JP2001299197A - 製パン用静電塗布離型油脂組成物 - Google Patents

製パン用静電塗布離型油脂組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 静電塗油装置によって必要最小限度の量を、
菓子類やパン類を焼成する際の天板や焼き型に均一に塗
布することができ、しかも少ない塗布量であっても製品
の離型性に優れた製パン用静電塗布離型油脂組成物を提
供する。 【解決手段】 本発明の製パン用静電塗布離型油脂組成
物は、食用油脂を主体とする離型油脂組成物であって、
導電率5000〜200000pS/mを有することを
特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パン類を焼成する
際の離型剤として、天板や食型に塗布して用いられる製
パン用静電塗布離型油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、パン類を製造する際に、焼成
後の食品を天板や食型から離型し易くするために各種の
離型剤が用いられている。これらの離型剤は、スタンプ
式、スプレー式等の塗布装置や、モップ等による手塗り
によって、天板や食型に塗布されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
塗布装置や手塗りによって離型剤を塗布した場合、塗布
状態が不均一になるため、必然的に塗布量が多くなり、
不経済となるばかりか、離型剤がパン類に付着してパン
類の風味を損なう虞れがあった。一般に、この種の離型
剤としては、食用油脂や、食用油脂にレシチン等の乳化
剤を添加したものが用いられているが、スプレー式の塗
布装置を用いて塗布した場合、ミストによる型外等の周
囲への汚れが問題となる。またスプレー式の塗布装置や
手塗りをした場合、塗布量が多くなり、そのため余分な
離型剤により、離型剤が重合するなどして、天板や食型
に付着物が発生して作業性を低下させるという問題があ
った。したがって、天板や食型の洗浄回数が増えるなど
の問題があった。また、食用油脂に特定の脂肪酸を含む
プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等を配
合した離型油脂組成物(特公平8−2243号)等も知
られているが、離型性が充分でないという問題があっ
た。
【0004】一方、潤滑油やペンキ等の鉱物油組成物を
被塗布物表面に塗布する場合には、鉱物油組成物を静電
気の作用で被塗布物表面に噴霧して塗布する静電塗油装
置を用いる方法も知られており、ノズルヘッドの構造を
工夫することにより食用油脂や食用油脂組成物等も、高
精度に塗布することのできる静電塗油装置も提案されて
いる(特開平11−290726号)。しかしながら、
製パン用食型は、製菓用食型に比べて、深く複雑な構造
の為、従来の離型剤を静電塗布装置により塗布した場
合、少ない離型剤の使用量で且つ均一に塗布することは
困難であった。
【0005】本発明は上記の静電塗油装置による塗布に
適し、静電塗油装置によって均一に塗布することができ
るとともに、少ない塗布量で製品の離型性に優れた製パ
ン用静電塗布離型油脂組成物を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち本発明の製パン用静
電塗布離型油脂組成物は、食用油脂を主体とする離型油
脂組成物であって、導電率5000〜200000pS
/mを有することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明組成物において、食用油脂
としては、20℃で液体の油脂が好ましく、例えばナタ
ネ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ラード、乳脂等
の動植物油脂や、これら動植物油脂の硬化油、分別油、
エステル交換油等の加工油脂が挙げられるが、5℃で液
状の油脂がより好ましい。これら食用油脂は単独または
2種類以上を混合して使用できる。
【0008】本発明の製パン用離型油脂組成物は、導電
率5000〜200000pS/mを有するが、導電率
が12000〜150000pS/mであることが好ま
しい。導電率が5000pS/m未満の場合、離型油脂
組成物を静電塗油装置によって噴霧塗布することが困難
となったり、噴霧塗布できたとしても塗布状態が不均一
となる。また導電率が200000pS/mを超える場
合、静電塗油装置によって噴霧塗布する際の油滴が微小
になり過ぎ、飛散ミスト量が多くなって不経済となる。
【0009】導電率が5000〜200000pS/m
の製パン用静電塗布離型油脂組成物は、例えば離型油脂
組成物中にレシチンを0.5〜15重量%、及び/又は
グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、食
用アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を
0.1〜5重量%含有させることにより得ることができ
るが、離型油脂組成物中にレシチンを0.5〜15重量
%と、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステ
ル、食用アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも
1種を0.1〜5重量%含有させることにより得ること
が好ましい。
【0010】上記レシチンとしては、クルードレシチ
ン、高純度レシチン、分別レシチン、酵素分解レシチ
ン、酵素分解分別レシチン等が挙げられる。これらのレ
シチンは適宜混合して用いることができる。本発明の離
型油脂組成物中におけるレシチンの配合割合は0.5〜
15重量%が好ましいが、1〜10重量%がより好まし
い。レシチンの配合割合が0.5重量%未満であると、
離型が不良となるとともに離型油脂組成物の導電率が5
000pS/m未満となって、静電塗油装置による均一
な塗布が困難となり、またレシチンの配合割合が15重
量%を超えると、製品の風味を損なう虞れがある。
【0011】本発明の離型油脂組成物において、上記レ
シチンとともに配合されるグリセリン脂肪酸エステル、
ショ糖脂肪酸エステル、食用アルコールのうち、グリセ
リン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸エ
ステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン
脂肪酸エステル等が挙げられる。これらグリセリン脂肪
酸エステルは、単独又は適宜混合して用いることができ
る。上記グリセリン脂肪酸エステルのうち、ポリグリセ
リン脂肪酸エステルが好ましく、特に沃素価70以上、
HLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが好まし
い。ショ糖脂肪酸エステルとしては、沃素価70以上の
脂肪酸とショ糖とのエステルが好ましい。またショ糖脂
肪酸エステルは、HLBが3以下のものが好ましい。食
用アルコールとしては、アルコール分99.5%以上の
無水エタノール等が挙げられる。
【0012】本発明の離型油脂組成物中において、上記
グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、食
用アルコールは、単独で配合しても2種以上を混合して
配合しても良いが、何れの場合も配合割合が0.1〜5
重量%(2種以上を混合した場合には、合計の配合割
合)であること好ましく、特に1〜4重量%であること
が好ましい。これらの成分の配合割合が0.1重量%未
満では離型性が低下するとともに、5重量%を超えた場
合には製品の風味が低下する虞れがある。
【0013】本発明の離型油脂組成物中には、本発明の
所期の目的を阻害しない範囲において、必要に応じて香
料、着色料、消泡剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜配合
することができる。
【0014】本発明の離型油脂組成物は、例えば特開平
11−290726号公報に記載されているような静電
塗油装置を用いて、例えば食パン、ロールパン、デニッ
シュ、フィリング等を詰めたパン等のパン類を焼成する
ための天板や食型の表面(側面や底面)等に均一に塗布
することができる。本発明の離型油脂組成物を塗布する
ための静電塗油装置の具体例としては、例えばルブテッ
ク株式会社製のフードスタット静電塗油装置:FSC8
00型等を挙げることができる。本発明の離型油脂組成
物を静電塗油装置によって天板、食型等に塗布すること
により、従来のスタンプ式、スプレー式等の塗布装置や
モップによる手塗りによって塗布した場合に比べ、離型
油脂組成物の使用量が少なくて済むとともに、本発明の
離型油脂組成物は少ない塗布量であっても優れた離型性
能を発揮する。
【0015】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明する。 実施例1〜10、比較例1〜3 表1に示す配合に基づき、食用油脂にその他の成分を添
加し、撹拌下に65℃まで加熱して食用油脂に他の成分
を溶解させた後、そのまま製品化(離型油脂組成物)あ
るいは急冷捏練して、15℃まで冷却して製品化(離型
油脂組成物)した。得られた各離型油の導電率を表1に
あわせて示す。尚、導電率はデジタル式導電率測定器:
モデル1152(米国EMCEE社製)にて20℃で測
定した。
【0016】
【表1】
【0017】※1:モノグリセリンオレイン酸エステル ※2:ジグリセリンオレイン酸エステル ※3:テトラグリセリンオレイン酸エステル ※4:ショ糖エルカ酸エステル
【0018】次に、フードスタット静電塗油装置(ルブ
テック株式会社製:FSC800型)のコンベアーベル
ト上に、シリコン加工を行っていない3斤用食型(1個
の食型の上部内径長さ370mm、上部内径巾110m
m、高さ130mm、下部内径長さ360mm、下部内
径巾105mm、以下食型)を載せて移送しながら、各
離型油脂組成物を食型1個当たりの塗布量が0.5gと
なるように下記の条件で塗布した。
【0019】離型油脂組成物の塗布条件 静電塗油装置の付加電圧:60kV 塗布幅:450mm コンベアースピード:4m/分
【0020】同一の離型油脂組成物を塗布した食型12
個を用い、下記組成の食パン生地を中種法にて作製し、
各々の食型に225gの生地6本を均等に並べ、200
℃のオーブンで40分焼成して12個の3斤食パン(以
下、単に食パンと言う)を作製した。
【0021】食パン生地配合 (中種配合) 強力粉 70 重量部 イースト 2.2重量部 イーストフード 0.1重量部 水 40 重量部 (本捏配合) 強力粉 30 重量部 砂糖 5 重量部 食塩 1.8重量部 脱脂粉乳 2 重量部 マーガリン 8 重量部 水 25 重量部
【0022】上記中種配合物を、ミキサーボールに入
れ、縦型ミキサーによって低速3分、中高速1分で混合
し、最終生地温度24℃とした。この生地を27℃、湿
度75%にて4時間発酵し、食パン用中種生地とした。
【0023】次いで、ミキサーボールに上記本捏配合の
うち、マーガリン以外の材料を入れ、更に上記中種工程
で得た食パン用中種生地をミキサーボールに加え、低速
3分、中高速4分で混合し、更に本捏配合の残りのマー
ガリンを加えて、低速2分、中高速4分で混合して本捏
生地を得た。その後、フロアータイムを20分とり、2
25gづつに分割後、ベンチタイム20分とって成型
し、食型にいれて、38℃、湿度80%で40分間ホイ
ロに入れた。ホイロ後、オーブンにて200℃、40分
焼成して食パンをえた。
【0024】焼成後、直ちに食型をそのままの状態で4
5cmの高さから台上に落下させ、10秒後に天地を反
転させた状態で30cmの高さから台上に食パンを落下
させて、離型性を評価した。また得られた食パンの表面
状態、食パンの風味を評価した。一方、離型油の食型へ
の塗布の均一性を、別途以下の方法で評価した。これら
の結果を表2に示す。また比較例3として、実施例1で
使用した油脂を同量用いて、日本マレット株式会社製4
12S型グリーサーにて、油脂を食型に噴霧し、同様の
試験を行った結果を表2に合わせて示す。
【0025】
【表2】
【0026】離型性:食パンの食型からの離型性は、 ◎・・12個中、全てが離型した。 ○・・12個中、1〜2個が離型しなかった。 △・・12個中、3〜6個が離型しなかった。 ×・・12個中、7個以上が離型しなかった。 として評価した。
【0027】食パンの表面状態:食パン表面が、部分的
に剥離して型に付着している状態(剥離)の有無を観察
し、 ○・・食パンの剥離が全くなく良好。 △・・食パンの表面に若干の剥離はあるもののほぼ良
好。 ×・・食パンの剥離が大きく、不良なもの。 として評価した。
【0028】食パンの風味: ◎・・食パンの風味が損なわれることなく、味や臭いに
異常を感じない。 ○・・食パンの風味が損なわれることなく、味や臭いに
殆ど異常を感じない。 △・・食パンの風味がやや損なわれ、味や臭いに若干異
常を感じる。 ×・・食パンの風味がかなり損なわれ、味や臭いに異常
を感じる。 として評価した。
【0029】塗布の均一性:食型の側面及び底面にロー
ル紙を密着させ、静電塗油装置によって上記と同様にし
て離型油脂組成物を塗布し、塗布状態を目視観察して、 ◎・・側面も底面も離型油脂組成物が均一かつ微細に付
着している。 ○・・側面より底面に若干多く離型油脂組成物が塗布さ
れているが、均一かつ微細に付着している。 △・・側面より底面に離型油脂組成物が若干多く塗布さ
れており、付着粒子も粗く不均一。 ×・・側面にほとんど離型油脂組成物の付着がなく、付
着粒子も粗く不均一。 として評価した。
【0030】総合評価: ◎・・離型性、風味、塗布の均一性において、全ての評
価が◎であり、表面状態が○のもの。 ○・・全ての評価が◎又は○であり、少なくとも離型
性、風味、塗布の均一性に○の評価が1個以上あるも
の。 △・・離型性の評価は◎又は○であり、表面状態、風
味、塗布の均一性の評価は全て△以上であるが、表面状
態、風味、塗布の均一性のいずれかに△の評価が1個あ
るもの。 ×・・離型性の評価が×のもの、あるいは上記◎、○、
△に該当しないもの。 として評価した。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように本発明の製パン静電
塗布離型油脂組成物は、静電塗油装置によって天板や食
型等の表面に、必要最小限度の量の離型油脂組成物を均
一に塗布することができる。また本発明の離型油脂組成
物を静電塗油装置によって塗布した場合、従来のスタン
プ式やスプレー式塗布装置やモップによって塗布した場
合に比べ、離型油の使用量が少なくて済むため、経済的
であるとと共に、塗布量が従来に比して少なくても、焼
成したパン類の天板や食型からの離型性に優れ、パン表
面の状態や風味の良好な製品を得ることができる等の効
果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 隆美 東京都葛飾区堀切4丁目66番1号 ミヨシ 油脂株式会社内 (72)発明者 梶川 芽生 東京都葛飾区堀切4丁目66番1号 ミヨシ 油脂株式会社内 (72)発明者 井山 大士 東京都葛飾区堀切4丁目66番1号 ミヨシ 油脂株式会社内 Fターム(参考) 4B026 DH10 DK05 DX01 4B032 DB01 DK18 DL20 DP51 4H059 BA12 BA17 BA33 BA83 BB02 BB03 BB15 BB22 BB44 BB45 BC03 BC13 DA22 DA30

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 食用油脂を主体とする離型油脂組成物で
    あって、導電率5000〜200000pS/mを有す
    ることを特徴とする製パン用静電塗布離型油脂組成物。
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