JP2001294965A - 圧壊性に優れたアルミニウム合金板及びそれを使用した部材の製造方法 - Google Patents
圧壊性に優れたアルミニウム合金板及びそれを使用した部材の製造方法Info
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Abstract
優れていると共に、高い強度を有する圧壊性に優れたア
ルミニウム合金板及びそれを使用した部材の製造方法を
提供する。 【解決手段】 アルミニウム合金板は、Si:0.4乃
至0.8質量%、Mg:0.4乃至0.8質量%、F
e:0.3質量%以下、Mn:0.3質量%以下を含有
し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成を有
し、圧延方向と平行な板厚方向断面における結晶粒の板
厚方向の粒径を[rt]とし、結晶粒の圧延方向の粒径
を[rl]とするとき、[rt]の平均値が100μm以
下であると共に、[rl]と[rt]との比[rl]/
[rt]の平均値が2以上である。このアルミニウム合
金板を所定の形状にプレス成形した後、人工時効処理し
て耐力を230MPa以上とする。
Description
バー等に使用される圧壊性に優れたアルミニウム合金板
及びそれを使用した部材の製造方法に関し、特に、成形
性が優れ、且つ強度が高く、衝突等により衝撃が加わっ
たときに破断せずに変形しやすい圧壊性に優れたアルミ
ニウム合金板及びそれを使用した部材の製造方法に関す
る。
材には、軽量化の要求により鋼材に替わってアルミニウ
ム合金材の使用が検討されつつある。
成形性のいずれについても、比較的良好なJIS 60
00系アルミニウム合金が注目されており、この600
0系アルミニウム合金の押出し型材を使用したフレーム
構造が検討されている。また、6000系アルミニウム
合金からなる板材が自動車の外板パネルに採用されつつ
ある。
ペースの増加の要求等から、自動車の制約された空間内
に部材を配置しなければならなくなっている。その反
面、安全面での基準も厳しくなっており、従来以上に衝
突時の衝撃を吸収するように部材には圧壊性の向上も求
められている。
る部材を配置しなければならなくなってきており、複雑
な形状に加工することができ、且つ高い強度を有し、更
に圧壊性にも優れた自動車用部材が必要とされている。
0系アルミニウム合金材としては、例えば、自動車のパ
ネル材として使用されるアルミニウム合金板材が特開昭
62−278245号公報に開示されている。また、自
動車のフレームに使用される押出し材が特開平6−25
783号公報及び特開平9−256096号公報に開示
されている。
金の凝固速度を制御して晶出物の形状を制御し、耐衝撃
性を高めたアルミニウム合金板が特開平9−26386
9号公報に開示されている。
6−25783号公報及び特開平9−256096号公
報に開示されている押出し材は衝撃吸収性が優れている
ものの、押出し材は形状の制約があり、押出した後、更
に複雑な形状の部材に加工することが困難であるという
問題点がある。
開示されているパネル材に使用されるアルミニウム合金
板材を使用して成形した自動車部材では、圧壊性が十分
ではないという問題点がある。このように、自動車部材
として、適性なアルミニウム合金材はこれまで存在しな
かった。
示されているアルミニウム合金板は、熱間圧延加工後に
冷間加工を施すものであり、結晶粒は等軸粒になってい
る。従って、衝撃時にアルミニウム合金板にかかる荷重
をうまく分散することができないため、充分な圧壊性が
得られないという問題点がある。
のであって、複雑な形状に加工することができ、圧壊性
が優れていると共に、高い強度を有する圧壊性に優れた
アルミニウム合金板及びそれを使用した部材の製造方法
を提供することを目的とする。
性に優れたアルミニウム合金板は、Si:0.4乃至
0.8質量%、Mg:0.4乃至0.8質量%、Fe:
0.3質量%以下、Mn:0.3質量%以下を含有し、
残部が不可避的不純物及びAlからなる組成を有し、圧
延方向と平行な板厚方向断面における結晶粒の板厚方向
の粒径を[rt]とし、前記結晶粒の前記圧延方向の粒
径を[rl]とするとき、[rt]の平均値が100μm
以下であると共に、前記[rl]と前記[rt]との比
[rl]/[rt]の平均値が2以上であることを特徴と
する。圧壊性とは、部材に衝撃が加わったときに、部材
が破断等を起こさずに衝撃を吸収しながら、変形する特
性のことをいう。
ニウム合金部材の製造方法は、Si:0.4乃至0.8
質量%、Mg:0.4乃至0.8質量%、Fe:0.3
質量%以下、Mn:0.3質量%以下を含有し、残部が
不可避的不純物及びAlからなる組成を有し、圧延方向
と平行な板厚方向断面における結晶粒の板厚方向の粒径
を[rt]とし、前記結晶粒の前記圧延方向の粒径を
[rl]とするとき、[r t]の平均値が100μm以下
であると共に、前記[rl]と前記[rt]との比
[rl]/[rt]の平均値が2以上であるアルミニウム
合金板を所定の形状にプレス成形した後、人工時効処理
を施し、耐力が230MPa以上である部材を製造する
ことを特徴とする。
ニウム合金部材の製造方法は、Si:0.4乃至0.8
質量%、Mg:0.4乃至0.8質量%、Fe:0.3
質量%以下、Mn:0.3質量%以下を含有し、残部が
不可避的不純物及びAlからなる組成を有するアルミニ
ウム合金板を所定の形状にプレス成形した後、人工時効
処理を施し、圧延方向と平行な板厚方向断面における結
晶粒の前記板厚方向の粒径を[rt]とし、前記結晶粒
の前記圧延方向の粒径を[rl]とするとき、[rt]の
平均値が100μm以下であると共に、前記[rl]と
前記[rt]との比[rl]/[rt]の平均値が2以上
であり、耐力が230MPa以上である部材を製造する
ことを特徴とする。
成及び結晶粒の形態を適切に制御することにより、前述
の本発明の課題を解決したものである。
する。本発明においては、特許請求の範囲の組成と結晶
粒の形態を有するアルミニウム合金板を、自動車用骨格
部材のような所定の形状にプレス成形し、その後、人工
時効処理して耐力が230MPa以上である部材を製造
する。これにより、プレス成形時は耐力が低くて成形し
やすく、プレス成形後に人工時効処理を施して耐力を向
上させることにより所定の強度を得ることができる。ま
た、本発明においては、結晶粒の形態はプレス成形が人
工時効処理前ではなく、その後に所定の範囲に入ればよ
い。
ミニウム合金板の組成及び結晶粒形態の限定理由並びに
本発明の圧壊性に優れたアルミニウム合金部材の製造方
法における数値限定理由について詳細に説明する。
相を形成し、この化合物相が析出して強度を高める。し
かし、Mg2Si等の化合物相及びSi相は鋳造時及び
溶体化焼入れ処理時に、粗大な粒子として晶出又は析出
して微小な破壊の起点として働くため、圧壊性を大きく
低下させる。
量に依存する。Siの含有量が0.4質量%未満では十
分な強度を得ることができない。一方、Siの含有量が
0.8質量%を超えると、鋳造時及び焼入れ処理時に粗
大粒子として晶出又は析出し、圧壊性が著しく低下す
る。従って、Siの含有量は0.4乃至0.8質量%と
する。
相を形成し、この化合物相が析出して強度を高める。し
かし、Mg2Si等の化合物相は鋳造時及び溶体化焼入
れ処理時に、粗大な粒子として晶出又は析出して微小な
破壊の起点として働くため、圧壊性を大きく低下させ
る。
の含有量に依存する。Mgの含有量が0.4質量%未満
では、十分な強度を得ることができない。一方、Mgの
含有量が0.8質量%を超えると、鋳造時及び焼入れ処
理時に粗大粒として晶出又は析出し、圧壊性が著しく低
下する。従って、Mgの含有量は0.4乃至0.8質量
%とする。
量%以下 Fe及びMnは均質化熱処理時に分散粒子を形成し、結
晶粒を微細且つ伸長粒化させ、これにより圧壊性の向上
に寄与する。しかし、Fe及びMnが過剰に添加される
と粗大な化合物相を形成し、この化合物相が微小な破壊
の起点として働くため、成形性を低下させると共に、圧
壊性も低下させる。従って、Feの含有量を0.3質量
%以下とし、Mnの含有量を0.3質量%以下とする。
晶粒の板厚方向の粒径を[rt ]とし、結晶粒の圧延方
向の粒径を[rl ]とするとき、[rt ]の平均値が10
0μm以下 図1は本発明の結晶粒組織の位置を示す模式図である。
図1に示すように、アルミニウム合金板1の圧延方向L
と平行な板厚方向断面をAとする。この断面Aにおい
て、1つの結晶粒gの板厚方向tにおける結晶粒径を
[rt]とし、圧延方向Lにおける結晶粒径を[rl]と
する。JIS 6000系アルミニウム合金(Al−M
g−Si系合金)においては、人工時効処理を加えた場
合に、結晶粒界に粗大に析出した粒界析出物及び結晶粒
界に沿って形成された無析出物帯(以下、PFZ:Prec
ipitation Free Zoneという)が微小な破壊の起点及
び破壊の伝播を助長する点として働くため、粒界に沿っ
て破壊が進展しやすい。従って、これらの粒界析出及び
PFZの状態と共に、結晶粒形態も圧壊性に大きく影響
する。即ち、板厚方向tにおける結晶粒径[rt]が1
00μmを超える粗大な結晶粒が存在する場合には、こ
の粒界に沿って板厚方向tに破壊が進展しやすくなり、
圧壊性が低下する。従って、圧延方向と平行な板厚方向
断面における[rt]の平均値は100μm以下とす
る。
の平均値は大きい方が望ましい。しかし、[rl]/
[rt]の平均値が2以上であれば良好な圧壊性を具備
させることができる。従って、[rl]/[rt]の平均
値を2以上とする。なお、本発明の結晶粒組織は、圧延
及び溶体化処理後に生じたものであり、押出し材で生じ
るような繊維状組織とは異なる。
前において耐力が低い方が好ましい。一方、自動車骨格
部材等として使用する部材としては、所定の強度が必要
なため、プレス成形後に人工時効処理を施し、耐力を2
30MPa以上とする。
耐力が本発明の範囲を満たすような条件であれば、特
に、制限されるものではなく、当業者が適宜選択するこ
とができ、180℃乃至230℃の温度範囲で1乃至1
0時間処理することが好ましい。
合金板及び本発明方法により製造した圧壊性に優れたア
ルミニウム合金部材の実施例について、その特性を比較
例と比較して具体的に説明する。
ルミニウム合金を溶解鋳造した後、540℃の温度で4
時間の条件で均質化処理を施し、そのまま引き続いて終
了温度が260℃乃至320℃で、圧延上がりの板厚が
2.5mmとなるように熱間圧延を行ない、更に、10
0℃/分以上の加熱速度で加熱し、520乃至550℃
の温度で4秒以内保持した後、100℃/分以上の冷却
速度で常温まで冷却し溶体化焼入れした。なお、本発明
の結晶粒の形態とするためには、熱間圧延の条件(熱間
加工の加工率又は終了温度等)を適宜選択すればよく、
例えば熱間圧延の圧延率が95%を超える場合には、熱
間圧延終了温度を260乃至350℃とすればよい。ま
た、比較例No.10及び11は熱間圧延した後、上述の
溶体化焼入れ処理を施し、更に、熱処理圧延率50%の
冷間圧延を施し、厚さが2.5mmのアルミニウム合金
板とした。比較例No.14は熱間圧延終了温度を380
℃として圧延を行なった。比較例No.15は500℃未
満の温度で均質化処理を行なった。
織を観察し、圧壊性及び耐力を調べた。更に、自動車骨
格部材として通常要求される溶接性について調べた。
たアルミニウム合金板1の圧延方向Lと平行な板厚方向
断面Aに電解エッチングを施した後、光学顕微鏡を使用
して、50倍の倍率で板厚×0.1mmの範囲を10視
野観察し、この断面Aの板厚方向tにおける[rt]の
平均値を測定した。更に、この断面Aの圧延方向Lにお
ける結晶粒径と板厚方向tにおける結晶粒径との比[r
l]/[rt]の平均値を測定した。このアルミニウム合
金板板の結晶粒径[rt]及び結晶粒径比[rl]/[r
t]を表2に示す。
mの上述の人工時効処理を施す前のアルミニウム合金板
(ブランク)を使用し、直径が100mmでパンチ角半
径が10mmの円筒ポンチにより絞り高さを22mmと
して成形試験を行い、プレス成形性を評価した。プレス
成形性の評価については、成形可能であったものを○、
ネッキング又は割れが発生したものを×とした。
重が加わったときに、部材に割れが生じることなく変形
する特性であり、圧壊性が良好な部材は割れが生じるこ
となく蛇腹状に変形することである。即ち、部材がほぼ
180°に折りたたんだような形態に変形することであ
る。従って、静的な180°曲げ試験により圧壊性の評
価が可能である。
°曲げ試験を行ない、圧壊性を評価した。圧壊性の評価
については、割れが生じなかったものを○とし、破断し
たものを×とした。
づいて引張試験を行い、0.2%耐力を求め、これを耐
力とした。なお、圧壊性の評価及び引張試験を行う前に
試験片に190℃の温度で2時間の条件で熱処理を施し
た。
が180A、溶接電圧が23V、溶接速度が85cm/
分の条件で突き合わせ溶接を行ない、その後溶接部断面
の光学顕微鏡観察を行ないミクロ割れの有無を調べ、こ
れを評価した。溶接性の評価については、ミクロ割れの
ない良好な継手が得られたものを○とし、ミクロ割れが
発生したものを×とした。これらの結果を表3に示す。
る実施例No.1乃至5は、成形試験、180°曲げ試
験、0.2%耐力及び溶接性がいずれも良好な結果であ
り、優れたプレス成形性、圧壊性、強度及び溶接性を得
ることができた。
明の上限値を超えているため、180°曲げ試験で割れ
が生じ、圧壊性が劣った。また、溶接性が劣った。
限値未満であるため、0.2%耐力が低く強度が不十分
であった。また、[rt]の平均値が本発明の上限値を
超えているため、180°曲げ試験で割れが生じ、圧壊
性が劣った。更に、[rl]/[rt]の平均値が本発明
の下限値未満であるため、圧壊性が劣った。更にまた、
溶接性が劣った。
限値未満であるため、0.2%耐力が低く強度が不十分
であった。また、プレス成形性も劣った。
限値を超えているため、プレス成形性が劣った。
成及び[rt]の平均値は本発明の範囲内にあるが、
[rl]/[rt]の平均値が本発明の下限値未満である
ため、180°曲げ試験で割れが生じ、圧壊性が劣っ
た。
成及び[rt]の平均値は本発明の範囲内にあるが、
[rl]/[rt]の平均値が本発明の下限値未満である
ため、180°曲げ試験で割れが生じ、圧壊性が劣っ
た。
上限値を超えているので、180°曲げ試験で割れが生
じ、圧壊性が劣った。また、プレス成形性も劣った。
上限値を超えているので、180°曲げ試験で割れが生
じ、圧壊性が劣った。また、0.2%耐力が低く強度が
不十分であり、プレス成形性も劣った。
の上限値を超え、[rl]/[rt]の平均値が本発明の
下限値未満であるため、180°曲げ試験で割れが生
じ、圧壊性が劣った。
が不十分であり、プレス成形性が劣った。
合金組成及び結晶粒の形態を適正に制御することによ
り、自動車骨格部材に好適な優れたプレス成形性及び強
度を有し、特に、圧壊性が優れたアルミニウム合金板を
得ることができる。また、このアルミニウム合金板を使
用することにより、従来にない高い強度を有し、圧壊性
が優れた自動車骨格部材を得ることができる。
る。
Claims (3)
- 【請求項1】 Si:0.4乃至0.8質量%、Mg:
0.4乃至0.8質量%、Fe:0.3質量%以下、M
n:0.3質量%以下を含有し、残部が不可避的不純物
及びAlからなる組成を有し、圧延方向と平行な板厚方
向断面における結晶粒の板厚方向の粒径を[rt]と
し、前記結晶粒の前記圧延方向の粒径を[rl]とする
とき、[rt]の平均値が100μm以下であると共
に、前記[r l]と前記[rt]との比[rl]/[rt]
の平均値が2以上であることを特徴とする圧壊性に優れ
たアルミニウム合金板。 - 【請求項2】 Si:0.4乃至0.8質量%、Mg:
0.4乃至0.8質量%、Fe:0.3質量%以下、M
n:0.3質量%以下を含有し、残部が不可避的不純物
及びAlからなる組成を有し、圧延方向と平行な板厚方
向断面における結晶粒の板厚方向の粒径を[rt]と
し、前記結晶粒の前記圧延方向の粒径を[rl]とする
とき、[rt]の平均値が100μm以下であると共
に、前記[r l]と前記[rt]との比[rl]/[rt]
の平均値が2以上であるアルミニウム合金板を所定の形
状にプレス成形した後、人工時効処理を施し、耐力が2
30MPa以上である部材を製造することを特徴とする
圧壊性に優れたアルミニウム合金部材の製造方法。 - 【請求項3】 Si:0.4乃至0.8質量%、Mg:
0.4乃至0.8質量%、Fe:0.3質量%以下、M
n:0.3質量%以下を含有し、残部が不可避的不純物
及びAlからなる組成を有するアルミニウム合金板を所
定の形状にプレス成形した後、人工時効処理を施し、圧
延方向と平行な板厚方向断面における結晶粒の前記板厚
方向の粒径を[rt]とし、前記結晶粒の前記圧延方向
の粒径を[rl]とするとき、[rt]の平均値が100
μm以下であると共に、前記[rl]と前記[rt]との
比[rl]/[rt]の平均値が2以上であり、耐力が2
30MPa以上である部材を製造することを特徴とする
圧壊性に優れたアルミニウム合金部材の製造方法。
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