JP2001297777A - 高分子電解質型燃料電池 - Google Patents

高分子電解質型燃料電池

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JP2001297777A
JP2001297777A JP2000111750A JP2000111750A JP2001297777A JP 2001297777 A JP2001297777 A JP 2001297777A JP 2000111750 A JP2000111750 A JP 2000111750A JP 2000111750 A JP2000111750 A JP 2000111750A JP 2001297777 A JP2001297777 A JP 2001297777A
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plate
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fuel cell
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JP2000111750A
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English (en)
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Satoru Fujii
覚 藤井
Kazuhito Hado
一仁 羽藤
Junji Niikura
順二 新倉
Hideo Obara
英夫 小原
Kazufumi Nishida
和史 西田
Teruhisa Kanbara
輝壽 神原
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 固体高分子型の燃料電池の構成要素であるセ
パレーター板は、従来、カーボン板を用い、この表面部
分を切削加工して、ガス流通路を形成していた。この方
法では、カーボン板の材料コストと共に、これを切削す
るためのコストを引き下げることが困難であった。これ
に替わり、金属板を用いる方法が考えられるが、金属板
を用いる方法では、金属板が高温で酸化性の雰囲気に曝
されるため、長期間使用すると、金属板の腐食や溶解が
起こり、電池の発電効率が次第に低下するという課題が
あった 【解決手段】 セパレータを構成する金属薄板上に、膜
厚が30以上500Å以下の貴金属または貴金属の導電
部分を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポータブル電源、
電気自動車用電源、家庭内コージェネレーションシステ
ム等に使用される固体高分子電解質型燃料電池システ
ム、特に燃料電池のセパレータの耐久性の改良および低
コスト化に関する。
【0002】
【従来の技術】高分子電解質を用いた燃料電池は、水素
を含有する燃料ガスと空気など酸素を含有する酸化剤ガ
スとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱と
を同時に発生させるものである。この燃料電池は、基本
的には、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質
膜、および高分子電解質膜の両面に形成された一対の電
極、すなわちアノードとカソードから構成される。前記
の電極は、通常、白金族金属触媒を担持したカーボン粉
末を主成分とし、高分子電解質膜の表面に形成される触
媒層およびこの触媒層の外面に形成される、通気性と電
子伝導性を併せ持つ拡散層からなる。
【0003】さらに、電極に供給される燃料ガスおよび
酸化剤ガスが外にリークしたり、二種類のガスが互いに
混合しないように、電極の周囲には高分子電解質膜を挟
んでガスシール材やガスケットが配置される。これらの
シール材やガスケットは、電極及び高分子電解質膜と一
体化してあらかじめ組み立てられる。これをMEA(電
極電解質膜接合体)と呼ぶ。MEAの外側には、これを
機械的に固定するとともに、隣接したMEAを互いに電
気的に直列に、場合によっては並列に、接続するための
導電性のセパレータ板が配置される。セパレータ板のM
EAと接触する部分には、電極面に反応ガスを供給し、
生成ガスや余剰ガスを運び去るためのガス流路が形成さ
れる。ガス流路は、セパレータ板と別に設けることもで
きるが、セパレータ板の表面に溝を設けてガス流路とす
る方式が一般的である。
【0004】これらの溝に燃料ガスおよび酸化剤ガスを
供給するためには、燃料ガスおよび酸化剤ガスをそれぞ
れ供給する配管を、使用するセパレータ板の枚数に分岐
し、その分岐先を直接セパレータ板の溝につなぐ配管治
具が必要となる。この治具をマニホールドと呼び、上記
のような燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給配管から直接
つなぎ込むタイプを外部マニホールドを呼ぶ。このマニ
ホールドには、構造をより簡単にした内部マニホールド
と呼ぶ形式のものがある。内部マニホールドとは、ガス
流路を形成したセパレータ板に、貫通した孔を設け、ガ
ス流路の出入り口をこの孔まで通し、この孔から直接燃
料ガスおよび酸化剤ガスを供給するものである。
【0005】燃料電池は、運転中に発熱するので、電池
を良好な温度状態に維持するために、冷却水等で冷却す
る必要がある。通常、1〜3セル毎に、冷却水を流す冷
却部が設けられる。冷却部をセパレータ板とセパレータ
板との間に挿入する形式と、セパレータ板の背面に冷却
水流路を設けて冷却部とする形式とがあり、後者が多く
利用される。これらのMEAとセパレータ板および冷却
部を交互に重ねて10〜200セル積層し、その積層体
を集電板と絶縁板を介して端板で挟み、締結ボルトで両
端から固定するのが一般的な積層電池の構造である。こ
のような固体高分子電解質型燃料電池では、セパレータ
板は導電性が高く、かつ燃料ガスおよび酸化剤ガスに対
して気密性が高く、さらに水素/酸素を酸化還元する際
の反応に対して高い耐食性を持つ必要がある。このよう
な理由から、従来のセパレータ板は、通常グラッシーカ
ーボンや膨張黒鉛などのカーボン材料で構成され、ガス
流路もその表面の切削や、膨張黒鉛の場合は型による成
型により、作製されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のカーボン板の切
削による方法では、カーボン板の材料コストと共に、こ
れを切削するためのコストを引き下げることが困難であ
った。また、膨張黒鉛を用いた方法も材料コストが高
く、これが実用化のための障害と考えられている。近
年、従来より使用されたカーボン材料に代えて、ステン
レス鋼などの金属板を用いる試みが行われている。
【0007】しかし、上述の金属板を用いる方法では、
金属板が高温においてpH2〜3程度の酸化性の雰囲気
に曝されるため、長期間使用すると、金属板の腐食や溶
解が起こる。金属板が腐食すると、腐食部分の電気抵抗
が増大し、電池の出力が低下する。また、金属板が溶解
すると、溶解した金属イオンが高分子電解質膜に拡散
し、これが高分子電解質膜のイオン交換サイトにトラッ
プされ、結果的に高分子電解質自身のイオン伝導性が低
下する。これらの原因により、金属板をそのままセパレ
ータ板に使用し、電池を長期間運転すると、発電効率が
次第に低下するという問題があった。
【0008】本発明は、燃料電池に使用されるセパレー
タ板を改良して、加工の容易な金属を素材とし、そのガ
スに露出する表面を酸性雰囲気に曝されても化学的不活
性を維持するものとして、腐食と溶解が抑制されかつ良
好な導電性を有するセパレータ板を提供することを目的
とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
め本発明の高分子電解質型燃料電池は、水素イオン伝導
性高分子電解質膜、前記水素イオン伝導性高分子膜を挟
む位置に配置したアノードおよびカソード、前記アノー
ドに燃料ガスを供給するためのガス流路を形成したアノ
ード側導電性セパレータ、および前記カソードに酸化剤
ガスを供給するためのガス流路を形成したカソード側導
電性セパレータを具備した高分子電解質型燃料電池であ
って、前記アノード側またはカソード側導電性セパレー
タの少なくとも一方の表面に、Au、Ru、Rh、P
d、Os、IrおよびPtからなる群より選べれる少な
くとも1種以上の貴金属もしくは前記貴金属の酸化物部
分を配置した金属板からなることを特徴とする。
【0010】このとき、アノード側導電性セパレータま
たはカソード側導電性セパレータの表面で、貴金属もし
くは前記貴金属の酸化物部分を配置した以外の部分を、
耐食性被膜で被覆したことが望ましい。
【0011】また、前記アノード側導電性セパレータま
たは前記カソード側導電性セパレータの表面に形成した
貴金属もしくは前記貴金属の酸化物部分の厚さが、30
Å以上500Å以下であることが有効である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のセパレータ板は、基本的
には、耐食性に優れたAuまたは白金属元素あるいは導
電性貴金属酸化物部分の厚さが30Å以上5000Å以
下で、特に望ましくは30Å以上500Å以下で形成さ
れた金属板から構成される。そして、この金属板は、プ
レス加工などによりガス流路を形成するためのリブない
し溝を有している。
【0013】本発明の好ましいセパレータ板は、燃料ガ
スまたは酸化剤ガスを導くためのリブないし溝を電極に
面する表面に有する前記の加工された金属板と、ガスケ
ットとして働く弾性を有する絶縁性のシートとの組み合
わせから構成される。前記の絶縁性シートは、前記金属
板のリブないし溝と協同して燃料ガスまたは酸化剤ガス
をその供給側から排出側に導くガス流路を形成し、かつ
燃料ガスまたは酸化剤ガスが前記ガス流路から外部に漏
れるのを防止するガスケットとして働く。
【0014】導電性化合物被膜を形成する金属板として
は、ステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどの導電性
に優れ、かつプレス加工などによりガス流通路となるリ
ブないし溝を容易に形成できる金属板が用いられる。
【0015】前記の貴金属からなる被膜を形成するに
は、rfスパッタ法を用いるのが好ましい。しかし、化
学蒸着法やめっき法などによって形成することもでき
る。
【0016】また、前記導電性貴金属酸化物被膜を形成
する方法としては、貴金属酸化物をターゲットとする方
法や、貴金属元素をターゲットととして酸素を含む雰囲
気下でのスパッタ法がそれぞれ好ましい。
【0017】上記の貴金属元素あるいは導電性貴金属酸
化物部分は、他の態様においては、金属板の表面に島状
に配置する。この場合、金属板の導電性化合物被膜が形
成されていない部分には、耐食性被膜が形成されている
ことが好ましい。この島状に被覆する部分の個々の面積
は、少なくとも50オングストローム×50オングスト
ロームであり、その被覆部分全体の占める割合は、面積
比で30%以上であることが好ましい。
【0018】次に、本発明による燃料電池の構成例を図
1〜図5を参照して説明する。ここに用いられた構造図
は理解を容易にするためのものであって、各要素の相対
的大きさや位置関係は必ずしも正確ではない。
【0019】図1は燃料電池積層体の要部を模式的に示
す断面図であり、図2はそのアノード側セパレータ板の
平面図、図3はカソード側セパレータ板の平面図であ
る。
【0020】10は固体電解質膜11と、その両面に接
合されたアノード12及びカソード13、並びにこれら
の周辺部に配されたガスケット14、15などからなる
電極−電解質膜接合体(以下、MEAという)を表す。
このMEAの外側には、アノード側セパレータ板21及
びカソード側セパレータ板31が配置されている。上記
のMEA10及びセパレータ板21、31が単セルを構
成し、これらの単セルが複数個直列に接続されるように
積層されている。この例では、2セル毎にセパレータ板
21と31との間に導電性の金属メッシュ16及びガス
ケット17を挿入して、冷却水を通すための冷却部を構
成してある。
【0021】アノード側セパレータ板21は、図4に示
す金属板22と図5に示す絶縁性シート27とを貼り合
わせて構成したものである。金属板22はプレス加工に
より、アノードに対向する一方の主表面側に突出する複
数のリブ23の配列を中央に有し、左右には流体導入用
開口24a、25a、26aと流体排出用開口24b、
25b、26bを有する。一方、絶縁性シート27は、
シートを打抜き加工して作製したもので、金属板22の
リブ23を有する面に貼り合わせることにより、流体導
入用開口24aから流体排出用開口24bに流体、すな
わち燃料ガスを導く溝28を形成するとともに、アノー
ドに密着させたとき、前記の溝28から燃料ガスが外部
に洩れるのを防止し、さらに開口25a、25b、開口
26a、26bを通る流体が外部に洩れるのを防止する
ガスケットとして機能する。
【0022】セパレータ板21の表面に形成される溝2
8は、金属板22のリブ23とシート27のリブ片29
との組み合わせにより、リブ23の両側に形成される2
つの溝23’が燃料ガスを流通させることになる。
【0023】カソード側セパレータ板31は、図3に示
すように、プレス加工によりカソードに対向する一方の
主表面側に突出する複数のリブ33の配列を中央に有
し、左右には流体導入用開口34a、35a、36aと
流体排出用開口34b、35b、36bを有する金属板
32と、そのリブ33を有する面に貼り合わせた絶縁性
シート37とから構成されている。このカソード側セパ
レータ板31のカソードと対向する表面には、流体導入
用開口36aから流体導出用開口36bに流体、すなわ
ち酸化剤ガスを導く溝38が形成されている。そして、
シート37は、前記の溝38から酸化剤ガスが外部に洩
れるのを防止するとともに、開口34a、35a、開口
34b、35bを通る流体が外部に洩れるのを防止する
ガスケットとして機能する。
【0024】前記の溝38は、金属板32のリブ33と
シート37のリブ片39との組み合わせにより、リブ3
3の間に形成される4つの溝33’が酸化剤ガスを流通
させることとなる。
【0025】このようにプレス加工により複数のリブを
形成した金属板と打抜き加工した絶縁性シートとを組み
合わせてセパレータ板を構成すると、絶縁シートの形状
を変えるのみで、流体通路用溝の大きさを変えることが
できる。
【0026】上記の例では、カソード側セパレータ板3
1の溝38に連なるガス流路であるリブ33の間に形成
される流路の断面積は、アノード側セパレータ板21の
溝28に連なるガス流路であるリブ23の間に形成され
る流路の断面積の3倍である。従って、酸化剤ガスの流
速を燃料ガスのそれより大きくすることができる。
【0027】上の例では、アノード側導電性セパレータ
板およびカソード側導電性セパレータ板は各々独立に作
製されたが、アノード側導電性セパレータ板およびカソ
ード側導電性セパレータ板が1枚のセパレータ板で構成
され、その一方の面側がアノード側導電性セパレータ板
であり、他方の面側がカソード側導電性セパレータ板で
ある構成とすることもできる。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しながら
説明する。
【0029】(実施例1)アセチレンブラックに、平均
粒径約30オングストロームの白金粒子を25重量%担
持した電極触媒を調製した。この触媒粉末のイソプロパ
ノ−ル分散液に、パーフルオロカーボンスルホン酸粉末
のエチルアルコール分散液を混合し、ペースト状にし
た。このペーストをスクリ−ン印刷法により、厚み25
0μmのカ−ボン不織布の一方の面に印刷して電極触媒
層を形成した。得られた触媒層中に含まれる白金量は
0.5mg/cm2、パーフルオロカーボンスルホン酸
の量は1.2mg/cm2となるよう調整した。こうし
てカーボン不織布に触媒層を形成することにより、同じ
構成のアノードおよびカソードを作製した。
【0030】これらの電極を、電極より一回り大きい面
積を有するプロトン伝導性高分子電解質膜の中心部の両
面に、触媒層が電解質膜側に接するようにホットプレス
によって接合して、電極/電解質接合体(MEA)を作
製した。ここで用いたプロトン伝導性高分子電解質膜
は、次式においてx=1、y=2、m=5〜13.5、
n≒1000であるパーフルオロカーボンスルホン酸を
25μmの厚みに薄膜化したものである。また、触媒層
に混合されたパーフルオロカーボンスルホン酸は、前記
電解質膜と同じ化合物である。
【0031】
【化1】
【0032】次に、導電性セパレータ板の作製方法を示
す。図3に示したように、厚さ0.3mmのステンレス
鋼SUS316板の中央部10cm×9cmの領域に、
幅約2.8mm、高さ約1mmのリブ23を5.6mm
ピッチでプレス加工によって形成した。次いで、この表
面にAuをrfマグネトロンスパッタ法により、0.2
μmの厚さに形成した。DCスパッタ装置を用いても問
題はない。ターゲットには、Au金属板を用いた。成膜
条件は、アルゴン雰囲気、rfパワー300W、成膜時
間は85分、基板温度は非加熱から200℃間での温度
範囲とした。なお、基板は、前記の製膜前に逆スパッタ
法によりクリーニングして表面の自然酸化膜を除去した
(以下の実施例においても同じ)。
【0033】同様にして各種の貴金属元素被膜を形成し
た。これらの貴金属元素被膜の成膜条件をそれぞれ表1
に示す。なお、ターゲットはすべて対応する貴金属元素
板を用いた。
【0034】
【表1】
【0035】上記のようにして貴金属元素被膜を形成し
たステンレス鋼からなる金属基板22に、流体導入用開
口24a、25a、26aおよび流体排出用開口24
b、25b、26bを設けた。次いで、金属基板の前記
貴金属元素被膜を形成した面に、図5に示す厚み約1m
mのフェノール樹脂製絶縁性シート27を貼り合わせて
アノード側セパレータ板21を作製した。同様に処理し
た金属基板32に、流体導入用開口34a、35a、3
6aおよび流体排出用開口34b、35b、36bを形
成し、前記貴金属元素被膜を形成した面に、厚み約1m
mのフェノール樹脂製絶縁性シート37を貼り合わせて
カソード側セパレータ板31を作製した。
【0036】これらのセパレータ板を上記のMEAに組
み合わせて50セルを積層し、この積層セルを集電板と
絶縁板を介し、ステンレス鋼製の端板と締結ロッドで、
20kgf/cm2の圧力で締結した。この締結圧力
は、小さすぎるとガスがリークし、導電性部材同士の接
触抵抗も大きくなるので電池性能が低くなる。また、締
結圧力が大きすぎると電極が破損したり、セパレータ板
が変形したりするので、ガス流通溝の設計に応じて締結
圧を変えることが重要である。
【0037】なお、ガスケットとMEA、セパレータ板
とセパレータ板、ガスケットとセパレータ板などのガス
シールが必要な部分は、シリコーングリースを薄く塗布
することによってあまり導電性を低下させずにシール性
を確保した。
【0038】ここで、貴金属は高価な材料である。従っ
て、燃料電池の低コスト化のためには、貴金属元素被膜
の膜厚が小さいことが必要である。そこで、Au被膜に
ついて、接触抵抗値の膜厚依存性を検討した。その結果
を図6に示す。測定は、両面に貴金属被膜を形成した厚
さ5mmのステンレス円盤を両方向からカーボンペーパー
で挟み、エアーシリンダーで圧力を印可する事により行
った。比較例として、貴金属元素被膜を形成していない
ステンレス円盤のみの接触抵抗値も示した。
【0039】膜厚の増加とともに接触抵抗値は減少し
た。燃料電池のセパレータとして使用するためには、2
0kgf/cm2の圧力において、接触抵抗値が10mΩ
・cm2以下であることが必要である。膜厚が30Å以上の
場合には、この条件を満たすことができる。一方、膜厚
500Å以上では、接触抵抗値はほぼ一定値に収束し、
これ以上の膜厚では接触抵抗値の低下は認められなかっ
た。従って、コストを考えると30Å以上5000Å以
下、好ましくは30Å以上500Å以下が適当であると
考えられる。
【0040】本実施例では、Auによる膜厚200Åの
貴金属元素被膜を形成した。ここでは表面処理をしない
ステンレス鋼SUS316板よりなるセパレータ板を用
いた燃料電池を比較例として性能を比較した。実施例お
よび比較例の燃料電池を、85℃に保持し、アノード側
に83℃の露点となるよう加湿・加温した水素ガスを、
またカソード側に78℃の露点となるように加湿・加温
した空気をそれぞれ供給した。その結果、電流を外部に
出力しない無負荷時には、50Vの開路電圧を示した。
これらの電池を燃料利用率80%、酸素利用率40%、
電流密度0.5A/cm2の条件で連続発電試験を行
い、出力特性の時間変化を図6に示した。その結果、比
較例1の電池は時間の経過と共に出力が低下するのに対
し、実施例1の電池は、8000時間以上にわたって約
1200W(25V−48A)の電池出力を維持した。
【0041】上記と同様の運転条件において、他の貴金
属元素被膜を有する金属セパレータ板を用いた電池につ
いて、初期(運転開始10時間後)および運転時間が8
000時間経過したときの電池出力を調べた。その結果
を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】本実施例では、ガス流通溝が複数の平行な
直線の場合を示したが、ガス導入側開口からガス排出側
開口を繋ぐガス流通溝の途中に複数の湾曲部を設けた
り、巻き貝の殻のように中央部のマニホルド孔と外側の
マニホルド孔とを渦巻き状のガス流通溝で繋ぐ構造など
様々な変形が可能である。
【0044】また、本実施例においては、セパレータ板
の金属基板として、SUS316を用いたが、他のステ
ンレス鋼やAl、Tiなども用いることができる。
【0045】(実施例2)本実施例では、セパレータ板
の金属基板上に、貴金属元素被膜を島状に形成した。成
膜時間を0.2〜1分とした点を除いては、実施例1と
同様の条件で、島状の貴金属元素被膜2を金属基板1上
に作製した。前記の島状の個々の貴金属元素被膜2の面
積は0.04mm2であり、それら全体の占める割合は
面積比で50%である。以上のように作製したものは、
この状態でも導電性セパレータ板として使用可能であ
る。しかしながら、さらに、空気中において250℃で
1時間程度熱処理を行った。その結果、島状の貴金属元
素被膜に覆われていない部分は、金属酸化物からなる耐
食性被膜4が成長した。例えば、Alを金属基板とした
場合には酸化アルミニウム被膜が、Tiを金属基板とし
た場合には酸化チタン被膜がそれぞれ耐食性被膜として
成長する。また、ステンレス鋼を金属基板として用いた
場合には、硝酸などの化学処理を行うことにより酸化ク
ロム被膜が耐食性被膜として成長する。これらの耐食性
被膜によりセパレータ板の金属基板の耐薬品性が大幅に
向上する。
【0046】上記のように表面処理した金属基板をセパ
レータ板に用いて実施例1と同様の燃料電池を組み立
て、実施例1と同じく、燃料電池を85℃に保持し、ア
ノード側に83℃の露点となるよう加湿・加温した水素
ガスを、カソード側に78℃の露点となるように加湿・
加温した空気をそれぞれ供給し、燃料利用率80%、酸
素利用率40%、電流密度0.5A/cm2の条件で連
続発電試験を行った。金属基板、貴金属元素被膜、およ
び耐食性被膜の種類と、初期(運転開始10時間後)お
よび運転時間が8000時間経過したときの電池出力の
関係を表3に示す。耐食性被膜を導入することにより、
出力電圧の経時変化を小さくすることが可能となった。
【0047】
【表3】
【0048】(実施例3)本実施例は、実施例1の構成
において、貴金属元素被膜を導電性貴金属元素の酸化物
を用いた以外は、同様にして実施した。表4に導電性貴
金属酸化物被膜の作製方法を示した。酸化物を形成する
ために、ArとO2の混合ガスを用いた反応性スパッタ
法により形成した。
【0049】
【表4】
【0050】実施例1と同様の運転条件において、導電
性貴金属酸化物被膜を有する金属セパレータ板を用いた
電池について、初期(運転開始10時間後)および運転
時間が8000時間経過したときの電池出力を調べた。
その結果を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】(実施例4)本実施例は、実施例2の構成
において、島状貴金属元素被膜を島状導電性貴金属酸化
物を用いた以外は、同様にして実施した。導電性貴金属
酸化物被膜の作製方法は、成膜時間が2分であることを
除いては、実施例3と同様にして行った。
【0053】実施例2と同様の運転条件において、導電
性貴金属酸化物被膜を有する金属セパレータ板を用いた
電池について、初期(運転開始10時間後)および運転
時間が8000時間経過したときの電池出力を調べた。
その結果を表6に示す。
【0054】
【表6】
【0055】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、セパレー
タ板として従来のカーボン板の切削工法に替わり、ステ
ンレス鋼などの金属材料を切削加工しないで用いること
ができるので、量産時に大幅なコスト低減が図れる。ま
た、セパレータ板を一層薄くできるので、積層電池のコ
ンパクト化に寄与する。さらに、セパレータ板の金属基
板上に貴金属元素被膜、あるいは導電性貴金属酸化物被
膜を形成することにより、金属基板の耐食性が向上する
ために、燃料電池の長期駆動における出力安定性を向上
することができる。また、貴金属元素被膜あるいは導電
性貴金属酸化物被膜の膜厚が30Å以上5000Å以
下、好ましくは30Å以上500Å以下と非常に薄い膜
厚のためにのために低コスト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における燃料電池の要部を模式
的に表す断面図
【図2】同燃料電池のアノード側セパレータ板の平面図
【図3】同燃料電池のカソード側セパレータ板の平面図
【図4】アノード側セパレータ板を構成する金属板の平
面図
【図5】アノード側セパレータ板を構成する絶縁性シー
トの平面図
【図6】貴金属元素被膜の膜厚と接触抵抗値の関係を示
した図
【図7】本発明の実施例1および比較例の燃料電池の出
力特性を示した図
【符号の説明】
1 金属板 2 貴金属元素被膜あるいは導電性貴金属酸化物被膜 3 耐食性被膜 10 MEA 11 固体電解質膜 12 アノード 13 カソード 14,15,17 ガスケット 16 金属メッシュ 21 アノード側セパレータ板 22,32 金属板 23,33 リブ 24a,25a,26a,34a,35a,36a 流
体導入用開口 24b,25b,26b,34b,35b,36b 流
体排出用開口 27,37 絶縁性シート 28,38 溝 29,39 リブ片 31 カソード側セパレータ板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新倉 順二 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 小原 英夫 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 西田 和史 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 神原 輝壽 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5H026 AA06 BB04 CC03 CC08 EE02 EE12 HH03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水素イオン伝導性高分子電解質膜、前記水
    素イオン伝導性高分子膜を挟む位置に配置したアノード
    およびカソードに、前記アノードに燃料ガスを供給する
    ためのガス流路を形成したアノード側導電性セパレー
    タ、および前記カソードに酸化剤ガスを供給するための
    ガス流路を形成したカソード側導電性セパレータを具備
    した高分子電解質型燃料電池であって、前記アノード側
    またはカソード側導電性セパレータの少なくとも一方
    は、表面に、Au、Ru、Rh、Pd、Os、Irおよ
    びPtからなる群より選べれる少なくとも1種以上の貴
    金属もしくは前記貴金属の酸化物部分を配置した金属板
    からなることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
  2. 【請求項2】アノード側導電性セパレータまたはカソー
    ド側導電性セパレータの表面で、貴金属もしくは前記貴
    金属の酸化物部分を配置した以外の部分を、耐食性被膜
    で被覆したことを特徴とする請求項1記載の高分子電解
    質型燃料電池。
  3. 【請求項3】前記アノード側導電性セパレータまたは前
    記カソード側導電性セパレータの表面に形成した貴金属
    もしくは前記貴金属の酸化物部分の厚さが、30Å以上
    500Å以下であることを特徴とする請求項1または2
    記載の高分子電解質型燃料電池。
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