JP2001152958A - ウォータジャケット入子の熱処理方法 - Google Patents
ウォータジャケット入子の熱処理方法Info
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Abstract
筒部では高い靭性を持ち、摩擦力が作用するために高い
硬度が要求される基部では高い硬度を持つウォータジャ
ケット入子を得る。 【課題を解決するための手段】ウォータジャケット入子
の全体を焼入れして摺動用貫通孔の孔壁に必要とされる
硬度に調整し、ついで筒部の反基部側を焼戻して溶湯に
接することで生じる熱応力によって破壊されない靭性に
調整する。
Description
産されるエンジンのシリンダブロック内に冷却水通路を
形成するために用いられるウォータジャケット入子を好
適に熱処理することによってウォータジャケット入子の
寿命を延ばす技術に関する。
ウォータジャケット入子は、シリンダ壁に沿って伸びる
冷却水通路を画定する筒部とその筒部に固定された基部
とその基部に形成された押出しピンの摺動用貫通孔を備
え、シリンダブロック鋳造用の金型内にセットされて用
いられる。ウォータジャケット入子とシリンダブロック
鋳造用金型がセットされた状態で溶湯が充填される。こ
のとき、溶湯が最初に筒部の先端(即ち反基部側)に接
触することから、反基部側の筒部先端に大きな熱応力が
発生し、繰返し使用しているうちに割れが発生し、これ
がウォータジャケット入子の寿命を決定する。充填され
た溶湯が凝固することで鋳造されたシリンダブロック
と、ウォータジャケット入子ないしシリンダブロック鋳
造用金型を分離する必要がある。このために、シリンダ
ブロック鋳造用金型に押出しピンが用意されており、こ
の押出しピンがウォータジャケット入子の基部に形成さ
れた摺動用貫通孔を摺動して型内に進出することで、鋳
造されたシリンダブロックとウォータジャケット入子等
が分離されるようにしている。このとき、押出しピンに
大きな力がかかるために、繰返し使用しているうちにウ
ォータジャケット入子の摺動用貫通孔の孔形状が広が
り、やがて摺動用貫通孔が押出しピンの側面を案内でき
なくなって押出しピンが折れやすくなってしまう。摺動
用貫通孔の孔形状が危険なほど広がることがウォータジ
ャケット入子の寿命を決定する。
ることを防止しようとするとウォータジャケット入子に
靭性が求められる。ウォータジャケット入子の摺動用貫
通孔の変形を防止しようとするとウォータジャケット入
子に硬度が求められる。しかしながら両要求を同時に満
たすことは困難で、靭性を確保しようとする硬度が確保
できず、硬度を確保しようとすると靭性が確保できな
い。現状では、ウォータジャケット入子の全体を、必要
とする靭性が確保される程度に焼入れし、その後に摺動
用貫通孔の孔壁を窒化処理して硬度を高めている。
窒化処理することで摺動用貫通孔の孔壁表面の硬度は確
保できるものの、その表面硬化層よりも深部では必要な
硬度が得られないために、繰返し使用しているうちに、
押出しピンが折れる危険が生じるほどに摺動用貫通孔が
広がることが避けられない。現状では、ウォータジャケ
ット入子の筒部先端で割れが生じるよりも先に、摺動用
貫通孔の拡大現象が生じることが多い。そこで、拡大し
た摺動用貫通孔に摺動案内用ブッシュを打込むことでウ
ォータジャケット入子の寿命の延長を図っているが、そ
の延命処理に多くの工数を費やしている。本発明では、
シリンダ壁に沿って伸びる冷却水通路を画定する筒部と
その筒部に固定された基部とその基部に形成された押出
しピンの摺動用貫通孔を備えたウォータジャケット入子
に対して、熱応力に耐える必要がある筒部先端では必要
な靭性が確保され、押出しピンの摺動に伴う磨耗等に耐
える必要がある摺動用貫通孔の孔壁では必要な硬度が確
保できるように熱処理する方法を実現する。
するウォータジャケット入子は、エンジンのシリンダブ
ロック内に冷却水通路を形成するためにシリンダブロッ
ク鋳造用金型内にセットされて用いられ、シリンダ壁に
沿って伸びる冷却水通路を画定する筒部とその筒部に固
定された基部とその基部に形成された押出しピンの摺動
用貫通孔を備えている。この発明のウォータジャケット
入子の熱処理方法は、ウォータジャケット入子の全体を
焼入れして前記摺動用貫通孔の孔壁に必要とされる硬度
に調整し、ついで前記筒部の反基部側を焼戻して溶湯に
接することで生じる熱応力によって破壊されない靭性に
調整することを特徴とする。この熱処理方法によると、
強い熱応力に曝される部位ではそれに耐えられる靭性を
持ち、強い耐磨耗性が必要とされる部位ではそのために
必要とされる硬度を持つウォータジャケット入子が得ら
れ、ウォータジャケット入子の寿命が延命される。
部分を焼戻して必要な靭性を確保する技術(特開平8-
60248号公報で従来技術として説明されている技
術)、あるいは、硬度を必要とする部分を局部的に焼入
れして必要な硬度を確保する技術(特開平8−6024
8号公報で提案された技術)が知られており、部分によ
って硬度と靭性が変化する鋳造用金型が得られるように
熱処理する技術が知られている。しかしながら、従来知
られている技術は、本発明とは逆に、溶湯に接して強い
熱応力を受ける部位で硬度を高めてヒートクラックの発
生を防止し、基部側では硬度を下げて靭性を確保するも
のであり、本発明とは全く逆の発想に基づくものであ
る。溶湯に最初に接することで強い熱応力を受ける部分
を局部的に焼戻して硬度を下げて靭性を回復させる本発
明の発想は、従来の熱処理技術が目指す方向とは全く逆
方向に向けた熱処理方法である。
の全体斜視図を示し、図2はその平面図を示し、図3
(A)は図2のIII−III線断面を示す。ウォータジャケ
ット入子2は薄壁状の筒部4と基部6とを備えている。
図示されているウォータジャケット入子2は4気筒エン
ジン用であり、筒部4は、鋳造されるエンジンのシリン
ダブロックの中に各シリンダの壁に沿って伸びる冷却水
通路を画定ないし形成する。基部6は筒部4の下端部に
固定され、図示されていないシリンダブロック鋳造用金
型内にウォータジャケット入子2をセットするために用
いられる。基部6には各シリンダに対応して大きな開口
8が設けられているほか、複数個所に貫通孔10が形成
されている。図示されていないシリンダブロック鋳造用
金型には、貫通孔10に対応する位置に押出しピン16
が進退可能にセットされており、金型内に充填した溶湯
が凝固してシリンダブロックが鋳造された後に押出しピ
ン16が金型内に進出し、鋳造されたシリンダブロック
をシリンダブロック鋳造用金型とウォータジャケット入
子2から押出す。図3(A)は、1本の押出しピン16
のみが進出している様子を示しているが、実際にはすべ
ての貫通孔10から押出しピン16が同時に進出する。
ク鋳造用金型とウォータジャケット入子2から鋳造品を
押出すのに大きな力が必要とされ、これが押出しピン1
6を撓ませたり曲げたりする。ウォータジャケット入子
2の貫通孔10は押出しピン16を側方から支えて撓み
や曲げの発生を抑制する。即ち、押出しピン16と貫通
孔10の直径はほぼ等しく、貫通孔10の孔壁が押出し
ピン16の側面に接して押出しピン16が進退する際に
押出しピン16が貫通孔10の孔壁を摺動する。押出し
ピン16が貫通孔10の孔壁に接して撓みや曲げの発生
が抑制された状態で前進することから、貫通孔10の孔
壁には強大な摩擦力が作用する。貫通孔10の孔壁の強
度が不充分であると、貫通孔10の孔壁が短期間に磨耗
したり、あるいは、押出しピン16の撓みや曲げや倒れ
等に起因して口径が広がってしまう。口径が広がってし
まうと貫通孔10の孔壁が押出しピン16の撓みや曲が
りや倒れを抑制する事ができなくなり、押出しピン16
が折れ易くなってしまう。こうなるともはやそのウォー
タジャケット入子2は使用できなくなる。実用的な寿命
を得るためには、貫通孔10の孔壁の硬度がロックウェ
ル硬さでHRC45以上が必要とされる。
はシリンダブロック鋳造用金型内にセットされた状態で
溶湯に曝される。金型内に充填される溶湯は最初にウォ
ータジャケット入子2の筒部4の頂面4aに接すること
から、この筒部4の頂面4aと先端部4bに強い熱応力
が加えられる。繰返し熱応力が加えられることによって
頂部4aと先端部4bにヒビが入り易く、ヒビが入って
しまうともはやそのウォータジャケット入子2は使用で
きなくなる。実用的な寿命を得るためには、頂面4aや
先端部4bでの硬度がロックウェル硬さでHRC40以
下で十分な靭性を有することが必要とされる。
上であり、頂面4aと先端部4bでロックウェル硬さで
HRC40以下であるウォータジャケット入子2を得る
ために、本実施の形態では次のステップを行う。
ジャケット入子2を得る。次に粗加工されたウォータジ
ャケット入子2の全体を焼入れしてウォータジャケット
入子2の表面全体をHRC45の硬度に硬化させる。次
に筒部4のみを塩浴に浸漬してHRC40の硬度に焼戻
して頂面4aと先端部4bに必要な靭性を回復させる。
以上の熱処理工程の完了後に仕上加工する。最後に摺動
用貫通孔10の壁を窒化処理して硬度を上げる。以上の
処理を経ることによって寿命が長く形状精度の高いウォ
ータジャケット入子2が得られる。
硬度に焼戻すと、素材が体積変化して基部6と筒部4の
間に段差ができる。しかしこの段差は小さく、仕上加工
の際に除去され、形状精度を損ねない。また、焼戻しの
ために塩浴に浸漬することで表面が酸化したり変質した
りする。しかしこのような変質層の厚みは0.2mmにみた
ず、仕上加工の際に除去されてしまう。
分布を図3(B)に示す。都合の良いことに、頂面4a
と先端部4bでは硬度が一様に低下しており、無用な熱
応力が発生せず、応力集中を招くこともなく、必要とす
る靭性が回復されていることとあいまって長期間に亘っ
てヒビを生じさせない。この実施の態様では、図3
(A)のレベル12以上、即ち筒部4の全体を塩浴に浸
漬して焼戻したが、筒部4の全体を焼戻すのでなく、図
3(A)に例示されるように、筒部4の中間高さ14以上
を塩浴に浸漬して焼戻しても良い。
めに高い靭性が要求される部位では高い靭性を持ち、摩
擦力が作用するために高い硬度が要求される部位では高
い硬度を持つウォータジャケット入子が作成されること
から、ウォータジャケット入子の寿命が大幅に延命され
る。
理されたウォータジャケット入子の硬度分布図。
Claims (1)
- 【請求項1】 エンジンのシリンダブロック内に冷却水
通路を形成するためにシリンダブロック鋳造用金型内に
セットされて用いられ、シリンダ壁に沿って伸びる冷却
水通路を画定する筒部とその筒部に固定された基部とそ
の基部に形成された押出しピンの摺動用貫通孔を備えた
ウォータジャケット入子の熱処理方法であり、 そのウォータジャケット入子の全体を焼入れして前記摺
動用貫通孔の孔壁に必要とされる硬度に調整し、 ついで前記筒部の反基部側を焼戻して溶湯に接すること
で生じる熱応力によって破壊されない靭性に調整するこ
とを特徴とするウォータジャケット入子の熱処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33226599A JP3649066B2 (ja) | 1999-11-24 | 1999-11-24 | ウォータジャケット入子の熱処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JP2001152958A true JP2001152958A (ja) | 2001-06-05 |
JP3649066B2 JP3649066B2 (ja) | 2005-05-18 |
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JP33226599A Expired - Fee Related JP3649066B2 (ja) | 1999-11-24 | 1999-11-24 | ウォータジャケット入子の熱処理方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006212655A (ja) * | 2005-02-02 | 2006-08-17 | Daihatsu Motor Co Ltd | 冷却穴付き鋳抜ピンおよびその製造方法 |
CN105385814A (zh) * | 2015-12-17 | 2016-03-09 | 二重集团(德阳)重型装备股份有限公司 | 加氢反应器筒节锻件的热处理方法 |
-
1999
- 1999-11-24 JP JP33226599A patent/JP3649066B2/ja not_active Expired - Fee Related
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CN105385814A (zh) * | 2015-12-17 | 2016-03-09 | 二重集团(德阳)重型装备股份有限公司 | 加氢反应器筒节锻件的热处理方法 |
CN105385814B (zh) * | 2015-12-17 | 2017-08-25 | 二重集团(德阳)重型装备股份有限公司 | 加氢反应器筒节锻件的热处理方法 |
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