JP4702712B2 - 管状SiC成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度で耐熱性や強度特性に優れ、例えば、拡散炉のライナーチューブやプロセスチューブをはじめ半導体製造装置の各種熱処理部材として好適に用いられる管状SiC成形体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SiCは耐熱性、耐蝕性、強度特性などの材質特性が優れており、各種工業用の部材として有用されている。特に、CVD法(化学的気相蒸着法)を利用して作製したSiC成形体(CVD−SiC成形体とも記す)は、原料ガスを気相反応させて基材面上にSiCの結晶粒を析出させ、結晶粒の成長により被膜を形成して成膜したのち基材を除去することにより作製されるもので、材質的に緻密、高純度で組織の均質性が高いなどという特徴があり、半導体製造用の各種部材をはじめ高純度が要求される用途分野において好適に用いられている。
【0003】
このCVD−SiC成形体として、例えば、特開平8−188408号公報には、化学蒸着法により形成された炭化珪素基板の両面に炭化珪素膜を有する化学蒸着法による炭化珪素成形体、特開平8−188468号公報には、3層以上の炭化珪素層の積層体から成り、且つ各炭化珪素層の厚みが100μm 以下である化学蒸着法による炭化珪素成形体、などが開示されており、これらはSiC成形体に発生する亀裂や反りの抑制を目的としている。
【0004】
また、本出願人は、耐熱性や強度特性に優れ、半導体製造装置の熱処理用部材として好適な光透過性の低いCVD−SiC成形体として、CVD法により得られるCVD−SiC成形体であって、その表面部あるいは内部に少なくとも1層の粒子性状の異なるSiC層を有し、300 〜2500nmの波長域における光透過率が0.4 %以下、2500nmを超える波長域における光透過率が2.5 %以下であることを特徴とするSiC成形体(特開平11−228233号)やCVD法により得られるβ型結晶からなるCVD−SiC成形体であって、その表面部あるいは内部に厚さ2 〜20μm の可視光不透過性CVD−SiC層が少なくとも1層形成されてなり、300 〜2500nmの波長域における光透過率が0.4 %以下であることを特徴とするSiC成形体(特開2000−119064号)などを提案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、CVD法によるSiC膜の形成は成膜速度が遅く、生産効率が低いために、製造コストが高くなる難点がある。すなわち、CVD法によるSiC膜の形成は1分子中にSi原子とC原子とを含む、例えばCH3 SiCl3 、(CH3 )3 SiCl、CH3 SiHCl2 などのハロゲン化有機珪素化合物を水素ガスなどのキャリアガスとともに加熱して還元熱分解させる方法、あるいは、SiCl4 などの珪素化合物とCH4 などの炭素化合物とを加熱して気相反応させる方法、などにより基材面上にSiCを析出させることにより行われる。
【0006】
したがって、成膜速度を上げるためには、気相反応によりSiC粒子を析出、成膜する際のCVD反応温度を高く設定し、原料ガスの供給量を増加し、反応圧力を上げる、などの条件設定が有利である。しかしながら、反応温度を高く設定すると、基材面上でCVD反応を均等、均一に進行させることが困難であり、形成されるSiC膜の膜厚にバラツキが生じ易く、また基材の位置による膜質の変化も大きくなり、膜厚および膜質の均等性や均一性が低下し易い難点がある。同様に、原料ガス供給量を増加したり、反応圧力を上げた場合も、基材面上におけるCVD反応を均等、均一に進行させることが難しく、均等かつ均質な膜厚、膜質のSiC膜を成膜することが困難となる。
【0007】
その結果、SiC膜を成膜後、基材を除去して作製したCVD−SiC成形体は、強度特性や熱的特性などが低下する問題点がある。一方、成膜速度を遅く設定した条件下にCVD反応を行わせると、相対的に膜厚および膜質の均等性や均一性が増大し、強度特性や熱的特性などの優れたCVD−SiC成形体を作製することができる。しかしながら、SiC膜の成膜速度が遅いのでSiC膜の生成効率が低く、生産性が低下し、高コストとなる問題点がある。
【0008】
そこで、発明者らは強度特性や熱的特性に優れ、高い生産性で、低コストの管状CVD−SiC成形体を開発すべく鋭意研究を行って、本発明に到達したもので、その目的は高純度、高強度で、耐熱衝撃性および耐蝕性に優れ、高い生産性で低コストの管状SiC成形体、例えば、拡散炉のライナーチューブやプロセスチューブなどとして好適に用いられる管状SiC成形体およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る管状SiC成形体は、CVD法により円筒状基材面にSiCを析出、成膜したのち基材を除去して得られる管状SiC成形体であって、平均結晶粒径が0.5〜2.5μm の微粒多結晶からなり、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が5kcps以下、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が60%以下の微粒多結晶の組織構造からなるSiC層と、その内面、あるいは、内面および外面に平均結晶粒径が2.0〜5.0μm の柱状結晶からなり、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が10kcps以上、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が80%以上の柱状結晶の組織構造からなるSiC被膜層が形成、被着されてなることを構成上の特徴とする。
【0010】
また、その製造方法は、CVD法により円筒状基材面にSiCを析出させて成膜したのち基材を除去する管状SiC成形体の製造方法において、CVD反応室内における原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成したのち、原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して80〜400μm /hrの成膜速度でSiC層を形成し、次いで基材を除去する方法によりSiC層の内面にSiC被膜層を形成、被着する、あるいは再び、原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成し、次いで基材を除去する方法によりSiC層の内面および外面にSiC被覆層を形成、被着する、ことを構成上の特徴とする。
【0011】
更に、他の製造方法は、CVD法により円筒状基材面にSiCを析出させて成膜したのち基材を除去する管状SiC成形体の製造方法において、CVD反応室内における原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して80〜400μm /hrの成膜速度でSiC層を形成し、次いで基材を除去して得られたSiC層からなる管状成形体を母材とし、該母材の内面、あるいは、内面および外面に原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成、被着する、ことを構成上の特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
CVD−SiC成形体は、CVD反応によって基材面にSiCを析出させ、析出したSiCの成長により被膜を形成し、所定の厚さに成膜したのち基材を除去することにより作製される。基材面にSiC被膜が形成されるプロセスは、ハロゲン化有機珪素化合物と水素ガス、あるいは、珪素化合物と炭素化合物、などの原料ガスが気相反応によりSiCを生成、析出して基材面上にSiCの核が生成し、このSiC核が成長してアモルファス質SiCに変化し、更に微細な多結晶質SiC粒を経て柱状組織の結晶組織へと成長を続けてSiC被膜が形成されるものである。したがって、CVD−SiC成形体の強度特性、熱的特性などの性状は基材面上に析出して形成されたSiC被膜の結晶性状により異なったものとなる。
【0013】
すなわち、SiC被膜が形成される成膜速度が大きい場合は、最終結晶形態である柱状組織に成長する前段階である微細な多結晶質のSiC粒が多く存在し、またSiC膜の膜厚、膜質の不均一性が増大することとなり、形成されるSiC被膜の強度特性や熱的特性は低いものとなる。したがって、大きな成膜速度でSiC被膜を形成し、能率よくCVD−SiC成形体を作製した場合には、強度特性や熱的特性、例えば耐熱衝撃性や耐蝕性などの材質特性が劣ることになる。
【0014】
これに対して、小さな成膜速度でSiC被膜を形成した場合には、CVD反応が均等に進行する結果、相対的に膜厚および膜質の均一性や均質性が増大し、強度特性や熱的特性、例えば耐熱衝撃性や耐蝕性などの材質性状の優れたCVD−SiC成形体を得ることができる。しかしながら、SiC膜の成膜速度が遅いのでSiC膜の生成効率が低く、生産性が低下して高コストとなる。
【0015】
そこで、本発明の管状SiC成形体は、管状部の本体は高成膜速度で能率よく形成したSiC層から形成し、その内面、あるいは、内面および外面を低成膜速度で形成した材質特性に優れたSiC被覆層で被着した構造とすることにより、強度特性や熱的特性、例えば耐熱衝撃性や耐蝕性などに優れるとともに、高い生産性で低コストの管状SiC成形体を提供するものである。
【0016】
すなわち、本発明の管状SiC成形体は、管状部本体を高成膜速度で能率よく生成させた平均結晶粒径が0.5〜2.5μm 、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が5kcps以下、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が60%以下の微粒多結晶の組織構造からなるSiC層により形成し、このSiC層の内面、あるいは、内面および外面に優れた材質性状を備えた低成膜速度で生成させた平均結晶粒径が2.0〜5.0μm 、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が10kcps以上、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が80%以上の柱状結晶の組織構造からなるSiC被膜層を形成、被着した構成を特徴とする。
【0017】
管状部本体を形成するSiC層の平均結晶粒径を0.5〜2.5μm の範囲に設定するのは、平均結晶粒径が0.5μm 未満であると強度特性や熱的特性が低くなり過ぎ、一方、2.5μm を越える平均結晶粒径とするためには成膜速度を小さくせざるを得ないことになるためである。また、SiCの結晶面(111) への配向性は高いほど強度特性や熱的特性の向上には有利であるが、高効率で能率よく高い生産性を維持するために、微粒多結晶の結晶組織として、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度を5kcps以下、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値を60%以下に設定する。
【0018】
これらの結晶性状を有するSiC層を管状部本体として、その内面あるいは内面および外面(以下、内外面ともいう)に形成、被着されるSiC被覆層の平均結晶粒径を2.0〜5.0μm の範囲に設定するのは、2.0μm 未満であると強度特性や熱的特性が充分でなく、一方、5.0μm を越えると成膜時間に長時間を要すことになるためである。また、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度を10kcps以上、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値を80%以上の柱状結晶の組織構造とするのは、強度特性や熱的特性、例えば耐熱衝撃性や耐蝕性を高位に保持させるためである。なお、X線回折により求める回折ピーク値はCuのKαで測定した値である。
【0019】
このように、本発明の管状SiC成形体は、管状部本体は高い生産性で能率よく形成されたSiC層で形成し、その内外面は耐熱衝撃性や耐蝕性に優れたSiC被覆層が形成、被着されたものであるから、全体として高位の強度特性や熱的特性を備えることが可能となる。
【0020】
この管状SiC成形体を製造する本発明の請求項2に係る製造方法は、CVD法により円筒状基材面にSiCを析出させて成膜したのち基材を除去する方法において、CVD反応室内における原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成したのち、原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して80〜400μm /hrの成膜速度でSiC層を形成し、次いで基材を除去する方法によりSiC層の内面にSiC被膜層を形成、被着する、あるいは再び、原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成し、次いで基材を除去する方法によりSiC層の内面および外面にSiC被覆層を形成、被着する、方法により製造される。
【0021】
すなわち、この製造方法は、除去可能な円筒状基材面に、CVD反応室内に供給するハロゲン化有機珪素化合物と水素ガスあるいは珪素化合物と炭素化合物などの原料ガスの供給量や原料ガスのCVD反応室内の滞留時間、あるいはCVD反応温度などを制御して、成膜速度を20〜50μm /hrに設定してSiC被膜層を形成したのち、原料ガスの供給量、原料ガスのCVD反応室内の滞留時間、CVD反応温度などを設定変更して、80〜400μm /hrの成膜速度でSiC層を形成し、次いで、円筒状基材を除去することにより、平均結晶粒径が0.5〜2.5μm 、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が5kcps以下、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が60%以下の微粒多結晶の組織構造からなるSiC層と、その内面に平均結晶粒径が2.0〜5.0μm 、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が10kcps以上、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が80%以上の柱状結晶の組織構造からなるSiC被膜層が形成、被着された管状SiC成形体が製造される。
【0022】
この場合に、80〜400μm /hrの成膜速度でSiC層を形成したのち、再び、原料ガスの供給量、原料ガスのCVD反応室内の滞留時間、CVD反応温度などを設定変更して、20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成し、次いで、円筒状基材を除去することにより、微粒多結晶の組織構造からなるSiC層と、その内外面に柱状結晶の組織構造からなるSiC被膜層が形成、被着した管状SiC成形体を製造することができる。
【0023】
円筒状基材の材質としては、炭素系材料、シリコンなどの金属系材料、石英などが用いられるが、加工性が良好で、空気中で熱処理することにより容易に燃焼除去可能な炭素系、特に黒鉛材が好適に用いられる。なお、黒鉛材は可及的に不純物が少ない高純度のものが使用される。基材の除去は、切削除去、研磨除去、空気中で加熱する燃焼除去、あるいはこれらを適宜に組み合わせて行うことができる。
【0024】
また、本発明の請求項3に係る製造方法は、CVD法により円筒状基材面にSiCを析出させて成膜したのち基材を除去する管状SiC成形体の製造方法において、CVD反応室内における原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して80〜400μm /hrの成膜速度でSiC層を形成し、次いで基材を除去して得られたSiC層からなる管状成形体を母材とし、該母材の内面、あるいは、内面および外面に原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成、被着する方法により製造するものである。
【0025】
すなわち、請求項3の製造方法は、除去可能な円筒状基材面に、CVD反応室内に供給するハロゲン化有機珪素化合物と水素ガスあるいは珪素化合物と炭素化合物などの原料ガスの供給量や原料ガスのCVD反応室内の滞留時間、あるいはCVD反応温度などを制御して、成膜速度を80〜400μm /hrに設定してSiC層を形成したのち基材を除去して得られた、平均結晶粒径が0.5〜2.5μm 、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が5kcps以下、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が60%以下の微粒多結晶の組織構造からなるSiC管状成形体を作製する。
【0026】
このSiC管状成形体を母材としてCVD反応室内にセットし、原料ガスの供給量、滞留時間、CVD反応温度などを制御することにより成膜速度を20〜50μm /hrに設定して、母材の内面、あるいは、内面および外面に、平均結晶粒径が2.0〜5.0μm 、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が10kcps以上、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が80%以上の柱状結晶の組織構造からなるSiC被膜層が形成、被着された管状SiC成形体が製造される。
【0027】
上記の製造方法において、成膜速度の調整を容易に行うために、例えば図1に模式的に示したようにCVD反応室内にマッフル1を設けて、マッフル1の中に円筒状基材2をセットする。円筒状基材2は、その内面に原料ガスの流通によりSiCが析出するのを阻止するために上端部は蓋3により封じられている。マッフル1には原料ガスを送入するための数本から十数本のノズル4が設置されている。なお、ノズル4は原料ガスが基材2に直接当たらないように、例えばノズル先端がマッフル1の壁面に向くように設置し、原料ガスを間接的に基材2に接触させることが好ましい。ノズル4から送入された原料ガスが直接基材に当たると、形成されたSiC膜に膜厚斑や組織斑が生じ易くなるためである。また、CVD反応時に蒸着したSiCによりノズルが閉塞するような場合には、ノズル4を適宜に切替え使用することによりCVD反応を中断することなく連続して行うことが可能となる。
【0028】
このマッフルを設ける理由は、CVD反応容積の設定を簡単に行うことができるため、CVD反応室内における原料ガスの供給量(濃度)、滞留時間などの調整が容易になり、成膜速度の制御、具体的には20〜50μm /hrおよび80〜400μm /hrの成膜速度に制御することが可能となる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0030】
実施例1
CVD反応室内に容積、約1200 lのマッフルを設置し、マッフル内に外径260mm、高さ1500mm、肉厚25mmの高純度化処理した黒鉛管4本をセットした(マッフルの有効反応容積、約880 l)。なお、黒鉛管の上部は蓋をして上端を封じ、黒鉛管内壁部にSiCが析出するのを防止し、またマッフルには原料ガス送入ノズル12本を黒鉛管に直接当たらない方向に装着した。系内を水素ガスで置換後、原料ガスとしてメチルトリクロロシラン/水素が7.5 vol%の混合ガスを用い、原料ガスの供給量280 l/min、原料ガスの滞留時間36秒、反応温度1250℃に制御して35μm /hrの成膜速度で4時間CVD反応を行い、厚さ140μm のSiC被膜層を形成した。
【0031】
次いで、原料ガスの供給量を1850 l/min、原料ガスの滞留時間を5秒、反応温度を1400℃に設定、制御して210μm /hrの成膜速度で15時間CVD反応を行い、厚さ3150μm のSiC層を形成した。その後、再び、原料ガスの供給量を280 l/min、原料ガスの滞留時間を36秒、反応温度を1250℃に制御して35μm /hrの成膜速度で4時間CVD反応を行い、厚さ140μm のSiC被膜層を形成したのち、空気中で加熱して黒鉛管を燃焼除去し、微粒多結晶の組織構造からなる厚さ3150μm のSiC層と、その内外両面に柱状結晶の組織構造からなる厚さ140μm のSiC被覆層が形成、被着された管状SiC成形体を製造した。
【0032】
実施例2〜6、比較例1〜6
原料ガス(メチルトリクロロシラン/水素;7.5 vol%)の供給量、滞留時間、反応温度などを設定変更して、成膜速度を調節、制御して管状部本体となるSiC層と、SiC層の内面あるいは内面および外面にSiC被膜層を形成、被着した管状SiC成形体を製造した。
【0033】
このようにして製造した管状SiC成形体について、SiC層の形成条件および結晶組織構造などを表1に、SiC被膜層の形成条件および結晶組織構造などを表2に示した。なお、平均結晶粒径は表面のSEM観察写真から求め、また結晶組織構造はX線回折により各結晶面の回折ピーク強度を求めた。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
また、これらの管状SiC成形体の構造について、管状部本体を構成するSiC層、およびSiC層の内外面に形成、被着したSiC被膜層の構成を表3に示した。
【0037】
【表3】
【0038】
このようにして製造した管状SiC成形体から、約30×30mmの試験サンプルを切り出し、下記の方法により耐熱衝撃性および耐蝕性の試験を行い、得られた結果を表4に示した。
▲1▼耐熱衝撃性試験;
試験サンプルを大気中で500℃から1200℃に加熱し、次いで500℃に急冷する熱サイクル試験を20回行い、亀裂発生の状況を観察した。なお、試験途中で亀裂が発生した場合は、亀裂発生時の熱サイクル試験回数を測定した。
▲2▼耐蝕性試験;
試験サンプルをフッ化水素水溶液中に浸漬して表面のSiO2 を除去した後、1200℃の100%塩化水素中に15時間保持し、冷却したのち重量を測定して、重量減少率を測定した。
【0039】
【表4】
【0040】
表1〜4の結果から、本発明で特定した結晶組織性状を備えた、微粒多結晶組織のSiC層の内面、あるいは内外面に柱状結晶組織のSiC被膜層が形成、被着された実施例の管状SiC成形体は、SiC層またはSiC被膜層の少なくとも1つの層の結晶組織が本発明で特定した性状を外れる比較例の管状SiC成形体に比較して耐熱衝撃性および耐蝕性とも優れていることが判る。また、本発明の製造方法によれば、CVD反応時の原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度などを制御することにより本発明で特定する結晶組織性状のSiC層およびSiC被膜層を形成することが可能となる。更に、実施例1〜3と実施例4〜6との対比からSiC層の内外両面にSiC被膜層を形成し、被着すると耐蝕性がより向上する傾向にあることが認められる。なお、比較例1および比較例4の管状SiC成形体は、耐熱衝撃性および耐蝕性とも優れているが、SiC被膜層の成膜速度が遅いために、製造効率が悪く、コスト増となる。
【0041】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の管状SiC成形体によれば、CVD法により作製された管状のSiC成形体の管状部本体を形成する部位は特定した結晶性状を有する微粒多結晶組織のSiC層から構成され、その内外面には特定した結晶性状の柱状結晶組織のSiC被膜層が形成、被着された構造から構成されており、SiC被膜層の優れた強度特性、熱的特性により管状SiC成形体全体が優れた耐熱衝撃性および耐蝕性を備えることが可能となる。また、その製造方法によれば、SiC層は80〜400μm /hrの高速で成膜され、その内外面に形成、被着するSiC被膜層のみ20〜50μm /hrという低速で成膜するものであるから、効率よく、高い生産性で製造することができ、例えば、拡散炉のライナーチューブやプロセスチューブなどとして好適に用いられる管状SiC成形体の低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の管状SiC成形体を製造する方法を例示した模式図である。
【符号の説明】
1 マッフル
2 円筒状基材
3 蓋
4 ノズル
Claims (3)
- CVD法により円筒状基材面にSiCを析出、成膜したのち基材を除去して得られる管状SiC成形体であって、平均結晶粒径が0.5〜2.5μm の微粒多結晶からなり、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が5kcps以下、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が60%以下の微粒多結晶の組織構造からなるSiC層と、その内面、あるいは、内面および外面に平均結晶粒径が2.0〜5.0μm の柱状結晶からなり、SiCの結晶面(111) のX線回折ピークの強度が10kcps以上、全結晶面(h,k,l) とのX線回折ピークの強度比SiC(111) /(h,k,l) の値が80%以上の柱状結晶の組織構造からなるSiC被膜層が形成、被着されてなることを特徴とする管状SiC成形体。
- CVD法により円筒状基材面にSiCを析出させて成膜したのち基材を除去する管状SiC成形体の製造方法において、CVD反応室内における原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成したのち、原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して80〜400μm /hrの成膜速度でSiC層を形成し、次いで基材を除去する方法によりSiC層の内面にSiC被膜層を形成、被着する、あるいは再び、原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成し、次いで基材を除去する方法によりSiC層の内面および外面にSiC被覆層を形成、被着する、ことを特徴とする請求項1の管状SiC成形体の製造方法。
- CVD法により円筒状基材面にSiCを析出させて成膜したのち基材を除去する管状SiC成形体の製造方法において、CVD反応室内における原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して80〜400μm /hrの成膜速度でSiC層を形成し、次いで基材を除去して得られたSiC層からなる管状成形体を母材とし、該母材の内面、あるいは、内面および外面に原料ガスの供給量、滞留時間、反応温度を制御して20〜50μm /hrの成膜速度でSiC被膜層を形成、被着する、ことを特徴とする請求項1の管状SiC成形体の製造方法。
Priority Applications (1)
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