JP2005113642A - 水洗便器 - Google Patents

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健一 中村
Takeshi Koseki
剛 小関
Toshifumi Yoneda
敏文 米田
Tomoyasu Ichiki
智康 一木
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Abstract

【課題】 サイホン作用を早期に発生させて少ない洗浄水の量で良好なボウル洗浄性能及び汚物排出性能を得ることができる水洗便器を提供する。
【解決手段】 本発明は、洗浄水タンクの洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗便器1であって、ボウル形状の汚物受け面14と、オーバーハングしたリム部16と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部18とを備えたボウル部8と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物をサイホン作用により排出する排水路12と、排水路の入口12aに向って吐水するように設けられたゼット穴部32と、ボウル部の前後方向を中心として一方の側の所定の位置に配置され棚部上に洗浄水を吐水し旋回流を形成する吐水部28,30と、を有し、ボウル部の棚部は、吐水部から吐水された洗浄水の主流部が排水路の入口に向って流れ込むように、その幅Wが変化して形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、水洗便器に係り、特に、旋回流を形成して洗浄及び汚物の排出を行う水洗便器に関する。
従来の一般的な水洗便器は上緑部に断面矩形状のリムを形成し、このリム内を通水路とするとともに、リム下面に洗浄水を汚物受け面に吐出する穴或いはスリットを形成している。
しかしながら、上述した水洗便器では、リムの下面と汚物受け面との境界部が上方から見て死角になり、特にリムの下面には洗浄水が廻り込まないため、汚れが残りやすいという問題があり、また境界部が見にくいため釉薬の塗布が完全に行えない場合があり、これも汚れが付着する原因になっていた。
このような従来の一般的な水洗便器が持つ問題を解決するため本出願人は、WO98/16696号公報(特許文献1)により、リム内を通水路としない水洗便器の新たな構造を提案した。
この水洗便器は、ボウル部に臨むリム内側面と汚物受け面とをスムーズに連続した形状とすることで、陰になる部分をなくし、しかもボウル部への洗浄水の供給はボウル部の後部の1箇所に吐水口を設け、この吐水口からリムと汚物受け面との境界部近傍に洗浄水を吐出して旋回流を形成して、汚物受け面の全面に洗浄水を行き渡らせるようにしたものである。
上述したWO98/16696号公報では、リムの内側面をオーバーハング形状として洗浄水が便器外へ飛び出すのを防止している。また、洗浄水を1周旋回させたのでは距離が長くなり吐水圧力を高くしなければならず、また万遍なく行き渡らせるため形状に自由度がなくなる。そこで、ボウル部後部の左右にそれぞれ吐水口を設け、給水源からの洗浄水を左右に分岐して各吐水口に供給する構造が提案されている(図21〜図23参照)。
また、特開2002‐294842号公報(特許文献2)には、大便器のリム直下でボウル内面に沿ってほぼ水平にボウル側部より前方に洗浄水をノズルにより供給して旋回流を形成すると共に、ボウル部の内面に沿って棚を設け、この棚の幅をボウル前方側で最小にするか、又は、棚を前方側でなくした水洗便器が開示されている。
WO98/16696号公報 特開2002‐294842号公報
近年、家庭用の水洗便器では、タンク容量が6L〜8Lの節水型が主流となりつつあり、供給される洗浄水の量が従来タイプのタンクより少ないため、給水開始後に早期にサイホン作用を発生させて汚物を排出しなければならず、万一、サイホン作用の発生が遅れればその分汚物の排出能力が低下する。サイホン作用を早期に発生させるためには、排出路の入口に対向したゼット穴から洗浄水を直接供給するサイホンゼット式とするのが望ましい。しかしながら、サイホンゼット式の水洗便器の場合には、ゼット穴に旋回流を形成する吐出口よりも多い水量を供給しなければならず、そのためには、吐出口へ供給される水量が不足してしまい、ボウル部(面)の洗浄が不十分になるというごく基本的な問題が生じる。このように、ボウル面の洗浄性能と汚物排出性能の両方を満足させることは、水洗便器においてごく基本的な事項であり、このような問題を解決した水洗便器が強く要望されている。
このような要望に対し、上述したWO98/16696号公報(特許文献1)に開示された水洗便器を水頭圧の低い水洗便器に適用した場合、左右に分岐して洗浄水を吐出するようにしているので、逆向きの旋回流が2つ形成され、それにより、洗浄水が便器中央部分でぶつかって跳ねるおそれがあり、またスムーズなサイホン効果が阻害されるという問題がある。
また、特開2002‐294842号公報(特許文献2)の水洗便器では、棚の幅をボウル前方側で最小にするか、又は、棚を前方側でなくすることにより、ボウルの各部位で均一にボウルへ洗浄水を流下させるようにしているので、ボウルの洗浄効果自体は向上するが、サイホン作用を早期に発生させることは困難である。
そこで、本発明は、サイホン作用を早期に発生させて少ない洗浄水の量で良好なボウル洗浄性能及び汚物排出性能を得ることができる水洗便器を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水タンク内に貯溜された所定の量の洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、上縁部でありその内周面が内方に向ってオーバーハングしたリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部とを備えたボウル部と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物をサイホン作用により排出する排水路と、排水路の入口に向って吐水するように設けられたゼット穴部と、ボウル部の前後方向を中心として一方の側の所定の位置に配置され上記棚部上に洗浄水を吐水し旋回流を形成する吐水部と、を有し、ボウル部の棚部は、上記吐水部から吐水された洗浄水の主流部が上記排水路の入口に向って流れ込むように、その幅が変化して形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、リム部の内周面が内方に向ってオーバハングして形成されているので、従来の死角部分がなくなり、便器の清掃を楽に行うことができ、便器を常に清潔な状態に維持することができる。
次に、ゼット穴部から排水路の入口に向って吐水することにより、その分、サイホン作用を早期に発生させることができる。さらに、吐水部から吐水された洗浄水の主流部が排水路の入口に向って流れ込むように、その幅が変化して形成されているため、排水路に向けて、ゼット穴部から吐出されるゼット吐水量と、吐水部からのリム吐水のうちの比較的多くの水量(主流部の水量)が、ほぼ同時に、排水路に供給されるため、早期にサイホン作用を発生させることができる。このように、本発明によれば、早期にサイホン作用を発生させることができ、少ない洗浄水の量で良好なボウル洗浄性能及び汚物排出性能を得ることができる。
本発明において、好ましくは、ボウル部の棚部は、その幅がボウル部の前後方向を中心として両側領域では広く形成されボウル部の前端領域では狭く形成されている。
このように構成された本発明によれば、単に、ボウル部の棚幅を変化させることにより、簡易に、吐水部から吐水された洗浄水の主流部が排水路の入口に向って流れ込むと同時に溜水に浮遊する汚物を排水路内に押込むことができるので、より効果的な汚物排出性能を得ることができる。
本発明において、ボウル部の棚部は、下方に向って傾斜しその傾斜角が下方に向って0度〜15度の範囲内である。
このように構成された本発明によれば、ボウル部の棚部をこのような範囲内に設定しているので、洗浄水をボウル部上方で旋回させることができボウル部(汚物受け面)を効果的に洗浄することができる。
本発明において、好ましくは、ボウル部の棚部は、汚物受け面と所定の曲率により連続的に形成され、この曲率がボウル部の前端から旋回流の下流の所定の位置までの領域で他の領域よりも大きく形成されている。
このように構成された本発明によれば、棚部と汚物受け面との間の曲率がボウル部の前端から旋回流の下流の所定の位置までの領域で他の領域よりも大きく形成されているので、曲率が大きく形成された領域で洗浄水が棚部から汚物受け面に落下し易くなり、それにより、洗浄水の主流部が排水路の入口に向って流れ込み易くなる。
本発明は、洗浄水タンクに貯溜された洗浄水及び水道配管から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、上縁部でありその内周面が内方に向ってオーバーハングしたリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部とを備えたボウル部と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物をサイホン作用により排出する排水管と、排水管の入口に向って洗浄水タンクの洗浄水を吐水するように設けられたゼット穴部と、ボウル部の前後方向を中心として一方の側の所定の位置に配置され棚部上に水道配管からの洗浄水を吐水し旋回流を形成する吐水部と、この吐水部からの吐水をゼット穴部からの吐水とほぼ同時に行うか又はゼット穴部からの吐水よりも前に行う制御手段と、を有し、ボウル部の棚部は、吐水部から吐水された洗浄水の主流部が上記排水管の入口に向って流れ込むように、その幅が変化して形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明は、吐水部には水道配管から洗浄水が供給され一方ゼット穴部には洗浄水タンクから洗浄水が供給される所謂ハイブリッド方式の水洗便器であり、上述した発明と同様に、便器の清掃を楽に行うことができるので便器を常に清潔な状態に維持することができ、次に、ゼット穴部から排水路の入口に向って吐水することにより、その分、サイホン作用を早期に発生させることができ、さらに、吐水部から吐水された洗浄水の主流部が排水路の入口に向って流れ込むように、その幅が変化して形成されているため、排水路に向けて、ゼット穴部から吐出されるゼット吐水量と、吐水部からのリム吐水のうちの比較的多くの水量(主流部の水量)が、ほぼ同時に、排水路に供給されるため、早期にサイホンを発生させることができる。また、洗浄水の主流部の流れは、溜水に浮遊する汚物を排水路内に押込むことができるので、より効果的な汚物排出性能を得ることができる。
本発明の水洗便器によれば、サイホン作用を早期に発生させて少ない洗浄水の量で良好なボウル洗浄性能及び汚物排出性能を得ることができる。
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
先ず、本発明の第1実施形態を図1乃至図10により説明する。図1は本発明の第1実施形態による水洗便器を示す縦断面図であり、図2は図1に示す水洗便器の平面図であり、図3(a)〜(e)はそれぞれ図2のA−A線〜E−E線に沿って見た部分断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の水洗便器1は、タンク式の水洗便器であり、便器本体2と、洗浄水タンク4とから構成されている。洗浄水タンク4は、節水型の洗浄水タンク(6L〜8L)であり、ローシルエットと呼ばれるタイプで、水頭圧が一般のものより低くなっている。この洗浄水タンク4は、便器本体1と一体的に形成された、所謂、ワンピース便器である。
便器本体2は、表面に釉薬層が形成された陶器製であり、下部にスカート部6が形成され、上半部のうち前方にボウル部8が形成され、後方上部に導水路10、後方下部に排水路12がそれぞれ形成されている。
ボウル部8は椀状をなす汚物受け面14と上縁部を構成するリム16を有し、汚物受け面14の乾燥面14aと、棚部18と、リム16の内側面16aはスムーズな曲面で連続している。そして、上から見て死角になる箇所がないように、また、清掃の際には使い捨ての紙等を使用して簡単に内側面16aを拭き取ることができ、しかも洗浄水が外に飛び出すことがないように、リム16の内側面16aは内方に向かってある程度オーバーハングした形状になっている。
汚物受け面14の中央で溜水の水面下となる箇所には排水路12の入口12aが開口し、この排水路入口12aから上昇路12bが後方に伸び、この上昇路12bには下降路12c(縦管)が連続し、下降路12cの下端は、ジョイント(示せず)を介して排出管に接続されている。
導水路10は、開口10aを介して、洗浄水タンク4に連通している。また、導水路10は左右の側壁20によりその幅が狭められ、これらの側壁20の前方側で、リム連結穴22,24が形成されている。前方から見たとき左側に設けられたリム連結穴22は、通水路22aに連通し、洗浄水が平面視で左回りに流れるようになっており、一方、前方から見たとき右側に設けられたリム連結穴24は、通水路24aに連通し、さらに、隔壁26の先端部でUターンし、通水路24bを経て、洗浄水が平面視で右回りに流れるようになっている。
通水路22aは、ボウル部8の所定位置に配置された第1の吐水口28とつながっており、この第1の吐水口28から、洗浄水タンク4からの洗浄水が、導水路10、リム連結穴22及び通水路22aを経由して、棚部18上に吐水されるようになっている。
通水路24bは、ボウル部8の所定位置に配置された第2の吐水口30とつながっており、この第2の吐水口30から、洗浄水タンク4からの洗浄水が、導水路10、リム連結穴24及び通水路24a,24bを経由して、棚部18上に吐水されるようになっている。
このように、本実施形態では、リム16内の水が通る経路が短くなるため、結露の防止に効果的である。
第1及び第2の吐水口28,30は、いずれも、高さ位置が汚物受け面14の乾燥面14aとリム16の内側面16aとの境界部近くで、前後位置は平面視で排水路入口12aの側方となる位置に形成され、更に第1の吐水口28は洗浄水の吐水方向が前方となり、第2の吐水口30は洗浄水の吐水方向が後方となり、ボウル部8において、平面視で反時計回りの洗浄水による1つの旋回流が形成されるようになっている。
さらに、排水路入口12aと対向する箇所に汚物を効率的に排水路に押し込むゼット穴32が設けられている。また、導水路10の前方側は、通水路34と連通し、この通水路34が、ゼット穴32に導水路10から洗浄水を供給するようになっている。
ここで、第1及び第2のの吐水口28,30に洗浄水を供給する通水路22a,24a、及び、ゼット穴32に洗浄水を供給する通水路34は、経路が短くなっているので、これらの通水路内の空気が洗浄水と早期に置換して第1及び2の吐水口28,30並びにゼット穴32から排出されるので、通水路内で空気が圧縮されることがなくなる。そのため洗浄水の水流のエネルギーの損失が低減でき、洗浄時の静音化にも有利となる。
さらに、リムの通水路構造が単純なため、通水路22a,24a,34に重力方向に勾配をつけることで、洗浄後長期間にわたり吐水口より汚物受け面に少量ずつ放出し続ける水が低減され、汚物受け面に縦筋状に形成される水垢汚れを抑制することができる。
次に、図4乃至図8により、第1実施形態の水洗便器の棚部ついて説明する。図4は第1実施形態のボウル部(棚部)の位置を任意の位置♯0〜♯17により示した平面図(タンクは省略し図示せず)であり、図5(a)〜(f)は任意の位置で見た棚部を含むボウル部の部分断面図であり、図6は第7実施形態における棚部の幅である棚幅を♯0〜♯17の位置に沿って示した線図であり、図7は第1実施形態における棚部と汚物受け面の間の曲面の曲率を♯0〜♯17の位置に沿って示した線図であり、図8は第1実施形態による旋回流の流れる様子を♯0〜♯17の位置に沿って示した平面図である。
図4において、棚部18の位置は、♯0〜♯17により示されている。各位置の間隔は任意であり、第1の吐水口28の位置を♯0(=♯18)、第2の吐水口30の位置を♯13、ボウルの前端部の位置を♯6、ボウル部の後端部の位置を♯15として示している。
本実施形態では、ボウル部8の棚部12は、汚物受け面14と比べてその傾斜が緩やかな水平方向の領域を指し、第1及び第2の吐水口28,30からの洗浄水を汚物受け面14の上方で旋回させるための経路であり、下方に向って傾斜しその傾斜角θが下方に向って0度〜15度の範囲となる部分を意味し、その部分が、棚幅Wとなる。
ここで、棚部の形状を説明する前に、図4により、第1及び第2の吐水口28,30のそれぞれの具体的な配置位置を説明する。ボウル部8(棚部12)は、ほぼ楕円形状をしており、前方視のとき(前方から見たとき)左側と右側が対称となっており、また、概略的には、♯17〜♯4の領域及び♯8〜♯12の領域では相対的に曲率が大きく、一方、♯4〜♯8の領域及び♯12〜♯17の領域では相対的に曲率が小さくなっている。
第1及び第2の吐水口28,30の配置位置をボウル部8の曲率の大きさとの関係で説明すれば、第1の吐水口28は、ボウル部の前後方向を中心として一方の側(図4において、前方視で左側)のボウル部の小さな曲率から大きな曲率に変化する位置(♯17)の近傍(♯0)に配置され、第2の吐水口12は、他方の側(右側)のボウル部の大きな曲率から小さな曲率に変化する位置(♯12)の近傍(♯13)に配置されている。
本実施形態においては、第1及び第2の吐水口28,30をこれらの位置に配置することにより、第1の吐水口28から吐水された洗浄水により、ボウル部の一方の側(左側)の曲率の大きな領域(♯0〜♯4)、前端の曲率の小さな領域(♯4〜♯8)、他方の側(右側)の曲率の大きな領域(♯8〜♯12)が洗浄され、残りの後端の曲率の大きな領域(♯13〜♯0)は、第2の吐水口12から吐水された洗浄水により洗浄されるようになっている。このようにして、本実施形態によれば、ボウル部の全領域を効果的に洗浄することが出来るようになっている。
次に、図4乃至図6により棚部の幅である棚幅(W)について説明する。本実施形態では、ボウル部の全面を洗浄できるようにすることを前提として、さらに進めて、第1の吐水口28から吐水された洗浄水の主流部(図8において“A”で示す)が排水路12の入口12aに向って流れ込むように、ボウル部8の棚部18の棚幅Wを変化させ、即ち、ボウル部の前後方向を中心として両側(左右側)領域では広く、ボウル部の前端領域では狭くなるように形成している。このようにして、棚幅を狭くすることにより棚部18から汚物受け面14へ流れる洗浄水の量を増やし、棚幅を広くすることにより洗浄水をボウル部へ流れ難くし旋回流として引き続き下流側に流すようにしているのである。
具体的には、図5及び図6に示すように、♯0では棚幅W0 は30mmであり、♯4では棚幅W4 は26mmであり、♯6では棚幅W6 は22mmであり、♯11では棚幅W11は27mmであり、♯12では棚幅W12は16mmであり、♯15では棚幅W15は15mmであり、♯18では棚幅W18は5mmである。
全体的には、図6に示すように、棚幅Wは、第1の吐水口28から下流側に向って、曲率が大きな領域(♯0〜♯3)では広くなっており、曲率が小さくなる部分では前端(♯6)位置に向けて次第に小さくなり、前端の近傍領域(♯5〜♯7)で最も狭くなるようになっている。さらに、下流側に向って大きくなり、曲率が大きな領域(♯9〜♯11)で広くなり、第2の吐水口30の直前で、急激に狭くなっている。さらに、棚幅Wは、第2の吐水口30から下流側の領域(♯13〜♯18)では、急激に狭くなっている。ここで、本実施形態において、第2の吐水口30のすぐ上流側で棚幅を狭し、第1の吐水口28のすぐ上流側で棚幅を狭くすることにより、上流からの洗浄水と各吐水口から吐水される洗浄水とが接触することにより発生する水跳ね(ほぼ垂直方向に洗浄水が飛ぶこと)を確実に防止するようにしている。
次に、図5及び図7に示すように、本実施形態では、棚部の棚幅を適正な値に設定し、旋回流を含む洗浄水の流れを制御するため、さらに、棚部18と汚物受け面14の間の曲面の曲率Rの大きさを棚部の位置に沿って変化させている。具体的には、図7に示すように、棚部の位置と棚部と汚物受け面の間の曲面の曲率Rの大きさは、第1の吐水口28の位置(♯0)から下流に向って増大し、ボウル部の前端位置から下流側の領域(♯6〜♯11)において最大となり、さらに下流の領域に向った減少するように形成されている。
即ち、本実施形態においては、棚部と汚物受け面の間の曲面の曲率Rの大きさを、ボウル部の前端位置から下流側の領域(♯6〜♯11)において、他の領域に比べ、大きな値に設定することにより、傾斜角が下方に向って15度よりも大きな部分を増やして棚幅を狭くし、その領域で、棚部から洗浄水がボウル部(汚物受け面)に流れ易くし、それにより、ボウル部全面を確実に洗浄できるようにすると共に、第1の吐水口28から吐水された洗浄水の主流部A(図8参照)が排水路12の入口12aに向って流れ込み易くしているのである。
なお、棚部18と汚物受け面14との間は、曲面で形成せず、平面をつなげて構成するようにても良い。
具体的には、本実施形態では、ボウル部8において洗浄水主流部A(図8参照)を形成するために、ボウル部8の棚部18の棚幅Wを、以下のように設定している。即ち、第1の吐水口28の水平方向の開口径をD(mm)、棚幅をW(mm)、第1の吐水口28を形成するボウル部側の便器の肉厚をt(mm)としたとき(図5(a)参照)、第1の吐水口の出口部(♯0)の棚幅W(W0)を棚部に洗浄水を確実に載せるためにW0≧Dとし、最大棚幅WmaxをD≦Wmax≦D+t+D/3とし、ボウル部の前端部(♯6)の棚幅W(W6)を洗浄水の旋回流を達成するためにD/3<W6<D+t+D/3としている。
本実施形態では、D=15mm、t=10mmと設定しているので、ボウル部の前端部(♯6)では、棚幅W6を7.5mmより大きく30mmより小さく設定すればよい。また、最大棚幅Wmaxが棚幅W0とほぼ同じ値となるが、ボウル部の前端部(♯6)では、第1の吐水口28の位置(♯0)より曲率が小さくなっているので、洗浄水は、棚部から流下して主流部Aを形成することができる。
さらに、本実施形態では、好ましくは、Dは10〜30mm、tは8〜12mmである。
次に、図9及び図10により、本発明の洗浄水タンクを備えた水洗便器の実施形態における第1の吐水口28から吐水されるリム吐水量(R1)、第2の吐水口30から吐水されるリム吐水量(R2)、及び、ゼット穴32から吐水されるゼット吐水量(Z)、並びに、リム吐水量R(=R1+R2)とゼット吐水量Zの配分比等について説明する。図9は本発明の洗浄水タンクを備えた水洗便器の実施形態における洗浄限界A、搬送限界B、及び、性能限界D等を示す図であり、図10は本発明の洗浄水タンクを備えた水洗便器の実施形態におけるリム吐水量及びゼット吐水量の範囲を示す線図である。
ここで、図9及び図10は、ボウル部に溜水を形成した状態で洗浄タンクに貯溜されている洗浄水のみを使用して洗浄を行ったときに得られたデータ(実験結果)を示している。
水洗便器には、一般に、洗浄限界A、搬送限界B、及び、性能限界Dがあり、旋回流を使用した水洗便器では、さらに、水飛び限界Eがあり、これらの限界値を満足する必要がある。
これらの限界値について、本実施形態による水洗便器(タンク容量6L)と従来技術による水洗便器(ボックスリムに設けられた多数の孔から吐水するタイプでタンク容量6L)とを比較して説明する。
洗浄限界Aは、リム洗浄水がボール部を一周洗う限界値であり、換言すれば、リム洗浄水がボール面の全面をぬらすことができるリム吐水量の限界値である。図9に示すように、洗浄限界Aは、従来技術では1.3Lであったが、本実施形態では、0.5L(=R1+R2)であり、より少ないリム吐水量となっている。
搬送限界Bは、ボール部に代用汚物を落し、リム洗浄水にて排水路(トラップ)まで搬送可能なリム吐水量の限界値であり、具体的には、代用汚物40gを汚物受け面に落し、リム洗浄水にて、溜水部まで移動させることができるリム吐水量の限界値である。
なお、代用汚物は、健康状態が正常の際の大便に近似させたものであり、大便の8割以上をとされる水分と有機分及び灰分からなる固形物を元に硬度(硬さ)や形態を調整したものである。
図9に示すように、搬送限界Bは、従来技術では1.8Lであったが、本実施形態では、1.0L(=R1+R2)であり、より少ないリム吐水量となっている。
性能限界Cは、代用汚物がきちんと排出されるゼット吐水量の限界値である。図9に示すように、この性能限界Cは、本実施形態と従来技術は両者とも、3.0Lである。
水飛び限界Eは、リムから洗浄水がほぼ水平方向に飛び出る(特に、便器先端部から洗浄水が飛び出る)リム吐水量の限界値である。水飛びは、ボックスリムに設けられた多数の孔から吐水するタイプである従来技術では発生せず、旋回流を用いる本実施形態のみに適用される。図9に示すように、水飛びの限界値は、各リム吐水量毎に判断され、本実施形態では、2.3L(第1の吐水口の吐水量R1)である。
また、図9図には、本実施形態の実施例Cとして、リム吐水量R(=R1+R2)が2.0L、ゼット吐水量Zが4.0Lとした水洗便器が示されており、この水洗便器は、洗浄限界A、搬送限界B、性能限界D及び水飛び限界Eの全ての限界を満たしている。
図10は、リム吐水量及びゼット吐水量と、搬送限界B、性能限界D及び水飛び限界Eの関係を示す線図である。
図10に示すように、従来技術では、ゼット吐水量が性能限界D’の3.0L以上で且つリム吐水量Rが搬送限界B’の1.8L以上となっている。一方、本実施形態では、ゼット吐水量が性能限界Dの3.0L以上で且つリム吐水量R(=R1+R2)が搬送限界Bの1.0L以上となっている。また、リム吐水量R1(又はR2)は、水飛び限界Eの2.3L未満となっている。図10には、更に、タンク容量が6Lの実施例Cが取り得るリム吐水量Rおよびゼット吐水量Zの値も示されている。
以上説明したように、本実施形態では、搬送限界Bが従来の1.8Lから1.0Lまで減少させることができたので、その分、洗浄水を節水することができ、節水型のタンク(タンク容量4〜6L)を使用することが可能となる。また、同じタンク容量(例えば6L)の場合には、ゼット吐水量をより多くすることができるので、その分、サイホンを早期に発生させることができ、効果的に汚物の洗浄排出を行うことができる。
本実施形態では、リム吐水量Rとゼット吐水量Zの配分(割合)を、図9に示すように、タンク容量が6Lの場合、(17%:83%)〜(50%:50%)の範囲に設定することにより、搬送限界B及び性能限界Dの両方の限界を満たすことができる。
さらに、本実施形態では、リム吐水量Rに関し、第1の吐水口11から吐水される吐水量R1は、第2の吐水口12から吐水される吐水量R2よりも、多くの洗浄水が吐水されるように、その開口の大きさが設定されている。この吐水量R1と吐水量R2の配分(割合)は、各吐水口から次の吐水口までの旋回流の距離とほぼ比例するように設定されている。
本実施形態では、第1の吐水口28と第2の吐水口30は、上述した好ましい位置に配置されているので、リム吐水量Rにおいて、吐水量R1と吐水量R2の配分(割合)は、(55%:45%)〜(70%:30%)の範囲が好ましい。
次に、本発明の第2実施形態を図11により説明する。図11は本発明の第2実施形態によるハイブリット式の水洗便器を示す縦断面図である。
第2実施形態は、上述した第1実施形態と基本構造は同じであるが、第1及び第2の吐水口への洗浄水は水道配管から供給され、一方、ゼット穴への洗浄水は洗浄水タンク内の洗浄水が供給されるようになっている点が異なっている。以下、これらの事項に関し、具体的に説明する。
図11に示すように、本実施形態の水洗便器は、洗浄水タンク40を備えており、第1の吐水口28及び第2の吐水口30への洗浄水は水道配管から供給され、一方、ゼット穴32への洗浄水は洗浄水タンク40内に貯溜された洗浄水が供給されるようになっている。
洗浄水タンク40の底部には開口10aが形成されており、この開口10aがボール状の排水弁42により開閉されるようになっている。この排水弁42は、鎖44により電動モータ46に接続されており、洗浄スイッチ47の操作により、電動モータ46が駆動され、排水弁42を上昇させて、洗浄水タンク40内の洗浄水を導水路10及び通水路34を経由してゼット穴32に供給できるようになっている。なお、排水弁42は、フロート(図示せず)に連結され、洗浄水タンク40内の水位が所定以下になるまで開口10aを開放するようになっている。
洗浄水タンク40内には、水道配管48が挿入されており、この水道配管48は、タンク内部で第1分岐管50及び第2分岐管52に分岐し、それぞれに電磁弁54,56が設けられている。第1分岐管50は、洗浄水タンク40内で開口し、水道水をタンク内に供給し、一方、第2分岐管52は、リム穴22,24にそれぞれ接続され、水道水を水道配管48から直接的に第1及び第2の吐水口28,30に供給するようになっている。
また、水洗便器は制御装置58を備えており、この制御装置58には、操作スイッチ47の操作を検知した検知信号が入力され、それに基づき、電磁弁54,56にこれらの電磁弁の開閉操作を行う操作信号及び電動モータ46の駆動信号が出力される。具体的には、便器使用後に操作スイッチ47が操作されると、先ず、電磁弁56が開操作され、水道配管48から水道水が洗浄水として第2分岐管52を経由して、第1及び第2の吐水口28,30に供給される。次に、その数秒後に、電動モータ46が駆動され、排水弁42が上昇し、それにより、洗浄水タンク40内の洗浄水が、ゼット穴32に供給され、サイホン作用が発生し、汚物が排出される。その後、洗浄タンク40内の水位が低下して、排水弁42が開口10aを閉じ、その後、第2分岐管52から供給される洗浄水によりボウル部に封水に必要な溜水面が形成され、その後、電磁弁56を閉操作し、さらに、電磁弁54を開操作して、空になった洗浄水タンク40内に洗浄水を貯溜する。
なお、図11に示す水洗便器において、電磁弁54に代えて、洗浄水タンク40内の水位に応じて、機械的に第1分岐管50の吐水をオン・オフするボールタップバルブを用いても良い。
この第2実施形態は、上述した第1実施形態と基本的には同様な作用効果を奏するが、さらに、ハイブリット式の水洗便器であるため、洗浄水タンク40内の洗浄水は、ゼット穴32のみに供給され、第1及び第2の吐水口28,30へは水道配管から直接水道水が供給されるようになっているので、洗浄水タンク40をより小型化することができる。さらに、洗浄水タンク内の洗浄水の全てをゼット穴32に供給すると共に、ゼット穴32への洗浄水の供給を、第1及び第2の吐水口28,30への洗浄水の供給によってボウル部内の溜水を旋回させた後に行っているので、タンク内の洗浄水の水量が少なくてもサイホン作用を確実に発生させることができる。
また、本実施形態では、制御装置58により、第1及び第2の吐水口28,30からのリム吐水及びゼット穴32からのゼット吐水のそれぞれのタイミング、吐水量(分配比)を制御できるので、ゼット穴32からの吐水を第1及び第2の吐水口11,12からの吐水と同時に行うようにしても良い。
本発明の第1案施形態による水洗便器を示す縦断面図である。 図1に示す水洗便器の平面図である。 (a)〜(e)はそれぞれ図1のA−A線〜E−E線に沿って見た部分断面図である。 本発明の第1実施形態のボウル部(棚部)の位置を任意の位置♯0〜♯17により示した平面図(タンクは省略し図示せず)である。 (a)〜(f)は任意の位置で見た棚部を含むボウル部の部分断面図である。 本発明の第1実施形態における棚部の幅である棚幅を♯0〜♯17の位置に沿って示した線図である。 本発明の第1実施形態における棚部と汚物受け面の間の曲面の曲率を♯0〜♯17の位置に沿って示した線図である。 本発明の第1実施形態による旋回流の流れる様子を♯0〜♯17の位置に沿って示した平面図である。 本発明の第1実施形態による洗浄限界A、搬送限界B、及び、性能限界D等を示す図である。 本発明の第1実施形態におけるリム吐水量及びゼット吐水量の範囲を示す線図である。 本発明の第2実施形態によるハイブリット式の水洗便器を示す縦断面図である。
符号の説明
1 水洗便器
2 便器本体
4,40 洗浄水タンク
6 スカート部
8 ボウル部
10 導水路
10a 開口
12 排水路
12a 排水路入口
12b 上昇路
12c 下降路
14 汚物受け面
14a 乾燥面
16 リム
18 棚部
20 側壁
22 リム連通穴
22a 通水路
24 リム連通穴
24a 通水路
26 隔壁
28 第1の吐水口
30 第2の吐水口
32 ゼット穴
34 通水路
42 排水弁
44 鎖
46 電動モータ
47 洗浄スイッチ
48 水道配管
50 第1分岐管
52 第2分岐管
54、56 電磁弁
58 制御装置

Claims (5)

  1. 洗浄水タンク内に貯溜された所定の量の洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗便器であって、
    ボウル形状の汚物受け面と、上縁部でありその内周面が内方に向ってオーバーハングしたリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部とを備えたボウル部と、
    このボウル部の下方にその入口が接続され汚物をサイホン作用により排出する排水路と、
    上記排水路の入口に向って吐水するように設けられたゼット穴部と、
    上記ボウル部の前後方向を中心として一方の側の所定の位置に配置され上記棚部上に洗浄水を吐水し旋回流を形成する吐水部と、を有し、
    上記ボウル部の棚部は、上記吐水部から吐水された洗浄水の主流部が上記排水路の入口に向って流れ込むように、その幅が変化して形成されていることを特徴とする水洗便器。
  2. 上記ボウル部の棚部は、その幅が上記ボウル部の前後方向を中心として両側領域では広く形成されボウル部の前端領域では狭く形成されている請求項1項記載の水洗便器。
  3. 上記ボウル部の棚部は、下方に向って傾斜しその傾斜角が下方に向って0度〜15度の範囲内である請求項1又は請求項2記載の水洗便器。
  4. 上記ボウル部の棚部は、上記汚物受け面と所定の曲率により連続的に形成され、この曲率が上記ボウル部の前端から上記旋回流の下流の所定の位置までの領域で他の領域よりも大きく形成されている請求項1乃至3の何れか1項記載の水洗便器。
  5. 洗浄水タンクに貯溜された洗浄水及び水道配管から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗便器であって、
    ボウル形状の汚物受け面と、上縁部でありその内周面が内方に向ってオーバーハングしたリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部とを備えたボウル部と、
    このボウル部の下方にその入口が接続され汚物をサイホン作用により排出する排水管と、
    上記排水管の入口に向って上記洗浄水タンクの洗浄水を吐水するように設けられたゼット穴部と、
    上記ボウル部の前後方向を中心として一方の側の所定の位置に配置され上記棚部上に上記水道配管からの洗浄水を吐水し旋回流を形成する吐水部と、
    この吐水部からの吐水を上記ゼット穴部からの吐水とほぼ同時に行うか又はゼット穴部からの吐水よりも前に行う制御手段と、を有し、
    上記ボウル部の棚部は、上記吐水部から吐水された洗浄水の主流部が上記排水管の入口に向って流れ込むように、その幅が変化して形成されていることを特徴とする水洗便器。
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