JP2001114590A - シリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツボ - Google Patents

シリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツボ

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JP2001114590A
JP2001114590A JP29161099A JP29161099A JP2001114590A JP 2001114590 A JP2001114590 A JP 2001114590A JP 29161099 A JP29161099 A JP 29161099A JP 29161099 A JP29161099 A JP 29161099A JP 2001114590 A JP2001114590 A JP 2001114590A
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glass crucible
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Motonori Tamura
元紀 田村
Shogo Konya
省吾 紺谷
Atsushi Ikari
敦 碇
Kiyonori Takebayashi
聖記 竹林
Yoji Mizuhara
洋治 水原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、石英ガラスルツボ内側表面で石英
ガラスの結晶相を短時間で均一に生成させ、無転位単結
晶引上を長時間継続し続けることができる石英ガラスル
ツボを提供することを目的とする。 【解決手段】 少なくともシリコン融液と接することと
なる石英ガラスルツボ内側表面において、石英ガラス母
材表面が0.02μm〜20μmの算術平均粗さであっ
て、かつ、該母材表面にシリコンの融点よりも高融点で
ある物質の被膜層を0.01μm〜50μmの厚さで有
してなることを特徴とするシリコン単結晶引上げ用石英
ガラスルツボ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チョクラルスキー
法(以下CZ法と称す)によるシリコン単結晶引上げに
用いる石英ガラスルツボに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シリコン単結晶の製造には、いわ
ゆるCZ法と呼ばれる単結晶引上げ方法が広く工業的に
採用されている。この方法は、多結晶シリコンを容器内
で加熱溶融させ、この溶融浴内にシリコンの種結晶の端
部を漬けて回転させながら引き上げるもので、種結晶上
に同一の結晶方位を持つ単結晶が成長する。この単結晶
の引き上げ容器には、石英ガラスルツボが一般的に使用
されている。ここで、石英ガラスとはシリカ(Si
2)ガラスの呼び名である。多結晶シリコンを入れた
石英ガラスルツボはシリコンの融点(約1414℃)以
上に長時間加熱され、シリコン融液に曝されるため、石
英ガラスルツボの内側表面形態は徐々に変化する。その
結果、石英ガラスルツボを長時間使用した場合に溶損
(ガラス表面が浸食されること)や失透(透明なガラス
が結晶化することにより白色化すること)が生じ、シリ
コン単結晶の製造に重大な影響を及ぼすことになる。特
に、石英ガラスルツボに不純物が多量に含まれている
と、この不純物も溶解してシリコン融液に取り込まれシ
リコン単結晶への不純物汚染の原因になったり、不純物
が石英ガラスの結晶化を促進して失透による石英ガラス
ルツボの特性劣化を招く。このため、石英ガラスルツボ
は高純度の石英粉を原料として製造されている。このル
ツボ用石原料粉として、現在主に天然石英粉が用いられ
ているが、天然石英粉よりも純度が高い合成石英粉も用
いられており、不純物の混入には細心の注意が払われて
いる。
【0003】ところで、この石英ガラスルツボはシリコ
ン融液を保持するとともに、ルツボの外側に設置されて
いるカーボンヒータからの熱を融液に伝達する機能を有
している。 近年のシリコンウェハーの大口径化は、石
英ガラスルツボの大型化、及び、溶解するシリコン量の
増加をもたらしており、その結果、ヒーターからの熱負
荷が石英ガラスルツボ内壁部で大きくなっている。さら
に、多量のシリコン融液を保持してシリコン単結晶引上
げを行うため、シリコン融液と石英ガラスルツボ内側表
面との接触時間が長くなっている。このため、不純物混
入を抑制した石英ガラスルツボであっても、ルツボ内側
表面から融液への溶損量が増え、ルツボ表面の石英ガラ
スの結晶化が徐々に進行し、ルツボ内側表面に斑点状の
石英ガラスの結晶相(クリストバライト)が形成され易
くなる。石英ガラスの結晶相の生成場所は、必ずしも一
定ではなく、特定箇所に集中したり、不均一な場合が多
くみられる。言い換えると、部分的に結晶化した状態と
なる。石英ガラスのシリコン融液への溶解速度は、ガラ
ス相のほうが、結晶相よりも速く、長時間シリコン融液
と接触した石英ガラスルツボ内側表面は不均一な溶解が
進み、表面粗度が大きくなる。一方,石英ガラスルツボ
のガラス内部に気泡が多数ある場合には、これらが石英
ガラスの溶損が進むことでシリコン融液中に解放され
て、表面粗度が大きくなることもある。このようにして
表面の凹凸が大きくなった部分は、ルツボ内側表面から
離脱しやすく、離脱した切片はシリコン融液中を浮遊す
る。これが引上中のシリコン単結晶の成長界面に付着
し、多結晶化または有転位化等の重大な品質欠陥を引き
起こす。これは、高温による形状変形のような構造的寿
命とは異なり、有転位化発生という機能劣化による寿命
である。このため、石英ガラスルツボの長時間使用は困
難となり、シリコン単結晶製造コストの上昇を招いてい
た。
【0004】こうした石英ガラスの部分的な結晶化とい
う問題を解決するため、石英ガラス中のOH濃度やアル
カリ金属濃度を下げて高純度化し、結晶化を抑制する方
法が、特開平3−208880号公報、特開平8−13
3719号公報、特開平5−301731号公報、等で
提案されている。これらの方法によれば確かに結晶化は
抑制されるものの、現実には石英ガラスルツボ中のあら
ゆる不純物含有量を極限まで減らすことは困難であるた
め、部分的には結晶化が生じ、不均一な結晶化と溶解に
よる石英ガラス内側表面の荒れは避けられなかった。
【0005】一方反対に、積極的に石英ガラスを結晶化
する考えがある。石英ガラスは、クリストバライト、ク
ォーツ、トリデマイトなどの多様な結晶相に変態する。
例えば、常圧(または低圧)において石英ガラスをガラ
ス転位点(約1200℃)付近以上の高温にすると、徐
々にβ−クリストバライト(クリストバライトの高温相
で融点は約1710℃)へと結晶化する。結晶の成長速
度は約1650℃で最大となるが、雰囲気にも敏感であ
り、酸素濃度や水蒸気圧が高いほど高いことが知られて
いる。この結晶化を促進する方法として、これまでに主
に以下の3つの手法が開示されている。
【0006】第1の結晶化法は、石英ガラスルツボ材質
中に結晶化促進剤を分散しているものである。石英ガラ
ス製造時において原料石英粉に酸化アルミニウム等を結
晶化助剤として混合分散する方法が、特開平5−248
70公報で開示されている。しかしながら、結晶成長を
促進する不純物が存在していてもガラス材質内部からの
核生成確率は表面での核生成確率よりも極めて低いので
結晶核生成に長時間を要し、ルツボ全体が結晶化するま
でには更に余分な時間がかかった。また、高温でルツボ
全体が結晶化した後に室温冷却すると270℃付近でβ
−クリストバライトからα−クリストバライトへ変態
(β−α変態)する時に細かく割れてしまうので清掃に
手間がかかった。また、ルツボ全体を一旦結晶化させる
とβ−α変態をともなう室温冷却はガラス破損を伴うの
で、単結晶引上炉内で結晶化させざるをえないという制
約があった。
【0007】第2の結晶化法は、アルカリ金属イオン及
びアルカリ土類金属イオン等を結晶化促進剤とし、結晶
化促進剤を含む層を二枚の石英ガラス層ではさむサンド
イッチ構造を形成することによって、加熱する際にルツ
ボ内側表面の石英ガラス層を内部の結晶化促進層から結
晶化させることが、特開平11−199370号公報で
開示されている。しかしながら、単結晶引上炉内で結晶
化させざるをえないという制約があるうえに、結晶化促
進剤が内部に存在していてもガラス材質内部からの核生
成確率が低いためにガラスの結晶化に長時間を要すると
いう問題があった。
【0008】第3の結晶化法は、石英ガラスルツボ表面
に結晶化促進剤を塗布するものである。石英ガラスルツ
ボ内側表面にマグネシウム、ストロンチウム、カルシウ
ム、バリウム等の2a族元素等を塗布し、シリコン原料
の溶解時に結晶層を形成しやすくする方法が、特開平8
−2932号公報及び特開平9−110590号公報で
提案されている。しかしながら、アルコール含有水のよ
うな塗布液では石英ガラス表面への付着力は弱く溶解す
べきシリコン多結晶の塊をセットする時に塗布膜が剥離
しやすいという点、結晶化促進剤の促進効果があまり高
くない点、そのため均一な結晶化効果が早期に得られな
いという点、等の欠点があった。
【0009】以上のような取り組みが今までに行われて
きたが、先に述べたような過酷な使用環境では、さらな
る化学的に安定な石英ガラスルツボが求められている。
そのためには、石英ガラスルツボ内側表面での石英ガラ
スの結晶相の生成と成長を本質的に制御することによ
り、結晶相を短時間で目的の厚さに均一に生成させるた
めのさらなる改善が必要である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の石英
ガラスルツボにおける上記の問題点を解決して、石英ガ
ラスルツボ内側表面で石英ガラスの結晶相を短時間で均
一に生成させ,長時間の使用に耐える石英ガラスルツボ
を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、研究実験
を重ね鋭意検討を加えた結果、複数の効果的な結晶化手
法を組み合わせることで結晶化効果が相乗的に高まり、
石英ガラスの結晶相の核生成密度を著しく上げることで
一時期に石英ガラス表面全面に石英ガラスの結晶相を均
一に生成させると共に、石英ガラスの厚み方向にも結晶
相を均一に目的の厚さだけ成長させることにより、シリ
コン融液と長時間接触しても結晶層が全溶することな
く、かつ石英ガラスルツボ内側表面からの小片剥離を少
なくし、ルツボの寿命を延長できることを見出した。ま
た、種々の試験を繰り返した結果、石英ガラスルツボ内
側表面を結晶化させても結晶層厚さを1mm以下に抑制
すれば、室温に冷却しても割れたり剥離したりしないこ
とを確認し、ガラスの結晶化は高価な引上炉内だけに限
らず設定温度や雰囲気を自由に選択できる汎用的で比較
的安価な汎用加熱炉においても結晶化できることを見出
し、本発明を完成させたものである。
【0012】即ち、本発明は、(1) 少なくともシリ
コン融液と接することとなる石英ガラスルツボ内側表面
において、石英ガラス母材表面が0.02μm〜20μ
mの算術平均粗さであって、かつ、該母材表面にシリコ
ンの融点よりも高融点である物質の被膜層を0.01μ
m〜50μmの厚さで有してなることを特徴とするシリ
コン単結晶引上げ用石英ガラスルツボ、(2) 少なく
ともシリコン融液と接することとなる石英ガラスルツボ
内側表面において、石英ガラス母材表面が0.02μm
〜20μmの算術平均粗さであって、かつ、該内側表面
から厚さ1mm以内の表層領域に5〜90体積%のシリ
カ粒子を含む層を有してなることを特徴とするシリコン
単結晶引上げ用石英ガラスルツボ、(3) 少なくとも
シリコン融液と接することとなる石英ガラスルツボ内側
表面において、石英ガラスルツボの最表面にシリコンの
融点よりも高融点である物質からなる厚さ0.01μm
〜50μmの被膜層を有し、さらに該被覆層の内側に厚
さ20μm〜5mmの結晶質シリカ層を有してなること
を特徴とするシリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツ
ボ、(4) 前記結晶質シリカ層が、1200〜165
0℃の温度に保持することによる石英ガラスの相変態で
形成してなるものである(3)記載のシリコン単結晶引
上げ用石英ガラスルツボ、(5) 前記被膜層の結晶粒
径が、0.005μm〜1μmである(1)、(3)又
は(4)に記載のシリコン単結晶引上げ用石英ガラスル
ツボ、(6) 前記被膜層の組成が、チタンと炭素及び
/又は窒素の化合物あるいはチタンである(1)、
(3)又は(4)に記載のシリコン単結晶引上げ用石英
ガラスルツボ、(7) 前記被膜層の組成が、チタン、
カルシウム、バリウム、アルミニウムのうち少なくとも
一種以上の元素の酸化物を含有する組成である(1)、
(3)又は(4)に記載のシリコン単結晶引上げ用石英
ガラスルツボ、(8) 少なくともシリコン融液と接す
ることとなる石英ガラスルツボ内側表面において、該石
英ガラスルツボ内側表面から20μm〜5mmの領域が
結晶質シリカ層であることを特徴とするシリコン単結晶
引上げ用石英ガラスルツボ、(9) 前記結晶質シリカ
層が、石英ガラスルツボ内側表面から厚さ1mm以内の
表層領域に5〜90体積%のシリカ粒子を含有してなる
層を形成した後に、1200〜1650℃の温度に保持
することによる石英ガラスの相変態で形成してなるもの
である(8)に記載のシリコン単結晶引上げ用石英ガラ
スルツボ、(10) 前記シリカ粒子が、結晶質シリカ
粒子である(9)に記載のシリコン単結晶引上げ用石英
ガラスルツボ、(11) 前記シリカ粒子が、クリスト
バライト粒子である(9)に記載のシリコン単結晶引上
げ用石英ガラスルツボ、(12) 前記石英ガラスルツ
ボの母材表面が0.02μm〜20μmの算術平均粗さ
である(3)〜(11)のいずれか1つに記載のシリコ
ン単結晶引上げ用石英ガラスルツボ、(13) 前記石
英ガラス母材の表面粗さが、さらに下記関係式を満足す
る最大粗さ(Rmax)、最小粗さ(Rmin)である
(1)、(2)又は(12)に記載のシリコン単結晶引
上げ用石英ガラスルツボ、Rmax/Rmin≦10で
ある。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】シリコン単結晶を長時間引き上げるには、
ルツボ内側表面に形成される石英ガラスの結晶相の形成
状態を制御することが重要である。石英ガラスは、シリ
コン単結晶を引き上げる温度領域では、本来ガラス相と
しては安定ではなく、熱力学的にはクリストバライト相
またはトリディマイト相が安定である。したがって、石
英ガラス中の不純物を皆無にしても、石英ガラス表面の
結晶化は本質的に避けられない。石英ガラスの結晶化は
ガラス内部よりも、界面エネルギーが大きく、物質拡散
が頻繁な、融液との界面で起こりやすい。
【0015】石英ガラスの結晶相は、石英ガラス表面で
斑点状に形成され、その形成は核生成と結晶成長に分け
て考えることができる。即ち、石英ガラス表面の斑点の
個数が核発生量に、斑点の大きさの変化が成長速度に相
当する。そして、各種表面状態の石英ガラスをシリコン
融液へ浸漬させる実験から、融液に浸漬した石英ガラス
表面には浸漬直後に石英ガラスの結晶相の核が生成し、
その後、浸漬時間に比例して成長することが明らかにな
った。そして、石英ガラス表面に形成した石英ガラスの
結晶相の斑点は浸漬時間に応じた大きさを示し、同一組
成の石英ガラスでは結晶成長速度は一定であることが判
明した。また、石英ガラスの結晶相の成長により結晶相
同士が接触した場合には、接触した結晶相界面で平面方
向の結晶成長が終息し、結晶相の食合いは起こらず、結
晶成長は専ら深さ方向に進展することも明らかになっ
た。これは、石英ガラス表面で一時期に核生成が起こっ
た後は、新たな核生成及び生成した結晶相の消滅は起こ
らず、結晶成長のみで石英ガラスの結晶相の総量が増加
する機構であることを示している。そして、石英ガラス
の表面状態により、石英ガラスの結晶相の核生成は大き
く影響を受ける。そこで、本発明は、この核生成の起点
を意識的に高密度化して、ルツボ内側表面の石英ガラス
を極めて短時間で均一に結晶化させると共に石英ガラス
の結晶化を専らルツボの厚み方向に成長促進することに
より、シリコン単結晶引上げにおいて長時間の使用に耐
える石英ガラスルツボとするものである。本発明では、
以下に述べるような、ルツボ内側表面の粗面化、およ
び、石英ガラスと異なる組成からなる結晶質の皮膜形成
またはシリカ粒子の植種という結晶化促進物質のルツボ
内表面への付与という結晶化手法、並びにこのような結
晶化手法を施した後の予備熱処理による結晶質層の形成
という技術を複合的に組み合わせる。
【0016】本発明の基本的な第1の発明は、石英ガラ
スルツボの内側表面を均一に粗面化すると共に、石英ガ
ラス組成と異なる結晶質層で内側を被覆してなる石英ガ
ラスルツボである。通常、石英ガラスの結晶相の核形成
は、石英ガラス表面での表面エネルギーまたは界面エネ
ルギーの変化が大きい部位で起こりやすい。具体的に
は、不純物粒子が吸着した部分や構造欠陥のある部分な
どである。この表面エネルギーの変化を意識的につくる
には、表面に均一で微細な凹凸をつけることが簡便で効
果的であり、さらに結晶相の核となる結晶質層で被覆す
ることにより,石英ガラスの結晶相の核生成部位を均一
に極めて高密度に形成できる。そして、石英ガラスの結
晶相が極めて短時間でルツボ内側表面を覆い尽くすた
め、石英ガラスの結晶相の成長は専らルツボの厚み方向
となり、石英ガラスルツボ内側表面に形成される結晶相
が均一に厚くでき、長時間使用してもシリコンへの石英
ガラスルツボ表面の溶解速度の違いによる表面荒れが無
く、シリカ切片の剥離が少ないシリコン単結晶引上げ用
石英ガラスルツボとなる。
【0017】さて、上記のルツボ内側表面の粗面化つい
ては、粗表面の凹凸が算術平均粗さ0.02〜20.0
μmの表面粗さでなければならない。
【0018】算術平均粗さは、Raと表示され、各種工
業製品の表面粗さを表すパラメーターとして知られてい
る。その定義および表示については、JIS B−06
01に詳しく記載がある。国際規格では、ISO 46
8、ISO 3274、ISO 4287、ISO 4
288等に対応している。Raは、粗さ曲線からその平
均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分
の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、
粗さ曲線を中心線に対して積分した値をマイクロメート
ル(μm)で表したものである。表面粗さの測定は、
光、レーザー等による非接触法や、ダイヤモンド等の安
定な材料の針を使って試料表面に接触させて測定する接
触法が知られている。
【0019】従来の石英ガラスルツボの内側表面は、算
術平均粗さ(Ra)が、0.002〜0.01μm程度
の平滑な表面である。これはシリカ粉を回転する型内に
供給しシリカ粉充填層を形成し、それを雰囲気制御した
アーク加熱で溶融・固溶させルツボ内面を形成するため
不可避的に平滑になるものであり、表面粗さの制御はこ
の方法のみではできない。表面に意識的に凹凸をつけた
面を粗面と呼ぶことにする。粗面の算術平均粗さは、
0.02μmより小さいと核生成促進効果が少なく、2
0μmより大きいと核生成の均一性が損なわれ、いずれ
も石英ガラス表面に結晶相を不均一に形成してしまうた
め、ルツボ内側表面の不均一な溶損を引き起こす。
【0020】粗面の粗さは、同一ルツボ内で大きく値が
異ならないことが必要である。これは、表面の凹凸によ
って石英ガラスの結晶相の核生成密度が影響を受けるの
で、同一ルツボ内での均一な石英ガラスの結晶相形成の
ために重要である。このため、粗面の粗さの最小値に対
する最大値の比(Rmax/Rmin)は、10以下で
あることが望ましい。この比が10を越えると、大きな
粗さの部分に形成した結晶相が離脱しやすくなるため、
好ましくない。
【0021】また、粗面はルツボ内の均一に結晶化させ
たい部位に限って施してもかまわないが、少なくともシ
リコン融液と接する部位は粗面とする。特に、ルツボの
底部内側表面は必ずシリコン融液と接触し,接触時間も
他のルツボ内の内側表面より長くなるので、底部内側表
面は粗面とすることが必要である。石英ガラスルツボの
開口部に近い部分で、シリコン融液に接触しない場所
は、表面に凹凸を施す必要もなく、余分に加工費や手間
がかかるのであれば粗面としなくても良い。
【0022】このようなシリコン単結晶引上げ用石英ガ
ラスルツボは、石英ガラスより表面硬度の高い粒子また
は材料を該石英ガラスルツボ内側表面に一定の応力で接
触させて、ルツボ内側表面に凹凸をつけることで製造で
きる。この際、粒径が0.01〜40μmの硬質粒子を
使うことで、ルツボのRaが0.02〜20μmの粗面
が得られる。あるいは、算術平均粗さが0.01〜40
μmの硬質材料を使用しても良い。粗面の形成は、単一
ルツボ内での算術平均粗さのばらつきがRmax/Rm
in≦10となるように、一定の応力で行うことが必要
であり、このためには、例えば、紙やすりを使って手で
表面を粗くする方法より、電動モーターを使ったベルト
サンダーや研削砥石が好ましい。粗面の形成は、乾燥雰
囲気中でおこなっても良いし、溶液中でおこなってもか
まわない。また、石英ガラスと化学反応する溶液中で、
上記硬質粒子や硬質材料と接触させ、化学機械研磨作用
を利用して表面に凹凸をつけてもよい。
【0023】石英ガラスより表面硬度の高い材料として
は、珪素やチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物や、アル
ミナ、ダイヤモンド、窒化ボロン、高純度石英等が工業
的には使用できる。これらは、単体でも、粒子状でも、
被覆された状態であってもよい。また,機械的に凹凸を
付ける方法は、例えば、研削機を石英ガラスルツボ内に
設置し、ルツボを回転させ、上記石英ガラスよりも表面
硬度の高い材料よりなる研削工具を使用して製造でき
る。あるいは、上記硬質粒子を石英ガラスルツボ内面に
高圧のガスとともに吹き付け、表面に凹凸を付ける方法
も可能である。また、溶液中に上記硬質粒子を分散さ
せ、超音波洗浄機を使って粒子を石英ガラスルツボ内面
に衝突させ凹凸をつけることも可能である。
【0024】これらのルツボ内面の表面を粗くする方法
で、上記硬質材料またはその一部が石英ガラスルツボ内
面に付着した場合、付着物がシリコン単結晶引き上げに
悪影響を与えないように配慮する必要がある。例えば、
炭化珪素が付着していて、引上げ中にシリコン融液中に
溶解し、シリコン単結晶中の炭素濃度を上げ、品質を劣
化させるような場合には、付着量を少なくするか、洗浄
を行うことで回避できる。また、他の硬質材料を使用す
る等のプロセスおよび使用材料の工夫によっても解決で
きる。逆に、シリコン単結晶の品質への影響はなく、付
着物によってクリストバライトの核生成や成長が促進さ
れるような場合には、積極的に付着物を利用しても良
い。化学的な作用を利用して表面に凹凸を付ける場合に
は、石英ガラスと化学反応し、溶解または浸食する溶液
を利用すると効果的である。このような溶液として、フ
ッ酸を含んだ溶液が適当である。フッ酸の濃度や温度
は、表面粗さや処理時間に応じて決める。この溶液中に
前記硬質物質を含ませ、化学的および機械的作用を併用
して表面の凹凸をつけても良い。
【0025】次に、粗面化したルツボの最表面に形成す
る石英ガラスと異なる組成からなる結晶質の皮膜につい
て述べる。粗面化ルツボに皮膜を形成させた方が、皮膜
の石英ガラス表面への密着性がより良くなり、同時に、
結晶核生成場所の密度を増やすことができる。結晶核生
成場所を均一に密度高く分布させるには、結晶粒径の小
さい緻密な皮膜を施すことが効果的である。高密度な生
成核分布のために、皮膜の結晶粒径が1μm以下である
ことが望ましい。また、結晶粒が0.005μmより小
さいと効果が薄れるので、結晶粒径は0.005〜1μ
mであることが望ましい。皮膜物質が溶解すると結晶化
促進効果がなくなるような場合には、シリコン融液と接
触しても微細結晶粒を維持するために、少なくとも皮膜
物質の融点がシリコンより高いことが必要である。
【0026】皮膜の厚みは、0.01μm〜50μmで
十分な効果を発揮する。厚みが0.01μmより薄いと
石英ガラス結晶相の生成核となる効果がみられなくな
り、50μmを越えた場合は効果が飽和すると共に、皮
膜の形成コストが増大すること、皮膜の内部応力が増し
て密着性を確保し難くなること等から、50μm以下の
厚みが望ましい。さらに、シリコン融液と皮膜が反応
し、皮膜の溶解あるいは溶損が起こることがあり、溶解
成分がシリコン融液の組成を変えて、引上げられるシリ
コン単結晶の特性に影響を与えるので、50μmを越え
た厚膜は好ましくない。
【0027】このような皮膜として、具体的には、皮膜
の組成がチタンと炭素及び/又は窒素の化合物及び/又
はチタンが、石英ガラスとの密着性にも優れ、高温での
耐久性も高いため、好ましい。さらに純度が必要とされ
る場合には、皮膜中のチタン、炭素及び窒素以外の元素
の含有量が1重量%以下である皮膜が望ましい。単一の
組成からなる皮膜であっても、これらの皮膜を複数積層
した多層皮膜であっても良い。また、これらは微細粒で
結晶化しやすく、融点が2000℃以上とシリコンの融
点(約1414℃)よりはるかに高く、好ましい。これ
ら結晶質皮膜は、チタンと炭素および窒素の組成比を広
範囲に取ることができる。例えば、窒化チタンでは、化
学式において、TiN、Ti2N、Ti34といった結
晶相が存在し、成膜条件によってこれらの複合相にも成
り得る。また、TiNも、窒素28at%から60at
%まで、広範囲の組成で結晶相となる。また、チタンと
炭素及び窒素の化合物は、700〜800℃付近で、酸
素と反応してチタンの酸化物(例えばTiO2やTi2
3など)に変化することがある。酸化物となっても、石
英ガラスの結晶相の生成核となる効果は十分に認められ
ている。
【0028】このようなシリコン単結晶引き上げ用石英
ガラスルツボは、0.01〜50μmの結晶質皮膜をP
VD(Physical Vapor Deposit
ion)法等によりルツボ内側表面に形成することで製
造できる。PVD法は、熱変形などの基材への温度によ
る負荷が少なく、緻密で微細粒からなる結晶質皮膜が形
成できる特徴があり、ルツボ内側表面の薄膜形成に適し
ている。このPVD法として、具体的には、真空蒸着、
スパッタリング、イオンプレーティングの各種手法が用
いることができる。いずれも基材の温度は、500℃以
下で被覆可能で石英ガラスルツボに熱による変形を与え
ない。石英ガラスは、1000℃以上の高温で粘性率が
小さくなることが知られていて、特に重量の大きい石英
ガラスは、高温では自重で変形する。このため、表面処
理はできるだけ低温で行う必要がある。上記3手法は、
成膜速度が毎分0.02〜0.2μm程度で、例えば1
μmの皮膜を得るのに5〜50分と実用的である。
【0029】真空蒸着は、真空下で、チタンを電子ビー
ム等の熱源を用いて溶解し、チタンの蒸気を発生させ、
これを基材に蒸着する方法である。装置構成が比較的簡
単で、皮膜形成コストは上記3手法のうちで最も安い。
スパッタリングは、イオン化したアルゴン等のガス成分
をターゲットに照射し、このターゲットからたたき出さ
れた成分を基材に成膜する方法である。ターゲットの組
成に近い皮膜が得られるため、複合皮膜の形成に有利で
ある。イオンプレーティングは、プラズマでイオン化さ
れた成分を基材上で反応させ成膜する方法で、基材に電
荷をかけることでイオンを呼び寄せ、緻密な皮膜形成に
有利で、基材温度が低くても高い密着性が得られる。イ
オンプレーティング法では、微細粒の結晶よりなる皮膜
形成が容易で、例えば、イオンプレーティング法の一種
であるアーク放電活性化イオンプレーティング法を使
い、基板の温度300℃で、窒素圧力0.05Paで成
膜した厚さ1μmの窒化チタンの皮膜では、結晶粒が約
0.01μmの微細粒となる。このように目的とする皮
膜の特性に応じて、成膜法を選ぶことができる。
【0030】PVDにより被覆する部分は、必ずしも、
石英ガラスルツボ内側全面である必要はない。特に、ル
ツボの開口部付近ではシリコン融液と接触しない部分が
あり、この部分まで被覆する必要はない。シリコン原料
をルツボ内で効率良く溶解するには、シリコン融液と接
触しない部分に上記皮膜を施さないほうが、熱効率がよ
い場合がある。被覆によって、ルツボの外側にあるヒー
ターからの熱放射が妨げられるような場合には、開口部
付近は被覆しないほうが好ましい。このような石英ガラ
スルツボは、被覆したくない部分を例えばステンレス板
やアルミホイール等でマスクし、上記PVD被覆を施せ
ば、容易に製造できる。
【0031】また、別の皮膜として、チタン、カルシウ
ム、バリウム及びアルミニウムのうち少なくとも一種以
上の元素の酸化物を含有する組成の皮膜でも良い。即
ち、チタン、カルシウム、バリウム及びアルミニウムの
酸化物及びこれらの複合酸化物にも、上述した皮膜に若
干劣るものの、石英ガラスルツボ内側表面から厚み方向
への石英ガラスの結晶相の成長促進に効果がある。これ
らの酸化物を含有する皮膜は、これらの酸化物粒子と金
属アルコキシドとの懸濁液を石英ガラスルツボ内側表面
に塗布、乾燥することにより形成できる。酸化物粒子の
粒径としては、50μm以下であれば良く、より細かい
微粒子である方が結晶生成核を増やせるので、好まし
い。50μm超の粒径では、皮膜から脱落し易くなり、
シリコン単結晶引上げに悪影響を及ぼすことがあるた
め、好ましくない。金属アルコキシドは、皮膜形成がで
きるものであれば良く、特に限定はしないが、例えばテ
トラエトキシシラン等が容易に入手でき、取扱い易いの
で好適である。また、酸化物粒子と金属アルコキシドの
混合割合は、重量比換算で、金属アルコキシドに対して
0.01〜100倍の酸化物粒子であることが望まし
い。より好ましくは、0.1〜50倍である。0.01
倍未満では酸化物粒子の石英ガラスの結晶化促進効果が
得られず、100倍超ではルツボ内面に皮膜形成が困難
となる。
【0032】次に、本発明の基本的な第2の発明は、石
英ガラスルツボの内側表面を均一に粗面化すると共に、
該内側表面の表層領域にシリカ粒子を植種してなる石英
ガラスルツボである。
【0033】石英ガラスルツボの内側表面の粗面化に関
しては第1の発明において前述した通りである。
【0034】ここで、第1発明における石英ガラスと異
なる組成からなる結晶質の皮膜とは、別の結晶化促進物
質であるシリカを植種する手法を説明する。結晶化促進
物質としてのシリカ粒子は金属元素のような不純物では
ないので、高純度のシリコンウェハー製造に対しても汚
染源とならないという利点がある。シリカ粒子の植種は
粗面化ルツボにでも通常ルツボにでも施すことができる
が、粗面化ルツボに植種したほうが、粒子の石英ガラス
表面への密着性がより良くなり、同時に、結晶核生成場
所の密度を増やすことになり、ガラスの結晶化を結果と
して早めることができる。石英ガラスルツボ内側表面に
シリカ粒子または結晶質シリカ粒子の核を植種し、石英
ガラスの結晶相の核生成部位を意識的に均一にしかも密
度高く作ることで、石英ガラスの結晶相が短時間でルツ
ボ表面を覆いつくすようにし、長時間使用してもシリコ
ン融液への石英ガラスルツボ表面の溶解速度の違いによ
る表面荒れがなく、切片の剥離を少なくすることが可能
となる。
【0035】上記シリカの結晶質粒子は、ルツボの内側
表面から厚さ1mm以内の表層領域に分布させ、この範
囲でのシリカの結晶質粒子の体積は、5〜90%にす
る。5%より少ないと生成核の密度が少ないため効果が
薄く、90%より大きいと効果は変わらないものの結晶
質粒子が脱離しやすくなる。内側表面から厚さ1mm以
内の表層領域にするのは、シリコン単結晶引き上げ用石
英ルツボの内側表面に生成するシリカの結晶相の厚さ
が、大きくとも5mm程度であるため、この範囲での表
層からの初期核生成に着目すればよいためである。つま
り、内側表面から厚さ1mm以内の表層領域を結晶化さ
せれば、それよりも深い領域にも結晶化が進んでいき、
石英ルツボの内側表面の結晶化を十分に促進できるから
である。
【0036】シリカの結晶質粒子間は非晶質相で埋める
のが好ましい。シリカの結晶相は、クオーツ、トリディ
マイト、クリストバライト等が知られていて、それぞれ
熱膨張係数が異なる。また、これら結晶相は、加熱によ
り変態し、体積変化を伴う。クオーツは、570℃で変
態し、トリディマイトは、160℃と106℃で、変位
型転位することが知られている。低温型クオーツは、比
重2.65なのに対し、高温型は、比重2.49で、変
態に際し、体積変化を伴う。また、クリストバライトで
も、高温型と低温型があり、200℃〜300℃に変態
温度があるが、この温度を加熱時または冷却時に通過す
ると約3.7%の体積変化によって結晶にクラックが生
じ、表面が剥離する場合がある。シリカの結晶質粒子間
の非晶質相は、結晶質粒子の体積変化を吸収し緩衝する
効果があるため、熱によるルツボ内側表面の性状変化を
極小にすることができる。シリカの結晶質粒子は、ルツ
ボ使用中に表面から脱離しないことが必要である。常温
からシリコンを溶解する温度まで、シリカの結晶質粒子
はルツボ内側表面に維持され、シリコン融液と接触した
時、シリカの結晶質粒子を核に結晶成長が促進されるこ
とが重要である。
【0037】石英ガラスが結晶化する場合、生成する結
晶相は、ほとんどの場合クリストバライト相である。し
たがって、結晶核は初めからクリストバライトであるこ
とが好ましい。さらに、シリカの結晶相のうち、酸素の
含有量が50〜54重量%とSiO2の化学量論組成に
近いものが、好ましい。これは、結晶粒が数μm以上
で、白色を呈し、シリコン融液と接したとき、表面が平
滑になりやすく、シリコン融液に対して均一な溶解を実
現する。これに対して、酸素含有量が50重量%未満の
ようにSiO2の化学量論組成より酸素が少ないもの
は、1μm以下の微結晶粒で茶褐色を呈し、シリコン融
液中に離脱あるいは溶解しやすいことがわかった。した
がってシリカの結晶質粒子は、酸素50〜54重量%含
有するクリストバライトであることが好ましい。また、
シリカの結晶質粒子は、結晶核となるものであるため、
核の密度を高めるためにも均一に核を生成させるために
も、できるだけ細粒であるほうが効果的であり、シリカ
の結晶質粒子の最大粒径は、0.5mm以下であること
が望ましく、これより粗粒だと核密度を上げる作用と核
生成を均一にする作用が発揮しにくい。
【0038】このようなシリコン単結晶引上げ用石英ル
ツボは、シリカの結晶質粒子と金属アルコキシドを含む
液との混合液を石英ガラスルツボの少なくともシリコン
融液と接する内面に塗布し、これを乾燥後焼成し、シリ
カの結晶質粒子を石英ガラスルツボ内面に密着性良く付
着させることで製造できる。あるいは、石英ガラスルツ
ボの少なくともシリコン融液に接する内面を800〜1
700℃に加熱し、内表面を溶融させず軟化させた状態
で、シリカの結晶質粒子を押し付け、シリカの結晶質粒
子を石英ガラスルツボ内面に埋め込み付着させることで
製造できる。
【0039】金属アルコキシドを使ってシリカガラスを
合成する方法は、ゾルゲル法と呼ばれるが、本発明では
ゾルの調整時にシリカの結晶質粒子を混合する点に特徴
がある。1000℃程度の熱処理でガラスから生成する
結晶質粒子は、クリストバライトである。クリストバラ
イト粒子は、例えば高純度石英ガラスを乳鉢等で0.5
mm以下に粉砕し、大気中またはアルゴン雰囲気下で、
電気炉で1300℃10時間焼成後、再度乳鉢等で0.
5mm以下に粉砕することによって製造できる。このと
き、石英ガラス原料は99.9%よりSiO2含有量の
高い高純度なものを原料とし、粉砕するときには不純物
の混入のないよう留意する。ゾルゲル法では、まず液体
中に非常に微細なコロイド粒子が懸濁した状態にあるゾ
ルを作り、これにシリカの結晶質粒子を混合し、石英ガ
ラスルツボの内側表面に塗布する。ゾルの粘度は、2c
p〜20cp程度が塗布しやすく一定の膜厚が得られて
適当である。シリカの結晶質粒子の混合量は、ゾル中の
10〜50重量%になるように混合するのが適当であ
る。これを室温で10分程度乾燥しコロイド粒子を凝集
させ流動性の消失したゲルとした後、100℃〜150
℃程度で10〜60分加熱することにより溶媒を蒸発さ
せ、さらに500℃〜700℃の高温で60分〜120
分加熱して焼結することにより非晶質な石英ガラスで結
合されたシリカの結晶質粒子を含む厚さ0.01〜1m
mの塗膜を作る。金属アルコキシドを原料とする場合に
は、99.99重量%より高純度のシリコンアルコキシ
ドまたはシリコンメトキシドが好ましく、塗布しやすい
ようにアルコールや水で粘度調整しておくとよい。結晶
核となるクリストバライトの微粒子は、より細かい方が
少量の添加でも結晶化させる効果が大きくなり、ルツボ
使用時のシリコン融液と接触した場合に、より低温短時
間で石英ガラスルツボ内側表面が全面結晶化される。こ
の方法で製造されたルツボは、使用前にたとえば130
0℃程度の高温で、アルゴン等の不活性雰囲気下で焼成
すると粒子の密着性も上がり、好ましい。
【0040】もう一つのシリカを植種する方法は、石英
ガラスルツボの少なくともシリコン融液と接する内側表
面を800〜1700℃に加熱し、該ルツボ内側表面を
溶融させずに軟化させた状態で、シリカの結晶質粒子を
ルツボ内側表面に押しつけ、該ルツボ内面に埋め込み付
着させる方法である。これは、石英ガラスの高温での軟
化現象を利用したものである。石英ガラスの融点は、高
純度なものでは、1700℃程度であるが、必ずしも融
点直下まで加熱しなくてもよい。800℃程度でも粘性
を持つ。付着させる時は、シリカの結晶質粒子の核生成
効果を最大限に発揮させるため、シリカの結晶質粒子
が、再結晶したり溶解したりすることを避ける必要があ
り、1700℃以下の温度で、できるだけ迅速に行う。
付着させる結晶質シリカ粒子は、最大粒径が0.5mm
以下のものが好ましく、付着させる量は、結晶質シリカ
粒子同士が重ならず、ルツボ内側表面を5〜90%覆う
程度が好ましい。埋め込み量は、結晶質シリカ粒子が半
分以上埋め込まれる程度が好適で、シリコン溶解時に、
脱離しないことが重要である。
【0041】次に、本発明の第3および第4の発明に係
る、上述した石英ガラスの結晶質層について述べる。
【0042】シリコン単結晶を引き上げる温度域におけ
る石英ガラスの結晶成長過程では、石英ガラスがクリス
トバライト相に変態する。そこで、内側表面に上述した
ような核形成起点を設けた石英ガラスルツボを、相変態
温度域に熱処理することにより、予め石英ガラス表面に
結晶質層を形成させてやれば、形成される石英ガラスの
結晶相をより厚くすることができる。
【0043】例えば、上述したようなシリコンの融点よ
りも高融点である物質の被覆層を核形成起点として石英
ガラスルツボの内側表面に形成したものを、相変態温度
域に熱処理することによって、本発明の第3の発明に係
る、ルツボ内側の最表面に前記高融点物質の被覆層を有
しさらにこの被覆層の内側に結晶質シリカ層を有する石
英ガラスルツボを得ることができる。
【0044】あるいはまた、例えば、上述したように石
英ガラスルツボの内側の表層領域に植種された結晶質シ
リカ粒子を核形成起点としたものを、相変態温度域に熱
処理することによって、本発明の第4の発明に係る、ル
ツボ内側の表層領域に結晶質シリカ層を有する石英ガラ
スルツボを得ることができる。
【0045】なお、このような予備熱処理によって結晶
質層を形成する場合において、前述したような石英ガラ
スルツボ内側表面の粗面化処理は必ずしも必須ではな
く、単に結晶化促進層(石英ガラス組成と異なる結晶質
層等)を設けても、所望の作用効果を奏することができ
るが、粗面化処理をさらに組み合わせることによってさ
らに優れた作用効果が得られる。
【0046】また、これら第3および第4の発明に係
る、ルツボの内側表面部位に石英ガラスの結晶質層を有
する石英ガラスルツボの製造方法としては、上記に例示
したものに特に限定されるものではない。
【0047】本発明の第3および第4の発明に関し、上
述したように予め形成する石英ガラスの結晶質層の厚み
は、特に限定するものでなく、シリコン単結晶引上げに
要する時間に合わせて適宜設定すれば良いが、この結晶
質層の厚みが5mmを越えると石英ガラスルツボ自体に
要求される諸特性に悪影響を及ぼすことがあるので、結
晶質層としては5mmの厚みで十分である。必要によっ
て、結晶化済石英ガラスルツボを室温まで冷却する場合
には、β−α変態で石英ガラス表面の結晶層が破壊ある
いは剥離しないために、結晶質層の厚みは1mm以下で
あることが好ましい。一方、結晶質層の厚みの下限値と
しては、このように結晶質層を予め形成することによる
顕著な効果が期待できるという観点からは、例えば20
μmという値を挙げることができるが、これに限定され
るわけではなくこれ以下の厚みであってもよい。
【0048】結晶質層を形成する熱処理としては、石英
ガラスが相変態を起こす条件であれば、熱処理の温度、
時間、雰囲気を制限するものではない。しかし、工業的
生産性の観点から、実用的かつ効果的な処理として、熱
処理温度としてガラス転位温度の1200℃以上、かつ
石英ガラスの軟化点温度以下であることが望ましい。1
200℃以下では、石英ガラスの結晶化速度が極めて遅
く,必要な結晶層厚みを得るには時間がかかって不経済
であり、石英ガラスの軟化点温度(石英ガラス材質に依
存する。代表的には例えば、1650℃)より高温で
は、ルツボの熱変形が発生し、シリコン単結晶引上げを
行えなくなるため、好ましくない。結晶質層の成長速度
は1600〜1700℃で最大となるので、この温度ま
で昇温するのが望ましいが、使用する石英ガラスの軟化
点温度が上限となることに注意すべきである。熱処理の
保持時間は、得たい結晶質層の厚みに応じて設定すれば
良い。熱処理を行う雰囲気は、特に限定するものではな
く、不活性ガス雰囲気中でも、大気中でも、水蒸気含有
雰囲気でも同様に結晶質層を形成できる。また、この熱
処理は、単結晶引上炉内で行ってもよいし、別の汎用的
な熱処理炉内で行ってもよい。別の熱処理炉内で行う場
合には、酸素濃度や水蒸気圧を高くすることが可能とな
り、結晶引上炉内のような還元雰囲気と比較してより高
い結晶成長速度を得ることができる。さらに、別の熱処
理炉内で行う場合には、結晶引上装置の占有時間を削減
できる可能性があり、生産性上有利な場合もある。
【0049】なお、本発明において母材として用いる石
英ガラスルツボは、特に限定するものではなく、天然石
英粉を原料としたものでも、合成石英粉を原料としたも
のでも構わず、シリコン単結晶引上用として販売されて
いるものを用いることもできる。また、石英ガラスルツ
ボの大きさ、形状、製造元も特に限定するものではな
い。
【0050】
【実施例】以下に、表1と表2をもとに、本発明の実施
例及び比較例を示す。使用した石英ガラスルツボは、い
ずれも天然石英粉から製造した市販のルツボで、口径は
約455mm(18インチ)、ルツボ内側表面の表面粗
さは、0.003〜0.007μmRaの範囲のもので
あった。
【0051】石英ガラスルツボ内側全表面の粗面化処理
は、ダイヤモンドベルトサンダーで実施した。また、い
ずれも、Rmax/Rmin≦10の条件も満足してい
た。TiO2とCaAl24の石英ガラスルツボ内側全
表面への塗布は、これら粉末試薬をテトラエトキシシラ
ンと混合して懸濁液とし、この懸濁液を塗布し、120
℃、30分間保持し、さらに600℃で1時間焼成し
て、最表層の結晶質層を形成した。
【0052】TiN及びTiCの石英ガラスルツボ内側
全表面への皮膜形成は、イオンプレーテイング法で実施
した。被覆層はいずれも結晶相であり、結晶粒はいずれ
も0.005μm〜1μmの範囲であった。
【0053】シリカ粒子の石英ガラスルツボ内側全表面
への植種は、以下の手順で行った。クリストバライト粒
子は、上記石英ガラスルツボを100μm以下に粉砕
し、高純度アルミナルツボに入れ、アルゴン雰囲気中で
1400℃5時間焼成し、これを粉砕したものを使用し
た。この粉末のX線回折法による解析で、クリストバラ
イトであることを確認した。クオーツおよびシリカガラ
スは、高純度化学(株)製試薬を用いた。ゾルゲル法
は、テトラメチルオルソシリケート253重量部に、水
240重量部、メタノール53重量部、及びシリカ粒子
を所定量添加撹拌し、石英ガラスルツボ内側表面に塗布
した。塗布後、約10分間室温で乾燥し、120℃で3
0分保持した。さらに加熱炉で600℃、60分焼成し
たものを使用した。
【0054】各前処理を施した石英ガラスルツボを予備
加熱してクリストバライト層を形成させる場合には、1
0時間焼成した。一般加熱炉で予備加熱する場合には、
同様の前処理を施した石英ガラス片(同じ種類の石英ガ
ラスルツボから切り出した約30×30×10mm3
大きさのサンプル)とともに大気中で加熱してクリスト
バライト層を形成させた。予備加熱後に室温まで冷却
し、サンプル表面に形成されたクリストバライト層の厚
さを断面観察によって実測し、この厚さを石英ガラスル
ツボ内側表面に形成されたクリストバライト層の厚さと
同じであるとして取り扱った。薄膜X線回折した結果、
いずれのサンプルも結晶相としてはクリストバライト相
であることを確認した。一方、引上炉内で予備加熱する
場合には、ルツボをアルゴンガス流中(水蒸気と酸素の
濃度はともに100ppb以下)で同じく10時間焼成
し、引き続いて単結晶引上を行い、完了後に石英ガラス
ルツボ内側表面の断面を室温で観察し、シリコン融液と
接触していなかった部位のクリストバライト層の厚さを
実測するのみとした。
【0055】これらの石英ガラスルツボに多結晶シリコ
ンを充填して溶解させ、CZ法によりアルゴン雰囲気下
で直径150mmのシリコン単結晶インゴットを製造し
た。各引上例は、全て同じ条件で操業した。ルツボは熱
変形することもなく常に安定したシリコン単結晶の製造
ができた。実施例と比較例のいずれの場合にもまず最初
に直胴部が500mmであるインゴットを引上げたが、
比較例3を除いて全て無転位で引き上げることができ
た。1回目の単結晶引上後、残りのシリコン融液を用い
て2回目以降の単結晶引上げを行い、直胴部が500m
mのインゴットを育成しては無転位であるかを確認した
後に、引上げたインゴットをシリコン融液中に浸漬して
全て溶解し、再び結晶を育成するという「引上-再溶
解」サイクルを有転位化するまで繰り返した。ただしこ
こでは、無転位確率の評価として、このサイクルでの無
転位引上は最高4回で十分と判断して終了させた。引上
途中で有転位化した場合には、最後まで引上げた後、室
温まで冷却した。無転位で単結晶インゴットを引上げる
ことができた回数及び直胴長さによってルツボ寿命の長
短を判断した。例えば、2回目めの引上途中の直胴長さ
315mmの位置で有転位化した場合には、無転位引上
回数を1.6(1+315/500:少数点第二位切
捨)とみなした。
【0056】シリコン単結晶を引上げた後、石英ガラス
ルツボ内側表面のクリストバライト層の被覆面積率と厚
さを実測した。また、各引上例において1回目に引き上
げた無転位単結晶インゴットの直胴部中央から切り出し
た2mm厚のスライスウェハーを赤外線吸収スペクトル
(FT−IR)で測定したところ、全ての実施例と比較
例において、酸素濃度は8.5±0.5×1017個/c
3(JEIDA基準)の範囲内にあり、かつ炭素濃度
は1.5×1015個/cm3(JEIDA基準)以下で
あった。
【0057】比較例1 粗面化処理、結晶化促進、予備熱処理のいずれの処理も
施していない従来通りの通常石英ガラスルツボを用いて
単結晶引上を行った。育成当初は有転位化することな
く、シリコン単結晶を引き上げることが可能であった
が,時間が経つと有転位化してしまい、短時間の内に単
結晶で引き上げることができなくなった。単結晶引上げ
後にルツボを観察したところ、ルツボ内表面が荒れてい
るとともにクリストバライト相が不均一に分布してい
た。ルツボ表面でのクリストバライト層被覆率は5%で
あった。従来のルツボでは、茶膜および面荒れが発生し
て、単結晶インゴットの無転位引上回数が1.5と少な
く、ルツボ寿命が短いことを示している。
【0058】比較例2 通常石英ガラスルツボに粗面化処理したが、表面粗度が
0.01μmと小さかったために結晶化促進効果がほと
んどなく、ルツボ表面の状態は通常ルツボと大差なかっ
た。そのため、無転位引上回数が1.5と従来のルツボ
と同等であったと考えられる。これは、結晶化促進のた
めには適度な粗度の粗面化処理が必要であることを示し
ている。
【0059】実施例1 通常石英ガラスルツボを粗面化処理し、さらにTiN結
晶化促進層を形成した。このTiN結晶化促進層は金色
を呈し、鏡面のような金属光沢を持ち、ルツボ表面に固
着しており、多結晶シリコン原料を投入しても層が剥離
することはなかった。このルツボを用いて、単結晶引上
を行った。シリコン融液と接触しているクリストバライ
ト層が時間の経過とともに部分的に溶損したが、それで
もクリストバライト層被覆率が通常(比較例1)よりも
はるかに高い70%を保ち、無転位引上回数が2.2に
改善した。これは、粗面化処理かつ結晶化促進層形成
が、ガラス結晶化に効果的であることを示している。
【0060】実施例2 通常石英ガラスルツボに粗面化処理した後に、クリスト
バライト粒子結晶化促進層を形成した。クリストバライ
ト粒子はルツボ内表面に密着しており、触手しても剥離
するようなことはなく、多結晶シリコン原料を投入して
も層が剥離することはなかった。このルツボを用いて、
単結晶引上を行った。シリコン融液と接触しているクリ
ストバライト層が時間の経過とともに部分的に溶損した
たが、クリストバライト層被覆率が通常よりも高く、無
転位引上回数が2.0に改善した。これは、粗面化処理
かつシリカ粒子層形成が、ガラス結晶化に効果的である
ことを示している。
【0061】実施例3 通常石英ガラスルツボにTiC結晶化促進層を形成し、
一般炉内で1500℃10時間予備加熱してクリストバ
ライト層を形成させた後、室温に冷却した。このルツボ
を引上炉内に入れ、単結晶引上を行った。ルツボ内側表
面におけるクリストバライト層被覆率は95%以上と高
く、均一にクリストバライト層が形成されたことを意味
している。このためルツボ表面からのクズ破片の剥離が
抑制されたため、無転位引上回数が3.6に改善した。
これは、結晶化促進層形成かつ高温焼成が、ガラス結晶
化に効果的であることを示している。
【0062】実施例4 通常石英ガラスルツボに粗面化処理した後にTiO2
晶化促進層を形成し、一般炉内で1500℃10時間予
備加熱してクリストバライト層を形成させた後、室温に
冷却した。ルツボ内表面は全面白色化し、緻密で均一な
クリストバライト層が厚く形成されており、特に目立っ
たクラックは見られなかった。このルツボを引上炉内に
入れ、単結晶引上を行った。ルツボ内側表面におけるク
リストバライト層被覆率は98%以上と高く、均一にク
リストバライト層が形成されたことを意味している。実
施例3に対してさらに粗面化処理を加えた本実施例4で
は、クリストバライト層がさらに厚くなったために被覆
率が向上し、ルツボ表面からのクズ破片の剥離が抑制さ
れたため、無転位引上回数が5.0に改善したと考えら
れる。
【0063】比較例3 通常石英ガラスルツボを粗面化処理し、さらにTiO2
結晶化促進層を形成したが、その厚みが薄かったために
結晶化促進が十分ではなく、クリストバライト層が薄か
ったと考えられる。シリコン融液と接触しているクリス
トバライト層が時間の経過とともに部分的に溶損したた
めにクリストバライト層被覆率が中途半端な20%とな
り、ルツボの面荒れが進行して無転位引上回数が1.3
と従来のルツボと同等以下になったと考えられる。これ
は、結晶化促進のためには適度な結晶化促進層厚が必要
であることを示している。
【0064】比較例4 通常石英ガラスルツボを粗面化処理し、さらにCaAl
24結晶化促進層を形成したが、その層厚が厚すぎ、さ
らに汎用加熱炉で1540℃10時間という予備加熱処
理が効果的すぎたために結晶化促進が法外に高くなり、
クリストバライト層が約2mmと厚くなった。一旦室温
に冷却したときにクリストバライト層にクラックが生じ
た。単結晶引上中にシリコン融液と接触しているクリス
トバライト層が部分的に剥離し、融液中を浮遊してシリ
コン単結晶界面に付着し、無転位引上回数が0.7に下
がったものと考えられる。このように汎用加熱炉では比
較的均一にルツボを焼成することができ、かつ酸素濃度
や水蒸気圧の高い雰囲気で焼成することができるので、
結晶化促進を極めて高くすることができた。念のため補
足すると、1540℃という予備加熱温度は高いもの
の、予備加熱時間を短縮できるという利点もある。ま
た、ここではクリストバライト層が1mmをはるかに越
えた約2mmと厚くなったために、クリストバライト層
にクラックが生じたが、予備加熱時間を短縮すればクリ
ストバライト層を1mm以下に制御することも可能であ
ることを付け加えておく。
【0065】実施例5 通常石英ガラスルツボにクォーツ粒子結晶化促進層を形
成し、引上炉内に入れ、1380℃10時間予備加熱し
てクリストバライト層を十分な厚さに形成させ、引き続
き単結晶引上を行った。クリストバライト層被覆率は8
0%以上と高く、均一にクリストバライト層が形成され
たことを意味している。そのため、無転位引上回数が
2.4に改善したと考えられる。
【0066】実施例6 通常石英ガラスルツボに粗面化処理した後にクォーツ粒
子結晶化促進層を形成し、引上炉内で1380℃10時
間予備加熱してクリストバライト層を形成させ、引き続
き単結晶引上を行った。クリストバライト層被覆率は9
0%以上と高く、均一にクリストバライト層が形成され
たことを意味している。そのため、無転位引上回数が
2.7に改善したと考えられる。実施例5と比較する
と、粗面化処理が複合されている本実施例6の方が、無
転位引上回数がより改善されていることがわかる。ま
た、実施例2と比較すると、高温焼成が複合されている
本実施例6の手法の方が、無転位引上回数がより改善さ
れていることがわかる。
【0067】実施例7 通常石英ガラスルツボに粗面化処理した後にシリカガラ
ス粒子結晶化促進層を形成し、引上炉内で1380℃1
0時間予備加熱してクリストバライト層を形成させ、引
き続き単結晶引上を行った。シリカガラス粒子の粒径を
4μmと微細とし、かつ体積率を90%と高くしたの
で、微細結晶核を多数植種できたため、クリストバライ
ト層被覆率は95%以上と高く、均一にクリストバライ
ト層が形成されることになった。そのため、無転位引上
回数が3.9に改善したと考えられる。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【発明の効果】本発明によれば、石英ガラス内側表面に
全面的に均一な結晶相を形成でき、ルツボ内側表面のみ
ならず肉厚方向にも必要な厚さだけ結晶化させることが
できるので、従来問題であったルツボ表面からのシリカ
クズ片の剥離を劇的に抑制でき、結果として従来の石英
ガラスルツボよりも長時間の使用に耐えるシリコン単結
晶引上げ用石英ガラスルツボが提供できる。これによ
り、シリコン単結晶を歩留り良く長時間引上げることが
可能となり、従来に比べ大幅に低いコストでシリコン単
結晶を製造できるという工業的に有利な効果を発現し
た。
フロントページの続き (72)発明者 碇 敦 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 竹林 聖記 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 水原 洋治 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4G062 AA11 AA18 BB02 CC09 MM07 NN34 QQ02 4G077 AA02 BA04 EG02 PD01 PD05

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともシリコン融液と接することと
    なる石英ガラスルツボ内側表面において、石英ガラス母
    材表面が0.02μm〜20μmの算術平均粗さであっ
    て、かつ、該母材表面にシリコンの融点よりも高融点で
    ある物質の被膜層を0.01μm〜50μmの厚さで有
    してなることを特徴とするシリコン単結晶引上げ用石英
    ガラスルツボ。
  2. 【請求項2】 少なくともシリコン融液と接することと
    なる石英ガラスルツボ内側表面において、石英ガラス母
    材表面が0.02μm〜20μmの算術平均粗さであっ
    て、かつ、該内側表面から厚さ1mm以内の表層領域に
    5〜90体積%のシリカ粒子を含む層を有してなること
    を特徴とするシリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツ
    ボ。
  3. 【請求項3】 少なくともシリコン融液と接することと
    なる石英ガラスルツボ内側表面において、石英ガラスル
    ツボの最表面にシリコンの融点よりも高融点である物質
    からなる厚さ0.01μm〜50μmの被膜層を有し、
    さらに該被覆層の内側に厚さ20μm〜5mmの結晶質
    シリカ層を有してなることを特徴とするシリコン単結晶
    引上げ用石英ガラスルツボ。
  4. 【請求項4】 前記結晶質シリカ層が、1200〜16
    50℃の温度に保持することによる石英ガラスの相変態
    で形成してなるものである請求項3記載のシリコン単結
    晶引上げ用石英ガラスルツボ。
  5. 【請求項5】 前記被膜層の結晶粒径が、0.005μ
    m〜1μmである請求項1、3又は4に記載のシリコン
    単結晶引上げ用石英ガラスルツボ。
  6. 【請求項6】 前記被膜層の組成が、チタンと炭素及び
    /又は窒素の化合物あるいはチタンである請求項1、3
    又は4に記載のシリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツ
    ボ。
  7. 【請求項7】 前記被膜層の組成が、チタン、カルシウ
    ム、バリウム、アルミニウムのうち少なくとも一種以上
    の元素の酸化物を含有する組成である請求項1、3又は
    4に記載のシリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツボ。
  8. 【請求項8】 少なくともシリコン融液と接することと
    なる石英ガラスルツボ内側表面において、該石英ガラス
    ルツボ内側表面から20μm〜5mmの領域が結晶質シ
    リカ層であることを特徴とするシリコン単結晶引上げ用
    石英ガラスルツボ。
  9. 【請求項9】 前記結晶質シリカ層が、石英ガラスルツ
    ボ内側表面から厚さ1mm以内の表層領域に5〜90体
    積%のシリカ粒子を含有してなる層を形成した後に、1
    200〜1650℃の温度に保持することによる石英ガ
    ラスの相変態で形成してなるものである請求項8記載の
    シリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツボ。
  10. 【請求項10】 前記シリカ粒子が、結晶質シリカ粒子
    である請求項9記載のシリコン単結晶引上げ用石英ガラ
    スルツボ。
  11. 【請求項11】 前記シリカ粒子が、クリストバライト
    粒子である請求項9記載のシリコン単結晶引上げ用石英
    ガラスルツボ。
  12. 【請求項12】 前記石英ガラスルツボの母材表面が
    0.02μm〜20μmの算術平均粗さである請求項3
    〜11のいずれか1項に記載のシリコン単結晶引上げ用
    石英ガラスルツボ。
  13. 【請求項13】 前記石英ガラス母材の表面粗さが、さ
    らに下記関係式を満足する最大粗さ(Rmax)、最小
    粗さ(Rmin)である請求項1、2又は12に記載の
    シリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツボ。Rmax/
    Rmin≦10
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