JP2001247576A - チオフェン誘導体およびその重合体 - Google Patents

チオフェン誘導体およびその重合体

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JP2001247576A JP2000065538A JP2000065538A JP2001247576A JP 2001247576 A JP2001247576 A JP 2001247576A JP 2000065538 A JP2000065538 A JP 2000065538A JP 2000065538 A JP2000065538 A JP 2000065538A JP 2001247576 A JP2001247576 A JP 2001247576A
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  • Heterocyclic Carbon Compounds Containing A Hetero Ring Having Oxygen Or Sulfur (AREA)
  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 合成が比較的容易で、重合体の原料となりう
る新規なチオフェン誘導体と、これを用いて、導電性材
料等の用途が期待できる新規な重合体を提供する。 【解決手段】 下記式で示される特定構造の4,8−ジ
アルコキシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオ
フェン化合物と、この化合物から誘導される構造単位を
有する重合体を得る。 [式中、Rは炭素数20以下のアルキル基を表す。]

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規化合物である
チオフェン誘導体およびそれを用いて得られる重合体に
関する。
【0002】
【従来の技術】ピロール、チオフェン、アニリン等のヘ
テロ原子を含む五員環構造物または芳香環構造物を重合
して得られる重合体は導電性材料として好適なため、近
年盛んに研究が進められている。これらの重合物は一般
にドーピング量を変えることにより導電率を自在にコン
トロールすることができるため、各種センサー、一次電
池、二次電池、帯電防止剤等への用途が検討されてい
る。
【0003】一般にピロール、チオフェン、アニリン等
の重合体は主鎖に沿って連続するπ共役系を有する構造
から成り立っている。ただ、これらの化合物自身は殆ど
導電性を示さず、ドーピングをすることによって初めて
導電性を発現する。例えば、ピロールの化学酸化重合に
よりポリピロールを重合する方法は、Synthetic Metal
s,31,311,1989に、アニリンの化学酸化重合によりポリ
アニリンを重合する方法は、特表平3−505892号
公報に開示されている。
【0004】特にチオフェンは、特開平1−31352
1号公報および特開平2−15611号公報に開示され
ているように、チオフェン環の3および4位を特定の官
能基で置換したチオフェン誘導体が提案され、これらを
化学酸化重合することにより得られた重合体が優れた導
電性を有することが確認されている。
【0005】アニリンの酸化重合によって得られるポリ
アニリンはドーピングにより優れた導電性を有すること
は、例えば、Synthetic Metals,41-43,715,1991等にお
いて知られている。しかし、その重合体の化学構造は複
雑であり、重合体生成物を金属やプラスチックに成膜す
る際、緻密な重合膜を得ることが困難であり、成膜性は
著しく低い。また、ピロールの酸化重合によって得られ
るポリピロールもまた優れた導電性が得られ、ポリアニ
リンより優れた成膜性を有することから実用化が進んで
いるが、ポリピロールの耐酸化性が十分でないことから
さらなる安定性を得るために改善が求められている。
【0006】一方、チオフェン環の3および4位を特定
の官能基で置換したチオフェン誘導体を酸化重合するこ
とによって得られる重合体はポリピロール以上の耐酸化
性・耐熱安定性を示すことが知られている。しかしなが
ら、チオフェン環を特定の官能基で置換する製造工程を
追加しなければならず、その製造プロセスは非常に複雑
である。このためピロールやアニリンに比較して製造コ
ストが著しく増加してしまうといった欠点を有してい
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
実状に鑑みてなされたものであり、合成が比較的容易
で、重合体の原料となりうる新規なチオフェン誘導体を
提供することであり、さらに、このチオフェン誘導体を
用いて、導電性材料等の用途が期待できる新規な重合体
を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記の本発
明によって達成される。 (1) 下記式(1)で表されるチオフェン誘導体。
【0009】
【化6】
【0010】[式(1)中、R1およびR2は、各々炭素
数20以下のアルキル基を表す。X1、X2、X3および
4は、各々一価の置換基を表す。p、q、rおよびs
は、各々0〜2の整数であり、p+qおよびr+sは、
各々2以下である。] (2) 下記式(2)で表される上記(1)のチオフェ
ン誘導体。
【0011】
【化7】
【0012】[式(2)中、R1は、炭素数20以下の
アルキル基を表す。R3は水素原子または炭素数6以下
のアルキル基を表す。X11およびX12は、各々水素原子
またはハロゲン原子を表す。] (3) 下記式(3)で表される上記(1)または
(2)のチオフェン誘導体。
【0013】
【化8】
【0014】[式(3)中、R1は炭素数20以下のア
ルキル基を表す。] (4) 式(2)中のX11および/またはX12が臭素原
子である上記(2)のチオフェン誘導体。 (5) 下記式(4)で表される構造単位を有する重合
体。
【0015】
【化9】
【0016】[式(4)中、R1およびR2は、各々炭素
数20以下のアルキル基を表す。X21およびX22は、各
々水素原子または一価の置換基を表す。] (6) 下記式(5)で表される上記(5)の重合体。
【0017】
【化10】
【0018】[式(5)中、R1は20以下のアルキル
基を表す。R3は水素原子または炭素数6以下のアルキ
ル基を表す。nは2以上の数である。]
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明のチオフェン誘導体は、新規な化合物であ
り、式(1)で表されるものである。
【0020】
【化11】
【0021】式(1)中、R1およびR2は、各々炭素数
20以下のアルキル基を表し、X1〜X4は、各々一価の
置換基を表す。p、q、rおよびsは、各々0〜2の整
数であり、p+q、r+sは、各々2以下である。
【0022】R1とR2とは同一でも異なるものであって
もよいが、通常は同一であることが好ましい。
【0023】R1、R2で表される炭素数20以下のアル
キル基は、直鎖状であることが好ましいが、分岐を有し
ていてもよい。また、無置換であることが好ましいが、
置換基を有していてもよい。このようなアルキル基とし
ては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n
−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オ
クタデシル基、などが挙げられる。
【0024】X1、X2、X3、X4で表される一価の置換
基としては、ハロゲン原子、アルキル基、などが挙げら
れる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨ
ウ素等であり、臭素等が好ましい。アルキル基として
は、炭素数6以下であることが好ましく、無置換で直鎖
状であることが好ましく、例えばメチル基、エチル基、
n−プロピル基、等がある。p、q、r、sは0、1ま
たは2であり、p+q、r+sは2をこえることはな
い。
【0025】X1〜X4、p、q、rおよびsは、目的に
応じて、適宜選択すればよい。
【0026】例えば、式(1)のチオフェン環の2位に
おいて、脱ブロムのような脱ハロゲン化重合により重合
体を得る場合は、まず、p=q=r=s=0の化合物を
得、臭素等のハロゲン原子を導入してハロゲン置換物を
得ることによればよい。通常、チオフェン環の2位で重
合させることから、この位置にハロゲンを導入した化合
物を得ることが好ましい。したがって、ダイマーを得る
場合は、p、q、r、sのうちの1つが1であって、そ
の1に対応するX1〜X4=のいずれかがハロゲン原子で
ある化合物を得ることが好ましい。例えば、p=q=r
=0、s=1であってX4=ハロゲン原子の化合物であ
る。
【0027】式(1)で表されるチオフェン誘導体のな
かでも、式(2)、(3)で表されるチオフェン誘導体
が好ましい。
【0028】
【化12】
【0029】
【化13】
【0030】式(2)中、R1は式(1)中のR1、R2
と同義のものである。R3は水素原子または炭素数6以
下のアルキル基を表し、R3で表されるアルキル基とし
ては、式(1)中のX1〜X4で表されるアルキル基と同
様のものがある。X21およびX 22は各々水素原子または
ハロゲン原子を表し、X21、X22で表されるハロゲン原
子としては、式(1)中のX1〜X4で表されるハロゲン
原子と同様のものがある。
【0031】式(3)で表されるチオフェン誘導体は、
式(2)において、R3=水素原子、X11=X12=水素
原子のものである。
【0032】以下に、式(1)で表されるチオフェン誘
導体の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定され
るものではない。ここでは、式(2)中のR1等の組み
合わせで示している。
【0033】
【化14】
【0034】式(1)で表されるチオフェン誘導体は、
式(3)で表されるチオフェン誘導体を例にすれば、以
下のスキームに従って合成される。
【0035】
【化15】
【0036】1)3−チオフェンカルボン酸と塩化チオ
ニル(SOCl2)とを、塩化チオニル過剰下で還流さ
せながら4時間程度反応させ、過剰の塩化チオニルを除
去して乾燥し、酸塩化物を得る。これに過剰のジメチル
アミンを0℃程度の温度で徐々に滴下し、0℃〜室温
(30℃程度の温度)程度の温度で24時間程度撹拌
し、精製して酸アミド(N,N’−ジメチル−3−チオ
フェンカルボン酸アミド)を得る。
【0037】2)次に、この酸アミドとn−ブチルリチ
ウム(n−BuLi)とを当量ずつドライエーテル中で
−78℃〜室温程度の温度で反応させる。このとき、n
−ブチルリチウムを−78℃で徐々に滴下し、この温度
で、1時間程度撹拌し、さらに−78℃〜室温程度の温
度で一晩(4〜8時間)程度撹拌すればよい。その後、
希塩酸などで反応を終了させ、精製してジキノン化合物
(4,8−ジキノン[1,2−b:4,5−b’]ジチ
オフェン)を得る。
【0038】3)さらに、得られたジキノン化合物に、
亜鉛粉を添加し、エタノールと質量百分率で20%のN
aOH水溶液とを加え、90〜100℃程度の温度で5
〜8時間程度還流させて反応させ、次に、過剰のアルキ
ル−p−トルエンスルホン酸を加え、一晩(4〜8時
間)程度、80〜90℃程度の温度で撹拌する。次に、
飽和のチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、さらに精製し
て目的物(4,8−ジアルコキシベンゾ[1,2−b:
4,5−b’]ジチオフェン)を得る。
【0039】また、このような化合物において、チオフ
ェン環に置換基を導入するには、公知の方法によって行
えばよい。
【0040】本発明のチオフェン誘導体は、元素分析、
核磁気共鳴スペクトル(NMR)、赤外吸収スペクトル
(IR)などによって同定することができる。
【0041】本発明の重合体は、式(1)で表されるチ
オフェン誘導体を用いて得られるものであり、式(4)
で表される構造単位を有する。
【0042】
【化16】
【0043】式(4)中、R1およびR2は、式(1)中
のものと同義のものであり、X21およびX22は、各々水
素原子または一価の置換基を表す。X21、X22で表され
る一価の置換基としては、アルキル基等が挙げられ、具
体的には式(2)中のR3で表される炭素数6以下のア
ルキル基と同じものが好ましいものとして挙げられる。
【0044】本発明の重合体は、式(4)で表される構
造単位を有するものであれば、他のモノマー(例えばチ
オフェン、ピロール、ベンゼンなどを有するモノマー)
から誘導される構造単位を有するもの(共重合体)であ
ってもよいが、式(5)で表される重合体が好ましい。
【0045】
【化17】
【0046】式(5)中、R1、R3は、式(2)中のも
のと同義のものであり、nは2以上の数であるが、2〜
1000であることが好ましい。
【0047】式(5)における各構造単位には、通常同
一であることが好ましいが、場合によっては異なるもの
であってもよい。末端基は原料モノマーに由来するもの
とできるほか、目的に応じて種々のものとできる。
【0048】本発明の重合体の分子量は、重量平均分子
量Mwで1,000〜100,000の範囲にあること
が好ましい。
【0049】本発明の重合体の具体例を以下に示すが、
本発明はこれに限定されるものではない。ここでは、式
(5)中のR1等の組合せで示している。なお、末端基
については、ダイマー(n=2)を除いて、省略して示
す。
【0050】
【化18】
【0051】本発明の重合体を得るには、例えば、式
(3)の化合物から式(5)の重合体(ただし、R3
H)を得る場合を示すと、以下のスキームに従う。
【0052】
【化19】
【0053】a)式(3)の化合物(4,8−ジアルコ
キシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェ
ン)をクロロホルム(CHCl3)中で臭素化し、チオ
フェン環の2位にBrを導入し、臭素化物(2,6−ジ
ブロモ−4,8−ジアルコキシベンゾ)[1,2−b:
4,5−b’]ジチオフェン)を得る。
【0054】b)この臭素化物を、ジメチルホルムアミ
ド(DMF)中にビス(1,5−シクロオクタジエン)
ニッケル(0)[Ni(cod)2]とビピリジン(bp
y)と1,5−シクロオクタジエン(cod)とを添加
し撹拌したものに加え、室温(15〜30℃程度の温
度)で48時間程度撹拌し、精製して目的の重合体を得
る。
【0055】本発明の重合体は、元素分析、核磁気共鳴
スペクトル(NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)な
どによって同定することができる。
【0056】上記においては、脱ブロム化重合による重
合法を示したが、このほか、式(3)の化合物からFe
Cl3を用いた重合法や電解重合による重合法によって
も重合体を合成することができる。
【0057】本発明の重合体は、ヨウ素をドープするこ
とによって、10-4〜102Scm-1程度の導電率を示し、
導電性材料としての用途が期待できる。また、耐酸化性
や耐熱性が良好である。このほか、ドーパントとしては
FeCl3等を用いることができる。
【0058】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
する。 実施例1 3−チオフェンカルボン酸と塩化チオニル(SOC
2)とを、塩化チオニルが3−チオフェンカルボン酸
の約2倍モル量となる条件で、4時間還流させながら反
応させ、その後塩化チオニルをアスピレーターを用いて
除去し、乾燥した。このようにして得られた酸塩化物を
ベンゼンに溶解し、0℃で、この酸塩化物に対し、2〜
3倍モル量のジメチルアミンをゆっくりと滴下し、24
時間撹拌した。この撹拌は0℃〜室温の範囲の温度で行
った。このものを水中に加え、エーテルで抽出し、エー
テル抽出液を水洗いし、K2CO3で乾燥した。このエー
テル溶液を濃縮した後に、SiO2を吸着剤とするカラ
ムを用い、CHCl3:MeOH=20:1(体積比)
の溶離剤で精製し、N,N’−ジメチル−3−チオフェ
ンカルボン酸アミドの白色粉末を得た。収率は70〜8
0%である。
【0059】N,N’−ジメチル−3−チオフェンカル
ボン酸アミドをドライエーテル中で−78℃で撹拌し、
これと当モル量のn−ブチルリチウムを−78℃でゆっ
くりと滴下し、1時間ほど撹拌し、さらに一晩撹拌し
た。撹拌は−78℃〜室温の範囲の温度で行い、希塩酸
水溶液で反応を終了させた。その後ろ過し、黄色の沈殿
物を得た。これをクロロホルム(CHCl3)に溶解
し、SiO2カラムに通し、CHCl3を溶離剤として精
製した。このものは1分画であり、ろ過した段階で、ほ
ぼ純品と考えられる。この溶離物から得られた結晶をC
HCl3とヘキサンとの約1:2(体積比)混合溶剤を
用いて再結晶し、4,8−ジキノン[1,2−b:4,
5−b’]ジチオフェンを得た。収率は40〜50%で
あった。
【0060】4,8−ジキノン[1,2−b:4,5−
b’]ジチオフェン1mmolと、Zn粉2.5mmolと、E
tOH0.5mlと、20%(質量百分率)NaOH水溶
液3.5mlとを、90〜100℃で5〜8時間還流して
反応させた。この反応により、黄色から赤色に変化する
のが認められた。
【0061】次に、メチル−p−トルエンスルホン酸
を、上記の生成物に対して3倍モル量添加し、1晩(4
〜8時間)、80〜90℃で撹拌し反応させた。この反
応物に対し、チオ硫酸ナトリウム(Na223)の飽
和水溶液を加え、2回洗浄し、ろ過し、白色沈殿物を得
た。このものをCHCl3に溶かしてSiO2カラムに通
してCHCl3で溶離した。この溶離物から得られた結
晶をCHCl3に溶かし、ここへ過剰のヘキサンを加え
て2層分離の状態にして再結晶し、白色固体の4,8−
ジメトキシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオ
フェン(化合物No.1:下記構造)を得た。収率は60
%である。なお、カラムにより、Rf値の違いを利用し
て、出発原料(4,8−ジキノン化合物)を回収するこ
とができる。
【0062】4,8−ジメトキシベンゾ[1,2−b:
4,5−b’]ジチオフェンについての1HNMRと13
CNMRの測定を行った。1HNMRは、TMS(テト
ラメチルシラン)を基準物質とし、CDCl3中で測定
した。13CNMRはTMSを基準物質とし、CDCl3
中で測定した。結果を以下に示す。
【0063】1 HNMR(ppm):4.14(s,6H),7.40(d,2H),7.51(d,2H)13 CNMR(ppm):61.3,120.1,126.3,129.8,131.2,145.
3
【0064】
【化20】
【0065】また、この化合物No.1についての可視紫
外吸収スペクトルを図1に示す。測定はCHCl3中で
行った。
【0066】さらに、サイクリックボルタンメトリーの
結果を図2に示す。(a)は掃引速度を50mV/sとした
ものであり、(b)は掃引速度を50mV/s、100mV/
s、150mV/s、200mV/sとしたもので、0.1モル
/リットルのEt4BF4のCH 3CN溶液に9.9×1
-4モル/リットルの添加量となるように溶液を調製
し、電位はAg+/Agの標準還元電位を基準とした。
図2より、2電子酸化反応が起きていることがわかる。
【0067】実施例2 実施例1の合成において、4,8−ジキノン[1,2−
b:4,5−b’]ジチオフェンの混合反応生成物に対
して、メチル−p−トルエンスルホン酸のかわりに、n
−ヘキシル−p−トルエンスルホン酸を用いるほかは、
同様の操作により、4,8−ジn−ヘキシルオキシベン
ゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(化合物
No.2:下記構造)を得た。ただし、このものは透明溶
液として得られ、冷却することにより固体となった。
【0068】これについて、実施例1と同様にして、1
HNMRと13CNMRの測定を行った。結果を以下に示
す。また1HNMRスペクトルを図3に示す。
【0069】1HNMR(ppm):0.92(t,6H),1.36(m,12
H),1.88(quint,4H),4.28(t,4H),7.36(d,2H),7.47(d,2H)13 CNMR(ppm):14.1,27.3,25.9,30.7,31.8,74.4,12
1.0,126.6,130.8,132.3,145.3
【0070】
【化21】
【0071】実施例3 実施例1の合成において、4,8−ジキノン[1,2−
b:4,5−b’]ジチオフェンの混合反応生成物に対
して、メチル−p−トルエンスルホン酸のかわりに、n
−オクタデシル−p−トルエンスルホン酸を用いるほか
は、同様の操作により、4,8−ジn−オクタデシルオ
キシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン
(化合物No.3:下記構造)を得た。このものは、白色
の結晶物であった。
【0072】
【化22】
【0073】実施例4 実施例1〜3で合成した化合物No.1〜3のチオフェン
環のそれぞれの2位に臭素を導入した化合物No.5、
7、9(下記構造)を得た。臭素化はCHCl3中でB
2を導入することによって行った。いずれも白色結晶
であった。
【0074】これらの2,6−ジブロモ−4,8−ジア
ルコキシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフ
ェン化合物の元素分析の結果を以下に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【化23】
【0077】化合物No.5(2,6−ジブロモ−4,8
−ジメトキシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチ
オフェン)、No.7(2,6−ジブロモ−4,8−ジn
−ヘキシルオキシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]
ジチオフェン)についての1HNMRの結果を以下に示
す。化合物No.7については、13CNMRの結果を併せ
て示し、化合物No.5については1HNMRスペクトルを
図4に、IRスペクトルを図5に示す。NMRの測定は
実施例1と同様に行い、IRはKBr法によった。
【0078】化合物No.51 HNMR(ppm):4.06(s,6H),7.47(s,2H) 化合物No.71 HNMR(ppm):0.93(t,6H),1.37-1.54(m,12H),1.84(q
uint,4H),4.19(t,4H),7.42(d,2H)13 CNMR(ppm):14.0,22.6,25.6,30.4,31.6,74.2,11
5.0,123.2,130.9,131.2,142.6
【0079】実施例5 実施例1で合成した化合物No.1を用い、一方のチオフ
ェン環のみの2位が臭素化されるような条件で、化合物
No.6(下記構造)を得た。これについて、実施例1と
同様にして1HNMRを測定した。結果を以下に示す。1
HNMR(ppm):7.41(d,2H),7.48(d,2H)
【0080】
【化24】
【0081】実施例6 実施例5で合成した化合物No.6を用い、Ni(co
d)2とビピリジンの存在下、DMF中で2量化し、重
合体(ダイマー)D−1(下記構造)を得た。このもの
は黄色針状結晶であった。この元素分析の結果を表2に
示す。また、実施例1と同様にして測定した1HNMR
の結果を以下と図6に示す。また、実施例4と同様にし
て測定したIRスペクトルを図7に、実施例1と同様に
して測定した可視・紫外吸収スペクトルを図8に示す。1 HNMR(ppm):4.18(d,12H),7.43(d,2H),7.50(d,2H),
7.71(s,2H)
【0082】
【表2】
【0083】
【化25】
【0084】また、実施例1と同様にして測定した重合
体(ダイマー)D−1のサイクリックボルタンメトリー
の結果を図9に示す。ただし、(a)は掃引速度100
mV/sでの0〜−2.0Vのチャートであり、(b)は掃
引速度50mV/s、100mV/s、150mV/sでの0〜1.
5Vのチャートである。図9から、4電子酸化が起きて
いることがわかる。
【0085】実施例7 Ni(cod)2とドライDMFとビピリジンと1,5
−シクロオクタジエンとを15分間、室温で撹拌したも
のに、実施例4で合成したジブロム体(化合物No.5、
7または9)を加え、室温で48時間撹拌して反応させ
た。得られた重合体を、HCl水溶液で3回、EDTA
(エチレンジアミン四酢酸)水溶液で3回、さらに温水
で1回、MeOHで1回洗い、重合体P−1〜P−3
(下記構造)を得た。
【0086】重合体P−1、P−2は赤茶色の固体物、
重合体P−3は黒色の固体物であり、いずれもほとんど
の有機溶媒に溶解しなかった。重合体P−2のCHCl
3可溶部についてCHCl3によるゲルパーミエーション
クロマトグラフィー(G.P.C)を測定した。これに
よる重量平均分子量Mwは3500であった。
【0087】重合体P−1、P−2、P−3について元
素分析を行った結果を表3に示す。重合体P−1、P−
3については、出発モノマー(ジブロム体)の元素分析
を併せて示す。
【0088】
【表3】
【0089】
【化26】
【0090】表3の結果から、重合体P−1、P−3は
末端にBrを有していると考えられる。
【0091】これらの重合体のうち、重合体P−2につ
いて、実施例1と同様にして測定した1HNMRの結果
を図10に示す。また、重合体P−2のIRスペクトル
を図11に、重合体P−1のIRスペクトルを図12に
示す。さらに、重合体P−1、P−2の可視・紫外吸収
スペクトルの結果を図13、14に示す。なお、測定方
法は前記の実施例と同様である。重合体P−1の可視・
紫外吸収スペクトルはCHCl3可溶部分についてのも
のである。さらに、重合体P−1、P−2の熱重量測定
(TG)の結果を図15、16に示す。また、重合体P
−1、P−2、P−3のX線回折(XRD)パターンを
図17〜図19に示す。
【0092】実施例8 実施例1〜3に準じ、化合物No.10(下記構造)を合
成し、さらに、実施例4に準じ、化合物No.12(下記
構造)を合成した。そして、これにより、実施例7に準
じ、重合体P−4(下記構造)を得た。
【0093】この重合体P−4のサイクリックボルタン
メトリーの結果を図20に、また熱量分析(TG)の結
果を図21に示す。
【0094】
【化27】
【0095】実施例9 重合体P−1、P−2、P−4にI2の蒸気を4時間あ
て、乾燥し、I2をドープした重合体を得た。I2のドー
プにより、赤茶色から黒色に変化するのが確認された。
【0096】I2をドープした重合体P−1、P−2の
元素分析値とI5 -で計算したドーピングレベルを表4に
示す。重合体P−2については、乾燥時間をかえてドー
ピングレベルをかえた2種を調製した。
【0097】
【表4】
【0098】さらに、I2ドープの重合体P−1、I2
イトドープの重合体P−2についてのIRスペクトル
を、図22、図23に、X線回折(XRD)の結果を図
24、図25に示す。
【0099】ドープ後において、IR吸収に変化がみら
れた。また、X線回折の結果によれば、重合体P−1で
は、I2ドープ後、結晶性が低下し、重合体P−2で
は、I2ライトドープ後に、結晶性が増すことがわかっ
た。
【0100】さらに、I2をドープした重合体P−1、
P−2、P−4(P−2についてはドーピングレベルが
2種)について、抵抗R(Ω)と伝導度(S/cm)を測定
し、電伝導性を調べた。測定は、圧力下(10MP
a)、粉末ペレットを用いて行った。結果を表5に示
す。
【0101】
【表5】
【0102】実施例10 重合体P−1、P−2、P−4を用い、これにFeCl
3をドープした重合体を得た。0.05mol/lのFeCl
3のニトロメタン(CH3NO2)溶液に重合体を添加
し、24時間撹拌し、ニトロメタンで洗浄することによ
りドープした。
【0103】このうち、FeCl3をドープした重合体
P−1、P−2についてのIRスペクトルを図26、2
7に示す。FeCl3のドープによりIR吸収に変化が
生じていることがわかる。
【0104】FeCl3をドープした重合体重合体P−
1、P−2、P−4の電気伝導性を実施例9と同様にし
て調べた。結果を表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
【発明の効果】本発明のチオフェン誘導体を製造する工
程は、特開平1−313521号公報および特開平2−
15611号公報に開示されているチオフェン環の3お
よび4位を特定の官能基で置換したチオフェン誘導体を
製造するプロセスに比較して、合成途中段階での各反応
が平易であり、製造手順が大幅に簡略化された。各ステ
ップでの反応性も良好である。このため、生成物収率も
高い。
【0107】したがって、前記チオフェン環の3および
4位を特定の官能基で置換したチオフェン誘導体に比較
して、製造コストの上昇を低減可能である。
【0108】また、本発明のチオフェン誘導体を酸化重
合することによって得られる重合体は、前記チオフェン
環の3および4位を特定の官能基で置換したチオフェン
誘導体、ピロールやアニリンを酸化重合することによっ
て得られる重合体の有する導電性、耐熱性、耐酸化性に
比較して、同等以上の特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のチオフェン誘導体の可視紫外吸収スペ
クトル図である。
【図2】本発明のチオフェン誘導体のサイクリックボル
タンメトリーのチャートであり、(a)は掃引速度を5
0mV/sとしたとき、(b)は掃引速度を50mV/s〜20
0mV/sまでかえたときのチャートである。
【図3】本発明のチオフェン誘導体の1HNMRスペク
トル図である。
【図4】本発明のチオフェン誘導体(ジブロム体)の1
HNMRスペクトル図である。
【図5】本発明のチオフェン誘導体(ジブロム体)のI
Rスペクトル図である。
【図6】本発明の重合体(ダイマー)の1HNMRスペ
クトル図である。
【図7】本発明の重合体(ダイマー)のIRスペクトル
図である。
【図8】本発明の重合体(ダイマー)の可視紫外スペク
トル図である。
【図9】本発明の重合体(ダイマー)のサイクリックボ
ルタンメトリーのチャートであり、(a)は掃引速度1
00mV/sとしたとき、(b)は掃引速度を50mV/s〜1
50mV/sまでかえたときのチャートである。
【図10】本発明の重合体の1HNMRスペクトル図で
ある。
【図11】本発明の重合体のIRスペクトル図である。
【図12】本発明の重合体のIRスペクトル図である。
【図13】本発明の重合体の可視紫外スペクトル図であ
る。
【図14】本発明の重合体の可視紫外スペクトル図であ
る。
【図15】本発明の重合体のTGの結果を示すグラフで
ある。
【図16】本発明の重合体のTGの結果を示すグラフで
ある。
【図17】本発明の重合体のXRD図である。
【図18】本発明の重合体のXRD図である。
【図19】本発明の重合体のXRD図である。
【図20】本発明の重合体のサイクリックボルタンメト
リーのチャートである。
【図21】本発明の重合体のTGの結果を示すグラフで
ある。
【図22】本発明の重合体(I2ドープ後)のIRスペ
クトル図である。
【図23】本発明の重合体(I2ドープ後)のIRスペ
クトル図である。
【図24】本発明の重合体(I2ドープ後)のXRD図
である。
【図25】本発明の重合体(I2ドープ後)のXRD図
である。
【図26】本発明の重合体(FeCl3ドープ後)のX
RD図である。
【図27】本発明の重合体(FeCl3ドープ後)のX
RD図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)で表されるチオフェン誘導
    体。 【化1】 [式(1)中、R1およびR2は、各々炭素数20以下の
    アルキル基を表す。X1、X2、X3およびX4は、各々一
    価の置換基を表す。p、q、rおよびsは、各々0〜2
    の整数であり、p+qおよびr+sは、各々2以下であ
    る。]
  2. 【請求項2】 下記式(2)で表される請求項1のチオ
    フェン誘導体。 【化2】 [式(2)中、R1は、炭素数20以下のアルキル基を
    表す。R3は水素原子または炭素数6以下のアルキル基
    を表す。X11およびX12は、各々水素原子またはハロゲ
    ン原子を表す。]
  3. 【請求項3】 下記式(3)で表される請求項1または
    2のチオフェン誘導体。 【化3】 [式(3)中、R1は炭素数20以下のアルキル基を表
    す。]
  4. 【請求項4】 式(2)中のX11および/またはX12
    臭素原子である請求項2のチオフェン誘導体。
  5. 【請求項5】 下記式(4)で表される構造単位を有す
    る重合体。 【化4】 [式(4)中、R1およびR2は、各々炭素数20以下の
    アルキル基を表す。X21およびX22は、各々水素原子ま
    たは一価の置換基を表す。]
  6. 【請求項6】 下記式(5)で表される請求項5の重合
    体。 【化5】 [式(5)中、R1は20以下のアルキル基を表す。R3
    は水素原子または炭素数6以下のアルキル基を表す。n
    は2以上の数である。]
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