JP2001173072A - 便器内部の導水路の構造およびこの構造を備えたサイホン式便器 - Google Patents

便器内部の導水路の構造およびこの構造を備えたサイホン式便器

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JP2001173072A
JP2001173072A JP35768999A JP35768999A JP2001173072A JP 2001173072 A JP2001173072 A JP 2001173072A JP 35768999 A JP35768999 A JP 35768999A JP 35768999 A JP35768999 A JP 35768999A JP 2001173072 A JP2001173072 A JP 2001173072A
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hole
washing
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tank
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Shuho Miyahara
秀峰 宮原
Shinji Shibata
信次 柴田
Masaki Kitamura
正樹 北村
Shinko Shinkawa
新川  真弘
Noboru Niihara
登 新原
Shinsuke Matsuo
信介 松尾
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Toto Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 サイホンゼット式便器において、少ない量の
洗浄水で、鉢部の表面の洗浄および汚物の排出の双方を
確実に実現する。 【解決手段】 サイホンゼット式便器10の内部には、
洗浄タンク310からの水の流路として、洗浄水給水孔
40、洗浄水導入路41、分岐孔42、ゼット導水路4
6、ゼット噴出孔22、リム導水路43、水出し孔44
の各部から構成された導水路S1が形成されている。大
洗浄におけるタンク実容量が4リットル,小洗浄におけ
るタンク実容量が3リットルである洗浄タンク310か
らの洗浄水が洗浄水給水孔40を通じて洗浄水導入路4
1に供給されると、この洗浄水は、分岐孔42によりゼ
ット導水路46とリム導水路43とに好適に配分され
る。この結果、ゼット噴出孔22からは、サイホン作用
の早期かつ継続的な発生に十分な量の洗浄水が噴出さ
れ、水出し孔44からは、ボール部20の表面の洗浄に
十分な量の洗浄水が吐出される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、便器内部の導水路
の構造に関し、詳しくは、洗浄水の供給を受ける供給孔
と、汚物を受ける鉢部の上縁に形成された孔であるリム
孔および前記鉢部の底部の汚物の排出口と対向する位置
に設けられた孔であるゼット孔とを連通することによ
り、前記便器の内部における前記洗浄水の流路として形
成されたサイホン式便器の導水路の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】便器の洗浄方式は、サイホン作用による
引き込み力を利用して汚物を排出するサイホン式と、サ
イホン作用を利用しない洗い落とし式とに大別される。
ここで、便器におけるサイホン作用とは、便器の排水路
が満水状態とされたときの鉢部との水位差により、排水
方向に生じる引き込み力をいう。
【0003】このようなサイホン作用を利用する便器の
中には、便器の洗浄の際に、洗浄水を、鉢部の上縁の外
周に形成されたリム孔から鉢部の表面に吐出するととも
に、鉢部の底部に形成されたゼット孔という孔から便器
の排水路に向けて噴出する、いわゆるサイホンゼット式
の便器がある。このサイホンゼット式の便器は、ゼット
孔からの洗浄水の噴出により排水路を強制的に満水状態
とし、サイホン作用を早期に引き起こすことを特徴とす
る。
【0004】一方、サイホン式やサイホンゼット式の便
器では、鉢部内の汚物を排出するために、洗い落とし便
器よりも多量の洗浄水が必要であった。これは、サイホ
ン作用を一定期間持続させるためには、便器の排水路を
満水状態に維持することが必要であり、この満水状態の
維持のために相当量の水を要するからである。
【0005】この点、従来のサイホン式やサイホンゼッ
ト式の便器の場合には、一回の便器洗浄において、大洗
浄の場合に約7リットル以上の洗浄水を使用していた。
また、汚物が比較的軽量な小洗浄の場合であっても、サ
イホン作用をある程度の間持続させる必要性から、約6
リットル以上の洗浄水を使用していた。このように、従
来のサイホン便器では、使用する度ごとに最低でも6リ
ットルの水が必要となるため、更なる節水を図る必要が
あった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、リム孔
とゼット孔の双方から洗浄水が吐出されるサイホンゼッ
ト式便器の場合には、節水を図ろうとして、タンク等か
ら便器に供給される洗浄水の量を一律に少なくすると、
リム孔から吐出される洗浄水の量およびゼット孔から噴
出される洗浄水の量のいずれか若しくは双方が減少する
ことになる。このため、リム孔から吐出される洗浄水お
よびゼット孔から噴出される洗浄水の量的なバランスが
崩れ、便器の洗浄能力に支障を来たすおそれがあった。
【0007】例えば、便器に供給される洗浄水の量を少
なくしたことにより、リム孔から吐出される洗浄水の量
が大きく減少すれば、鉢部の表面への吐水量が従来より
も少なくなる。従って、鉢部の表面の汚れやペーパー等
を、十分に洗い流すことができなくなってしまう。
【0008】一方、便器に供給される洗浄水の量を少な
くしたことにより、ゼット孔から噴出される洗浄水の量
が大きく減少してしまう場合には、排水路方向に噴出さ
れる洗浄水の量が従来よりも少なくなる。このため、サ
イホン作用の持続時間が短くなり、汚物の排出性能に支
障を来たすおそれがある。
【0009】そこで本発明は、以上の課題を解決し、サ
イホンゼット式の便器において、洗浄水の量を少なくし
た場合であっても、鉢部の表面の洗浄および汚物の排出
の双方を確実に実現することを目的として、以下の構成
を採った。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本
発明の便器内部の導水路の構造は、所定の給水源と給水
可能に接続され、所定量の貯溜水を貯溜可能なタンクか
ら便器を洗浄するための水である洗浄水の供給を受ける
供給孔と、汚物を受ける鉢部の上縁に形成されたリム孔
および前記鉢部の底部のトラップと接続される排出口と
対向する位置に設けられたゼット孔とを連通し、便器の
内部における前記洗浄水の流路として形成されたサイホ
ン式便器の導水路の構造であって、前記供給孔は、前記
給水源からの給水を止めた状態での一洗浄動作により、
前記タンクから2.8リットル以上6リットル以下の前
記貯溜水の供給を受け、前記流路を、前記給水源からの
給水可能な状態での一洗浄動作により、前記供給孔が、
前記タンクから前記貯溜水を含む洗浄水の供給を受けた
とき、該洗浄水のうち、サイホン作用を発生可能な量の
洗浄水が前記ゼット孔に、前記鉢部の表面を洗浄可能な
量の洗浄水が前記リム孔に、それぞれ導かれる形状とし
たことを要旨とする。
【0011】ここで、汚物には、大便や小便等の排泄物
のほか、使用後のトイレットペーパーや使用後の便座シ
ート等の紙類等を含む。
【0012】また、タンクと供給孔との接続形態に関し
ては、タンクが供給孔と密結されているか否かは問わ
ず、供給孔がタンクから洗浄水の供給を受けられるよう
に接続されていればよい。例えば、タンクと供給孔とが
管体を介して接続されていてもよい。
【0013】洗浄水の流路は、供給孔とリム孔およびゼ
ット孔とを連通するものであればよく、リム孔とゼット
孔に分岐する構造の有無は問わない。例えば、2つの供
給孔を設け、1の供給孔とリム孔とを、他の供給孔とゼ
ット孔とを連通するものであっても差し支えない。
【0014】本発明の便器内部の導水路の構造によれ
ば、供給孔は、給水源からの給水を止めた状態での一洗
浄動作により、タンクから2.8リットル以上6リット
ル以下の貯溜水の供給を受ける。従って、洗浄の際に便
器に供給される水量は、従来のサイホン式便器よりも少
なくなる。
【0015】この2.8リットル以上6リットル以下の
貯溜水を含む洗浄水が、給水源からの給水可能な状態で
の一洗浄動作により供給孔に供給されると、供給された
洗浄水のうち、ゼット孔にサイホン作用を発生可能な量
の洗浄水を導くとともに、リム孔に鉢部の表面を洗浄可
能な量の洗浄水を導く。
【0016】このように、本発明の便器内部の導水路の
構造によれば、便器に供給された少量の洗浄水を、ゼッ
ト孔,リム孔のそれぞれに効率よく分配する。従って、
洗浄の際に便器に供給される水量を少なくした場合であ
っても、鉢部の表面の洗浄および汚物の排出の双方を確
実に実現することができる。
【0017】流路を、タンクから供給を受ける2.8リ
ットル以上6リットル以下の貯溜水のうち、リム孔に
0.5リットル以上の貯溜水が導かれる形状とすること
も望ましい。このような形状とすることで、リム孔に
は、鉢部の表面の洗浄に必要最小限の量の洗浄水のみが
導かれる。従って、便器に供給された洗浄水が少量であ
っても、ゼット孔に可能な限り多量の洗浄水を導くこと
ができる。この結果、サイホン作用の持続時間が長くな
り、汚物の排出性能をより向上することが可能となる。
【0018】タンクから供給を受ける貯溜水が、3.8
リットル以上の水量である場合には、流路を、リム孔に
0.7リットル以上の貯溜水が導かれる形状としてもよ
い。便器に供給されるタンク内の貯溜水の量が3.8リ
ットル以上に確保されれば、サイホン作用の十分な持続
に必要な量の洗浄水をゼット孔に導くとともに、リム孔
に、鉢部の表面の洗浄に必要最小限の量以上の洗浄水を
導くことが可能となる。従って、鉢部の表面の洗浄能力
をより向上することができる。
【0019】流路を、タンクから供給を受ける2.8リ
ットル以上6リットル以下の貯溜水のうち、ゼット孔
に、2.3リットル以上の貯溜水が導かれる形状とする
ことも好適である。このような形状とすることにより、
サイホン作用の十分な持続に必要な量の洗浄水をゼット
孔に導くとともに、リム孔には、可能な限り多量の洗浄
水を導くことができる。この結果、鉢部の表面の十分な
洗浄能力を確実に確保することが可能となる。
【0020】タンクから供給を受ける貯溜水が、3.8
リットル以上の水量である場合には、流路を、ゼット孔
に3.1リットル以上の貯溜水が導かれる形状としても
よい。便器に供給されるタンク内の貯溜水の量が3.1
リットル以上に確保されれば、ゼット孔に、より多量の
洗浄水を導くことが可能となる。従って、汚物の排出性
能をより向上することができる。
【0021】流路を、タンクから2.8リットル以上6
リットル以下の貯溜水の供給を受けたときに、リム孔
に、ゼット孔に導かれる貯溜水の量の20パーセント以
上60パーセント以下の量の貯溜水が導かれる形状とす
ることも望ましい。便器に供給された洗浄水を上記の比
率でゼット孔,リム孔のそれぞれに分配することによ
り、少量の洗浄水しか用いない場合であっても、鉢部の
洗浄および汚物の排出という2つの役割を、バランスよ
く果たすことができる。
【0022】供給孔から所定の距離に亘って延出された
導入路と、該導入路からリム孔,ゼット孔のそれぞれを
指向して分岐する分岐部と、該分岐部からリム孔に連通
するリム導水路と、分岐部から前記ゼット孔に連通する
ゼット導水路とから、流路を構成することも好適であ
る。この構成を採れば、分岐部の位置や形状等を変える
ことにより、リム孔に導かれる洗浄水の量とゼット孔に
導かれる洗浄水の量との配分を種々の値に定めることが
できる。
【0023】流路を、リム孔,ゼット孔のそれぞれと供
給孔とを独立に連通することにより形成しても差し支え
ない。ここで、「独立に連通する」とは、供給孔からリ
ム孔に向かう洗浄水と、供給孔からゼット孔に向かう洗
浄水とが、流路の途中において重なり合わないように連
通することをいう。例えば、供給孔を単数設けた場合に
は、供給孔の入口以降の流路を、2つの流路に分割する
構成を考えることができる。この構成以外にも、供給孔
を複数設け、各供給孔を、異なる経路でそれぞれリム
孔,ゼット孔に連通する構成等を考えることができる。
【0024】上記の便器内部の導水路の構造を備えたサ
イホン式便器として、発明を把握することも可能であ
る。かかる発明によれば、節水効果の高いサイホン式便
器を提供することができる。
【0025】本発明の洗浄水の供給方法は、汚物を受け
る鉢部と、該鉢部の上縁に形成されたリム孔と、前記鉢
部の底部に形成された、トラップと接続される排出口
と、該排出口と対向する位置に設けられたゼット孔と、
便器を洗浄するための水である洗浄水の入口である供給
孔と、該供給孔を該リム孔および該ゼット孔のそれぞれ
と連通してなる導水路とを有する便器と、該便器と前記
供給孔において接続されるとともに、所定の給水源と給
水可能に接続されたタンクとを備え、所定の洗浄動作に
基づいて、前記タンクから前記供給孔に供給された洗浄
水を、前記導水路を通じて前記リム孔および前記ゼット
孔のそれぞれに供給する洗浄水の供給方法であって、前
記タンクは、前記給水源からの給水を止めた状態での一
洗浄動作で、前記供給孔に2.8リットル以上6リット
ル以下の前記貯溜水を供給し、前記給水源からの給水が
可能な状態での一洗浄動作により、該タンクから前記貯
溜水を含む洗浄水が前記供給孔に供給されたとき、該供
給された洗浄水を、前記ゼット孔および前記リム孔のそ
れぞれに、サイホン作用の発生および前記鉢部の表面の
洗浄の双方を実現可能な比率で分配し、該分配された洗
浄水を前記ゼット孔および前記リム孔のそれぞれに供給
することを要旨とする。
【0026】本発明の洗浄水の供給方法によれば、タン
クが、給水源からの給水を止めた状態での一洗浄動作に
より、2.8リットル以上6リットル以下の貯溜水を便
器の供給孔に供給する。従って、洗浄の際に便器に供給
される水量は、従来のサイホン式便器よりも少なくな
る。
【0027】この2.8リットル以上6リットル以下の
貯溜水を含む洗浄水が、給水源からの給水可能な状態で
の一洗浄動作により供給孔に供給されたとき、供給され
た洗浄水を、ゼット孔およびリム孔のそれぞれに、サイ
ホン作用の発生および鉢部の表面の洗浄の双方を実現可
能な比率で分配し、ゼット孔およびリム孔のそれぞれに
供給する。
【0028】このように、本発明の洗浄水の供給方法に
よれば、便器に供給された少量の洗浄水を、ゼット孔,
リム孔のそれぞれに効率よく分配する。従って、洗浄の
際に便器に供給される水量を少なくした場合であって
も、鉢部の表面の洗浄および汚物の排出の双方を確実に
実現することができる。
【0029】このような洗浄水の供給方法において、タ
ンクから供給された2.8リットル以上6リットル以下
の貯溜水を、リム孔に供給される貯溜水の量が、ゼット
孔に供給される貯溜水の量の20パーセント以上60パ
ーセント以下となるように分配することも好適である。
便器に供給された洗浄水を上記の比率でゼット孔,リム
孔のそれぞれに分配することにより、少量の洗浄水しか
用いない場合であっても、鉢部の洗浄および汚物の排出
という2つの役割を、バランスよく果たすことができ
る。
【0030】
【発明の実施の形態】以上説明した本発明の構成及び作
用を一層明らかにするために、以下本発明の便器内部の
導水路の構造について、その実施の形態を説明する。ま
ず、本発明の第1実施例の導水路S1を採用したサイホ
ンゼット式便器10について説明する。図1は、このサ
イホンゼット式便器10の縦断面を示す説明図であり、
図2は、この便器10の上面を示す説明図である。な
お、図1および図2は、便器10の洗浄後に、洗浄タン
ク310および便器10内における水の流動が停止した
ときの便器10の様子を表わしている。
【0031】図1および図2に示すサイホンゼット式便
器10は、洗浄に伴って、小孔44cや中孔44b等の
水出し孔44からのみならず、後述するゼット噴出孔2
2からも洗浄水を噴出し、サイホン作用を早期に引き起
こすことを特徴とする。以下、便器10の各部につい
て、図1および図2を参照しつつ説明する。
【0032】便器10は、汚物を受けるボール部20を
備える。図1および図2に示すように、洗浄動作前の便
器10においては、排出口25に至るまでのボール部2
0の内部や排出口25以降の接続路31および上昇路3
2内に、溜水RWが溜まっている。このボール部20の
内部に溜まる分の溜水RWを、以下、ボール部溜水とい
い、接続路31および上昇路32に溜まる分の溜水RW
を、以下、以下、流路内溜水という。このボール部溜水
および流路内溜水により水封が形成され、臭気の逆流や
害虫の進入が防止される。
【0033】ボール部20の内面の周壁は、便器10の
非洗浄時でも溜水RWと接する覆水面23と、便器10
の非洗浄時には溜水RWと接しない乾燥面24から構成
されている。このボール部20の内面の形状を図3に示
す。図3は、図2の線B−Bに沿って便器10を切断し
たときの様子を表わす断面図である。
【0034】図3に示すように、ボール部20の内面の
形状は、左側の周壁の第2曲部54から40mm,右側
の周壁の第2曲部54から40mm、便器10の中心方
向に向かって張り出した形状とされている。このため、
従来の便器と比べ、ボール部20は小さな容積となって
いる。このようなボール部20形状を採用することで、
ボール部溜水の量を従来のサイホン式便器よりも少量と
し、洗浄時に置換される溜水RW量の大幅な低減を実現
している。なお、便器10では、ボール部溜水の量を
1.2リットルとする。
【0035】また、図3に示すように、左右の第2曲部
54から便器10の中心方向に張り出した部分は、通常
水位線WLよりも下方に位置する。このため、便器10
の溜水面は、幅185mm×奥行き225mmという広
い範囲に確保されている。従って、ボール部20への汚
物の固着や乾燥面24からの臭気の発散を効果的に防止
することができる。
【0036】便器10の内部には、ボール部20に水を
供給するための機構(以下、供給機構という)と、ボー
ル部20内の汚物を排水立ち上げ管90に向けて排出す
るための機構(以下、排出機構という)が設けられてい
る。
【0037】まず、供給機構について説明する。供給機
構は、洗浄水の供給源としての洗浄タンク310と、洗
浄タンク310からの水の流路として便器10の内部に
形成された導水路S1からなる。この導水路S1は、洗
浄水給水孔40、洗浄水導入路41、分岐孔42、ゼッ
ト導水路46、ゼット噴出孔22、リム導水路43、水
出し孔44の各部から構成されている。これらの各部に
ついて、図1および図2を参照しつつ、以下に説明す
る。
【0038】図1に示すように、便器10の後方には、
洗浄タンク310の排水管346を水密に接続するため
の孔である洗浄水給水孔40が設けられている。この洗
浄水給水孔40が、特許請求の範囲にいう「供給孔」に
相当する。
【0039】図1に示すように、洗浄水給水孔40の下
方からゼット給水孔46bまでの範囲には、便器10の
先端方向に、斜め下向きの傾斜で延出する流路が形成さ
れ、この流路の途中の上側の内壁には分岐孔42が穿設
されている。この分岐孔42が特許請求の範囲にいう
「分岐部」に相当する。なお、第1実施例では、分岐孔
42の開孔面積を、約9平方センチメートルとしてい
る。
【0040】洗浄水導入路41は、洗浄水給水孔40の
下方から分岐孔42の位置(図1において一点鎖線G−
Gで示した位置、以下、位置G−Gという)までを連通
する流路である。この洗浄水導入路41が特許請求の範
囲にいう「導入路」に相当する。
【0041】一方、分岐孔42よりも下側の範囲、具体
的には、位置G−G以降のゼット噴出孔22までの範囲
には、ゼット導水路46という洗浄水の流路が設けられ
る。このゼット導水路46が特許請求の範囲にいう「ゼ
ット導水路」に相当する。
【0042】ゼット導水路46は、位置G−Gにおいて
洗浄水導入路41と連続し、位置G−Gから斜め下方向
に延出するゼット水流入室46a、ゼット水流入室46
aの側壁に設けられた孔であるゼット給水孔46b、ゼ
ット給水孔46bとゼット噴出孔22とを連通する流路
であるゼット水搬送路46c(図1には図示せず)から
構成されている。
【0043】ゼット水搬送路46cは、図2に示すよう
に、ゼット給水孔46bと排出口25の前方のゼット噴
出孔22とを、排出口25の外側を周回した流路で連通
することにより形成されている。
【0044】ゼット噴出孔22は、ゼット水搬送路46
cの終端に洗浄水の出口として形成された孔である。こ
のゼット噴出孔22が特許請求の範囲にいう「ゼット
孔」に相当する。ゼット噴出孔22は、図1および図2
に示すように、凹部26を挟んで排出口25とほぼ対向
する位置に設けられている。このため、ゼット噴出孔2
2から噴出された洗浄水のエネルギーは、排出口25以
降の排出機構に無駄なく伝達される。従って、より確実
にサイホン作用を引き起こすことが可能となる。
【0045】一方、分岐孔42よりも上側の範囲、具体
的には、分岐孔42から便器10の先端の大穴44aま
での範囲には、リム導水路43という洗浄水の流路が設
けられる。このリム導水路43が特許請求の範囲にいう
「リム導水路」に相当する。図1に示すように、リム導
水路43は、洗浄水導入路41とゼット水流入室46a
との連続からなる斜め下向きの流路と、分岐孔42を介
して連続している。
【0046】リム導水路43は、分岐孔42の真上に設
けられた空間であるリム水流入室43a、リム水流入室
43aと各水出し孔44とを連通する流路であるリム水
搬送路43bから構成されている。図1および図2に示
すように、リム部21の裏側は、ボール部20上端の内
周に沿った範囲に亘って、中空部を有する筒形の形状に
成形されている。この中空部がリム水搬送路43bであ
り、洗浄水はこの中空部を流通する。
【0047】水出し孔44は、リム水搬送路43bの内
底壁に複数設けられた孔であり、この水出し孔44が特
許請求の範囲にいう「リム孔」に相当する。図2に示す
ように、リム部21の裏側には、7mm径の大孔44
a,4mm径の中孔44b,3mm径の小孔44c,大
孔44aよりも開孔面積の大きい略長方形の長孔44
d,eという5種類の形状の水出し孔44が設けられて
いる。このうち、長孔44d,eは、後述するように、
水出し孔44から吐出される洗浄水に旋回成分を付与す
るために設けられている。
【0048】これらの水出し孔44は、リム部21の成
形の際に、リム水搬送路43bの底壁に形成される。勿
論、これ以外の手法で水出し孔44を設けることも可能
である。例えば、リム水搬送路43bの底壁の全周にス
リットを設けるとともに、このリム水搬送路43b内
に、底部に複数の孔を有する中空状の樹脂成形品を装着
する構成としても差し支えない。
【0049】以上、導水路S1の構成について説明し
た。次に、導水路S1とともに供給機構を構成する洗浄
タンク310の構成について、図4を参照しつつ説明す
る。洗浄タンク310内に溜まる水の容量(以下、タン
ク容量という)は、後述するように、従来よりも少量の
6リットルとされている。このため、洗浄タンク310
は、図4に示すように、従来よりもコンパクトな形状と
なっている。
【0050】洗浄タンク310の外形は、手洗鉢318
が形成された蓋317と外装タンク312から構成さ
れ、蓋317には、手洗鉢318に向けて手洗用の水を
吐水する手洗用吐水管319が組み付けられている。外
装タンク312および蓋317は、いずれも陶器製であ
るが、樹脂のような陶器以外の材料で成形しても差し支
えない。
【0051】この外装タンク312の底面の排水管接続
用穴366,2個のボルト取付用穴367からは、それ
ぞれ排水管346,2本の密結用ボルト342が露出し
ている。この排水管346を、便器10の後方の洗浄水
給水孔40に嵌め込みながら、便器10後部のタンク密
結孔28に密結用ボルト342を差し込み、差し込まれ
た密結用ボルト342をナットで締め付けることによ
り、便器10に洗浄タンク310が装着される。このよ
うに、便器10と密接して連結される洗浄タンクを、以
下、ロータンク型タンクという。
【0052】外装タンク312の内部には、洗浄水を貯
えるポリプロピレン製の内装タンク314が収納されて
いる。この内装タンク314の内部には、後述するボー
ルタップ320への水の供給路である流入管328、ボ
ールタップ320からの水をタンク下方へ案内する水没
管338、万一タンクが満水となった場合に水がタンク
の外へあふれることを防止するオーバーフロー管340
が設けられている。
【0053】内装タンク314の底部には、円筒形状の
排水管346が内装タンク314と一体として形成され
ている。図4に示すように、排水管346は、内装タン
ク314の底部から下方に向かって排水管接続用穴36
6越しに突出するとともに(以下、この突出した部分を
下方突出部346aという)、内装タンク314の内底
から上方に僅かに突出する。この僅かに突出した部分の
頂上が、内装タンク314内の貯溜水が進入する入口と
なる。この入口は、非洗浄時においては、大便用排水弁
345で塞がれており、大便用排水弁345の開弁に伴
って、入口から貯溜水が進入する。これにより、内装タ
ンク314内の貯溜水が便器10の洗浄水給水孔40に
供給される。
【0054】この排水管346は、オーバーフロー管3
40と一体として形成されている。図4に示すように、
オーバーフロー管340の下端は、排水管346の下方
突出部346aの側面において、排水管346に合流し
ている。従って、オーバーフロー管340に流れ込んだ
水は、大便用排水弁345の開閉状態に拘わらず、排水
管346に進入する。これにより、オーバーフロー管3
40に流れ込んだ水が便器10の洗浄水給水孔40に供
給される。
【0055】図4に示すように、上下方向に設けられた
流入管328の下端には、給水立ち上げ管からの水を止
水栓を介して供給する給水ホース324が接続され、流
入管328の上端にはボールタップ320の給水口が接
続されている。従って、止水栓からの水は、給水ホース
324,流入管328を通じてボールタップ320に供
給される。
【0056】ボールタップ320は、内装タンク314
内への水の供給を制御する機構であり、この制御を行な
うために、アーム350によって浮子322と接続され
た弁を備える。この弁の開閉は、内装タンク314内の
水位の変化に伴う浮子322の上下により行なわれる。
【0057】即ち、内装タンク314内の水位が下がる
と、水に浮いた状態の浮子322が下降し、これに伴っ
てアーム350が下方に移動する。浮子322が所定の
位置まで下降したときに、アーム350によってボール
タップ320の弁が開かれる。これにより、内装タンク
314内に水を供給可能な状態となる。一方、浮子32
2は、内装タンク314内の水位の上昇に伴って上昇
し、これに伴ってアーム350が上方に移動する。浮子
322が所定の位置まで上昇したときに、アーム350
によってボールタップ320の弁が閉じられる。この閉
弁により、内装タンク314内への水の供給が停止され
る。
【0058】なお、洗浄タンク310は、内装タンク3
14内に6リットルの水が溜まったときの水位まで浮子
322が移動したときに、ボールタップ320の弁を閉
じる構成を採る。即ち、洗浄タンク310のタンク容量
は6リットルとなる。
【0059】ボールタップ320の弁を開いたときの水
の流路について説明する。図4に示すように、開弁によ
り弁を通過した水は、吐水管321,補給水管323,
連絡管(図示せず)という3つの管に分かれて流れ込
む。吐水管321,補給水管323,連絡管の先端は、
それぞれ、水没管338の入口,オーバーフロー管34
0の入口,手洗用吐水管319の入口に接続されてい
る。
【0060】従って、吐水管321に進入した水は、水
没管338を通って内装タンク314の底部に供給さ
れ、大便用排水弁345,小便用排水弁344が閉じて
いることを前提として、内装タンク314内に溜まる。
一方、補給水管323に進入した水は、オーバーフロー
管340,排水管346を通って、便器10の洗浄水給
水孔40に供給される(以下、この水を補給水とい
う)。また、連絡管に進入した水は、手洗用吐水管31
9内を上昇しながら通過し、手洗用吐水管319の吐水
口から吐出される。吐出された水は、手洗鉢318に形
成された穴326を通って内装タンク314内に供給さ
れる。
【0061】次に、内装タンク314内の貯溜水を排出
する仕組みについて説明する。図4に示すように、内装
タンク314の中央下部には、内装タンク314の底部
に形成された排水管346の入口を覆うように、円筒形
状の大便用排水弁345が配置されており、この大便用
排水弁345の上に被さるように、上面が塞がれた円筒
形状の小便用排水弁344が配置されている。
【0062】この大便用排水弁345,小便用排水弁3
44は、それぞれ支持軸361,支持軸360によって
一定の軌跡で上下動可能に支持されるとともに、スピン
ドル332の片端に形成されたアーム334,アーム3
33と鎖335b,鎖335aで繋がれている。スピン
ドル332の他端は、内装タンク314の側面に固定さ
れたスピンドルガイド336の円筒部に挿入されて、こ
の円筒部内でハンドル330の軸部と噛合される。これ
により、ハンドル330の回転動作がスピンドル332
に伝達可能となる。
【0063】ハンドル330の側面には、時計廻り方向
の矢印表示および反時計廻り方向の矢印表示が付されて
おり、これらの矢印の先には、それぞれ「大」,「小」
という文字が付されている。この時計廻り方向の矢印表
示と「大」という文字は、大便後の便器10を洗浄する
大洗浄の操作方向を示し、反時計廻り方向の矢印表示と
「小」という文字は、小便後の便器10を洗浄する小洗
浄の操作方向を表わす。
【0064】ハンドル330が「大」の方向に操作され
ると、この操作方向に、ハンドル330と噛合されたス
ピンドル332が回転する。この回転により、アーム3
33が鎖335aを介して小便用排水弁344を引き上
げるとともに、アーム334が鎖335bを介して大便
用排水弁345を引き上げる。これにより大便用排水弁
345が開弁し、大便用排水弁345で覆われていた排
水管346の入口に、内装タンク314内の貯溜水が流
入する。
【0065】なお、大便用排水弁345を支持する支持
軸361は、タンク容量である6リットルの貯溜水のう
ちの4リットルの貯溜水が排水管346から排出される
までの間、大便用排水弁345を引き上げた状態,即ち
開弁状態に保つように構成されている。従って、大洗浄
の操作がされた場合には、常に、4リットルという一定
の量の貯溜水が排水管346に流入する。
【0066】この結果、タンク容量である6リットルの
貯溜水のうちの2リットルの貯溜水は、排水管346か
ら流れ出ることなく、内装タンク314内に残留する。
即ち、支持軸361は、排水管346への貯溜水の流入
が開始された後、元の位置である下方に向かって徐々に
移動し、4リットル分の貯溜水が排水管346から流れ
出たときに元の位置に復帰し、大便用排水弁345を閉
弁する。このように、洗浄タンク内の貯溜水のうち、一
回のハンドル操作後に便器に排出されず、洗浄タンク内
に残る水を、以下、残留水という。
【0067】一方、ハンドル330が「小」の方向に操
作されると、この操作方向へのスピンドル332の回転
により、アーム333が鎖335aを介して小便用排水
弁344を引き上げる。これにより小便用排水弁344
が開弁し、小便用排水弁344で覆われていた円筒形状
の大便用排水弁345の頂部に、内装タンク314内の
貯溜水が流入する。
【0068】小便用排水弁344を支持する支持軸36
0は、タンク容量である6リットルの貯溜水のうちの3
リットルの貯溜水が排水管346から排出されるまでの
間、小便用排水弁344を引き上げた状態,即ち開弁状
態に保つように構成されている。従って、小洗浄の操作
がされた場合には、常に、3リットルという一定の量の
貯溜水が、大便用排水弁345の中空部を通じて排水管
346に流入する。
【0069】この結果、タンク容量である6リットルの
貯溜水のうちの3リットルの貯溜水は、排水管346か
ら流れ出ることなく、内装タンク314内に残留する。
即ち、支持軸360は、排水管346への貯溜水の流入
が開始された後、元の位置である下方に向かって徐々に
移動し、これに伴って小便用排水弁344も閉弁方向に
移動する。一方、大便用排水弁345は閉弁状態のまま
であるため、大便用排水弁345の頂部よりも下方に溜
まった3リットル分の水は、排水管346に流入するこ
とができず、残溜水として内装タンク314内に残留す
る。
【0070】つまり、ボールタップ320から内装タン
ク314内への水の供給を、止水栓の閉止等によって禁
止し、便器10に供給される洗浄水を洗浄タンク310
内の貯溜水のみとした場合には、以下の量の洗浄水が便
器10に供給される。まず、「大」の方向にハンドル3
30を操作したときには、タンク容量である6リットル
の貯溜水から2リットルの残溜水を除いた4リットルの
量の貯溜水が、排水管346を通じて便器10の洗浄水
給水孔40に排出される。このように、洗浄タンク31
0内への給水がされない状態において、1回の洗浄動作
に伴って排水管346から排出される内装タンク314
内の貯溜水の量を、以下「タンク実容量」という。即
ち、洗浄タンク310は、大洗浄におけるタンク実容量
が4リットルのタンクである。
【0071】また、上記の条件下で、「小」の方向にハ
ンドル330を操作したときには、タンク容量である6
リットルの貯溜水から3リットルの残溜水を除いた3リ
ットルの量の貯溜水が、排水管346を通じて便器10
の洗浄水給水孔40に排出される。即ち、洗浄タンク3
10は、小洗浄におけるタンク実容量が3リットルのタ
ンクである。
【0072】ところで、ボールタップ320から内装タ
ンク314内への水の供給を許容した状態、即ち、通常
の使用状態においてハンドル330を操作した場合に
は、上述したタンク実容量分の貯溜水のほか、内装タン
ク314内の水位の低下に伴うボールタップ320の開
弁により補給水管323に流れ込む補給水が、オーバー
フロー管340,排水管346を通って、便器10の洗
浄水給水孔40に排出される。この補給水の供給によ
り、便器10内に十分な量の溜水RWを溜めることがで
きる。図4に示す洗浄タンク310では、一回の大洗浄
のハンドル330操作に伴って約2リットルの補給水
が、一回の小洗浄のハンドル330操作に伴って、約
1.5リットルの補給水が、それぞれ便器10に供給さ
れる。
【0073】従って、給水源との接続を確保した状態に
おいては、1回の大洗浄の操作により、タンク実容量で
ある4リットルの貯溜水と2リットルの補給水が、洗浄
水として、便器10の洗浄水給水孔40を通じて洗浄水
導入路41に供給される。また、1回の小洗浄の操作に
より、タンク実容量である3リットルの貯溜水と1.5
リットルの補給水が、洗浄水として、便器10の洗浄水
給水孔40を通じて洗浄水導入路41に供給される。こ
のように、洗浄タンク310が止水栓を介して給水源と
接続され、洗浄タンク310内への給水がなされる状態
において、1回の洗浄動作に伴って便器に供給される水
の量を、以下「洗浄水供給量」という。即ち、便器10
への洗浄水供給量は、大洗浄の場合には6リットル、小
洗浄の場合には4.5リットルとなる。
【0074】次に、排出機構について、図1に戻って説
明する。図1に示すように、汚物溜りとしての凹部26
の奥に形成された排出口25の先には、水や汚物の流路
である排水路が設けられている。排水路は、排出口25
から斜め上方向に向けて湾曲する接続路31,接続路3
1の湾曲方向に延出した後、水平方向へ湾曲する上昇路
32,上昇路32の終端から略垂直下方向に湾曲する下
降路33から構成されている。下降路33の終端は、樹
脂製の排水ソケット70を介して、建築側の壁や床に設
けられた排水立ち上げ管90に接続される。
【0075】この排水路は、流路形状を石膏型や樹脂型
に形取ることにより、陶器である便器10と一体に成形
されるが、便器10とは別の部材で流路を形成すること
も可能である。例えば、これらの全部または一部の流路
を、樹脂等の他の部材で成形し、排出口25に接続する
構成としてもよい。また、排水立ち上げ管90が建築の
壁側に設けられている場合に対応する壁排水仕様の便器
10の場合には、下降路33の終端の形状を、排水方向
が壁向きとなるように変更し、下降路33の終端に、排
水立ち上げ管90方向に向かうベンド管を接続する構成
とすればよい。
【0076】排水路は、上昇路32から下降路33にか
けての屈曲した部分(以下、屈曲部という)を有してお
り、排水路の下側の内壁の高さは、この屈曲部において
最も高くなる。この屈曲部の下側の内壁を堰34とい
う。
【0077】この堰34の高さによって溜水面の高さが
定まる。即ち、堰34の高さを高くすれば、通常水位線
WLの高さも高くなり、堰34の高さを低くすれば、通
常水位線WLの高さも低くなる。
【0078】図1に示した便器10では、溜水面の高さ
は、排出口25の入口付近のA−A断面位置において最
も大きい値となる。便器10では、水底面50から排出
口25の上端までの高さを55mmという値とするとと
もに、排出口25の上端から通常水位線WLまでの高さ
が58mmという値となる位置に堰34を設ける。従っ
て、便器10では、日本工業規格のサイホンゼット便器
についての基準値である「水底面50から排出口25の
上端までの高さが53mm以上、排出口25の上端から
通常水位線WLまでの高さが値50mm以上」という値
に適合した水位高が確保されている。
【0079】また、図1に示すように、ゼット給水孔4
6b,ゼット水搬送路46c,ゼット噴出孔22は、い
ずれも堰34よりも低い位置に設けられている。従っ
て、便器10の静止状態において、ゼット導水路46の
一部は溜水RWに水没し、このため、ゼット水流入室4
6aの下部およびゼット水搬送路46c内には、溜水R
Wの一部が溜まる。以下、このゼット水流入室46aの
下部およびゼット水搬送路46c内に溜まる水のこと
を、ゼット溜水という。なお、第1実施例では、ゼット
溜水の量を0.4リットルとしている。
【0080】なお、図1に示す便器10の後端から排水
立ち上げ管90の中心までの距離kは180mmとされ
ている。また、便器10に組み付けられた洗浄タンク3
10の後端から排水立ち上げ管90の中心までの距離j
は190mmとされている。従って、排水立ち上げ管9
0がトイレ室の壁から200mmの位置を中心として立
ち上げられていれば、洗浄タンク310の背面とトイレ
室の壁とのクリアランスを10mm確保した状態で、便
器10と洗浄タンク310のセットを設置することがで
きる。このように、排水立ち上げ管90を、トイレ室の
壁から200mmという建築側の壁に近い位置に設ける
ことを可能とすることで、排水立ち上げ管90からパイ
プスペースまでの距離が短くなり、汚物のスムーズな搬
送を確保することができる。勿論、トイレ室の壁とのク
リアランスを考慮しない場合には、距離kや距離jを2
00mm以下の値とすることができる。
【0081】接続路31,上昇路32および下降路33
の形状について、図5および図6を参照しつつ説明す
る。図5は、接続路31、上昇路32、下降路33の横
断面形状を示す。図6は、接続路31、上昇路32の縦
断面形状を示し、図6(a)は、図5のP−P´断面、
Q−Q´断面およびR−R´断面を示す。
【0082】図5および図6(a)に示すように、接続
路31の始端31aおよび終端31b、上昇路32の始
端32aおよび中間部32bは、同じ断面を有してい
る。この断面は、下側が半円形状、上側が長方形状とい
う、非円形かつ上下に非対称の形状とされている。この
形状は、図5に示す中間部32bと終端32cとの間の
曲り部においても同じであり、上側の外曲がり部分が長
方形状に、下側の内曲がり部分が半円形状に形成されて
いる。
【0083】つまり、接続路31は、始端31aから終
端31bまで同一の断面積で形成され、上昇路32は、
始端32aから終端32cの手前に至るまで、接続路3
1と同一の断面積で形成されている。このように、流路
内溜水が溜まる接続路31および上昇路32を同じ形状
とし、流路内溜水が溜まる部分の容積を、接続路31が
上昇路32よりも幅広である従来のサイホン式便器の排
水路より減少させることで、洗浄時に置換される溜水R
Wの全体量を減らすことを実現している。なお、便器1
0では、流路内溜水の量を0.5リットルとする。
【0084】つまり、静止状態の便器10には、1.2
リットルのボール部溜水,0.5リットルの流路内溜
水,0.4リットルのゼット溜水からなる合計2.1リ
ットルの溜水RWが溜まっている。
【0085】一方、上昇路32の終端32c付近以降の
断面形状は、これ以外の部分における上昇路32の断面
とは異なる形状で形成されている。この断面形状を図6
(b)に示す。図6(b)に示すように、上昇路32の
終端32cおよび下降路33の断面は、円形とされてい
る。
【0086】ここで、図6(a)に示した接続路31の
始端31aから上昇路32の終端32cの手前に至るま
での断面において、下側の半円の中心O1からの半径r
1の値は、約27.5mmとされている。従って、上側
の長方形の長辺x1の長さは約55mmとなる。また、
上側の長方形の短辺x2の長さは、半径r1の値と同じ
27.5mmとされている。一方、図6(b)に示した
上昇路32の終端32cおよび下降路33の断面におい
ては、下側の半円の中心O2からの半径r2の値は、約
27.5mmとされている。従って、接続路31の始端
31aから上昇路32の終端32cの手前に至るまでの
断面と上昇路32の終端32c付近以降の断面とは、略
同一の断面積となる。
【0087】また、図5に示すように、上昇路32と接
続された下降路33は、上昇路32の内壁下側の最も高
い位置である堰34を越えた後、急激に下方向に湾曲
し、排水立ち上げ管90に向かう略鉛直方向に延出して
いる。
【0088】以上説明した供給機構および排出機構によ
り、ボール部20に洗浄水が供給され、ボール20部内
の汚物や汚水が排出される仕組みについて説明する。な
お、「汚水」とは、大便や小便等の汚物や紙などが混ざ
ることによって汚れた水をいう。
【0089】洗浄タンク310内の高い水位からの自由
落下により洗浄水給水孔40に供給された洗浄水は、洗
浄水導入路41からゼット水流入室46aにかけての下
向きの傾斜に案内されて、洗浄水導入路41からゼット
水流入室46aに流入する。この流入により、ゼット水
流入室46a内の水位は、ボール部20内の水位よりも
上昇し、この水位の上昇に伴い、ゼット水流入室46a
の下部およびゼット水搬送路46c内に溜まっていたゼ
ット溜水が、ボール部20内のゼット噴出孔22方向に
流動する。この結果、ゼット噴出孔22からは、ゼット
溜水、ゼット水流入室46aに流入した洗浄水が、順次
に噴出される。
【0090】ゼット噴出孔22からの洗浄水は、排出口
25に向かって噴出される。このため、接続路31およ
び上昇路32内の流路内溜水や凹部26に溜まった汚物
は、堰34の方向に押し上げられる。この結果、上昇路
32内における水位は通常水位線WLを越えて急激に上
昇し、屈曲部がすぐに満水状態となる。これにより、屈
曲部とボール部20との間に水位差が生じる。この水位
差により、下降路33内とボール部20との間に圧力差
が生じ、下方向への引き込み力が発生する。このような
作用を、以下、サイホン作用という。
【0091】ゼット噴出孔22は、洗浄後暫くの間は、
ボール部溜水内に水没した状態とされ、このゼット噴出
孔22と連通するゼット水搬送路46c内は、ゼット水
流入室46aに流入した洗浄水により満水状態が維持さ
れる。一方、洗浄水導入路41には、自由落下により付
勢された多量の貯溜水が、洗浄タンク310から一気に
供給される。このため、単位時間当たりのゼット水流入
室46aへの洗浄水の流入量が、単位時間当たりのゼッ
ト噴出孔22からの噴出量よりも多くなる。この結果、
洗浄タンク310から供給された洗浄水はゼット水流入
室46aに溜まっていき、ゼット水流入室46aないし
洗浄水導入路41内の水位が上昇する。
【0092】この水位は、やがて分岐孔42を越える高
さにまで上昇し、この水位の上昇により、分岐孔42か
らリム水流入室43aに洗浄水が流入する。この水位は
さらに上昇し、やがてゼット水流入室46a,洗浄水導
入路41およびリム水流入室43a内が洗浄水で満水と
された状態となる。このため、洗浄水は、未だ水が充満
していないリム水搬送路43b方向に強い力で移動し、
リム水流入室43aの前側の内壁に衝突した後、左右に
分かれてリム水搬送路43bに流入する。便器10の前
側方向に付勢されて、左右のリム水搬送路43bに流入
した洗浄水は、水出し孔44の開孔径や洗浄水の付勢力
に対応して分配されて、各孔44a〜eから吐出され
る。
【0093】このとき、分岐孔42に近い位置である右
側後方のリム部21の裏側に形成された長孔44dから
は、付勢力の大きな水が、便器の前方のやや左側の乾燥
面24に向けて多量に吐出される。また、便器10前方
のやや右側の位置に形成された長孔44eからは、リム
導水路43を右回りに流れてきた洗浄水が、便器10左
後方の乾燥面24に向けて多量に吐出される。この長孔
44d,eから吐出された洗浄水が主流となって、水出
し孔44から吐出される洗浄水に時計廻り方向への旋回
力が付与される。
【0094】このように旋回力が付与された洗浄水は、
便器10の乾燥面24の表面に沿って流下し、ボール部
溜水に合流する。この合流により、洗浄水の旋回力は、
ボール部20内の溜水RWに伝達される。これにより、
ボール部20内の水に右回りの旋回流が生じる。この結
果、ボール部20内の汚物は、旋回流の渦に巻き込まれ
て凹部26に集められ、排出口25に向かう。
【0095】一方、水出し孔44からの吐出により増量
されたボール部溜水は、既に発生しているサイホン作用
により、排水路方向に引き込まれる。従って、ボール部
20内の水位は、水出し孔44からの洗浄水の吐出の前
と比べて、さほど上昇しない。一方、ゼット噴出孔22
からは、水出し孔44から洗浄水が吐出されている間、
継続して洗浄水が噴出されるので、屈曲部は満水状態に
維持される。水出し孔44からの洗浄水の吐出後も、屈
曲部とボール部20との間の水位差は維持され、継続し
てサイホン作用が発生する。
【0096】このようなサイホン作用の継続的な発生に
より、洗浄開始前に溜まっていた溜水RWが、溜水RW
内の汚物と共に堰34を越える位置まで引き込まれ、排
水立ち上げ管90に排出される。
【0097】汚れた溜水RWおよび汚物が堰34の方向
に引き込まれる際には、接続路31の始端31aから上
昇路32の終端32cの手前までの流路の断面積が同じ
であるため、汚れた溜水RWは、流路面積の相違によっ
て加速されず、水の圧力損失は加速される場合と比べて
小さくなる。また、始端31aから終端31bまでは同
じ太さなので、管路の太さが漸減している場合のよう
に、管路の途中において洗浄水の流動方向が交差し、洗
浄水同士が複雑に重り合うことがなく、始端31aから
終端32cまでの間で乱流が発生しにくくなる。従っ
て、少量の水しか用いなくてもサイホン作用を安定して
生じさせることが可能となる。この結果、汚水および汚
物は、洗浄水の流動方向に従って、スムーズに終端32
c付近まで移動し、堰34を乗り越えることができる。
【0098】堰34を乗り越えた汚水および汚物は、急
勾配が付された下降路33内を、洗浄水とともにそのま
ま真下方向に落下し、排水ソケット70を介して排水立
ち上げ管90に進入する。
【0099】一方、ボール部20内および排水路内に
は、洗浄開始前に溜まっていた溜水RWに替わり、水出
し孔44およびゼット噴出孔22から供給された洗浄水
の一部が、新たな溜水RWとして便器10に溜まる。
【0100】洗浄タンク310から洗浄水供給量分の洗
浄水の供給が終了すると、満水状態であった洗浄水導入
路41およびゼット水流入室46aの水位が徐々に低下
し、水出し孔44からの洗浄水の吐出,ゼット噴出孔2
2からの洗浄水の噴出が、順次に停止する。この後、溜
水RWの水位は、ボール部20,ゼット水流入室46a
および上昇路32において均一となり、洗浄開始前と同
様に、堰34の水平高さの位置に収まる。これにより、
一洗浄動作における便器10の洗浄が完了する。
【0101】次に、導水路S1の特徴的な構成について
説明する。前述したように、便器10には、止水栓の閉
止等により洗浄タンク310内への給水が禁止された状
態(この状態を、以下、閉栓状態という)でのハンドル
330操作により、タンク実容量(大洗浄で4リット
ル、小洗浄で3リットル)分の貯溜水が供給される。供
給された貯溜水は、導水路S1を経て、ゼット噴出孔2
2から噴出され、水出し孔44から吐出される。便器1
0が採用する第1実施例の導水路S1は、このタンク実
容量分の貯溜水を、ゼット噴出孔22および水出し孔4
4のそれぞれに好適に配分して供給する。
【0102】具体的には、第1実施例の導水路S1は、
閉栓状態における小洗浄のハンドル330操作により、
水出し孔44から、ボール部20表面の洗浄のために最
低限必要な量である0.5リットル分の貯溜水を吐出す
るように構成されている。この構成について、図7ない
し図11を参照しつつ説明する。
【0103】前述したように、図1に示した静止状態の
便器10には、2.1リットルの溜水RWが溜まってい
る。この状態において洗浄タンク310を閉栓状態と
し、小洗浄のハンドル330操作を行なうと、便器10
の導水路S1は、ハンドル330操作の直後において、
図7に示すような状態となる。なお、図7は、ハンドル
330操作後に時間t1が経過したときの状態を示して
いる。
【0104】図7に示すように、小洗浄のハンドル33
0操作に伴い、洗浄タンク310からの貯溜水が、洗浄
水導入路41からゼット水流入室46aに流入する。こ
のゼット水流入室46aへの流入により、ゼット溜水お
よび流入した貯溜水の一部がゼット噴出孔22から噴出
される。この結果、既に屈曲部は満水に近い状態となっ
ている。
【0105】一方、ハンドル330操作の直後の段階で
は、ゼット水流入室46aないし洗浄水導入路41内の
水位は、分岐孔42を越える高さにまで上昇しない。従
って、図7に示す状態では、水出し孔44からは、未だ
貯溜水が吐出されていない。
【0106】この後、暫くすると、ゼット水流入室46
aないし洗浄水導入路41内の水位は、分岐孔42を越
える高さに上昇し、分岐孔42からリム水流入室43
a,リム水搬送路43bに貯溜水が流入する。この流入
により、水出し孔44からの貯溜水の吐出が開始され
る。この状態を図8に示す。なお、図8は、ハンドル3
30操作後に時間t2が経過したときの状態を示してい
る。図8に示すように、水出し孔44からの貯溜水の吐
出が開始された時点では、屈曲部は完全に満水状態とな
っている。従って、図8に示す状態の直後にサイホン作
用が発生する。
【0107】この水出し孔44からの吐出の開始後まも
なく、ゼット水流入室46a,洗浄水導入路41および
リム水流入室43aは、洗浄タンク310から供給され
る貯溜水で満水とされる。このため、リム水流入室43
aに流入した貯溜水は、左右のリム水搬送路43b方向
に付勢され、リム水流入室43aに多量の貯溜水が流入
する。この結果、各水出し孔44から乾燥面24に勢い
よく貯溜水が吐出される。この状態を図9に示す。な
お、図9は、ハンドル330操作後に時間t3が経過し
たときの状態を示すものとする。図9に示すように、洗
浄開始前に溜まっていた溜水RWや洗浄開始後に水出し
孔44からボール部20内に吐出された貯溜水のほとん
どは、サイホン作用により、排水路方向に引き込まれて
いる。
【0108】洗浄タンク310から小洗浄のタンク実容
量である3リットル分の貯溜水が洗浄水導入路41に供
給されたときに、洗浄水導入路41への貯溜水の供給が
停止される。貯溜水の供給が停止された後の導水路S1
の状態につき、図10および図11を参照しつつ説明す
る。
【0109】洗浄水導入路41への貯溜水の供給が停止
されると、リム水流入室43aやリム水搬送路43b内
に充満されていた貯溜水は、自重により、水出し孔44
からボール部20に流れ落ちる。また、洗浄水導入路4
1およびゼット水流入室46a内に充満されていた貯溜
水は、自重により、ゼット水流入室46aの下部のゼッ
ト給水孔46b方向に流れ落ちる。このため、ゼット水
流入室46aないし洗浄水導入路41内の水位は低下す
る。
【0110】この水位が、分岐孔42よりも下の位置ま
で低下したときの導水路S1の状態を図10に示す。こ
の図10は、ハンドル330操作後に時間t6が経過し
たときの状態を示している。この状態においては、リム
水流入室43aに洗浄水導入路41内の貯溜水が流入す
ることはない。従って、導水路S1が図10に示した状
態となったときに、水出し孔44からの貯溜水の吐出が
終了する。
【0111】第1実施例では、水出し孔44からの貯溜
水の吐出が開始される図8に示した状態から、水出し孔
44からの貯溜水の吐出が終了される図10に示した状
態に至るまでに、延べ0.5リットルの貯溜水を水出し
孔44から吐出する。つまり、閉栓状態における小洗浄
の動作により、リム水搬送路43bには、分岐孔42,
リム水流入室43aを介して0.5リットルの貯溜水が
供給される。
【0112】一方、ゼット水流入室46aには、小洗浄
のタンク実容量である3リットルの貯溜水からリム水搬
送路43bに供給される0.5リットルの貯溜水を差し
引いた、2.5リットルの貯溜水が供給される。この貯
溜水の供給により、まず、ゼット水流入室46aの下部
およびゼット水搬送路46c内に溜まっていた0.4リ
ットルのゼット溜水がゼット噴出孔22から噴出され
る。続いて、ゼット水流入室46aに供給された2.5
リットルの貯溜水のうち、ゼット溜水量である0.4リ
ットル分を差し引いた2.1リットルの貯溜水が、ゼッ
ト噴出孔22から噴出される。この結果、ゼット噴出孔
22からは、延べ2.5リットルの水が噴出される。
2.5リットルの水をゼット噴出孔22から噴出すれ
ば、排水路において、十分な引き込み力のサイホン作用
を継続的に発生させることができる。この点については
後述する。
【0113】なお、図10は、排水路内の水が排水立ち
上げ管90方向に引き込まれている途中の段階を示して
いる。従って、接続路31,上昇路32に充満している
水のほとんどは、この後、堰34を越えて下降路33か
ら排水立ち上げ管90に導かれる。
【0114】また、図10に示す状態の後、洗浄水導入
路41およびゼット水流入室46a内の貯溜水は、さら
にゼット給水孔46b方向に流れ落ちる。これにより、
ゼット水搬送路46c内の水は、ゼット噴出孔22から
ボール部20内に押し出される。つまり、洗浄水導入路
41ないしゼット水流入室46a内の水位の低下に伴っ
てボール部溜水の水位が上昇する。
【0115】この後、ゼット溜水の水位とボール部溜水
の水位が揃ったときに、ゼット噴出孔22からの貯溜水
の噴出が終了し、ゼット溜水およびボール部溜水と流路
内溜水の水位が揃ったときに、小洗浄の洗浄動作が終了
する。このときの様子を図11に示す。この図11は、
ハンドル330操作後に時間t8が経過したときの状態
を示す。なお、図11において、小洗浄開始前の通常水
位線WLよりも低い位置(第一水位線WL1の位置)に
溜水RWが溜まるのは、閉栓状態での洗浄動作のため、
補給水分の水(約1.5リットル)が便器10に供給さ
れないからである。
【0116】小洗浄の洗浄開始後の経過時間tと水出し
孔44からの吐出量およびゼット噴出孔22からの噴出
量との関係を、図12のグラフに示す。このグラフで
は、原点Oを中心とし、横軸に経過時間tを、縦軸に各
孔からの吐出量および噴出量を、それぞれ表わしてい
る。このグラフ上に、図1,図7ないし図11で説明し
た水出し孔44からの吐出量やゼット噴出孔22からの
噴出量の経時的な変化を、折れ線で示した。なお、図1
2では、水出し孔44からの吐出量を実線を用いて表わ
し、ゼット噴出孔22からの噴出量を一点鎖線を用いて
表わしている。
【0117】図12に示すように、ゼット噴出孔22か
らのゼット溜水および貯溜水の噴出は、洗浄の開始(原
点O)から洗浄の終了(経過時間t8)までの間、継続
して行なわれる。この間に計2.5リットル分の水が噴
出される。また、水出し孔44からの貯溜水の吐出は、
洗浄開始から時間t2が経過した時点から時間t6が経
過するまでの間に行なわれる。この間に計0.5リット
ル分の水が吐出される。
【0118】このように構成された導水路S1に、止水
栓から洗浄タンク310内への給水がなされる状態(こ
の状態を、以下、開栓状態という)で、洗浄水を供給し
た場合について説明する。前述したように、便器10に
は、開栓状態でのハンドル330操作により、タンク実
容量分の貯溜水に補給水を加えた洗浄水供給量(大洗浄
で6リットル、小洗浄で4.5リットル)分の洗浄水が
供給される。即ち、開栓状態では、閉栓状態よりも多量
の洗浄水が供給されるので、水出し孔44からは0.5
リットル以上の洗浄水が吐出される。
【0119】従って、上述した導水路S1を便器10に
採用すれば、ボール部20表面を良好に洗浄することが
できる。また、ゼット噴出孔22からは、相当な引き込
み力のサイホン作用の継続的な発生に十分な2.5リッ
トル以上の洗浄水が吐出される。従って、この導水路S
1を便器10に採用すれば、ボール部20内の汚物を確
実に排出することができる。
【0120】以上、導水路S1によれば、閉栓状態にお
ける小洗浄のハンドル330操作により、0.5リット
ル分の貯溜水がリム水搬送路43bに導かれて、水出し
孔44から吐出される旨を説明した。この導水路S1を
用いた便器10において、閉栓状態で大洗浄のハンドル
330操作を行なった場合には、0.7リットル分の貯
溜水がリム水搬送路43bに導かれて、水出し孔44か
ら吐出される。この点につき、以下に説明する。
【0121】洗浄動作の開始直後においては、洗浄タン
ク310から洗浄水導入路41への単位時間当たりの貯
溜水の供給量は、大洗浄の場合と小洗浄の場合とではほ
ぼ等量である。このため、大洗浄の洗浄開始後からゼッ
ト水流入室46a,洗浄水導入路41およびリム水流入
室43aが貯溜水で満水とされるまでの間における導水
路S1の状態は、図7ないし図9に示した小洗浄の場合
の導水路S1の状態とほぼ同じとなる。
【0122】一方、大洗浄の場合には、タンク実容量で
ある4リットルの貯溜水、即ち、小洗浄の場合よりも1
リットル多い貯溜水が洗浄水導入路41に供給される。
このため、大洗浄の場合には、小洗浄の場合よりも長い
間(1リットルの貯溜水を洗浄タンク310から排出す
るのに要する時間分だけ長い間)、洗浄水導入路41に
貯溜水が供給される。従って、大洗浄の場合には、小洗
浄の場合よりも長い間に亘って、ゼット水流入室46
a,洗浄水導入路41およびリム水流入室43aの満水
状態が維持される。この結果、リム水搬送路43bに
は、分岐孔42,リム水流入室43aから、小洗浄の場
合よりも0.2リットル分多い、0.7リットルの貯溜
水が導かれ、水出し孔44から吐出される。
【0123】このように第1実施例の導水路S1を採用
したサイホンゼット式便器10では、閉栓状態における
大洗浄のハンドル330操作によりタンク実容量である
4リットルの貯溜水を、閉栓状態における小洗浄のハン
ドル330操作によりタンク実容量である3リットルの
貯溜水を、洗浄タンク310から供給する。従って、洗
浄の際に便器に供給される貯溜水の量は、従来のサイホ
ン式便器よりも少なくなる。
【0124】また、開栓状態において、大洗浄のハンド
ル330操作により洗浄水供給量である6リットルの洗
浄水が供給されたときには、ゼット噴出孔22にサイホ
ン作用を継続的に発生可能な量の洗浄水を導くととも
に、各水出し孔44にボール部20の表面を十分に洗浄
可能な量の洗浄水を導く。
【0125】つまり、導水路S1は、便器10に供給さ
れた少量の洗浄水を、ゼット噴出孔22,水出し孔44
のそれぞれに効率よく分配する。従って、タンク実容量
を少量とすることにより洗浄水供給量を少なくした場合
であっても、ボール部20の表面の十分な洗浄および汚
物の確実な排出の双方を実現することができる。
【0126】また、第1実施例の導水路S1は、大洗
浄,小洗浄のいずれの場合においても、タンク実容量分
の貯溜水のうちの0.5リットル以上の貯溜水を水出し
孔44に導く。即ち、水出し孔44には、ボール部20
の表面を洗浄するために必要最小限の量の洗浄水が導か
れる。従って、便器10に供給された洗浄水が少量であ
っても、ゼット噴出孔22に可能な限り多量の洗浄水を
導くことができる。この結果、サイホン作用の持続時間
が長くなり、汚物の排出性能をより向上することが可能
となる。
【0127】さらに、第1実施例の導水路S1は、大洗
浄においてタンク実容量である4リットルの貯溜水が供
給される場合には、水出し孔44に、小洗浄の場合より
も0.2リットル多い0.7リットルの貯溜水を導く。
従って、ボール部20の洗浄能力をより向上することが
できる。例えば、乾燥面24の表面に大便等が付着して
しまった場合でも、付着した汚れを確実に落とすことが
できる。このように、水出し孔44からの洗浄水の吐出
量を0.2リットル増やしても、ゼット噴出孔22から
は、3.3リットル以上の洗浄水が噴出される。従っ
て、サイホン作用の持続性に支障を来たすことがない。
また、溜水RW内に多量の紙や浮遊汚物が存在する場合
にも、これらを確実に排出することができる。
【0128】次に、第2実施例としての導水路S2につ
いて説明する。図13は、導水路S2を採用したサイホ
ンゼット式便器110の縦断面を示す説明図である。図
13に示すサイホンゼット式便器110および洗浄タン
ク410は、第1実施例において図1に示したサイホン
ゼット式便器10および洗浄タンク310とほぼ共通の
各部を備える。図13では、この共通の各部につき、符
号の下二桁を図1と同じ数字を用いて表わしている。
【0129】一方、便器110が採用する導水路S2の
形状は、前述した便器10の導水路S1と異なってい
る。即ち、導水路S2の一部である洗浄水導入路141
は、その底部141bがより鉛直上方に位置するように
形成されている。このため、洗浄水導入路141は、図
1に示した洗浄水導入路41よりも流路の断面積が小さ
くなっている。
【0130】このように形成された第2実施例の導水路
S2は、タンク実容量分(大洗浄で4リットル、小洗浄
で3リットル)の貯溜水を、ゼット噴出孔122および
水出し孔144のそれぞれに好適に配分して供給する。
即ち、導水路S2は、閉栓状態における大洗浄のハンド
ル430操作に基づいて供給される4リットルの貯溜水
のうち、ボール部120内の汚物を堰134を越える位
置まで引き込むために排水路に供給すべき量の貯溜水
を、ゼット噴出孔122から噴出するように構成されて
いる。この構成について、図14ないし図18を参照し
つつ説明する。
【0131】図13に示した静止状態の便器110に
は、便器10と同様に2.1リットルの溜水RWが溜ま
っている。この状態において洗浄タンク410を閉栓状
態とし、小洗浄のハンドル430操作を行なった直後の
導水路S2の状態を図14に示す。なお、図14は、ハ
ンドル430操作後に時間t1が経過したときの状態、
即ち、図7と同じ経過時間を経た状態を示している。
【0132】図14に示すように、洗浄タンク410か
らの貯溜水は、洗浄水導入路141からゼット水流入室
146aに流入する。このゼット水流入室146aへの
流入により、ゼット溜水および流入した貯溜水の一部が
ゼット噴出孔122から噴出され、屈曲部は既に満水に
近い状態とされている。
【0133】一方、ゼット水流入室146aないし洗浄
水導入路141内の水位は、ハンドル430操作から時
間t1が経過した段階で、既に分岐孔142を越える高
さにまで上昇している。従って、分岐孔142からリム
水流入室143a,リム水搬送路143bへの貯溜水の
流入により、水出し孔44からの貯溜水の吐出が開始さ
れている。
【0134】この水出し孔144からの吐出の開始後ま
もなく、ゼット水流入室146a,洗浄水導入路141
およびリム水流入室143aは、洗浄タンク410から
供給される貯溜水で満水とされる。このため、リム水流
入室143aに流入した貯溜水は、左右のリム水搬送路
143b方向に付勢され、リム水流入室143aに多量
の貯溜水が流入する。この結果、各水出し孔144から
乾燥面124に勢いよく貯溜水が吐出される。この状態
を図15に示す。なお、図15は、ハンドル430操作
後に時間t2が経過したときの状態、即ち、図8と同じ
経過時間を経た状態を示している。
【0135】図15に示すように、排水路の屈曲部は、
ゼット水流入室146a,洗浄水導入路141およびリ
ム水流入室143aが満水とされたされた時点で、完全
に満水状態となっている。一方、排水路とボール部12
0との水位差は、図8に示す便器10の場合と比べて小
さくなっている。これは、便器110では、水出し孔1
44からボール部120への貯溜水の吐出が、便器10
よりも早い時期に開始されることによるものである。
【0136】図15に示す状態の直後に、上記の排水路
とボール部120との水位差に基づいてサイホン作用が
発生する。サイホン作用が発生した直後の様子を図16
に示す。図16は、ハンドル430操作後に時間t3が
経過したときの状態、即ち、図9と同じ経過時間を経た
状態を示している。つまり、サイホン作用が発生する時
期は、導水路S1を用いた場合とほぼ同じである。
【0137】一方、前述したように、便器110では、
サイホン作用が発生する直前における排水路とボール部
120との水位差が、便器10のときよりも小さくな
る。このため、導水路S2を用いた便器110では、サ
イホン作用発生時における引き込み力の強さが、導水路
S1を用いた便器10よりも若干弱くなる。従って、図
16に示すように、ボール部120から排水路方向に引
き込まれている水の量は、図9に示す便器10の場合と
比較して少なくなっている。
【0138】洗浄タンク410から小洗浄のタンク実容
量である3リットル分の貯溜水が洗浄水導入路141に
供給されると、洗浄水導入路141への貯溜水の供給が
停止される。これにより、ゼット水流入室146aない
し洗浄水導入路141内の水位が徐々に低下する。
【0139】この水位が、分岐孔142よりも下の位置
まで低下したときの導水路S2の状態を図17に示す。
なお、図17は、ハンドル430操作後に時間t6が経
過したときの状態、即ち、図10と同じ経過時間を経た
状態を示している。この状態においては、リム水流入室
143aに洗浄水導入路141内の貯溜水が流入するこ
とはない。従って、導水路S2が図17に示した状態と
なったときに、水出し孔144からの貯溜水の吐出が終
了する。
【0140】第2実施例では、水出し孔144からの貯
溜水の吐出が開始される図14に示した状態から、水出
し孔44からの貯溜水の吐出が終了される図17に示し
た状態に至るまでに、延べ0.7リットルの貯溜水を水
出し孔44から吐出する。つまり、閉栓状態における小
洗浄の動作により、リム水搬送路143bには、第1実
施例の場合よりも多量の0.7リットルの貯溜水が供給
される。
【0141】なお、図17は、排水路内の水が排水立ち
上げ管190方向に引き込まれている途中の段階を示し
ている。従って、接続路131,上昇路132に充満し
ている水のほとんどは、この後、堰134を越えて下降
路133から排水立ち上げ管190に導かれる。
【0142】図17に示す状態の後、洗浄水導入路14
1およびゼット水流入室146a内の貯溜水は、ゼット
給水孔146b,ゼット水搬送路146cを経由して、
ゼット噴出孔122からボール部120内に押し出され
る。これにより、洗浄水導入路141ないしゼット水流
入室146a内の水位の低下とともに、ボール部溜水の
水位が上昇する。この後、ゼット水流入室146a内の
水位とボール部溜水の水位が揃ったときに、ゼット噴出
孔122からの貯溜水の噴出が終了する。この状態を図
18に示す。この図18は、ハンドル430操作後に時
間t8が経過したときの状態、即ち、図11と同じ経過
時間を経た状態を示している。
【0143】第2実施例では、ゼット噴出孔122から
の貯溜水の噴出が開始されるハンドル430操作直後
(時間t1が経過する前)の状態から、ゼット噴出孔1
22からの貯溜水の吐出が終了される図18に示した状
態に至るまでに、ゼット噴出孔122から延べ2.3リ
ットルの水を吐出する。
【0144】つまり、ゼット水流入室146aには、小
洗浄のタンク実容量である3リットルの貯溜水からリム
水搬送路143bに供給される0.7リットルの貯溜水
を差し引いた、2.3リットルの貯溜水が供給される。
この貯溜水の供給により、まず、ゼット水流入室146
aの下部およびゼット水搬送路146c内に溜まってい
た0.4リットルのゼット溜水がゼット噴出孔122か
ら噴出される。続いて、ゼット水流入室146aに供給
された2.3リットルの貯溜水のうち、ゼット溜水量で
ある0.4リットル分を差し引いた1.9リットルの貯
溜水が、ゼット噴出孔122から噴出される。この結
果、ゼット噴出孔122からは、延べ2.3リットルの
水が噴出される。2.3リットルの水をゼット噴出孔1
22から噴出すれば、排水路において、十分な引き込み
力のサイホン作用を継続的に発生させることができる。
この点については後述する。
【0145】なお、ボール部20と排水路とは排出口1
25を介して連通されている。このため、図18に示す
ように、ゼット水流入室146a内の水位とボール部溜
水の水位が揃うのとほぼ同時に、この2つの水位と流路
内溜水の水位も揃い、これにより小洗浄の洗浄動作が終
了する。
【0146】小洗浄の洗浄開始後の経過時間tと水出し
孔144からの吐出量およびゼット噴出孔122からの
噴出量との関係を、図19のグラフに示す。このグラフ
では、原点Oを中心とし、横軸に経過時間tを、縦軸に
各孔からの吐出量および噴出量を、それぞれ表わしてい
る。このグラフ上に、図13ないし図18で説明した水
出し孔144からの吐出量やゼット噴出孔122からの
噴出量の経時的な変化を、折れ線で示した。なお、図1
9では、水出し孔144からの吐出量を実線を用いて表
わし、ゼット噴出孔122からの噴出量を一点鎖線を用
いて表わしている。
【0147】図19に示すように、ゼット噴出孔122
からのゼット溜水および貯溜水の噴出は、洗浄の開始
(原点O)から洗浄の終了(経過時間t8)までの間、
継続して行なわれる。この間に計2.3リットル分の水
が噴出される。また、水出し孔144からの貯溜水の吐
出は、洗浄開始から時間t1が経過した時点から時間t
6が経過するまでの間に行なわれる。この間に計0.7
リットル分の水が吐出される。
【0148】このように構成された導水路S2に、開栓
状態で洗浄水を供給した場合について説明する。前述し
たように、便器110には、開栓状態でのハンドル43
0操作により、タンク実容量分の貯溜水に補給水を加え
た洗浄水供給量(大洗浄で6リットル、小洗浄で4.5
リットル)分の洗浄水が供給される。即ち、開栓状態で
は、閉栓状態よりも多量の洗浄水が供給されるので、水
出し孔144からは0.7リットル以上の洗浄水が吐出
される。
【0149】従って、導水路S2を便器110に採用す
れば、ボール部120表面を良好に洗浄することができ
る。また、ゼット噴出孔122からは、相当な引き込み
力のサイホン作用の継続的な発生に十分な2.3リット
ル以上の洗浄水が吐出される。従って、導水路S2を便
器110に採用すれば、ボール部120内の汚物を確実
に排出することができる。
【0150】なお、上記の導水路S2を用いた便器11
0において、閉栓状態で大洗浄のハンドル430操作を
行なった場合には、3.1リットルの貯溜水がゼット水
流入室146aに導かれ、3.1リットル分のゼット溜
水および貯溜水がゼット噴出孔122から噴出される。
即ち、大洗浄の場合には、小洗浄の場合よりも1リット
ル分多い貯溜水が洗浄水導入路141に供給されるが、
この1リットル分の貯溜水は、分岐孔142によりリム
水搬送路143b方向とゼット水搬送路146c方向に
分配される。この結果、ゼット水搬送路146cには、
小洗浄の場合よりも0.8リットル分多い、3.1リッ
トルの貯溜水が導かれる。
【0151】このように第2実施例の導水路S2は、大
洗浄においてタンク実容量である4リットルの貯溜水が
供給される場合には、ゼット水搬送路146cに、小洗
浄の場合よりも0.8リットル多い3.1リットルの貯
溜水を導く。これにより、ゼット噴出孔122からは、
3.1リットル分のゼット溜水および貯溜水が噴出され
る。従って、サイホン作用の持続時間がより長くなり、
ボール部20内の汚物の排出能力をより向上することが
できる。例えば、溜水RW内に多量の紙や浮遊汚物が存
在する場合にも、これらを確実に排出することができ
る。
【0152】次に、タンク実容量分の貯溜水をリム導水
路43とゼット導水路46に配分する比率について説明
する。図20は、第1実施例の導水路S1を用いた場合
の配分比率を示す。図20に示すように第1実施例の導
水路S1では、大洗浄の場合に、タンク実容量Dである
4リットルの貯溜水のうち、0.7リットルの貯溜水を
リム導水路43に供給し、3.3リットルの貯溜水をゼ
ット導水路46に供給する。小洗浄の場合には、タンク
実容量Dである3リットルの貯溜水のうち、0.5リッ
トルの貯溜水をリム導水路43に供給し、2.5リット
ルの貯溜水をゼット導水路46に供給する。即ち、ゼッ
ト導水路46に供給される貯溜水Dzに対するリム導水
路43に供給される貯溜水Drの割合を、大洗浄の場合
には約21パーセントとし、小洗浄の場合には約20パ
ーセントとする。
【0153】第2実施例の導水路S2を用いた場合の配
分比率を図21に示す。図21に示すように第2実施例
の導水路S2では、大洗浄の場合に、タンク実容量Dで
ある4リットルの貯溜水のうち、3.1リットルの貯溜
水をゼット導水路146に供給し、残りの0.9リット
ルの貯溜水をリム導水路143に供給する。小洗浄の場
合には、タンク実容量である3リットルの貯溜水のう
ち、2.3リットルの貯溜水をゼット導水路146に供
給し、残りの0.7リットルの貯溜水をリム導水路14
3に供給する。即ち、ゼット導水路146に供給される
貯溜水の量Dzに対するリム導水路143に供給される
貯溜水の量Drの割合を、大洗浄の場合には約29パー
セントとし、小洗浄の場合には約30パーセントとす
る。
【0154】実験によれば、この配分比率Dr/Dzが
少なくとも20パーセント以上60パーセント以下であ
れば、ボール部の表面の洗浄やサイホン作用の発生に支
障が生じないことが確認された。従って、サイホンゼッ
ト式便器の導水路を、ゼット導水路に供給される貯溜水
の水量Dzおよびリム導水路に供給される貯溜水の水量
Drを、配分比率Dr/Dzが20パーセント以上60
パーセント以下となるように形成すれば、第1実施例,
第2実施例と同様に、ボール部の表面の十分な洗浄およ
び汚物の確実な排出の双方を確保することができる。
【0155】例えば、少量の水でボール部の表面を十分
に洗浄するためには、リム導水路に供給される貯溜水の
量Drを、大洗浄の場合には0.7リットルから1.6
リットルの範囲で、小洗浄の場合には0.5リットルか
ら1.1リットルの範囲で定めることが望ましい。この
ような範囲で値Drを定めた場合には、この値Drをタ
ンク実容量の値Dから差し引いたときの値、即ち、ゼッ
ト導水路に供給される貯溜水の量Dzの値を求めること
により、汚物の排出性能を検証することができる。即
ち、この値Dzに対する値Drの割合が、20パーセン
ト以上60パーセント以下となっていれば、ゼット噴出
孔からの洗浄水により、十分なサイホン作用を発生させ
ることができるのである。
【0156】なお、この場合のタンク実容量Dの値は、
第1実施例で説明した「大洗浄の場合に4リットル,小
洗浄の場合に3リットル」という数値に限るものではな
く、任意に定めればよい。例えば、大洗浄におけるタン
ク実容量Dの値を6リットルとし、大洗浄の際にリム導
水路に供給される貯溜水の量Drを1リットルと定めた
場合には、ゼット導水路に供給される貯溜水の量Dzの
値は5リットルとなる。この場合には、値Dzに対する
値Drの割合は上記の範囲内の20パーセントという値
となる。従って、このような値とすれば、大洗浄の際に
おいて十分なサイホン作用の発生とボール部表面の洗浄
とを確実に行なうことができる。
【0157】なお、以上のタンク実容量D,ゼット導水
路に供給される貯溜水の量Dz,リム導水路に供給され
る貯溜水の量Drの関係は、以下の数式により表わすこ
とができる。 式1:D=Dz+Dr 式2:Dr=αDz(0.2≦α≦0.6) 式3:Dz=βDr(1.7≦β≦5)
【0158】上記の式2を式1に代入することにより、
タンク実容量Dとゼット導水路に供給される貯溜水の量
Dzとの関係を、以下の数式により表わすことができ
る。 式4:D=αDz(1.2≦α≦1.6)
【0159】サイホンゼット式便器において、所定のタ
ンク実容量Dに対するゼット導水路に供給される貯溜水
の量Dzを、上記式4の関係を満たすように定めれば、
ボール部の表面の洗浄および汚物の確実な排出の双方
を、効果的に実現することができる。
【0160】また、上記の式3を式1に代入することに
より、タンク実容量Dとリム導水路に供給される貯溜水
の量Drとの関係を、以下の数式により表わすことがで
きる。 式5:D=βDz(2.7≦β≦6)
【0161】サイホンゼット式便器において、所定のタ
ンク実容量Dに対するリム導水路に供給される貯溜水の
量Drを、上記式5の関係を満たすように定めれば、ボ
ール部の表面の洗浄および汚物の確実な排出の双方を、
効果的に実現することができる。
【0162】ゼット導水路に供給される貯溜水の水量D
zとリム導水路に供給される貯溜水の水量Drとの好適
な配分比率Dr/Dzを検証するために、便器の洗浄性
能に関する以下の試験を行なった。即ち、サイホンゼッ
ト式便器において、上記の配分比率Dr/Dzを種々の
値に設定しておき、この便器に実際に水を流して便器が
良好に洗浄されたか否かを確認し、便器の洗浄性能を判
定した。具体的には、ボール部表面が洗浄できたか否
かを確認することにより、ボール面洗浄性能を判定する
とともに、ボール部内の汚物が排出できたか否かを確
認することにより、汚物排出性能を判定し、ボール面
洗浄性能および汚物排出性能の双方が良好と判定され
た場合に、便器の洗浄性能が良好であると判定した。
【0163】具体的な試験条件は、以下の通りである。
まず、洗浄タンクをサイホンゼット式便器に装着すると
ともに、洗浄タンク内にタンク容量分の水を溜めた。洗
浄タンクとしては、タンク実容量Dが2.8リットルの
もの,3.8リットルのもの,6リットルのものの3種
類を用意し、この3種類のタンクを順次に便器に接続
し、タンク実容量Dごとに試験を行なった。
【0164】なお、便器の洗浄性能を正確に評価するた
めには、給水条件が洗浄能力に及ぼす影響を排除する必
要がある。このため、テスト対象となる便所装置におい
ては、洗浄タンク内にタンク容量分の貯溜水を溜めると
ともに、洗浄タンク内への外部給水源からの給水を遮断
した。この給水の遮断により、便器には補給水が供給さ
れず、便器には、タンク実容量D分の貯溜水のみが供給
される。また、便器内には、堰34,134の高さ、即
ち、通常水位線WLの高さまで溜水RWを溜めた。
【0165】上記の配分比率Dr/Dzは、サイホンゼ
ット式便器の導水路におけるゼット給水孔46b,14
6bと分岐孔42,142の開孔面積の大小を調節する
ことにより、任意に設定した。具体的には、上記の開孔
面積を調節して、まず、タンク実容量D分の貯溜水が便
器に供給されたときに水出し孔から吐出される貯溜水の
量(以下、リム吐出量という)を決定し、このリム吐出
量をタンク実容量から差し引くことにより、ゼット噴出
孔から噴出される貯溜水の量(以下、ゼット噴出量とい
う)を求めた。例えば、タンク実容量が2.8リットル
の洗浄タンクを接続している場合には、リム吐出量を
0.1リットルという値から2.7リットルという値ま
で、0.1リットル刻みで変化させた。このリム吐出量
の各値を2.8リットルから差し引いて、ゼット噴出量
を、2.7リットルから0.1リットルまでの各値とし
た。これらのリム吐出量の値をゼット噴出量の値で除算
し、この値を上記の配分比率Dr/Dzと擬制した。
【0166】ボール部内が汚れた状態を創り出すため、
試験の開始前に、便器の溜水RW中に所定量の汚物を入
れるとともに、便器の溜水面よりも上方のボール部の内
周壁に、所定量のインクを塗布した。なお、汚物の量や
インクの塗布の程度は、大洗浄,小洗浄のそれぞれの場
合を想定して、大洗浄前のボール部の状態(以下、大洗
浄前状態という),小洗浄前のボール部の状態(以下、
小洗浄前状態という)という2通りの状態を用意し、各
状態について試験を行なった。
【0167】以上の条件下で、洗浄タンクのハンドルを
操作し、洗浄動作の終了後、便器のボール面にインクが
残留しているか否かを確認するとともに、便器の内部や
排水路の途中に排出物が残留しているか否かを確認し、
この確認の結果を記録した。このような試験を、大洗
浄,小洗浄のそれぞれについて10回づつ行ない、ボー
ル面洗浄性能の良否および汚物排出性能の良否を判定し
た。
【0168】この試験の結果を、図22に示す。図22
(a)はタンク実容量Dが2.8リットルの洗浄タンク
を便器に接続した場合の試験結果を示し、図22(b)
はタンク実容量Dが3.8リットルの洗浄タンクを便器
に接続した場合の試験結果を、図22(c)はタンク実
容量Dが6リットルの洗浄タンクを便器に接続した場合
の試験結果を、それぞれ示す。
【0169】まず、ボール部の状態が小洗浄前状態であ
った場合について図22を見てみると、ボール面洗浄性
能に関しては、リム吐出量が0.5リットル以上の値を
採ったときに良好であるという結果を得た。また、ゼッ
ト噴出量が、0.5リットルのリム吐出量に対応する
2.3リットルという値を採るときには、汚物排出性能
は良好であるという結果を得た。
【0170】次に、ボール部の状態が大洗浄前状態であ
った場合について図22を見てみると、ボール面洗浄性
能に関しては、リム吐出量が0.7リットル以上の値を
採ったときに良好であるという結果を得た。また、ゼッ
ト噴出量が、0.7リットルのリム吐出量に対応する
3.1リットルという値を採るときには、汚物排出性能
は良好であるという結果を得た。なお、ゼット噴出量が
同じ2.3リットルという値のときに、図22(a)と
図22(b)との間で汚物排出性能の評価が異なるの
は、ゼット噴出量とリム吐出量とのバランスにより、サ
イホン作用の引き込み力の強さが変わるからである。
【0171】ボール面洗浄性能および汚物排出性能の双
方が良好と判定された場合の配分比率Dr/Dzの値
を、図22に斜線付きで示した。図22に示すように、
この配分比率Dr/Dzの値は、値0.2から値0.6
の範囲にある。この結果、配分比率Dr/Dzが20パ
ーセントから60パーセントのときに、便器の洗浄性能
が良好となることがわかった。
【0172】なお、ゼット導水路に供給される貯溜水の
水量Dz,リム導水路に供給される貯溜水の水量Drや
これらの水量に基づく配分比率Dr/Dzは、溜水RW
の量,洗浄水導入路41およびゼット水流入室46aの
容積,分岐孔42やゼット給水孔46b,ゼット噴出孔
22の位置ないし形状,ゼット水搬送路46cの容積等
を変えることにより、任意の値に設定することが可能で
ある。
【0173】なお、前述した第1,第2実施例では、洗
浄タンク310,410のタンク実容量を大洗浄で4リ
ットル,小洗浄で3リットルという値とするが、この値
を、大洗浄の場合に3.8リットル以上6リットル以
下,小洗浄の場合に2.8リットル以上4.5リットル
以下の値としてもよい。また、上述した実施例では、便
器10,110の溜水RWの量を2.1リットルとする
が、サイホン作用を利用する便器においては、この値
を、1.3リットル以上2.5リットル以下の値として
もよい。サイホン作用を利用する便器では、タンク実容
量や溜水RWの量が上記の値の範囲であれば、ボール部
20,120の洗浄やゼット洗浄に支障が生じないこと
が、実験により確認されている。タンク実容量が6リッ
トル以下となることで、従来よりも洗浄水の水量を少な
くすることができ、従来のサイホン式の便器よりも節水
を図ることが可能となる。
【0174】タンク実容量,溜水RWの量を上記の数値
範囲とした場合における洗浄性能の評価について説明す
る。当該便器に関しては、便器の洗浄を行なった際にお
ける溜水RWの置換率に基づいて洗浄性能を評価する手
法を採った。即ち、洗浄水を流したときに、便器に溜ま
った溜水RWが完全に置換された場合には、洗浄水を流
す前に便器に溜まっていた溜水RWの全てが、排水路の
堰34,134を越えて排水立ち上げ管90,190に
排出されたことになり、洗浄能力が高いと評価できる。
また、便器に溜まった溜水RWが置換されない場合に
は、洗浄水を流す前に便器に溜まっていた溜水RWが、
排水路の堰34,134を越えられずに上昇路32,1
32を下降してボール部20,120内に戻ってきたこ
とになり、洗浄能力が不十分と評価できる。
【0175】洗浄能力が十分であると評価し得る溜水R
Wの置換率は、様々な便器に基づく実験から、98.5
パーセント以上であることが確認されている。つまり、
「良好な洗浄性能を有する節水便器」を実現するために
は、この便器に洗浄水を供給したときに、洗浄水を流す
前に溜まっていた溜水RWのうちの98.5パーセント
以上が新たに供給された洗浄水に置換されることが望ま
しい。
【0176】そこで、どの程度の量の洗浄水を流したと
きに、98.5パーセント以上の溜水RWの置換が生じ
るかを、上記のサイホンゼット式便器10,110やこ
のサイホンゼット式便器10,110からゼット噴出機
構を除去したサイホン便器を用いてテストした。
【0177】テストは、以下のような手法で行なった。
まず、ボール部20,120、接続路31,131およ
び上昇路32,132やゼット水搬送路46c,146
cに貯溜している溜水RWに電解質を溶解し、溜水RW
の電気伝導度m1の値を求めておく。次に、この溜水R
Wが溜まった便器に洗浄水を供給して、洗浄水の供給後
に便器に溜まっている溜水RWの電気伝導度m2の値を
測定し、洗浄前の電気伝導度m1に対する洗浄後の電気
伝導度m2の割合(m2/m1以下、濃度比という)を
求める。この濃度比の値が小さいほど、溜水RWの置換
率が高いことを示している。
【0178】濃度比は、便器における洗浄水量n1と溜
水RWの量n2との比率(n1/n2。以下、体積比と
いう)に応じて求めた。ここで、洗浄水量とは、一回の
便器洗浄の際に使用する水の量、即ち、一回の洗浄動作
において、堰34,134を越えて排水立ち上げ管9
0,190に排出される水の量をいう。
【0179】この体積比の値が大きいほど、溜水RWに
対して洗浄水量が大きいことを示している。例えば、洗
浄水量が7リットルとした場合において、溜水RWの量
を1.4リットルとすれば体積比は5という大きな値と
なり、溜水RWの量を3.5リットルとすれば、体積比
は2という小さな値となる。
【0180】なお、本テストにおいては、タンク実容量
d1と溜水RWの量n2の比率を求め、この比率を洗浄
水量n1と溜水RWの量n2との比率に換算して、体積
比を算出した。即ち、洗浄水量n1には、タンク実容量
d1以外に補給水量h1が含まれ、この補給水量h1
は、元水圧等の給水条件によって異なるものである。従
って、客観的かつ適正な結果を得るためには、給水条件
が洗浄能力に及ぼす影響を排除することが必要となる。
そこで、テスト対象となる便所装置においては、洗浄タ
ンク310,410内にタンク実容量d1分の貯溜水を
溜めるとともに、洗浄タンク310,410内への外部
給水源からの給水を遮断した。一方、便器10,110
には、通常の溜水量n2の水(堰34,134の高さで
ある通常水位線WLの高さまでの水)を溜めてテストを
行なった。
【0181】以上のテストの結果を図23に示す。図2
3は、濃度比と体積比との関係を示すグラフである。こ
のグラフでは、縦軸に濃度比を表わしている。この濃度
比が0.015という値を採るときに、溜水RWの置換
率が98.5パーセントとなる。図23に示すように、
濃度比が0.015以下、即ち置換率が98.5パーセ
ント以上となるためには、体積比、即ち洗浄水量n1/
溜水量n2が4.2以上の値を採ることが必要となる。
この結果、洗浄水量n1を3〜7リットルとして良好な
洗浄能力を確保するためには、0.71〜1.6リット
ルの量の溜水RWが必要となることがわかった。
【0182】以上、本発明が実施される形態につき、実
施例を用いて説明した。本発明はこうした実施例に何等
限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範
囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論であ
る。
【0183】例えば、上記実施例の導水路S1,S2で
は、洗浄タンクからの洗浄水を一旦洗浄水導入路41,
141に供給し、供給された洗浄水がより下流側の分岐
孔42,142に流れ込んだときに、洗浄水を水出し孔
44,144方向とゼット噴出孔22,122方向とに
分岐する構成を採るが、導水路S1,S2を、流路の途
中で分岐しない形状に形成することも可能である。
【0184】例えば、洗浄水給水孔40,140と水出
し孔44とを連通する第1の流路と洗浄水給水孔40,
140とゼット噴出孔22,122とを連通する第2の
流路を、便器10,110内に別々に形成し、洗浄タン
クから第1の流路に供給された洗浄水を水出し孔44,
144に、洗浄タンクから第2の流路に供給された洗浄
水をゼット噴出孔22,122に送り込む構成を考える
ことができる。この第1の流路と第2の流路を形成する
際には、便器に2つの洗浄水給水孔を設け、各洗浄水給
水孔から第1の流路,第2の流路流路を別々に形成する
ものであってもよいし、1つの洗浄水給水孔以降に形成
された1の流路内に間仕切り部材を設け、1の流路内に
第1の流路,第2の流路を形成するものであってもよ
い。
【0185】また、上記実施例では、洗浄タンクとし
て、便器10,110と密接して連結されるロータンク
型タンクを用いたが、ロータンク型タンク以外のタン
ク、例えば、便器10,110と洗浄管を介して接続さ
れてトイレの壁等に設置される隅付き型や平付き型のタ
ンクを用いてもよい。この場合に、洗浄タンクを高い位
置に設置してハイタンクとすることも可能である。
【0186】便器10,110への給水装置として、洗
浄タンク310,410以外の他の給水装置を用いても
差し支えない。例えば、定量の洗浄水を供給可能なフラ
ッシュバルブを洗浄水給水孔40,140に接続する構
成などを考えることができる。
【0187】また、上記実施例では、ハンドル330の
操作に基づいて小便用排水弁344や大便用排水弁34
5の開閉を行なう構成としたが、赤外線センサ等のセン
サを設け、このセンサの検知状態により、小便用排水弁
344や大便用排水弁345の開閉を行なう構成として
も差し支えない。
【0188】水出し孔44,144からの洗浄水に旋回
成分を付与する手法については、上記実施例で説明した
以外の他の手法を用いてもよい。例えば、旋回方向への
角度をつけながら水出し孔44,144を形成してもよ
いし、リム水搬送路43b,143bの流路を片側廻り
にしてもよい。また、ボール部20,120の乾燥面2
4,124や覆水面23,123の表面形状を、前後ま
たは左右に非対称の形状とし、水出し孔44,144か
ら吐出される洗浄水をボール部20,120の形状に沿
って流下させることにより、溜水RWに旋回を付与する
構成としてもよい。なお、溜水RWに旋回流を生じさせ
ることなく、サイホン作用による引き込み力のみによっ
て、ボール部20,120内の汚物を排出口25,12
5に向かわせる構成とすることも可能である。
【0189】上記実施例では、溜水面の大きさを、幅1
85mm×奥行き225mmという値としたが、この値
を、日本工業規格に定められたサイホン式便器の溜水面
の面積の基準値である幅140mm以上×奥行き180
mm以上の値とすれば、ボール部20,120への汚物
の付着やボール部20,120からの臭気の発散を、サ
イホン式便器と同等程度に防止することが可能となる。
【0190】また、上記実施例では、本発明の導水路の
構造をサイホンゼット式便器10,110に適用した場
合を例として説明したが、上記の導水路の構造を備えた
便器と他の装置や部材との組み合わせを発明として把握
することもできる。例えば、局部洗浄や暖房等の諸機能
を実現する機能便座と組み合わせた衛生洗浄装置、収納
用キャビネットや手洗装置と組み合わせたトイレキット
装置、トイレ室内の構造体としての壁材,床材および天
井材等を組み合わせたシステムトイレ装置等が考えられ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である導水路S1を採用し
たサイホンゼット式便器10につき、その縦断面を示す
説明図である。
【図2】便器10の上面を示す説明図である。
【図3】図2に示した便器10を、位置B−Bで切断し
た状態を示す説明図である。
【図4】洗浄タンク310の構成を示す説明図である。
【図5】便器10の接続路31、上昇路32、下降路3
3の横断面形状を示す説明図である。
【図6】接続路31、上昇路32および下降路33を、
各部で切断した状態を示す説明図である。
【図7】閉栓状態における小洗浄のハンドル330操作
後に、時間t1が経過したときの導水路S1の様子を示
す説明図である。
【図8】ハンドル330操作後に時間t2が経過し、水
出し孔44からの貯溜水の吐出が開始されたときの導水
路S1の状態を示す説明図である。
【図9】ハンドル330操作後に時間t3が経過し、サ
イホン作用が発生したときの様子を示す説明図である。
【図10】ハンドル330操作後に時間t6が経過し、
水出し孔44からの貯溜水の吐出が終了したときの導水
路S1の状態を示す説明図である。
【図11】ハンドル330操作後に時間t8が経過し、
小洗浄の洗浄動作が終了したときの導水路S1の様子を
示す説明図である。
【図12】小洗浄の洗浄開始後の経過時間tと水出し孔
44からの吐出量およびゼット噴出孔22からの噴出量
との関係を示すグラフである。
【図13】本発明の第1実施例である導水路S2を採用
したサイホンゼット式便器110につき、その縦断面を
示す説明図である。
【図14】閉栓状態における小洗浄のハンドル430操
作後に、時間t1が経過し、水出し孔144からの貯溜
水の吐出が開始されたときの導水路S2の様子を示す説
明図である。
【図15】ハンドル430操作後に時間t2が経過した
ときの導水路S2の状態を示す説明図である。
【図16】ハンドル430操作後に時間t3が経過し、
サイホン作用が発生したときの様子を示す説明図であ
る。
【図17】ハンドル430操作後に時間t6が経過し、
水出し孔144からの貯溜水の吐出が終了したときの導
水路S2の状態を示す説明図である。
【図18】ハンドル430操作後に時間t8が経過し、
ゼット噴出孔122からの貯溜水の噴出が終了したとき
の導水路S2の様子を示す説明図である。
【図19】小洗浄の洗浄開始後の経過時間tと水出し孔
144からの吐出量およびゼット噴出孔122からの噴
出量との関係を示すグラフである。
【図20】第1実施例の導水路S1が、タンク実容量分
の貯溜水をリム導水路43とゼット導水路46に配分す
る比率を示す説明図である。
【図21】第2実施例の導水路S2が、タンク実容量分
の貯溜水をリム導水路143とゼット導水路146に配
分する比率を示す説明図である。
【図22】ゼット導水路に供給される貯溜水の水量Dz
とリム導水路に供給される貯溜水の水量Drとの配分比
率Dr/Dzに関する試験の結果を示す説明図である。
【図23】濃度比と体積比との関係を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
10…サイホンゼット式便器 20…ボール部 21…リム部 22…ゼット噴出孔 23…覆水面 24…乾燥面 25…排出口 26…凹部 28…タンク密結孔 29…便座取付用孔 31…接続路 31a…始端 31b…終端 32…上昇路 32a…始端 32b…中間部 32c…終端 33…下降路 34…堰 40…洗浄水給水孔 41…洗浄水導入路 42…分岐孔 43…リム導水路 43a…リム水流入室 43b…リム水搬送路 44…水出し孔 44a…大孔 44b…中孔 44c…小孔 44d…長孔 44e…長孔 46…ゼット導水路 46a…ゼット水流入室 46b…ゼット給水孔 46c…ゼット水搬送路 50…水底面 51…ゼット導水面 53…第1曲部 54…第2曲部 55…第3曲部 56…第4曲部 58…段部 70…排水ソケット 90…排水立ち上げ管 110…サイホンゼット式便器 120…ボール部 121…リム部 122…ゼット噴出孔 123…覆水面 124…乾燥面 125…排出口 126…凹部 131…接続路 132…上昇路 133…下降路 134…堰 140…洗浄水給水孔 141…洗浄水導入路 142…分岐孔 143…リム導水路 143a…リム水流入室 143b…リム水搬送路 144…水出し孔 144a…大孔 144b…中孔 144c…小孔 144d…長孔 144e…長孔 146…ゼット導水路 146a…ゼット水流入室 146b…ゼット給水孔 146c…ゼット水搬送路 150…水底面 151…ゼット導水面 153…第1曲部 170…排水ソケット 190…排水立ち上げ管 310…洗浄タンク 312…外装タンク 314…内装タンク 316…断熱材 317…蓋 318…手洗鉢 319…手洗用吐水管 320…ボールタップ 321…吐水管 322…浮子 323…補給水管 324…給水ホース 326…穴 327…連絡管 328…流入管 330…ハンドル 332…スピンドル 333…アーム 334…アーム 335a,335b…鎖 336…スピンドルガイド 338…水没管 340…オーバーフロー管 342…密結用ボルト 344…小便用排水弁 345…大便用排水弁 346…排水管 346a…下方突出部 348…スペーサー 350…アーム 366…排水管接続用穴 367…ボルト取付用穴 410…洗浄タンク 430…ハンドル 446…排水管 RW…溜水 WL…通常水位線 WL1…第1水位線 WL2…第1水位線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北村 正樹 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 新川 真弘 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 新原 登 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 松尾 信介 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 Fターム(参考) 2D039 AC04 AD01 AD04 DA04

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の給水源と給水可能に接続され、所
    定量の貯溜水を貯溜可能なタンクから便器を洗浄するた
    めの水である洗浄水の供給を受ける供給孔と、汚物を受
    ける鉢部の上縁に形成されたリム孔および前記鉢部の底
    部のトラップと接続される排出口と対向する位置に設け
    られたゼット孔とを連通し、便器の内部における前記洗
    浄水の流路として形成されたサイホン式便器の導水路の
    構造であって、 前記供給孔は、前記給水源からの給水を止めた状態での
    一洗浄動作により、前記タンクから2.8リットル以上
    6リットル以下の前記貯溜水の供給を受け、 前記流路を、前記給水源からの給水可能な状態での一洗
    浄動作により、前記供給孔が、前記タンクから前記貯溜
    水を含む洗浄水の供給を受けたとき、該洗浄水のうち、
    サイホン作用を発生可能な量の洗浄水が前記ゼット孔
    に、前記鉢部の表面を洗浄可能な量の洗浄水が前記リム
    孔に、それぞれ導かれる形状とした便器内部の導水路の
    構造。
  2. 【請求項2】 前記流路を、前記タンクから供給を受け
    る2.8リットル以上6リットル以下の貯溜水のうち、
    前記リム孔に、0.5リットル以上の貯溜水が導かれる
    形状とした請求項1に記載の便器内部の導水路の構造。
  3. 【請求項3】 前記タンクから供給を受ける貯溜水が、
    3.8リットル以上の水量である場合には、前記流路
    を、前記リム孔に0.7リットル以上の貯溜水が導かれ
    る形状とした請求項1または2に記載の便器内部の導水
    路の構造。
  4. 【請求項4】 前記流路を、前記タンクから供給を受け
    る2.8リットル以上6リットル以下の貯溜水のうち、
    前記ゼット孔に、2.3リットル以上の貯溜水が導かれ
    る形状とした請求項1ないし3のいずれかに記載の便器
    内部の導水路の構造。
  5. 【請求項5】 前記タンクから供給を受ける貯溜水が、
    3.8リットル以上の水量である場合には、前記流路
    を、前記ゼット孔に3.1リットル以上の貯溜水が導か
    れる形状とした請求項1ないし4のいずれかに記載の便
    器内部の導水路の構造。
  6. 【請求項6】 前記流路を、前記タンクから2.8リッ
    トル以上6リットル以下の貯溜水の供給を受けたとき
    に、前記リム孔に、前記ゼット孔に導かれる貯溜水の量
    の20パーセント以上60パーセント以下の量の貯溜水
    が導かれる形状とした請求項1に記載の便器内部の導水
    路の構造。
  7. 【請求項7】 前記流路を、 前記供給孔から所定の距離に亘って延出された導入路
    と、 該導入路から前記リム孔,前記ゼット孔のそれぞれを指
    向して分岐する分岐部と、 該分岐部から前記リム孔に連通するリム導水路と、 前記分岐部から前記ゼット孔に連通するゼット導水路と
    から構成した請求項1ないし6のいずれかに記載の便器
    内部の導水路の構造。
  8. 【請求項8】 前記流路を、前記リム孔,前記ゼット孔
    のそれぞれと前記供給孔とを独立に連通することにより
    形成した請求項1ないし6のいずれかに記載の便器内部
    の導水路の構造。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれかに記載の便
    器内部の導水路の構造を備えたサイホン式便器。
  10. 【請求項10】 汚物を受ける鉢部と、該鉢部の上縁に
    形成されたリム孔と、前記鉢部の底部に形成された、ト
    ラップと接続される排出口と、該排出口と対向する位置
    に設けられたゼット孔と、便器を洗浄するための水であ
    る洗浄水の入口である供給孔と、該供給孔を該リム孔お
    よび該ゼット孔のそれぞれと連通してなる導水路とを有
    する便器と、 該便器と前記供給孔において接続されるとともに、所定
    の給水源と給水可能に接続されたタンクとを備え、 所定の洗浄動作に基づいて、前記タンクから前記供給孔
    に供給された洗浄水を、前記導水路を通じて前記リム孔
    および前記ゼット孔のそれぞれに供給する洗浄水の供給
    方法であって、 前記タンクは、前記給水源からの給水を止めた状態での
    一洗浄動作で、前記供給孔に2.8リットル以上6リッ
    トル以下の前記貯溜水を供給し、 前記給水源からの給水が可能な状態での一洗浄動作によ
    り、該タンクから前記貯溜水を含む洗浄水が前記供給孔
    に供給されたとき、該供給された洗浄水を、前記ゼット
    孔および前記リム孔のそれぞれに、サイホン作用の発生
    および前記鉢部の表面の洗浄の双方を実現可能な比率で
    分配し、 該分配された洗浄水を前記ゼット孔および前記リム孔の
    それぞれに供給する洗浄水の供給方法。
  11. 【請求項11】 前記タンクから供給された2.8リッ
    トル以上6リットル以下の貯溜水を、前記リム孔に供給
    される貯溜水の量が、前記ゼット孔に供給される貯溜水
    の量の20パーセント以上60パーセント以下となるよ
    うに分配する請求項10に記載の洗浄水の供給方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005113643A (ja) * 2003-10-10 2005-04-28 Toto Ltd 水洗便器
JP2011208370A (ja) * 2010-03-29 2011-10-20 Toto Ltd 洗い落とし式便器
JP2012197640A (ja) * 2011-03-23 2012-10-18 Toto Ltd 洗い落し式汚物排出装置
JP2014051883A (ja) * 2013-12-16 2014-03-20 Toto Ltd 水洗大便器
JP2016056606A (ja) * 2014-09-10 2016-04-21 Toto株式会社 小便器

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