JP3780620B2 - 電子分光器及びそれを備えた透過型電子顕微鏡 - Google Patents

電子分光器及びそれを備えた透過型電子顕微鏡 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透過型電子顕微鏡に係わり、特に従来に比べエネルギー分解能が高く、化学変化によるわずかなエネルギーロス量の変化も検知できる電子分光器を備えた透過型電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、試料上の異なる位置のエネルギースペクトル、例えば電子のエネルギーロス量を計測する場合は、位置毎に別々に測定し、それぞれの測定結果を比較して、成分比較等を行っていた。
【0003】
例えば、電子線を測定試料を透過するように照射し、透過した電子線像を観察する透過型電子顕微鏡では、透過した電子線のエネルギー損失量から透過してきた試料の成分同定を行う電子分光器を付属させてエネルギースペクトルを測定することができる。その場合、試料上の異なる位置の成分を比較する場合は、測定したい位置のみに電子線が当たるように電子線を細く絞り、透過してきた電子線のエネルギー損失量を測定することにより、成分の同定を行うことができる。
【0004】
しかし、このような方法では異なる位置を同時に測定できないので、例えば電子線の加速電圧のドリフト、電子顕微鏡外からの磁場,電場の変化,電子分光器の不安定性などにより、測定したエネルギーロス量が微妙に変動するという問題がある。この場合、金属表面がわずかに酸化しているというような、わずかなケミカルシフト量を比較するような測定は、困難であった。
【0005】
計測中の外乱(磁場や電場)や電子の加速電圧の変動の影響を避けるためには、一カ所での測定時間をできるだけ短くし、測定に要するトータルの時間を短くすることが必要である。しかし、一カ所での測定時間を短くすると、十分な強度が検出できないために測定誤差が大きくなると言う問題もある。
【0006】
このような問題を解決するため、透過型電子顕微鏡についての技術ではないが、AES(オージェ電子分光分析)では、電子ビームの走査により発生する2次電子を検出し、この2次電子の量の走査面上の分布を数値化し、さらに計算機を用いて分析開始時の分布と各分析時の分布とを比較し、電子ビーム走査時のドリフトを補正することにより、測定精度を向上する方法が特開平5−172765 号公報に開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平5−172765 号公報に開示されているような計算機を併用してドリフトを補正する方法では、装置構成が複雑になり、測定器のコスト上昇を招くことが問題となる。また、補正によるため、微小なエネルギーロスの変化が誤差とされる可能性もある。
【0008】
本発明の目的は、試料の異なる点のエネルギースペクトルを同時に測定できる電子分光器を備えた透過型電子顕微鏡を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の発明によれば、電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された試料像を検出する画像検出器とを、備えた透過型電子顕微鏡において、前記試料と前記画像検出器との間に、電子線の有するエネルギー量により、該電子線を分光する電子分光器を備え、かつ分光された該電子線の、該電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向での、分光された電子線の収束位置が異なっていることを特徴とする透過型電子顕微鏡が提供される。
【0010】
上記において、レンズとは光学的な凹凸面を有する透明ガラスからなるものを指すのではなく電子線を収束させる電場,磁場から構成される電磁レンズを指す。画像検出器としては、蛍光体が塗布された蛍光板,YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)などの単結晶蛍光体,固体撮像素子(CCD),光電素子等の電子,光子等の数の違いを検出できる素子であれば良い。
【0011】
電子分光器とは、電子の有する運動エネルギーの違いにより電子の走行軌跡を変化させ分光する装置である。磁場セクター型,ウイーンフィルター型等いろいろな形式がある。運動量の大きい電子ほど、磁場の影響(ローレンツ力による偏向作用)を受けにくく、従って軌跡が変化しにくいことを利用している。
【0012】
電子分光器で分光された電子線は、運動エネルギーの大きい電子と運動エネルギーの小さい電子をある方向を基準に振り分ける。この方向をエネルギー分散方向と称している。通常の透過型電子顕微鏡では、電子の収束位置、すなわち電子の焦点位置はすべて一平面内となっている。図3を用いて説明すると、図3(c)に示すように、従来の透過型電子顕微鏡ではx軸,y軸双方の焦点位置は同じ面(12,15)となっている。こうすることにより試料を透過してきた電子線により形成される試料像は、ゆがみのないものとなるからである。
【0013】
本発明では、これに対しx軸とy軸で焦点位置を異ならせることに特徴がある。図3(a)で示すようにx軸の焦点位置はスペクトル面12であり、y軸の焦点位置は15面となるようにする。このような構成では、試料を透過してきた試料像はx方向とy方向で像の倍率が異なるため、試料の幾何学的な形状を観察するには不向きである。しかし、試料のy軸方向でのエネルギースペクトルを分離して観察することができる。すなわち、試料の異なる位置のエネルギースペクトルを同時に観察することが可能になる。
【0014】
試料の異なる位置のエネルギースペクトルを同時に観察することにより、電子線加速電圧のドリフト,電場,磁場による外乱等による影響がなくなるので、試料の化学変化に起因する微妙なケミカルシフト分のエネルギースペクトル変動が観察可能になる。
【0015】
試料の幾何学的形態を観察するには、x軸とy軸の焦点位置を同じにすることが好ましい。また、x軸とy軸での焦点位置の違いを大きくすれば、試料のy軸方向でのエネルギースペクトルの分離の程度を大きくすることができる。このようにx軸とy軸での焦点位置の違いを、目的により自由に調整できるような機構を設けることが好ましい。
【0016】
第1の発明において、前記電子銃から放射された電子線を、前記電子分光器のエネルギー分散方向が短く、該エネルギー分散方向と直交する方向が、長い形状の電子線形状に収束させるレンズ群を有することを特徴とする透過型電子顕微鏡としても良い。
【0017】
第1の発明の構成のみでは、試料の全ての位置でのエネルギースペクトルをy軸位置の違いにより分離して表示することしかできない。図6(a)に示すようなx軸(試料水平方向)で組成に違いのないような層状構造の試料であれば、このような構成でも各層の組成の違いをエネルギースペクトルの差として、同時に測定できる。しかし、母相中に粒状の異相が存在するような試料の、母相と粒状の異相を同時に分析したい場合は、エネルギースペクトルを測定する領域を限定する必要が出てくる。この場合の測定領域の限定方法としては、電子線を絞って、試料の特定部分のみに当たるようにする方法がある。しかし、電子線を点状に絞っただけでは、その部分だけのエネルギースペクトルしか得られない。従って、本発明の第1の発明の構成と組み合わせる場合は、試料のy軸方向(垂直方向)に延びており、かつx軸方向(水平方向)には小さな電子線となるように、電子線の照射形状を制御すれば良い。上記を表現したのが、「電子線を、前記電子分光器のエネルギー分散方向が短く、該エネルギー分散方向と直交する方向が、長い形状の電子線形状に収束させる」ということである。上記構成により、比較分析したい部位のみを同時に分析することが可能になる。
【0018】
第1の発明において、前記電子分光器の入射像面に相当する位置に、視野スリットが設けられていることを特徴とする透過型電子顕微鏡としても良い。
【0019】
比較分析したい部位のみを同時に分析するための手法として、電子線を絞る方法の他に、視野選択スリットを用いる方法もある。これは、電子分光器の入射像面に相当する位置に、x軸方向に短く,y軸方向に長い開口形状を有するスリットを設けることにより、分析する部位を特定する方法である。この方法は、電子線を絞る方法に比べ構成が簡単であるという特徴がある。試料の分析位置は、観察される像を見ながらスリットの位置を変えることにより、調整が可能である。
上記視野スリットが、スリットの方向、及び幅を変化させ得る機構を備えることが好ましい。観察したい部位のみのエネルギースペクトルのみが得られるようにスリットの幅が変えられれば、目的外の部位のエネルギースペクトルのノイズが入ることはなくなる。
【0020】
上記においては、視野スリットのスリット長手方向が、前記電子分光器のエネルギー分散方向と、ほぼ直交していることが好ましいことは言うまでもない。
【0021】
第1の発明において、画像検出装置x,yの2軸からなる2次元配置された受光素子群からなり、かつ前記電子分光器のエネルギー分散方向と、前記受光素子群のx軸またはy軸のいずれかがほぼ一致していることが好ましい。
【0022】
受光素子群の受けた電子線の強度を定量化し、二次元のグラフとして表示させるような場合には、受光素子群のx軸またはy軸のいずれかとエネルギー分散方向が一致していた方が、表示プロセスが簡単になる。これが一致していないと、グラフ化する場合に何らかの数値計算をして、補正する必要が出てくるからである。
【0023】
また、本発明の第2の発明によれば、電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された画像を検出する画像検出器とを、備えた透過型電子顕微鏡装置において、前記試料と前記画像検出器との間に、電子線の有するエネルギー量により、該電子線を分光する電子分光器を備え、かつ該電子分光器と前記画像検出器の間に、分光された該電子線を、直交する2軸で収束位置を異ならせるレンズを備えることを特徴とする透過型電子顕微鏡が提供される。
【0024】
本発明の第1の発明を実現する具体的手段の一つがこれである。
【0025】
電子分光器は、通常のものを用い、電子分光器の後に電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向での、分光された電子線の収束位置が異なるように、例えば図4に示したような円筒レンズを設けることによって、第一の発明に示す構成が得られる。第2の発明のポイントは電子分光器の後に、電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向での、分光された電子線の収束位置が異なるような機構を設けることにある。従って、レンズという用語を用いてはいるが、この用語が持つ意味に限定されるわけではない。
【0026】
第2の発明において、レンズが多極子レンズであることが好ましい。多極子レンズとは、磁場または電場を発生させる極子が4個,6個,8個というように偶数個対向して置かれた電子線収束機構である。図8に4極子レンズの例を示す。多極子レンズは、各極子にかける磁場あるいは電場の大きさにより電子の収束のされかた、すなわち焦点位置を変えることができるので、電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向での、分光された電子線の収束位置が異なるようにして、エネルギースペクトルを分析し、その後試料像を観察するために、収束位置を同じにするということが瞬時に行える。
【0027】
また、本発明の第3の発明によれば、電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された画像を検出する画像検出器とを、備えた透過型電子顕微鏡装置において、前記試料と前記画像検出器との間に、電子線の有するエネルギー量により、該電子線を分光する電子分光器を備え、かつ該電子分光器が、該電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向で収束位置が異なるように設計されていることを特徴とする透過型電子顕微鏡が提供される。
【0028】
第1の発明を実現するための具体的な方法の例を示したのが第3の発明である。この場合は、第2の発明と異なり、電子分光器自体がエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向で収束位置が異なるように設計されていることに特徴がある。この構成の場合は、いままでの透過型電子顕微鏡の電子分光器のみを交換すれば本発明の第1の発明の効果が得られる。すなわち、最も簡便に本発明の効果が得られるという特徴がある。
【0029】
本発明の第4の発明によれば、電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された画像を検出する画像検出器とを、備えた透過型電子顕微鏡用の電子分光器において、前記電子分光器が該電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向で収束位置が異なるように設計されていることを特徴とする電子分光器が提供される。
【0030】
本発明の第5の発明によれば、電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された画像を検出する画像検出器と、前記試料と前記電子線を結像させるレンズ群との間に、電子線の有するエネルギー量により、該電子線を分光する電子分光器を備えた透過型電子顕微鏡用のエネルギースペクトル分析装置において、前記分析装置が、前記試料と前記画像検出器の間に、分光された該電子線を、直交する2軸で収束位置を異ならせるレンズを備えることを特徴とするエネルギースペクトル分析装置が提供される。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明において、電子分光器は試料から出射した電子を、その電子が持つエネルギーにより異なる位置に結像し、エネルギースペクトルを形成する。視野スリットは、観察している像をスリット状に選択する。この際、当該視野スリットはエネルギー分散方向と垂直になっていることから、エネルギースペクトル面上では、x軸がエネルギー軸,y軸がスリットで選択された像の軸からなる2次元のエネルギースペクトルが得られる。2次元の画像検出器によりその2次元のエネルギースペクトルが検出される。
【0032】
本発明では、異なる位置のエネルギースペクトルを一度に2次元の画像検出器で計測できることから、計測時間を大幅に短縮できる。かつ計測が短時間で終了することから、電子の加速電圧等のドリフトの影響や計測中の外乱の影響の少ない計測が可能となり、実効的にエネルギー分解能が向上する。
【0033】
(実施例1)
図1は本発明の全体図を示したものである。
【0034】
電子銃1より出射した電子線2は、収束レンズ系3により収束された後、試料4の観察したい領域に入射する。試料4を透過した電子線は、対物レンズ5および中間レンズ系6により拡大される。その結果、電子分光器10の物点7の位置に中間レンズ系のクロスオーバーが形成され、同電子分光器の入射像面8に電子顕微鏡像もしくは電子回折図形が形成される。ここで入射像面8の位置に挿入された視野スリット9により入射像面の任意の場所をスリット状に選択する。視野スリット9により選択された領域の長手方向をy軸とする。選択された領域は、電子分光器10によりx軸方向にエネルギーの差により異なる偏向作用を受ける。その結果スペクトル面12においては、x軸方向にエネルギースペクトル(透過した電子線のエネルギー量に対する電子線量のスペクトル)が形成される。その際y軸方向には入射像面8で視野スリット9によりy軸方向に短冊状に選択されたおのおのの位置が相当するため、2次元的なエネルギースペクトルとなっている。投影レンズ系13により、スペクトル面12の位置に形成された2次元のエネルギースペクトルは画像検出器14に投影され、前記2次元のエネルギースペクトルは2次元的に検出される。
【0035】
ここで、視野スリット9の位置や幅を変化させることにより、観察視野内の任意の場所や、幅のスペクトルを観察することができる。また、画像検出器14のxy軸を電子分光器のxy軸と一致させることにより、データ解析が容易になる。また、本発明において、電子分光器10は特にその方式には制限がなく、従来良く用いられている磁場セクター型をはじめとして、ウイーンフィルター型などを用いても良い。
【0036】
図2は、本発明による計測の手順を示した図である。まず観察する領域の電子顕微鏡像(a)より目的とする部分を視野選択スリット9を用いて選択する(b)。この時視野選択スリット9によって選択された領域を上から領域a,b,…,iとする。次に電子分光器10によって、位置x方向がエネルギー量に相当する2次元的なスペクトルを取得する(c)。この時、領域a,b,…,iのスペクトルは図で示した様に異なる位置に形成される。さらに、取得した2次元的なスペクトルを図に示すように短冊状の領域毎に強度を検出することにより、領域a,b,…,iのスペクトルを分離して計測できる。
【0037】
本発明により、異なる位置からのエネルギースペクトルを、同時に2次元的なエネルギースペクトルとして計測することができる。これにより次の利点がある。
【0038】
まず、異なる位置の多点計測が同時に済むことから、計測時間が大きく短縮される。例えば、100点の計測点のスペクトルを取得する場合、微細に収束した電子線の場合には、一点の計測に数十秒以上必要な場合も多く、100点以上の計測は計測時間が長くなってしまい困難であった。一方本発明では計測点は画像検出器の画素サイズで決まることから、計測点を増やすことに関する問題点は少ない。加えて、電子線を1ナノメートルオーダーの極微小径に収束する場合には、入射する電子量は輝度の高い電界放出型電子銃を用いても1nA程度であるが、本発明の場合には電子線を微細に収束する必要がないため、入射電流量をその数倍以上にすることができる。
【0039】
また、従来は異なる時間に計測したエネルギースペクトル同志を比較する際には、エネルギーのドリフトや外乱磁場(電場),電子分光器の不安定性などにより発生したエネルギースペクトルのエネルギーのズレが問題になっていた。本発明によりそれらの影響がなくなることから、異なる位置のエネルギースペクトルの微細構造の変化や僅かなエネルギーシフトを詳細に議論することが可能となり、実効的なエネルギー分解能が向上する。
【0040】
図3に(a)本発明の概念を詳細に説明する図および計測される情報(b)と従来方式の概念図(c)および計測される情報(d)を示した。図3(a)では視野スリットを色消し像面に入れている。スリットにより選択された領域のスペクトルが、xフォーカスに形成される。ここにおいてy収束面が異なっていることから、x収束面すなわちスペクトル面上でのy方向は、y位置の情報を持っている。したがって、図3(b)に示すようにスペクトル面上では、y方向は位置で、x方向にはエネルギースペクトルとなる、2次元スペクトルが得られる。
【0041】
図2(c)は従来法を示したものである。従来は色消し像面もしくは入射像面に視野スリットを入射することは無かったことから、観察領域全体のエネルギースペクトルが一つのスペクトルとして計測されていた。また、従来法の構成に視野スリットのみを加えても、スペクトル面上ではy方向も収束されていることから、y方向に位置の情報は伝達されることが無いため、図3(b)で示したような2次元的なエネルギースペクトルは得られない。
【0042】
図4は他の実施例を示したものである。ここでは従来法(例えば図3(c))と同じ特性を持つ、電子分光器を用いている。したがって、そのままではx収束面とy収束面との位置が一致しているため、目的とする2次元エネルギースペクトルは得られない。しかし、従来法に加え、色消し像面11に円筒型レンズ16を組み合わせている。円筒型レンズはx方向とy方向に異なる収束作用を起こすことから、x方向とy方向の焦点距離が異なることになり、実効的に図3(a)記載の電子顕微鏡のように、x収束面とy収束面がことなる位置に形成される。その結果、画像検出器では2次元のエネルギースペクトルを計測できる。ここにおいて、円筒レンズの位置を色消し像面にすることによりエネルギーフィルター像の像の歪を大きく変えることなく、xフォーカスおよびyフォーカスの位置を調整することができる。
【0043】
図5は他の実施例を示したものである。図1記載の構成に、新たに偏向手段および当該偏向手段と前記画像検出器を制御する制御装置とが付加されている。偏向手段は電子分光器の物点の位置を変化させないようにしながら、入射像面の位置をシフトするように動作する。その動作と画像検出器による2次元スペクトルとを同期させて検出するように、前記制御装置により制御する。その結果、2次元スペクトルを観察領域内すべてで得ることができる。
【0044】
(実施例2)
シリコン単結晶基板上に、二酸化珪素膜(SiO2),窒化珪素膜(Si34),酸窒化珪素膜(SiOxy)をスパッタリング法により積層した試料の断面を透過型電子顕微鏡で観察した。
【0045】
図6(a)はTEM像を示している。試料の材質の違いによりTEM像の濃淡が異なるため、各層が認識できる。また図には視野制限スリットにより選択した領域をも示している。この場合は、試料の深さ方向を同時に分析しようとしている。
【0046】
図6(b)は、このように選択された視野の2次元のエネルギースペクトルを示す。横軸は電子の持つエネルギー(エネルギーロス量)を示し、縦軸は試料の深さ方向の分布を示す。なお、縦軸の分布の幅は、電子分光器あるいは円筒型レンズを調整することにより任意の幅に調整が可能である。
【0047】
2次元のエネルギースペクトルで明るい部分は電子が多く観察されているところである。2次元のエネルギースペクトルを詳細に観察すると、位置が変わるにつれて2次元のスペクトルのバンド状に光っている位置がわずかに左右に変化していることがわかる。この変化が化学結合状態の変化を意味するケミカルシフトである。
【0048】
図7は図6の試料の2次元スペクトルから電子の強度をグラフ化したスペクトルを示している。図7(a)に示す各層に対応するエネルギースペクトルを図7 (b)に示している。このようにグラフ化するために、CCDにより明るさの違いを定量化し、それをコンピュータ処理したものである。このようにすると2次元のスペクトルで見られたケミカルシフトの量を正確に評価できる。一般に観察の対象になるケミカルシフトは数電子ボルト(eV)しかなく、入射電子の加速電圧(200kV)の1/100,000と極わずかである。そのため従来手法では、ケミカルシフト量の絶対値を計測することは困難であったのに対し、本発明によればその値を極めて正確に(例えば0.1Vの単位まで)計測することができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の第1の発明によれば、試料の異なる位置のエネルギースペクトルを同時に観察することにより、電子線加速電圧のドリフト,電場,磁場による外乱等による影響がなくなるので、試料の化学変化に起因する微妙なケミカルシフト分のエネルギースペクトル変動が観察可能になる。
【0050】
また、本発明の第2の発明によれば、電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向での、分光された電子線の収束位置を比較的自由に変化させることができるので、エネルギースペクトルを分析し、その後試料像を観察するために、収束位置を同じにするということが瞬時に行える。
【0051】
本発明の第3の発明によれば、いままでの透過型電子顕微鏡の電子分光器のみを交換すれば本発明の第1の発明の効果が得られる。すなわち、最も簡便に本発明の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の全体図。
【図2】本発明による計測の手順を示した図。
【図3】本発明の詳細な説明と従来例との比較を示した図。
【図4】本発明の他の実施例。
【図5】本発明の他の実施例。
【図6】本発明で得られるエネルギースペクトルの2次元表示。
【図7】本発明で得られるエネルギースペクトルのグラフ表示。
【図8】多極子レンズの一例である4極子レンズの構成。
【符号の説明】
1…電子銃、2…電子線、3…収束レンズ系、4…試料、5…対物レンズ、6…中間レンズ系、7…電子分光器の物点、8…電子分光器に対する入射像面、9…視野スリット、10…電子分光器、11…色消し像面、12…スペクトル面、13…投影レンズ系、14…画像検出器、15…電子分光器のy方向の収束面、16…円筒レンズ、17,18…偏向手段、19…偏向手段および画像検出器の制御装置。

Claims (11)

  1. 電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された画像を検出する画像検出器とを、備えた透過型電子顕微鏡装置において、
    前記試料と前記画像検出器との間に、電子線の有するエネルギー量により、該電子線を分光する電子分光器を備え、
    かつ分光された該電子線の、該電子分光器のエネルギー分散方向と、
    該エネルギー分散方向と直交する方向での、分光された電子線の収束位置が異なっており、
    該エネルギー分散方向の電子線が収束し、該エネルギー分散方向と直交する方向の電子線が収束しないスペクトルを投影レンズを通し検出する位置に、試料の位置情報とエネルギースペクトルとの二次元スペクトルを検出する前記画像検出器が設置されていることを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  2. 請求項1記載の透過型電子顕微鏡において、
    前記電子銃から放射された電子線を、前記電子分光器のエネルギー分散方向が短く、該エネルギー分散方向と直交する方向が、長い形状の電子線形状に収束させるレンズ群を有することを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  3. 請求項1記載の透過型電子顕微鏡において、
    前記電子分光器の入射像面に相当する位置に、視野スリットが設けられていることを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  4. 請求項3記載の視野スリットが、
    スリットの方向、及び幅を変化させ得る機構を備えることを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  5. 請求項3記載の視野スリットのスリット長手方向が、前記電子分光器のエネルギー分散方向と、ほぼ直交していることを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  6. 請求項1記載の画像検出装置がx,yの2軸からなる2次元配置された受光素子群からなり、かつ前記電子分光器のエネルギー分散方向と、前記受光素子群のx軸またはy軸のいずれかがほぼ一致していることを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  7. 電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された試料像を検出する画像検出器とを、備えた透過型電子顕微鏡装置において、
    前記試料と前記画像検出器との間に、電子線の有するエネルギー量により、該電子線を分光する電子分光器を備え、
    かつ前記試料と前記画像検出器の間に、分光された該電子線を、直交する2軸で収束位置を異ならせるレンズを備えており、
    前記試料の位置情報とエネルギースペクトルとの二次元スペクトルを検出する該画像検出器はエネルギー分散方向の電子線が収束し、該電子線に直交する電子線が収束しないスペクトルを投影レンズを通し検出する位置に設置されていることを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  8. 請求項7記載のレンズが多極子レンズであることを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  9. 電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された画像を検出する画像検出器とを、備えた透過型電子顕微鏡装置において、
    前記試料と前記画像検出器との間に、電子線の有するエネルギー量により、該電子線を分光する電子分光器を備え、
    かつ該電子分光器が、該電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向で収束位置が異なるように設計されており、
    該エネルギー分散方向の電子線が収束し、該エネルギー分散方向と直交する方向の電子線が収束しないスペクトルを投影レンズを通し検出する位置に、前記試料の位置情報とエネルギースペクトルの二次元スペクトルを検出する前記画像検出器を備えることを特徴とする透過型電子顕微鏡。
  10. 電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された画像を検出する画像検出器とを、備えた透過型電子顕微鏡用の電子分光器において、
    前記電子分光器が該電子分光器のエネルギー分散方向と、該エネルギー分散方向と直交する方向で収束位置が異なるように設計されており、
    該エネルギー分散方向の電子線が収束し、該エネルギー分散方向と直交する方向の電子線が収束しないスペクトルを投影レンズを通し検出する位置に、前記試料の位置情報とエネルギースペクトルの二次元スペクトルを検出する前記画像検出器を備えていることを特徴とする電子分光器。
  11. 電子銃と、電子銃から放射された電子線を収束させるレンズ群と、試料を透過した該電子線を結像させるレンズ群と、結像された画像を検出する画像検出器と、前記試料と前記画像検出器との間に、電子線の有するエネルギー量により、該電子線を分光する電子分光器を備えた透過型電子顕微鏡用のエネルギースペクトル分析装置において、
    前記分析装置が、前記電子分光器と前記画像検出器の間に、分光された該電子線を、直交する2軸で収束位置を異ならせるレンズを備え、
    収束位置の異なる2軸の方向の電子線のうち、エネルギー分散方向の電子線が収束し、該エネルギー分散方向と直交する方向の電子線が収束しないスペクトルを投影レンズを通し検出する位置に、前記試料の位置情報とエネルギースペクトルの二次元スペクトルを検出する前記画像検出器を備えることを特徴とするエネルギースペクトル分析装置。
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