JP2001027623A - 電子分光装置及びそれを用いた測定方法 - Google Patents

電子分光装置及びそれを用いた測定方法

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JP2001027623A
JP2001027623A JP11199698A JP19969899A JP2001027623A JP 2001027623 A JP2001027623 A JP 2001027623A JP 11199698 A JP11199698 A JP 11199698A JP 19969899 A JP19969899 A JP 19969899A JP 2001027623 A JP2001027623 A JP 2001027623A
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Shigeki Yoshida
茂樹 吉田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 絶縁性の試料の帯電を防ぐために改良された
電子分光装置を提供する。 【解決手段】 電離放射線をプローブとして試料に照射
し、試料から放出される電子の量を運動エネルギー別に
検出する電子分光装置において、試料1表面に設置する
導電性マスク2とこれにバイアスを印加する手段3とを
具備したことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体や絶縁体等の
表面に含まれる元素や、その結合状態等を分析する電子
分光装置に係り、特に絶縁性の試料の帯電を防ぐために
改良された電子分光装置及びそれを用いた測定方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】表面分析は通常試料から放出される電
子,X線等のエネルギーや強度分布を調べることによ
り、その試料に含まれる元素やその化学結合状態、ある
いは試料の電子構造を与えるものである。試料表面から
電子やイオン等を放出されるための励起線には、電子
線,X線,イオンといった電離放射線を用いるが、例え
ば軟X線を照射して表面から放出される光電子を観測す
る場合はX線光電子分光(XPS又はESCA)法と呼
ばれ、試料の極表面の元素分析やその化学結合状態を与
える手法としてよく知られている。この他にも真空紫外
光を用いる紫外線光電子分光(UPS)法、集束電子線
を用いるオージェ電子分光(AES)法もよく知られて
いる。
【0003】しかし試料が絶縁性の場合、電子放出によ
り失われた電荷バランスを速やかに補償することができ
ないため、試料がチャージアップ(多くの場合正の電荷
を帯びる)してしまう。このため、試料から放出される
電子は、試料と検出器の間に生じた電位差により電子の
運動エネルギーが変化し、得られるスペクトルは束縛エ
ネルギー(あるいは電子の運動エネルギー)軸について
シフトしたものとなる。シフトが大きいと狙ったピーク
が測定範囲からはみ出してしまうため、再度測定を行う
か、あらかじめ測定範囲を広く設定する必要があり、測
定時間が長くなってしまうなどの不都合が生じる。ま
た、試料面上での励起線の強度むらや試料の層構造に由
来し帯電の度合が面内あるいは深さ方向に不均一である
場合には、シフト量の異なるスペクトルの重ね合わせに
よりスペクトルが変形したり、ピーク幅の広がりや、い
わゆるテーリングが問題となる。これらのチャージアッ
プの影響は、特に励起線に電子線やX線を用いる場合に
顕著である。
【0004】図8に、従来技術においてX線光電子分光
装置(XPS)を用いてSi基板上のSi酸化膜(膜厚
500nm)を深さ方向に分析した結果を示す。スパッ
タエッチングはアルゴンイオン(加速電圧3kV、エッ
チングレート10nm/分)を用いて行い、10分間エ
ッチングする毎に、O−1s電子ピークを測定した。測
定開始時の、チャージアップによりシフトしたピーク位
置を参考にして測定範囲を設定して得られたスペクトル
であるが、スパッタエッチングが進んで酸化膜厚が薄く
なるにつれ、チャージアップによるシフトが小さくな
り、測定範囲からピークがはみ出してしまっていること
が示されている。
【0005】このような試料表面のチャージアップの影
響を防ぐには測定後にチャージアップによるスペクトル
のシフトを補正するか、積極的にチャージアップそのも
のを中和する方法が用いられる。例えばX線光電子分光
法の場合のシフト補正方法としては、束縛エネルギーが
既知である試料表面上の元素(状態も既知)を利用する
方法がよく用いられる。すなわち、自然に吸着した、い
わゆる炭化水素汚染による炭素あるいは表面に薄く蒸着
した金から放出された電子を基準とする方法である。あ
るいはArイオンでスパッタした場合などはArから放
出された電子を基準にすることもできる。しかし、これ
らの方法では前述の不均一なチャージアップによるスペ
クトルの変形を補正することはできず、また清浄表面で
吸着炭化水素がない試料や金の蒸着ができない試料には
適用できない。このような場合には、試料に外部から電
荷を供給してチャージアップを中和する方法が有効であ
る。また金などの金属の蒸着が可能な場合であっても蒸
着処理には手間と時間がかかり、特に膜厚を薄く制御し
て蒸着するのは困難が伴い、さらに検出効率や感度の低
下は避けられない問題となっている。
【0006】一方、チャージアップを中和するための電
荷を供給する方法も種々考えられており、電子分光装置
内の真空にわずかの希ガスを導入してそれから放出され
る電子を利用するもの(特開平3−26948号公報)
や、試料に近接する金属部分に励起線を照射してそこか
ら放出される電子を利用するもの(特開平3−1133
54号公報)などがある。
【0007】しかし、供給電子量や照射範囲などの中和
条件を制御しやすいという利点から、もっとも普及して
おり、かつ有効なのは、電子線を試料に照射する中和電
子銃による中和法である。
【0008】従来の中和電子銃による中和では、装置に
よって多少の違いはあるものの、照射する電子量、照射
する電子の運動エネルギー、および電子を照射する位置
(範囲)を制御することが可能なように構成されてお
り、測定者は測定したスペクトルあるい即時表示される
スペクトルを見ながら、チャージアップによるシフトや
変形がなくなるように、中和条件を調整して用いる。し
かしこれでは、複数の試料を自動で位置合わせして無人
測定を行うような場合、試料によってチャージアップの
度合いが異なっていても、それに合わせて中和条件を調
整することができない。また測定者がいても、励起線に
よる試料損傷などで測定中にチャージアップ状態が経時
変化したりあるいはスパッタリングを併用した深さ方向
分析において深さによってチャージアップ状態が異なる
場合には、測定毎に中和条件を調整することは困難であ
り、測定条件が制限される、測定時間が長くなるなどの
問題が生じる。しかも、中和電子銃により電子線を照射
してもこの方法で完全にチャージアップがなくなるわけ
ではなく、実際には電子収支の平衡したところで安定し
ているだけである。よってXPS等では表面のチャージ
アップによるシフトを表面上の基準になる物質のピーク
によって補正する必要があり、また、チャージアップの
分布むらがおこりうるため、ピーク幅の広がりが起こり
うる。また絶縁薄膜試料の場合、膜厚方向のチャージア
ップシフトの違いが起こる。
【0009】そこで、試料表面上又は表面内部に埋め込
まれた基準元素からの放出電子ピークを測定し、この信
号情報を帰還することにより、照射する電子量や電子の
運動エネルギー等を自動的に調整する方法が開示されて
いる(特開平9−243579号公報)。この方法は、
測定毎あるいに測定中のチャージアップ状態の変化に対
応して中和条件を設定し、比較的短時間で正確な表面分
析が可能となる。
【0010】しかし、この方法は適宜チャージと中和が
バランスする点を設定できることでは有効であるが、こ
の場合のバランスとはチャージと中和の全体的なバラン
スをとるだけで、あくまでも、平均的な最適値を設定で
きるだけである。測定毎あるいは測定中のチャージアッ
プ状態の変化に対応しなければならないということは、
ひとつの中和条件で緩和できるチャージ状態の範囲が狭
いことを示している。
【0011】また、アース電位の導電性メッシュを試料
表面にかぶせ、中和用の電子線と併用する方法も提案さ
れている(C.E.Bryson:Surf.Sc
i.,189/190.50(1987)、G.Bar
th,et al:Surf.Interface A
nal,11,307(1988))。この方法は、単
色化X線源を用いたときのチャージアップにより有効で
ある。すなわち、単色化X線源を用いたときのチャージ
アップ緩和が困難なのは、X線が試料表面に集光される
ことに主に起因する。中和用電子の照射領域がX線のそ
れより広がっているとX線の照射されていない領域が負
に帯電し、中心部のX線が照射されている領域に電子が
到達しにくくなる。そこで、試料表面に金属メッシュを
かぶせれば、このようなX線の照射されていない領域の
電場の影響を低減することができる。先述の真空中に希
ガスを導入し、それから放出される電子で電荷供給する
方法でも同様な効果が得られる。この方法はチャージし
ている部位の近傍に導電性物質を設置することで、過度
な電荷を逃がし、チャージアップを緩和して試料表面の
電位を安定させようとする方法であり、中和電子を照射
するだけの方法に比べると、チャージ緩和マージンが大
きく、常に安定した表面の電位を維持できる。反面、金
属メッシュからの信号が試料からのスペクトルに混入
し、分析精度を低下させてしまうという問題点がある。
金属メッシュを使用する際は、該メッシュを試料表面か
ら少し離すことで、そのような混入を低減することはで
きるが、分析精度が低下することには変わりない。
【0012】以上のように、従来の表面分析装置におい
て、試料表面帯電をなくする手段が必要とされている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、中和銃
によるチャージアップ緩和は、チャージアップと中和が
バランスする条件を見出すのに時間や手間を要したり、
また、測定精度や測定効率を低下させるなどの問題点が
あった。特に、面内および深さ方向の不均一チャージア
ップは、中和銃だけでは緩和しきれないことがあり、低
エネルギー側にすそをひくような場合があった。この現
象は、中和銃によるチャージ緩和が、全体としては平均
的にバランスしているが、バランスマージンが狭く、そ
の均衡から少しでもずれている成分に対しては、緩和し
きれないことを示している。つまり、電子線照射による
チャージ緩和は、緩和マージンが狭いことが最たる問題
点である。単色化X線源を用いた場合は、特にこの問題
点は生じやすくなる。
【0014】本発明は、上記のような従来技術の問題点
を鑑み不均一なチャージアップを緩和し、緩和マージン
の広いチャージ緩和機能を備えた、より高精度に効率的
な測定が実現できる電子分光装置を提供することを目的
とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、電離放射線を
プローブとして試料に照射し、試料から放出される電子
の量を運動エネルギー別に検出する電子分光装置におい
て、試料表面に設置する導電性マスクとこれにバイアス
を印加する手段とを具備したことを特徴とする電子分光
装置に関する。
【0016】また、本発明は、上記本発明の電子分光装
置を用いた測定方法であって、試料と導電性マスクの両
方に電子放射線を照射して、測定を行うことを特徴とす
る電子分光装置を用いた測定方法に関する。
【0017】
【作用】本発明は、チャージアップ箇所近傍に導電性マ
スクを配置することで、受動的なチャージアップ緩和マ
ージンを高め、加えて、該導電性マスクにも電離放射線
を照射することで、該導電性マスクからの光電子発生に
より積極的にチャージアップ緩和を行なうことで、全体
としてのチャージアップ緩和マージンを大きく向上さ
せ、試料と該導電性マスクとの信号は、該導電性マスク
ヘのバイアス印加で分離することを特徴とするものであ
る。
【0018】また、導電性マスクから放出される電子を
導電性マスクにバイアスを印加することによって分離
し、さらには、注目元素の光電子ピークのバックグラン
ド強度が増加しないように、導電性マスクに印加するバ
イアスを調整することで、試料からの信号と導電性マス
クからの信号を分離することにより、定量精度を損なう
ことなくチャージアップを緩和することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の代表的な導電性マスクと
それを具備した表面分析装置を図1に示した。図中、1
は絶縁物試料、2は開口を有する円形状の導電性マス
ク、3は直流電源、4はX線源、4’は照射X線、5は
中和電子銃、5’は照射中和電子線、6は導電性マスク
から放出される光電子、7は真空チャンバー、8はエネ
ルギー分析器、9は真空ポンプ、10は制御装置、11
はディスプレイ、12は導電性マスクに電圧を印加する
ための電源である。
【0020】まず、導電性マスク2の構成を以下に述べ
る。
【0021】導電性マスク2の形状は、ここでは円状で
あるが、任意の形態で良い。また、開口を有していなく
てもよく、分析領域に隣接して導電物を配置するだけで
よい(例えば図3のように分析個所15の両側に導電物
14を配置した場合など)。開口を有する場合は、開口
数やそのサイズも任意で良く、たとえば大面積の信号が
所望の時には、メッシュ状(図2)のものでもよいし、
あるいは、微小部の分析であれば図1のように単口のも
のでもよい。
【0022】導電性マスク2の大きさや厚みも任意で良
いが、厚みに関しては、特に開口を有する導電性マスク
の場合は、開口のサイズよりも極端に厚いと電離放射線
が試料に照射されなかったり、信号が取り出しにくくな
るので好ましくない。したがって、厚みよりも開口サイ
ズが十分におおきいものが望ましい。
【0023】導電性マスク2の材料は、導電性の材料で
あればよく、通常代表的な金属材料であれば何でもよ
い。例えば、Cu,Au,Pt,Mo,W,Taなどが
挙げられる。
【0024】光イオン化断面積や光電子ピークの運動エ
ネルギーなども緩和効果に影響する。光イオン化断面積
が大きい材料や運動エネルギーの大きい光電子ピークを
有する材料の方が、より大きなチャージアップ緩和効果
が得られる場合があるが(例えばPt,Auなど)、基
本的には上述したように導電性を有していればよい。I
TOやSnO2などの酸化物でも導電性があれば本発明
に適用できる。特に、光学的に透明な材料の場合、分析
個所を光学顕微鏡などで確認しやすというメリットがあ
る。また、絶縁物でマスクを形成し、これに導電性を付
与したものでも適用できる。例えばガラスでマスクを形
成し、その表面を通常の膜形成方法(スパッタ、CV
D、抵抗加熱、スピンコート、dippingなど)に
より導電膜を付与する。
【0025】電子分光装置、特にX線光電子分光のチャ
ージアップは通常、モノクロX線源を使用した場合の方
がチャージアップが顕著であるが、本発明の装置におい
ては、X線源はモノクロ、非モノクロ(特性X線)を問
わない。X線、紫外線光電子分光による光電子分光装置
には、チャージを緩和するための電子銃が備わっている
が、本発明に於いても該導電性マスクの効果を十分発揮
させるためにも中和銃の設置およびその使用が望まし
い。その他、オージェ電子分光においても分析面が正に
チャージアップする場合には本発明が適用できる。
【0026】該導電性マスクヘのバイアス印加は、試料
からの信号と該マスクからの信号が分離できればよく、
印加電圧の絶対値としては、注目しているピークの幅に
よる。通常、数十V以下の印加で分離できる。必要以上
のバイアス印加は、却ってスペクトルを歪めたり、収量
の低下を招く場合があるので、分離できる範囲でできる
だけ低いバイアスが望ましい。
【0027】印加するバイアスの極性としては、試料と
導電性マスクの信号が分離できればどちらでもよい。た
だし、注目しているピークのバックグラウンド(BG)
が、バイアス印加することで大幅に上昇してしまうよう
な場合には、それとは逆の極性にする方が望ましい。例
えば、図1において、試料表面にも導電性マスク表面に
も同じ元素が存在したとする。中和のための電子線を照
射した状態でX線を試料表面と導電性マスクの両方に照
射したとすると、両方からその元素の光電子が発生す
る。試料表面からの同元素のみを検出したい場合は、該
導電性マスクにプラス電位を印加すると、見かけ上該マ
スクからの信号は高結合エネルギー側にシフトし、試料
からの同元素ピークのバックグラウンドは低いままであ
る(図4)。もし、ここで、該マスクにマイナス電位を
印加すると、試料の同元素ピークに該マスクからの同元
素のピークのバックグランドが重畳し、スペクトル精度
が低下する。このような場合、導電性マスクに印加する
バイアスの極性としてはプラス電位が好適である。
【0028】
【実施例】さらに、本発明を実施例にてさらに詳述す
る。
【0029】(実施例1)Si上に3nmのSiO2
形成されている試料に、径3mmφ、厚み100μm、
開口サイズ約300μmφの単口のMoマスクを密着さ
せ、これにモノクロ化したAl−kα線(1486.6
eV,ビームサイズ約1000μm×750μm)を照
射し、中和のための電子線を照射しながら光電子スペク
トルを測定した。電子線照射条件は、0.5kV−0.
5mAである。
【0030】得られたSi−2pのスペクトルは、ピー
クは約103eVで、標準データによる本来の結合エネ
ルギーよりもやや低結合エネルギー側に観測された。ピ
ーク形状は連続的な変化を示し、次に示す比較例のよう
な低エネルギー側でのスペクトルの歪みもなく、チャー
ジアップが均一に緩和されていることが示唆された。
【0031】次に、該マスクに+10Vを印加し、試料
とマスクのC,O光電子ピークを分離した。Si−2p
と石英からのO−1s(低結合エネルギーの方)の面積
から、SiとOの組成比を求めたところ、Si:O≒
1:2が得られ、試料の信号と該マスクからの信号が分
離できたことが確認できた。
【0032】(比較例)上記と同様な試料に対し、上記
導電性マスク(Moマスク)を用いずに光電子スペクト
ルの測定を行なった。測定条件及び中和の条件は上記と
同様である。Si−2pのピークは、102.5eVと
やや低結号エネルギー側にシフトして観測された。この
時、同ピークの低結号エネルギー側には、僅かな肩が観
測された。この成分はおそらくチャージの不均一(面内
や深さ方向)が生じていることが原因と考えられるが、
サブオキサイドなどの状態分析の際には、判別の精度を
低下させる要因となる。この低結号エネルギー側の成分
は、電子線照射条件をさらに最適化することで低減させ
ることは可能であるが、そのためには手間や時間を要す
るなど非効率な面がある。
【0033】(実施例2)石英ガラスをX線光電子分光
で測定する際、電子線照射などの中和手段を用いないと
光電子のピークは試料表面のチャージアップのために運
動エネルギーが低下し、見かけ上高結合エネルギー側に
シフトして現れる。1cm角、厚み2mmの石英ガラス
をチャージアップ緩和手段を用いず、Mgの特性X線
(1253.6eV)を照射して測定したところ、石英
ガラスからのピークは約2eV高結合エネルギー側にシ
フトした。
【0034】ここに、Cuからなる多数の開口を有する
図2のようなメッシュをマスクとし、上記試料表面に密
着して設置して光電子スペクトルの測定を行なった。な
お、該マスクの径は5mmφ、厚みは100μm、メッ
シュの開口サイズは500μm×500μmで、およそ
30個の開口数を有し、バイアスが印加できるように電
源が接続されている。
【0035】該マスクを配した試料表面に、Mgの特性
X線(1253.6eV)を照射した。X線出力8kV
−30mA、照射面積は約4mmφである。さらに、中
和緩和のために電子銃による電子線照射も併用した。照
射条件は1.5kV−0.8mAである。得られた光電
子スペクトルには、Si,C,O,Cuからの光電子ピ
ーク、オージェ電子が観測された。Si−2pの結合エ
ネルギーは、約104eVを示し、ほぼチャージアップ
が緩和されていた。この状態で、電子線の照射量を0.
5〜1.0mAまで変化させてみたが、光電子の運動エ
ネルギーは大きく変化しなかった。これは、導電物が絶
縁物の近傍にあることで、分析領域内の電位が安定して
いることの現れであり、チャージアップの緩和マージン
が広くなっていることを示している。
【0036】ここで試料からの信号と該マスクからの信
号を分離するため、該マスクに+10Vを印加して光電
子スペクトルを測定した。Siのピークはほとんど変化
しなかったが、C,Oの光電子ピークは2本に分離し、
Cuのピークは10eV高結合エネルギー側(低運動エ
ネルギー側)にシフトした。Si−2pと石英からのO
−1s(低結合エネルギーの方)の面積から、SiとO
の組成比を求めたところ、Si:O≒1:2が得られ、
試料の信号と該マスクからの信号が分離できたことが確
認できた。また、−10Vのバイアスでも、C,Oの信
号は分離され、ほぼ同様な定量結果が得られた。
【0037】(実施例3)実施例2と同様な試料の上に
同様な多数開口メッシュを配置し、これにAl−kα線
をモノクロ化して試料に照射して、光電子スペクトルを
測定した。中和のための電子線の照射条件、メッシュへ
のバイアス印加は実施例1と同様である。
【0038】得られた光電子スペクトルには、Si,
C,O,Cuからの光電子ピーク、オージェ電子が観測
された。Si−2pの結合エネルギーは、約104eV
を示し、ほぼチャージアップが緩和されていた。
【0039】ここで試料からの信号と該マスクからの信
号を分離するため、該マスクに+10Vを印加して光電
子スペクトルを測定した。Siのピークにはほとんどシ
フトは見られなかったが、C,Oのピークは2本に分離
し、Cuのピークは10eV高結合エネルギー側(低運
動エネルギー側)にシフトした。Si−2pと石英から
のO−1s(低結合エネルギーの方)の面積から、Si
とOの組成比を求めたところ、Si:O≒1:2が得ら
れ、試料の信号と該マスクからの信号が分離できたこと
が確認できた。
【0040】(実施例4)試料にバルクの青板ガラス
(5mm×5mm×1mm)を用い、この表面にAlの
薄い板(厚み0.1mm)を間隔を0.5mm置いて配
置し、試料と該Al板の両方に単色化したX線(Al−
kα)を照射した(図3)。中和電子は、1keV−2
0mAである。該Al板に−25V印加して、試料とマ
スク(Al板)のO−1sおよびC−1sを分離した。
Si−2pは103.3eVピークをもち、ほぼチャー
ジアップが緩和されていることを示した。その様子を図
5,6,7に示した。
【0041】Si−2pと石英からのO−1s(高結合
エネルギーの方)の面積から、SiとOの組成比を求め
たところ、Si:O≒1:2が得られ、試料の信号と該
マスクからの信号が分離できたことが確認できた。
【0042】
【発明の効果】本発明は、チャージアップ個所近傍に導
電性マスクを配置することで、受動的なチャージアップ
緩和マージンを高め、加えて、該導電性マスクにも電離
放射線を照射することで、該導電性マスクからの光電子
発生により積極的にチャージアップ緩和を行なうこと
で、全体としてのチャージアップ緩和マージンを向上さ
せることができるため、安定した絶縁物の測定が実現さ
れる。
【0043】また、試料と該導電性マスクとの信号は、
該導電性マスクヘのバイアス印加で分離可能であり、し
かも、導電性マスクヘのバイアス印加は、注目元素の光
電子ピークのバックグラウンド強度が増加しないように
印加するため、所望の元素の情報を損なうことなくチャ
ージアップを緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子分光装置を示す図である。
【図2】本発明による導電性マスクのひとつの具体例を
示す図である。
【図3】本発明による導電性マスクの別の具体例を示す
図である。
【図4】導電性マスクにプラスの電圧を印加して、試料
と導電性マスクとのO−1sを分離した様子を示す図で
ある。
【図5】本発明による測定結果を示す図である。
【図6】本発明による測定結果を示す図である。
【図7】本発明による測定結果を示す図である。
【図8】従来手法によるX線電子分光スペクトルの例を
示す図である。
【符号の説明】
1 絶縁物試料 2 導電性マスク 3 直流電源 4 X線源 4’ 照射X線 5 中和電子銃 5’ 照射中和電子線 6 導電性マスクから放出される光電子 7 真空チャンバー 8 エネルギー分析器 9 真空ポンプ 10 制御装置 11 ディスプレイ 12 導電性マスクに電圧を印加するための電源 13 メッシュからなる導電性マスク 14 金属板 15 照射X線領域 16 絶縁物からのO−1s光電子ピーク 17 プラス電圧を印加されてシフトした導電性マスク
からのO−1s光電子ピーク

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電離放射線をプローブとして試料に照射
    し、試料から放出される電子の量を運動エネルギー別に
    検出する電子分光装置において、試料表面に設置する導
    電性マスクとこれにバイアスを印加する手段とを具備し
    たことを特徴とする電子分光装置。
  2. 【請求項2】 導電性マスクに印加するバイアスを調整
    する調整手段を具備したことを特徴とする請求項1に記
    載の電子分光装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の電子分光装置
    を用いた測定方法であって、試料と導電性マスクの両方
    に電子放射線を照射して、測定を行うことを特徴とする
    電子分光装置を用いた測定方法。
  4. 【請求項4】 試料と導電性マスクの両方に電子放射線
    を照射し、試料と導電性マスクから放出される電子を導
    電性マスクにバイアスを印加することによって分離する
    ことを特徴とする請求項3に記載の電子分光装置を用い
    た測定方法。
  5. 【請求項5】 注目元素の光電子ピークのバックグラン
    ド強度が増加しないように、導電性マスクに印加するバ
    イアスを調整することで、試料からの信号と導電性マス
    クからの信号を分離することを特徴とする請求項4に記
    載の電子分光装置を用いた測定方法。
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