JP2001152353A - 非導電性プラスチックへの電気めっき方法 - Google Patents

非導電性プラスチックへの電気めっき方法

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JP2001152353A
JP2001152353A JP33576799A JP33576799A JP2001152353A JP 2001152353 A JP2001152353 A JP 2001152353A JP 33576799 A JP33576799 A JP 33576799A JP 33576799 A JP33576799 A JP 33576799A JP 2001152353 A JP2001152353 A JP 2001152353A
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plating
copper
compound
electroless
film
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English (en)
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Mitsue Nishimura
美津恵 西村
Kuniaki Otsuka
邦顕 大塚
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Okuno Chemical Industries Co Ltd
Original Assignee
Okuno Chemical Industries Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】非導電性プラスチックに対して、簡単な処理工
程によって外観や物性に優れた電気めっき皮膜を形成で
きる方法を提供する。 【解決手段】貴金属化合物と第一錫化合物を含有するコ
ロイド溶液を用いて非導電性プラスチックに無電解めっ
き用触媒を付与した後、エチレングリコール、グリセリ
ン及びエリスリトールから選ばれた少なくとも一種の多
価アルコール化合物、銅化合物、錯化剤、並びにアルカ
リ金属水酸化物を含有する無電解銅めっき液を用いて導
電性皮膜を形成し、次いで電気めっきを行うことを特徴
とする非導電性プラスチックへの電気めっき方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非導電性プラスチ
ックへの電気めっき方法、及び該めっき方法での使用に
適する無電解銅めっき液に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、非導電性プラスチック成形品に装
飾電気めっき皮膜を形成する方法としては、脱脂、エッ
チングを行った後、必要に応じて、中和及びプリディッ
プを行い、次いで、錫化合物及びパラジウム化合物を含
有するコロイド溶液を用いて無電解めっき用触媒を付与
し、その後必要に応じて活性化処理(アクセレーター処
理)を行った後、無電解めっき及び電気めっきを順次行
う方法が広く行われている。
【0003】この様なめっき方法では、通常、無電解め
っき液としては、パラホルムアルデヒドなどの強い還元
力を持つ還元剤を含有する無電解銅めっき液を用いるこ
とが多いが、この様な無電解銅めっき液を用いる場合に
は、めっきの初期には、触媒として付着させた錫・パラ
ジウムコロイド皮膜の内で、強い触媒能を有するパラジ
ウムの上に銅が析出するものの、その後強い還元力を有
する還元剤の働きにより銅の還元析出が継続して生じ、
パラジウムの付着した部分だけではなく、横方向にも銅
皮膜が成長して、本来触媒能を持たない錫の上にも皮膜
が析出する所謂ブリッジ析出が生じて、スポンジ状の皮
膜が形成され易くなる。そして、この様なブリッジ析出
が生じた無電解めっき表面に電気めっきを行うと、スタ
ーダストと称される部分的な細かいピット状の集合体が
多数析出し、不均一なめっき皮膜となり易く、金属素材
上にめっき皮膜を形成した場合と比較すると外観が劣る
場合が多い。
【0004】この様な外観不良を防止するために、無電
解銅めっきを行った後、電気めっきの前に、被めっき物
の表面を刷毛でブラッシングする工程が取り入れられて
いるが、この様な方法では、処理工程が煩雑になるとい
う欠点がある。
【0005】更に、上記無電解銅めっき液では、還元剤
として配合したパラホルムアルデヒドが毒性が高く、発
ガン性物質の疑いもある物質であり、また、銅イオンを
可溶化させるためにEDTA等の強力な錯化剤を使用し
ているために、廃液処理において金属イオンの除去に相
当の労力を要するという問題点等もある。
【0006】無電解銅めっきに代えて無電解ニッケルめ
っきを行う場合には、ブリッジ析出が少なくスターダス
トが発生し難いために、無電解銅めっきを行う場合と比
べて良好な外観の電気めっき皮膜を形成できるが、無電
解銅めっき液の場合と比較すると多量の触媒を付着させ
る必要があり、コストが高くなるという欠点がある。更
に、無電解ニッケルめっきを行った後、電気銅めっきを
行う方法では、銅皮膜よりもニッケル皮膜の方が卑な電
位を有する為に、電池作用によってニッケルの腐食が進
行して、めっき層が素地から剥離して、腐食ふくれが生
じやすいという問題点がある。
【0007】又、貴金属を含有するコロイド溶液に浸漬
して被処理物に貴金属のコロイド皮膜を付着させた後、
無電解めっきを行うことなく、電気めっきを直接行なう
方法も知られているが(特開平3−367393号
等)、この方法では、皮膜の導電性が不十分で電気めっ
きの析出速度が非常に遅いために、面積の大きなプラス
チック成形品などに電気めっきを行う場合には、給電部
に大きな面積を必要とする上に、全面を被覆するために
かなりの時間を要し、均一なめっき皮膜を形成すること
は非常に難しい。しかも処理条件が極めて狭い範囲に限
定されるので、処理液や作業条件の管理が非常に煩雑で
ある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主な目的は、
非導電性プラスチックに対して、簡単な処理工程によっ
て、外観や物性に優れた電気めっき皮膜を形成できる方
法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した如
き従来技術の課題に鑑みて鋭意研究を重ねてきた。その
結果、非導電性プラスチックスに無電解めっき用の触媒
を付与した後、特定の多価アルコール化合物を還元剤と
して含有する新規な組成の無電解銅めっき液を用いて無
電解めっきを行うことにより、ブリッジ析出を生じるこ
となく良好な導電性を有する皮膜を形成でき、この上に
直接電気めっきを行うことによって、非常に優れた外観
の装飾めっき皮膜を簡単に形成できることを見出した。
又、この方法で用いる無電解銅めっき液は、比較的還元
力が弱い特定の化合物を還元剤として含有するものであ
るために、安定性が良好で浴管理が容易であり、しか
も、錯化力が比較的低い錯化剤も使用できるので、析出
性が良好で排水処理が容易となる等の優れた特性を発揮
できることを見出し、ここに本発明を完成するに至っ
た。
【0010】即ち、本発明は、下記の非導電性プラスチ
ックへの電気めっき方法、及び無電解銅めっき液を提供
するものである。 1.貴金属化合物と第一錫化合物を含有するコロイド溶
液を用いて非導電性プラスチックに無電解めっき用触媒
を付与した後、エチレングリコール、グリセリン及びエ
リスリトールから選ばれた少なくとも一種の多価アルコ
ール化合物、銅化合物、錯化剤、並びにアルカリ金属水
酸化物を含有する無電解銅めっき液を用いて導電性皮膜
を形成し、次いで電気めっきを行うことを特徴とする非
導電性プラスチックへの電気めっき方法。 2.無電解銅めっき液が、エチレングリコール、グリセ
リン及びエリスリトールから選ばれた少なくとも一種の
多価アルコール化合物を5〜300g/l、銅化合物を
銅金属量として0.2〜2g/l、錯化剤を2〜50g
/l、並びにアルカリ金属水酸化物を30〜130g/
l含有する水溶液である上記項1に記載の方法。 3.無電解銅めっき処理における無電解銅めっき液のp
Hが10以上であり、無電解銅めっき液の液温が20〜
70℃である上記項1又は2に記載の方法。 4.エチレングリコール、グリセリン及びエリスリトー
ルから選ばれた少なくとも一種の多価アルコール化合物
を5〜300g/l、銅化合物を銅金属量として0.2
〜2g/l、錯化剤を2〜50g/l、並びにアルカリ
金属水酸化物を30〜130g/l含有する水溶液から
なる無電解銅めっき液。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明方法では、処理対象となる
非導電性プラスチックの種類や形状については、特に限
定はない。例えば、表面積の広い大型の被処理物に対し
ても、装飾性に優れた良好な電気めっき層を簡単に形成
することが可能であり、自動車業界などにおいて近年広
く採用されている各種のプラスチック部品も処理対象物
とすることができる。この様な大型のプラスチック材料
としては、例えば、フロントグリル、エンブレムなどの
各種自動車用部品、電子関連の外装品、ツマミなどの各
種装飾めっき用部品、耐食性・機能性めっき用部品など
を挙げることができる。
【0012】プラスチック材料の材質についても特に限
定はなく、従来から知られている各種のプラスチック材
料を処理対象とすることができる。例えば、従来から化
学めっき用として広く用いられているABS樹脂などの
汎用プラスチック、耐熱温度150℃以下のポリアミド
(ナイロンPA)、ポリアセタール(POM)、ポリカ
ーボネート(PC)、変成ポリフェニレンエーテル(P
PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの
汎用エンジニアリングプラスチック、耐熱温度200℃
を越えるポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリ
エーテルサルホン(PES)、ポリエーテルイミド(P
EI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポ
リイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)などのスー
パーエンジニアニングプラスチック、ポリカーボネート
/ABSなどのポリマーアロイ等を処理対象とすること
ができる。これらのプラスチック材料の内では、エッチ
ング処理等の前処理によって密着性とめっき外観を損な
わないよう工夫されたABS樹脂等のめっき用グレード
のプラスチック材料が、特に好適に用いられる。
【0013】本発明のめっき方法では、まず、前処理と
して、常法に従って、指紋、油脂等の有機物、静電気作
用による塵等の付着物等を除去するために、被処理物の
表面を清浄化する。処理液としては、公知の脱脂剤を用
いればよく、例えば、アルカリタイプの脱脂剤等を使用
して、常法に従って脱脂処理等を行えばよい。
【0014】次いで、必要に応じて、被処理物の表面を
エッチングする。この工程は、選択的に樹脂表面を溶解
してアンカー効果を生じさせるものであり、この処理に
より、めっき皮膜の密着性、外観等を向上させることが
できる。エッチングは、常法に従って行えば良く、例え
ば、クロム酸と硫酸の混合溶液を用い、適度に加温した
溶液中に被処理物を浸漬すればよい。ABS樹脂を被処
理物とする場合には、エッチング処理によって構成成分
のポリブタジエンがクロム酸の酸化作用により溶出し、
樹脂表面に孔径1〜2μm程度のアンカー部が形成さ
れ、また、ポリブタジエンが酸化分解し、カルボニル基
などの極性基が付与され、後工程における貴金属化合物
及び第一錫化合物を含有するコロイド溶液の吸着が容易
になる。
【0015】汎用エンジニアリングプラスチックやスー
パーエンジニアリングプラスチックを被処理物とする場
合には、エッチングが困難な場合が多いので、エッチン
グの前に、必要に応じて、常法に従ってプリエッチング
処理を行うことが好ましい。プリエッチング処理は、樹
脂表面のスキン層や結晶の配向層を有機溶剤で膨潤させ
るものであり、通常、ジメチルスルホキサイド等の極性
の高い溶剤を用いて行なうことができる。この処理を行
なうことによって、エッチングの効果を向上させること
ができる。
【0016】また、無機物やガラス繊維などを充填した
樹脂についても、常法に従って適切なエッチング方法を
選定すればよい。
【0017】次に、樹脂表面に残存するクロム酸等のエ
ッチング液を除去するために洗浄を行う。この場合、希
薄塩酸溶液や重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を含有す
る溶液を用いて洗浄処理を行なうことによって、樹脂表
面に残存するクロム酸の除去が容易になる。
【0018】次いで、無電解めっき用の触媒液として、
貴金属化合物及び第一錫化合物を含有するコロイド溶液
を用いて、被処理物に無電解めっき用触媒を付与する。
触媒液として用いるコロイド溶液としては、無電解めっ
き用の触媒液として公知のものを使用できる。この様な
公知の触媒液は、通常、無電解めっきに対する触媒能を
有する化合物として知られている白金化合物、金化合
物、パラジウム化合物、銀化合物等の貴金属化合物を含
有するものである。この様な触媒液に配合される白金化
合物の具体例としては塩化白金塩等、金化合物の具体例
としては塩化金塩、亜硫酸金塩等、パラジウム化合物の
具体例としては塩化パラジウム、硫酸パラジウム等、銀
化合物の具体例としては硝酸銀、硫酸銀等を挙げること
ができる。貴金属化合物は、一種単独又は二種以上混合
して用いることができる。本発明では、特に、貴金属化
合物としてパラジウム化合物を含有する触媒液を用いる
ことが好ましい。また、上記コロイド溶液に配合する第
一錫化合物としては、塩化第一錫、硫酸第一錫等が好ま
しく、これらを一種単独又は二種以上混合して用いるこ
とができる。
【0019】触媒液として用いるコロイド溶液は、通
常、貴金属化合物を金属量として100〜500mg/
l程度含有し、第一錫化合物を錫金属量として10〜5
0g/l程度含有するpH1程度以下の強酸性溶液であ
り、特に、パラジウム化合物をパラジウム金属量として
150〜300mg/l程度含有し、第一錫化合物を錫
金属量として10〜22g/l程度含有する塩酸溶液が
好ましい。
【0020】上記コロイド溶液による処理方法として
は、通常、10〜50℃程度、好ましくは、25〜45
℃程度のコロイド溶液中に、被処理物を2〜20分程
度、好ましくは3〜10分程度浸漬すればよい。この処
理により、被処理物の表面に均一な触媒膜を付着させる
ことができる。
【0021】次いで、触媒を付与した被処理物に、無電
解銅めっき液を用いて導電性を有する皮膜を形成する。
【0022】本発明方法では、この工程において、エチ
レングリコール、グリセリン及びエリスリトールから選
ばれた少なくとも一種の多価アルコール化合物、銅化合
物、錯化剤、並びにアルカリ金属水酸化物を含有する無
電解銅めっき液を用いることが必要である。この無電解
銅めっき液に配合するエチレングリコール、グリセリン
及びエリスリトールから選ばれた少なくとも一種の多価
アルコール化合物は、還元剤として作用するものであ
り、この様な特定の化合物を還元剤として用いることに
よって、ブリッジ析出が生じることなく被処理物の表面
に極薄い膜厚の導電性皮膜を形成することが可能とな
る。これは、次の様な析出機構によるものと推定され
る。
【0023】即ち、該無電解銅めっき液では、還元剤と
して用いる上記した特定の多価アルコール化合物は、他
の多価アルコール化合物、例えば、プロピレングリコー
ルやトリエチレングリコール等と比べると良好な還元力
を有するものであるが、従来の無電解銅めっき液で用い
られているパラホルムアルデヒド等の還元剤と比べると
還元力がかなり弱く、このために、触媒金属であるパラ
ジウム上にのみ極薄い銅皮膜が還元析出し、触媒能を有
さない錫上には銅皮膜が還元析出することがなく、ブリ
ッジ析出を防止できる。そして、被処理物上に付着した
完全には金属化されていない錫塩は、無電解めっき液に
より部分的に還元されると共に部分的に溶解し、金属化
している錫は銅と置換して銅が被処理部上に析出し、そ
れと同時に溶出した錫は錯化剤により錯化されて安定化
されるものと考えられる。
【0024】本発明方法で用いる無電解銅めっき液にお
いて、エチレングリコール、グリセリン及びエリスリト
ールから選ばれた少なくとも一種の多価アルコール化合
物の配合量は、5〜300g/l程度とすることが適当
である。これらの多価アルコール化合物の配合量が少な
すぎると銅の析出量が不足して十分な導電性を有する皮
膜を形成できない。一方、配合量が多すぎると、形成さ
れる導電性膜の電気抵抗が上昇し、電気めっきの析出性
が低下するので好ましくない。上記多価アルコール化合
物は、特に、良好な導電性を有する皮膜を形成するため
には、5〜100g/l程度の配合量とすることが好ま
しい。また、10〜300g/l程度の配合量とする場
合には、若干導電性が低下する場合があるが、本発明方
法において使用は可能であり、また、銅の析出量が増加
するため、形成される皮膜は無電解銅めっき皮膜として
各種の用途に有効に利用できる。
【0025】本発明方法で用いる無電解銅めっき液で
は、多価アルコール化合物としては、特に、エチレング
リコール及びグリセリンから選ばれた少なくとも一種の
化合物を用いることが好ましい。この様な化合物を用い
ることによって、特に良好な導電性を有する皮膜を形成
できる。
【0026】該無電解銅めっき液に配合する銅化合物と
しては、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、酸化銅、水酸化銅等
を使用できる。銅化合物の含有量は、銅金属量として
0.2〜2g/l程度、好ましくは0.8〜1.2g/
l程度とすればよい。銅金属量が0.2g/lを下回る
と、無電解銅めっき皮膜の形成が不十分となり、次工程
での電気めっきの析出が悪くなるので好ましくない。一
方、銅金属量が2g/lを上回ると、銅濃度を上げた効
果がなく、銅濃度に比例して必要な錯化剤量が増加し、
経済的に不利であり、排水処理性も悪くなる。
【0027】該無電解銅めっき液に配合する錯化剤とし
ては、ヒダントイン類、有機カルボン酸類等を用いるこ
とができる。ヒダントイン類の具体例としては、ヒダン
トイン、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒ
ダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、アラント
イン等を挙げることができ、有機カルボン酸類の具体例
としては、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸及び
これらの塩類等を挙げることができる。錯化剤は、一種
単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0028】錯化剤の配合量は、2〜50g/l程度、
好ましくは、10〜30g/l程度とすればよい。配合
量が2g/l未満では錯化力が不十分となって銅の溶解
力が不足するので好ましくない。一方、50g/lを上
回ると、銅の溶解性は向上するが、経済的に不利であ
り、排水処理性も悪くなるので好ましくない。
【0029】これらの錯化剤の内で、ヒダントイン類
は、比較的弱い錯化力を有する錯化剤であるが、本発明
で用いる無電解銅めっき液では使用可能である。ヒダン
トイン類を錯化剤として用いる場合には、析出性が良好
で排水処理も容易になる。
【0030】上記無電解銅めっき液には、更に、アルカ
リ金属水酸化物を配合することが必要である。アルカリ
金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム等を使用できる。これらの内で、
特に、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムについては、
入手の容易性、コスト面等で有利であり、更に、炭酸塩
となって処理槽に固着することが少なく、濾過機等設備
の故障につながる恐れが少ないという利点もある。アル
カリ金属水酸化物は、一種単独又は適宜混合して用いる
ことができる。アルカリ金属水酸化物の配合量は、30
〜130g/l程度とし、好ましくは50〜80g/l
程度とする。アルカリ金属水酸化物の配合量が30g/
l未満では、無電解銅めっき皮膜の形成が不十分であ
り、次工程での電気めっきにおいて、低電流密度域のめ
っきの析出性が悪くなるので好ましくない。一方、アル
カリ金属水酸化物の配合量が130g/lを上回ると、
濃度の上昇に従って銅の溶解性が低下し、めっき液の安
定性が悪くなるので好ましくない。
【0031】尚、該無電解銅めっき液では、上記した各
成分の配合割合の範囲内において、めっき浴のpHが1
0以上となるように、使用成分の組み合わせ、具体的な
配合割合などを適宜調整することが好ましい。pHの上
限値については、上記した各成分の配合量範囲内であれ
ば特に限定はない。より好ましくは、該無電解銅めっき
液のpHは、12〜14程度とする。
【0032】上記無電解めっき液には、更に、必要に応
じて、安定剤として黄血塩、ロダン塩等を配合できる
が、特に、該無電解めっき液は、安定性が非常に良好で
あるので、安定剤を使用しないか、又は安定剤を使用す
る場合にも、非常に弱い安定剤、例えばチオジグリコー
ル酸等を0.1〜10mg/l程度添加するだけで良好
な浴安定性を維持することができる。
【0033】無電解めっき液による処理工程では、無電
解銅めっき液の液温を、20〜70℃程度、好ましくは
35〜50℃程度とし、このめっき液中に被処理物を1
分〜20分程度、好ましくは3〜15分程度浸漬すれば
よい。めっき液の液温が20℃未満では無電解めっき皮
膜の形成が不十分であり、一方70℃を上回るとめっき
液の安定性が低下するので好ましくない。また、めっき
液中への浸漬時間が1分未満では、無電解銅めっき皮膜
の形成が不十分であり、一方、20分を上回っても、最
適範囲以上の効果が認められず、生産性が低下するので
好ましくない。
【0034】この工程により、非処理物の表面に非常に
薄い膜厚の導電性皮膜が形成され、この皮膜上に直接電
気めっきを行うことが可能となる。
【0035】次いで、常法に従って被処理物を電気めっ
き処理に供する。電気めっき浴の種類は、特に限定され
るものではなく、従来公知のいずれの電気めっき浴も使
用可能である。又、めっき処理の条件も常法に従えばよ
い。
【0036】電気めっき処理の例として、銅めっき、ニ
ッケルめっき、及びクロムめっきを順次行うことによる
装飾用電気めっきプロセスについて具体的に説明する。
【0037】硫酸銅めっき液としては、公知の光沢硫酸
銅めっき液を用いることができる。例えば、硫酸銅10
0〜250g/l程度、硫酸20〜120g/l程度、
及び塩素イオン20〜70mg/l程度を含有する水溶
液に、公知の光沢剤を添加しためっき浴を使用できる。
硫酸銅めっきの条件は、通常と同様で良く、例えば、液
温25℃程度、電流密度3A/dm2程度でめっきを行
い、所定の膜厚までめっきを行えばよい。
【0038】ニッケルめっき液としては、通常のワット
浴を用いることができる。すなわち、硫酸ニッケル20
0〜350g/l程度、塩化ニッケル30〜80g/l
程度、及びホウ酸20〜60g/l程度を含有する水溶
液に、市販のニッケルめっき浴用光沢剤を添加したもの
を使用できる。めっき条件は 通常と同様で良く、例え
ば、液温55〜60℃程度、電流密度3A/dm2程度
で電解して所定の膜厚までめっきすればよい。
【0039】クロムめっき液としては、通常のサージェ
ント浴を用いることができる。すなわち、無水クロム酸
200〜300g/l程度、及び硫酸2〜5g/l程度
を含有する水溶液を使用でき、めっき条件は、液温45
℃程度、電流密度20A/dm2程度として所定の膜厚
までめっきを行えばよい。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、下記の如き顕著な効果
が奏功される。 (1)本発明のめっき方法によれば、従来のプラスチッ
ク上へのめっき方法の無電解めっき工程において生じ易
かったブリッジ析出がないので、ブラッシングなどの煩
雑な処理を要することなく、スターダストのない良好な
外観の電気めっき皮膜を形成できる。 (2)本発明で用いる無電解めっき液によって形成され
る皮膜は、適度で良好な導電性を有するものであり、こ
の皮膜上には短時間で均一な電気めっき皮膜を形成でき
る。このため、大型の被処理物に対しても、簡単なめっ
き方法で良好な外観の電気めっき皮膜を形成できる。 (3)従来のめっき方法において触媒の付与後に行われ
ることの多かった活性化処理(アクセレーター処理)を
行なう必要がないので、処理工程が簡略化される。 (4)無電解めっき液として無電解ニッケルめっき液を
用いた場合に生じやすい腐食ふくれの発生を防止でき
る。 (5)本発明の方法で用いる無電解銅めっき液は、還元
力が比較的弱い特定の多価アルコールを還元剤として含
有するために、めっき液が分解し難く安定性が良好であ
り、従来の無電解めっき液に配合されている安定剤を使
用しないか、又は安定剤を使用する場合にも、非常に弱
い安定剤で十分な効果を得ることができる。このため、
安定剤の過剰によるめっき停止や安定剤の不足によるめ
っき液の分解が生じ難く、めっき液の管理が容易であ
る。 (6)該無電解銅めっき液は、本発明のめっき方法で用
いる他に、その優れた特性を利用して、例えば、セラミ
ックス類上への電気めっきの前処理としても有効に利用
できる。
【0041】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明する。 実施例1 被処理物として、17cm×3.8cm×厚さ0.3c
m、表面積約1.3dm2のABS樹脂製(三菱レイヨ
ン(株)製、3001M)の自動車用エンブレムを用い
た。めっき用治具としては、被処理物との接点部位2カ
所、接点間隔11cmで、接点部がφ2mmのステンレ
ス棒からなり、接点以外は塩化ビニル製ゾルで焼き付け
コーティングした治具を用いた。
【0042】まず、治具にセットした被処理物を、アル
カリ系脱脂剤溶液(奥野製薬工業(株)製:エースクリ
ーンA−220、50g/l水溶液)中に50℃で5分
間浸漬し、水洗した後、無水クロム酸400g/l及び
硫酸400g/lを含有する水溶液からなるエッチング
溶液中に67℃で10分浸漬して、樹脂表面を粗化し
た。その後、被処理物を水洗し、35%塩酸50ml/
lと還元剤(商標:トップキャッチCR−200、奥野
製薬工業(株)製)10ml/lを含有する水溶液に2
5℃で1分間浸漬し、樹脂表面に付着したクロム酸を除
去し、充分に水洗した。
【0043】次に、プリディップ処理として、35%塩
酸250ml/lを含有する水溶液に被処理物を25℃
で1分間浸漬した後、塩化パラジウム0.32g/l
(Pdとして0.19g/l)、塩化第一錫29g/l
(Snとして15.3g/l)、35%塩酸300ml
/lを含有するpH1以下のコロイド溶液中に、30℃
で6分間浸漬して、被処理物に触媒を付着させた。
【0044】その後、水洗し、硫酸銅4g/l、クエン
酸15g/l、水酸化ナトリウム66g/l及びグリセ
リン40g/lを含むpH13.7の水溶液からなる無
電解銅めっき液中に、浴温45℃で5分間被処理物を浸
漬して導電性皮膜を形成した。
【0045】その後充分水洗し、電気銅めっきに移行し
た。電気銅めっき液としては、硫酸銅200g/l、硫
酸50g/l及び塩素イオン50mg/lを含有する水
溶液に、光沢剤として奥野製薬工業(株)製のCRPカ
ッパーMU:5ml/l及びCRPカッパーA:0.5
ml/lを添加しためっき液を用い、含リン銅板を陽極
とし、被めっき品を陰極として、ゆるやかなエアー攪拌
を行いながら、液温25℃、電流密度3A/dm2でめ
っきを開始した。めっき開始後約50秒で銅めっき皮膜
により被処理物の全面が被覆され、その後、継続して5
0分間めっきを行なって、約30μmの銅めっき皮膜を
形成した。
【0046】次に、被処理物を水洗し、活性化剤(商
標:トップサン、奥野製薬工業(株)製、50g/l水
溶液)に25℃で1分間浸漬した。その後よく水洗し、
電気ニッケルめっきを行った。電気ニッケルめっき液と
しては、硫酸ニッケル280g/l、塩化ニッケル50
g/l、及びホウ酸40g/lを含有する水溶液に、光
沢剤として奥野製薬工業(株)製のアクナB−1:20
ml/l、アクナB−2:1ml/lを添加しためっき
液を用い、ゆるやかなエアー攪拌を行いながら、液温5
5℃、電流密度3A/dm2で20分間電気ニッケルめ
っきを行い、約10μmのニッケルめっき皮膜を形成し
た。
【0047】次に、水洗後、クロムめっきを行った。ク
ロムめっき液としては、無水クロム酸250g/l及び
硫酸2.5g/lを含有する水溶液を用い、鉛板を陽極
とし、被めっき品を陰極として、液温45℃、電流密度
20A/dm2で無攪拌で3分間めっきを行った。
【0048】この様にして形成されためっき皮膜は、低
電流部、高電流部共に均一であり、ピット、ザラ等がな
い、光沢を有する良好な外観であった。 実施例2〜7及び比較例1〜2 実施例1と同様の被処理物と治具を用い、触媒付与工程
までを実施例1と同様にして行った。
【0049】その後、下記表1に示す各無電解銅めっき
液を用い、浴温45℃、浸漬時間3分で導電性皮膜を形
成した。その後、水洗し、実施例1と同様の条件で電気
銅めっきを行った。
【0050】
【表1】
【0051】形成された銅めっき皮膜の被覆率及び外観
を下記の方法で評価した。又、使用した各無電解銅めっ
き液の浴安定性を下記の方法で評価した。 1)被覆率: めっき皮膜により被覆されているテスト
ピース表面の面積割合を求めた。 2)めっき外観:目視でテストピース表面を観察し、次
の基準で評価した。
【0052】 ○:ピット、ザラなく良好 ×:ザラ発生 3)浴安定性:45℃加温して24時間放置後の浴安定
性を調べた。
【0053】 ○:変化なし ×:銅沈澱発生
【0054】
【表2】
【0055】実施例8〜11及び比較例3〜4 実施例1と同様の被処理物と治具を用い、触媒付与工程
までを実施例1と同様にして行った。
【0056】その後、下記表3に示す各無電解銅めっき
液を用い、浴温45℃、浸漬時間3分で導電性皮膜を形
成した後、水洗し、実施例1と同様の条件で電気銅めっ
きを行った。
【0057】
【表3】
【0058】形成された銅めっき皮膜の被覆率及び外観
を実施例2〜7と同様の方法で評価し、更に、銅めっき
皮膜の比抵抗を測定した。結果を下記表4に示す。
【0059】
【表4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C25D 5/56 C25D 5/56 A 7/00 7/00 P Fターム(参考) 4K022 AA13 AA14 AA47 BA08 CA06 CA18 CA20 CA21 DA01 DB01 DB07 DB24 4K023 AA11 AA12 AA19 BA01 BA06 BA08 4K024 AA02 AA03 AA09 AB04 AB17 BA12 BB20 GA02 4K044 AA16 BA02 BA06 BB05 BC09 CA16 CA18

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】貴金属化合物と第一錫化合物を含有するコ
    ロイド溶液を用いて非導電性プラスチックに無電解めっ
    き用触媒を付与した後、エチレングリコール、グリセリ
    ン及びエリスリトールから選ばれた少なくとも一種の多
    価アルコール化合物、銅化合物、錯化剤、並びにアルカ
    リ金属水酸化物を含有する無電解銅めっき液を用いて導
    電性皮膜を形成し、次いで電気めっきを行うことを特徴
    とする非導電性プラスチックへの電気めっき方法。
  2. 【請求項2】無電解銅めっき液が、エチレングリコー
    ル、グリセリン及びエリスリトールから選ばれた少なく
    とも一種の多価アルコール化合物を5〜300g/l、
    銅化合物を銅金属量として0.2〜2g/l、錯化剤を
    2〜50g/l、並びにアルカリ金属水酸化物を30〜
    130g/l含有する水溶液である請求項1に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】無電解銅めっき処理における無電解銅めっ
    き液のpHが10以上であり、無電解銅めっき液の液温
    が20〜70℃である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 【請求項4】エチレングリコール、グリセリン及びエリ
    スリトールから選ばれた少なくとも一種の多価アルコー
    ル化合物を5〜300g/l、銅化合物を銅金属量とし
    て0.2〜2g/l、錯化剤を2〜50g/l、並びに
    アルカリ金属水酸化物を30〜130g/l含有する水
    溶液からなる無電解銅めっき液。
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