JP2001225156A - 鋼の連続鋳造鋳片、連続鋳造方法および鋼材の製造方法 - Google Patents

鋼の連続鋳造鋳片、連続鋳造方法および鋼材の製造方法

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JP2001225156A
JP2001225156A JP2000036997A JP2000036997A JP2001225156A JP 2001225156 A JP2001225156 A JP 2001225156A JP 2000036997 A JP2000036997 A JP 2000036997A JP 2000036997 A JP2000036997 A JP 2000036997A JP 2001225156 A JP2001225156 A JP 2001225156A
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Toru Kato
徹 加藤
Yoshiki Ito
義起 伊藤
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高炭素鋼またはCr含有高炭素鋼の製品に疵が
発生することを防止できる連続鋳造鋳片、連続鋳造方法
および鋼材の製造方法の提供。 【解決手段】C:0.9〜1.4質量%を含有し、炭化
物と金属相とからなる共晶組織部が存在する領域が、最
終凝固部から10mm以内である鋳片。その製法におい
ては、鋳片の中心部の固相率が0.5〜0.8の領域
で、鋳片の圧下を開始し、圧下開始時の圧下位置での固
相率が0.8以下の未凝固部の厚さに対して1.5倍以
上、かつ10mm以上の圧下量で圧下する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続鋳造鋳片から
製造される軸受けなどの中間素材としての鋼管などの疵
の発生を防止できる連続鋳造鋳片、その鋳片の連続鋳造
方法およびその鋳片を熱間圧延することによる鋼管など
の鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Cを約1質量%含有する工具鋼やばね
鋼、またはCを約1%、Crを1〜1.5質量%含有す
る軸受鋼などの連続鋳造鋳片の厚さ中心部に存在する中
心偏析部には、炭化物と金属相からなる共晶組織部が生
成しやすく、そのため、この共晶組織部を起因とする製
品疵が発生しやすい。
【0003】Fe−C系状態図からわかるように、Fe
とセメンタイトとの共晶組織の融点は約1150℃と比
較的低い。一方、製管などの熱間圧延時に、素材である
連続鋳造鋳片を、熱間加工性の確保の観点から1150
℃程度まで加熱することが多い。その際に加熱された鋳
片の温度には、位置によるばらつきがあるので、部分的
に鋳片の温度が1150℃を超える場合がある。したが
って、鋳片の加熱時に鋳片内部に存在する共晶組織部が
部分的に溶融するので、熱間加工時にその溶融した部分
を基点に疵が発生しやすくなる。
【0004】そこで、工具鋼、ばね鋼、軸受鋼などの鋼
の連続鋳造鋳片の中心偏析対策として、鋳片内部の未凝
固部に電磁攪拌を作用させたり、未凝固部を含む鋳片を
圧下して、偏析成分の濃化した溶鋼を鋳造方向の上流側
に排出することにより、中心偏析を防止する対策が採ら
れてきた。
【0005】たとえば、特開平11−10299号公報
では、中心部の固相率が0〜0.4となる鋳片の領域で
電磁攪拌を作用させ、中心部の固相率が0.1〜0.4
となる鋳片の領域で、未凝固部厚さの50〜90%の圧
下量で鋳片を圧下する方法が提案されている。しかし、
この方法では、工具鋼、ばね鋼、軸受鋼などに用いられ
る高炭素鋼またはCr含有高炭素鋼などの鋼の連続鋳造
鋳片には、中心偏析が発生する場合があり、そのため、
これら鋳片を素材として、熱間加工する際に疵が発生
し、製品疵が発生する場合がある。
【0006】さらに、これら高炭素鋼またはCr含有高
炭素鋼などの鋼では、鋳造条件によっては、前述の中心
偏析部に加えて、中心偏析部以外の鋳片の領域にも、共
晶組織部が生成する場合がある。すなわち、急激に鋳造
速度を変化させた場合や、鋳片の二次冷却水量が部分的
に過大な量になった場合などに、中心偏析部よりも鋳片
表面側の領域に、共晶組織部が形成される場合がある。
とくに、短辺厚さや直径が300mm以上である比較的
大きな断面の鋳片の場合に、鋳片の厚さ中心位置や横断
面中心位置から10mm以上離れた部分にまで、共晶組
織部が生成しやすい。
【0007】このように、高炭素鋼またはCr含有高炭
素鋼などの鋼を鋳造する際に、共晶組織部の生成を抑制
して、共晶組織部に起因する製品疵の発生の防止が望ま
れている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、工具鋼、ば
ね鋼、軸受鋼などに用いられる高炭素鋼またはCr含有
高炭素鋼の連続鋳造鋳片を素材として熱間加工する際
に、熱間加工中に疵が発生することを防止でき、製品で
も疵が発生することのない鋼の連続鋳造鋳片、その鋳片
の連続鋳造方法、およびその鋳片を熱間圧延することに
よる鋼材の製造方法に関する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)に示す連続鋳造鋳片、(2)に示す連続鋳造方法
および(3)に示す鋼材の製造方法にある。 (1)質量%で、C:0.9%以上1.4%以下を含有
し、炭化物と金属相とからなる共晶組織部が存在する領
域が、最終凝固部から10mm以内である鋼の連続鋳造
鋳片。 (2)中心部の固相率が0.5以上0.8以下の鋳造方
向の領域で鋳片の圧下を開始し、圧下開始時の圧下位置
での固相率が0.8以下の未凝固部の厚さに対して1.
5倍以上、かつ10mm以上の圧下量で圧下する上記
(1)に記載の鋼の連続鋳造鋳片の連続鋳造方法。 (3)上記(1)に記載の鋳片、または上記(2)に記
載の連続鋳造方法を用いて鋳造した鋳片を熱間圧延する
鋼材の製造方法。
【0010】本発明が対象とする鋳片の横断面形状は、
長方形、正方形、円形などの形状であり、さらに、長方
形および正方形において、その両端部に丸味を持たせて
いるもの、台形、多角形、楕円などの形状である。
【0011】最終凝固部は、横断面形状が長方形の鋳片
の場合には、ほぼ横断面厚さ方向の中心線に相当し、ま
た、正方形および円形の鋳片の場合には、ほぼ横断面中
心に相当する。また、鋳片横断面をマクロエッチするこ
となどにより、その最終凝固部を識別することができ
る。
【0012】共晶組織部(以下、単に共晶組織と記す場
合もある)とは、炭化物と金属相とで形成された組織で
ある。
【0013】図2は、Cを0.9〜1.1質量%、およ
びCrを1.4〜1.7質量%含有する軸受鋼の横断面
形状が円形の連続鋳造鋳片を用いて、鋳片内部の共晶組
織部の生成状況とその鋳片を素材として鋼管に熱間加工
した際の製品疵の発生状況との関係を示す図である。連
続鋳造中の未凝固部を含む鋳片の圧下は行っていない。
また、鋳片のソーキングなど、鋳片の拡散熱処理は行わ
ず、鋳造したままの鋳片を熱間加工用の素材とした。
【0014】製品疵とは、鋼管内面に発生するかぶれ状
の疵である。製品疵の発生率とは、熱間圧延後の鋼管の
内面にかぶれ疵が発生している部分の長さを、鋼管の全
長で除した比率である。この製品疵発生率が5%未満で
あれば、その製品疵の手入れを行うことにより、製品化
が可能である。また、共晶組織部の生成範囲とは、共晶
組織部が生成している鋳片の最終凝固部からの鋳片厚さ
方向の最長の距離を意味する。
【0015】図2から、共晶組織部の生成している鋳片
の領域が、鋳片の最終凝固部から10mm以内の場合に
は、製品疵発生率は5%未満であることがわかる。つま
り、製品疵が多く発生するのは、共晶組織部が鋳片の最
終凝固部から10mm以上離れた領域に生成した場合で
あることが分かった。
【0016】すなわち、質量%で、C:0.9〜1.4
%を含有する鋼の鋳片の場合に、炭化物と金属相とから
なる共晶組織部が存在する領域を、長方形の鋳片の場合
には、最終凝固部から両側のそれぞれ10mm以内、正
方形および円形の鋳片の場合には、最終凝固部から半径
10mm以内とする。これにより、製品疵の発生を極わ
ずかな発生率にまで抑制することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は、高炭素鋼の連続鋳造鋳片
の中心部の金属組織を模式的に示す図である。中心偏析
部および中心偏析部よりも鋳片表面側の領域に存在する
共晶組織部を拡大して模式的に示した。
【0018】この共晶組織部は、鋳片の中心部およびそ
の近傍から試料を切り出し、鏡面研磨した後、さらにピ
クラールでエッチングし、倍率50倍の光学顕微鏡で観
察した例である。共晶組織部の大きさは、大きいもので
長さ約1500μm、幅2000m程度で、粒界部分に
生成した共晶組織を介してネットワーク状に連なるマト
リックスとは異なる集合体であり、容易に識別すること
ができる。
【0019】この共晶組織の中で炭化物は中心部の塊状
の部分とその周囲の棒状に見える部分で、光学顕微鏡で
観察すれば、その色と形状から容易に識別できる。すな
わち、炭化物の色は白色で、形状は塊状、板状または棒
状である。
【0020】また、共晶組織内の金属相は、エッチング
により灰色になっており板状あるいは棒状の炭化物に挟
まれたように見える部分で、冶金学的には共晶反応によ
り生成したオーステナイト相が温度低下に伴い変態した
パーライト相を意味する。なお、共晶組織以外のマトリ
ックスは、ほとんどがパーライト組織である。
【0021】本発明が対象とする鋼は、C:0.9〜
1.4質量%を含有する高炭素鋼であり、10質量%未
満のCrを含んでいてもよい。なお、以下の説明におけ
る化学組成の含有率%表示は、質量%を意味する。
【0022】C含有率が0.9%未満では、鋳片内部に
共晶組織部が生成しにくいので、共晶組織に起因する製
品疵が発生しにくい。また、C含有率が1.4%を超え
ると、中心偏析部および中心偏析部の鋳片表面側の領域
に共晶組織が形成されること以外に、凝固末期に発生す
るミクロ偏析により共晶組織が生成しやすい。すなわ
ち、鋳片の横断面全体に共晶組織が生成しやすい。した
がって、共晶組織に起因する製品疵の発生を防止するに
は、熱間加工時の鋳片の加熱温度を共晶組織の融点に相
当する約1150℃よりも低温側の温度とするなど別の
対策が必要になってくる。したがって、高炭素鋼では、
C含有率は0.9〜1.4%とする。
【0023】また、Cを0.9〜1.4質量%含有し、
さらにCrを含有させる場合には、Cr含有率を10%
未満とするのがよい。Crを10%以上含有する場合に
は、凝固末期に発生するミクロ偏析により共晶組織が鋳
片の横断面全体に生成しやすいからである。前述のとお
り、熱間加工時の鋳片の加熱温度を共晶組織の融点に相
当する約1150℃よりも低温側にするなど別の対策が
必要になる。したがって、含Cr高炭素鋼では、C含有
率は0.9〜1.4%とし、Cr含有率は10%未満と
するのがよい。
【0024】その他の化学組成に関して、溶鋼の脱酸ま
たは製品の引張強度などの機械的性能などの確保を目的
に、Mn:2%未満、Si:1.5%未満の範囲で添加
するのがよい。その他、Alなどの脱酸元素や、Nb、
V、Mo、Ni、Cu、Ti、Bなどの合金元素を、通
常含有させる程度に含有させてもよい。いずれも、この
程度の含有量では、共晶組織部の形成には影響しない。
【0025】本発明の連続鋳造鋳片では、共晶組織部が
存在する領域が、最終凝固部から5mm以内であること
が望ましい。その場合には、より効果的に製品疵の発生
を抑制することができる。
【0026】図3は、横断面形状が円形の鋳片を鋳造
し、未凝固部を含む鋳片を圧下し、さらに完全凝固した
鋳片を円形に成形する場合の連続鋳造機の例を示す図で
ある。本発明の連続鋳造方法を実施することができる連
続鋳造機の例である。
【0027】タンディッシュ(図示していない)から、
浸漬ノズル1を介して鋳型2内に溶鋼3が注入される。
鋳型内で凝固殻4が形成される。未凝固部を含む鋳片5
は、連続的に引き抜かれる。ガイドロール6を通過する
間に、鋳片表面は水冷却されるので、徐々に凝固殻の厚
さが増す。
【0028】凝固末期に相当する位置には、未凝固部を
含む鋳片を圧下するための圧下ロール対7を配置し、そ
の鋳造方向の下流側の位置には、圧下されて変形し完全
凝固した鋳片を円形に戻すための成形ロール対8a、8
bを配置する。この例では、圧下ロール対7は水平ロー
ル対の例を示しており、また、成形ロール対8aは垂直
ロール対、8bは水平ロール対の例を示す。
【0029】圧下ロール対は、鋳片の厚さ中心部近傍の
偏析成分の濃化した溶鋼を鋳造方向の上流側に排出させ
る機能を有するものであればよく、また、複数あっても
よく、鋳片の断面形状が円形の場合には、垂直ロール対
であっても構わない。また、鍛圧装置など他の機構の設
備であっても構わない。
【0030】本発明の連続鋳造方法では、中心部の固相
率が0.5〜0.8の鋳造方向の領域で鋳片の圧下を開
始し、圧下開始時の圧下位置での固相率が0.8以下の
未凝固部の厚さに対して1.5倍以上、かつ10mm以
上の圧下量で圧下する。
【0031】中心部の固相率が0.5未満の領域で鋳片
の圧下を開始すると、共晶組織部が鋳片の最終凝固部か
ら10mm以上離れた領域まで生成しやすい。その理由
は次のとおりである。すなわち、圧下量に比べて、圧下
開始時の圧下位置での未凝固部の厚さが厚く、凝固した
鋳片の厚みが薄いので、鋳片の最終凝固部から10mm
以上離れた領域の既に凝固している鋳片に割れが発生し
やすい。その割れの部分に偏析成分の濃化した溶鋼が入
り込み、共晶組織が生成するためである。
【0032】また、中心部の固相率が0.8を超えた領
域で鋳片の圧下を開始すると、既に凝固完了している鋳
片の厚さが厚く、また、厚さ中心部近傍の偏析成分の濃
化した溶鋼の流動性が悪いことから、鋳片を圧下するた
めに大きな圧下力が必要となり、圧下ロール対が過大な
設備となる。
【0033】圧下開始時の圧下位置での固相率が0.8
以下の未凝固部領域の厚さの1.5倍以上、かつ10m
m以上の圧下量で圧下することは、たとえば、圧下開始
時の圧下位置での固相率が0.8以下の未凝固部領域の
厚さが10mmとした場合には、その1.5倍以上の1
5mmの圧下量で圧下することを意味する。この程度の
適度な圧下量で圧下を行うことにより、既に凝固した鋳
片に割れが発生することなく、偏析成分の濃化した溶鋼
を鋳造方向の上流側に排出でき、炭化物と金属相とから
なる共晶組織部の存在する鋳片の領域を、最終凝固部か
ら10mm以内とすることができる。
【0034】圧下量を圧下開始時の圧下位置での固相率
が0.8以下の未凝固部領域の厚さの1.5倍未満とす
ると、その圧下量が10mm以上でも、圧下量が不十分
となる場合がある。たとえば、圧下開始時の圧下位置で
の固相率が0.8以下の未凝固部領域の厚さが10mm
の場合には、圧下量が10mmでは不十分である。ま
た、1.5倍以上でも、その圧下量が10mm未満の場
合にも、圧下量が不十分となる場合がある。たとえば、
圧下開始時の圧下位置での固相率が0.8以下の未凝固
部領域の厚さが4mmの場合には、圧下量が8mmでは
不十分である。圧下量が不十分な場合には、共晶組織部
の生成範囲が、鋳片の中心部から10mmを超えやす
い。
【0035】鋳片の圧下量の上限は、横断面形状が長方
形、正方形の鋳片の場合には、鋳片厚さの1/2、円形
の鋳片の場合には鋳片直径の1/2までとするのが望ま
しい。それぞれ鋳片厚さ、または直径の1/2を超えて
圧下すると、圧下後の鋳片を成形ロール対で成形するこ
とが困難になる場合がある。成形が困難な場合には、そ
の鋳片を熱間圧延用素材として用いることが困難とな
る。
【0036】工具鋼、ばね鋼、軸受鋼などに用いられる
高炭素鋼またはCr含有高炭素鋼の連続鋳造鋳片を素材
として熱間加工する際に、本発明の鋳片を用いること、
または、本発明の方法を用いて鋳造する鋳片を用いるこ
とにより、熱間加工中に疵が発生することを防止でき、
製品でも疵が発生することを防止できる。鋳片の加熱温
度、在炉時間、圧延温度などは、これら高炭素鋼または
Cr含有高炭素鋼の通常の熱間圧延条件と同じで構わな
い。
【0037】本発明の鋼材の製造方法は、継目無鋼管、
棒鋼、丸鋼などの鋼材に適用するのに好適である。継目
無鋼管などでは、製管する際の内面疵の発生を防止でき
る。また、棒鋼、丸鋼などでは、それらの切断面に、か
ぶれ状の疵が発生するのを防止でき、また、切断したも
のをさらに熱間や冷間で加工する際に、製品表面に割れ
疵などが発生するのを防止できる。
【0038】
【実施例】断面形状が円形の鋳型で、図3に示す装置構
成の連続鋳造機を用いて、未凝固部の領域の鋳片の圧下
を行う鋳造試験を実施した。
【0039】鋳片のサイズは直径250mmで、速度
1.5〜2.2m/分の範囲で鋳造した。鋳片の二次冷
却比水量は、0.14〜0.26リットル/kg−鋼と
した。鋳片の圧下装置は、1つの水平ロール対とし、メ
ニスカスから18mの位置に配置した。ロール径は60
0mmで、ロール表面形状はフラットとした。圧下後の
鋳片の成形のための成形ロール対は2つとし、上流側の
垂直ロール対はメニスカスから21m、下流側の水平ロ
ール対はメニスカスから23mにそれぞれ配置した。ま
た、いずれもロールにも孔形を配置した。ロール径はそ
れぞれ450mmとした。
【0040】用いた鋼は、Cを0.9〜1.1質量%、
Crを1.4〜1.7質量%それぞれ含有する軸受鋼
で、化学組成を表1に示す。
【0041】
【表1】 圧下開始時の圧下位置での固相率が0.8以下の未凝固
部領域の厚さは、まず、試験開始以前に鋳型内の溶鋼中
にFe−Sを添加する試験、および鋳片の鋲打ち試験に
より直接測定を行い、その測定結果を基に、鋳片の伝熱
凝固解析におけるパラメータフィッティングを行った。
その後の鋳造試験では、この伝熱凝固解析によって、中
心部の固相率および圧下開始時の圧下位置での固相率が
0.8以下の未凝固部領域の厚さを求めた。断面形状が
円形の鋳片であるので、未凝固部領域の厚さとは、直径
を意味する。
【0042】鋳片を圧下して鋳造する途中で、一時的に
圧下ロール対および成形ロール対を作動させず、この際
の圧下しない鋳片から長さ200mmのサンプルを採取
し、また、圧下後に成形した円形の鋳片から長さ200
mmのサンプルも採取した。これら鋳片のサンプルの横
断面を鏡面研磨し、倍率100倍の光学顕微鏡で観察し
て、共晶組織部の生成している鋳片の領域を調査した。
【0043】また、得られた鋳片は、ソーキングなどの
拡散熱処理を行わず、そのままマンネスマン製管用の素
材とした。マンネスマン製管では、通常の加熱温度、加
熱時間、圧延温度などの条件で、ピアサ、マンドレルミ
ル、レデューサを経て、外径50mm、肉厚5.0mm
のシームレス鋼管を製造した。鋳片の共晶組織部に起因
する鋼管の内面に発生したかぶれ状の疵を調査し製品疵
発生率を求めた。この製品疵発生率とは、熱間圧延後に
内面を検査した鋼管のかぶれ疵が発生している長さを、
鋼管の全長で除した比率である。この製品疵発生率が5
%未満であれば、その製品疵の手入れを行うことによ
り、製品化が可能である。表2に試験条件および試験結
果を示す。
【0044】
【表2】 本発明例の試験No.1〜No.4では、鋳造速度1.
55〜1.8m/分で鋳造したので、圧下開始時の圧下
位置での鋳片の中心部の固相率は、いずれも本発明で規
定する条件の範囲内の値の0.6〜0.75となった。
鋳片の圧下量も、いずれも本発明で規定する条件の範囲
内の15〜95mmとした。圧下後に成形した鋳片の共
晶組織部の生成範囲は、試験No.1〜No.3では、
いずれも本発明で規定する条件の範囲内の鋳片の中心位
置から2〜5mmまでであった。試験No.4では、鋳
造途中で一時的に二次冷却の比水量を0.48リットル
/kg−鋼としたので、圧下前の鋳片の共晶組織部の生
成範囲は、本発明で規定する条件の範囲内であるが、鋳
片の中心位置からやや大きい8mmまでで、圧下後に成
形した鋳片の共晶組織部の生成範囲は、本発明で規定す
る条件の範囲内であるが、鋳片の中心位置から5mmま
でであった。試験No.1〜No.4の圧下後に成形し
た鋳片を素材とする鋼管では疵は発生しないか、あるい
は発生しても5%未満の許容される範囲であった。
【0045】比較例の試験No.5では、圧下開始時の
圧下位置での鋳片の中心部の固相率を0.4、すなわ
ち、本発明で規定する条件の範囲外の小さい中心部の固
相率で圧下を開始した。さらに、圧下量を70mmとし
て、圧下開始時の圧下位置での未凝固部領域の厚さ90
mmより小さくした。圧下量が未凝固部領域の厚さに比
べて十分でないため、鋳片内部に割れが発生し、その割
れの部分に共晶組織部が生成した。また、鋳片の中心部
にも共晶組織部が発生した。したがって、圧下後に成形
した鋳片の共晶組織部の生成範囲は、本発明で規定する
条件の範囲外の鋳片の中心位置から12mmまでの広い
範囲であった。そのため、製品疵が多発し、その発生率
が17%であった。比較例の試験No.6では、鋳造途
中で一時的に、鋳造速度を急激に0.9m/分まで低下
させ、さらに、二次冷却の比水量を0.46リットル/
kg−鋼としたので、圧下後の成形した鋳片の共晶組織
部の生成範囲が、本発明で規定する条件の範囲を外れ
て、鋳片の中心位置から15mmまでの広い範囲となっ
た。そのため、圧下開始時の圧下位置での鋳片の中心部
の固相率を本発明で規定する条件の範囲内の0.6と
し、また、圧下量も本発明で規定する条件の範囲内の8
0mmの条件で圧下したにもかかわらず、この鋳片を素
材とする鋼管では製品疵が多発し、その発生率が22%
となった。比較例の試験No.7では、圧下開始時の圧
下位置での鋳片の中心部の固相率を本発明で規定する条
件の範囲内の0.8としたが、圧下量を本発明で規定す
る条件の範囲外で7mmと小さくしたため、圧下後の成
形した鋳片の共晶組織部の生成範囲が、鋳片の中心位置
から12mmまでの範囲となった。そのため、この鋳片
を素材とする鋼管では、製品疵が多発し、その発生率が
14%となった。
【0046】比較例の試験No.8では、圧下開始時の
圧下位置での鋳片の中心部の固相率を本発明で規定する
条件の範囲外の0.85と高くしたため、圧下により十
分に偏析成分の濃化した溶鋼を上流側に排出できず、圧
下後の成形した鋳片の共晶組織部が鋳片の中心位置から
17mmまでの範囲となった。そのため、この鋳片を素
材とする鋼管では製品疵が多発し、その発生率が28%
となった。
【0047】
【発明の効果】本発明の連続鋳造鋳片、連続鋳造方法お
よび鋼材の製造方法を適用することにより、工具鋼、ば
ね鋼、軸受鋼などに用いられる高炭素鋼またはCr含有
高炭素鋼の連続鋳造鋳片を素材として熱間加工する際
に、熱間加工中に疵が発生することを防止でき、共晶組
織部に起因する製品疵の発生を防止できる鋳片を得るこ
とができ、また、製品疵のない鋼材を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】高炭素鋼またはCr含有高炭素鋼の連続鋳造鋳
片の中心部の金属組織を模式的に示す図である。
【図2】鋳片内部の共晶組織部の生成状況とその鋳片を
素材として鋼管に熱間加工した際の製品疵の発生状況と
の関係を示す図である。
【図3】断面形状が円形の鋳片を鋳造し、未凝固部を含
む鋳片を圧下し、さらに完全凝固した鋳片を円形に成形
する場合の連続鋳造機の例を示す図である。
【符号の説明】
1:浸漬ノズル 2:鋳型 3:溶
鋼 4:凝固殻 5:鋳片 6:ガ
イドロール 7:圧下ロール対 8:成形ロール対 9:共
晶組織部 10:炭化物 11:金属相

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.9%以上1.4%以下
    を含有し、炭化物と金属相とからなる共晶組織部が存在
    する領域が、最終凝固部から10mm以内であることを
    特徴とする鋼の連続鋳造鋳片。
  2. 【請求項2】中心部の固相率が0.5以上0.8以下の
    鋳造方向の領域で鋳片の圧下を開始し、圧下開始時の圧
    下位置での固相率が0.8以下の未凝固部の厚さに対し
    て1.5倍以上、かつ10mm以上の圧下量で圧下する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造鋳片の
    連続鋳造方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の鋳片、または請求項2に
    記載の連続鋳造方法を用いて鋳造した鋳片を熱間圧延す
    ることを特徴とする鋼材の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011005524A (ja) * 2009-06-26 2011-01-13 Jfe Steel Corp 高炭素鋼の連続鋳造方法
CN103990938A (zh) * 2014-04-09 2014-08-20 江苏联峰能源装备有限公司 用连铸坯塑性成形大尺寸轴承、齿轮钢的工艺方法

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