JP2001293748A - 射出成形プロセスシミュレーション装置および形状精度予測方法 - Google Patents

射出成形プロセスシミュレーション装置および形状精度予測方法

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JP2001293748A
JP2001293748A JP2000109815A JP2000109815A JP2001293748A JP 2001293748 A JP2001293748 A JP 2001293748A JP 2000109815 A JP2000109815 A JP 2000109815A JP 2000109815 A JP2000109815 A JP 2000109815A JP 2001293748 A JP2001293748 A JP 2001293748A
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Kaoru Okidaka
馨 沖高
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成形時の温度および圧力因子の影響を、樹脂
の粘弾性的な性質や成形品と金型の接触面での型拘束な
どの影響を考慮して、成形品形状を求めることができる
形状精度予測方法を提供する 【解決手段】 樹脂の粘弾性的特性および型拘束を考慮
した構造解析では、解析時間刻みΔt毎の成形品の任意
の場所における温度Tnを求め(S33、S34)、P
VT状態方程式から時刻t=t+Δtでの比容積Vn
得る(S35)。樹脂の等方性収縮を仮定し、時間刻み
Δtでの比容積変化(Vn−V0)から線膨張係数αn
計算する(S36)。この線膨張係数αnにより、温度
変化ΔTに対する熱収縮歪みを求め(S37)、接触を
含む粘弾性解析を実施して応力分布を求める(S3
8)。さらに、応力分布から静水圧分布Pnを計算し
(S39)、次ステップでのPVT状態方程式での比容
積の計算での圧力Pとして用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形法におけ
る成形品の形状精度を高めるために、金型の設計、成形
条件などの最適な設定を支援する射出成形プロセスシミ
ュレーション装置および形状精度予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、プラスチック射出成形における成
形品の形状精度を高めるために、金型の設計および成形
条件などの最適な設定を支援する各種解析システムが利
用されている。
【0003】例えば、金型内の溶融樹脂の最適な冷却を
予測するための伝熱解析システム、溶融樹脂の充填保圧
冷却過程における圧力、温度分布などを予測するための
流動解析システム、金型や成形品の強度、成形収縮に伴
う変形量を予測するための構造解析システムなどが知ら
れている。
【0004】これらの解析システムは、モデル化された
金型および樹脂流路形状についての有限要素法、境界要
素法などの数値解析法により、それぞれの状況に応じて
個別にあるいは組み合わせて使用される。
【0005】射出成形品の形状精度予測を行った先行技
術として、例えば、特公平6−22840号公報に記載
の「成形プロセスシミュレーション」、特開平5−16
9506号公報に記載の「成形過程シミュレーション方
法およびその装置」および特開平6−55597号公報
に記載の「射出成形プロセスシミュレーション方法およ
びその装置」が知られている。
【0006】プラスチックレンズ成形品を対象とした、
特公平6−22840号公報に記載の「成形プロセスシ
ミュレーション」には、溶融樹脂の充填保圧冷却過程
で、体積収縮を補う樹脂の補給が途絶える時点における
温度分布を、初期温度分布として構造解析に入力し、成
形品が一様に室温になるまでの冷却過程の温度変化を熱
荷重として弾性的な熱応力解析を行って形状精度を得る
ことが示されている。
【0007】特開平5−169506号公報に記載の
「成形過程シミュレーション方法およびその装置」およ
び特開平6−55597号公報に記載の「射出成形プロ
セスシミュレーション方法およびその装置」では、充填
解析手段、保圧流動解析手段、冷却解析手段を順次行っ
て射出成形プロセス中の成形樹脂の圧力、温度変化、比
容積変化を計算することにより、樹脂圧力が大気圧ある
いは離型時の比容積と室温時の比容積から収縮歪みを算
出して構造解析を実施することで成形品の反り、ヒケな
どの形状精度を予測する方法が示されている。
【0008】ここで、最終的な成形品の形状精度を求め
るために従来から行われている構造解析の方法では、充
填保圧冷却過程での溶融樹脂が熱変形温度、固化温度、
流動停止温度まで冷却された時点、あるいは体積収縮を
補う樹脂の補給が途絶えた時点を収縮開始点と定め、こ
の時点における温度分布のみを用いて成形品が一様に室
温になるまでの冷却過程の温度変化を熱荷重として弾性
的な熱応力解析を実施する、あるいは、温度分布と圧力
分布の両方を用いてPVT状態方程式から室温までの収
縮歪あるいは線膨張係数を計算し、構造解析に入力して
弾性的な熱応力解析を実施することで行っていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、プラス
チック光学素子のような高精度な形状精度を解析により
予測するためには、前述した収縮開始点と室温間の収縮
歪に基づき、弾性的な性質だけを考慮した解析を行った
だけでは不十分であり、成形品の温度因子に着目した樹
脂の粘弾性的な性質や、成形時の圧力因子の影響、金型
内での拘束の影響、収縮の異方性などの要因を考慮する
必要がある。
【0010】例えば、プラスチックレンズ成形品につい
ては、射出成形法では一般にゲート側の圧力が反ゲート
側よりも高くなり樹脂流れ方向に圧力分布を持つため、
光学面に“アス・クセ”と呼ばれる形状精度不良が生じ
る。また、長尺なトーリックレンズのような形状におい
ては、そり変形や光学形状精度に大きく影響する。
【0011】ここで、TMAなどの測定法による線膨張
係数の温度依存性を含めた測定結果や、PVT状態方程
式から求まる比容積から線膨張係数あるいは熱収縮歪を
求めて構造解析によりプラスチック成形品の形状精度を
求める従来の方法は、充填保全冷却過程での収縮開始点
における圧力、温度分布と室温間での線膨張係数あるい
は熱収縮歪により弾性的な構造解析を行う方法であり、
線膨張係数あるいは熱収縮歪の圧力、温度依存性につい
ては、主として温度依存性のみが考慮されてきた。
【0012】しかし、上述のプラスチックレンズ成形品
のように形状精度が温度のみならず圧力による影響を大
きく受けている事は明らかである。さらに、PVT状態
方程式から求まる比容積から線膨張係数を算出する際、
樹脂では等方性収縮を仮定した計算が行われている例が
多く、実際には流れ方向により収縮率が異なる異方性収
縮する事が知られており、これを考慮する必要がある。
【0013】また、成形品の形状精度は成形開始時から
成形品取り出し時までの時間並びにその間の冷却勾配に
より大きく変化することが知られており、一般にプラス
チック部品では、冷却時間が短い場合よりも長い場合の
方が、そして冷却勾配が小さい方がそり変形などの形状
精度がよいことが知られている。これは、樹脂がよく知
られているようにクリープや応力緩和に代表される粘弾
性的な性質を持つ材料であることに起因し、金型内でよ
り高い温度でより長く保持されることで成形品内の内部
応力が緩和されることによる。
【0014】さらに、樹脂が金型内で冷却固化する時、
成形品は金型に拘束されて自由収縮が妨げられ内部応力
が蓄積された部分が多く存在する。そして、金型内のこ
のような拘束された部分では、他の拘束されない部分と
比べて応力のレベルや時間変化の程度が異なり、成形品
が取り出された時点で、例えばスプリングバックのよう
な応力の解放に伴う変形が生じる。
【0015】以上のような要因を持つ成形品の形状精度
をより精度よく求める場合には、上述した溶融樹脂の充
填保圧冷却過程でのある時点を収縮開始点として、それ
以降樹脂が常温に達するまでの圧力、温度変化を熱収縮
歪あるいは線膨張係数として弾性的な熱応力解析を実施
して求める方法だけでは形状精度が時間に依存して変化
する事などの現象の説明ができず不十分であり、これら
は上述した金型内での拘束やクリープ、応力緩和に代表
される樹脂の粘弾性的な性質の要因を考慮した上での解
析が不可欠である。
【0016】そこで、本発明は、プラスチック光学素子
のような高精度な形状精度が要求される成形品に対し
て、特に成形時の温度・圧力因子の影響を、樹脂の粘弾
性的な性質や成形品と金型の接触面での型拘束などの影
響とともに考慮して、成形品の形状精度を求める事がで
きる射出成形プロセスシュミレーション装置および形状
精度予測方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の請求項1に記載の射出成形プロセスシミュ
レーション装置は、金型の伝熱解析を行う伝熱解析手段
と、金型内の溶融樹脂の充填保圧挙動の熱流体解析を行
う流動解析手段と、成形品および金型の構造解析を行う
構造解析手段とを備え、成形品の形状精度を予測する射
出成形プロセスシミュレーション装置であって、前記金
型の伝熱解析および成形品の熱流体解析を行って該成形
品の圧力および温度を算出する圧力温度算出手段を備
え、前記構造解析手段は、前記算出された圧力および温
度に基づき、樹脂の粘弾性特性を考慮した構造解析を行
い、該構造解析から求まる温度と応力の値から計算され
る静水圧とを基に、樹脂の状態方程式により比容積を計
算する比容積計算手段と、該計算された比容積を熱膨張
係数に換算して熱収縮歪みを計算する熱収縮歪計算手段
とを備えたことを特徴とする。
【0018】請求項2に記載の射出成形プロセスシミュ
レーション装置では、請求項1に係る射出成形プロセス
シミュレーション装置において、前記熱収縮歪計算手段
は、等方性あるいは異方性の熱収縮歪みを計算すること
を特徴とする。
【0019】請求項3に記載の射出成形プロセスシミュ
レーション装置では、請求項1に係る射出成形プロセス
シミュレーション装置において、前記構造解析手段は、
前記算出された圧力および温度に基づき、金型と成形品
との型拘束および樹脂の粘弾性特性を考慮した構造解析
を行うことを特徴とする。
【0020】請求項4に記載の形状精度予測方法は、成
形品の形状精度を予測する形状精度予測方法であって、
金型の伝熱解析および成形品の熱流体解析を行って該成
形品の圧力および温度を算出する工程と、前記算出され
た圧力および温度に基づき、樹脂の粘弾性特性を考慮し
た構造解析を行い、該構造解析から求まる温度と応力の
値から計算される静水圧とを基に、樹脂の状態方程式に
より比容積を計算する工程と、該計算された比容積を熱
膨張係数に換算して熱収縮歪みを計算する工程とを有す
ることを特徴とする。
【0021】請求項5に記載の形状精度予測方法は、請
求項4に係る形状精度予測方法において、前記熱収縮歪
みを計算する工程では、等方性あるいは異方性の熱収縮
歪みを計算することを特徴とする。
【0022】請求項6に記載の形状精度予測方法は、請
求項4に係る形状精度予測方法において、前記比容積を
計算する工程では、前記算出された圧力および温度に基
づき、金型と成形品との型拘束および樹脂の粘弾性特性
を考慮した構造解析を行うことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の射出成形プロセスシミュ
レーション装置および形状精度予測方法の実施の形態に
ついて説明する。
【0024】[第1の実施形態]図1は射出成形プロセ
スシミュレーション装置における全体の解析処理手順を
示すフローチャートである。射出成形プロセスシミュレ
ーション装置は、基本的に、形状を定義して有限要素法
などの解析で使用する要素分割を行って解析モデルを作
成する形状定義部1、金型と樹脂の伝熱解析を含み、充
填保圧冷却過程の解析を行う流動解析部2、および樹脂
のクリープ、応力緩和などの粘弾性的な性質と樹脂冷却
時の金型と成形品との間の型拘束を考慮した構造解析を
行う構造解析部3を有し、これらの各部の機能により全
体の解析処理を行う。
【0025】まず、形状定義およびメッシュ分割を行う
(ステップS1)。このステップS1の処理では、CA
Dシステムなどにより、解析対象となる金型と成形品の
形状を定義した後、要素分割プリプロセッサで有限要素
法などの要素分割を行い、解析モデルを作成する。尚、
必要に応じて、CADインターフェースを利用して形状
を取り込んでもよい。
【0026】本実施形態の解析では、流動解析に引き続
いて構造解析を行うので、形状定義およびメッシュ分割
を行う際、予め拘束条件などの構造解析用の境界条件を
付加しておく。
【0027】この後、解析を行うための温度依存性を考
慮した樹脂と金型の物性データ(粘性、比容積、熱伝導
率、比熱など)、成形条件(射出速度、樹脂温度、保圧
値、保圧時間など)および解析条件を定義して、流動解
析用の入力データを作成する(ステップS2)。
【0028】ステップS2で作成された入力データに基
づき、樹脂が金型内に充填する過程、およびその後の保
圧冷却過程での金型を含めた流動解析を実施し(ステッ
プS3)、圧力、温度などの解析結果を得る。
【0029】また、ステップS3における流動解析処理
の実行時、この流動解析プログラムに構造解析用のデー
タ変換プログラムを組み込んでおくことにより(ステッ
プS4)、ステップS1で付加された構造解析用の境界
条件の設定に基づき、構造解析で使用される圧力、温度
の初期データ、形状入力データを得る(ステップS
5)。これにより、流動解析を終了した後、即座に構造
解析が実行される。
【0030】ステップS3における流動解析から得られ
た温度、圧力の初期データ、荷重、拘束などの各種境界
条件を含む形状入力データに基づき、樹脂の粘弾性的特
性(クリープ、応力緩和)および金型内での冷却時の樹
脂と金型の接触状態(離型状態)を考慮した構造解析を
実施し(ステップS6)、変形量、応力、歪みなどの解
析結果を得る(ステップS7)。
【0031】この解析結果を評価し(ステップS8)、
成形品の形状精度が要求される許容値内に収まっている
場合、処理を終了する。一方、成形品の形状精度が要求
される許容値内に収まっていない場合、ステップS1の
処理に戻り、金型設計、成形条件パラメータを変更して
繰り返し解析を行うことにより、成形品の形状精度の最
適化を図ることが可能となる。
【0032】図2はステップS6における樹脂の粘弾性
的特性および金型内での冷却時の樹脂と金型と間の接触
状態、離型状態などの型拘束を考慮した構造解析処理手
順を示すフローチャートである。また、図3は熱収縮歪
みの計算処理手順を示すフローチャートである。この熱
収縮歪みの計算処理では、後述するように、熱応力連成
解析の各ステップで求まる温度と応力の値から計算され
る静水圧とを基に、樹脂のPVT状態方程式により比容
積を計算する手順、得られた比容積から線膨張係数を計
算して次ステップでの熱歪みの増分を計算する手順を示
す。
【0033】まず、ステップS3における流動解析によ
り要素節点データ、境界条件(温度、荷重、拘束デー
タ)、解析コントロールデータなどの構造解析用入力デ
ータ、および温度、圧力の解析結果が既に作成されてい
るので、これらのデータを利用して(ステップS20、
S21)、構造解析を行う。
【0034】解析の第1ステップとして、図3に示すよ
うに変数n,tを値0に初期化し(ステップS30)、
流動解析の結果として読み込んだ圧力データP0および
温度データT0を基に、PVT状態方程式により比容積
0を計算しておく(ステップS31、S32)。この
PVT状態方程式は数式(1)で表される。
【0035】 V(T,P)=V0(T)[1−C・ln(1+P/B(T))] …… ( 1) ここで、B(T):圧力依存定数、C:定数、V0:定
数 つぎに、解析時間刻みΔt毎の成形品の任意の場所にお
ける温度Tnを求めると(ステップS33、S34)、
PVT状態方程式から時刻t=t+Δtでの比容積Vn
を得る(ステップS35)。ただし、この時点では、ま
だ応力が算出されていないので、PVT状態方程式での
圧力Pは流動解析により初期値として読み込んだ圧力P
0である。
【0036】樹脂の等方性収縮を仮定し、時間刻みΔt
での比容積変化(Vn−V0)から線膨張係数αnを計算
する(ステップS36)。この線膨張係数αnにより、
解析の第1ステップでの温度変化ΔTに対する熱収縮歪
みがΔε=αn・ΔTの式より求まるので(ステップS
37)、これにより、ステップS23、S24における
接触を含む粘弾性解析を実施して応力分布を求める(ス
テップS38)。
【0037】このようにして求めた応力分布の主応力σ
x、σy、σzから静水圧分布Pnを計算し(ステップS3
9)、次ステップでのPVT状態方程式での比容積の計
算での圧力Pとして用いる。
【0038】上記ステップS33〜上記ステップS39
の処理の手順を、成形条件として入力された成形品取り
出し温度あるいは取り出し時間になるまで繰り返し(ス
テップS40)、この条件(温度あるいは時間)になっ
た時点で終了する。
【0039】以後、金型と成形品全体が冷却されていく
状態を、非定常温度解析(ステップS22)、粘弾性応
力解析(ステップS23)を実施することで求めてい
く。この過程で、前述したように、時間刻みΔt毎の成
形品の任意の場所における温度Tn、静水圧Pnが求まる
と、ステップS35に示すように、PVT状態方程式か
ら比容積Vnが得られ、熱収縮歪みΔεが求められるこ
とになり、圧力の影響を考慮した解析が可能となる。図
12はPVT状態方程式における温度Tn、圧力Pnおよ
び比容積Vnの関係を示す特性図である。
【0040】粘弾性応力解析(ステップS23)では、
用途により金型の部分を変形体(弾性体)として、ある
いは剛体としても考えられるようにする。前者は金型の
熱歪みによる変形などが無視できない場合、後者は無視
できる場合である。樹脂である成形品部を熱レオロジー
的に単純な材料と考え、つまり時間−温度換算則が適用
可能なモデルとして考え、シフト関数とプロニー級数に
よる応力緩和関数の近似が可能な線形粘弾性モデルを導
入して解析を行う。応力緩和関数(プロニー級数)、シ
フト関数として、それぞれ数式(2)、(3)を用い
る。
【0041】
【数1】
【0042】ここで、G∞:平衡弾性率、t’:緩和時
間、λn:緩和時間係数である。
【0043】 log10T(T)=C0+C1・T+C2・T2+C3・T3+C4・T4+・・・ ・・+Cn・Tn …… (3) ここで、log10T(T):温度シフトファクタ、
n:係数、T:温度である。
【0044】この物性データは、レオメータにより常温
から樹脂溶融温度の成形範囲の粘弾性特性を測定して、
上記2つの式に最小2乗近似を行うことで得られる。
【0045】また同時に、冷却固化に伴う成形品表面と
金型表面での接触、解離などの型拘束の影響も考慮す
る。具体的には、図2のステップS24に示すように、
ステップ毎の応力解析(ステップS23)が終了した
後、成形品表面と金型表面において両者の接触距離(成
形品と金型両者の接触面を構成する要素節点の距離)
と、接触面構成節点での反力とにより接触/解離判定を
行う(ステップS24)。
【0046】接触判定時には、成形品と金型の接触面に
おける熱通過率を設定し、解離判定時には、成形品表面
とキャビティ空間の間に熱伝達率を設定して、次ステッ
プの温度解析に反映する。
【0047】上記非定常温度解析(ステップS22)、
粘弾性応力解析(ステップS23)、接触/解離判定
(ステップS24)の手順を、成形条件として入力され
た成形品取り出し温度あるいは取り出し時間になるまで
繰り返し(ステップS25)、この条件(温度あるいは
時間)になった時点で、離型処理(成形品が金型による
拘束から解放)に伴う成形品のスプリングバック(Sp
ring Back)量の計算を実施し(ステップS2
6)、最終的に変形量、応力、歪みなどの計算結果を出
力する(ステップS27)。この後、処理を終了する。
【0048】[実施例1]つぎに、上記解析処理の具体
例を示す。図4は具体的な成形品形状を示す図である。
この成形品形状は、外形φ66mm(レンズ中心板厚4
mm)の単純なレンズ形状をしている。このレンズ形状
は左右対称であるので、図には1/2のモデル部分だけ
が示されている。全体の解析処理は、前述した図1の手
順にしたがって行われる。
【0049】図5は図4のレンズ形状を含む金型全体モ
デルの形状を示す図である。この金型全体モデル11は
固定側金型、可動側金型および成形品から構成されるモ
デルである。この金型全体モデル11も左右対称である
ので、図5にはその1/2のモデル部分だけが示されて
いる。
【0050】図6は要素数4000程度に分割された金
型全体モデルを示す図である。要素分割プリプロセッサ
により、図6に示すように、金型全体モデルを要素数4
000程度に分割した後、対称面、金型と成形品の材質
領域、流入境界などの各種境界条件を定義し、流動解析
用の入力データを作成した。尚、流動解析後に実施する
拘束条件などの構造解析用の境界条件も併せて付加し
た。
【0051】まず最初に、流動解析により、樹脂が金型
内に充填して保圧冷却される過程を解析する。この解析
プログラムとしては、市販されている汎用流体解析ソフ
トウェアを使用し、これに樹脂の非ニュートン流体とし
ての性質である粘性が温度とせん断速度に依存する関係
式、すなわち粘性方程式と、圧縮解析時に必要となる圧
力と温度と非容積の関係式であるPVT状態方程式とを
ソフトウェアに付属のユーザーサブルーチンを利用して
定義する。
【0052】またこれと同時に、このユーザーサブルー
チンを使用して流動解析のすぐ後に実行する構造解析用
入力データを作成するデータ変換プログラムを組み込ん
でおくことにより、構造解析で使用するための圧力、温
度データ、形状入力データが作成されるようにした。図
7は流動解析で得られた保圧冷却過程が終了した時点
(樹脂の流動が停止した時点)の成形品の圧力分布を示
す図である。図中、濃淡で圧力分布は表されており、ゲ
ート側のa点の圧力が最も高く、b点の圧力も高く、c
点の圧力が最も低くなっている。また、図8は流動解析
で得られた保圧冷却過程が終了した時点(樹脂の流動が
停止した時点)の成形品の温度分布を示す図である。図
中、濃淡で温度分布は表されており、ゲート側のd点の
温度が最も高く、e点の温度も高く、金型に接する部分
のf点の温度が最も低くなっている。この場合の温度範
囲は234℃〜90℃である。
【0053】つぎに、保圧過程が終了した後の成形品の
冷却中の熱収縮挙動を、流動解析での温度・圧力の最終
結果を初期データとして、構造解析に取り込み、型拘束
を考慮した粘弾性解析を行う。図9は金型全体モデルの
温度分布を示す図である。図中、濃淡で温度分布は表さ
れており、成形品のg,i点の温度が高く、h,j点の
温度も高くなっている。尚、この解析では、図9に示す
ように、温度解析については金型と成形品の全体につい
て解析を行い、粘弾性解析については金型と成形品の部
分を共に変形体として解析を行った。解析入力データ
は、既に流動解析の実行時に作成されているので、即時
実行が可能である。
【0054】解析プログラムとして、市販されている汎
用非線形構造解析プログラムを使用し、樹脂である成形
品部については時間−温度換算則が適用可能な熱レオロ
ジー的に単純な材料と考え、ユーザーサブルーチンを使
用して、前述したプロニー級数による応力緩和関数の近
似が可能な線形粘弾性構成式(数式(2))とシフト関
数(数式(3))を定義して解析を行った。
【0055】この過程では、同時に時間刻み毎の成形品
の任意の場所における温度、静水圧を求め、PVT状態
方程式(数式(1))から比容積を求め、熱収縮歪みを
計算することで圧力の影響を考慮した解析を行った。
【0056】また、冷却固化に伴う成形品表面と金型表
面での接触、解離などの型拘束の影響も考慮する。尚、
接触判定時には成形品と金型の接触面温度が同じになる
ように熱通過率を設定し、解離判定時には、成形品表面
とキャビティ空間の間が断熱となるように熱伝達率を設
定した。
【0057】図10は金型内でのレンズ成形品の収縮状
態を示す図である。最終的には、成形条件として設定し
た取り出し時間になった時点で、離型時の成形品のスプ
リングバック挙動を解析するために、金型による成形品
の型拘束の影響を除く処理を行い、最終的な変形量、応
力などの結果を得た。図11は本解析で得られた金型か
ら成形品を取り出した時点の成形品の変形を示す図であ
る。尚、図中、変形状態を分かり易くするために、表示
倍率を大きくした状態で結果が示されている。
【0058】[第2の実施形態]第2の実施形態の射出
成形プロセスシミュレーション装置を示す。前記第1の
実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し
て示す。
【0059】第2の実施形態の射出成形プロセスシミュ
レーション装置は、前記第1の実施形態の図1と同様、
基本的に、形状を定義して有限要素法などの解析で使用
する要素分割を行って解析モデルを作成する形状定義部
1、金型と樹脂の伝熱解析を含み、充填保圧冷却過程の
解析を行う流動解析部2、および樹脂のクリープ、応力
緩和などの粘弾性的な性質と樹脂冷却時の金型と成形品
との間の型拘束を考慮した構造解析を行う構造解析部3
を有し、これらの各部の機能により全体の解析処理を行
う。
【0060】まず、形状定義およびメッシュ分割を行う
(ステップS1)。このステップS1の処理では、CA
Dシステムなどにより、解析対象となる金型と成形品の
形状を定義した後、要素分割プリプロセッサで有限要素
法などの要素分割を行い、解析モデルを作成する。尚、
必要に応じて、CADインターフェースを利用して形状
を取り込んでもよい。
【0061】本実施形態の解析では、流動解析に引き続
いて構造解析を行うので、形状定義およびメッシュ分割
を行う際、予め拘束条件などの構造解析用の境界条件を
付加しておく。
【0062】この後、解析を行うための温度依存性を考
慮した樹脂と金型の物性データ(粘性、比容積、熱伝導
率、比熱など)、成形条件(射出速度、樹脂温度、保圧
値、保圧時間など)および解析条件を定義して、流動解
析用の入力データを作成する(ステップS2)。
【0063】ステップS2で作成された入力データに基
づき、樹脂が金型内に充填する過程、およびその後の保
圧冷却過程での金型を含めた流動解析を実施し(ステッ
プS3)、圧力、温度などの解析結果を得る。
【0064】また、ステップS3における流動解析処理
の実行時、この流動解析プログラムに構造解析用のデー
タ変換プログラムを組み込んでおくことにより(ステッ
プS4)、ステップS1で付加された構造解析用の境界
条件の設定に基づき、構造解析で使用される圧力、温度
の初期データ、形状入力データを得る(ステップS
5)。これにより、流動解析を終了した後、即座に構造
解析が実行される。
【0065】ステップS3における流動解析から得られ
た温度、圧力の初期データ、荷重、拘束などの各種境界
条件を含む形状入力データに基づき、樹脂の粘弾性的特
性(クリープ、応力緩和)および金型内での冷却時の樹
脂と金型の接触状態(離型状態)を考慮した構造解析を
実施し(ステップS6)、変形量、応力、歪みなどの解
析結果を得る(ステップS7)。
【0066】この解析結果を評価し(ステップS8)、
成形品の形状精度が要求される許容値内に収まっている
場合、処理を終了する。一方、成形品の形状精度が要求
される許容値内に収まっていない場合、ステップS1の
処理に戻り、金型設計、成形条件パラメータを変更して
繰り返し解析を行うことにより、成形品の形状精度の最
適化を図ることが可能となる。
【0067】ステップS6における樹脂の粘弾性的特性
および金型内での冷却時の樹脂と金型と間の接触状態、
離型状態などの型拘束を考慮した構造解析処理手順を図
2に示す。また、熱収縮歪みの計算処理手順を図3に示
す。この熱収縮歪みの計算処理では、後述するように、
熱応力連成解析の各ステップで求まる温度と主応力の値
から計算される静水圧とを基に、樹脂のPVT状態方程
式により比容積を計算する手順、得られた比容積から線
膨張係数を次ステップでの熱歪みの増分を計算する手順
を示す。
【0068】まず、ステップS3における流動解析によ
り要素節点データ、境界条件(温度、荷重、拘束デー
タ)、解析コントロールデータなどの構造解析用入力デ
ータ、および温度、圧力の解析結果が既に作成されてい
るので、これらのデータを利用して(ステップS20、
S21)、構造解析を行う。
【0069】解析の第1ステップとして、図3に示すよ
うに変数n,tを値0に初期化し(ステップS30)、
流動解析の結果として読み込んだ圧力データP0および
温度データT0を基に、PVT状態方程式により比容積
0を計算しておく(ステップS31、S32)。この
PVT状態方程式は数式(1)で表される。
【0070】 V(T,P)=V0(T)[1−C・ln(1+P/B(T))] …… ( 1) ここで、B(T):圧力依存定数、C:定数、V0:定
数 つぎに、解析時間刻みΔt毎の成形品の任意の場所にお
ける温度Tnが求まると(ステップS33、S34)、
PVT状態方程式から時刻t=t+Δtでの比容積Vn
を得る(ステップS35)。ただし、この時点では、P
VT状態方程式での圧力Pは流動解析より初期値として
読み込んだ圧力P0である。
【0071】樹脂の等方性収縮を仮定した場合、時間刻
みΔtでの比容積変化(Vn−V0)と温度変化ΔTとか
ら、下記数式(4)にしたがって、線膨張係数αnを計
算する(ステップS36)。
【0072】 αn=((Vn/V01/3−1)/ΔT …… (4) この線膨張係数αnにより、解析の第1ステップでの温
度変化ΔTに対する熱収縮歪みがΔε=αn・ΔTの式
より求まるので(ステップS37)、これにより、ステ
ップS23、S24における接触を含む粘弾性解析を実
施して応力分布を求める(ステップS38)。
【0073】尚、薄肉成形品などでは、本発明者等の過
去の実験により、流れ方向(面内方向)と板厚方向とで
異方性収縮挙動を示すことが確かめられており、この異
方性収縮の取り扱い方法については、特開平7−186
228号公報、特開平8−230008号公報において
既に提案しており、下記数式(5)により異方性収縮歪
みを計算することができる。
【0074】 εz=A+B・ev εp=(ev−εz)/2 …… (5) ここで、εz:板厚方向の収縮率、εp:面内方向の収縮
率、A,B:収縮係数、ev:体積収縮率である。
【0075】ここで、PVT状態方程式から求まる比容
積から線膨張係数あるいは熱収縮歪みを求め、構造解析
によりプラスチック成形品の形状精度を求める従来の方
法は、充填保圧冷却過程での熱変形温度、固化温度ある
いは流動停止温度などの収縮開始点における圧力、温度
分布との室温間での線膨張係数あるいは熱収縮歪みによ
り弾性的な構造解析を行う方法であり、収縮開始点から
室温までの線膨張係数あるいは熱収縮歪みの圧力、温度
依存性については、構造解析では流動解析時のように圧
力を直接に求めることができないため、温度依存性のみ
が考慮されていた。
【0076】しかしながら、プラスチック成形品の形状
精度が温度のみならず圧力による影響を大きく受けてい
ることは明らかである。
【0077】そこで、構造解析結果である応力値σx
σy、σzからステップS39に示すように、静水圧分布
nを計算しておき、次ステップでのPVT状態方程式
での比容積の計算で圧力Pとして用い、前述したように
等方性あるいは異方性収縮歪求める方法を検討して実際
に検証を行った結果、この方法がプラスチック成形品の
形状精度の予測向上に非常に有効であることが分かっ
た。
【0078】この方法により、金型と成形品全体が冷却
されていく状態を、非定常温度解析(ステップS2
2)、粘弾性応力解析(ステップS23)を実施するこ
とで求めていく過程において、時間刻みΔt毎の成形品
の任意の場所における温度Tn、静水圧Pnが求まると、
ステップS35に示すように、PVT状態方程式から比
容積Vnが得られ、熱収縮歪みΔεが求められることに
なり、圧力の影響を考慮した解析が可能となる。
【0079】粘弾性応力解析(ステップS23)では、
用途により金型の部分を変形体(弾性体)として、ある
いは剛体としても考えられるようにする。前者は金型の
熱歪みによる変形などが無視できない場合、後者は無視
できる場合である。
【0080】ステップS23における粘弾性応力解析の
具体的手法については、成形部品である樹脂の粘弾性特
性を動的粘弾性試験法である強制捻り法(固化状態)と
せん断法(溶融状態)を用いて測定してみたところ、時
間−温度換算則が適用可能な熱レオロジー的に単純な材
料と考えられ、時間−温度換算則にシフト関数、緩和弾
性係数にプロニー級数を用いてマスターカーブ近似した
線形粘弾性モデルを適用することにより、解析可能であ
ることが分かった。
【0081】さらに、ステップS23における粘弾性応
力解析を実施する際、成形品である樹脂の温度挙動は、
流動時には金型壁面近傍が固化状態であるが、成形品の
内部は溶融状態にあり、この2つの相が混在した状態で
徐々に固化していく。
【0082】したがって、樹脂の粘弾性マスターカーブ
には固化状態のみならず溶融状態の両方が必要である。
そこで、固化状態から溶融状態の全域に亘って1つのマ
スターカーブを作成することを試みた結果、これが可能
であることが判明した。
【0083】本解析手法では、樹脂の固化状態で得られ
る粘弾性マスターカーブのみならず、樹脂の固化状態と
溶融状態それぞれで得られる動的粘弾性特性を1つに統
合した粘弾性マスターカーブを作成し、この物性値を使
用して金型およびプラスチック成形品形状の熱収縮に伴
う変形挙動を求めるための粘弾性構造解析を行うことを
特徴とする。本実施形態では、緩和弾性係数(プロニー
級数)、シフト関数として、それぞれ数式(2)、
(3)を用いた。
【0084】
【数2】
【0085】ここで、G∞:平衡弾性率、t’:緩和時
間、λn:緩和時間係数である。
【0086】 log10T(T)=C0+C1・T+C2・T2+C3・T3+C4・T4+・・・ ・・+Cn・Tn …… (3) ここで、log10T(T):温度シフトファクタ、
n:係数、T:温度である。
【0087】この物性データは、レオメータにより常温
から樹脂溶融温度の成形範囲の粘弾性特性を測定して、
上記2つの式に最小2乗近似を行うことで得られる。
【0088】また同時に、冷却固化に伴う成形品表面と
金型表面での接触、解離などの型拘束の影響も考慮す
る。具体的には、図2のステップS24に示すように、
ステップ毎の応力解析(ステップS23)が終了した
後、成形品表面と金型表面において両者の接触距離(成
形品と金型両者の接触面を構成する要素節点の距離)
と、接触面構成節点での反力とにより接触/解離判定を
行う(ステップS24)。
【0089】接触判定時には、成形品と金型の接触面に
おける熱通過率を設定し、解離判定時には、成形品表面
とキャビティ空間の間に熱伝達率を設定して、次ステッ
プの温度解析に反映する。
【0090】上記非定常温度解析(ステップS22)、
粘弾性応力解析(ステップS23)、接触/解離判定
(ステップS24)の手順を、成形条件として入力され
た成形品取り出し温度あるいは取り出し時間になるまで
繰り返し(ステップS25)、この条件(温度あるいは
時間)になった時点で、離型処理(成形品が金型による
拘束から解放)に伴う成形品のスプリングバック(Sp
ring Back)量の計算を実施し(ステップS2
6)、最終的に変形量、応力、歪みなどの計算結果を出
力する(ステップS27)。この後、処理を終了する。
【0091】[実施例2]つぎに、上記解析処理の具体
例を示す。具体的な成形品形状を図4に示す。この成形
品形状は、実施例1と同様、外形φ66mm(レンズ中
心板厚4mm)の単純なレンズ形状をしている。このレ
ンズ形状は左右対称であるので、図には1/2のモデル
部分だけが示されている。全体の解析処理は、前述した
図1の手順にしたがって行われる。
【0092】図4のレンズ形状を含む金型全体モデルの
形状を図5に示す。この金型全体モデル11は固定側金
型、可動側金型および成形品から構成されるモデルであ
る。この金型全体モデル11も左右対称であるので、図
5にはその1/2のモデル部分だけが示されている。
【0093】要素分割プリプロセッサにより、図6に示
すように、金型全体モデルを要素数4000程度に分割
した後、対称面、金型と成形品の材質領域、流入境界な
どの各種境界条件を定義し、流動解析用の入力データを
作成した。尚、流動解析後に実施する拘束条件などの構
造解析用の境界条件も併せて付加した。
【0094】まず最初に、流動解析により、樹脂が金型
内に充填して保圧冷却される過程を解析する。この解析
プログラムとしては、市販されている汎用流体解析ソフ
トウェアを使用し、これに樹脂の非ニュートン流体とし
ての性質である粘性が温度とせん断速度に依存する関係
式、すなわち粘性方程式と、圧縮解析時に必要となる圧
力と温度と非容積の関係式であるPVT状態方程式とを
ソフトウェアに付属のユーザーサブルーチンを利用して
定義する。
【0095】またこれと同時に、このユーザーサブルー
チンを使用して流動解析のすぐ後に実行する構造解析用
入力データを作成するデータ変換プログラムを組み込ん
でおくことにより、構造解析で使用するための圧力、温
度データ、形状入力データが作成されるようにした。流
動解析で得られた保圧冷却過程が終了した時点(樹脂の
流動が停止した時点)の成形品の圧力分布を図7に示
す。流動解析で得られた保圧冷却過程が終了した時点
(樹脂の流動が停止した時点)の成形品の温度分布を図
8に示す。
【0096】つぎに、保圧過程が終了した後の成形品の
冷却中の熱収縮挙動を、流動解析での温度・圧力の最終
結果を初期データとして、構造解析に取り込み、型拘束
を考慮した粘弾性解析を行う。金型全体モデルの温度分
布を図9に示す。尚、この解析では、図9に示すよう
に、温度解析については金型と成形品の全体について解
析を行ったが、粘弾性解析については金型と成形品の部
分を共に変形体として解析を行った。解析入力データ
は、既に流動解析の実行時に作成されているので、即時
実行が可能である。
【0097】解析プログラムとして、市販されている汎
用非線形構造解析プログラムを使用し、樹脂である成形
品部については時間−温度換算則が適用可能な熱レオロ
ジー的に単純な材料と考え、ユーザーサブルーチンを使
用して、前述したプロニー級数による応力緩和関数の近
似が可能な線形粘弾性構成式(数式(2))とシフト関
数(数式(3))を定義して解析を行った。
【0098】この過程では、同時に時間刻み毎の成形品
の任意の場所における温度、静水圧を求め、PVT状態
方程式(数式(1))から比容積を求め、熱収縮歪みを
計算することで圧力の影響を考慮した解析を行った。
【0099】また、冷却固化に伴う成形品表面と金型表
面での接触、解離などの型拘束の影響も考慮する。尚、
接触判定時には成形品と金型の接触面温度が同じになる
ように熱通過率を設定し、解離判定時には、成形品表面
とキャビティ空間の間が断熱となるように熱伝達率を設
定した。
【0100】金型内でのレンズ成形品の収縮状態を図1
0に示す。最終的には、成形条件として、設定した取り
出し時間になった時点で、離型時の成形品のスプリング
バック挙動を解析するために、金型による成形品の型拘
束の影響を除く処理を行い、最終的な変形量、応力など
の結果を得た。本解析で得られた金型から成形品を取り
出した時点の成形品の変形を図11に示す。尚、図中、
変形状態を分かり易くするために、表示倍率を大きくし
た状態で結果が示されている。
【0101】ここで、上記各実施形態で示した解析処理
を行う射出成形プロセスのシミュレーション装置は、例
えば、周知のCPU、ROM、RAM、I/Oインター
フェースを有するコンピュータ本体、キーボード、CR
Tディスプレイ、外部メモリおよびプリンタなどのコン
ピュータシステムから構成することが可能であり、CP
Uが外部メモリに記憶された各種プログラムモジュール
を実行することにより、形状定義部1、流動解析部2お
よび構造解析部3の各機能が具体的に実現される。
【0102】
【発明の効果】本発明によれば、従来の方法に比べて精
度よく最終成形品形状の予測が可能となる。すなわち、
成形時の温度および圧力因子の影響を、樹脂の粘弾性的
な性質や成形品と金型の接触面での型拘束などの影響を
考慮して、成形品形状を求めることができる。
【0103】また、コンピュータを使用して金型を製作
する前に検討することができるので、最適な形状を決定
するまでの検討時間を短縮することができ、金型製作、
修正などのコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】射出成形プロセスシミュレーション装置におけ
る全体の解析処理手順を示すフローチャートである。
【図2】ステップS6における樹脂の粘弾性的特性およ
び金型内での冷却時の樹脂と金型と間の接触状態、離型
状態などの型拘束を考慮した構造解析処理手順を示すフ
ローチャートである。
【図3】熱収縮歪みの計算処理手順を示すフローチャー
トである。
【図4】具体的な成形品形状を示す図である。
【図5】図4のレンズ形状を含む金型全体モデルの形状
を示す図である。
【図6】要素数4000程度に分割された金型全体モデ
ルを示す図である。
【図7】流動解析で得られた保圧冷却過程が終了した時
点(樹脂の流動が停止した時点)の成形品の圧力分布を
示す図である。
【図8】流動解析で得られた保圧冷却過程が終了した時
点(樹脂の流動が停止した時点)の成形品の温度分布を
示す図である。
【図9】金型全体モデルの温度分布を示す図である。
【図10】金型内でのレンズ成形品の収縮状態を示す図
である。
【図11】本解析で得られた金型から成形品を取り出し
た時点の成形品の変形を示す図である。
【図12】PVT状態方程式における温度Tn、圧力Pn
および比容積Vnの関係を示す特性図である。
【符号の説明】 1 形状定義部 2 流動解析部 3 構造解析部 11 金型全体モデル

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金型の伝熱解析を行う伝熱解析手段と、
    金型内の溶融樹脂の充填保圧挙動の熱流体解析を行う流
    動解析手段と、成形品および金型の構造解析を行う構造
    解析手段とを備え、成形品の形状精度を予測する射出成
    形プロセスシミュレーション装置であって、 前記金型の伝熱解析および成形品の熱流体解析を行って
    該成形品の圧力および温度を算出する圧力温度算出手段
    を備え、 前記構造解析手段は、 前記算出された圧力および温度に基づき、樹脂の粘弾性
    特性を考慮した構造解析を行い、該構造解析から求まる
    温度と応力の値から計算される静水圧とを基に、樹脂の
    状態方程式により比容積を計算する比容積計算手段と、 該計算された比容積を熱膨張係数に換算して熱収縮歪み
    を計算する熱収縮歪計算手段とを備えたことを特徴とす
    る射出成形プロセスシミュレーション装置。
  2. 【請求項2】 前記熱収縮歪計算手段は、等方性あるい
    は異方性の熱収縮歪みを計算することを特徴とする請求
    項1記載の射出成形プロセスシミュレーション装置。
  3. 【請求項3】 前記構造解析手段は、前記算出された圧
    力および温度に基づき、金型と成形品との型拘束および
    樹脂の粘弾性特性を考慮した構造解析を行うことを特徴
    とする請求項1記載の射出成形プロセスシミュレーショ
    ン装置。
  4. 【請求項4】 成形品の形状精度を予測する形状精度予
    測方法であって、 金型の伝熱解析および成形品の熱流体解析を行って該成
    形品の圧力および温度を算出する工程と、 前記算出された圧力および温度に基づき、樹脂の粘弾性
    特性を考慮した構造解析を行い、該構造解析から求まる
    温度と応力の値から計算される静水圧とを基に、樹脂の
    状態方程式により比容積を計算する工程と、 該計算された比容積を熱膨張係数に換算して熱収縮歪み
    を計算する工程とを有することを特徴とする形状精度予
    測方法。
  5. 【請求項5】 前記熱収縮歪みを計算する工程では、等
    方性あるいは異方性の熱収縮歪みを計算することを特徴
    とする請求項4記載の形状精度予測方法。
  6. 【請求項6】 前記比容積を計算する工程では、前記算
    出された圧力および温度に基づき、金型と成形品との型
    拘束および樹脂の粘弾性特性を考慮した構造解析を行う
    ことを特徴とする請求項4記載の形状精度予測方法。
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