JP2001283862A - 非水電解質電池 - Google Patents

非水電解質電池

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電池の諸特性の低下の抑制と、負極活物質の
充填密度の増大とを図りつつ、負極芯体から負極活物質
が剥がれるのを抑制して、電池製造時の歩留りの低下を
抑えることができる非水電解質電池の提供を目的として
いる。 【解決手段】 銅箔から成る負極芯体の表面に、充填密
度が1.65g/ml以上の負極活物質を含む負極活物
質層が形成された負極と、正極と、非水電解質とを有す
る非水電解質電池であって、上記銅箔から成る負極芯体
の伸び率が5.0%以上であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銅箔から成る負極
芯体の表面に負極活物質を含む負極活物質層が形成され
た負極と、正極と、これら正負極間に介在するセパレー
タと、非水電解質とを有する非水電解質電池に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、LiCoO2 等のリチウム含有遷
移金属酸化物等を正極活物質とする一方、金属リチウム
又はリチウムイオンを吸蔵、放出し得る合金、酸化物又
は黒鉛、コークス等の炭素材料を負極活物質とする非水
電解液二次電池が、高容量化が可能な電池として注目さ
れている。
【0003】上記負極活物質のうちリチウム又はリチウ
ムを主体とする材料を用いた場合には、充放電により樹
枝状のリチウムが析出(デンドライトが発生)し、電池
内で短絡するおそれがあるのに対して、炭素材料を負極
材料として用いると、このような欠点を解消することが
できるという利点がある。
【0004】ここで、上記炭素材料を用いて負極を作製
する場合には、先ず、炭素材料と結着剤等とを混合して
スラリーを調製した後、このスラリーを銅箔から成る負
極芯体に塗着し、更に、これを乾燥する。最後に、負極
活物質の充填密度を上げるべく、上記のようにして作製
した極板を、ローラープレス等によって圧延するという
ものである。
【0005】この場合、負極活物質の充填密度が1.3
〜1.4g/ml程度であれば、圧延時における負極活
物質の負極芯体幅方向への伸びが微小なので、銅箔から
成る負極芯体の伸びが不十分であっても、負極芯体と負
極活物質との密着性の低下は見られない。しかしなが
ら、負極活物質の充填密度が1.65g/mlを超える
ような場合には、活物質は負極芯体の幅方向に大きく伸
びるのに対して、銅箔から成る負極芯体の伸びが微小で
あるため、負極芯体と負極活物質との密着性が低下す
る。この結果、負極芯体から負極活物質が剥がれ易くな
って、電池製造時の歩留りが低下するという課題を有し
ていた。
【0006】そこで、負極芯体と負極活物質との密着性
を向上すべく、負極作製時に結着剤量を増加させるよう
な方法も考えられるが、これでは、電池の諸特性が低下
すると共に、電池の高容量化に不可欠な負極活物質の充
填密度の増大を図ることができないという課題を有す
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の課
題を考慮したものであって、電池の諸特性の低下の抑制
と、負極活物質の充填密度の増大とを図りつつ、負極芯
体から負極活物質が剥がれるのを抑制して、電池製造時
の歩留りの低下を抑えることができる非水電解質電池の
提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のうちで請求項1記載の発明は、銅箔から成
る負極芯体の表面に、充填密度が1.65g/ml以上
の負極活物質を含む負極活物質層が形成された負極と、
正極と、非水電解質とを有する非水電解質電池であっ
て、上記銅箔から成る負極芯体の伸び率が5.0%以上
であることを特徴とする。
【0009】上記の如く、負極活物質の充填密度が1.
65g/ml以上の負極を用いた場合であっても、銅箔
から成る負極芯体の伸び率が5.0%以上であれば、圧
延時に、銅箔と負極活物質層とを同程度に伸ばすことが
できるので、銅箔と負極活物質層との界面におけるスト
レスが減少し、負極芯体と負極活物質との密着性が低下
するのを防止できる。この結果、負極芯体から負極活物
質が剥がれ難くなって、電池製造時の歩留りが向上す
る。
【0010】また、上記構成であれば、負極作製時に結
着剤量を増加させることが不要となるので、電池の諸特
性が低下することもなく、且つ容易に電池の高容量化を
達成することができる。
【0011】また、請求項2記載の発明は、請求項1記
載の発明において、前記負極活物質が炭素材料から成る
ことを特徴とする。
【0012】このように、負極活物質として炭素材料を
用いた場合には、炭素材料は一般にプレスされ易いとい
うことから、充填密度の高い負極を容易に作製すること
ができる。
【0013】また、請求項3記載の発明は、請求項1又
は2記載の発明において、前記銅箔として、銅水溶液槽
から電気分解によって銅を析出して製箔する電解銅箔を
用いることを特徴とする。
【0014】このような方法により、負極芯体の伸び率
を5.0%以上とすることができ、しかも、銅箔として
電解銅箔を用いれば、同等の伸び率を有する圧延銅箔
(熱処理して伸び率を電解銅箔と同等まで増加させたア
ニール圧延銅箔)に比べて、負極芯体と負極活物質との
密着性が向上する。
【0015】また、請求項4記載の発明は、請求項1又
は2記載の発明において、前記銅箔として、電解銅箔を
熱処理して負極芯体の伸び率が8.0%以上となったも
のを用いることを特徴とする。
【0016】このように、銅箔として、熱処理により負
極芯体の伸び率が8.0%以上となった電解銅箔を用い
れば、負極芯体と負極活物質との密着性がより一層向上
する。
【0017】また、請求項5記載の発明は、請求項1又
は2記載の発明において、前記銅箔として、圧延銅箔を
熱処理したものを用いることを特徴とする。
【0018】このような方法によっても、負極芯体の伸
び率を5.0%以上とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】(正極の作製)先ず、正極活物質
としてのLiCoO2 (平均粒径:5μm)と、導電剤
としての人造黒鉛とを、重量比で9:1の割合で混合し
て正極合剤を作製した。次に、この正極合剤に、結着剤
としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%と、溶剤とし
てのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液とを混
合してスラリーを調製した後、このスラリーを正極芯体
としてのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法に
より塗布した。その後、溶剤を乾燥し、ローラーで所定
の厚みにまで圧縮した後、150℃で2時間真空乾燥さ
せて、正極を作製した。 (負極の作製)先ず、塊状黒鉛(Lc値:1000Å以
上、d(002) 値:3.378Å、平均粒径:18μm)
と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SB
R)のディスパージョン(固形分:48%)とを水に分
散させ、更に、増粘剤であるカルボキシメチルセルロー
ス(CMC)を添加して、スラリーを調製した。尚、上
記塊状黒鉛と、SBRと、CMCとの混合割合は、負極
乾燥後の重量比が、塊状黒鉛:SBR:CMC=10
0:3:2となるように混合した。この後、上記スラリ
ーを負極芯体としての銅箔(厚み:10μm)の両面に
ドクターブレード法により塗布した(厚みは各面100
μmである)。ここで、上記負極芯体としての銅箔は、
銅水溶液槽から電気分解によって銅を析出して製箔する
電解銅箔を120℃で12時間熱処理して、伸び率が1
2.5%となったものを用いた。その後、溶剤を乾燥
し、ローラーで所定の厚みにまで圧縮した後、110℃
で2時間真空乾燥させて、負極(活物質の充填密度:
1.70g/cc)を作製した。 (電解液の調製)電解液としては、EC(エチレンカー
ボネート)とDEC(ジエチルカーボネート)とが体積
比で50:50の割合で混合された混合溶媒に、LiP
6 が1M(モル/リットル)の割合で溶解された非水
電解液を用いた。 (電池の作製)上記正極と負極とをポリプロピレン製の
微多孔膜から成るセパレータを介して巻回して発電要素
を作製した後、この発電要素を有底筒状の外装缶内に挿
入した。最後に、上記電解液を外装缶内に注入した後、
封口板を外装缶の開口部に取り付けることにより、18
650型円筒形電池を作製した。
【0020】ここで、電解銅箔の熱処理温度及び時間と
しては、上記実施の形態に示す条件に限定するものでは
なく、110〜130℃で10〜15時間であれば良
い。
【0021】また、負極芯体は電解銅箔に限定するもの
ではなく、アニール圧延銅箔(圧延銅箔を熱処理して伸
び率を増加させたもの)であっても良いが、負極芯体と
負極活物質との密着性を向上させるには、電解銅箔を用
いるのが望ましい。尚、圧延銅箔を用いた場合の熱処理
温度及び時間としては、145〜155℃で25〜35
分間であれば良い。
【0022】また、負極芯体としての銅箔の厚みは10
μmに限定するものではなく、5〜20μmであれば、
上記と同等の効果がある。
【0023】更に、上記正極材料としては上記LiCo
2 に限定されるものではなく、その他のリチウム含有
金属複合酸化物(金属として、Co、Mn、Ni、V、
Nbから選択される少なくとも1種を用いる)等を用い
ることが可能である。
【0024】加えて、電解液の溶媒としては上記のもの
に限らず、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネ
ート、ビニレンカーボネート、シクロペンタノン、スル
ホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスル
ホラン、3−メチル1,3−オキサゾリジン−2−オ
ン、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジエ
チルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチル
プロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エ
チルプロピルカーボネート、ブチルエチルカーボネー
ト、ジプロピルカーボネート、1,2−ジメトキシエタ
ン、テトラヒドロフラン、2−メトルテトラヒドロフラ
ン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル等
の単体、或いは2成分及び3成分混合物であっても良
い。
【0025】また、電解液の溶質としては上記のものに
限らず、LiBF4 、LiCF3 SO3 、LiAs
6 、LiN(CF3 SO2 2 、LiClO4 等であ
っても良い。
【0026】更に、結着剤としては、上記のものに限定
するものではなく、メチル(メタ)アクリレート、エチ
ル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレー
ト、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エス
テル、或いは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン
酸、フマル酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボ
ン酸を使用することもできる。
【0027】
【実施例】(第1実施例) 〔実施例1〕実施例1としては、上記発明の実施の形態
に示す方法と同様の方法にて作製した電池を用いた。
【0028】このようにして作製した電池を、以下、本
発明電池Aと称する。 〔比較例1〕負極芯体として、熱処理を施していない圧
延銅箔(伸び率1.2%)を用いる他は、上記実施例1
と同様にして電池を作製した。
【0029】このようにして作製した電池を、以下、比
較電池X1と称する。 〔比較例2、3〕負極活物質の充填密度を1.40g/
mlとする他は、各々上記実施例1及び比較例1と同様
にして電池を作製した。
【0030】このようにして作製した電池を、以下、そ
れぞれ比較電池X2、X3と称する。 〔実験1〕本発明電池A及び比較電池X1〜X3におい
て、電池組立時の歩留りを調べたので、その結果を表1
に示す。尚、試料数は、各電池120個である。
【0031】
【表1】 上記表1から明らかなように、負極活物質の充填密度が
共に1.40g/mlの比較電池X2と比較電池X3と
を比べた場合には、負極芯体としての銅箔の伸び率が大
きく異なるにも関わらず、両者の歩留りに差異は認めら
れないのに対して、負極活物質の充填密度が共に1.7
0g/mlの本発明電池Aと比較電池X1とを比べた場
合には、本発明電池Aは比較電池X1に比べて歩留りが
格段に向上していることが認められる。したがって、負
極活物質の充填密度が大きい場合に、負極芯体の伸び率
が歩留りに影響していることがわかる。
【0032】そこで、負極芯体の伸び率を変化させて、
負極活物質の充填密度と負極活物質と負極芯体との密着
性について、下記実験2及び実験3でより詳しく調べ
た。 〔実験2〕電解銅箔を熱処理したものであって、伸び率
が12.5%の負極芯体(上記本発明電池Aと同様の負
極芯体)、圧延銅箔を熱処理していないものであって、
伸び率が1.2%の負極芯体(上記比較電池X1と同様
の負極芯体)、及び電解銅箔を熱処理していないもので
あって、伸び率が5.2%の負極芯体を用いて、負極活
物質の充填密度を変化させつつ、負極を作製し、各負極
の密着強度を調べたので、その結果を図1に示す。尚、
負極の密着強度の測定方法は、1cm2 の両面テープを
各負極に貼り付け、負極平面に対して垂直方向に引き上
げるときの荷重を調べることにより行い、また、図1に
おいては、負極活物質の充填密度が1.35g/mlの
ときの荷重を100%として示している。
【0033】図1から明らかなように、負極活物質の充
填密度が1.65g/ml未満では、いずれの負極芯体
を用いた場合であっても密着強度に殆ど変わりはない
が、負極活物質の充填密度が1.65g/ml以上で
は、伸び率が5.2%と12.5%の負極芯体を用いた
ものは、伸び率が1.2%の負極芯体を用いたものに比
べて密着強度が大きくなり、特に、伸び率が12.5%
の負極芯体を用いたものは密着強度が格段に大きくなっ
ていることが認められる。尚、グラフには示していない
が、伸び率が5.0%以上の負極芯体を用いれば密着強
度が大きくなり、特に、伸び率が8.0%の負極芯体を
用いたものは密着強度が格段に大きくなることを実験に
より確認している。
【0034】したがって、密着強度を大きくするには、
伸び率が5.0%以上の負極芯体を用いることが必要と
なり、特に、伸び率が8.0%の負極芯体を用いるのが
望ましいことがわかる。 〔実験3〕電解銅箔を熱処理していないものであって、
伸び率が5.2%の負極芯体、及び圧延銅箔を熱処理し
たものであって、伸び率が5.6%の負極芯体を用い
て、負極活物質の充填密度を変化させつつ、負極を作製
し、各負極の密着強度を調べたので、その結果を図2に
示す。尚、負極の密着強度の測定方法は、上記実験2と
同様の方法で行い、また、図2においては、負極活物質
の充填密度が1.35g/mlのときの荷重を100%
として示している。
【0035】図2から明らかなように、負極活物質の充
填密度が1.65g/ml未満では、いずれの負極芯体
を用いた場合であっても密着強度に殆ど変わりはない
が、負極活物質の充填密度が1.65g/ml以上で
は、電解銅箔を熱処理していない負極芯体の方が、圧延
銅箔を熱処理した負極芯体よりも伸び率が低いにも関わ
らず、密着強度が大きくなっていることが認められる。
【0036】したがって、密着強度を大きくするには、
電解銅箔を用いるのが望ましいことがわかる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
銅箔と負極活物質層とを同程度に伸ばすことができるの
で、銅箔と負極活物質層との界面におけるストレスが減
少し、負極芯体と負極活物質との密着性が低下するのを
防止できる。この結果、負極芯体から負極活物質が剥が
れ難くなって、電池製造時の歩留りが向上する。
【0038】また、負極作製時に結着剤量を増加させる
ことが不要となるので、電池の諸特性が低下することも
なく、且つ負極活物質の充填密度を高くすることができ
るので、電池の高容量化を達成することができるという
優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】負極活物質の充填密度と密着強度との関係を示
すグラフ。
【図2】負極活物質の充填密度と密着強度との関係を示
すグラフ。
フロントページの続き (72)発明者 高橋 昌利 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 Fターム(参考) 5H017 AA03 AS10 BB01 BB06 BB16 CC01 EE01 HH01 5H029 AJ01 AJ14 AK03 AL06 AL07 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 BJ02 BJ14 CJ02 CJ03 CJ24 DJ07 EJ01 HJ00 HJ08 5H050 AA01 AA19 BA17 CA08 CB08 DA03 FA05 GA09 GA22 HA08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅箔から成る負極芯体の表面に、充填密
    度が1.65g/ml以上の負極活物質を含む負極活物
    質層が形成された負極と、正極と、非水電解質とを有す
    る非水電解質電池であって、 上記銅箔から成る負極芯体の伸び率が5.0%以上であ
    ることを特徴とする非水電解質電池。
  2. 【請求項2】 前記負極活物質が炭素材料から成る、請
    求項1記載の非水電解質電池。
  3. 【請求項3】 前記銅箔として、銅水溶液槽から電気分
    解によって銅を析出して製箔する電解銅箔を用いる、請
    求項1又は2記載の非水電解質電池。
  4. 【請求項4】 前記銅箔として、電解銅箔を熱処理して
    負極芯体の伸び率が8.0%以上となったものを用い
    る、請求項1又は2記載の非水電解質電池。
  5. 【請求項5】 前記銅箔として、圧延銅箔を熱処理した
    ものを用いる、請求項1又は2記載の非水電解質電池。
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