JP2001150829A - 光触媒体を用いた現像処理が不要な画像形成材料および画像形成方法 - Google Patents

光触媒体を用いた現像処理が不要な画像形成材料および画像形成方法

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JP2001150829A
JP2001150829A JP33504699A JP33504699A JP2001150829A JP 2001150829 A JP2001150829 A JP 2001150829A JP 33504699 A JP33504699 A JP 33504699A JP 33504699 A JP33504699 A JP 33504699A JP 2001150829 A JP2001150829 A JP 2001150829A
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repellent
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Hiroshi Koyama
拓 小山
Shinichi Koizumi
真一 小泉
Akira Nakajima
章 中島
Toshiya Watabe
俊也 渡部
Kazuhito Hashimoto
和仁 橋本
Akira Fujishima
昭 藤嶋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、高度な撥水、撥油効果のある層を
備え、現像機を必要としない光照射のみによる簡便な方
法で超親水性および超親油性表面にすることができ、組
成、粘度等に限定されないインキ、特に平版印刷インキ
に対応したインキ担持層およびインキ反発層が得られる
光触媒体を用いた画像形成材料を提供する。 【解決手段】 本発明では、表面に微細な凹凸構造を持
った光触媒体を撥水撥油処理することによって高度な撥
水性または撥油性を示し、組成、粘度等に限定されない
広範囲なインキ、特に平版印刷インキに対しても反発さ
せるインキ反発層をもち、光照射によって光触媒層を励
起し、その酸化分解反応による分解除去によって高度な
親水、親油性表面である光触媒層を露出し、これをイン
キ担持層とする光触媒体を用いた画像形成材料を提供す
る。さらにインキ反発層となり得る撥水撥油層の膜厚と
平版印刷インキの降伏価との関係を示し、平版印刷イン
キによる画像形成可能領域を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湿し水を用いずに
インキ画像を形成する画像形成材料およびその形成方法
に関し、特に光触媒反応を用いて親水性あるいは親油性
部分と撥水性あるいは撥油性部分とからなるパターンに
親水性あるいは親油性部分にはインキが付着し、撥水性
あるいは撥油性部分にはインキが付着しないことによっ
て、インキによる画像を形成する光触媒体を用いた画像
形成材料およびその方法に関する。
【0002】さらには、前記画像形成材料およびその方
法において、撥水撥油層の膜厚と平版印刷インキの降伏
価との関係によって示される画像形成可能領域に関す
る。
【0003】
【従来の技術】光触媒酸化チタンの光触媒は、その強力
な酸化力により表面に吸着した有機物を分解するため防
汚、抗菌、環境浄化等への応用で注目を集めており、既
に一部で実用化されている。一方でこの酸化分解反応を
利用して有機物であるパラフィンやステアリン酸、トリ
メチルシランなどを吸着させて疎水化した酸化チタン表
面の有機物を除去することによって親水化し、画像を形
成する方法について報告されている(藤嶋昭、加藤民
彦、前川悦郎、本多健一:電気化学、54、No219
86)。この場合、光照射による水の接触角の変化は1
00°から20°程度であるため、親水性部分にインキ
が付着し疎水性部分にはインキが反発する画像を形成す
るには、水性で低粘度のインキであれば実現の可能性は
あるがインキの中でもごく限られたものになってしま
う。また光触媒表面に、その価電子帯上端と伝導電子帯
下端とのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の
光を照射して光励起すると、疎水的および親油的な部材
表面が水および油を全くはじかない超親水性および超親
油性をあわせ持つ光励起両親媒性になる現象が見出され
た。この疎水性から超親水性へ、親油性から超親油性へ
の変化を利用して画像形成することが考えられるが、こ
の光によって誘起される水の接触角の変化は60〜80
°から0°程度、油では10°から0°程度であり、水
性、油性に限らずインキを用いて画像形成を行なう場
合、この程度の接触角差でのパターン形成は困難であ
る。
【0004】またアナターゼ型酸化チタン微粒子と結着
樹脂とから構成される層を形成し、層表面に紫外線領域
の電磁放射線を用いて像様露光することにより、露光部
分は親水性に極性変換し湿し水を保持することによって
インキを反発する非画像部となり、未露光部分はインキ
を受容する画像部として画像を形成することが試みられ
ている(特開平11−109610)。ここでは非画像
部に水を用いており、アナターゼ型酸化チタン微粒子と
結着樹脂とから構成される層のみによるインキの反発は
困難である。
【0005】さらに光触媒層上に撥水性膜を形成し、画
像情報を組み入れた光を照射することによって光触媒表
面に吸着している撥水剤を分解し、親水性である光触媒
層を水性インキ担持部分として画像を形成することが試
みられている(特開平9−131914)。ここで撥水
処理における撥水剤として流動パラフィン、油脂類およ
び脂肪酸を用いているが、低粘度の水性インキを反発さ
せる効果はあるが、高粘度の水性インキもしくは油性イ
ンキを用いる場合には撥水剤が溶ける、または撥油効果
が低いために画像形成が困難である。
【0006】従来からの平版印刷インキでの画像形成方
法については、親水性部分に湿し水を保持することによ
って非画線部分を形成し画像形成を行なうもの、もしく
は湿し水を用いずにシリコーンによるインキ反発層とイ
ンキ担持層によって画像形成を行なうといったものであ
る。印刷時に湿し水を用いることは従来から広く一般的
に行なわれてきたが、印刷技術の熟練が必要であり紙な
ど基材の伸縮による見当精度にも影響を与え、さらには
画像形成時に現像処理を伴う。また湿し水不要の画像形
成方法についても現像処理は不可欠である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】現在のところインキを
用いた画像形成材料もしくは画像形成方法では、親水性
部分に湿し水を保持することによって非画線部分を形成
し画像形成を行なうもの、もしくは湿し水を用いずにシ
リコーンによるインキ反発層とインキ担持層によって画
像形成を行なうもの、さらには親水性部分と疎水性部分
とのパターンを光照射によって形成し、水性インキによ
って画像形成を行なうといったものである。印刷時に湿
し水を用いることは従来から広く一般的に行なわれてき
たが、印刷技術の熟練が必要であり紙など基材の伸縮に
よる見当精度にも影響を与え、画像形成時に現像処理が
必要である。また湿し水不要の場合でも、現像処理は不
可欠であり、それが不要なものでは水性インキでしか画
像を形成することができていない。
【0008】そこで、画像を形成させるためには光照射
のみによる現像機を必要としない簡便な方法かつ短時間
の光照射で高度な超親水性、超親油性表面にすることが
でき、水性インキはもちろん油性でありかつ高粘度でも
ある平版印刷インキにも対応したインキ担持層が得られ
る光触媒体を用いて、湿し水を用いることなくインキ反
発層をもつ画像形成材料およびその方法を提供すること
を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明では、表面に微細
な凹凸構造を持った光触媒層上に撥水撥油処理をするこ
とによって高度な撥水性または撥油性を示し、組成、粘
度に限定されない広範囲なインキ、特に平版印刷インキ
に対して湿し水を用いずに反発させるインキ反発層をも
ち、光照射によって光触媒層を励起しその酸化分解反応
による分解除去によって高度な親水、親油性表面である
光触媒層を露出し、これをインキ担持層とする光触媒体
を用いた画像形成材料を提供する。
【0010】また画像を形成する際、水、アルカリ溶液
などによる現像処理を行なうこと無く、光照射のみによ
ってパターン化を行なう画像形成方法を提供する。
【0011】さらには、前記画像形成材料および画像形
成方法において、撥水撥油層の膜厚と平版印刷インキの
降伏価との関係によって示される画像形成可能領域を示
す。
【0012】
【発明の実施の形態】実施例の如く表面に微細な凹凸構
造を持った光触媒体をフッ素系撥水撥油剤によって処理
することによって水の接触角で120°以上、油(ヘキ
サデカン)の接触角で50°以上の撥水撥油性が発現す
る。この微細な構造は10〜数100nm程度の微粒子
によって構成されたものを好適に用いることができる。
この表面は処理前では親水性かつ親油性を示している。
【0013】前記部材にその価電子帯上端と伝導電子帯
下端とのバンドギャップ以上の紫外光(300〜400
nm)を照射すると光触媒層が励起され、正孔と電子が
生成し拡散して、表面または空気中の水や酸素と反応し
電子の供受によってラジカルが発生し、このラジカルの
強い酸化力で光触媒体表面の撥水剤が分解除去される。
撥水剤の分解によって光触媒体表面が露出するが、微細
な構造を持つためより親水性が強調され、また光照射に
よって誘起された超親水性または超親油性表面に変換さ
れるため水性インキまたは油性インキいずれにも付着さ
せることができるようになる。
【0014】例えばこの撥水撥油化光触媒体に画像パタ
ーンが描かれたマスクを被せ、紫外光照射によって撥水
撥油性である非画像部の撥水剤を分解除去して光触媒層
を露出させて親水性、親油性へと変換させる。この現象
を利用して画像形成を行ない水性インキおよび油性イン
キのいずれにも、さらには広範囲な粘度についても対応
できる光触媒体を用いた画像形成材料が提供できる。こ
の光触媒反応による撥水剤の分解除去を行なう際、水、
アルカリ溶液などを用いた現像処理を行なうこと無く光
照射のみによってパターン化を行なう画像形成方法であ
る。
【0015】上記の画像形成方法では、水、および油で
のパターン化は可能であるが、平版印刷インキ等の様な
高粘度である油性インキについては、撥水撥油剤の塗布
量をある一定以上、すなわち撥水撥油剤によって光触媒
体を完全に覆ってしまわなければ画像を形成することが
困難である。これは、表面の分析から少ない塗布量の場
合、光触媒層表面には微細な凹凸構造を持っているため
均一に塗布されず光触媒体表面が所々露出しており、平
版印刷インキ等を転写する際にその構造中に入り込んで
しまい、水および油での接触角では親水親油性と撥水撥
油性を示しているにもかかわらずインキを反発すること
無く付着してしまうことが予想される。
【0016】上記のように光触媒体を完全に覆うことの
できる撥水撥油層の膜厚としては、10nmから200
0nm、好ましくは10nmから700nm、さらに好
ましくは40nmから150nmについて好適に用いら
れる。
【0017】ここで使用するインキについては、上記膜
厚に対応する降伏価以上のインキを用いることによって
画像形成が可能である。
【0018】この画像形成材料を用いてパターン形成す
る際、インキ粘度が高い場合撥水撥油層を厚くする必要
があり、それによって光触媒反応による撥水撥油剤の分
解除去が容易に行なわれることが困難になる。そこで、
インキ反発層の膜厚を100nm以下の場合は、インキ
の降伏価Y(dPa)とインキ反発層の膜厚X(nm)
との関係を表す次式(1)Y>−aX+b(a=140
0、b=140000)に対応する平版印刷インキの降
伏価およびインキ反発層の膜厚を用いることによって、
平版印刷インキによる画像形成が可能となる。
【0019】本発明における光触媒反応を励起する光源
としては、蛍光灯、白熱電灯、ブラックライトランプ、
メタルハライドランプ、水銀ランプのような室内照明、
太陽、等の光源からの光を低損失のファイバーで誘導し
た光源等が好適に利用できる。
【0020】本発明で利用できる光触媒体としては、伝
導電子帯下端と価電子帯上端とのバンドギャップよりも
大きなエネルギーの光の照射によって、伝導電子と正孔
を生成し得る酸化物が用いられ、アナターゼ型酸化チタ
ン、ルチル型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、三酸化二
ビスマス、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸
ストロンチウム等が好適に利用できる。また表面が親水
化し易い状態へと変化し、微弱光によって親水性が誘起
される高感度な親水化性能を有するものが好適に利用で
きる。さらにその形態としては、粉末、ゾル、コーティ
ング剤等が好適に利用できる。
【0021】本発明で使用できる撥水性もしくは撥油性
物質としては、光照射のみによって光触媒の分解除去反
応が行なわれ、撥水性もしくは撥油性物質が分解してし
まう、フッ素系、シリコーン系等の撥水性もしくは撥油
性物質が好適に用いられる。
【0022】本発明で使用できる光触媒層および撥水撥
油層の形成方法としては、含浸法、ディップコーティン
グ法、スピンコーティング法、ブレードコーティング
法、ローラーコーティング法、ワイヤーバーコーティン
グ法、リバースロールコーティング法やスプレーコーテ
ィング法等特に限定されるものではなく広く一般的に用
いられるコーティング方法が利用できる。
【0023】また光照射によって撥水撥油剤が分解除去
され光触媒層が露出するので、実施例の如く再び撥水処
理をして撥水撥油化光触媒体である画像形成材料を得る
ことができ、繰り返し利用することができる。
【0024】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに説明す
るが、本発明の内容がこれらに限定されるものではな
い。
【0025】(実施例1〜4)脱脂洗浄したガラス基板
上に酸化チタンゾルSTS−21(石原産業(株)製)
をスピンコーティングにて塗布し、120℃で30分乾
燥後500℃で30分焼成して酸化チタン薄膜を作製し
た。
【0026】得られた薄膜にフッ素系撥水撥油剤ディッ
クガードF−90H(大日本インキ化学工業(株)製)
をスピンコーティングにて塗布量を変化させ、120℃
にて30分乾燥して撥水撥油化酸化チタン薄膜を作製し
た。
【0027】また、この薄膜表面の撥水性と撥油性を水
または油との接触角の測定により評価した。特に油の接
触角測定にはn−ヘキサデカン(東京化成(株)製)を
用い、接触角は接触角測定器(協和界面科学(株)製C
A−X)により測定した。その結果、得られた薄膜表面
は表1に示すようにいずれも水の接触角で120°以
上、油の接触角で75°以上の撥水撥油性を示した。
【0028】
【表1】
【0029】(実施例5)実施例1〜4で得られた薄膜
の表面に水銀キセノンランプ(林時計工業(株)製、ル
ミナーエースLA−210UV)を用いて強度20mW
/cm、波長300〜400nmの紫外光を照射し、
それぞれ照射時間に対する水の接触角の変化を測定し
た。図1に示すようにいずれも照射時間とともに接触角
が減少し表面が撥水性から親水性へと変化した。
【0030】紫外光照射後は水を全くはじかない超親水
性に変化した。一方比較例1の酸化チタン層の無い撥水
性膜に同様の紫外光を照射したが、水の接触角に変化は
全く見られなかった。紫外光によって撥水剤が分解する
ことはないことがわかる。
【0031】上記の結果から撥水化酸化チタン薄膜に紫
外光を照射することによる酸化チタンの光触媒反応によ
って表面の撥水剤が分解され撥水効果が徐々に消失し、
撥水剤が除去されると今度は光によって誘起された酸化
チタンの超親水性表面が露出することによって親水性表
面に変化する。すなわち光照射によって撥水性から超親
水性へと大きな表面物性の変化が起こることがわかっ
た。
【0032】(実施例6〜9)脱脂洗浄したアルミ基板
上に実施例1〜4と同様に撥水撥油化酸化チタン薄膜を
作製した。得られた薄膜表面の水および油の接触角を表
2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】(実施例10)実施例6〜9で得られた薄
膜の表面に実施例5と同様に紫外光を照射し、それぞれ
照射時間に対する水の接触角の変化を測定した。それと
同時に比較例2についても紫外光を照射し接触角が変化
しないことを確認した。その結果図2に示すように撥水
性を示していた表面が紫外光照射に伴って水の接触角が
徐々に減少し、ついには0°となって超親水性表面へと
変化した。
【0035】また実施例1、3、6、8について油の接
触角について測定した結果を図3に示す。ここでは撥油
性を示していた表面が紫外光照射によって超親油性へと
変化した。このように基材を変えることにより、光触媒
反応による分解除去スピードが変化することがわかっ
た。
【0036】さらに実施例3について紫外光照射をブラ
ックライトランプ(東芝(株)製FL10BLB)を用
いて強度2mW/cm、波長300〜400nmの紫
外光を照射した時の接触角の変化を図4に示す。比較的
弱い紫外光強度においても照射時間を長くすれば撥水性
および撥油性から親水性および親油性への変化が起こる
ことがわかった。
【0037】(実施例11)実施例1〜4について画像
パターンが描かれたマスクを被せ、紫外光照射によって
撥水撥油性である非画像部の撥水剤を分解除去し(図
5)、酸化チタン層を露出させて親水性および親油性へ
と変換させることによって画像が形成される。この場合
水による画像形成は全てにおいて可能であるがオフセッ
トインキについては図6に示すようにすべてにおいて可
能であるとは限らない。
【0038】平版印刷インキでの画像形成方法について
は、インキローラー上に一定量のインキを塗布し、一定
圧力をかけながらサンプル上に転写する(図7)。ここ
で実施例1および4の表面状態を観察してみると、実施
例1に比べて実施例4の方が酸化チタン表面の微細な凹
凸構造が撥水剤によって完全に覆われてしまっているこ
とがわかった。その結果、実施例1のように親水親油性
でインキ担持層である酸化チタン表面が露出しているも
のは、水による画像形成はできても平版印刷インキのよ
うに転写した場合その構造中に入り込んでしまい、イン
キを反発することができない。
【0039】逆に実施例4のように撥水剤が完全に酸化
チタン層を覆ってしまったものは、水および油の接触角
は微細な凹凸構造が無くなったため低くなるが、平版印
刷インキのように転写しても撥水剤によってインキ担持
層への進入を阻止するため、インキ反発層となるのだと
推測される。
【0040】(実施例12)実施例1〜4について実施
例11と同様に紫外光照射によってパターン化を行な
い、表3に示すように平版印刷インキの特性、特に降伏
価を変化させたインキを用いて画像形成を行なった。
【0041】
【表3】
【0042】特性を変化させた平版印刷インキによる画
像形成は、降伏価の変化により大幅に向上した(図
8)。その結果、インキ反発層を形成する撥水撥油剤の
塗布量を少なくすることができ、紫外光照射時間の短縮
化が図られる。
【0043】ここで、実施例1〜4で得られた薄膜の撥
水撥油層の膜厚とインキ特性(降伏価)による画像形成
の関係を図9に示す。この図から撥水撥油層の膜厚とイ
ンキ降伏価による画像形成領域が見出すことができる。
【0044】(実施例13)実施例11、12において
画像形成に用いた平版印刷インキの色調は紅であった
が、降伏価をほぼ同程度にし色調を変えることによって
画像形成に影響を与えるのか、表4に特性を示す墨イン
キ(東京インキ(株)製、商品名アルックス)を用いて
実施例11、12と同様に平版印刷インキによる画像形
成(図10)および撥水撥油層の膜厚とインキ特性(降
伏価)による画像形成の関係(図11)を行なった結
果、色調による違いは見られなかった。
【0045】
【表4】
【0046】(実施例14)実施例1で得られた薄膜に
さらに紫外光を照射して、薄膜表面全体を親水性へと変
化させた。その後実施例1の如く撥水処理をして再び撥
水撥油表面を得た。この紫外光照射と撥水処理を繰り返
した時の水の接触角変化を比較したところ、図12に示
す様に親水化速度にほとんど変化が見られないことか
ら、このような方法で撥水性表面と親水性表面を可逆的
に得られることがわかった。
【0047】(比較例1)実施例1で用いたガラス基板
に直接フッ素系撥水撥油剤ディックコートF−90Hを
スピンコーティングにより塗布し、120℃で30分乾
燥させることによって撥水化薄膜を作製した。
【0048】(比較例2)実施例6で用いたアルミ基材
に比較例1と同様に撥水化薄膜を作製した。
【0049】
【発明の効果】本発明のように、表面に微細な凹凸構造
を持った光触媒体を撥水撥油処理することによって高度
な撥水性または撥油性を示し、組成、粘度等に限定され
ない広範囲なインキ、特に平版印刷インキに対して反発
させるインキ反発層をもち、光照射によって光触媒層を
励起し、その酸化分解反応による分解除去によって高度
な親水、親油性表面である光触媒層を露出し、これをイ
ンキ画像担持層とする光触媒体を用いた画像形成材料を
提供できる。また画像を形成する際、水、アルカリ溶液
などによる現像処理を行なうこと無く、光照射のみによ
ってパターン化を行なう画像形成方法を提供できる。さ
らには、前記画像形成材料および画像形成方法におい
て、撥水撥油層の膜厚と平版印刷インキの降伏価との関
係によって示される画像形成可能領域を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例および比較例に係る、撥水撥油
化酸化チタン薄膜表面の紫外光照射時間と水との接触角
との関係を示す図。
【図2】本発明の実施例および比較例に係る、異なる基
材を用いた撥水撥油化酸化チタン薄膜表面の紫外光照射
時間と水との接触角との関係を示す図。
【図3】本発明の実施例に係る、撥水撥油化酸化チタン
薄膜表面の紫外光照射時間と油との接触角との関係を示
す図。
【図4】本発明の実施例に係る、撥水撥油化酸化チタン
薄膜表面の比較的弱い紫外光の照射時間と水との接触角
との関係を示す図。
【図5】本発明の実施例に係る、撥水撥油化酸化チタン
薄膜を用いた画像形成方法の概念図。
【図6】本発明の実施例に係る、撥水撥油化酸化チタン
薄膜を用いた画像形成材料の平版印刷インキによる画像
形成状態。
【図7】本発明の実施例に係る、撥水撥油化酸化チタン
薄膜を用いた画像形成方法による印刷の概念図。
【図8】本発明の実施例に係る、撥水撥油化酸化チタン
薄膜を用いた画像形成材料の特性を変化させた平版印刷
インキ(紅)による画像形成状態。
【図9】本発明の実施例に係る、撥水層の膜厚と平版印
刷インキ(紅)の降伏価との関係を示す図。
【図10】本発明の実施例に係る、撥水撥油化酸化チタ
ン薄膜を用いた画像形成材料の特性を変化させた平版印
刷インキ(墨)による画像形成状態。
【図11】本発明の実施例に係る、撥水層の膜厚と平版
印刷インキ(墨)の降伏価との関係を示す図。
【図12】本発明の実施例に係る、撥水撥油化酸化チタ
ン薄膜に紫外線照射と撥水処理を繰り返した際の、紫外
光照射時間と水との接触角との関係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 592116165 橋本 和仁 神奈川県横浜市栄区飯島町2073番地の2 ニューシティ本郷台D棟213号 (71)出願人 591115936 藤嶋 昭 神奈川県川崎市中原区中丸子710ー5 (72)発明者 小山 拓 東京都文京区小石川4丁目14番12号 共同 印刷株式会社内 (72)発明者 小泉 真一 東京都文京区小石川4丁目14番12号 共同 印刷株式会社内 (72)発明者 中島 章 埼玉県浦和市白幡4−20−1 白幡西住宅 4−102 (72)発明者 渡部 俊也 神奈川県藤沢市鵠沼海岸6−15−7 (72)発明者 橋本 和仁 神奈川県横浜市栄区飯島町2073番地2 ニ ューシティー本郷台D棟213号 (72)発明者 藤嶋 昭 神奈川県川崎市中原区中丸子710番地5 Fターム(参考) 2H025 AA04 AB04 AC01 AD05 BH03 DA37 2H096 AA11 BA16 CA05 EA02 2H113 AA02 AA04 BA06 DA07 DA14 DA49 DA64 EA07 FA10 FA36 FA43 2H114 AA05 AA22 AA23 BA01 DA08 DA14 DA49 DA62 DA73 DA78 EA01 FA16 GA34 GA38

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光照射によって親水性もしくは親油性面を
    形成する光触媒体、もしくは該光触媒体を含有する物質
    により形成されたインキ担持層と、該インキ担持層上に
    撥水性もしくは撥油性物質を設けたインキ反発層を有す
    る画像形成材料であって、前記インキ反発層が10nm
    から2000nmの膜厚である事を特徴とする画像形成
    材料。
  2. 【請求項2】前記インキ反発層は、光照射のみによって
    光触媒の分解除去反応が行なわれ、撥水撥油性物質を完
    全に分解してしまう材料からなることを特徴とする請求
    項1記載の画像形成材料。
  3. 【請求項3】前記インキ反発層はフッ素系、シリコーン
    系等の撥水性もしくは撥油性物質からなることを特徴と
    する請求項1または請求項2記載の画像形成材料。
  4. 【請求項4】請求項1から3記載の画像形成材料に、画
    像パターンに応じて光照射して前記インキ反発層を光触
    媒反応により除去してインキ担持層を表出させ、インキ
    を担持させて画像パターンを形成する画像形成方法。
  5. 【請求項5】前記インキ反発層の膜厚が100nm以下
    の場合は、インキの降伏価Y(dPa)とインキ反発層
    の膜厚X(nm)との関係が次式(1)Y>−aX+b
    (a=1400、b=140000、0<X<100)
    を満たすものであることを特徴とする請求項4記載の画
    像形成方法。
  6. 【請求項6】光照射によって親水性もしくは親油性面を
    形成する光触媒体、もしくは該光触媒体を含有する物質
    により形成されたインキ担持層と、該インキ担持層上に
    撥水性もしくは撥油性物質を設けたインキ反発層を有す
    る画像形成材料に、画像パターンに応じて光照射して前
    記インキ反発層を光触媒反応により除去してインキ担持
    層を表出させて画像パターンを形成させたものの再利用
    にあたり、再度全面またはパターン状に光照射を行なう
    ことでインキ反発層を除去し、全面にインキ担持層を表
    出させ、再度前記インキ担持層上に前記インキ反発層を
    形成することを特徴とする画像形成材料の再生方法。
  7. 【請求項7】前記インキ反発層は、光照射のみによって
    光触媒の分解除去反応が行なわれ、撥水撥油性物質を完
    全に分解してしまう材料からなることを特徴とする請求
    項6記載の画像形成材料の再生方法。
  8. 【請求項8】前記インキ反発層は、フッ素系、シリコー
    ン系等の撥水性もしくは撥油性物質からなることを特徴
    とする請求項6または請求項7記載の画像形成材料の再
    生方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008209705A (ja) * 2007-02-27 2008-09-11 Toppan Printing Co Ltd 印刷平版およびその製造方法およびそれを用いた印刷方法
JP2008246702A (ja) * 2007-03-29 2008-10-16 Toppan Printing Co Ltd 画像形成方法

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