JP2001256985A - 燃料電池 - Google Patents

燃料電池

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敬正 川越
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Hiromichi Yoshida
弘道 吉田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 触媒層での酸化反応を抑制することによっ
て、酸化熱による電解質膜劣化を有効に防止する。 【解決手段】 拡散層22と触媒層21とからなる電極
13によって電解質膜を挟持してなる燃料電池におい
て、触媒層21を拡散層22と電解質膜とにより密閉し
た。具体的には、拡散層22の長さ方向両端部に、触媒
層21の端面21Cと密着する断面略L字状の折り曲げ
部22aを形成した。これにより、ガス流路24に投入
したブリードガスは、拡散層22の拡散作用によって触
媒層21に到達するまでの間に均等に拡散されて密度が
均一化し、触媒層21での酸化反応の発生は抑制され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、いわゆる固体高分
子電解質膜型の燃料電池に係わり、特に、触媒層での酸
化反応を抑制することによって、酸化熱による電解質膜
劣化を有効に防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の燃料電池は、例えば図8に示す
ような構造のセル101を複数積層させてなり、各々の
セル101は、固体高分子電解質膜(以下、「電解質
膜」と略記する。)102の両面にアノード電極(燃料
極)103及びカソード電極(空気極)104をそれぞ
れ接合してなる膜・電極接合体(以下、「MEA」と略
記する。)105と、このMEA105を両側から挟持
するセパレータ106と、各電極103,104への供
給ガスの外部漏洩を防ぐガスケット107とを主体に構
成されている。
【0003】アノード電極103及びカソード電極10
4は、電極反応を促進させるための触媒層111と、ガ
ス拡散性を有する拡散層112とによる積層構造をなし
ている。セパレータ106は、ガスを透過させない緻密
質のカーボン板や金属板からなり、拡散層112と接す
る一方の側面にはガス流路113a,113bが、ま
た、他方の側面には冷却水流路114が形成されてい
る。
【0004】このように構成された燃料電池において
は、アノード電極103に面したガス流路113aにア
ノードガス(水素)が供給されると共に、カソード電極
104に面したガス流路113bにカソードガス(空
気)が供給されることによって、これら電極間で電気化
学反応に基づく発電が行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、特に改質装
置によってメタノール等から前記アノードガスを生成
し、これを燃料電池に供給する燃料電池システムにおい
ては、アノードガス中に混入するCO(一酸化炭素)に
よる触媒被毒を回避するため、ブリードエアをアノード
電極103側のガス流路113aに投入することが行わ
れる。
【0006】ところが、その投入量を増やすと、ブリー
ドエアがガスケット107とアノード電極103の隙間
に回り込み、アノード電極面内で水素と酸素が反応して
しまうため、その酸化反応時に発生する酸化熱によって
MEA105の劣化を招くおそれがあった。また、ME
A105の膜厚を減少させると、カソードガスがアノー
ド電極103側に透過し易くなるため、その影響で上記
と同様にMEA105の劣化を招くおそれがある。
【0007】仮に、ブリードエア投入時に、アノードガ
スの供給を一時的に止めてカソードガスのみを供給する
ような操作をしても、カソードガスがアノード電極10
3側に回り込んでアノード電極面内がカソードガスで満
たされてしまうため、ガス流路113aにアノードガス
を再投入した段階で、アノード電極面で水素と酸素が反
応してMEA105の劣化を招くおそれがある。
【0008】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであり、その目的とするところは、触媒層での酸
化反応を抑制することによって、酸化熱による電解質膜
の劣化を有効に防止することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者は、図5
〜図7に示す実験結果より、触媒層を拡散層で完全に覆
い込むことによって、電解質膜の劣化を抑制できること
を見出した。図5は、拡散層に覆われていない剥き出し
部分のある触媒層を備えたMEAに投入するブリードエ
ア率を2%,5%,…,40%,50%と順次変えてい
ったときの、アノード入口圧力(破線),カソード入口
圧力(鎖線),及び発電電圧(実線)の経時変化を示し
ている。
【0010】なお、ブリードエア率等は、以下のように
定義した。 ブリードエア率(%) :100×ブリードエア量/S
RGガス量 SRG成分 :H2,N2,CO2,CO,C
4,MeOH
【0011】この図より、上記構成のMEAにあって
は、ブリードエア率を徐々に増加させると、これに伴っ
て発電電圧も低下していることから、電解質膜の劣化が
徐々に進行していることが確認された。さらに、ブリー
ドエア率が50%になると、発電電圧が急降下すると共
に、それまで30kPa弱の圧力差を有していたアノー
ド入口圧力及びカソード入口圧力が同圧に変化している
ことから、MEA破損を来たしたことも確認された。
【0012】他方、図6は、触媒層を大きめの拡散層で
完全に覆ったMEAを用い、このMEAに対するブリー
ドエア率の限界量を測定すべく、ブリードエア率を50
%及び100%にしたときのアノード入口圧力(破
線),カソード入口圧力(鎖線),及び発電電圧(実
線)の経時変化を示している。また、図5及び図6に基
づいて、ブリードエア率とMEA破損の有無との関係を
まとめると、図7の通りになる。
【0013】これらの図より、上記構成のMEAにあっ
ては、ブリードエア率が50%及び100%のいずれの
場合においても、発電電圧が略一定に保たれていること
から、電解質膜の劣化が有効に抑制されていることが確
認された。さらに、ブリードエア率を100%とした場
合においても、アノード入口圧力及びカソード入口圧力
が同圧に変化していないことから、MEA破損を来して
いないことも確認された。この事は、ブリードエアの停
止後にも、アノード入口圧力及びカソード入口圧力は同
圧とならずに一定圧を保ち、電圧値を復元している点で
も明らかである。
【0014】そこで、本発明は、上記課題を解決すべ
く、以下の構成を採用した。請求項1の発明は、拡散層
(22)と触媒層(21)とからなる電極(アノード電
極13,カソード電極14)によって電解質膜(12)
を挟持してなる燃料電池において、前記触媒層は、前記
拡散層と前記電解質膜とにより密閉されていることを特
徴としている。
【0015】この構成によれば、ブリードエアは拡散層
以前の空間内で密度のばらつきを有するため、触媒層が
拡散層で覆われていない場合、触媒層にブリードエアが
直接触れると、部分的に高密度のブリードエアがアノー
ドガスと反応して電解質膜の劣化を招いてしまうが、触
媒層を拡散層と電解質膜とで密閉すると、拡散層での拡
散作用によってブリードエアが均等に拡散されて密度が
均一化するため、酸化反応の発生が抑制される。仮に、
触媒層で酸化反応が発生しても、電解質膜に接触してい
る拡散層が熱マスとなって酸化熱が放熱されるため、電
解質膜の劣化は抑制される。
【0016】また、請求項2の発明は、拡散層(22)
と触媒層(21)とからなる電極(アノード電極13,
カソード電極14)によって電解質膜(12)を挟持し
てなる燃料電池において、前記触媒層は、前記電解質膜
と接する一面(側面21A)を備え、前記拡散層は、前
記触媒層の前記一面以外の周面(側面21B,端面21
C,端面21D)を覆って前記電解質膜に接して設けら
れていることを特徴としている。
【0017】この構成によれば、触媒層が拡散層と電解
質膜とで覆い込まれるため、上記同様、拡散層での拡散
作用によって酸化反応の発生が抑制される。また、仮に
触媒層で酸化反応が発生しても、上記同様、拡散層が熱
マスになるため、電解質膜の劣化は抑制される。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明の一
実施の形態について説明する。図1は本実施の形態によ
る固体高分子電解質膜型燃料電池の要部を示す断面図、
図2は同燃料電池の一構成要素であるセルの全体構成
図、図3は同セルの分解斜視図、図4は同セルの一構成
要素であるMEAの一製造工程を示す工程図である。
【0019】燃料電池は、図2に示すような構造のセル
11を複数積層させてなり、各々のセル11は、電解質
膜12の両面にアノード電極13及びカソード電極14
をそれぞれ接合してなるMEA15と、このMEA15
を両側から挟持するセパレータ16と、各電極13,1
4への供給ガスの外部漏洩を防ぐガスケット17とを主
体に構成されている。電解質膜12は、電子は透過させ
ずにプロトン(陽子)のみを選択的に透過させる性質を
有している。
【0020】アノード電極13及びカソード電極14
は、電極反応を促進させるための触媒層21と、ガス拡
散性を有する拡散層22とによる積層構造になってお
り、触媒層21は、拡散層22と電解質膜12とによっ
て密閉されている。すなわち、拡散層22は、その長さ
方向両端部に触媒層21の端面21C,21Dを覆う断
面略L字状の屈曲部22aを備えることによって、触媒
層21の周面のうち、電解質膜12と接する側面21A
以外の側面21B及び端面21C,21Dを覆い得る形
状をなしている。
【0021】セパレータ16は、ガスを透過させない緻
密質のカーボン板や金属板からなり、拡散層22と接す
る一方の側面14Aには、凹溝状のガス流路24a,2
4bが形成されており、また、他のセル11のセパレー
タ16と接する他方の側面16Bには、凹溝状の冷却水
流路25が形成されている。そして、各セル11におい
ては、ガス流路24aにアノードガス(水素)が供給さ
れると共に、ガス流路24bにカソードガス(空気)が
供給されることによって、電極13,14間で電気化学
反応に基づく発電が行われる。
【0022】ところで、改質装置によってメタノール等
からアノードガスを生成し、これを燃料電池に供給する
燃料電池システムにおいては、電極触媒のCO被毒を回
避するために、ブリードエアをアノードガス流路に投入
することが行われる。この場合においても、本実施の形
態による燃料電池においては、触媒層21の全周面(側
面21A,21B及び端面21C,21D)が電解質膜
12と拡散層22とにより覆われた密閉構造をなしてい
るから、言い換えれば、拡散層22が電解質膜12と接
する側面21A以外の周面である側面21B及び端面2
1C,21Dを覆って電解質膜12に接して設けられて
いるから、ブリードエアは触媒層21に到達するまでの
間に拡散層22の拡散作用によって均等に拡散されて密
度が均一化される。
【0023】このため、高密度のブリードエアが触媒層
21と直接接触することによって生じる酸化反応を有効
に回避し得ると共に、仮に触媒層21で酸化反応が発生
することがあっても、屈曲部22aを介して電解質膜1
2に接触している拡散層22が熱マスとなって酸化反応
時に発生した酸化熱が放熱されるため、電解質膜12の
劣化を効果的に抑制することが可能になる。よって、ブ
リードエアの投入量を増やしたり、MEA15の膜厚を
減少させても、電解質膜12の劣化を招くことはない。
【0024】次に、図4を用いて、MEA15の一製造
方法について概説する。まず最初に、拡散層22を構成
する長方形状のカーボンペーパ51を準備し、その一面
にカーボン/テフロン(登録商標)層(以下、「C/T
層」と称する。)52を積層する。C/T層52は、カ
ーボン/テフロン混合ペースト(以下、C/Tペース
ト」と称する。)53をカーボンペーパ51の表面に印
刷しこれを焼成する工程を2回繰り返すことによって、
カーボンペーパ51の全周縁部51aを除く範囲に積層
する。
【0025】C/Tペースト53は、溶媒としてエチレ
ングリコール54を用い、カーボンブラック55とテフ
ロンパウダー56を混合して作製する。なお、C/T層
52は触媒層21に均一な電極面を形成する目的で、ま
た、カーボンペーパ51への電極ペースト61の食い込
みを防ぐ目的で設けている。次いで、C/T層52の表
面に触媒層21を積層して電極13,14を作製する。
触媒層21は、電極ペースト61をC/T層52の表面
に印刷しこれを焼成する工程を3回繰り返すことによっ
て、C/T層52の全面に積層する。
【0026】電極ペースト61は、フッ素系の陽イオン
交換溶液62をエチレングリコール63で溶媒置換して
陽イオン交換エチグリ溶液64とした後、この陽イオン
交換エチグリ溶液64に電極触媒65を混合撹拌して作
製する。このとき、アノード電極用の電極触媒65に
は、耐CO被毒性を向上させる観点からPt−Ru担持
カーボンを使用し、また、カソード電極用の電極触媒6
5にはPt担持カーボンを使用する。
【0027】次に、上記工程を経て作製した電極13,
14の周縁部51aをトリミングする。このとき、C/
T層52及び触媒層21が積層されていない部分、すな
わち、カーボンペーパ51のみからなる部分を全て切除
するのではなく、該カーボンペーパ51のみの部分を電
極13,14の全周にわたって所定幅だけ残しておく。
しかる後、電極13,14間に電解質膜12を介在さ
せ、これらをホットプレスして一体的に接合する。
【0028】すると、カーボンペーパ51のみからなる
各電極13,14の周縁部51aは、触媒層21の端面
21C,21Dと密着するように折り曲げられて屈曲部
21aを構成し、電解質膜12と共に触媒層21を密閉
することになる。言い換えれば、拡散層22をなすカー
ボンペーパ51が、触媒層21の周面のうち、電解質膜
12と接する一面以外の全周面を覆うことになる。
【0029】また、この密閉構造を実現するため、電解
質膜12は、デュポン社製のナフィオン等のパーフルオ
ロスルホン酸系の陽イオン交換膜71を電極13,14
よりも若干大きめのサイズとなるようにトリミングして
おく。最後に、ホットプレスによる一体接合体の長さ方
向両端部に複数の連通口72を形成することによって、
図2示すような構造を備えたMEA15が完成する。以
上説明したように、このMEA製造方法によれば、電解
質膜12と拡散層22とによって触媒層21が密閉され
たMEA15を低コストにて容易に大量生産できるよう
になる。
【0030】なお、触媒層21の拡散層22による覆い
込みを上記折り曲げ工程によらず、拡散層22の弾性変
形を利用し、セル11を多数積層させる際にセル11の
厚み方向に加えられる圧縮力によって拡散層22に触媒
層21を食い込ませ、覆い込み構造を達成させてもよ
い。
【0031】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、触媒のCO被毒を回避するためにブリードエ
ア投入を行っても、触媒層を拡散層と電解質膜とで密閉
した(覆う)ことによって、ブリードエアが触媒層を通
過する間に拡散されて密度が均一化されるようにしたか
ら、部分的に高密度のブリードエアが触媒層に直接接触
することによる局部的な酸化反応の発生を回避し得ると
共に、仮に酸化反応が発生したとしても、電解質膜に接
触している拡散層が熱マスとなって酸化熱が有効に放熱
されるため、電解質膜の劣化を効果的に抑制することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態による高分子電解質膜
型燃料電池の要部を示す断面図である。
【図2】 図1に示すセルの全体構成図である。
【図3】 図1に示すセルの分解斜視図である。
【図4】 図1に示すMEAの一製造工程を示す工程図
である。
【図5】 触媒層に剥き出し部分のあるMEAの性能試
験結果を示す図である。
【図6】 触媒層に剥き出し部分のないMEAの性能試
験結果を示す図である。
【図7】 図5及び図6に基づき、ブリードエア率とM
EA破損の有無との関係をまとめた図である。
【図8】 高分子電解質膜型燃料電池の一従来例を示す
要部断面図である。
【符号の説明】
12 電解質膜 13 アノード電極(電極) 14 カソード電極(電極) 21 触媒層 21A 側面(電解質膜と接する一面) 21B 側面(触媒層の前記一面以外の周面) 21C、21D 端面(触媒層の前記一面以外の周面) 22 拡散層
フロントページの続き (72)発明者 加藤 英男 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 (72)発明者 吉田 弘道 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 (72)発明者 沼田 英雄 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 5H018 AA06 AS02 AS03 BB00 DD06 EE05 EE17 5H026 AA06 CC03 CC08

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 拡散層と触媒層とからなる2つの電極に
    よって電解質膜を挟持してなる燃料電池において、 前記触媒層は、前記拡散層と前記電解質膜とにより密閉
    されていることを特徴とする燃料電池。
  2. 【請求項2】 拡散層と触媒層とからなる2つの電極に
    よって電解質膜を挟持してなる燃料電池において、 前記触媒層は、前記電解質膜と接する一面を備え、 前記拡散層は、前記触媒層の前記一面以外の周面を覆っ
    て前記電解質膜に接して設けられていることを特徴とす
    る燃料電池。
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