバイアス電圧を印加するため、試料上に存在
する元素からの情報を何ら損なうことなく得ることがで
きる。
【0030】
【発明の実施の形態】次に本発明について図面を参照し
て説明する。
【0031】図1は本発明の光電子分光装置の一構成例
を示すブロック図である。なお、図1に示した光電子分
光装置では、測定対象を絶縁性試料に限った場合で説明
しているが、以下では単に試料と称する。
【0032】図1において、光電子分光装置は、試料1
の表面分析を行うための周囲環境を提供する分析室7
と、分析室7内を真空状態にするための真空ポンプ12
と、試料1に励起源である軟X線を照射するためのX線
源4と、試料1の帯電を中和するために電子線を照射す
る中和電子銃5と、試料1から放出される光電子6を取
り込み分光するエネルギー分析器11と、分析室7内に
測定対象である試料1を導入するための試料交換室8
と、試料1の分析位置を決めるための位置合せ用試料台
10と、位置合せ用試料台10への位置決め時に試料1
をモニタするためのCCDカメラ9と、測定結果を表示
するためのディスプレイ14と、エネルギー分析器11
で分光し、その処理結果をディスプレイ14に表示させ
るための表示信号を出力する制御装置13とを有する構
成である。
【0033】本発明の光電子分光装置は、上記構成に加
えて、励起源からの光及び試料1から放出される光電子
を通過させる開口部を有し、分析領域を制限するために
試料1上に設置される分析領域制限用マスク2と、分析
領域制限用マスク2に所定のバイアス電圧を印加するた
めの直流電源3と、直流電源3の電圧を調整するための
調整装置15とを有する構成である。
【0034】分析領域制限用マスク2は、分析領域の大
きさに適合する開口部を有し、透明な導電体材料で形成
される。分析領域制限用マスク2は透明な材料で形成さ
れているので、CCDカメラ9を用いて試料1や分析領
域制限用マスク2の表面を観察しながら分析領域及び分
析領域に対する開口部の位置決めを正確に行うことが可
能になる。そのため、分析領域制限用マスク2は可視光
の透過率が高い材料で形成され、具体的には、酸化スズ
(SnO2:TO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジ
ウム(In23)等の酸化物、それらの酸化物に金属が
ドープされたドープ型の金属酸化物であるフッソドープ
の酸化スズ(FTO)、アンチモンドープの酸化スズ
(ATO)、スズドープの酸化インジウム(ITO)、
インジウムドープの酸化亜鉛(IZO)、アルミニウム
ドープの酸化亜鉛(AZO)等、あるいはCd2Sn
4、In23−ZnO、SnO2−ZnO、In23
MgO等の材料が用いられる。なお、分析領域制限用マ
スク2の材料は上記酸化物等に限定されるものではな
く、分析領域制限用マスク2下にある試料1の表面が認
識できる透過率を有する材料であればどのようなもので
あってもよい。
【0035】分析領域制限用マスク2に形成する開口部
の大きさは、試料1から放出される光電子6をエネルギ
ー分析器11で取り込むことが可能な領域よりも小さけ
ればよい。光電子の取り込み領域の大きさは、試料1に
照射する励起光を集光照射する集光方式、検出側で光電
子の取り込み領域を制限する制限視野方式などに応じて
適宜決定される。
【0036】また、分析領域制限用マスク2の厚さが開
口部の大きさに比べて極端に厚いと、励起光(例えば、
軟X線から真空紫外線までの波長領域にある光)が試料
に照射されない問題や光電子の取り込みが困難になる問
題が発生するために好ましくない。したがって、分析領
域制限用マスク2は厚さよりも開口径が十分に大きい形
状が望ましい。
【0037】なお、分析領域制限用マスク2を構成する
透明導電体を可視光領域で高い透過率となる厚さ(60
0nm程度以下)に設定した場合、透明導電体材料17
自体に十分な強度が無いために取り扱いが困難になる場
合がある。このような場合は、分析領域制限用マスク2
に、図2(a)あるいは図2(b)に示すようなガラス
等から成る支持体19を設け、支持体19の周囲に上記
透明導電体材料17を成膜すればよい。
【0038】また、分析領域制限用マスク2の開口部の
形状は、試料1の分析領域を内包するものであればどの
ような形状であってもよい。例えば、図3(a)に示す
ように、丸い開口、あるいは図3(b)に示すように、
四角形の開口を有していてもよく、試料1の分析領域1
6を囲むことができる大きさであればよい。
【0039】また、分析領域制限用マスク2が透明導電
体材料17で形成されていることで開口部の位置をより
明瞭に認識可能とするために、例えば、識別手段とし
て、図4(a)に示すように開口部の周囲を縁取っても
よく、図4(b)、(c)に示すようなマーキングを行
ってもよい。
【0040】次に、本発明の光電子分光方法の測定手順
について図1を参照して説明する。
【0041】分析対象である試料1は、まず、試料交換
室8内に導入される。試料交換室8の上方には、試料1
及び分析領域制限用マスク2の位置決めを行うためのC
CDカメラ9が設置されている。
【0042】試料交換室8内の位置合せ用試料台10上
には絶対座標値が記録され、試料1は位置合せ用試料台
10上で任意の分析位置に位置決めされる。また、試料
1上には、分析領域の大きさに適合した開口部を有する
分析領域制限用マスク2が、開口部の中心と分析領域の
中心とが一致するように重なられる。このような作業は
CCDカメラ9で目視しながら手動で操作することも可
能であり、位置合せ用試料台10上に絶対座標値が記録
されているため、不図示の自動制御装置を用いて試料1
に分析領域制限用マスク2を重ねることも可能である。
【0043】分析領域制限用マスク2が上面に設置され
た試料1は、光電子分光装置の分析室7内に導入され、
分析領域制限用マスク2に直流電源3が接続された後、
X線源4より分析領域16を内包する開口部内及び開口
部周辺にX線ビーム4aがそれぞれ照射される。試料1
及び分析領域制限用マスク2から放出された光電子は、
エネルギー分析器11に取り込まれて分光され、制御装
置13により信号処理されてディスプレイ14上にスペ
クトル波形として表示される。
【0044】次に、試料1から放出された光電子による
信号と分析領域制限用マスク2から放出された光電子に
よる信号を分離するために、直流電源3を用いて分析領
域制限用マスク2にバイアス電圧を印加する。
【0045】分析領域制限用マスク2へ印加するバイア
ス電圧は、試料1から得られる信号と分析領域制限用マ
スク2から得られる信号とが分離可能な値に設定すれば
よく、印加電圧の絶対値はスペクトル中の注目している
ピークの幅による。これらの信号は、通常、数十V以下
のバイアス電圧を印加することで分離可能であり、必要
以上に高いバイアス電圧を印加すると、スペクトルを歪
めたり、エネルギー分析器11による光電子の取り込み
量の低下を招くため、分離可能な範囲内で可能な限り低
いバイアス電圧に設定することが望ましい。バイアス電
圧は、制御装置13、あるいは手動により、調整装置1
5を介して直流電源3の電圧値を調整することで最適な
値に設定される。
【0046】また、バイアス電圧の極性は、試料1から
得られる信号と分析領域制限用マスク2から得られる信
号とが分離できればどちらでもよい。但し、スペクトル
中の注目しているピークのバックグラウンド(BG)が、
バイアス電圧を印加することで大幅に上昇するような場
合は、それとは逆の極性に設定することが望ましい。
【0047】例えば、試料1の表面と分析領域制限用マ
スク2の表面に同じ元素が存在する場合、試料1と分析
領域制限用マスク2の両方にX線が照射されると、両方
からその元素に基づく光電子が発生する。
【0048】ここで、試料1上の元素のみを検出したい
場合、例えば、分析領域制限用マスク2にプラス電位を
印加すると、見かけ上、分析領域制限用マスク2から得
られる信号は高結合エネルギー側にシフトし、試料1か
ら得られる同元素によるスペクトルのピークのバックグ
ラウンドは低いままである(図5参照)。
【0049】一方、分析領域制限用マスク2にマイナス
電位を印加すると、試料1から得られる同元素によるス
ペクトルのピークに分析領域制限用マスク2から得られ
る同元素によるスペクトルのピークのバックグラウンド
が重畳されるため、ピークの検出精度が低下する。した
がって、このような場合は分析領域制限用マスク2にプ
ラス電位を印加することが好ましい。
【0050】なお、X線を照射することで生じる試料1
の帯電は、通常、励起源をモノクロX線とした方が顕著
であるが、本発明の光電子分析装置では、モノクロ、非
モノクロ(特性X線)X線のどちらを用いてもよい。ま
た、X線、あるいは真空紫外線を励起源とする光電子分
光装置には、通常、試料1の帯電を中和するための中和
電子銃5が備わっているが、透明導電体材料17から成
る分析領域制限用マスク2を設けたことによる効果を十
分に発揮させるために中和電子銃5を併用することが望
ましい。
【0051】以上説明したように、本発明の光電子分光
方法及び装置によれば、試料1から放出される光電子の
量に対応する信号と分析領域制限用マスク2から放出さ
れる光電子の量に対応する信号とが分離するように、分
析領域制限用マスク2に所定のバイアス電圧を印加する
ため、試料1上に存在する元素からの情報を何ら損なう
ことなく得ることができる。したがって、従来まで困難
であった絶縁性試料の微小領域の表面分析を高精度に行
うことができる。
【0052】また、従来のように試料1の表面にスペク
トルの基準となる材料を蒸着する必要がないため、試料
1の表面を汚染することなく表面分析を行うことができ
る。
【0053】さらに、分析領域制限用マスク2に、透明
な導電体材料、あるいは透明な支持体とその表面に成膜
された透明な導電層とを有するものを用いることで、試
料1の分析領域及び開口部を正確に位置決めすることが
できる。
【0054】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を参照して
説明する。
【0055】なお、本発明は以下に示す実施例に限定さ
れるものではなく、本発明の目的が達成される範囲内で
各要素の置換や設計変更がなされたものを包含する。
【0056】(第1実施例)第1実施例は、青板ガラス
上に100μm程度の大きさの異物が観察された試料1
の光電子スペクトルを測定する例である。
【0057】分析領域制限用マスク2には、図4(a)
に示すように円形の開口部を有し、図2(b)に示すよ
うに、ガラスから成る支持体19にITOから成る透明
導電体17を200nm程度成膜した、厚さ100μ
m、開口部サイズが約300μmφのものを用いた。
【0058】このような分析領域制限用マスク2を試料
1上に密着させ、モノクロ化したAl−Kα線(148
6.6eV、ビーム径約1mmφ)を照射すると共に、
中和電子銃5から電子線を照射しながら光電子スペクト
ルを測定した。
【0059】得られたスペクトルのうち、Si−2pの
ピークは約103eVであり、標準データによる本来の
結合エネルギーよりもやや低い結合エネルギー側に観測
された。また、ピークの形状は連続的な変化を示し、低
エネルギー側におけるスペクトルの歪みもなく、試料1
に発生した帯電が均一に中和されていることが示唆され
る。
【0060】次に、分析領域制限用マスク2に+10V
を印加し、試料1と分析領域制限用マスク2の炭素
(C)及び酸素(O)による光電子ピークを分離した。
Si−2pのピークと石英からのO−1sのピーク(低
い結合エネルギーの方)の面積から、SiとOの組成比
を求めたところ、Si:O≒1:2が得られ、試料1か
ら得られる信号と分析領域制限用マスク2から得られる
信号が分離可能なことも確認できた。また、本実施例の
測定結果から試料1上の100μm程度の大きさの異物
は、主としてNaを主成分とするものであることが確認
できた。
【0061】(第2実施例)第2実施例は、青板ガラス
上に銀(Ag)から成る配線18(幅が約100μm)
が形成された試料の光電子スペクトルを測定する例であ
る。
【0062】配線材料はレジネートであり、スクリーン
印刷にてパターニングし、大気中で480℃の条件で焼
成して形成したものである。配線18からはAgが青板
ガラス中に拡散するため、できるだけ配線18に近い部
位(配線側部)をXPSにより分析し、Agの拡散量と
その化学状態を測定することが本実施例の目的である。
【0063】分析領域制限用マスク2は、図4(b)に
示したように円形の開口部を有し、図2(a)に示すよ
うに、ガラスから成る支持体19にITOから成る透明
導電体17を200nm程度成膜した、厚さ70μm、
開口部サイズが約200μmφのものを用いた。
【0064】図6(a)に示すように、分析領域制限用
マスク2は、開口部が試料1上の配線18の側部を含む
ように位置させる。このとき、分析領域制限用マスク2
と配線部は接触しているが、支持体19が絶縁物である
ために試料1及び配線からは絶縁されている。
【0065】このような状態で分析領域制限用マスク2
及び試料1にそれぞれ非単色のAl−Kα線(148
6.6eV、ビーム径約1mmφ)を照射すると共に、
中和電子銃5から電子線を照射しながら光電子スペクト
ルを測定した。また、分析領域制限用マスク2には直流
電源3により+10Vのバイアス電圧を印加し、光電子
の結合エネルギーが0〜1200eVの範囲を測定し
た。
【0066】図6(b)に示すように、得られたO−1
sのスペクトルは、強いピークと弱いピークの2本に分
離した。また、低結合エネルギー側の強いピークは青板
ガラスから得られる信号であり、高結合エネルギー側の
弱いピークは配線18から得られる信号である。スペク
トルをさらに詳しく検討すると、Ag、Pbの存在を示
すピークも2本に分離しており、同様にガラスから得ら
れる信号と配線から得られる信号も分離(約20eVの
差)して現れた。
【0067】このように青板ガラス上の配線側部をXP
Sにより分析したところ、青板ガラスの成分(Si、
O、Na、Ca)の他にAg、Pb、O、Cの存在を示
すピークが2つに分離されて検出された。その後、分析
領域を変更するために、試料1を一旦試料交換室8に戻
し、分析領域制限用マスク2の位置を変更して再測定を
行った。
【0068】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されて
いるので、以下に記載する効果を奏する。
【0069】試料から放出される光電子の量に対応する
信号と分析領域制限用マスクから放出される光電子の量
に対応する信号とが分離するように、分析領域制限用マ
スクに所定のバイアス電圧を印加するため、試料上に存
在する元素からの情報を何ら損なうことなく得ることが
できる。したがって、従来まで困難であった絶縁性試料
の微小領域の表面分析を高精度に行うことができる。
【0070】また、従来のように試料の表面にスペクト
ルの基準となる材料を蒸着する必要がないため、試料の
表面を汚染することなく表面分析を行うことができる。
【0071】さらに、分析領域制限用マスクに、透明な
導電体材料、あるいは透明な支持体とその表面に成膜さ
れた透明な導電層とを有するものを用いることで、試料
の分析領域及び分析領域制限用マスクの開口部を正確に
位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電子分光装置の一構成例を示すブロ
ック図である。
【図2】図1に示した分析領域制限用マスクの構造例を
示す側断面図である。
【図3】図1に示した分析領域制限用マスクの開口部の
形状例を示す平面図である。
【図4】図1に示した分析領域制限用マスクの開口部に
対して実施する識別手段の例を示す平面図である。
【図5】図1に示した分析領域制限用マスクにバイアス
電圧を印加することでスペクトルのピークが分離される
様子を示すグラフである。
【図6】本発明の光電子分光方法の第2実施例の様子を
示す図であり、同図(a)は試料、及び分析領域制限用
マスクの位置関係を示す平面図であり、同図(b)はス
ペクトルの一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 試料 2 分析領域制限用マスク 3 直流電源 4 X線源 4a X線ビーム 5 中和電子銃 6 光電子 7 分析室 8 試料交換室 9 CCDカメラ 10 位置合せ用試料台 11 エネルギー分析器 12 真空ポンプ 13 制御装置 14 ディスプレイ 15 調整装置 16 分析領域 17 透明導電体材料 18 配線 19 支持体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2G001 AA01 AA03 AA07 AA09 AA10 BA08 CA03 EA09 FA03 FA17 FA30 GA09 HA09 NA03 NA05 NA07 NA09 NA11 NA12 NA21 PA02 PA07 RA10 SA01 SA10

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軟X線から真空紫外線までの波長領域の
    うち、所定波長の光を励起源として絶縁物から成る試料
    に照射し、該試料から放出される光電子の量を運動エネ
    ルギー毎に検出する光電子分光装置であって、 前記絶縁物からなる試料の分析領域を制限するために前
    記試料上に設置され、前記励起源からの光及び前記光電
    子を通過させる開口部を有し、透明導電体材料からなる
    導電層を少なくともその表面に有する分析領域制限用マ
    スクと、 前記試料から放出される光電子の量に対応する信号と前
    記分析領域制限用マスクから放出される光電子の量に対
    応する信号とを分離するために、前記分析領域制限用マ
    スクに所定のバイアス電圧を印加する直流電源と、を有
    する光電子分光測定装置。
  2. 【請求項2】 前記直流電源から出力される前記バイア
    ス電圧を調整するための調整装置を有する請求項1記載
    の光電子分光測定装置。
  3. 【請求項3】 前記分析領域制限用マスクは、 可視光を透過させる透明な導電体材料から成る請求項1
    または2記載の光電子分光測定装置。
  4. 【請求項4】 前記分析領域制限用マスクは、 可視光を透過させる透明な絶縁物から成る支持体と、 前記支持体の表面に成膜された、可視光を透過させる透
    明な導電体材料から成る導電層とを有する請求項1また
    は2記載の光電子分光測定装置。
  5. 【請求項5】 前記分析領域制限用マスクは、 前記開口部の位置を容易に認識するための識別手段を有
    する請求項3または4記載の光電子分光測定装置。
  6. 【請求項6】 前記開口部は、 前記光電子を取り込むことが可能な取り込み領域よりも
    開口サイズが小さく形成された請求項1乃至5のいずれ
    か1項記載の光電子分光測定装置。
  7. 【請求項7】 励起源からの光及び光電子を通過させる
    開口部を有し、透明導電体材料からなる導電層を少なく
    ともその表面に有する分析領域制限用マスクを、前記開
    口部が被測定試料の所定の分析領域を囲むように前記試
    料上に設置し、 軟X線から真空紫外線までの波長領域のうち、所定波長
    の光を前記分析領域制限用マスクの開口部内及び該開口
    部の周辺にそれぞれ照射し、 前記試料から放出される光電子の量に対応する信号と前
    記分析領域制限用マスクから放出される光電子の量に対
    応する信号とを分離するために、直流電源から前記分析
    領域制限用マスクに所定のバイアス電圧を印加しながら
    測定することを特徴とする光電子分光測定方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009180598A (ja) * 2008-01-30 2009-08-13 Hamamatsu Photonics Kk 光電子分光分析方法
JP2009233819A (ja) * 2008-03-28 2009-10-15 Shin Etsu Handotai Co Ltd 単結晶インゴットの円筒研削装置および加工方法
JP2010112873A (ja) * 2008-11-07 2010-05-20 Jeol Ltd 分光分析装置

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