JP2001290038A - アレイ導波路型回折格子 - Google Patents

アレイ導波路型回折格子

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JP2001290038A JP2000219205A JP2000219205A JP2001290038A JP 2001290038 A JP2001290038 A JP 2001290038A JP 2000219205 A JP2000219205 A JP 2000219205A JP 2000219205 A JP2000219205 A JP 2000219205A JP 2001290038 A JP2001290038 A JP 2001290038A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光透過中心波長が使用環境温度に依存しない
アレイ導波路型回折格子を提供する。 【解決手段】 光入力導波路2と、第1のスラブ導波路
3と、互いに異なる長さの複数の並設したアレイ導波路
4と、第2のスラブ導波路5と、複数の並設した光出力
導波路6とを順に接続してなる導波路形成部10を基板
1上に形成する。第1のスラブ導波路3を通る光の経路
と交わる分離面8で第1のスラブ導波路3を分離し、分
離スラブ導波路3b側の導波路形成部10bはベース9
に固定し、分離スラブ導波路3a側は高熱膨張係数部材
7を介してベース9にスライド移動自在に固定する。使
用環境温度変化に応じて高熱膨張係数部材7がベース9
よりも大きく膨張収縮することにより、分離スラブ導波
路3a側を前記分離面8に沿って矢印A,B方向に温度
に依存してスライド移動させ、アレイ導波路型回折格子
の各光透過中心波長の温度依存変動を低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば波長多重光
通信において光合分波器として用いられるアレイ導波路
型回折格子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、光通信においては、その伝送容量
を飛躍的に増加させる方法として、光波長多重通信の研
究開発が盛んに行なわれ、実用化が進みつつある。光波
長多重通信は、例えば互いに異なる波長を有する複数の
光を多重して伝送させるものであり、このような光波長
多重通信のシステムにおいては、伝送される多重光か
ら、光受信側で波長ごとの光を取り出すために、予め定
められた波長の光のみを透過する光透過デバイス等を、
システム内に設けることが不可欠である。
【0003】光透過デバイスの一例として、図4に示す
ような平板光導波路回路(PLC;Planar Li
ghtwave Circuit)のアレイ導波路型回
折格子(AWG;Arrayed Waveguide
Grating)がある。アレイ導波路型回折格子
は、シリコンなどの基板1上に、同図に示すような導波
路構成を石英系ガラス等のコアにより形成したものであ
る。
【0004】アレイ導波路型回折格子の導波路構成は、
1本以上の並設された光入力導波路2の出射側に、第1
のスラブ導波路3が接続され、第1のスラブ導波路3の
出射側には複数の並設されたアレイ導波路4が接続さ
れ、アレイ導波路4の出射側には第2のスラブ導波路5
が接続され、第2のスラブ導波路5の出射側には複数の
並設された光出力導波路6が接続されて形成されてい
る。
【0005】前記アレイ導波路4は、第1のスラブ導波
路3から導出された光を伝搬するものであり、互いに異
なる長さに形成され、隣り合うアレイ導波路4の長さは
互いにΔL異なっている。なお、光入力導波路2や光出
力導波路6は、例えばアレイ導波路型回折格子によって
分波あるいは合波される互いに異なる波長の信号光の数
に対応させて設けられるものであり、アレイ導波路4
は、通常、例えば100本といったように多数設けられ
るが、同図においては、図の簡略化のために、これらの
光入力導波路2、アレイ導波路4、光出力導波路6の各
々の本数を簡略的に示してある。
【0006】光入力導波路2には、例えば送信側の光フ
ァイバ(図示せず)が接続されて、波長多重光が導入さ
れるようになっており、光入力導波路2を通って第1の
スラブ導波路3に導入された光は、その回折効果によっ
て広がって各アレイ導波路4に入射し、アレイ導波路4
を伝搬する。
【0007】このアレイ導波路4を伝搬した光は、第2
のスラブ導波路5に達し、さらに、光出力導波路6に集
光されて出力されるが、全てのアレイ導波路4の長さが
互いに異なることから、アレイ導波路4を伝搬した後に
個々の光の位相にずれが生じ、このずれ量に応じて集束
光の波面が傾き、この傾き角度により集光する位置が決
まる。
【0008】そのため、波長の異なった光の集光位置は
互いに異なることになり、その位置に光出力導波路6を
形成することによって、波長の異なった光(分波光)を
各波長ごとに異なる光出力導波路6から出力できる。
【0009】すなわち、アレイ導波路型回折格子は、光
入力導波路2から入力される互いに異なる複数の波長を
もった多重光から1つ以上の波長の光を分波して各光出
力導波路6から出力する光分波機能を有しており、分波
される光の中心波長は、アレイ導波路4の長さの差(Δ
L)及び光導波路4の実効屈折率nに比例する。
【0010】アレイ導波路型回折格子は、上記のような
特性を有するために、アレイ導波路型回折格子を波長多
重伝送用の波長多重分波器として用いることができ、例
えば図4に示すように、1本の光入力導波路2から波長
λ1,λ2,λ3,・・・λn(nは2以上の整数)の
波長多重光を入力させると、これらの各波長の光は、第
1のスラブ導波路3で広げられ、アレイ導波路4に到達
し、第2のスラブ導波路5を通って、前記の如く、波長
によって異なる位置に集光され、互いに異なる光出力導
波路6に入射し、それぞれの光出力導波路6を通って、
光出力導波路6の出射端から出力される。
【0011】そして、各光出力導波路6の出射端に光出
力用の光ファイバ(図示せず)を接続することにより、
この光ファイバを介して、前記各波長の光が取り出され
る。なお、各光出力導波路6や前述の光入力導波路2に
光ファイバを接続するときには、例えば光ファイバの接
続端面を1次元アレイ状に配列固定した光ファイバアレ
イを用意し、この光ファイバアレイを光出力導波路6や
光入力導波路2の接続端面側に固定して光ファイバと光
出力導波路6及び光入力導波路2を接続する。
【0012】上記アレイ導波路型回折格子において、各
光出力導波路6から出力される光の光透過特性(アレイ
導波路型回折格子の透過光強度の波長特性)は、例えば
図5に示すようになり、各光透過中心波長(例えばλ
1,λ2,λ3,・・・λn)を中心とし、それぞれの
対応する光透過中心波長から波長がずれるにしたがって
光透過率が小さくなる光透過特性を示す。なお、前記光
透過特性は、必ずしも1つの極大値を有するとは限ら
ず、2つ以上の極大値を有するものである場合もある。
【0013】また、アレイ導波路型回折格子は、光の相
反性(可逆性)の原理を利用しているため、光分波器と
しての機能と共に、光合波器としての機能も有してい
る。すなわち、図4とは逆に、互いに異なる複数の波長
の光をそれぞれの波長ごとにそれぞれの光出力導波路6
から入射させると、これらの光は、上記と逆の伝搬経路
を通り、アレイ導波路4によって合波され、1本の光入
力導波路2から出射される。
【0014】このようなアレイ導波路型回折格子におい
ては、前記の如く、回折格子の波長分解能が回折格子を
構成するアレイ導波路4の長さの差(ΔL)に比例する
ために、ΔLを大きく設計することにより、従来の回折
格子では実現できなかった波長間隔の狭い波長多重光の
光合分波が可能となり、高密度の光波長多重通信の実現
に必要とされている、複数の信号光の光合分波機能、す
なわち、波長間隔が1nm以下の複数の光信号を分波ま
たは合波する機能を果たすことができる。
【0015】上記のようなアレイ導波路型回折格子を作
製するときには、例えば、まず、火炎加水分解堆積法を
用いて、シリコン基板上にアンダークラッド膜、コア膜
を順に形成し、その後、焼結しガラス化する。その後、
アレイ導波路回折格子の導波路構成が描かれたフォトマ
スクを介してフォトリソグラフィーを行い、反応性イオ
ンエッチング法を用いて、コア膜にアレイ導波路回折格
子パターンを転写する。その後、再度、火炎加水分解堆
積法を用いてオーバークラッド膜を形成することによ
り、アレイ導波路回折格子が作製される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のアレ
イ導波路型回折格子は、元来、石英系ガラス材料を主と
するために、この石英系ガラス材料の温度依存性に起因
してアレイ導波路型回折格子の前記光透過中心波長が温
度に依存してシフトする。この温度依存性は、1つの光
出力導波路6からそれぞれ出力される光の透過中心波長
をλ、前記アレイ導波路4を形成するコアの等価屈折率
をnc、基板(例えばシリコン基板)1の熱膨張係数を
αs、アレイ導波路型回折格子の温度変化量をTとした
ときに、(数1)により示されるものである。
【0017】
【数1】
【0018】ここで、従来の一般的なアレイ導波路型回
折格子において、(数1)から前記光透過中心波長の温
度依存性を求めてみる。従来の一般的なアレイ導波路型
回折格子においては、dn/dT=1×10−5(℃
−1)、α=3.0×10 −6(℃−1)、n
1.451(波長1.55μmにおける値)であるか
ら、これらの値を(数1)に代入する。
【0019】また、波長λは、各光出力導波路6につい
てそれぞれ異なるが、各波長λの温度依存性は等しい。
そして、現在用いられているアレイ導波路型回折格子
は、波長1550nmを中心とする波長帯の波長多重光
を分波したり合波したりするために用いられることが多
いので、ここでは、λ=1550nmを(数1)に代入
する。そうすると、従来の一般的なアレイ導波路型回折
格子の前記光透過中心波長の温度依存性は、(数2)に
示す値となる。
【0020】
【数2】
【0021】なお、dλ/dTの単位は、nm/℃であ
る。例えばアレイ導波路型回折格子の使用環境温度が2
0℃変化したとすると、各光出力導波路6から出力され
る光透過中心波長は0.30nmにシフトするものであ
り、前記使用環境温度変化が70℃以上になると、前記
光透過中心波長のシフト量が1nm以上になってしま
う。
【0022】アレイ導波路型回折格子は1nm以下の非
常に狭い間隔で波長を分波または合波できることが特徴
であり、この特長を生かして波長多重光通信用に適用さ
れるものであるため、上記のように、使用環境温度変化
によって光透過中心波長が上記シフト量だけ変化するこ
とは致命的である。
【0023】そこで、従来から温度により光透過中心波
長が変化しないように、アレイ導波路型回折格子の温度
を一定に保つための温度調節手段を設けたアレイ導波路
型回折格子が提案されている。この温度調節手段は、例
えば、ペルチェ素子やヒータなどを設けて構成されるも
のであり、いずれも、アレイ導波路型回折格子を予め定
めた設定温度(室温以上)に保つ制御を行なうものであ
る。
【0024】図4に示したアレイ導波路型回折格子にお
いては、ペルチェ素子30がアレイ導波路型回折格子の
基板1側に設けられており、サーミスタ31の検出温度
に基づいてアレイ導波路型回折格子の温度を一定に保つ
ように調節する。また、ペルチェ素子の代わりにヒータ
を設けた構成のものは、ヒータで高温保持し、アレイ導
波路型回折格子の温度を一定に保つようにしている。
【0025】このように、アレイ導波路型回折格子の温
度を一定に保つと、温度に起因して基板1の膨張収縮や
前記コアの等価屈折率変化などが生じないため、上記光
透過中心波長の温度依存性の問題を解消することができ
る。
【0026】しかしながら、ペルチェ素子やヒータのよ
うな温度調節手段を用いてアレイ導波路型回折格子の温
度を一定に保つものは、温度調節のために、ペルチェ素
子やヒータに例えば1Wといった通電を常時行なわなけ
ればならず、コストがかかるといった問題があった。
【0027】また、ペルチェ素子やヒータのような電気
部品を使用するためには、当然、コントローラーや制御
用サーミスター、熱電対等が必要となり、これらの部品
の組立ずれ等に起因して、光透過中心波長シフトを正確
に抑制できないことがあった。
【0028】さらに、アレイ導波路型回折格子と光ファ
イバアレイとの接続は、一般に接着剤を用いて行なわれ
ており、ペルチェ素子やヒータによってアレイ導波路型
回折格子の温度を室温以上の温度に制御すると、アレイ
導波路回折格子と光ファイバーの接続面に介設された接
着剤が室温以上の温度によって例えば膨張したり、軟化
したりする。したがって、ペルチェ素子などを用いてア
レイ導波路型回折格子の温度を一定に保つ構成とした場
合に、前記接着剤の膨張や軟化によって、アレイ導波路
型回折格子の光入力導波路2や光出力導波路6と光ファ
イバとの接続損失が増加し、アレイ導波路型回折格子と
光ファイバとの接続の信頼性を損ねるといった問題があ
った。
【0029】なお、このような従来のアレイ導波路型回
折格子は、その製造時に非常に精密さが要求されること
から、前記使用時の光透過中心波長の温度依存性とは別
に、製造時の誤差(製造ばらつき等)により光透過中心
波長が設計波長からずれてしまうといった問題があり、
これを解決するための方法が提案されている。
【0030】この提案は、特開平11―218639号
公報の「整相アレイデバイスすなわちフェーザならびに
このようなデバイスの製造方法」(優先権主張番号(優
先権主張番号:97 13440、優先日:1997年
10月27日、優先権主張国:フランス(FR))に記
載されているものである。この提案において、整相アレ
イデバイス(アレイ導波路型回折格子と同一)は、以下
に述べる第1ピースと第2ピースを有して組み立てられ
ている。
【0031】上記第1ピースは、例えば第1のスラブ導
波路のうちの一部分と入力導波路とを備え、上記第2ピ
ースは、例えば第1のスラブ導波路のうちの他の部分と
デバイスの他の構成要件とを備えており、第1ピースお
よび第2ピースは、完成品のデバイスを形成するように
形成されている。また、第1ピースおよび第2ピースの
相対位置の調整により、デバイスの波長を調整し得るよ
うにして、整相アレイデバイス(アレイ導波路型回折格
子と同一)が組み立てられている。
【0032】しかしながら、この提案の整相アレイデバ
イスの波長調整は、整相アレイデバイスの製造ばらつき
等による透過中心波長の初期ずれに対して波長調整を行
うもので、複数ピースが調整され終わった後に、複数の
各ピースを支持体に接着剤等により接着固定するもので
ある。そして、この提案には、前述のような従来のアレ
イ導波路型回折格子の欠点である温度依存性を解消する
ことについては何等解決されていない。
【0033】すなわち、この提案においては、前記整相
アレイデバイスの透過中心波長の初期ずれに対する波長
調整後に、温度に依存した透過中心波長のズレを各ピー
スの移動調整により補償するといったことは全く想定し
ていないために、この温度に依存した透過中心波長のズ
レを抑制するための技術の記載は全くなく、前記初期ず
れに対する波長調整後に各ピースの位置を調整可能に固
定するとの記載すらない。したがって、この提案を用い
てアレイ導波路型回折格子の温度に依存する透過中心波
長のズレの問題を解決することはできない。
【0034】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたものであり、その目的は、光透過中心波長の温度依
存性を正確に抑制することができる安価なアレイ導波路
型回折格子を提供することにある。つまり、本発明の目
的は、光透過中心波長の温度依存性を解消することがで
き、また、それとは逆にその温度依存性を助長または加
速することもできるアレイ導波路型回折格子を提供する
ことにあり、本発明は、その技術課題とそれを解決する
手段を前記特開平11−218639に記載の整相アレ
イデバイスとは全く異にする別思想のものである。
【0035】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は次のような構成をもって課題を解決するた
めの手段としている。すなわち、本第1の発明は、1本
以上の並設された光入力導波路の出射側に第1のスラブ
導波路が接続され、該第1のスラブ導波路の出射側には
該第1のスラブ導波路から導出された光を伝搬する互い
に異なる長さの複数の並設されたアレイ導波路が接続さ
れ、該複数のアレイ導波路の出射側には第2のスラブ導
波路が接続され、該第2のスラブ導波路の出射側には複
数の並設された光出力導波路が接続されて成る導波路構
成を有するアレイ導波路回折格子において、前記第1の
スラブ導波路と第2のスラブ導波路の少なくとも一方が
スラブ導波路を通る光の経路と交わる面で分離されてお
り、この分離された分離スラブ導波路の少なくとも一方
側を前記分離面に沿って温度に依存してスライド移動さ
せることにより課題を解決する手段としている。
【0036】また、本第2の発明は、上記本第1の発明
の構成に加え、前記分離スラブ導波路の少なくとも一方
側を分離面に沿って移動させるスライド移動機構が設け
られて該スライド移動機構が光透過中心波長をシフトさ
せる機構と成しており、該スライド移動機構は各光透過
中心波長の温度依存変動を低減する方向に分離スラブ導
波路をスライド移動させる構成をもって課題を解決する
手段としている。
【0037】さらに、本第3の発明は、上記第1の発明
の構成に加え、分離スラブ導波路の少なくとも一方側を
分離面に沿って移動させるスライド移動機構が設けられ
て該スライド移動機構が光透過中心波長をシフトさせる
機構と成しており、該スライド移動機構は各光透過中心
波長の温度依存変動を増大する方向に分離スラブ導波路
をスライド移動させる構成をもって課題を解決する手段
としている。
【0038】さらに、本第4の発明は、上記第2の発明
の構成に加え、スライド移動機構は、光透過中心波長の
シフトに応じた分離スラブ導波路移動量に対応する熱膨
張係数による伸縮が生じる物質を有している構成をもっ
て課題を解決する手段としている。
【0039】さらに、本第5の発明は、上記第2又は第
3の発明の構成に加え、前記スライド移動機構は、分離
スラブ導波路を移動させる機械的移動手段と電気的移動
手段の少なくとも一方の移動手段を有している構成をも
って課題を解決する手段としている。
【0040】本発明者は、アレイ導波路型回折格子の温
度依存性を抑制するために、アレイ導波路型回折格子の
線分散特性に着目した。アレイ導波路型回折格子におい
て光入力導波路から入射された光は、第1のスラブ導波
路(入力側スラブ導波路)で回折し、アレイ導波路を励
振する。なお、前記の如く、隣接するアレイ導波路の長
さは互いにΔLずつ異なっている。そこで、アレイ導波
路を伝搬した光は、(数3)を満たし、第2のスラブ導
波路(出力側スラブ導波路)の出力端に集光される。
【0041】
【数3】
【0042】(数3)において、nsは第1のスラブ導
波路および第2のスラブ導波路の等価屈折率、ncはア
レイ導波路の等価屈折率、φは回折角、mは回折次数、
dは隣り合うアレイ導波路同士の間隔であり、λは、前
記の如く、各光出力導波路から出力される光の透過中心
波長である。
【0043】ここで、回折角φ=0となるところの光透
過中心波長をλとすると、λは(数4)で表され
る。なお、波長λは、一般に、アレイ導波路型回折格
子の中心波長と呼ばれる。
【0044】
【数4】
【0045】ところで、図3において、回折角φ=0と
なるアレイ導波路型回折格子の集光位置を点Oとする
と、回折角φ=φpを有する光の集光位置(第2のスラ
ブ導波路の出力端における位置)は、例えば点Pの位置
(点OからX方向にずれた位置)となる。ここで、O−
P間のX方向の距離をxとすると波長λとの間に(数
5)が成立する。
【0046】
【数5】
【0047】(数5)において、Lfは第2のスラブ導
波路の焦点距離であり、ngはアレイ導波路の群屈折率
である。なお、アレイ導波路の群屈折率ngは、アレイ
導波路の等価屈折率ncにより、(数6)で与えられ
る。
【0048】
【数6】
【0049】前記(数5)は、第2のスラブ導波路の焦
点OからX方向の距離dx離れた位置に光出力導波路の
入力端を配置形成することにより、dλだけ波長の異な
った光を取り出すことが可能であることを意味する。
【0050】また、(数5)の関係は、第1のスラブ導
波路3に関しても同様に成立する。すなわち、例えば第
1のスラブ導波路3の焦点中心を点O’とし、この点
O’からX方向に距離dx’ずれた位置にある点を点
P’とすると、この点P’に光を入射した場合に、出力
の波長がdλ’ずれることになる。この関係を式により
表わすと、(数7)のようになる。
【0051】
【数7】
【0052】なお、(数7)において、L’は第1の
スラブ導波路の焦点距離である。この(数7)は、第1
のスラブ導波路の焦点O’とX方向の距離dx’離れた
位置に光入力導波路の出力端を配置形成することによ
り、前記焦点Oに形成した光出力導波路においてdλ’
だけ波長の異なった光を取り出すことが可能であること
を意味する。
【0053】したがって、アレイ導波路型回折格子の使
用環境温度変動によってアレイ導波路型回折格子の光出
力導波路から出力される光透過中心波長がΔλずれたと
きに、dλ’=Δλとなるように、光入力導波路の出力
端位置を前記X方向に距離dx’だけずらせば、例えば
焦点Oに形成した光出力導波路において、波長ずれのな
い光を取り出すことができ、他の光出力導波路に関して
も同様の作用が生じるため、前記光透過中心波長ずれΔ
λを補正(解消)できることになる。
【0054】上記構成の本発明においては、第1のスラ
ブ導波路と第2のスラブ導波路の少なくとも一方がスラ
ブ導波路を通る光の経路と交わる面で分離されているの
で、第1のスラブ導波路が分離されていると仮定して議
論すると、この分離された第1のスラブ導波路のうち、
例えば光入力導波路に接続されている分離スラブ導波路
側(光入力導波路も含む)を、スライド移動機構によっ
て前記分離面に沿ってスライド移動させれば、前記各光
透過中心波長をシフトさせることが可能となる。
【0055】また、前記スライド移動機構によって、前
記各光透過中心波長の温度依存変動(波長ずれ)Δλが
dλと等しくなるようにして、前記各光透過中心波長の
温度依存変動を低減する方向に分離スラブ導波路及び光
入力導波路を前記分離面に沿って移動させれば、前記光
透過中心波長ずれを解消することが可能となる。
【0056】なお、厳密に言えば、光入力導波路の出力
端の位置を変えることによって、光入力導波路の出力端
からアレイ導波路の入力端まで、第1のスラブ導波路内
を伝搬する光の焦点距離L’が若干変化するが、現在
用いられているアレイ導波路型回折格子における第1の
スラブ導波路の焦点距離は数mmのオーダーであり、一
方、アレイ導波路型回折格子の光透過中心波長補正のた
めに移動する光入力導波路の出力端位置の移動量は数μ
m〜数10μmのオーダーであり、第1のスラブ導波路
の焦点距離に比べて非常に小さい。
【0057】そのため、実質的には上記焦点距離の変化
は無視してしまっても何も差し支えないと考えられる。
このことから、前記の如く、アレイ導波路型回折格子に
おける各光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向
に分離スラブ導波路及び光入力導波路を前記分離面に沿
って移動させれば、前記光透過中心波長ずれを解消する
ことが可能となる。
【0058】ここで、温度変化量と光入力導波路の位置
補正量の関係を導いておく。前記光透過中心波長の温度
依存性(温度による光透過中心波長のずれ量)は、前記
(数2)で表されるので、温度変化量Tを用いて光透過
中心波長ずれ量Δλを(数8)により表わすことができ
る。
【0059】
【数8】
【0060】(数7)、(数8)から、温度変化量Tと
光入力導波路の位置補正量dx’を求めると、(数9)
が導かれる。
【0061】
【数9】
【0062】したがって、本発明において、(数9)に
より示される位置補正量dx’だけ、前記スライド移動
機構によって前記分離面に沿って第1のスラブ導波路の
分離スラブ導波路及び光入力導波路をスライド移動させ
ることにより、前記光透過中心波長ずれを解消すること
が可能となる。
【0063】また、前記の如く、アレイ導波路型回折格
子は光の相反性を利用して形成されているものであり、
第2のスラブ導波路側を分離して、分離された分離スラ
ブ導波路の少なくとも一方側を、スライド移動機構によ
って前記分離面に沿って前記各光透過中心波長の温度依
存変動を低減する方向にスライド移動させれば、同様の
効果が得られ、前記各光透過中心波長の温度依存変動を
解消することが可能となる。
【0064】さらに、本発明においては、上記の原理に
基づきペルチェ素子やヒータを用いなくてもアレイ導波
路型回折格子の使用環境温度による光透過中心波長ずれ
を抑制し、光透過中心波長の温度無依存化を行うことが
できるために、ペルチェ素子やヒータを含む温度調節手
段を設ける場合のように、常時通電を必要とせず、部品
の組立誤差による温度補正誤差が生じることもなく、室
温以上の温度でアレイ導波路型回折格子を保つことによ
るアレイ導波路型回折格子と光ファイバとの接続損失増
加の虞もない。
【0065】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。なお、本実施形態例の説明におい
て、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重
複説明は省略する。図1には、本発明に係るアレイ導波
路型回折格子の一実施形態例の概略図が平面図によって
模式的に示されている。
【0066】同図に示すように、本実施形態例のアレイ
導波路型回折格子も従来例のアレイ導波路型回折格子と
同様に、基板1上にコアの導波路構成を形成しており、
図1では、基板1上の導波路構成の形成部(形成領域)
を導波路形成部10(10a、10b)として示してい
る。
【0067】本実施形態例のアレイ導波路型回折格子
は、従来例と同様に、1本の光入力導波路2、第1のス
ラブ導波路3、複数のアレイ導波路4、第2のスラブ導
波路5、複数の光出力導波路6を有しており、前記アレ
イ導波路4、光出力導波路6は、それぞれ予め定められ
た導波路間隔を介して並設されているが、本実施形態例
のアレイ導波路型回折格子においては、第1のスラブ導
波路3が、第1のスラブ導波路3を通る光の経路と交わ
る面(分離面)8で分離されている。
【0068】また、上記第1のスラブ導波路3の分離面
8での分離に伴い、基板1および導波路形成部(導波路
形成領域)10もそれぞれ2つに分離されており、分離
スラブ導波路3bとアレイ導波路4と第2のスラブ導波
路5と光出力導波路6が形成されている側の導波路形成
部10bおよびその下の基板1は、石英ガラスやInv
arロットなどの低熱膨張率の材料により形成されたベ
ース9に固定されている。
【0069】一方、分離スラブ導波路3aが形成されて
いる側の導波路形成部10aおよびその下の基板1は、
ベース9の表面に沿って図の矢印A方向および矢印B方
向にスライド移動自在に配置されている。導波路形成部
10aの一端側は接着剤13を介して高熱膨張係数部材
7に固定されており、他端側は係止部材14に係止され
ている。
【0070】本実施形態例の特徴的なことは、前記の如
く、第1のスラブ導波路3が第1のスラブ導波路3を通
る光の経路と交わる分離面8で分離スラブ導波路3a,
3bに分離されており、この分離された分離スラブ導波
路3a側を前記分離面8に沿ってスライド移動させるこ
とにより前記光透過中心波長をシフトさせることであ
り、このスライド移動はスライド移動機構により行われ
る。
【0071】このスライド移動機構は、アレイ導波路型
回折格子の各光透過中心波長の温度依存変動を低減する
方向に、分離スラブ導波路3a側を分離面8に沿ってス
ライド移動させる機構であり、本実施形態例では、上記
高熱膨張係数部材7、ベース9、係止部材14を設けて
上記スライド移動機構を構成している。
【0072】前記高熱膨張係数部材7は、導波路形成部
10aの上面に沿って設けられた上板部7aと導波路形
成部10aの側面に沿って設けられた側板部(図示され
ていない)とを有するL字形状の部材であり、側板部が
固定部11でベース9に固定されている。高熱膨張係数
部材7は、アレイ導波路型回折格子の光透過中心波長の
シフトに応じた分離スラブ導波路3aの移動量に対応す
る熱膨張係数による収縮が生じる物質であり、例えば熱
膨張係数が2.5×10−5(1/K)のAl(アルミ
ニウム)により形成されている。
【0073】前記係止部材14は、導波路形成部10a
の上面に沿って設けられた上板部14aと導波路形成部
10aの側面に沿って設けられた側板部(図示されてい
ない)とを有するL字形状の部材であり、側板部が固定
部12でベース9に固定されている。係止部材14の上
板部の内壁と導波路形成部10aの上面とは当接してお
り、導波路形成部10aのスライド移動時に、導波路形
成部10aがベース9に対して上方側(XY平面に垂直
なZ軸方向)に変位しないようになっている。また、側
板部の内壁と導波路形成部10aの側面とは間隔を介し
ており、導波路形成部10aのスライド移動が支障なく
行なえるようになっている。
【0074】なお、本実施形態例において、前記導波路
構成における各パラメータは、以下のように構成されて
いる。すなわち、第1のスラブ導波路3の焦点距離
’と第2のスラブ導波路5の焦点距離Lfは等し
く、その値は9mm(9000μm)であり、また、2
5℃において、第1のスラブ導波路3の等価屈折率およ
び第2のスラブ導波路5の等価屈折率は共にnで、そ
の値は、波長1.55μmの光に対して1.453であ
る。さらに、アレイ導波路4の光路長差ΔLは65.2
μm、隣り合うアレイ導波路4同士の間隔は15μm、
回折次数mは61、アレイ導波路4の等価屈折率n
波長1.55μmの光に対して1.451、アレイ導波
路の群屈折率nは波長1.55μmの光に対して1.
475である。
【0075】したがって、本実施形態例のアレイ導波路
型回折格子において、回折角φ=0となるところの光透
過中心波長λ0は、前記(数4)から明らかなように、
λ0=1550.9nmである。
【0076】ところで、本発明者は、アレイ導波路型回
折格子の温度依存性を抑制するために、アレイ導波路型
回折格子の線分散特性に着目し、前記(数1)〜(数
9)を用いた説明の通り、アレイ導波路型回折格子の使
用環境温度変化量Tと光入力導波路の位置補正量dx’
との関係を求めた。そして、この関係は前記(数9)に
より表わされることを確認した。
【0077】そこで、本実施形態例について、アレイ導
波路型回折格子の導波路構成の各パラメータと(数9)
に基づき、アレイ導波路型回折格子の使用環境温度の変
化量Tと光入力導波路2の位置補正量dx’の関係を求
めると、(数10)に示す関係となっていることが分か
った。
【0078】
【数10】
【0079】したがって、本実施形態例においては、ア
レイ導波路型回折格子の使用環境温度が10℃変化した
際、光入力導波路2の出力端の位置をX方向に約3.8
3μm補正(移動)すれば、温度による中心波長すれが
補正できる計算になる。
【0080】そこで、本実施形態例では、アレイ導波路
型回折格子の使用環境温度が10℃上昇したときに、光
入力導波路2の出力端20の位置が約3.83μmだ
け、矢印A方向に移動し、その逆に、アレイ導波路型回
折格子の使用環境温度が10℃下降したときに、光入力
導波路2の出力端20の位置が約3.83μmだけ、矢
印B方向に移動するように、分離スラブ導波路3a側の
移動量を定めた。そして、この移動量が得られるように
高熱膨張係数部材7の大きさ等を形成し、前記スライド
移動機構によって、各光透過中心波長の温度依存変動を
低減する方向にスライド移動させるようにしている。
【0081】なお、本実施形態例のアレイ導波路型回折
格子の作製に際し、本発明者は、ファイバグレーティン
グの温度補償パッケージを応用し、モジュールを組み立
てた。すなわち、ダイシングソーを用いて第1のスラブ
導波路3を切断分離し、分離面8における反射を防ぐた
めに、石英系ガラスと屈折率の整合したマッチンググリ
ースを分離面8に塗布した。また、高熱膨張係数部材7
と導波路形成部10aとの接着に用いた接着剤13は、
熱硬化接着剤とし、100℃で硬化させた。
【0082】本実施形態例は以上のように構成されてお
り、第1のスラブ導波路3を通る光の経路と交わる分離
面8で、第1のスラブ導波路3が分離スラブ導波路3
a,3bに分離されており、アレイ導波路型回折格子の
使用環境温度が変化すると、前記スライド移動機構によ
って、分離スラブ導波路3a側がアレイ導波路型回折格
子の各光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向
(図1の矢印A方向または矢印B方向)に、分離面8に
沿ってスライド移動させられる。
【0083】また、上記スライド移動量は、前記(数1
0)により求められる位置補正量dx’であり、上記ス
ライド移動によって、分離スラブ導波路3a及び光入力
導波路2がスライド移動する。
【0084】したがって、本実施形態例によれば、たと
えアレイ導波路型回折格子の使用環境温度が変化して
も、この温度変化に伴う光透過中心波長ずれを解消する
ことができ、使用環境温度に依存しない、いわゆる温度
無依存型のアレイ導波路型回折格子とすることができ
る。
【0085】本発明者が、実際に、0℃〜80℃の環境
温度において、光透過中心波長の温度変化を測定したと
ころ、図2の特性線aに示す結果が得られ、光透過中心
波長のずれ(シフト)量は約0.01nm以下となり、
使用環境温度が0℃〜80℃の範囲内で変化しても、光
透過中心波長は殆どずれないことが確認できた。
【0086】なお、図2には、アレイ導波路型回折格子
における導波路構成の各パラメータを本実施形態例と同
様に形成し、第1のスラブ導波路3を分離していない従
来のアレイ導波路型回折格子において、0℃〜80℃の
環境温度における光透過中心波長の温度変化を測定した
結果も示されている(図2の特性線b)。特性線aと特
性線bとを比較すると明らかなように、本実施形態例の
アレイ導波路型回折格子は、従来のアレイ導波路型回折
格子において問題であった光透過中心波長の温度依存性
を解消することができ、光波長多重通信用などの実用に
適した優れたアレイ導波路型回折格子であることが分か
る。
【0087】また、本実施形態例によれば、前記スライ
ド移動機構は、高熱膨張係数部材7、ベース9、係止部
材14を有して構成されており、ベース9に配置した導
波路形成部10aおよびその下の基板1の一端側を、高
熱膨張係数部材7を介してベース9に固定し、他端側を
係止部材14により係止するといった簡単な構成であ
り、アレイ導波路型回折格子の構成の複雑化を避けるこ
とができる。
【0088】さらに、本実施形態例によれば、上記のよ
うに導波路形成部10aおよびその下の基板1をベース
9にスライド移動自在に固定し、導波路形成部10およ
びその下の基板をベース9に固定したものであるため、
容易に作製することができる。
【0089】さらに、本実施形態例によれば、ペルチェ
素子やヒータを用いる必要がないために、ペルチェ素子
やヒータを含む温度調節手段を設ける場合のように、常
時通電を必要とせず、部品の組立誤差による温度補正誤
差が生じることもなく、室温以上の温度でアレイ導波路
型回折格子を保つことによるアレイ導波路型回折格子と
光ファイバとの接続損失増加の虞もない。
【0090】したがって、本実施形態例のアレイ導波路
型回折格子は、確実に、光透過中心波長の温度依存性を
解消でき、しかも、接続相手側の光ファイバとの接続信
頼性が高く、コストが安い優れたアレイ導波路型回折格
子とすることができる。
【0091】なお、本発明は上記実施形態例に限定され
ることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば、
上記実施形態例では、高熱膨張係数部材7としてAlの
板を用いたが、高熱膨張係数部材7は必ずしもAlとす
るとは限らず、Al以外の材料により形成してもよい。
【0092】また、上記実施形態例では、第1のスラブ
導波路3を分離したが、アレイ導波路型回折格子は光の
相反性を利用して形成されているものであり、第2のス
ラブ導波路5側を分離して、分離された分離スラブ導波
路の少なくとも一方側を、スライド移動機構によって前
記面に沿って前記各光透過中心波長の温度依存変動を低
減する方向にスライド移動させても、上記実施形態例と
同様の効果が得られ、前記各光透過中心波長の温度依存
変動を解消することができる。
【0093】さらに、第1のスラブ導波路3や第2のス
ラブ導波路5の分離面8は上記実施形態例のようにX軸
とほぼ平行な面とするとは限らず、X軸に対して斜めの
面としてもよく、分離するスラブ導波路を通る光の経路
と交わる面で分離すればよい。
【0094】さらに、上記実施形態例では、分離スラブ
導波路3a側を分離面8に沿ってスライド移動させるス
ライド移動機構を、高熱膨張係数部材7を設けて形成し
たが、スライド移動機構の構成は特に限定されるもので
はなく、適宜設定されるものである。すなわち、上記ス
ライド移動機構は、第1のスラブ導波路3と第2のスラ
ブ導波路5の少なくとも一方を面で分離して形成した分
離スラブ導波路の少なくとも一方側を、前記分離面8に
沿って温度に依存してスライド移動させることにより、
アレイ導波路型回折格子の光透過中心波長をシフトでき
る機能を有していればよい。
【0095】例えば、スライド移動機構は、上記のよう
な熱による伸縮を利用して前記分離スラブ導波路を移動
するのではなく、前記分離スラブ導波路を移動する機械
的移動手段と電気的移動手段の少なくとも一方の移動手
段を設けて構成してもよい。
【0096】なお、上記スライド移動機構は、上記実施
形態例のように、アレイ導波路型回折格子の各光透過中
心波長の温度依存変動を低減する方向にスライド移動さ
せる機能を有していれば望ましく、スライド移動機構を
このように構成することにより、上記実施形態例のよう
に、従来のアレイ導波路型回折格子において問題であっ
た光透過中心波長の温度依存性を解消することができ、
光波長多重通信用などの実用に適した優れたアレイ導波
路型回折格子とすることができる。
【0097】さらに、本発明のアレイ導波路型回折格子
を構成する各導波路2,3,4,5,6の等価屈折率や
本数、大きさなどの詳細な値は特に限定されるものでは
なく、適宜設定されるものである。
【0098】また、以上の説明は、光透過中心波長の温
度依存性を解消できるアレイ導波路型回折格子を提供
し、それにより、アレイ導波路型回折格子を光波長多重
通信用に適用する例を述べたが、これとは逆に、特殊な
用途に適用するために、上記光透過中心波長の温度依存
性を助長または加速するように上記スライド移動機構を
構成し、このスライド移動機構を備えたアレイ導波路型
回折格子を構成することができる。
【0099】
【発明の効果】本第1の発明によれば、第1のスラブ導
波路と第2のスラブ導波路の少なくとも一方を、スラブ
導波路を通る光の経路と交わる面で分離し、この分離し
たスラブ導波路の少なくとも一方を前記分離面に沿って
温度に依存してスライド移動させることにより、アレイ
導波路型回折格子の各光透過中心波長をシフトさせるこ
とができる。
【0100】また、本第2の発明によれば、本第1の発
明に加えて、前記光透過中心波長をシフトさせるスライ
ド移動機構を設け、スライド移動機構による面に沿って
の移動により、前記各光透過中心波長の温度依存変動を
低減する方向にスライド移動させるものであるから、前
記スライド移動量を適切な値とすることによって前記各
光透過中心波長の温度依存変動(波長ずれ)を解消する
ことができる。
【0101】さらに、本第2の発明によれば、ペルチェ
素子やヒータを用いなくてもアレイ導波路型回折格子の
使用環境温度による光透過中心波長ずれを抑制し、光透
過中心波長の温度無依存化を行うことができるために、
ペルチェ素子やヒータを含む温度調節手段を設ける場合
のように、常時通電を必要とすることもないし、部品の
組立誤差による温度補正誤差が生じることもなく、さら
に、室温以上の温度でアレイ導波路型回折格子を保つこ
とによるアレイ導波路型回折格子と光ファイバとの接続
損失増加の虞もない。
【0102】したがって、本第2の発明のアレイ導波路
型回折格子は、接続相手側の光ファイバとの接続信頼性
が高く、確実に光透過中心波長の温度依存性を解消で
き、コストが安い優れたアレイ導波路型回折格子とする
ことができる。
【0103】さらに、本第3の発明によれば、本第1の
発明に加えて、前記光透過中心波長をシフトさせるスラ
イド移動機構を設け、スライド移動機構による面に沿っ
ての移動により、各光透過中心波長の温度依存変動を増
大する方向に分離スラブ導波路をスライド移動させる構
成としたものであるから、各光透過中心波長の温度依存
変動を増大することを要求される特殊な用途に適用する
ことができる。
【0104】さらに、本第4の発明によれば、光透過中
心波長のシフトに応じた分離スラブ導波路移動量に対応
する熱膨張係数による伸縮が生じる物質を設けてスライ
ド移動機構を構成することにより、上記本第2又は本第
3の発明の効果を奏するアレイ導波路型回折格子を簡単
な構成で実現することができる。
【0105】さらに、本第5の発明によれば、分離スラ
ブ導波路を移動する機械的移動手段と電気的移動手段の
少なくとも一方の移動手段を設けてスライド移動機構を
構成することにより、上記本第2又は本第3の発明の効
果を奏するアレイ導波路型回折格子を簡単な構成で実現
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアレイ導波路型回折格子の一実施
形態例を平面図により示す要部構成図である。
【図2】上記実施形態例のアレイ導波路型回折格子にお
ける光透過中心波長の温度依存性を従来のアレイ導波路
型回折格子における光透過中心波長の温度依存性と比較
して示すグラフである。
【図3】アレイ導波路型回折格子における光透過中心波
長シフトと光入力導波路および光出力導波路の位置との
関係を示す説明図である。
【図4】ペルチェ素子を設けて構成した従来のアレイ導
波路型回折格子を示す説明図である。
【図5】アレイ導波路型回折格子の1つの光出力導波路
から出力される光の光透過特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板 2 光入力導波路 3 第1のスラブ導波路 3a,3b 分離スラブ導波路 4 アレイ導波路 5 第2のスラブ導波路 6 光出力導波路 7 高熱膨張係数部材 8 分離面 9 ベース 10,10a,10b 導波路形成部 14 係止部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斎藤 恒聡 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河電気工業株式会社内 (72)発明者 柏原 一久 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河電気工業株式会社内 Fターム(参考) 2H047 KA12 LA19 MA05 QA04 RA08 TA11 TA42 5K002 BA02 BA05 DA02 FA01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1本以上の並設された光入力導波路の出
    射側に第1のスラブ導波路が接続され、該第1のスラブ
    導波路の出射側には該第1のスラブ導波路から導出され
    た光を伝搬する互いに異なる長さの複数の並設されたア
    レイ導波路が接続され、該複数のアレイ導波路の出射側
    には第2のスラブ導波路が接続され、該第2のスラブ導
    波路の出射側には複数の並設された光出力導波路が接続
    されて成る導波路構成を有するアレイ導波路回折格子に
    おいて、前記第1のスラブ導波路と第2のスラブ導波路
    の少なくとも一方がスラブ導波路を通る光の経路と交わ
    る面で分離されており、この分離された分離スラブ導波
    路の少なくとも一方側を前記分離面に沿って温度に依存
    してスライド移動させることにより前記光透過中心波長
    をシフトさせることを特徴とするアレイ導波路型回折格
    子。
  2. 【請求項2】 分離スラブ導波路の少なくとも一方側を
    分離面に沿って移動させるスライド移動機構が設けられ
    て該スライド移動機構が光透過中心波長をシフトさせる
    機構と成しており、該スライド移動機構は各光透過中心
    波長の温度依存変動を低減する方向に分離スラブ導波路
    をスライド移動させる構成としたことを特徴とする請求
    項1記載のアレイ導波路型回折格子。
  3. 【請求項3】 分離スラブ導波路の少なくとも一方側を
    分離面に沿って移動させるスライド移動機構が設けられ
    て該スライド移動機構が光透過中心波長をシフトさせる
    機構と成しており、該スライド移動機構は各光透過中心
    波長の温度依存変動を増大する方向に分離スラブ導波路
    をスライド移動させる構成としたことを特徴とする請求
    項1記載のアレイ導波路型回折格子。
  4. 【請求項4】 スライド移動機構は、光透過中心波長の
    シフトに応じた分離スラブ導波路移動量に対応する熱膨
    張係数による伸縮が生じる物質を有していることを特徴
    とする請求項2又は請求項3記載のアレイ導波路型回折
    格子。
  5. 【請求項5】 スライド移動機構は、分離スラブ導波路
    を移動させる機械的移動手段と電気的移動手段の少なく
    とも一方の移動手段を有していることを特徴とする請求
    項2又は請求項3記載のアレイ導波路型回折格子。
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