JP2001307614A - 回路遮断器の電磁引外し装置 - Google Patents

回路遮断器の電磁引外し装置

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健一 上浦
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ヨーク端部に可動鉄片が回動可能に支持された
電磁引外し装置において、吸引待機状態で可動鉄片に作
用する逆吸引力を防止して初期吸引力の増大を図る。 【解決手段】ヨーク1の可動鉄片支持端部に非磁性材の
支持板7を固定し、この支持板7に形成した支柱7aを
可動鉄片3の窓穴3aに嵌入して可動鉄片3を保持す
る。非磁性材の支持板7には磁束が通らないため、可動
鉄片3の吸引待機状態において、窓穴3aのエッジ部分
で可動鉄片3とヨーク1との間に従来生じていた可動鉄
片吸引方向と逆の吸引力が生じなくなり、それだけ初期
吸引力が増大して引外し特性が安定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、配線用遮断器な
どの回路遮断器において、過電流を検出して可動鉄片を
吸引し、回路遮断器をトリップさせる電磁引外し装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】図7は完全電磁式のこの種の引外し装置
の従来構成を示す縦断面図である。図7において、磁性
板からなるL字状のヨーク1の一方の脚部に固定鉄心2
が固着されるとともに、他方の脚部に固定鉄心2の接極
面と対向して可動鉄片3が回動自在に支持されている。
ヨーク1の支持端部は、図8の要部斜視図に示すように
凹状に形成され、両側に左右一対の支柱1aを有する一
方、可動鉄片3の両端には左右一対の方形の切欠溝3a
が形成され、支柱1aが切欠溝3aに緩く嵌入されてい
る。可動鉄片3は左右の支柱1aの間で、固定鉄心2の
接極面と同一レベルのヨーク上端面1bにより支承さ
れ、支柱1aにより前後左右に位置決め保持されてい
る。
【0003】図7において、可動鉄片3とヨーク1との
間には、引張りコイルスプリングからなる復帰ばね4が
掛けられ、可動鉄片3は切欠溝3aと支柱1aとの間の
隙間の範囲内で回動し、切欠溝3aのエッジが支柱1a
の前後面に突き当たった図示姿勢で停止保持されてい
る。一方、固定鉄心2はオイルダシュポット方式のもの
で、公知の通り下端部が閉じた非磁性シリンダ内に、図
示しないが磁性体からなるプランジャ及び圧縮コイルス
プリングからなる戻しばねが制動油とともに封入され、
上端開口が接極子5により閉塞された構成となってい
る。固定鉄心2の外側には、引外しコイル6が配置さ
れ、その一端6aは回路遮断器の図示しない負荷側端子
に接続され、他端6bは可動接触子に至る主回路導体に
接続される。図示電磁引外し装置は、引外しコイル6を
流れる負荷電流が過電流状態になると可動鉄片3を接極
子5に吸引し、時計方向に回動する可動鉄片3により回
路遮断器の図示しない引外し機構を操作して回路遮断器
をトリップさせる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図9は図7のA部の拡
大図で、(A)は吸引待機状態、(B)は吸引完了状態
である。図9(A)の吸引待機状態において、引外しコ
イル6(図7)を流れる負荷電流による磁束Φは、破線
矢印で示すように支柱1aと切欠溝3aの上部エッジと
の当接部Pを通過し、この部分で支柱1aと可動鉄片3
との間に逆吸引力を生じている。また、可動鉄片3は復
帰ばね4(図7)から常に下向きに力を受けているた
め、過電流により可動鉄片3が吸引される際には、可動
鉄片3はヨーク上端面1bの背面側(図9(A)の左
側)エッジを支点に、図9(A)の時計方向に回動す
る。そのため、可動鉄片3の吸引開始時には、上記逆吸
引力が接極子5による可動鉄片3の吸引を妨げる作用を
する。一方、図9(B)の吸引完了状態においては、支
柱1aの前面と可動鉄片3の切欠溝壁面との間に隙間g
が生じ、この部分で磁束Φの通過を遮断して可動鉄片3
の吸着保持力を低下させる。そこで、この発明の課題
は、可動鉄片の吸引作用がその支持部で妨げられないよ
うにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、この発明は、可動鉄片に嵌入する支柱をヨークと別
体の非磁性板からなる支持板に形成し、この支持板を前
記ヨークの脚部に固定するものとする(請求項1)。
【0006】請求項1において、前記支持板の支柱に板
厚方向の膨出部を押し出し成形により部分的に形成すれ
ば、前記支持板として前記可動鉄片よりも板厚の薄い非
磁性板を用いることができ材料費が低減する(請求項
2)。
【0007】また、請求項1又は請求項2において、前
記支持板を固定した前記ヨークの脚部の先端を前記固定
鉄心側に折り曲げ、この折り曲げ部の前記可動鉄片との
対向面を前記固定鉄心の接極面と同一レベルに揃えれ
ば、ヨークの可動鉄片支持端部における接極面積が増え
吸引力が大きくなる(請求項3)。
【0008】
【発明の実施の形態】図1〜図3はこの発明の実施の形
態を示すもので、図1は電磁引外し装置の縦断面図、図
2は図1の要部斜視図、図3は支持板固定部の分解斜視
図である。なお、従来例と対応する部分には同一の符号
を用いるものとする。図1〜図3において、従来例と特
に相違するのは、可動鉄片3がヨーク1に固定された支
持板7に支持されている点である。支持板7は黄銅板あ
るいはステンレス板などの非磁性板からなり、図3に示
すように短冊形で、上端部に可動鉄片3に嵌入される支
柱7aが形成され、下端部に左右2個の取付穴7bが設
けられている。この支持板7は、ヨーク1に一体形成さ
れたかしめ突起1cが取付穴7bに嵌め込まれ、その先
端がかしめ加工されることにより、図1に示すようにヨ
ーク1の背面側に固定されている。
【0009】一方、可動鉄片3には、支柱7aに対応し
て横長方形の窓穴3aが設けられ、窓穴3aに支持板7
の支柱7aが緩く嵌入されている。可動鉄片3は、支柱
7aの両側で、固定鉄心2の接極面(接極子5の上面)
5aと同一レベルのヨーク上端面1bに支持され、支柱
7aにより前後左右に位置決め保持されている。ここ
で、支持板7の板厚は可動鉄片3よりもかなり薄く、ま
た窓穴3aの前後幅は支持板7の板厚よりもかなり広い
が、支持板7の支柱7aには押し出し成形により方形の
膨出部7cが部分的に形成され、窓穴3aとの間の板厚
方向の隙間の調整が図られている。
【0010】上記した電磁引外し装置の動作は従来例と
同じであり、引外しコイル6を流れる負荷電流が過電流
状態になると、可動鉄片3が固定鉄心2に吸引される。
図4は、図1のA部の拡大図で、(A)は吸引待機状
態、(B)は吸引状態である。図4(A)吸引待機状態
において、可動鉄片3はP部で支柱7aに当接している
が、支持板7は非磁性板であるため磁束が通過せず、従
ってこの部分で図9(A)におけるような逆吸引力が生じ
ることがない。また、図示実施の形態では支柱7aの前
方において、可動鉄片3はヨーク1の上端面1bと対面
するため、その分、接極面積が増え、初期吸引力が増大
する。一方、図4(B)吸引状態では、ヨーク1の上端
面1bに可動鉄片3が接触するため、図9(B)における
ような磁束の遮断が生じることがない。
【0011】更に、図示実施の形態において、支持板7
には薄い非磁性板が用いられ、膨出部7cにより可動鉄
片3の窓穴3aとの間の隙間がが調整されている。窓穴
3aはプレスによる打ち抜き加工が一般的であるが、窓
穴3aの前後幅寸法はプレス型寿命や加工精度の点から
あまり小さくすることはできず、可動鉄片3の板厚以上
が必要である。一方、支柱7aと窓穴3aとの間の前後
の隙間g(図4(B))は可動鉄片3の吸引待機状態で
の傾き、つまり吸引ストロークに関係し、適正に設定す
る必要がある。その場合、支持板7の板厚で隙間gを調
整しようとすると、その板厚がかなり厚くなり、高価な
非磁性板からなる支持板7のコストが高くなる。そこ
で、図示実施の形態では支持板7の板厚を薄くするとと
もに、その一部に膨出部7cを形成することにより、支
持板7の材料費を抑えながら、適正な隙間gを得てい
る。なお、膨出部7cの押し出し加工は、抜き工程など
の他工程と連続して行われるため、コストはほとんどか
からない。
【0012】図5は、この発明の異なる実施の形態を示
すものである。この実施の形態において図1と相違する
のは、支持板7が固定されたヨーク1の脚部の先端が、
固定鉄心2側に直角に折り曲げられている点である。こ
の折り曲げ部1dの可動鉄片3との対向面は、固定鉄心
2の接極面5aと同一レベルに揃えられている。この実
施の形態によれば、折り曲げ部1dにより接極面積が増
えるため、それだけ初期吸引力が増大する。なお、上記
実施の形態において、支持板7の支柱7aを可動鉄片3
の窓穴3aに嵌入する例を示したが、図6に示すよう
に、支持板7の両側に左右一対の支柱7aを設け、可動
鉄片3の両側に従来例と同様に、左右一対の方形の切欠
溝3aを形成して、支柱1aを切欠溝3a(図8参照)
に緩く嵌入する構成を採用しても差し支えない。
【0013】
【発明の効果】以上の通り、この発明によれば、可動鉄
片に嵌入する支柱を非磁性板の支持板に形成することに
より、逆吸引力が消滅して初期吸引力が増大し、安定し
た引外し特性を得ることができる。具体的には、従来例
に比べて約20%の初期吸引力の改善が得られた。また、
支持板を固定したヨークの脚部先端を折り曲げることに
より、更に約20%の初期吸引力の改善が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示す電磁引外し装置の
縦断面図である。
【図2】図1におけるA部の斜視図である。
【図3】図3における支持板取付部の分解斜視図であ
る。
【図4】図1におけるA部の拡大図で、(A)は吸引待
機状態を示し、(B)は吸引状態を示す。
【図5】この発明の異なる実施の形態を示す電磁引外し
装置の縦断面図である。
【図6】この発明の更に異なる実施の形態を示す電磁引
外し装置の支持板取付部の分解斜視図である。
【図7】従来例を示す電磁引外し装置の縦断面図であ
る。
【図8】図7におけるA部の斜視図である。
【図9】図7におけるA部の拡大図で、(A)は吸引待
機状態を示し、(B)は吸引状態を示す。
【符号の説明】
1 ヨーク 2 固定鉄心 3 可動鉄片 3a 窓穴 4 復帰スプリング 5 接極子 6 引外しコイル 7 支持板 7a 支柱 7b 取付穴 7c 膨出部
フロントページの続き (72)発明者 上浦 健一 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 (72)発明者 菊地 成治 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 Fターム(参考) 5G030 FC05 FE24 XX05 YY01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁性板からなるL字状のヨークの一方の脚
    部に固定鉄心が固着されるとともに、他方の脚部に前記
    固定鉄心の接極面と対向して可動鉄片が回動自在に支持
    され、前記可動鉄片は前記ヨーク側の支柱が前記可動鉄
    片の窓穴又は切欠溝に嵌入されて保持される回路遮断器
    の電磁引外し装置において、 前記支柱を前記ヨークと別体の非磁性板からなる支持板
    に形成し、この支持板を前記ヨークの脚部に固定したこ
    とを特徴とする回路遮断器の電磁引外し装置。
  2. 【請求項2】前記支持板に前記可動鉄片よりも板厚の薄
    い非磁性板を用いるとともに、この支持板の前記支柱に
    板厚方向の膨出部を押し出し成形により部分的に形成し
    たことを特徴とする請求項1記載の回路遮断器の電磁引
    外し装置。
  3. 【請求項3】前記支持板を固定した前記ヨークの脚部の
    先端を前記固定鉄心側に折り曲げ、この折り曲げ部の前
    記可動鉄片との対向面を前記固定鉄心の接極面と同一レ
    ベルに揃えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記
    載の回路遮断器の電磁引外し装置。
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