以上説明した本発明の構成及び作用を一層明らかにするために、以下本発明の洗浄水タンクについて、その実施の形態を説明する。まず、本発明の第1実施例である洗浄タンク310を備えたサイホンゼット式の便器10について説明する。図1は、このサイホンゼット式便器10の縦断面を示す説明図であり、図2は、この便器10の上面を示す説明図である。この図1および図2は、便器10の洗浄後に、洗浄タンク310および便器10内における水の流動が停止したときの便器10の様子を表わしている。
サイホンゼット式便器10は、洗浄に伴い、リム部21の裏側の水出し孔44からのみならず、排出口25と対向する位置に形成されたゼット噴出孔22からも洗浄水を噴出する。これにより、サイホン作用を早期に引き起こすことを可能としている。以下、便器10の各部について、図1および図2を参照しつつ説明する。
図1に示すように、便器10は、汚物を受けるボール部20を備える。ボール部20の周壁は、便器10の非洗浄時でも溜水RWと接する覆水面23と、便器10の非洗浄時には溜水RWと接しない乾燥面24から構成されている。
便器10には、ボール部20に水を供給するための機構(以下、供給機構という)と、ボール部20内の汚物を排水立ち上げ管90に向けて排出するための機構(以下、排出機構という)が設けられている。
まず、供給機構について説明する。便器10の後方には、洗浄タンク310の排水管346を接続するための孔である洗浄水給水孔40が設けられており、洗浄水給水孔40からボール部20方向に向かう便器10の内部には、洗浄タンク310からの洗浄水の流路である洗浄水給水路41が設けられている。なお、洗浄タンク310の構成については、説明の便宜上、後述する。
図1に示すように、洗浄水給水路41の途中の上側の内壁には分岐孔42が穿設されている。この分岐孔42よりも下流側の洗浄水給水路41は、斜め下向きの傾斜で延出した形状の滞留部41aとされている。
滞留部41aの側壁にはゼット給水孔45が設けられており、このゼット給水孔45は、排出口25と対向する位置に形成されたゼット噴出孔22と、便器内部を湾曲するように形成されたゼット給水路46を介して接続されている(図2を参照)。
また、図1および図2に示すように、リム部21の裏側は、ボール部20上端の内周に沿った範囲に亘って、中空部を有する筒形の形状に成形されている。この中空部がリム給水路43であり、洗浄水はこの中空部を流通する。
リム給水路43に流れ込んだ洗浄水は、リム部21の裏側に設けられた小孔44c,大孔44a等の水出し孔44から吐出される。図2に示すように、リム部21の裏側には、7mm径の大孔44a,4mm径の中孔44b,3mm径の小孔44c,略長方形の長孔44d,eという5種類の形状の水出し孔44が設けられている。
これらの水出し孔44は、リム部21の成形の際に、リム給水路43の底壁に形成される。勿論、これ以外の手法で水出し孔44を設けることも可能である。例えば、リム給水路43の底壁の全周にスリットを設けるとともに、このリム給水路43内に、底部に複数の孔を有する中空状の樹脂成形品を装着する構成としても差し支えない。
以上、便器10の供給機構について説明した。次に、排出機構につき、図1に戻って説明する。図1に示すように、汚物溜りとしての凹部26の奥に形成された排出口25の先には、ボール部20からの水や汚物の流路である排水路30が形成されている。この排水路30は、排出口25から斜め上方向に延出する接続路31,接続路31と連続し、斜め上方向に延出する上昇路32、上昇路32と連続し、下方向に延出する下降路33から構成される。
下降路33は、図1に示すように、上昇路32の内壁下側の最も高い位置である堰34を越えた後、略鉛直下方向の排水立ち上げ管90に向かって延出している。このため、堰34付近の排水路30は、屈曲した形状とされている。このような形状とされた部分を、以下、屈曲部35という。
下降路33の終端は、樹脂製の排水ソケット70を介して、建築側の壁や床に設けられた排水立ち上げ管90に接続される。なお、図1に示す便器10の後端から排水立ち上げ管90の中心までの距離kは90mmとされており、便器10に組み付けられた洗浄タンク310の後端から排水立ち上げ管90の中心までの距離jは180mmとされている。つまり、排水立ち上げ管90がトイレ室の壁から200mmの位置を中心として立ち上げられていれば、便器10と洗浄タンク310のセットを、洗浄タンク310の背面とトイレ室の壁とのクリアランスを20mm確保した状態で設置することができる。このように、便器10と洗浄タンク310のセットによれば、排水立ち上げ管90を建築側の壁に近い位置に設けることが可能となる。この結果、排水立ち上げ管90からパイプスペースまでの距離が短くなり、汚物のスムーズな搬送を確保することができる。勿論、トイレ室の壁とのクリアランスを考慮しない場合には、距離kや距離jを200mm以下の値とすることができる。
排水路30における堰34の高さにより、ボール部20内の溜水RWの高さが定まる。図1および図2に示すように、洗浄動作前の便器10には、堰34を通る水平線の高さまで溜水RWが溜まっている。この洗浄動作前の便器10に溜まる溜水RWの水位を、以下、基準溜水位PLという。このため、基準溜水位PLの高さよりも低い位置にあるボール部20、接続路31および上昇路32の一部、滞留部41aの下部およびゼット給水路46に、所定量の溜水RWが溜まっている。この溜水RWにより、排水機構からボール部20への臭気の逆流や害虫の進入が防止される。
便器10に溜まっていた溜水RWは、一回の洗浄により、新たな溜水RWに置換される。第1実施例では、ボール部20や排水路30の形状を調整して、便器10に溜まる溜水RWの量を、従来よりも少量の約3.0リットルとしている。
このように溜水RWを少量とする一方、ボール部20には、幅185mm×奥行き225mmという広い面積の溜水面が確保されている。これにより、ボール部20への汚物の固着や乾燥面24からの臭気の発散を有効に防止することができる。
次に、供給機構としての洗浄タンク310の構成について、図3を参照しつつ説明する。図3に示すように、洗浄タンク310は、外装タンク312およびこの外装タンク312の上部に装着される蓋317を備える。第1実施例では、外装タンク312と蓋317をいずれも陶器製とするが、樹脂のような陶器以外の材料で成形しても差し支えない。
外装タンク312の底面の排水管接続用穴366,2個のボルト取付用穴367からは、それぞれ円筒形状の排水管346,2本の密結用ボルト342が露出している。この排水管346を、便器10の後方の洗浄水給水孔40に嵌め込みながら、便器10後部のタンク密結孔28に密結用ボルト342を差し込み、差し込まれた密結用ボルト342をナットで締め付けることにより、便器10に洗浄タンク310が装着される。このように、便器10と密接して連結される洗浄タンクを、以下、ロータンク型タンクという。
外装タンク312の内部には、洗浄水を貯えるポリプロピレン製の内装タンク314が収納されている。この内装タンク314の内部には、後述するボールタップ320への水の供給路である流入管328、万一タンクが満水となった場合に水がタンクの外へあふれることを防止するオーバーフロー管340が設けられている。
内装タンク314の底部には、円筒形状の排水管346が内装タンク314と一体として形成されている。図3に示すように、排水管346は、内装タンク314の底部から下方に向かって排水管接続用穴366越しに突出するとともに(以下、この突出した部分を下方突出部346aという)、内装タンク314の内底から上方に僅かに突出する。この僅かに突出した部分の頂上が、内装タンク314内の貯溜水が進入する入口となる。この入口は、非洗浄時においては、大便用排水弁345で塞がれており、この大便用排水弁345の上に被さるように、上面が塞がれた円筒形状の小便用排水弁344が配置されている。
また、排水管346は、オーバーフロー管340と一体として形成されている。即ち、図3に示すように、オーバーフロー管340の下端は、排水管346の下方突出部346aの側面において、排水管346に合流している。従って、オーバーフロー管340に流れ込んだ水は、大便用排水弁345の開閉状態に拘わらず、排水管346に進入可能とされている。
大便用排水弁345,小便用排水弁344は、それぞれ支持軸361,支持軸360によって一定の軌跡で上下動可能に支持されるとともに、第一アーム334,第二アーム333と、それぞれ鎖335b,鎖335aで繋がれている。
第一アーム334は、オーバーフロー管340の前方側に位置し、第二アーム333は、オーバーフロー管340の後方側に、アーム334とほぼ平行に位置する。従って、図3において、アーム333は、アーム334の影に隠れた状態となっている。アーム334,アーム333は、共にオーバーフロー管340の入口付近の前後の側面に、それぞれピン337,ピン336を用いて軸支されている。
第一アーム334および第二アーム333は、横長で若干の厚みを有する板状の部材であり、両部材は、ともに同一の形状を有する。第一アーム334および第二アーム333のそれぞれの中心には、ピン337,ピン336よりも若干拡径の貫通孔334a,貫通孔333aが形成されている。
第一アーム334の両端である片端部334bと他端部334cとは、互いに異なる形状とされている。即ち、図3に示すように、後述する第一移動体332の先端部の下方に配置される片端部334bの上面は、上方に突出されない形状とされているが、他端部334cには、第一アーム334の上面よりも上方に突出する突出部334dが形成されている。前述した鎖335bは、この他端部334cの底面において、第一アーム334と繋がっている。
また、第二アーム333も、第一アーム334と同様の形状を備える。即ち、第二アーム333の両端のうちの一端であり、第一移動体332の先端部の下方に配置される片端部333bの上面は、上方に突出されない形状とされており、他の一端である他端部333cには、第二アーム333の上面よりも上方に突出する突出部333dが形成されている。前述した鎖335aは、この他端部333cの底面において、第二アーム333と繋がっている。
貫通孔334a,貫通孔333aに挿入されたピン337,ピン336は、それぞれ、オーバーフロー管340の前方(洗浄タンク310の前面に向かう方向)側の側面,オーバーフロー管340の後方(洗浄タンク310の背面に向かう方向)側の側面に遊嵌されている。これにより、第一アーム334,第二アーム333は、オーバーフロー管340入口よりもやや下方の側面に、回転可能に軸支される。
この軸支位置よりもやや下方におけるオーバーフロー管340の側面には、第一アーム334,第二アーム333をそれぞれ受けるための受け部340a,受け部340bが形成されている。この受け部340aが、他端部334c方向側の第一アーム334を支えることにより、図3に示すように、第一アーム334は、洗浄タンク310の静止状態において、ほぼ水平の状態に維持されている。これと同様に、第二アーム333も、受け部340bにより、洗浄タンク310の静止状態において、ほぼ水平の状態に維持される。このため、図3において、第二アーム333は、第一アーム334の陰に隠れた状態となっている。
蓋317の頂面には、大洗浄用ボタン330,小洗浄用ボタン329という2つの操作ボタンが設けられている。大洗浄用ボタン330および小洗浄用ボタン329は、下方向に押圧可能に構成されている。即ち、大洗浄用ボタン330および小洗浄用ボタン329は、押圧により所定の距離だけ下方向に移動し、押圧を止めたときに元の状態に復帰する。なお、第1実施例では、大洗浄用ボタン330のちょうど後側に小洗浄用ボタン329を配置している。このため、図3において、小洗浄用ボタン329は、大洗浄用ボタン330の陰に隠れた状態となっている。
なお、大洗浄用ボタン330,小洗浄用ボタン329を、上記以外の態様で配置することも可能である。例えば、小洗浄用ボタン329の後側に大洗浄用ボタン330を配置する構成や、大洗浄用ボタン330,小洗浄用ボタン329を横並びで配置する構成などを考えることができる。小洗浄用ボタン329の後側に大洗浄用ボタン330を配置した場合には、大洗浄用ボタン330よりも小洗浄用ボタン329の方が使用者に近くなるので、使用頻度の多い小洗浄用ボタン329の操作をより楽に行なうことができる。
図3に示すように、大洗浄用ボタン330,小洗浄用ボタン329には、第一移動体332,第二移動体331が連結されている。第1実施例では、第一移動体332と第二移動体331とは同一の形状なので、図3において、第二移動体331は、第一移動体332の陰に隠れた状態となっている。
第一移動体332,第二移動体331の末端は、洗浄タンク310の静止状態において、それぞれ、第一アーム334の片端部334bのやや上方,第二アーム333の片端部333bのやや上方に位置する。これにより、大洗浄用ボタン330,小洗浄用ボタン329の押圧動作が、それぞれ第一移動体332,第二移動体331を介して、第一アーム334、第二アーム333に伝達可能となる。
給水装置としてのボールタップ320の構成について説明する。図3に示すように、上下方向に設けられた流入管328の下端には、給水立ち上げ管からの水を止水栓を介して供給する給水ホース324が接続され、流入管328の上端にはボールタップ320の給水口325が接続されている。従って、止水栓からの水は、給水ホース324,流入管328を通じてボールタップ320に供給される。
ボールタップ320は、内装タンク314内への水の供給を制御する機構であり、この制御を行なうために、アーム350によって浮子322と接続された開閉弁319(図3においては図示せず)を内蔵する。この開閉弁319の開閉は、内装タンク314内の水位の変化に伴う浮子322の上下により行なわれる。即ち、内装タンク314内の水位が下がると、水に浮いた状態の浮子322が下降し、これに伴ってアーム350が下方に移動する。浮子322が所定の位置まで下降したときに、アーム350によって開閉弁319が開かれる。これにより、内装タンク314内に水を供給可能な状態となる。一方、浮子322は、内装タンク314内の水位の上昇に伴って上昇し、これに伴ってアーム350が上方に移動する。浮子322が所定の位置まで上昇したときに、アーム350によって開閉弁319が閉じられる。この閉弁により、内装タンク314内への水の供給が停止される。
なお、洗浄タンク310は、内装タンク314内に6リットルの水が溜まったときの水位(以下、基準水位WLという)まで浮子322が移動したときに、開閉弁319の弁を閉じる構成を採る。即ち、洗浄タンク310内に溜まる水の容量(以下、タンク容量という)は6リットルとなる。
開閉弁319を通過した水は、導水管327に流れ込み、第一吐水口321,第二吐水口323から吐出される。図3に示すように、第一吐水口321は、内装タンク314の底面方向の、排水管346とは若干ずれた位置に向けられている。一方、第二吐水口323は、オーバーフロー管340の入口に向けられている。なお、第一吐水口321と第二吐水口323との間には、流量調節機構380が設けられているが、この流量調節機構380の詳細については後述する。
以上、供給機構としての洗浄タンク310の構成について説明した。次に、この洗浄タンク310から便器10に水が排水される仕組みについて説明する。洗浄開始前の内装タンク314には、基準水位の高さまで貯溜水が溜まっている。この状態から大洗浄用ボタン330が操作されると、大洗浄用ボタン330の下方向への移動に伴って第一移動体332が下方向に移動し、第一移動体332の先端が第一アーム334の片端部334bに当接して、片端部334bを押し下げる。これにより、第一アーム334がピン337を中心として約45°回転し、この回転により、第一アーム334が鎖335bを介して大便用排水弁345を引き上げる。これにより大便用排水弁345が開弁し、大便用排水弁345で覆われていた排水管346の入口に、内装タンク314内の貯溜水が流入する。
大便用排水弁345を支持する支持軸361は、タンク容量である6リットルの貯溜水のうちの4リットルの貯溜水が排水管346から排出されるまでの間、大便用排水弁345を引き上げた状態,即ち開弁状態に保つように構成されている。従って、大洗浄の操作がされた場合には、常に、4リットルという一定の量の貯溜水が排水管346に流入する。即ち、支持軸361は、排水管346への貯溜水の流入が開始された後、元の位置である下方に向かって徐々に移動し、4リットル分の貯溜水が排水管346から流れ出たときに元の位置に復帰し、大便用排水弁345を閉弁する。大便用排水弁345の閉弁により、第一アーム334は、鎖335bによって下方に引っ張られて、大洗浄用ボタン330の操作前の水平状態に戻る。
この結果、内装タンク314内の水位は、大洗浄用ボタン330の操作により、内装タンク314内に2リットルの貯溜水が溜まっているときの水位(以下、大洗浄後水位DWL1という)まで下降する。つまり、タンク容量である6リットルの貯溜水のうちの2リットルの貯溜水は、排水管346から流れ出ることなく、内装タンク314内に残留する。このように、洗浄タンク内の貯溜水のうち、一回のハンドル操作後に便器に排水されず、洗浄タンク内に残る水を、以下、残留水という。
一方、内装タンク314内に基準水位の高さまで貯溜水が溜まっている状態で小洗浄用ボタン329が操作されると、小洗浄用ボタン329の下方向への移動に伴って第二移動体331が下方向に移動し、第二移動体331の先端が第二アーム333の片端部333bに当接して、片端部333bを押し下げる。これにより、第二アーム333がピン337を中心として約70°回転し、この回転により、第二アーム333が鎖335aを介して小便用排水弁344を引き上げる。これにより小便用排水弁344が開弁し、小便用排水弁344で覆われていた円筒形状の大便用排水弁345の頂部に、内装タンク314内の貯溜水が流入する。
小便用排水弁344を支持する支持軸360は、タンク容量である6リットルの貯溜水のうちの3リットルの貯溜水が排水管346から排出されるまでの間、小便用排水弁344を引き上げた状態,即ち開弁状態に保つように構成されている。従って、小洗浄の操作がされた場合には、常に、3リットルという一定の量の貯溜水が、大便用排水弁345の中空部を通じて排水管346に流入する。即ち、支持軸360は、排水管346への貯溜水の流入が開始された後、元の位置である下方に向かって徐々に移動し、これに伴って小便用排水弁344も閉弁方向に移動し、3リットル分の貯溜水が大便用排水弁345の頂部から排水管346に向かって流れ出たときに元の位置に復帰し、小便用排水弁344を閉弁する。小便用排水弁344の閉弁により、第二アーム333は、鎖335aによって下方に引っ張られて、小洗浄用ボタン329の操作前の水平状態に戻る。
この結果、内装タンク314内の水位は、小洗浄用ボタン329の操作により、内装タンク314内に3リットルの貯溜水が溜まっているときの水位(以下、小洗浄後水位DWL2という)まで下降する。つまり、タンク容量である6リットルの貯溜水のうちの3リットルの貯溜水は、排水管346から流れ出ることなく、内装タンク314内に残溜水として残留する。
このように内装タンク314内の貯溜水が排水管346に流入することにより、内装タンク314内の基準水位WLは、大洗浄後水位DWL1、小洗浄後水位DWL2まで低下する。この水位の低下に伴って浮子322が下降し、浮子322が所定の位置まで下降したときに、アーム350によって開閉弁319が開かれる。これにより、止水栓から給水された水が、導水管327を通過し、第一吐水口321から内装タンク314の底部に向かって吐出されるとともに、第二吐水口323からオーバーフロー管340に吐出される。
第一吐水口321から吐出された水は、大便用排水弁345,小便用排水弁344が閉じていることを前提として、内装タンク314内に溜まっていく。また、第二吐水口323から吐出された水は、オーバーフロー管340,排水管346を通り、大便用排水弁345の開閉状態に拘わらず、便器10の洗浄水給水孔40に排水される(以下、この水を補給水という)。この後、内装タンク314内の貯溜水の水位が洗浄開始前の元の水位である基準水位WLまで上昇したときに、浮子322がアーム350を介して開閉弁319を閉じる。この閉弁により、第一吐水口321および第二吐水口323からの水の吐出が停止される。つまり、第一吐水口321からは、開閉弁319が開いてから閉じるまでの間に、洗浄開始後に洗浄水給水孔40に排水された貯溜水の量とほぼ同量の水(大洗浄の場合には約4リットルの水、小洗浄の場合には約3リットルの水)が吐出される。
次に、便器10の洗浄水給水孔40に排水された貯溜水および補給水により、ボール20部内の汚物や汚水が排出され、便器10が洗浄前の元の状態に回復される様子について説明する。なお、「汚水」とは、大便や小便等の汚物や紙などが混ざることによって汚れた水をいう。
洗浄タンク310内の高い水位からの自由落下により洗浄水給水孔40に供給された洗浄水は、洗浄水給水路41の斜め下向きの傾斜に案内されて滞留部41aに流入する。この流入により、滞留部41a内の水位は、ボール部20内の水位よりも上昇し、この水位の上昇に伴い、滞留部41aの下部およびゼット給水路46内に溜まっていた溜水(以下、この溜水のことをゼット溜水という)が、ボール部20内のゼット噴出孔22方向に流動する。この結果、ゼット噴出孔22からは、ゼット溜水、滞留部41aに流入した洗浄水が、順次に噴出される。
ゼット噴出孔22からの洗浄水は、排出口25に向かって噴出される。このため、接続路31および上昇路32内の溜水RWや凹部26に溜まった汚物は、堰34の方向に押し上げられる。この結果、上昇路32内における水位は基準溜水位PLを越えて急激に上昇し、接続路31,上昇路32および屈曲部35がすぐに満水状態となり、屈曲部35に充満した水の先端とボール部20内の溜水RWの表面との間に水位差が生じる。この水位差により、下降路33内とボール部20との間に圧力差が生じ、下方向への引き込み力が発生する。このような作用を、以下、サイホン作用という。このサイホン作用により、ボール部20内の汚物が汚れた溜水RWや洗浄水と共に、堰34の方向に引き込まれる。
ゼット噴出孔22は、洗浄後暫くの間は、ボール部20に溜まった溜水RW内に水没した状態とされ、このゼット噴出孔22と連通するゼット給水路46内は、滞留部41aに流入した洗浄水により満水状態が維持される。一方、洗浄水給水路41には、自由落下により付勢された多量の貯溜水が、洗浄タンク310から一気に供給される。このため、単位時間当たりの滞留部41aへの洗浄水の流入量が、単位時間当たりのゼット噴出孔22からの噴出量よりも多くなる。この結果、洗浄タンク310から供給された洗浄水は滞留部41aに溜まっていき、滞留部41aないし洗浄水給水路41内の水位が上昇する。
この水位は、やがて分岐孔42を越える高さにまで上昇し、この水位の上昇により、便器10の前側方向に付勢された洗浄水が分岐孔42に流入する。分岐孔42に流入した洗浄水は、左右のリム給水路43に供給され、水出し孔44の開孔径や洗浄水の付勢力に対応して分配されて、各孔44a〜eから吐出される。
このとき、分岐孔42に近い位置である右側後方のリム部21の裏側に形成された長孔44dからは、付勢力の大きな水が、便器の前方のやや左側の乾燥面24に向けて多量に吐出される。また、便器10前方のやや右側の位置に形成された長孔44eからは、リム給水路43を右回りに流れてきた洗浄水が、便器10左後方の乾燥面24に向けて多量に吐出される。この長孔44d,44eから吐出された洗浄水が主流となって、水出し孔44から吐出される洗浄水に時計廻り方向への旋回力が付与される。
このように旋回力が付与された洗浄水は、便器10の乾燥面24の表面に沿って流下し、ボール部20内の溜水RWに合流する。この合流により、洗浄水の旋回力は、ボール部20内の溜水RWに伝達される。これにより、ボール部20内の水に右回りの旋回流が生じる。この結果、ボール部20内の汚物は、旋回流の渦に巻き込まれて凹部26に集められ、排出口25に向かう。
水出し孔44からの吐出により増量されたボール部20内の溜水RWは、既に発生しているサイホン作用により、排水路30の方向に引き込まれる。従って、ボール部20内の水位は、水出し孔44からの洗浄水の吐出の前と比べて、さほど上昇しない。一方、ゼット噴出孔22からは、水出し孔44から洗浄水が吐出されている間も、継続して洗浄水が噴出されることに加え、この噴出により堰34から溢れ出て下降路33を流下した水は、排水ソケット60による滞留作用により、排水立ち上げ管90方向への落下が抑止される。従って、接続路31,上昇路32および屈曲部35は、サイホン作用の発生後も満水状態に維持される。
このように、水出し孔44からの洗浄水の吐出とゼット噴出孔22からの洗浄水の供給により、サイホン作用が継続して発生し、この継続的な発生により、ボール部20内の汚水および汚物を、確実に堰34を越える位置まで引き込むことができる。
汚水および汚物は、サイホン作用により、強い力で下降路33に引き込まれ、排水ソケット60内に進入し、排水ソケット60内を通過して排水立ち上げ管90に進入する。
洗浄開始前に溜まっていた溜水RWが堰34を越える位置に引き込まれた後、サイホン作用の持続が終了したとき、ボール部20,排水路30およびゼット給水路46内には、ほぼ排出口25の上端を通る水平線の高さまで水が溜まっている。この水のことを、以下、残り水といい、この残り水の水位を、以下、残水位DPLという。残り水の量は、大洗浄または小洗浄のいずれの場合にも、ほぼ同量である。従って、残水位DPLの高さは、大洗浄、小洗浄の別を問わず、ほぼ等しくなる。
サイホン作用の持続が終了した時点では、小便用排水弁344や大便用排水弁345は既に閉弁されているため、内装タンク314の貯溜水を便器10に排水することはできない。従って、第二吐水口323から吐出される補給水が、オーバーフロー管340を通じて便器10に排水され、残り水の溜まったボール部20に供給される。この結果、ボール部20内および排水路30内の水位は、徐々に上昇する。
洗浄タンク310からの補給水の排水が終了すると、満水状態であった洗浄水給水路41および滞留部41aの水位が徐々に低下し、水出し孔44からの洗浄水の吐出,ゼット噴出孔22からの洗浄水の噴出が、順次に停止する。この後、溜水RWの水位は、ボール部20,滞留部41aおよび上昇路32において均一となり、洗浄開始前と同様の、堰34の高さである基準溜水位PLの高さまで上昇する。これにより、一洗浄動作における便器10の洗浄が完了する。
第1実施例では、大洗浄、小洗浄のいずれの場合にも、便器10の溜水RWの水位がちょうど基準溜水位PLの高さまで上昇したときにボール部20への水の供給が停止されるように、第一吐水口321および第二吐水口323から吐水される態様を制御する。この制御を実現するための構成につき、図4から図10までを参照しつつ、以下に説明する。図4は、ボールタップ320に設けられた流量調節機構380の様子を示す説明図である。図4に示すように、ボールタップ320の導水管327の第一吐水口321と第二吐水口323との間には、流量調節機構380が設けられている。流量調節機構380は、底面のない直方体形状の筐体382と、この筐体382内に収納された切換弁384とを備える。
切換弁384の構成を図5に示す。図5に示すように、切換弁384は、導水管327内の水の流路の断面積を調節するための弁体384aと、弁体384aと一体として形成された第一羽部384bおよび第二羽部384cを備える。この第一羽部384bと第二羽部384cは、ほぼ同一の軌跡線上に位置するように形成されている。第一羽部384b,第二羽部384cは、筐体382の対向する側面に設けられた2つの開口部から、それぞれ筐体382の外部に露出している(図4を参照)。
図5に示すように、切換弁384の弁体384aには、後述する軸体386を貫通するための孔である軸孔384kと、導水管327内における水を流通するための孔である流通孔384jが設けられている。流通孔384jは、弁体384aの縦方向の中心線Y−Yに対して、非対称の形状に形成されている。
流量調節機構380の断面構成を図6に示す。図6に示すように、筐体382には、導水管327を貫通するための筒部382a,筒部382bが形成されている。導水管327は、切換弁384を境に2つに分断されており、上流側が導水管327aと,下流側が導水管327bとされている。導水管327a,導水管327bは、それぞれ筒部382a,筒部382bに差し込まれるとともに、導水管327a,導水管327bの外周面は、それぞれ筒部382a,筒部382bの内面に固着される。これにより、切換弁384は、導水管327aと導水管327bとの間に緩く挟み込まれた状態となっている。また、切換弁384と接する部分における導水管327aおよび導水管327bの流路断面積は、後述する流通孔384jの大きさに合わせて絞られている。
図6に示すように、切換弁384の弁体384aは、導水管327の流路よりも大きな断面積に形成されている。この弁体384aの軸孔384kには、軸体386が挿入されている。この軸体386は、筒形の外軸386bと、この外軸386bの筒内を貫通する棒状の内軸386aから構成される。内軸386aは、筐体382の内幅よりも若干長い長さで形成されており、筐体382に嵌め込まれることにより、筐体382に固定される。
内軸386aが挿入された外軸386bの外周面は、軸孔384kに固着される。これにより、弁体384aは、内軸386aを回転軸として、外軸386bと共に回転可能となる。また、内軸386aの外周面と外軸386bの内周面とは、所定の摩擦を持って嵌合されている。このため、弁体384aは、一定以上の負荷を与えられることを条件として回転し、回転後においては、一定以上の負荷を与えられるまで同一の姿勢を保持する。
このように構成された流量調節機構380が動作する様子を、図7ないし図10を参照しつつ説明する。図7は、大洗浄用ボタン330の操作に伴って流量調節機構380が動作する様子を示す説明図である。大洗浄用ボタン330が操作されると、第一移動体332が下方向に移動して第一アーム334の片端部334bを押し下げることにより、第一アーム334がピン337を中心として約45°回転する。この第一アーム334の回転により、大便用排水弁345が引き上げられるとともに、第一羽部384bが押し上げられる。
即ち、第一アーム334が回転する途中において、第一アーム334の他端部334cに形成された突出部334dは、第一羽部384bに当接し、第一アーム334の回転軌跡に沿って第一羽部384bを上方向に押し上げる。このように第一羽部384bが押し上げられることにより、第一羽部384bと一体に形成された弁体384aは、軸体386を中心として、オーバーフロー管340側から見て時計回り方向に回転し、この回転により、弁体384aと一体に形成された第二羽部384cは下方の位置に移動する。このような第一移動体332、第一アーム334、第一羽部384b、第二羽部384cの一連の動きに関し、図7では、大洗浄用ボタン330の操作前の状態を二点鎖線で、大洗浄用ボタン330の操作後の状態を実線で、それぞれ示している。なお、回転後の第一羽部384b、弁体384aおよび第二羽部384cは、大洗浄用ボタン330を離した後においても、前述した内軸386aの外周面と外軸386bの内周面との間の摩擦力によって、回転後の状態が維持される。
このように弁体384aが回転することにより、導水管327a,導水管327bと流通孔384jとの位置関係が変化する。図8は、大洗浄用ボタン330の操作後における、導水管327a,導水管327bと流通孔384jとの位置関係を示す説明図である。この図8は、オーバーフロー管340側から見たときの切換弁384の様子を示している。このため、図8では、切換弁384裏側の導水管327aを点線を用いて表している。
図8に示すように、大洗浄用ボタン330の操作に伴う弁体384aの回転により、流通孔384jは導水管327aの一部と重なっており、導水管327aと流通孔384jとが重なり合う部分(図8において網線で示した部分)の面積は小さくなっている。このため、導水管327aから流れてきた水は、流通孔384jを通過しにくくなり、導水管327bに導水される単位時間当たりの水量は少なくなる。この結果、第二吐水口323から単位時間当たりに吐出される水の量が少なくなる。
一方、流通孔384jを通過できなかった水は、弁体384aに衝突して導水管327a側に押し戻される。このため、第一吐水口321から単位時間当たりに吐出される水の量は、流通孔384jが導水管327aの全部と重なる場合と比べて多くなる。
このように大洗浄用ボタン330の操作後に小洗浄用ボタン329が操作された場合に、流量調節機構380が動作する様子を図9に示す。小洗浄用ボタン329が操作されると、第二移動体331が下方向に移動して第二アーム333の片端部333bを押し下げることにより、第二アーム333がピン336(図示せず)を中心として約45°回転する。この第二アーム333の回転により、小便用排水弁344が引き上げられるとともに、第二羽部384cが押し上げられる。
即ち、第二アーム333が回転する途中において、第二アーム333の他端部333cに形成された突出部333dは、第二羽部384cに当接し、第二アーム333の回転軌跡に沿って第二羽部384cを上方向に押し上げる。このように第二羽部384cが押し上げられることにより、第二羽部384cと一体に形成された弁体384aは、軸体386を中心として、オーバーフロー管340側から見て反時計回り方向に回転し、この回転により、弁体384aと一体に形成された第一羽部384bは下方の位置に移動する。このような第二移動体331、第二アーム333、第一羽部384b、第二羽部384cの一連の動きに関し、図9では、小洗浄用ボタン329の操作前の状態を二点鎖線で、小洗浄用ボタン329の操作後の状態を実線で、それぞれ示している。なお、回転後の第一羽部384b、弁体384aおよび第二羽部384cは、小洗浄用ボタン329を離した後においても、前述した内軸386aの外周面と外軸386bの内周面との間の摩擦力によって、回転後の状態が維持される。
このように弁体384aの回転により、導水管327a,導水管327bと流通孔384jとの位置関係は、図8に示した状態から変化する。変化した位置関係を図10に示した。この図10は、図8と同様に、オーバーフロー管340側から見たときの切換弁384の様子を示しており、切換弁384裏側の導水管327aについては点線を用いて表している。
図10に示すように、小洗浄用ボタン329の操作に伴う弁体384aの回転により、流通孔384jは導水管327aの全部と重なっており、導水管327aと流通孔384jとが重なり合う部分(図10において網線で示した部分)の面積は最大となっている。このため、導水管327aから流れてきた水は、流通孔384jを通過し易くなり、導水管327bに導水される単位時間当たりの水量は多くなる。この結果、第二吐水口323から単位時間当たりに吐出される水の量が多くなる。
一方、導水管327aから流れてきた水は、弁体384aに衝突することなく、スムーズに導水管327bに導かれる。このため、第一吐水口321から単位時間当たりに吐出される水の量は、流通孔384jが導水管327aの一部と重なる場合と比べて少なくなる。
このように、ボールタップ320に流量調節機構380を設けることにより、第二吐水口323から単位時間当たりに吐出される水の量を、大洗浄,小洗浄という各洗浄形態ごとに異ならせることが可能となる。また、第一吐水口321と第二吐水口323とは、導水管327内の流路において連通しているので、第二吐水口323からの単位時間当たりの吐水量の変化に伴って、第一吐水口321からの単位時間当たりの吐水量も変化する。従って、第一吐水口321から単位時間当たりに吐出される水の量についても、大洗浄,小洗浄という各洗浄形態ごとに異ならせることができる。
上記の流量調節機構380を用いれば、便器10に補給水が供給される態様や内装タンク314に貯溜水が貯溜される態様を、大洗浄,小洗浄という洗浄方式ごとに制御することが可能である。第1実施例では、便器10に供給される補給水と内装タンク314に貯溜される貯溜水との配分を変更し、これにより、便器10に補給水が供給される態様および内装タンク314に貯溜水が貯溜される態様を制御する。この制御の内容を図11を参照しつつ説明する。図11は、第1実施例の便器10の洗浄後において、便器10に補給水が供給される態様および内装タンク314に貯溜水が貯溜される態様が変化する様子を示すグラフである。
図11の上側のグラフは、便器10の洗浄後における、内装タンク314内の貯溜水および便器10内の溜水RWの水量qの経時的な変化を示し、下側のグラフは、便器10の洗浄後における、第一吐水口321および第二吐水口323から単位時間当たりに吐出される水の量の経時的な変化を示す。図11の上側のグラフにおいては、小洗浄の場合における貯溜水,溜水RWの変化を、それぞれ実線ST,実線SCで、大洗浄の場合における貯溜水,溜水RWの変化を、それぞれ一点鎖線BT,破線BCで示している。また、図11の下側のグラフにおいては、上側のグラフの線種に対応し、小洗浄の際に第一吐水口321から単位時間当たりに吐出される水の量(以下、小洗浄時の第一瞬間吐出量S1という)および小洗浄の際に第二吐水口323から単位時間当たりに吐出される水の量(以下、小洗浄時の第二瞬間吐出量S2という)を実線S1および実線S2で、大洗浄の際に第一吐水口321から単位時間当たりに吐出される水の量(以下、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1という)を一点鎖線B1で、大洗浄の際に第二吐水口323から単位時間当たりに吐出される水の量(以下、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2という)を破線B2で、それぞれ示している。
上側のグラフに示すように、内装タンク314内に水量q2分溜まっていた貯溜水は、洗浄開始後に便器10への貯溜水の排水によって減少し、小洗浄の場合には3リットル分の水が排出された時(時間t1の経過時)以後に、大洗浄の場合には、4リットル分の水が排出された時(時間t2の経過時)以後に、第一吐水口321からの水の吐出によって増加する。一方、第一吐水口321からの水の吐出状態を下側のグラフで見てみると、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1は、小洗浄時の第一瞬間吐出量S1よりも多く設定されている。このため、上側のグラフにおいて、時間t2の経過時以後における一点鎖線BTの傾きは、時間t1の経過時以後における実線STよりも大きくなっている。これにより、内装タンク314内の水量qは、小洗浄の場合には時間t5の経過時に、大洗浄の場合には時間t6の経過時に、水量q2まで回復する。
一方、便器10内に水量q1分溜まっていた溜水RWは、洗浄開始後に便器10内に内装タンク314からの貯溜水が供給されるにも拘わらず、若干増加する程度に止まる。これは、サイホン作用の発生により、供給された貯溜水が堰34を越えて下降路33に引き込まれてしまうことに起因する。溜水RWの水量qは、サイホン作用の終了時(小洗浄の場合には時間t3の経過時、大洗浄の場合には時間t4の経過時)に最も少量となり、これ以後に、第二吐水口323からの水の吐出によって増加する。一方、第二吐水口323からの水の吐出状態を下側のグラフで見てみると、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2は、小洗浄時の第二瞬間吐出量S2よりも少なく設定されている。このため、上側のグラフにおいて、時間t4の経過時以後における破線BCの傾きは、時間t3の経過時以後における実線SCよりも小さくなっている。これにより、便器10内の溜水RWの水量qは、小洗浄の場合には時間t5の経過時に、大洗浄の場合には時間t6の経過時に、水量q1まで回復する。つまり、第1実施例では、大洗浄,小洗浄のいずれの場合にも、内装タンク314内の貯溜水が元の水量q2に回復したとほぼ同時に、便器10内の溜水RWを元の水量q1まで回復するのである。
このように貯溜水および溜水RWが洗浄開始前の状態に回復されるまでの様子を、図12ないし図16を参照しつつ説明する。図12は、小洗浄用ボタン329の操作後に、内装タンク314内の貯溜水の水位が小洗浄後水位DWL2まで低下したときの内装タンク314内および便器10内の水の状態を示す。なお、図12ないし図16においては、ボールタップ320の洗浄タンク310への装着位置を、説明の便宜上、図3とは異なる位置に表わしている。
図12に点模様で示すように、内装タンク314内には、小洗浄後水位DWL2の高さに3リットルの残留水が溜まっている。一方、この時点において、便器10内ではサイホン作用が発生しており、ボール部20や排水路30内には、洗浄開始前に溜まっていた溜水RWや洗浄タンク310から排水された貯溜水が充満している。この溜水RWや貯溜水を、図12において、左下がりの斜線で示す。
図12に示す状態の後、浮子322の作用により開閉弁319が開き、ボールタップ320への給水が開始される。ボールタップ320内に給水された水は、導水管327a内を通って第一吐水口321から吐出されるとともに、流量調節機構380を通過し、第一吐水口321とほぼ同じ口径の第二吐水口323から吐出される。このとき、流量調節機構380の流通孔384jは導水管327aの全部と重なっている。このため、第一吐水口321、第二吐水口323から吐水される水の吐水状態は、以下のようになる。即ち、第一吐水口321から吐出される水と第二吐水口323から吐出される水との配分は、単位時間当たりにおいて、ほぼ1:1という割合となり、小洗浄時の第二瞬間吐出量S2は、小洗浄時の第一瞬間吐出量S1とほぼ等しくなる。
第一吐水口321から吐出された水は、内装タンク314内に貯溜水として貯溜され、第二吐水口323から吐出された水は、オーバーフロー管340を通じ、補給水として便器10に供給される。従って、内装タンク314内に貯溜される水とオーバーフロー管340を通じて便器10に供給される補給水との配分は、単位時間当たりにおいて、第一吐水口321から吐出される水と第二吐水口323から吐出される水との配分と同様に、ほぼ1:1という割合となる。また、便器10に補給水が供給される態様や内装タンク314に貯溜水が貯溜される態様は、以下のようになる。即ち、内装タンク314には、単位時間当たりに小洗浄時の第一瞬間吐出量S1分の水が貯溜され、便器10には、単位時間当たりに小洗浄時の第二瞬間吐出量S2分の水が供給される。つまり、単位時間当たりに内装タンク314内に溜まる貯溜水の量は、単位時間当たりにオーバーフロー管340を通じて便器10に供給される補給水の量とほぼ等しくなる。
第一吐水口321および第二吐水口323からの水の吐出は、内装タンク314内の貯溜水の水位が小洗浄後水位DWL2から基準水位WLに達するまでの間、即ち、小洗浄の実行により便器10に排水された3リットルの貯溜水分の水が第一吐水口321から吐出されて内装タンク314内に溜まるまでの間、継続して行なわれる。
内装タンク314内の貯溜水の水位が基準水位WLに達する前に、便器10内において生じていたサイホン作用が終了する。このサイホン作用が終了した時点における内装タンク314内および便器10内の水の状態を、図13に示す。図13に示すように、ボール部20や排水路30内に充満していた溜水RWおよび貯溜水や、これまでに便器10に供給された補給水は、ほとんどがサイホン作用によって既に排水立ち上げ管90に引き込まれており、便器10内には、残り水が残水位DPLの高さまで溜まっている。一方、内装タンク314内の貯溜水の水位は、基準水位WLよりもやや低い水位RWL1まで回復している(以下、この水位を回復水位RWL1という)。なお、図13においては、第一吐水口321から吐水された水を右下がりの斜線で、第二吐水口323からから吐水された水を波線で、それぞれ示している。また、残り水を左下がりの斜線および波線の双方で示すのは、残り水には、洗浄指示に基づいて内装タンク314から便器10に排水された貯溜水と洗浄開始後に便器10に供給された補給水とが混在しているからである。
図13に示す状態の後も、第一吐水口321および第二吐水口323からの吐水は継続され、内装タンク314内の貯溜水の水位が基準水位WLまで上昇したときに、浮子322の作用により開閉弁319が閉じ、ボールタップ320への給水が停止される。これにより第一吐水口321および第二吐水口323からの吐水が終了する。第一吐水口321および第二吐水口323からの吐水が終了したときの内装タンク314内および便器10内の水の状態を、図14に示す。この図において、残水位DPLよりも上の波線部分は、サイホン作用の終了後に、第二吐水口323からオーバーフロー管340を通じて便器10に供給された補給水を示す。この図に示すように、便器10内の水は、内装タンク314内の貯溜水の水位が基準水位WLまで達したときに、ちょうど基準溜水位PLに達する。従って、便器10内の溜水RWは、堰34からのこぼし水を生じさせることなく、洗浄開始前の状態に回復される。
一方、大洗浄用ボタン330が操作された場合には、内装タンク314内の貯溜水の水位は、大洗浄後水位DWL1まで大きく低下する。このときの内装タンク314内および便器10内の水の状態を、図15に示す。図15に点模様で示すように、内装タンク314内には、大洗浄後水位DWL1の高さに2リットルの残留水が溜まっている。一方、便器10内には、サイホン作用の発生により、洗浄開始前に溜まっていた溜水RWや洗浄タンク310から排水された貯溜水が充満している。この溜水RWや貯溜水を、図15において、左下がりの斜線で示す。
図14に示す状態の後、浮子322の作用により開閉弁319が開き、ボールタップ320への給水が開始される。ボールタップ320内に給水された水は、導水管327a内を通って第一吐水口321から吐出されるとともに、流量調節機構380を通過し、第一吐水口321とほぼ同じ口径の第二吐水口323から吐出される。
このとき、流量調節機構380の流通孔384jは、導水管327aの一部と重なる状態となっている。このため、第一吐水口321、第二吐水口323から吐水される水の吐水状態は、以下のようになる。即ち、導水管327aからの水が流通孔384jを通過しにくくなるため、第一吐水口321から吐出される水と第二吐水口323から吐出される水との配分は、単位時間当たりにおいて、第二吐水口323の方が第一吐水口321よりも少なくなるような配分となり、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2は、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1よりも少なくなる。また、流通孔384jを通過できなかった分の水は、第一吐水口321から吐出されるので、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1は、小洗浄時の第一瞬間吐出量S1よりも多くなる。
第一吐水口321から吐出された水は、内装タンク314内に貯溜水として貯溜され、第二吐水口323から吐出された水は、補給水として便器10に供給される。従って、内装タンク314内に貯溜される水とオーバーフロー管340を通じて便器10に供給される補給水との配分は、単位時間当たりにおいて、第一吐水口321から吐出される水と第二吐水口323から吐出される水との配分と同様の割合となる。また、便器10に補給水が供給される態様や内装タンク314に貯溜水が貯溜される態様は、以下のようになる。即ち、内装タンク314には、単位時間当たりに、小洗浄時の第一瞬間吐出量S1よりも少ない大洗浄時の第二瞬間吐出量B1分の水が貯溜され、便器10には、単位時間当たりに、小洗浄時の第二瞬間吐出量S2よりも多い大洗浄時の第二瞬間吐出量B2分の水が供給される。
図15に示した状態から、上記のような配分で第一吐水口321および第二吐水口323から水を吐出し続けた場合、サイホン作用が終了した時点における内装タンク314内および便器10内は、図16に示すような状態となる。図16に示すように、便器10内には、残り水が残水位DPLの高さまで溜まっている。一方、内装タンク314内の貯溜水の水位は、図13に示した回復水位RWL1よりもやや低い水位RWL4にまで回復している(以下、この水位を回復水位RWL4という)。
第1実施例では、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1と大洗浄時の第二瞬間吐出量B2との比率を、以下のように定める。即ち、基準水位WLから回復水位RWL4までの容積と基準溜水位PLから残水位DPLまでの容積との比率を、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1と大洗浄時の第二瞬間吐出量B2との比率とする。このような比率とすることにより、回復水位RWL4から基準水位WLに到達するまでの期間内に第二吐水口323から吐出される水の総量は、基準溜水位PLから残水位DPLまでの容量と、ほぼ等しくなる。
この結果、内装タンク314内の貯溜水の水位が基準水位WLまで上昇し、第一吐水口321および第二吐水口323からの吐水が終了したときには、内装タンク314内および便器10内の水の状態は、図14に示した小洗浄の場合と同じ状態となる。即ち、便器10内の水は、内装タンク314内の貯溜水の水位が基準水位WLまで達したときに、ちょうど基準溜水位PLに達する。つまり、大洗浄,小洗浄という便器への排水量を異にするいずれの洗浄形式の場合にも、便器10内の溜水RWは、内装タンク314内の貯溜水の回復と同期して回復される。
以上説明したように、第1実施例の洗浄タンク310を備えたサイホンゼット式便器10は、流量調節機構380を設けることにより、第一吐水口321から吐出される水と第二吐水口323から吐出される水との配分を、大洗浄と小洗浄との間で変更する。従って、内装タンク314内の貯溜水を基準水位WLに回復させるタイミングや、便器10内の溜水RWを回復させるタイミングを、大洗浄の場合と小洗浄の場合とで異ならせることができる。
また、第1実施例では、大洗浄、小洗浄の場合における第一吐水口321から吐出される水と第二吐水口323から吐出される水との配分を、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2の方が小洗浄時の第二瞬間吐出量S2よりも少なくなるように変更する。従って、内装タンク314内の貯溜水を基準水位WLに回復するために第一吐水口321から多量の吐水が必要な場合に、便器10への補給水の過剰な供給を抑制し、便器10に供給される補給水の量を適正化することができる。例えば、こぼし水の量を減少することにより、節水を図ることが可能となる。
更に、第1実施例では、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2を小洗浄時の第二瞬間吐出量S2よりも少なくすると同時に、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1を小洗浄時の第一瞬間吐出量S1よりも多くする。従って、内装タンク314内の貯溜水を基準水位WLまで早く回復することが可能となる。この結果、大洗浄を行なった後に続けて便器を使用した場合でも、好適な洗浄能力を得ることができる。
また、第1実施例では、大洗浄,小洗浄のいずれの場合にも、便器10内の溜水RWを、内装タンク314内の貯溜水の回復と同期して回復する。従って、便器の洗浄後におけるこぼし水の発生や溜水量不足を確実に防止することができる。
また、第1実施例の洗浄タンク310を備えたサイホンゼット式便器10は、流量調節機構380の流通孔384jと導水管327aとが重なり合う状態を、小洗浄用ボタン329、大洗浄用ボタン330の操作に伴って切り換える。従って、第一吐水口321から吐出される水と第二吐水口323から吐出される水との配分を大洗浄と小洗浄との間で変更するために、複雑な調整を行なう必要がない。つまり、大洗浄用ボタン330の操作という便器の洗浄に必要な通常の動作を行なうだけで、第二吐水口323からの単位時間当たりの吐出量を少なくし、第一吐水口321からの単位時間当たりの吐出量を多くすることが可能となる。また、小洗浄用ボタン329および大洗浄用ボタン330は、押圧により動作し、押圧をやめたときに元の状態に復帰するように構成されているので、流量調節機構380の第一羽部384bや第二羽部384cにおける切り換えを確実に行なうことができる。
以上説明した第1実施例では、便器10に補給水が供給される態様および内装タンク314に貯溜水が貯溜される態様の双方を、大洗浄と小洗浄との間で異ならせることとしたが、便器10に補給水が供給される態様のみを大洗浄と小洗浄との間で異ならせることにより、補給水の量の適正化を図ることも可能である。このような構成例を、第2実施例として図17ないし図22を参照しつつ説明する。図17は、本発明の第2実施例である洗浄タンク410を備えたサイホンゼット式の便器110の縦断面を示す説明図である。図17に示す便器110、洗浄タンク410は、前述した第1実施例の便器10、洗浄タンク310とほぼ共通の各部を備える。図17では、この第1実施例と共通の各部につき、符号の下二桁を第1実施例と同じ数字を用いて表わしている。
一方、洗浄タンク410は、第一吐水口421が形成された第一ボールタップ420aと第二吐水口423が形成された第二ボールタップ420bという2つの給水装置を備える。この第一ボールタップ420aと第二ボールタップ420bの入口は、止水栓に設けられた分岐金具の2つの出口のそれぞれと接続されている。第一ボールタップ420a,第二ボールタップ420bの内部には、それぞれ開閉弁419a、開閉弁419bが設けられており、これらの開閉弁419a,開閉弁419bは、それぞれ、図示しないアーム450a,アーム450bによって浮子422と接続されている。
また、第二ボールタップ420bの第二吐水口423の手前には、流量調節機構480が設けられている。この流量調節機構480は、第1実施例における流量調節機構380とほぼ同様の構成を採るが、流量調節機構480内に収納された切換弁484の構成が、第1実施例と若干異なる。即ち、図18に示すように、切換弁484の弁体484aには流通孔484jが形成されるが、この流通孔484jは、弁体484aの縦方向の中心線Y−Yよりも第二羽部484c側の領域においては、第1実施例における流通孔384jよりも狭い範囲に亘って形成されている。
このように構成された洗浄タンク410において小洗浄用ボタン429が操作されると、内装タンク414から、タンク容量である6リットルのうちの3リットル分の貯溜水が便器110に排水される。これにより、内装タンク414内の水位は、小洗浄後水位DWL2の高さまで低下する。この水位の低下に伴って、浮子422の作用により開閉弁419a,開閉弁419bが開き、第一ボールタップ420a,第二ボールタップ420bへの給水が開始される。
第一ボールタップ420a内に給水された水は、導水管427c内を通って第一吐水口421から吐出される。第二ボールタップ420b内に給水された水は、導水管427a内を通って流量調節機構480を通過し、第一吐水口421とほぼ同じ口径の第二吐水口423から吐出される。このとき、流量調節機構480の流通孔484jと導水管427aとの関係は、図10に示したと同様の状態となっており、流通孔484jは導水管427aの全部と重なっている。このため、導水管427aに導かれた水のほとんどが流量調節機構480を通過し、第二吐水口423に至る。
この結果、第一吐水口421、第二吐水口423から吐水される水の吐水状態は、小洗浄時の第二瞬間吐出量S2と小洗浄時の第一瞬間吐出量S1とがほぼ等しい状態となる。また、便器110に補給水が供給される態様や内装タンク414に貯溜水が貯溜される態様は、以下のようになる。即ち、内装タンク414には、単位時間当たりに小洗浄時の第一瞬間吐出量S1分の水が貯溜され、便器110には、単位時間当たりに小洗浄時の第二瞬間吐出量S2分の水がオーバーフロー管440を通じて供給される。つまり、単位時間当たりに内装タンク414内に溜まる貯溜水の量は、単位時間当たりにオーバーフロー管440を通じて便器110に供給される補給水の量とほぼ等しくなる。
第一吐水口421および第二吐水口423からの水の吐出は、内装タンク414内の貯溜水の水位が小洗浄後水位DWL2から基準水位WLに達するまでの間、即ち、小洗浄の実行により便器110に排水された3リットルの貯溜水分の水が第一吐水口421から吐出されて内装タンク414内に溜まるまでの間、継続して行なわれる。
内装タンク314内の貯溜水の水位が基準水位WLに達する前に、便器110内において生じていたサイホン作用が終了する。このサイホン作用が終了した時点における内装タンク414内および便器110内の水の状態を、図19に示す。なお、図19においては、図13において示したと同様に、内装タンク414から便器110に排水された貯溜水を左下がりの斜線で、内装タンク414内の残留水を点模様で、第一吐水口421から吐水された水を右下がりの斜線で、第二吐水口423からから吐水された水を波線で、それぞれ示している。図19に示した内装タンク414内および便器110内の水の状態は、第1実施例において図13に示した状態と、同じ状態となっている。即ち、便器110内には、残り水が残水位DPLの高さまで溜まっている。一方、内装タンク414内の貯溜水の水位は、基準水位WLよりもやや低い回復水位RWL1まで回復している。
図19に示す状態の後も、第一吐水口421および第二吐水口423からの吐水は継続され、内装タンク414内の貯溜水の水位が基準水位WLまで上昇したときに、浮子422の作用により開閉弁419a,開閉弁419bが閉じ、第一ボールタップ420a,第二ボールタップ420bへの給水が停止される。これにより第一吐水口421および第二吐水口423からの吐水が終了する。このときの内装タンク414内および便器110内の水の状態を、図20に示す。この図において、残水位DPLよりも上の波線部分は、サイホン作用の終了後に、第二吐水口423からオーバーフロー管440を通じて便器110に供給された補給水を示す。図20に示すように、便器110内の水は、内装タンク414内の貯溜水の水位が基準水位WLまで達したときに、ちょうど基準溜水位PLに達する。従って、便器110内の溜水RWは、堰134からのこぼし水を生じさせることなく、洗浄開始前の状態に回復される。
一方、大洗浄用ボタン430が操作されると、内装タンク414から、タンク容量である6リットルのうちの4リットル分の貯溜水が便器110に排水されるため、内装タンク414内の水位は、大洗浄後水位DWL1の高さまで低下する。この水位の低下に伴って開閉弁419a,開閉弁419bが開き、第一ボールタップ420a,第二ボールタップ420bへの給水が開始される。
第一ボールタップ420a内に給水された水は、導水管427c内を通って第一吐水口421から吐出される。このため、第一吐水口421から吐水される水の吐水状態は、以下のようになる。即ち、単位時間当たりに第一吐水口421から吐出される水量は、小洗浄の場合と変わらず、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1は、小洗浄時の第一瞬間吐出量S1と同じとなる。従って、内装タンク414に貯溜水が貯溜される態様は、以下のようになる。即ち、内装タンク414には、単位時間当たりにおいて、小洗浄の場合と同量の水が貯溜される。
一方、第二ボールタップ420b内に給水された水は、導水管427a内を通って流量調節機構480を通過しようとするが、このとき、流量調節機構480の流通孔484jと導水管427aとの位置関係は、図21に示すような状態となっている。即ち、流通孔484jは、導水管427aの約4分の1程度の面積分しか重なっていない。これにより、導水管427aからの水は、第1実施例における大洗浄時よりも更に流通孔484jを通過しにくくなる。このため、第二吐水口423から吐水される水の吐水状態は、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2が、小洗浄時の第二瞬間吐出量S2よりも少なくなることは勿論のこと、極めて少ない状態となる。従って、便器110に補給水が供給される態様は、単位時間当たりにごく少量の水が便器110に供給される態様となる。
第一吐水口421および第二吐水口423からの水の吐出は、内装タンク414内の貯溜水の水位が大洗浄後水位DWL1から基準水位WLに達するまでの間、継続して行なわれる。内装タンク414内の貯溜水の水位が基準水位WLに達する前に、便器110内において生じていたサイホン作用が終了する。このサイホン作用が終了した時点における内装タンク414内および便器110内の水の状態を、図22に示す。なお、図22における斜線や波線、点模様は、図18に示したのと同様の内容を表わす。図22に示すように、便器110内には、残り水が残水位DPLの高さまで溜まっている。一方、内装タンク414内の貯溜水の水位は、小洗浄後水位DWL2をやや越える程度の回復水位RWL5までにしか回復していない。
この回復水位RWL5は、第1実施例として図16に示した回復水位RWL4よりも更に低い。このため、サイホン作用の終了後に第一吐水口421および第二吐水口423から吐水がなされる期間は、第1実施例における大洗浄の場合と比較して、より長くなる。一方、第2実施例における大洗浄時の第二瞬間吐出量B2は、導水管427aと流通孔484jとの重なり合う面積が更に小さくなることで、第1実施例における大洗浄の場合よりも少なくなっている。
第2実施例では、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2の値を、以下のように定める。即ち、基準水位WLから回復水位RWL5までの容積を、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1で除算して、回復水位RWL5から基準水位WLに達するまでの所要時間YAを求め、基準溜水位PLから残水位DPLまでの容積を所要時間YAで除算することにより求められた商を大洗浄時の第二瞬間吐出量B2の値とする。大洗浄時の第二瞬間吐出量B2をこのような値とすることにより、回復水位RWL5から基準水位WLに到達するまでの期間内に第二吐水口423から吐出される水の総量は、基準溜水位PLから残水位DPLまでの容量と、ほぼ等しくなる。
この結果、内装タンク414内の貯溜水の水位が基準水位WLまで上昇し、第一吐水口421および第二吐水口423からの吐水が終了したときには、内装タンク414内および便器110内の水の状態は、図20に示した小洗浄の場合と同じ状態となる。即ち、便器110内の水は、内装タンク414内の貯溜水の水位が基準水位WLまで達したときに、ちょうど基準溜水位PLに達する。つまり、大洗浄,小洗浄という便器への排水量を異にするいずれの洗浄形式の場合にも、便器110内の溜水RWは、内装タンク414内の貯溜水の回復と同期して回復される。
以上説明したように、第2実施例の洗浄タンク410を備えたサイホンゼット式便器110は、第一吐水口421に至る水の流路と、第二吐水口423に至る水の流路とを別系統として設けつつ、このうちの第二吐水口423に至る水の流路にのみ流量調節機構480を設ける。この流量調節機構480の状態を変化させ、第二吐水口423から単位時間当たりに吐出される水量を、大洗浄の場合と小洗浄の場合とで異ならせることにより、便器110への補給水の単位時間当たりにおける供給量を、大洗浄,小洗浄ごとに調節する。従って、便器110の洗浄によって排出された溜水RWを、自由なタイミングで洗浄前の状態に回復することができる。
特に、第2実施例では、内装タンク414からより多量の貯溜水が排水される大洗浄の場合に、便器110への補給水の単位時間当たりにおける供給量が減少するように調節する。従って、内装タンク414内の貯溜水を洗浄前の状態に回復するために第一吐水口421から長時間に亘る吐水が必要な場合において、便器への過剰な水の供給を抑制し、便器110に供給される補給水の量を適正化することができる。例えば、こぼし水の量を減少することにより、節水を図ることが可能となる。
また、第2実施例では、大洗浄,小洗浄のいずれの場合にも、便器110内の溜水RWを、内装タンク414内の貯溜水の回復と同期して回復する。従って、便器の洗浄後におけるこぼし水の発生や溜水量不足を確実に防止することができる。
また、第2実施例の洗浄タンク310を備えたサイホンゼット式便器10は、流量調節機構480の流通孔484jと導水管427aとが重なり合う状態を、小洗浄用ボタン329、大洗浄用ボタン330の操作に伴って切り換える。従って、第二吐水口423から単位時間当たりに吐出される水の量を大洗浄と小洗浄との間で変更するために、複雑な調整を行なう必要がない。つまり、大洗浄用ボタン430の操作という便器の洗浄に必要な通常の動作を行なうだけで、第二吐水口423からの単位時間当たりの吐出量を少なくすることが可能となる。この結果、こぼし水の発生を簡単かつ確実に防止することができる。
なお、上記の第2実施例においては、内装タンク414内の貯溜水を洗浄前の状態に回復するまでの間、第一吐水口421および第二吐水口423の双方から水を吐出し続ける構成としたが、第二吐水口423から水が吐出される時間を、第一吐水口421とは別に制御する構成としてもよい。例えば、内装タンク414から便器110に排水される水量が多いほど、第二吐水口423から水が吐出される時間が短くなるように制御する構成や、第二吐水口423からの吐水が開始される時期を、第一吐水口421から吐水が開始される時期よりも遅らせる構成などを考えることができる。このような構成によっても、大洗浄の場合において、溜水RWの回復後における便器110を抑制することが可能となり、こぼし水の発生を防止することができる。
この他、便器110内の溜水RWの水位を水位センサ等の各種の検知手段によって検知し、内装タンク414内の貯溜水が洗浄前の状態に回復した時点で、第二吐水口423からの水の吐出を停止する構成としてもよい。こうすれば、こぼし水の発生を確実に防止することができる。
以上説明した第2実施例では、便器10に補給水が供給される態様を大洗浄と小洗浄との間で異ならせることにより、補給水の量の適正化を実現した。このような補給水の量の適正化は、内装タンク414に貯溜水が貯溜される態様を大洗浄と小洗浄との間で異ならせることによっても、実現することができる。このような構成例を、第3実施例として図23ないし図28を参照しつつ以下に説明する。図23は、本発明の第3実施例である洗浄タンク510を備えたサイホンゼット式の便器210の縦断面図を示す説明図である。図23に示す便器210、洗浄タンク510は、前述した第2実施例の便器110、洗浄タンク410とほぼ共通の各部を備える。図23では、この第2実施例と共通の各部につき、符号の下二桁を第2実施例と同じ数字を用いて表わしている。
洗浄タンク510は、第一吐水口521が形成された第一ボールタップ520aと第二吐水口523が形成された第二ボールタップ520bという2つの給水装置を備える。第二吐水口523の先端は、オーバーフロー管340の先端と対向する位置に配置されている。第一ボールタップ520aと第二ボールタップ520bの入口は、止水栓に設けられた分岐金具の2つの出口のそれぞれと接続されている。また、第一ボールタップ520a,第二ボールタップ520bの内部には、それぞれ開閉弁519a、開閉弁519bが設けられており、これらの開閉弁519a,開閉弁519bは、それぞれ、図示しないアーム550a,アーム550bによって浮子522と接続されている。
また、第一ボールタップ520aの第一吐水口521の手前には、流量調節機構580が設けられている。この流量調節機構580は、第1実施例における流量調節機構380とほぼ同様の構成を採るが、流量調節機構580内に収納された切換弁584の構成が、第1実施例と異なる。即ち、図24に示すように、切換弁584の弁体584aは、第1実施例における弁体384aが表裏反転された形状とされている。第3実施例では、第1実施例における流量調節機構480の弁体384aを裏返して軸体386に固着したものを流量調節機構580として利用している。
このように構成された洗浄タンク510において小洗浄用ボタン529,大洗浄用ボタン530が操作されると、内装タンク514から貯溜水が便器210に排水される。これにより、内装タンク514内の水位は、小洗浄の場合には小洗浄後水位DWL2の高さまで、大洗浄の場合には大洗浄後水位DWL1の高さまで、それぞれ低下する。この水位の低下に伴って、浮子522の作用により開閉弁519a,開閉弁519bが開き、第一ボールタップ520a,第二ボールタップ520bへの給水が開始される。
第二ボールタップ520b内に給水された水は、導水管527c内を通って第二吐水口523から吐出される。このため、第二吐水口523から吐水される水の吐水状態は、大洗浄、小洗浄のいずれの場合も同じとなる。即ち、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2は、小洗浄時の第二瞬間吐出量S2と同じ値となる。従って、大洗浄、小洗浄のいずれの場合にも、便器210には、単位時間当たりに同じ量の補給水が供給される。
一方、第一ボールタップ520a内に給水された水は、導水管527a内を通って流量調節機構580を通過し、第二吐水口523とほぼ同じ口径の第一吐水口521から吐出される。このとき、流量調節機構580の流通孔584jと導水管527aとの位置関係は、大洗浄の場合には図25に示す状態となっており、小洗浄の場合には図26に示す状態となっている。
図25に示すように、大洗浄用ボタン530が操作された場合には、第二羽部584cが上昇することにより、流通孔584jは導水管527aの全部と重なる。このため、導水管527aに導かれた水のほとんどが流量調節機構580を通過し、第一吐水口521に至る。一方、小洗浄用ボタン529が操作された場合には、図26に示すように、第一羽部584bが上昇することにより、流通孔584jは、導水管527a一部と重なる。このため、導水管527aからの水は、流通孔584jを通過しにくくなる。このように、第3実施例では、第一吐水口521から吐水される水の吐水状態を、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1が、小洗浄時の第一瞬間吐出量S1よりも大きくなるように調整し、内装タンク514に単位時間当たりに貯溜される水の量が、大洗浄の場合の方が小洗浄の場合より多くなるように制御している。
こうした第一吐水口521および第二吐水口523からの水の吐出は、内装タンク514内の貯溜水の水位が基準水位WLに達するまでの間、継続して行なわれる。大洗浄の場合には、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1が多いため、内装タンク514内の水位は大洗浄後水位DWL1から早く上昇する。一方、小洗浄の場合には、小洗浄時の第一瞬間吐出量S1が少ないため、内装タンク514内の貯溜水の水位は、小洗浄後水位DWL2からゆっくりと上昇する。
この水位が基準水位WLに達する前に、便器210内において生じていたサイホン作用が終了する。このサイホン作用が終了した時点における内装タンク514内および便器210内の水の状態を、大洗浄の場合について図27に、小洗浄の場合について図28に、それぞれ示す。なお、図27および図28における斜線や波線、点模様は、図18に示したのと同様の内容を表わす。
図27および図28に示すように、サイホン作用が終了した時点において、便器210内には、大洗浄,小洗浄のいずれの場合も、残り水が残水位DPLの高さまで溜まっている。また、内装タンク514内の貯溜水の水位は、大洗浄の場合には回復水位RWL6まで、小洗浄の場合には回復水位RWL6よりも高い回復水位RWL7まで回復している。
第3実施例では、サイホン作用の終了時から内装タンク314の洗浄開始前の状態への回復までに要する時間が、大洗浄,小洗浄のいずれの場合も同じ時間となるように、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1および小洗浄時の第一瞬間吐出量S1の値を設定する。従って、回復水位RWL6から基準水位WLに到達するまでに要する時間tbの値は、回復水位RWL7から基準水位WLに到達するまでに要する時間tsの値と等しくなる。また、前述したように、大洗浄時の第二瞬間吐出量B2は、小洗浄時の第二瞬間吐出量S2と同じ値とされている。従って、サイホン作用の終了時以後に第二吐水口523から吐出される水の総量は、大洗浄の場合と小洗浄の場合とで等しくなる。このため、サイホン作用の終了時以後、便器10には、大洗浄,小洗浄の別に拘わらず、等量の補給水が供給される。
このサイホン作用の終了時以後に便器10に供給される補給水の量は、基準溜水位PLから残水位DPLまでの容量と、ほぼ等しい値に定められている。従って、便器210内の水は、内装タンク514内の貯溜水の水位が基準水位WLまで達したときに、ちょうど基準溜水位PLに達する。つまり、大洗浄,小洗浄という便器への排水量を異にするいずれの洗浄形式の場合にも、便器110内の溜水RWは、内装タンク414内の貯溜水の回復と同期して回復される。
以上説明したように、第3実施例の洗浄タンク510を備えたサイホンゼット式便器210は、第一吐水口521に至る水の流路と、第二吐水口523に至る水の流路とを別系統として設けつつ、このうちの第一吐水口521に至る水の流路にのみ流量調節機構580を設ける。この流量調節機構580の状態を変化させ、第一吐水口521から単位時間当たりに吐出される水量を、大洗浄の場合と小洗浄の場合とで異ならせることにより、内装タンク514に単位時間当たりにおける貯溜される水の量を、大洗浄,小洗浄ごとに調節する。従って、内装タンク514に貯溜すべき水の総量が異なる場合であっても、内装タンク514内の貯溜水を洗浄前の状態に回復するタイミングを、自由に定めることができる。また、このタイミングを適切に定めることにより、便器210の洗浄によって排出された溜水RWを洗浄前の状態に回復する理想的なタイミングを定めることができる。
特に、第3実施例では、内装タンク514からより多量の貯溜水が排水される大洗浄の場合に、内装タンク514に単位時間当たりにおける貯溜される水の量が増大するように調節する。従って、内装タンク414内の貯溜水を洗浄前の状態にいち早く回復することができる。内装タンク414内の貯溜水を洗浄前の状態に回復するために第一吐水口521から長時間に亘る吐水が必要な場合には、第二吐水口523からの便器210への過剰な水の供給を抑制し、便器10に供給される補給水の量を適正化することができる。例えば、こぼし水の量を減少することにより、節水を図ることが可能となる。また、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1を小洗浄時の第一瞬間吐出量S1よりも多くする。従って、内装タンク414内の貯溜水を基準水位WLまで早く回復することが可能となる。この結果、大洗浄を行なった後に続けて便器を使用した場合でも、好適な洗浄能力を得ることができる。
また、第3実施例では、大洗浄時の第一瞬間吐出量B1および小洗浄時の第一瞬間吐出量S1の値を、サイホン作用の終了時から内装タンク314の洗浄開始前の状態への回復までに要する時間が、大洗浄,小洗浄のいずれの場合も同じ時間となるように設定する。このように内装タンク514内の貯溜水の貯溜に要する時間を制御することにより、内装タンク514内の貯溜水を洗浄前の状態に回復するタイミングを、大洗浄の場合と小洗浄の場合とで一致させることができる。更に、第3実施例では、大洗浄,小洗浄のいずれの場合にも、内装タンク514内の貯溜水の回復と同期して、便器210内の溜水RWを回復する。従って、便器の洗浄後におけるこぼし水の発生や溜水量不足を確実に防止することができる。
以上、本発明の実施の形態を、第1ないし第3実施例を用いて説明した。なお、上記各実施例では、大洗浄および小洗浄のいずれの場合にも、便器10,110,210内の溜水RWを内装タンク314,414,514内の貯溜水の回復と同期して回復した。例えば、第1実施例の場合で言えば、内装タンク314内の貯溜水の水位が基準水位WLまで達したときに、便器10内の水がちょうど基準溜水位PLに達するように、第一吐水口321および第二吐水口323からの単位時間当たりの吐水量を制御した。このような制御に替えて、便器10内の水が基準溜水位PLに達した後においても、第二吐水口323からの少量の吐水を許容し、若干の水が堰34から溢れ出るように制御する構成を採ってもよい。
即ち、便器の洗浄の際に堰方向に引かれる水の量は、実際には、汚物の状態や便器の排水条件によって多少異なっている。そこで、堰方向に多量の水が引かれてしまった場合に対処し、基準溜水位PLから残水位DPLまでの容量以上の水を便器10に供給するように、第二吐水口323からの吐出量を制御することも現実的で好ましい。具体的には、基準溜水位PLから残水位DPLまでの容量に加えて0.3〜0.5リットル分の水が便器10に供給された時点で、内装タンク314内の貯溜水の水位が基準水位WLに回復するように、第一吐水口321および第二吐水口323からの単位時間当たりの吐水量を制御する構成等を考えることができる。こうすれば、堰方向に多量の水が引かれてしまった場合に、便器10内の溜水量が不足するという事態を回避することができる。また、堰方向に多量の水が引かれなかった場合であっても、こぼし水の量を、従来よりも少量の0.3〜0.5リットルの範囲で抑えることが可能となり、こぼし水の過剰な発生を防止することができる。
上記の各実施例では、第一吐水口321,521や第二吐水口323,423からの単位時間当たりの吐水量を大洗浄,小洗浄の別に応じて調節することにより、便器10,110,210に補給水が供給される態様や内装タンク314,414,514に貯溜水が貯溜される態様を制御するが、単位時間当たりの吐水量以外の要素を変化させる構成とすることも可能である。例えば、各吐水口から水が吐水される時期や期間を変化させる構成や、各吐水口から吐水される水の速度や方向等を変化させる構成とすれば、貯溜水と補給水との配分を変更可能であり、上記と同様の効果を得ることができる。
また、上記各実施例では、第一吐水口321,421,521や第二吐水口323,423,523という2つの吐水口を設けるが、3つ以上の吐水口を設ける構成としてもよい。例えば、オーバーフロー管340,440,540に向かう1の吐水口に加えて、内装タンク314,414,514底面に向かう2つの吐水口を設ければ、内装タンク314,414,514内により早く水を溜めることができるので、内装タンク314,414,514に貯溜水が貯溜される期間を制御することが可能となり、これにより、便器10,110,210への補給水の供給量や供給期間を変更することが可能となる。
また、洗浄タンク310の蓋317に手洗鉢を形成するとともに、手洗用の吐水管を組み付け、この手洗用の吐水管に水を供給するための第三の吐水口をボールタップ320に設ける構成としてもよい。この場合、第三の吐水口から供給された水は、手洗用の吐水管から吐出されて、蓋317の底部に形成された孔を通じて内装タンク314内に落下する。この落下した水については、そのまま貯溜水として貯溜してもよいし、オーバーフロー管340に供給し、便器10への補給水としてもよい。
また、1つの吐水口のみを設ける構成とすることもできる。例えば、吐水口の吐水方向を2以上の方向に変更可能とし、ボールタップからの水を、内装タンク314,414,514の底面とオーバーフロー管340,440,540の入口とに振り分けて吐出する構成とすれば、この振り分け方を大洗浄の場合と小洗浄の場合とで変えることにより、貯溜水,補給水の量や貯溜水と補給水との配分を変更することができる。
また、上記各実施例では、補給水の供給方法に関し、第二吐水口323,423,523から吐出された水をオーバーフロー管340,440,540を通じて便器10,110,210に供給するものとしているが、これ以外の方法で、便器10,110,210に補給水を供給してもよい。例えば、温水洗浄便座や止水栓と便器10,110,210とを給水管によって接続し、この給水管を通じて便器に補給水を供給する構成等を考えることができる。
また、第一吐水口321,421,521から吐出されて内装タンク314内に溜まった貯溜水の一部を、補給水として利用してもよい。例えば、第二吐水口323,423,523を設けずに、オーバーフロー管340,440,540の入口をより低い位置に設けておき、内装タンク314内の貯溜水の水位がオーバーフロー管340,440,540の入口よりも高くなったときに、オーバーフロー管340,440,540から溢れた水を、補給水として便器10,110,210に供給する構成等を考えることができる。
さらに、第二吐水口323,423,523から吐出された水を第一吐水口321,421,521から吐出された水とは別に蓄える貯蔵部を、洗浄タンク310内に設け、この貯蔵部に蓄えられた水を補給水として便器10,110,210に供給する構成としてもよい。
また、上記各実施例では、流量調節機構380の切換弁384の状態を、大洗浄用ボタン330や小洗浄用ボタン329の操作による第一移動体332や第二移動体331の移動に伴って機械的に切り換えるが、このような機械的な手法以外の方法で、切換弁384の状態を切り換えてもよい。例えば、切換弁384を、通電状態に応じて弁を開閉する電磁弁として構成するとともに、この電磁弁に制御信号を送出する電子制御装置を設け、この電子制御装置が、大洗浄用ボタン330、小洗浄用ボタン329の操作に応じた信号を入力し、電磁弁の開閉状態を調節する構成等を考えることができる。
なお、流量調節機構380による流量の調節や配分変更を、給水圧に対応して行なうことも可能である。例えば、給水圧を検知するアクチュエータを別途設け、検知された水圧の高低に応じて切換弁384の回転角度を決定する構成とすれば、補給水と貯溜水との配分をより正確に行うことができる点で好適である。また、流量調節機構380よりも上流側に減圧弁を設け、流量調節機構380に一定以下の水圧で給水する構成としてもよい。
上記各実施例では、流量調節機構380の流通孔384jと導水管327aとが重なり合う状態を、小洗浄用ボタン329、大洗浄用ボタン330の操作に伴って切り換えるが、このような重合状態の切り換えは、小洗浄用ボタン329、大洗浄用ボタン330の操作に連動しないものであっても差し支えない。例えば、流通孔384jと導水管327aとの重合状態を大洗浄モード,小洗浄モードのいずれかに切り換えるボタンやつまみ等を別途設け、このボタンやつまみ等の操作に基づいて、補給水の単位時間当たりの供給量や補給水が供給される時間、貯溜水の単位時間当たりの貯溜量や貯溜水の貯溜に要する時間等を調節する構成等を考えることができる。
また、上記のボタンやつまみを、流通孔384jと導水管327aとの重合状態を任意の状態に切り換え可能に構成してもよい。こうすれば、補給水の単位時間当たりの供給量や補給水が供給される時間、貯溜水の単位時間当たりの貯溜量や貯溜水の貯溜に要する時間等を使用者の目的や用途に合わせて自由に調節することが可能となる。例えば、ボタンやつまみを操作し、ボールタップ320からの水を、内装タンク314内には貯溜せず、補給水のみを便器10に供給する状態に設定可能とすれば、便器10を掃除する場合に便利である。
また、流量調節機構380を設ける以外の方法で、第一吐水口321,第二吐水口323から吐水される水の状態を制御することも可能である。例えば、吐水口の内径を、大洗浄の場合と小洗浄の場合とで変化させればよい。具体的には、具体的には、第二吐水口323の先端に、第二吐水口323の断面積よりも小さな面積の板状体を入れておき、この板状体が、小洗浄用ボタン329の操作による第二移動体331の移動に伴って第二吐水口323の外側にスライドし、大洗浄用ボタン330の操作による第一移動体332の移動に伴って第二吐水口323の内側にスライドするような構成等を考えることができる。このような構成を採れば、大洗浄の場合における第二吐水口323からの単位時間当たりの吐水量は小洗浄の場合よりも少なくなり、前述した流量調節機構380を設けた場合と同様の効果を得ることができる。
上記各実施例では、小洗浄用ボタン329および大洗浄用ボタン330という2種類の操作ボタンを設けるが、大洗浄および小洗浄に共通の1の操作ボタンのみを設ける構成とすることも可能である。例えば、操作ボタンの押圧深さによって大洗浄か小洗浄かを区別し、ボタンの押圧深さに応じて第一アーム334や第一羽部384bの状態が異なるように構成すればよい。こうすれば、流量調節機構380の流通孔384jと導水管327aとが重なり合う状態を、1の操作ボタンのみによって切り換えることができる。
また、小洗浄用ボタン329および大洗浄用ボタン330に替えて、大洗浄、小洗浄の切り換え操作が可能なハンドルを設ける構成とすることも可能である。この場合には、ハンドルを軸支するスピンドルの一部が、ハンドルの操作に伴って第一羽部384bや第二羽部384cに当接するように構成すればよい。
また、赤外線センサ等のセンサを設け、このセンサの検知状態により、小便用排水弁344,大便用排水弁345の開閉や流量調節機構380の切り換えを行なう構成としても差し支えない。
上記各実施例では、洗浄タンク310から便器10に排水する水量を、大洗浄、小洗浄の2通りに規定したが、3通り以上に規定するものであっても差し支えない。例えば、大洗浄用、小洗浄用、清掃用の3つのケースを想定し、これらの各々に別々の水量を規定するものであってもよい。
上記各実施例では、内装タンク314,414,514内に貯溜水を貯溜する構成とするが、このような内装タンク314,414,514を設けず、外装タンク312に貯溜水を貯溜する構成としても差し支えない。
上記各実施例では、洗浄タンク310,410,510を、大洗浄、小洗浄のいずれの場合にも、洗浄後に同じ水位まで回復するように構成するが、大洗浄の場合と小洗浄の場合とで、異なった水位に回復する構成としても差し支えない。
上記各実施例では、洗浄タンクとして、便器10,110,210と密接して連結されるロータンク型タンクを用いたが、ロータンク型タンク以外のタンク、例えば、便器10,110,210と洗浄管を介して接続されてトイレの壁等に設置される隅付き型や平付き型のタンクを用いてもよい。この場合に、洗浄タンクを高い位置に設置してハイタンクとすることも可能である。
以上、本発明が実施される形態を、実施例を用いて説明した。本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。
例えば、上述した流量調節機構380を、吐水状態変更装置の発明として把握することも可能である。即ち、上記の流量調節機構380は、ボールタップ320が備える第一吐水口321と第二吐水口323という2つの吐水口から吐水される水の配分を、吐水される水の総量の多少に応じて変更する。従って、第一吐水口321を通じて洗浄タンク310内に貯溜する水と、第二吐水口323を通じて便器10に供給する水との配分を、自由な配分に調節することができる。
また、上述した流量調節機構380を備えたボールタップ320を、吐水状態変更装置を備えた水栓金具の発明として把握することも可能である。即ち、上記のボールタップ320は、流量調節機構380を備えることにより、第一吐水口321と第二吐水口323という各吐水口から吐水される水の配分を、大洗浄用ボタン330,小洗浄用ボタン329の操作に基づいて変更する。従って、洗浄タンク310内に貯溜する水と、便器10に供給する水との配分を、自由な配分に調節することができる。また、ボールタップ320以外の複数の吐水口を有する水栓金具に、流量調節機構380に相当する機構(各吐水口からの吐水時間や吐水量等を操作によって調節する機構)を設けた場合、各吐水口321,323から吐水される水の状態を自由に調節することが可能となり、便利である。
上記実施例では、サイホンゼット式便器10,110,210を例として説明したが、本発明を他の種類の便器に適用することも可能である。例えば、洗浄水をゼット孔から噴出することなくサイホン作用を引き起こすサイホン式便器や、サイホン作用による引き込み力を利用しない便器にも適用することができる。
また、上記した各種の便器と他の装置や部材との組み合わせを発明として把握することもできる。例えば、局部洗浄や暖房等の諸機能を実現する機能便座と組み合わせた衛生洗浄装置、収納用キャビネットや手洗装置と組み合わせたトイレキット装置、トイレ室内の構造体としての壁材,床材および天井材等を組み合わせたシステムトイレ装置等が考えられる。