JP2001335309A - クラスレート化合物半導体およびその製造方法 - Google Patents

クラスレート化合物半導体およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温・高圧下でも安定して作動し、広禁制帯
幅を有するクラスレート化合物半導体及びそれを容易に
製造することができる方法を提供する。 【解決手段】 周期律表第4B族原子をクラスレート格
子とし、該クラスレート格子内にクラスレート格子原子
よりも電気陰性度の小さな特定の原子を内包し、クラス
レート格子原子の一部をクラスレート格子原子よりも価
電子数の多いか又は少ない特定の原子で置換して、p型
又はn型の半導体とする。ドーピング元素及び置換元素
を含む周期律表第4B族の化合物を不活性雰囲気中で溶
融または微粉砕して、500℃以上の温度で10時間以
上保持した後冷却し、次いで、洗浄処理を施して余剰の
原料を除去した後、ホットプレス成形する。また、4B
族の化合物として、インターカラント黒鉛層間化合物を
使用することもできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クラスレート化合
物半導体に係わり、特に広い禁制帯幅(バンドギャッ
プ)を有し、青色レーザダイオードとして有用な、高温
・高圧下でも安定して作動するクラスレート化合物半導
体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、エレクトロニクスを始めとするハ
イテク分野においては、従来の物質とは大きく異なる物
性を有する新たな高機能素材の開発が望まれている。例
えば、半導体分野では光通信技術を担っているレーザ素
子はシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)あるいは
ガリウム砒素(GaAs)などのIIIーV族化合物半
導体が利用されている。これらの化合物半導体は安定作
動する温度領域が低く、いかにして放熱性を確保するか
が大きな課題となっており、より高温度でも安定して作
動する半導体の開発が望まれている。また、光ディス
ク、デジタルビデオディスク(DVD)等の高密度記録
に必要な短波長のレーザ発光素子としては、禁制帯幅の
広い半導体が使用される。これらの広禁制帯幅(ワイド
ギャップ)半導体としては、ZnS、ZnSe、Ga
N、SiCあるいはダイヤモンド等が知られている。
【0003】半導体レーザ素子の発光波長は、半導体材
料に固有の禁制帯幅で決まり、発光波長と禁制帯幅とは
発光波長をλ(nm)、禁制帯幅をEg(eV)とする
と次 の(1)式の関係にある。 λ(nm)=1240/Eg(eV)・・・・・(1) 可視光領域は波長380〜760nmであり、これに相
当する禁制帯幅は1.63〜3.26eVである。従
来、波長が550nm以上の緑色から赤色の発光素子に
はGaPやGaAsあるいはGaAlAsといった禁制
帯幅が2以下のIIIーV族化合物半導体が使用されて
いる。ところが、波長が500nm以下の青色系発光素
子とするには、(1)式の関係から禁制帯幅が2.5e
V以上の広禁制帯幅(ワイドギャップ)半導体が必要で
ある。これらのワイドギャップ半導体としては、IIー
VI族化合物半導体であるZnS(禁制帯幅:3.39
eV)、ZnSe(禁制帯幅:3.39eV)、III
ーV族化合物半導体であるGaN(禁制帯幅:3.39
eV)またはSiC(禁制帯幅:3.39eV)等が知
られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの半導体は安定
作動する温度領域が低く、使用環境が常温に近い温度環
境に限られていた。従来、半導体デバイスが安定した作
動をするには発熱を抑えるために、大がかりな放熱装置
を必要としていた。例えば通常よく使用されているシリ
コンデバイスは、一般に安定作動温度領域は125℃以
下とされ、シリコンデバイスを使用する電子機器には大
型のヒートシンクが必要であった。シリコンデバイスの
安定作動温度領域は、ヒートシンクを使用してもせいぜ
い200℃以下であるり、自動車部品、高温ガスセンサ
ー、宇宙ロケットのエンジン制御部、地下探索用測定機
器、原子力等の分野では、使用に耐える半導体デバイス
が無いのが実状である。化合物半導体においても事情は
同じである。
【0005】また、半導体として使用するには、ドーピ
ング原子を導入して導電型をp型又はn型にする必要が
ある。しかしながら、GaN、SiCにp型又はn型の
ドーピング原子を導入するには、新たに人工的な超格子
構造化が必要となり、結晶成長工程が難しいという欠点
がある。また、ZnSも安価に結晶が入手できない欠点
がある。さらにダイヤモンドに至ってはドーピング原子
の制御は困難である。このため、高温・高圧環境下で安
定して作動する広禁制帯幅を有する半導体は得られてい
ないのが実状である。本発明は、上述の事情に鑑みてな
されたもので、高温・高圧下でも安定して作動し、広禁
制帯幅を有する優れた半導体を提供することを目的の1
つとする。この広禁制帯幅を有する半導体は青色発光素
子等の用途に極めて有用である。また本発明は、上述の
ような高音・高圧特性に優れた半導体を容易に製造する
ことができる方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような背景から、最
近クラスターを結晶の構成単位とするクラスレート化合
物が注目されている。クラスレート化合物は物質を構成
する元素間の結合様式が従来の結合様式とは大きく異な
るため、クラスレート構造の完全性により結晶欠陥の数
を大幅に軽減できるので、物質の持つ基本特性を大きく
向上させることができると考えられ、半導体または超伝
体等の新たな材料とすることが期待されている。
【0007】本発明のクラスレート化合物の一つは、
C、Si、GeまたはSn等の周期律表4B族元素の少
なくとも1種の原子を主体としてなるクラスレート格子
と、該クラスレート格子の格子間隙に内包され該クラス
レート格子の構成原子よりも電気陰性度が小さい周期律
表1A族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族、
4A族、5A族、6A族もしくは8族の原子のうちの少
なくとも1種のドーピング原子と、前記クラスレート格
子を構成する原子の少なくとも一部と置換されたクラス
レート格子原子よりも価電子数の少ない周期律表1A
族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族の原子の
うちの少なくとも1種の置換原子とを主体としてなるp
型のクラスレート化合物半導体である。
【0008】他の一つはC、Si、GeまたはSn等の
周期律表4B族元素の少なくとも1種の原子を主体とし
てなるクラスレート格子と、該クラスレート格子の格子
間隙に内包され該クラスレート格子の構成原子よりも電
気陰性度が小さい周期律表1A族、2A族、3A族、1
B族、2B族、3B族、4A族、5A族、6A族もしく
は8族の原子のうちの少なくとも1種のドーピング原子
と、前記クラスレート格子を構成する原子の少なくとも
一部と置換されたクラスレート格子原子よりも価電子数
の多い周期律表5A族、6A族、7A族、5B族、6B
族、7B族、8族の原子のうちの少なくとも1種の置換
原子とを主体としてなるn型のクラスレート化合物半導
体である。
【0009】4B族元素のクラスレート格子は、基本的
には半導体的または絶縁体的な性質を有し高ゼーベック
係数を有するが、電気伝導性は低く、熱伝導率は高い。
このクラスレート格子に周期律表1A〜3B族、4A〜
6A族もしくは8族のクラスレート格子原子よりも電気
陰性度の小さな原子を侵入させ、クラスレート格子を構
成している原子に電荷を移動させることで、クラスレー
ト格子間の結合を強くし、クラスレート格子の振動を抑
制して熱伝導性を下げるとともに、金属的な性質を付与
して電気伝導性を向上させる。更に、クラスレート格子
に侵入させた原子による金属的な性質の付与を調整する
ためにクラスレート格子の一部を、価電子数が格子原子
よりも多いか又は少ない周期律表の1A〜3B族、5A
〜7B族もしくは8族の元素で置換することで金属的な
性質を半金属的性質、即ち、半導体的な性質に近づけ、
特に広禁制帯幅を有する優れたp型あるいはn型の半導
体を可能にしたものである。
【0010】本発明のクラスレート化合物半導体は、前
記クラスレート格子が炭素(C)又は珪素(Si)のク
ラスレート格子であるものが好ましい。特に、炭素(カ
ーボン)クラスレート格子を使用した場合は、広い禁制
帯幅が得られる利点がある。前記クラスレート格子がC
の場合には、C原子の12面体からなるC20クラスタ
と、C原子の14面体からなるC24クラスタの混合格子
であるカーボンクラスレート46(C46)であるものを
使用することができる。あるいはまた前記クラスレート
格子が、C原子の12面体からなるC20クラスタと、C
原子の16面体からなるC28クラスタの混合格子である
カーボンクラスレート34(C34)であるものを使用す
ることができる。
【0011】前記クラスレート格子がSiの場合には、
Si原子の12面体からなるSi20クラスタと、Si原
子の14面体からなるSi24クラスタの混合格子である
シリコンクラスレート46(Si46)であるものを使用
することができる。あるいはまた前記クラスレート格子
が、Si原子の12面体からなるSi20クラスタと、S
i原子の16面体からなるSi28クラスタの混合格子で
あるシリコンクラスレート34(Si34)であるものを
使用することができる。
【0012】本発明のクラスレート化合物半導体におい
て、前記クラスレート格子に内包されるドーピング原子
としては、クラスレート格子を構成している原子よりも
電気陰性度が小さい、周期律表の1A族、2A族、3A
族、1B族、2B族、3B族、4A族、5A族、6A族
もしくは8族の原子が利用できる。ドーピング原子の電
気陰性度がクラスレート格子を構成している原子の電気
陰性度よりも大きいと、電荷がクラスレート格子を構成
している原子内包される原子に集まることになり、電荷
が内包原子からクラスレート格子に移動しないため、ク
ラスレート格子間の結合は強くならない。ここで、原子
の電気陰性度とは、結合している原子が電子を引きつけ
る能力を表す。結合する2原子の電気陰性度の差が大き
いほど、電子は一方の原子に引きつけられ、その結合の
イオン性は大きい。また、電気陰性度はその原子の持つ
電子の供与性及び受容性を示す尺度となる。電気陰性度
の値の小さいものほど供与性が大きく、逆に大きいもの
ほど受容性が強い。各原子の電気陰性度は、Paulingに
よって図1のように示されている。
【0013】図1に示すようにクラスレート格子を構成
する周期律表第4B族原子の電気陰性度は、炭素(C)
が2.5、珪素(Si),ゲルマニウム(Ge),錫
(Sn),鉛(Pb)が1.8である。また、図1では
電気陰性度の大きさを円の大きさで表している。従っ
て、クラスレート格子に内包される原子は、4B族原子
よりも小さな円で示される原子ということのなる。4B
族原子よりも電気陰性度の小さな原子としては、おおむ
ね周期律表1A族、2A族、3A族、1B族、2B族、
3B族、4A族、5A族、6A族もしくは8族から選ば
れた遷移金属元素の原子が該当する。図1に示すよう
に、炭素(C)の電気陰性度は2.5と大きく、1A〜
3B族、4A〜6A族もしくは8族のほとんどの原子の
電気陰性度は2.5より小さく、ドーピング原子として
利用可能である。これに対して、Si、Ge、Snの電
気陰性度はいずれも1.8であり、1B〜3B族、7A
族及び8族原子の中には、電気陰性度が1.9以上でド
ーピング原子となり得ないものがある。
【0014】例えば、クラスレート格子を構成する原子
が炭素(電気陰性度=2.5)の場合、電気陰性度が
2.5よりも大きい窒素(N;電気陰性度=3.0)、
酸素(O;電気陰性度=3.5)、フッ素(F;電気陰
性度=4.0)、塩素(Cl;電気陰性度=3.0)は
ドーピング原子にはなり得ない。
【0015】クラスレートが形成されるのは、原子の電
気陰性度によって決まる。例えば、n個の原子からなる
クラスターのクラスレート格子原子、ドーピング原子、
置換原子の関係が、以下のような条件によってクラスレ
ートが形成されるか否かが決まる。 a) クラスレート格子原子のみの場合 ドーピング原子の電気陰性度 : Pd クラスレート格子原子の電気陰性度: PC とした場合、Pd <PC ならクラスレートが成立す
る。Pd ≧PC ならクラスレートは成立しない。 b) クラスレート格子原子が作るクラスターがn個か
らなり、置換原子が混在する場合 ドーピング原子の電気陰性度 : Pd クラスレート格子原子の電気陰性度 : PiC クラスレート格子置換原子の電気陰性度: PjS とした場合、
【0016】
【数1】
【0017】ならクラスレートが成立する。
【0018】
【数2】
【0019】ならクラスレートは成立しない。
【0020】本発明のクラスレート化合物半導体におい
て、前記クラスレート格子を構成する原子と置換される
置換原子としては、p型半導体の場合にはクラスレート
格子を構成している原子よりも価電子数の少ない原子を
利用する。また、n型半導体の場合にはクラスレート格
子を構成している原子よりも価電子数の多い原子を利用
する。ここで原子の価電子数とは、原子構造の電子配置
において最外殻の電子を指し、原子の化学的性質を決定
するものである。クラスレート化合物半導体において
は、クラスレート格子を構成する原子の価電子数は4で
あるから、p型半導体の場合には価電子数が4よりも少
ない原子を使用する。これらの原子には周期律表1A
族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族の原子が
該当する。また、n型半導体の場合には価電子数が4よ
りも多い原子を使用する。これらの原子には周期律表5
A族、6A族、7A族、5B族、6B族、7B族、8族
の原子が該当する。
【0021】例えば、4B族の原子であるクラスレート
格子の空いたサイトに、ドーピング原子として価電子の
数が1〜3個である1A族、2A族、3A族、1B族、
2B族、3B族のいずれかの原子を侵入させると、その
中にある1〜3個の価電子はクラスレートを構成する4
B族原子へ移る。そのため、クラスレート格子は全体と
して金属的になる。ここでクラスレート格子を構成して
いる原子の少なくとも一部を1A族、2A族、3A族、
1B族、2B族、3B族のいずれかの原子で置換すると
金属的な性質から半導体的な性質に変換することがで
き、ゼーベック係数は高くなる。また、クラスレート格
子を構成する4B族原子は基本的には半導体であるため
に、4B族原子だけでは電気伝導度は上がらない。そこ
で金属的な性質を有する1A族、2A族、3A族、1B
族、2B族、3B族のいずれかの原子をクラスレート基
本構成単位の空いたサイトに導入することで電気伝導度
を上昇させることができる。これらの結果として本発明
のクラスレート化合物半導体は禁制帯幅が広く、従来の
半導体には見られない低い熱伝導率と高いゼーベック係
数と高い電気伝導度を兼ね備えた特性を有し、クラスレ
ート化合物特有の性質である高温・高圧環境下でも安定
した作動特性を示す、従来の半導体よりも優れた半導体
となる。
【0022】本発明による半導体のクラスレート化合物
の禁制帯幅は、例えばカーボンクラスレート34では
5.00eV、カーボンクラスレート46では5.16
eV、シリコンクラスレート34では1.92eV、シ
リコンクラスレート46では1.5Vのものが得られ
る。これらの広禁制帯幅クラスレート化合物半導体を利
用すれば、波長400nmの紫色のレーザ発光素子の実
現も可能となる。
【0023】一般に、半導体デバイスが高温下で作動し
なくなる理由は、デバイスの温度上昇に伴い漏れ電流が
増加するようになるからである。漏れ電流が増加すると
素子の接合界面が劣化する。例えば、p−n接合の場合
は接合間の漏れ電流の増加により、耐電圧が劣化するこ
とが挙げられる。漏れ電流密度は以下の(4)式で与え
られる。
【0024】
【数3】
【0025】ここで、JGO≒2qni(T0 )VB/EG
τe、EGは禁制帯幅、qは電子の電荷、niは真性キ
ャリア密度、kはボルツマン定数、τeは電子の緩和時
間、Tは絶対温度である。(4)式をもとに、p−n接
合の逆方向の漏れ電流密度を各半導体材料について概算
すると図2に示すような関係になる。漏れ電流は温度の
上昇に伴って増加する。例えば本発明のNa8
(C30、B16) クラスレート化合物半導体や、Si
C,GaN等の広禁制帯幅半導体あるいはダイヤモンド
などは、通常使用されている半導体であるSiやGaA
sにくらべて高温における漏れ電流密度が十分に小さい
ことが判る。このように本発明のクラスレート化合物半
導体は、禁制帯幅が大きいため高温になっても漏れ電流
が小さく、安定した作動が達成される。
【0026】前述のとおり、半導体の発光波長が半導体
材料に固有の禁制帯幅によって決まる発光遷移過程の場
合が直接遷移型である。直接遷移型では、伝導帯に励起
された電子が、フォノン(格子振動)の放出・吸収に関
与すること無しに価電子帯に遷移(バンド間遷移)する
ので、極めて高い発光効率が得られる。一方、電子がフ
ォノン(格子振動)の放出・吸収過程を伴って価電子帯
に遷移する間接遷移型の場合は、一旦励起された電子を
結晶中に内包されたドーパント原子で束縛し、その後価
電子帯に遷移する過程で発光させる方式を取る。この結
果、半導体材料に固有の禁制帯幅に基づく波長以外の発
光波長を得ることができるようになる。
【0027】本発明のクラスレート化合物半導体の製造
方法の一つは、p型半導体の場合には、周期律表4B族
元素の化合物であって、該4B族元素の原子よりも電気
陰性度の小さな周期律表1A族、2A族、3A族、1B
族、2B族、3B族、4A族、5A族、6A族もしくは
8族の元素のうちの少なくとも1種の元素及び該4B族
元素の原子よりも価電子数の少ない周期律表1A族、2
A族、3A族、1B族、2B族、3B族の元素のうちの
少なくとも1種の元素を含む周期律表4B族元素の化合
物を、不活性雰囲気中で溶融し、凝固させた後徐冷して
500℃以上の温度で10時間以上保持した後冷却し、
次いで粉砕した後洗浄処理を施して余剰の元素を除去し
た後、ホットプレス成形するクラスレート化合物半導体
の製造方法とした。また、n型半導体の場合には、周期
律表4B族元素の化合物であって、該4B族元素の原子
よりも電気陰性度の小さな周期律表1A族、2A族、3
A族、1B族、2B族、3B族、4A族、5A族、6A
族もしくは8族の元素のうちの少なくとも1種の元素及
び該4B族元素の原子よりも価電子数の多い周期律表5
A族、6A族、7A族、5B族、6B族、7B族もしく
は8族のうちの少なくとも1種の元素の化合物もしくは
単体を、不活性雰囲気中で溶融し、凝固させた後徐冷し
て500℃以上の温度で10時間以上保持した後冷却
し、次いで粉砕した後洗浄処理を施して余剰の元素を除
去した後、ホットプレス成形するクラスレート化合物半
導体の製造方法とした。高温で溶融することにより、ド
ーピング原子または置換原子を確実にクラスレート格子
の中に取り込むことができる。
【0028】本発明のクラスレート化合物半導体の他の
一つの製造方法は、p型半導体の場合には、周期律表4
B族元素の化合物であって、該4B族元素の原子よりも
電気陰性度の小さな周期律表1A族、2A族、3A族、
1B族、2B族、3B族、4A族、5A族、6A族もし
くは8族の元素のうちの少なくとも1種の元素及び該4
B族元素の原子よりも価電子数の少ない周期律表1A
族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族の元素の
うちの少なくとも1種の元素を含む周期律表4B族元素
の化合物を、不活性雰囲気中で100μm以下に粉砕
し、耐熱性容器中に薄膜状に広げて静置して、500℃
以上の温度で10時間以上保持した後冷却し、次いで、
洗浄処理を施して余剰の元素を除去した後、ホットプレ
ス成形するクラスレート化合物半導体の製造方法とし
た。また、n型半導体の場合には、周期律表4B族元素
の化合物であって、該4B族元素の原子よりも電気陰性
度の小さな周期律表1A族、2A族、3A族、1B族、
2B族、3B族、4A族、5A族、6A族もしくは8族
の元素のうちの少なくとも1種の元素及び該4B族元素
の原子よりも価電子数の多い周期律表5A族、6A族、
7A族、5B族、6B族、7B族もしくは8族のうちの
少なくとも1種の元素の化合物もしくは単体を、不活性
雰囲気中で100μm以下に粉砕し、耐熱性容器中に薄
膜状に広げて静置して、500℃以上の温度で10時間
以上保持した後冷却し、次いで、洗浄処理を施して余剰
の元素を除去した後、ホットプレス成形するクラスレー
ト化合物半導体の製造方法とした。この方法によれば、
あらかじめドーピング原子または置換原子となる原子を
取り込んだ化合物を、クラスレート格子を構成する物質
として使用するので、高温溶融等の処理をすることなし
に、ドーピング原子または置換原子を確実にクラスレー
ト格子の中に取り込むことができる。
【0029】本発明のクラスレート化合物半導体の別の
製造方法は、p型半導体の場合には、周期律表4B族元
素のインターカラント黒鉛層間化合物であって、該4B
族元素の原子よりも電気陰性度の小さな周期律表1A
族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族、4A
族、5A族、6A族もしくは8族の元素のうちの少なく
とも1種の元素を含むインターカラント黒鉛層間化合物
の微粒子及び該4B族元素の原子よりも価電子数の少な
い周期律表1A族、2A族、3A族、1B族、2B族、
3B族の元素のうちの少なくとも1種の元素の単体を、
耐熱性容器中に薄膜状に広げて静置して、500℃以上
の温度で50時間以上保持した後冷却し、次いで、洗浄
処理を施して余剰の元素を除去した後、ホットプレス成
形するクラスレート化合物半導体の製造方法とした。ま
た、n型半導体の場合には、周期律表4B族元素のイン
ターカラント黒鉛層間化合物であって、該4B族元素の
原子よりも電気陰性度の小さな周期律表1A族、2A
族、3A族、1B族、2B族、3B族、4A族、5A
族、6A族もしくは8族の元素のうちの少なくとも1種
の元素を含むインターカラント黒鉛層間化合物の微粒子
及び該4B族元素の原子よりも価電子数の多い周期律表
5A族、6A族、7A族、5B族、6B族、7B族もし
くは8族のうちの少なくとも1種の元素の化合物もしく
は単体を、耐熱性容器中に薄膜状に広げて静置して、5
00℃以上の温度で50時間以上保持した後冷却し、次
いで、洗浄処理を施して余剰の元素を除去した後、ホッ
トプレス成形するクラスレート化合物半導体の製造方法
とした。この方法によれば、あらかじめドーピング原子
または置換原子となる原子を取り込んだインターカラン
ト黒鉛層間化合物を、クラスレート格子を構成する物質
として使用するので、高温溶融等の処理をすることなし
に、ドーピング原子または置換原子を確実にクラスレー
ト格子の中に取り込み、特に広禁制帯幅を有するカーボ
ンクラスレート化合物半導体を容易に得ることができ
る。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明に係るクラスレート化合物
は、4B族元素の少なくとも1種が構成するクラスレー
ト格子(クラスレート基本構成単位)と、このクラスレ
ート格子の内部にドーピングされたドーピング原子と、
前記クラスレート格子を構成する複数の原子のうちの少
なくとも一部を置換した置換原子とから構成される。
【0031】(第1実施形態)図3と図4は、本発明の
第1実施形態を示すもので、カーボンクラスレート格子
を使用したものである。この第1実施形態のカーボンク
ラスレート格子1は、図4に示すC原子の12面体から
なるC20クラスタ12と、C原子の14面体からなるC
24クラスタ13とが組み合わされたカーボンクラスレー
ト46からなる構成単位11が、複数組み合わせられて
図3に示すようにカーボンクラスレート格子1を構成し
ているものである。また、図4に示すカーボンクラスレ
ート格子1のうち、C20クラスタ12の2aサイトある
いはC24クラスタ13の6dサイトの少なくとも一方の
少なくとも一部にCよりも電気陰性度が小さい周期律表
1A族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族、4
A族、5A族、6A族もしくは8族の原子のうち少なく
とも1種がドーピングされている。各カーボンクラスレ
ート格子の基本単位構造の頂点部分にCが存在し、カー
ボンクラスレート格子1の2aサイト(C20クラスタの
内部)にドーピング原子Xが侵入した状態を示す。
【0032】ここで用いられる最も好ましいドーピング
原子として、電気陰性度がCよりも小さな周期律表1A
族の原子であるLi、Na、K、Rb、Cs、Frを例
示することができる。これらの1A族元素がカーボンク
ラスタの先のサイトに入ると、1A族の原子は1価であ
り、その中にある1個の最外殻電子はクラスレートを構
成する原子へ移る。そのため、全体としてクラスレート
化合物は金属的な性質を有するようになる。また、これ
らの元素は、クラスレート格子1の原子の振動を抑制
し、格子振動を散乱させて熱伝導を低くする作用をす
る。
【0033】前記クラスレート格子1にドーピングする
原子として1A族の原子の他に、2A族の元素のうち、
Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを例示することが
でき、3A族の原子として、Sc、Y、La、ランタノ
イド元素として、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、E
u、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、L
u、Ac、アクチノイド元素としてTh、Pa、U、N
p、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、M
d、No、Lrを例示することができる。さらに、1B
族のドーピング原子として、Cu、Ag、Auを例示す
ることができ、2B族元素としてZn、Cd、Hgを例
示することができ、3B族のドーピング原子としてB、
AlGa、In、Tlを例示することができる。また、
4A族の原子として、Ti、Zr、Hf、Thを例示す
ることができ、5A族の原子として、V、Nb、Ta、
Paを例示することができ、6A族の原子として、C
r、Mo、Wを例示することができ、8族の原子とし
て、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、I
r、Ptの元素を例示することもできる。
【0034】次に、カーボンクラスレート格子1を構成
する複数のC原子のうち、少なくとも一部のC原子が、
C原子よりも価電子数の少ない周期律表1A族、2A
族、3A族、1B族、2B族、3B族のいずれかの原子
で置換されるとp型の半導体となる。また、カーボンク
ラスレート格子1を構成する複数のC原子のうち、少な
くとも一部のC原子が、C原子よりも価電子数の多い周
期律表5A族、6A族、7A族、5B族、6B族、7B
族または8族のうちのいずれかの原子で置換されるとn
型の半導体となる。これらの原子でC原子の一部を置換
するのは、先のドーピング原子の侵入により金属的とさ
れたカーボンクラスレート格子1の金属的な性質を抑制
するために行うもので、この元素置換により熱伝導性が
向し、ゼーベック係数も大きくなり、より半導体的な性
質が付与される。
【0035】前記n型を構成する各族の置換原子のう
ち、5B族の原子としては、N、P、As、Sb、Bi
を例示することができ、6B族の原子としては、O(酸
素)、S、Se、Te、Poを例示することができ、7
B族の原子としては、F、Cl、Br、I、Atを例示
することができ、8族の原子としては、Cr、Mn、F
e,Co、Niの遷移金属の原子を挙げることができ
る。
【0036】次に、前記クラスレート化合物が半導体材
料として好適なものであるためには、次のような性質が
要求される。 1) 熱伝導率の低減 クラスレート化合物の熱伝導率を下げるためには、クラ
スレート化合物の格子振動を散乱させることで可能だと
考えられる。具体的には、クラスレートの骨格を構成し
ている原子よりも電気陰性度の大きい原子をドーピング
原子として選択し、クラスレートの骨格の空いたサイト
に導入する。その結果、ドーピング原子はその骨格を構
成している原子の振動を抑制する。これによりフォノン
の散乱が起こり、熱伝導率を下げることができる。
【0037】次に、平面波基底による第1原理擬ポテン
シャル法の計算によると、ドーピング原子がカーボンク
ラスレートに多く固溶する方がエネルギー的に安定であ
り、カーボンクラスレート格子のボイドのサイトの全て
にドーピング原子が侵入し易くなり、フォノンの散乱に
より熱伝導率を下げることができる。
【0038】2) ゼーベック係数の向上 4B族の原子であるカーボンクラスレート格子1の空い
たサイトに、ドーピング原子として例えば価電子の数が
1〜3個である1A族、2A族、3A族、1B族、2B
族、3B族のいずれかの原子を侵入させると、その中に
ある1〜3個の価電子はクラスレートを構成する4B族
原子へ移る。そのため、カーボンクラスレート格子1を
全体として金属的にすることができる。ここでカーボン
クラスレート格子1を構成しているC原子の少なくとも
一部を1A族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B
族のうちの少なくとも1種の原子で置換すると金属的な
性質からp型の半導体的な性質に変換することができ
る。また、5A族、6A族、7A族、5B族、6B族、
7B族、8族のうちの少なくとも1種の原子で置換する
と金属的な性質からn型の半導体的な性質に変換するこ
とができ、いずれの場合においてもゼーベック係数を高
くすることができる。
【0039】3) 電気伝導率の向上 カーボンクラスレート格子1を構成する4B族原子は半
導体であるために、4B族原子だけでは電気伝導度は上
がらない。そこで金属的な性質を有する1A族、2A
族、3A族、1B族、2B族、3B族のいずれかの原子
をカーボンクラスレート基本構成単位の空いたサイトに
導入することで電気伝導度を上昇させることができる。
【0040】4) 広い禁制帯幅 カーボンクラスレートについては、ダイヤモンドと同等
な広い禁制体幅が期待できる。長所として、カーボンク
ラスレートは決まった種類の不純物原子を指定した位置
へ導入することが可能である。
【0041】これらの結果として本第1実施形態のカー
ボンクラスレート化合物は広禁制帯幅を有し、低い熱伝
導率と高いゼーベック係数を兼ね備えた特性を有し、従
来の広禁制帯幅の半導体材料よりも優れた特性を有する
ものとなる。例えば、カーボンクラスレート格子内に1
A族のNa原子をドーピングし、カーボンクラスレート
格子原子の一部を3B族のB原子で置換したNa8
(C30,B16)p型カーボンクラスレート化合物半導体
の禁制帯幅は5.11eVとなる。また、カーボンクラ
スレート格子内に1A族のNa原子をドーピングし、カ
ーボンクラスレート格子原子の一部を5B族のN原子で
置換したNa8@(C30,N16)n型カーボンクラスレ
ート化合物半導体の禁制帯幅は5.08eVとなる。
【0042】(第2実施形態)クラスレート格子を構成
するカーボン原子(C)が、同じ4B族原子のシリコン
(Si)の変わった以外は、第1実施形態と同様なシリ
コンクラスレート46を使用したシリコンクラスレート
化合物半導体である。ドーピング原子や置換原子に対す
る考え方もそっくり第1実施形態の考え方が適用でき、
ドーピング原子や置換原子は第1実施形態と同じ原子が
使用できる。ただし、シリコンクラスレートを利用する
方が禁制帯幅はカーボンクラスレートの場合よりも若干
狭くなり、ほぼ2eV程度となる。
【0043】(第3実施形態)図5と図6は、本発明の
第3実施形態を示すもので、カーボンクラスレート34
を使用したものである。この第3実施形態のカーボンク
ラスレート格子2は、図6に示すC原子の12面体から
なるC20クラスタ12と、C原子の16面体からなるC
28クラスタ14とが組み合わされたカーボンクラスレー
ト34からなる構成単位21が、複数組み合わさって図
5に示すようなカーボンクラスレート格子2を構成して
いるものである。また、図6に示すカーボンクラスレー
ト34からなる構成単位21のうち、C 20クラスタ12
の2aサイトあるいはC24クラスタ14の6dサイトの
少なくとも一方の少なくとも一部に、Cよりも電気陰性
度が小さい周期律表1A族、2A族、3A族、1B族、
2B族、3B族、4A族、5A族、6A族もしくは8族
の原子のうち少なくとも1種の原子がドーピングされて
いる。図6は、各カーボンクラスレート格子の基本単位
構造の頂点部分にCが存在し、カーボンクラスレート格
子1の2aサイト(C20クラスタの内部)及びC28クラ
スタ14の6dサイトにドーピング原子Xが侵入した状
態を示す。
【0044】各カーボンクラスレート格子における基本
単位構造の頂点部分のC原子は置換可能であって、C原
子よりも価電子数の少ない、周期律表1A族、2A族、
3A族、1B族、2B族、3B族の原子原子で置き換え
た場合には、p型の導電型の半導体となり、C原子より
も価電子数の多い周期律表5A族、6A族、7A族、5
B族、6B族、7B族もしくは8族の原子の内から選ば
れた1種の原子と置き換えた場合にはn型の導電型の半
導体となる。ドーピング原子あるいは置換電子として利
用できる元素は第1実施例の場合と同様であるから、こ
こでは詳しい説明は省略する。
【0045】(第4実施形態)クラスレート格子を構成
するカーボン原子(C)が、同じ4B族原子のシリコン
(Si)の変わった以外は、第2実施形態と同様なシリ
コンクラスレート34を使用したシリコンクラスレート
化合物半導体である。ドーピング原子や置換原子に対す
る考え方もそっくり第1実施形態もしくは第3実施形態
の考え方が適用でき、ドーピング原子や置換原子は第1
実施形態もしくは第3実施形態と同じ原子が使用できる
ので、ここでは詳しい説明は省略する。ただし、シリコ
ンクラスレートを利用するとカーボンクラスレートを利
用した場合よりも禁制帯幅は若干狭くなり、ほぼ2eV
程度となる。
【0046】次に、前述の構成のシリコンクラスレート
化合物半導体の製造方法について説明する。 (第5実施形態)本発明のクラスレート化合物半導体の
第1の製造方法は、溶融法である。p型半導体を製造す
る場合には、ドーピング原子となる周期律表4B族元素
の化合物であって、該4B族元素の原子よりも電気陰性
度の小さな周期律表1A族、2A族、3A族、1B族、
2B族、3B族、4A族、5A族、6A族もしくは8族
の元素のうちの少なくとも1種の元素及び置換原子とな
る該4B族元素の原子よりも価電子数の少ない周期律表
1A族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族の元
素のうちの少なくとも1種の元素を含む周期律表4B族
元素の化合物を、不活性雰囲気中で溶融し、凝固させた
後徐冷して500℃以上の温度で50時間以上保持した
後冷却し、次いで、洗浄処理を施して余剰のアルカリ金
属、アルカリ土類金属、希土類元素もしくは遷移金属を
除去した後、ホットプレス成形する方法である。本発明
では反応を効率的に促進させるために、原料として前述
のドーピング原子または置換原子となる周期律表1A
族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族、4A
族、5A族、6A族もしくは8族元素のうち少なくとも
1種の元素を含む周期律表4B族元素の化合物を使用す
る。このような化合物として好ましくは炭化物、珪化物
もしくはゲルマニウム化合物を使用する。なお、n型半
導体を製造する場合には、上記原料の他に4B族原子よ
りも価電子数の多い周期律表5A族、6A族、7A族、
5B族、6B族、7B族の単体を加えたものを使用す
る。使用する原料を変更した以外は、処理方法はp型半
導体を製造する場合と同様である。
【0047】この際、反応後の余剰な原料を水洗又は酸
洗によって除去できるものを選ぶ必要がある。周期律表
第1A族、2A族、3A族、もしくは8族の元素を含む
周期律表第4B族の化合物であるのが最も好ましいが、
周期律表第4B族の化合物に別途1A族、2A族、3A
族、もしくは8族の元素の単体を加えて成分調整を図っ
たものでも良い。このような周期律表第4B族の化合物
としては、カルシウム炭化物(CaC2)、バリウムシ
リサイド(BaSi2 )、ナトリウムシリサイド(Na
Si)等が挙げられる。カルシウムシリサイド(CaS
2 )は非水溶性であるので好ましくない。
【0048】所望の組成になるように配合した原料は、
先ず均一に溶解する。溶解方法は特に制限はなく、アー
ク溶解や高周波溶解が適宜利用できる。均一に溶解した
原料を凝固させ徐々に冷却して1000℃近くまで冷却
する。凝固は非晶質にならないよう急冷は避けて行う。
次いで、凝固体を500℃以上1500℃以下の温度で
10時間以上保持する。保持温度はドーピング元素や置
換元素の融点以上であれば良く、ドーピング元素が1A
族金属のような場合は500℃以上あれば十分である
が、8族金属のような場合には1500℃近くまで上げ
る必要がある。しかしあまり高温にするもは得策ではな
く、好ましくは、1000℃以上1200℃以下とする
のが実用的である。保持時間は保持温度によっても変わ
るが、ドーピング元素や置換元素の固体内拡散を促進さ
せるためには50時間以上は必要である。より好ましく
は、50時間以上である。例えば、カーボンクラスレー
ト格子C46を利用する場合には100時間以上必要であ
る。この工程で電荷を放出しやすい元素の周りに炭素原
子が凝集してクラスターを形成し、冷却と共にそれらク
ラスターが3次元的に配列し、クラスレート結晶構造を
作り易くしているので、従来の製造方法に比べてクラス
レート化合物の生成速度が速く、収率も高まる利点が生
じる。次いで、所定の温度で所定の時間保持した後、室
温まで冷却する。
【0049】次に、凝固体を粉砕した後、過剰に含まれ
ているドーピング元素や置換元素を洗浄して除去する。
洗浄方法は水洗によりアルカリ金属が除去できるほか
は、0.1N塩酸等の希釈酸による酸洗を行う。
【0050】さらに、洗浄後の粉末をホットプレス成形
して、クラスレート化合物を合成する。ホットプレス条
件としては、温度:800℃以上、圧力:数十MPa〜
数万MPa、加圧時間:数分〜数十時間の範囲で適宜選
択すればよい。ホットプレス方法も特に制限はなく、ダ
イヤモンドアンビル型高圧装置を利用したり、放電プラ
ズマ焼結法を利用しても良い。放電プラズマ焼結とは、
混合粉末に一対のパンチで数十MPa〜数万MPa程度
の圧力で加圧すると同時に、パンチ内の原料に電流を印
加して1000℃以上に加熱しながら数分〜数時間程度
焼結する加圧焼結法の1種である。このようにしてドー
ピング元素や置換元素を取り込んだバルク状のクラスレ
ート化合物を、容易に効率よく合成することができる。
このクラスレート化合物は半導体的な特性を具備してい
る。
【0051】(第6実施形態)次に、本発明のクラスレ
ート化合物半導体の第2の製造方法について説明する。
使用する原料は第5実施形態の場合と同様で、p型半導
体を製造する場合には、ドーピング原子となる周期律表
4B族元素の化合物であって、該4B族元素の原子より
も電気陰性度の小さな周期律表1A族、2A族、3A
族、1B族、2B族、3B族、4A族、5A族、6A族
もしくは8族の元素のうちの少なくとも1種の元素及び
置換原子となる該4B族元素の原子よりも価電子数の少
ない周期律表1A族、2A族、3A族、1B族、2B
族、3B族の元素のうちの少なくとも1種の元素を含む
周期律表4B族元素の化合物を、不活性雰囲気中で10
0μm以下に粉砕し、耐熱性容器中に薄膜状に広げて静
置して、500℃以上の温度で10時間以上保持した後
冷却し、次いで、洗浄処理を施して余剰の元素を除去し
た後、ホットプレス成形する。なお、n型半導体を製造
する場合には、上記原料の他に4B族原子よりも価電子
数の多い周期律表5A族、6A族、7A族、5B族、6
B族、7B族の単体を加えたものを使用する。使用する
原料を変更した以外は、処理方法はp型半導体を製造す
る場合と同様である。所望の組成になるように配合した
原料は、先ず100μm以下、数十μm程度に微粉砕す
る。粉砕方法は特に制限はないが、酸化を避けるため不
活性雰囲気中で行う。
【0052】ここで粉砕工程として、メカニカルアロイ
ング処理又はメカニカルグラインディング処理を施して
目的の組成比の混合粉末を得ることもできる。メカニカ
ルアロイング処理又はメカニカルグラインディング処理
とは、ステンレス鋼球などの金属球を多数収納した中空
のアトライタの内部に粉砕する粉末を投入後、アトライ
タを高速回転させて高エネルギーを使用して金属球の間
で粉末を粉砕・混合して均一な組成の混合粉末を得る方
法である。メカニカルグラインディング処理の場合は混
合粉末が得られるが、多くの場合は微粉砕された混合粉
末の構成微粒子が互いに噛合して均一組織の微粒子とな
り、あたかも合金(アロイ)のような組織を呈したもの
となる。このような工程をメカニカルアロイング処理と
呼ぶ。このようにメカニカルアロイング処理を施して得
られた原子同士が密接に結合した微粉末を加熱処理し、
更にホットップレスすることによって、クラスレート化
合物をより容易に得ることができる。
【0053】次いで、微粉末を耐熱性の容器内に薄い膜
状に広げて静置し、不活性雰囲気の加熱炉中で500℃
以上1500℃以下の温度で10時間以上保持する。そ
の後、第5実施形態の場合と同様に、過剰の原料を洗浄
除去した後、ホットプレス成形してクラスレート化合物
を合成する。この方法により得られたクラスレート化合
物も、半導体的な特性を具備したものである。この方法
は、多少時間がかかるものの溶解手段等を必要としない
ので、容易にクラスレート化合物半導体を得られる利点
を有する。
【0054】(第7実施形態)次に、本発明のクラスレ
ート化合物半導体の第3の製造方法について説明する。
使用する原料は第5実施形態や第6実施形態の場合と異
なり、インターカラント黒鉛層間化合物を使用する。使
用する原料を変更した以外は、製造方法は第6実施形態
の場合と同様である。この方法はカーボンクラスターを
利用したクラスレート化合物半導体を得るのに適用され
る。先ず、インターカラント黒鉛層間化合物について説
明する。黒鉛は、共役結合によって強固に構成された六
角網目黒鉛層(C−C間距離0.142nm)がファン
デルワールス力で積層した典型的な層間化合物である
(層間距離0.335nm)。炭素原子は電気陰性度か
らみても中性であるので、陰性・陽性両方の原子を層間
に取り込み、黒鉛層間化合物( Graphite Intercalatio
n Compound:GID)を形成することができる。インタ
ーカラント黒鉛層間化合物は、層状物質である黒鉛をホ
ストとして、その層間内にゲストとなる化学種(インタ
ーカラント)を取り込んだものである。
【0055】炭素原子よりも電気陰性度が小さい化学種
を取り込んだ場合は、ドナー型インターカラント黒鉛層
間化合物を構成する。このようなドナー型インターカラ
ント黒鉛層間化合物としては、周期律表第1A族、2A
族、3A族もしくは8族元素を取り込んだものが知られ
ている。例えば、LiC6 、NaC64、KC8 、RbC
8 、CsC8 、CaC6 、SrC6 、BaC6 、SmC
6 、EuC6 、YbC 6 等が知られており、このほかに
金属鉄等の遷移金属が黒鉛層間に挿入されたものも報告
されている。
【0056】これらのインターカラント黒鉛層間化合物
の構造的な特徴は、挿入された化学種がn枚の黒鉛層を
挟んで規則的に繰り返す、ステージ構造を取ることであ
る。また、ドナー型インターカラント黒鉛層間化合物の
化学的性質の特徴は、超伝導能を発揮したり、水素吸蔵
能を発揮することである。インターカラント黒鉛層間化
合物の製造方法としては、黒鉛と化学種を真空系内に隔
離して置き、両者の温度を独立して制御して反応温度と
蒸気圧を選択して、目的の化合物を得る気相反応法や、
溶融したアルカリ金属に黒鉛を含浸させる溶融法等の他
に、電解法や還元反応法も提案されている。
【0057】本発明のクラスレート化合物半導体の製造
方法では、p型半導体の場合には、周期律表4B族元素
のインターカラント黒鉛層間化合物であって、該4B族
元素の原子よりも電気陰性度の小さな周期律表1A族、
2A族、3A族、1B族、2B族、3B族、4A族、5
A族、6A族もしくは8族の元素のうちの少なくとも1
種の元素を含むインターカラント黒鉛層間化合物の10
0μm程度以下の微粒子及び該4B族元素の原子よりも
価電子数の少ない周期律表1A族、2A族、3A族、1
B族、2B族、3B族の元素のうちの少なくとも1種の
元素の単体を、耐熱性の容器内に薄い膜状に広げて静置
し、不活性雰囲気の加熱炉中で500℃以上1500℃
以下の温度で10時間以上保持する。なお、n型半導体
を製造する場合には、上記原料の他に4B族原子よりも
価電子数の少ない周期律表5A族、6A族、7A族、5
B族、6B族、7B族の単体を加えたものを使用する。
使用する原料を変更した以外は、処理方法はp型半導体
を製造する場合と同様である。インターカラント黒鉛層
間化合物が微粒子で得られる場合はそのままでも良い
が、粗粒である場合には不活性雰囲気中で100μm以
下、数十μm程度に微粉砕したものを使用する。その
後、第5、第6実施形態の場合と同様に、過剰の原料を
洗浄除去してから、ホットプレス成形してクラスレート
化合物を合成する。このようにして得られたカーボンク
ラスレート格子を使用したクラスレート化合物は、半導
体的な特性を具備しており、特に広禁制帯幅を有する半
導体となる。
【0058】
【実施例】(実施例1)炭化カルシウム(CaC2 )を
2,500℃まで加熱溶融し、凝固後炉内で保温して
1,000℃まで徐冷した。引き続き炉内を1,000
±10℃に保持して120時間(5日間)保持した。そ
の後インゴットを微粉砕し、水で洗浄した。乾燥後の粉
末をホットプレス装置に充填し、1,000℃、100
MPaで20時間かけて焼結した。得られた結晶をX線
回折により構造解析した結果、格子定数は0.68nm
となり、その回折ピークから炭素原子20個のクラスタ
ーと炭素原子24個のクラスターの中に、Ca原子が内
包されていることが判った。また、EPMAによる組成
分析では、Ca:Cの原子量比は目標値のCa:C=
8:46に対してCa:C=7.62:45.62であ
った。また、硬さ試験を行った結果、立方晶窒化硼素と
同等の硬さが得られていた。さらに、hot-probe法を用
いて電流の向きを確認したところ、n型半導体であるこ
とが確認された。
【0059】(実施例2)珪化バリウム(BaSi2
を不活性雰囲気下でボールミルを使用して100μm以
下に微粉砕した。次いで、この珪化バリウム微粉末と1
00μm以下のアルミニウム微粉末を、アルミナ製の試
料皿の表面に極薄く散布して広げ、不活性雰囲気下の加
熱炉に入れて850±10℃で150時間(約6日間)
保持した。次いで、冷却した微粉末を水洗した。乾燥後
の微粉末をホットプレス装置に充填し、850℃、40
MPaで30分かけて焼結した。得られた結晶をX線回
折により構造解析した結果、格子定数は1.04nmと
なり、結晶記号がPm3(バー)mのSi46構造のバリ
ウム−シリコンクラスレート構造であることが確認され
た。EPMAによる組成分析の結果、原子量比はほぼ目
標値通りのBa:Si:Al=7.5:23.5:2
2.5であった。さらに、hot-probe 法を用いて電流の
向きを確認したところ、p型半導体であることが確認さ
れた。
【0060】(実施例3)カルシウム(Ca)を含むイ
ンターカラント黒鉛層間化合物(CaC6 )を不活性雰
囲気下でボールミルを使用して100μm以下に微粉砕
した。ついで、このカルシウムを含むインターカラント
黒鉛層間化合物の微粉末を、アルミナ製の試料皿の表面
に極薄く散布して広げ、不活性雰囲気下の加熱炉に入れ
て1200±20℃で150時間(約6日間)保持し
た。次いで、冷却した微粉末を水洗したのち、さらに稀
釈塩酸で洗浄した。乾燥後の微粉末をホットプレス装置
に充填し、1000℃、40MPaで20時間かけて焼
結した。得られた結晶をX線回折により構造解析した結
果、格子定数は0.68nmとなり、結晶記号がPm3
(バー)mのカルシウム−カーボンクラスレート構造で
あることが確認された。EPMAによる組成分析の結
果、原子量比は目標値のCa:C=8:46に対してC
a:C=6.5:46であった。さらに、hot-probe 法
を用いて電流の向きを確認したところ、n型半導体であ
ることが確認された。
【0061】(実施例4)炭化カルシウム(CaC2
を2,500℃まで加熱溶融し、凝固後炉内で保温して
700℃まで徐冷した。引き続き炉内を700±10℃
に保持して120時間(5日間)保持した。その後イン
ゴットを粒径100μm程度に微粉砕し、水で洗浄し
た。乾燥後の粉末をホットプレス装置に充填し、1,0
00℃、100MPaで20時間かけて焼結した。得ら
れた結晶をX線回折により構造解析した結果、格子定数
は0.95nmとなり、その回折ピークから炭素原子2
0個のクラスターと炭素原子28個のクラスターの中
に、Ca原子が内包されていることが判った。また、E
PMAによる組成分析では、Ca:Cの原子量比は目標
値のCa:C=6:34に対してCa:C=4.6:3
3.5であった。また、硬さ試験を行った結果、立方晶
窒化硼素と同等の硬さが得られていた。さらに、hot-pr
obe 法を用いて電流の流れる向きを確認したところ、n
型半導体であることが判った。
【0062】(実施例5)炭化カルシウム(CaC2
を不活性雰囲気(アルゴン雰囲気)下でボールミルを使
用して100μm以下に微粉砕した。次いで、この炭化
カルシウム(CaC2 )微粉末と100μm以下のアル
ミニウム微粉末を、アルミナ製の試料皿の表面に極薄く
散布して広げ、不活性雰囲気下の加熱炉に入れて700
±10℃で120時間(5日間)保持した。次いで、冷
却した微粉末を水洗した。乾燥後の微粉末をホットプレ
ス装置に充填し、850℃、40MPaで30分かけて
焼結した。得られた結晶をX線回折により構造解析した
結果、格子定数は1.04nmとなり、結晶記号がFd
3(バー)m origin at center 3(バー)mのカル
シウム−アルミニウム−カーボンクラスレート構造であ
ることが確認された。EPMAによる組成分析の結果、
原子量比はほぼ目標値のCa:Al:C=5.5:2
3.4:22.6であった。さらに、hot-probe 法を用
いて電流の向きを確認したところ、n型半導体であるこ
とが確認された。
【0063】(実施例6)珪化バリウム(BaSi2
を1,200℃まで加熱溶融し、凝固後炉内で保温して
300℃まで徐冷した。引き続き炉内を300±10℃
に保持して120時間(5日間)保持した。その後イン
ゴットを粒径100μm程度に微粉砕し、水で洗浄し
た。乾燥後の粉末をホットプレス装置に充填し、1,0
00℃、50MPaで20時間かけて焼結した。得られ
た結晶をX線回折により構造解析した結果、格子定数は
0.95nmとなり、その回折ピークからシリコン原子
20個のシリコンクラスターとシリコン原子28個のシ
リコンクラスターの中に、Ba原子が内包されているこ
とが判った。また、EPMAによる組成分析ではBa:
Siの原子量比は目標値のBa:Si=6:34に対し
てBa:Si=4.6:33.5であった。また、硬さ
試験を行った結果、立方晶窒化硼素と同等の硬さが得ら
れていた。さらに、hot-probe 法を用いて電流の向きを
確認したところ、n型半導体であることが確認された。
【0064】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明のクラスレ
ート化合物半導体は基本的骨格が周期律表4B族のクラ
スレート格子であり、このクラスレート格子内にクラス
レート格子構成原子よりも電気陰性度の小さな原子がド
ーピングされているので、クラスレート化合物本来の絶
縁物的性質を金属的性質に近づけた半導体の性質を具備
し、かつ、クラスレート格子構成原子よりも価電子数の
多いか又は少ない原子で格子原子を置換することによ
り、p型又はn型半導体としたものである。本発明のク
ラスレート化合物半導体は、クラスレート化合物が有す
る広い禁制帯幅を具備しているので、高温でも漏れ電流
が少なく、安定した動作が確保される。従って、高温ガ
スセンサー、自動車制御部品、宇宙ロケットエンジンの
制御部品、原子力設備の制御部品あるいは地下探索用測
定機器等への応用の道が開ける。また、広い禁制帯幅を
具備していることから、波長の短い青色系レーザ素子と
しても利用できる。
【0065】また、本発明の第1のクラスレート化合物
半導体の製造方法によれば、従来の製造方法に比べてク
ラスレート化合物の生成速度が速く、収率も高まり容易
に効率よく合成することができる。本発明の第2のクラ
スレート化合物半導体の製造方法によれば、多少時間が
かかるものの溶解手段等の特別な手段を必要としないの
で、容易にクラスレート化合物半導体を得られる。本発
明の第3のクラスレート化合物半導体の製造方法によれ
ば、あらかじめドーピング原子を取り込んだインターカ
ラント黒鉛層間化合物を使用するので、カーボンクラス
レート化合物の生成が容易で、得られたカーボンクラス
レート化合物半導は、広い禁制帯幅を具備しているの
で、高温・高圧下でも安定して作動する青色系レーザ素
子を、簡単な方法で得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 原子の電気陰性度を表す図である。
【図2】 温度と漏れ電流密度の関係を示す図である。
【図3】 カーボンクラスター46を使用したクラスレ
ート化合物半導体の結晶構造を説明する模式図である。
【図4】 図3のクラスレート化合物半導体の部分構成
単位を説明する模式図である。
【図5】 カーボンクラスター34を使用したクラスレ
ート化合物半導体の結晶構造を説明する模式図である。
【図6】 図5のクラスレート化合物半導体の部分構成
単位を説明する模式図である。
【符号の説明】
1,2・・・・・カーボンクラスレート格子、11・・・・・カー
ボンクラスレート46からなる構成単位、12・・・・・C
20クラスタ、13・・・・・C24クラスタ、14・・・・・C28
ラスタ、21・・・・・カーボンクラスレート34からなる
構成単位、C・・・・・炭素原子、X・・・・・ドーピング原子、
Y・・・・・置換原子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 35/34 H01L 35/34 H01S 5/32 H01S 5/32 (72)発明者 鈴木 章彦 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター基盤技術研究所内 (72)発明者 高橋 聰 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター基盤技術研究所内 (72)発明者 宮原 薫 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター基盤技術研究所内 (72)発明者 田中 徹 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター基盤技術研究所内 (72)発明者 円谷 和雄 神奈川県厚木市森の里1−16−1 Fターム(参考) 4G046 CB00 CB09 CC03 MA11 MB01 MB10 MC04 4G072 AA20 BB20 GG01 GG03 HH33 MM23 MM26 MM37 MM38 QQ02 RR13 UU01 5F053 BB04 BB60 DD20 FF04 GG02 LL02 RR20 5F073 CA24 CB12 DA07 DA35

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 周期律表4B族元素の少なくとも1種の
    原子を主体としてなるクラスレート格子と、該クラスレ
    ート格子の格子間隙に内包されドーピング原子と、前記
    クラスレート格子を構成する原子の少なくとも一部と置
    換された置換原子とからなり、該ドーピング原子が前記
    クラスレート格子を構成する原子よりも電気陰性度が小
    さな周期律表1A族、2A族、3A族、1B族、2B
    族、3B族、4A族、5A族、6A族もしくは8族の原
    子のうちの少なくとも1種であり、該置換原子が周期律
    表1A族、2A族、3A族、1B族、2B族もしくは3
    B族の原子のうちから選ばれたうちの少なくとも1種の
    原子、または5A族、6A族、7A族、5B族、6B
    族、7B族もしくは8族から選ばれたうちの少なくとも
    1種の原子であるることを特徴とするクラスレート化合
    物半導体。
  2. 【請求項2】 前記クラスレート格子がC又はSiのク
    ラスレート格子であることを特徴とする請求項1に記載
    のクラスレート化合物半導体。
  3. 【請求項3】 前記クラスレート格子が、C原子の12
    面体からなるC20クラスタと、C原子の14面体からな
    るC24クラスタの混合格子であるカーボンクラスレート
    46(C46)であることを特徴とする請求項1に記載の
    クラスレート化合物半導体。
  4. 【請求項4】 前記クラスレート格子が、C原子の12
    面体からなるC20クラスタと、C原子の16面体からな
    るC28クラスタの混合格子であるカーボンクラスレート
    34(C34)であることを特徴とする請求項1に記載の
    クラスレート化合物半導体。
  5. 【請求項5】 前記クラスレート格子が、Si原子の1
    2面体からなるSi20クラスタと、Si原子の14面体
    からなるSi24クラスタの混合格子であるシリコンクラ
    スレート46(Si46)であることを特徴とする請求項
    1に記載のクラスレート化合物半導体。
  6. 【請求項6】 前記クラスレート格子が、Si原子の1
    2面体からなるSi20クラスタと、Si原子の16面体
    からなるSi28クラスタの混合格子であるシリコンクラ
    スレート34(Si34)であることを特徴とする請求項
    1に記載のクラスレート化合物半導体。
  7. 【請求項7】 周期律表4B族元素の化合物であって、
    該4B族元素の原子よりも電気陰性度の小さな周期律表
    1A族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族、4
    A族、5A族、6A族もしくは8族の元素のうちの少な
    くとも1種の元素及び周期律表1A族、2A族、3A
    族、1B族、2B族、3B族の元素のうちの少なくとも
    1種の元素を含む周期律表4B族元素の化合物を、不活
    性雰囲気中で溶融し、凝固させた後徐冷して500℃以
    上の温度で10時間以上保持した後冷却し、次いで粉砕
    した後洗浄処理を施して余剰の元素を除去した後、ホッ
    トプレス成形することを特徴とするクラスレート化合物
    半導体の製造方法。
  8. 【請求項8】 周期律表4B族元素の化合物であって、
    該4B族元素の原子よりも電気陰性度の小さな周期律表
    1A族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族、4
    A族、5A族、6A族もしくは8族の元素のうちの少な
    くとも1種の元素及び周期律表1A族、2A族、3A
    族、1B族、2B族、3B族の元素のうちの少なくとも
    1種の元素を含む周期律表4B族元素の化合物を、不活
    性雰囲気中で100μm以下に粉砕し、耐熱性容器中に
    薄膜状に広げて静置して、500℃以上の温度で10時
    間以上保持した後冷却し、次いで、洗浄処理を施して余
    剰の元素を除去した後、ホットプレス成形することを特
    徴とするクラスレート化合物半導体の製造方法。
  9. 【請求項9】 周期律表4B族元素のインターカラント
    黒鉛層間化合物であって、該4B族元素の原子よりも電
    気陰性度の小さな周期律表1A族、2A族、3A族、1
    B族、2B族、3B族、4A族、5A族、6A族もしく
    は8族の元素のうちの少なくとも1種の元素を含むイン
    ターカラント黒鉛層間化合物の微粒子及び周期律表1A
    族、2A族、3A族、1B族、2B族、3B族の元素の
    うちの少なくとも1種の元素の単体を、耐熱性容器中に
    薄膜状に広げて静置して、500℃以上の温度で10時
    間以上保持した後冷却し、次いで、洗浄処理を施して余
    剰の元素を除去した後、ホットプレス成形することを特
    徴とするクラスレート化合物半導体の製造方法。
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