JP2012136400A - シリコン単結晶引上げ用シリカガラスルツボ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】直胴部及び底部を有するシリカガラスルツボにおいて、厚さ0.5〜200μmのSiOx膜(0<x<2)からなる最内層と、OH基濃度が30ppm未満、厚さ3〜5mmの前記最内層に接する領域を有する透明シリカガラスからなる内層と、不透明シリカガラスからなる外層とを備えた構成とする。
【選択図】なし
Description
上記方法において、シリコン融液を収容するためのルツボには、一般に、内層が透明シリカガラス、外層が多数の気泡を含む不透明シリカガラスからなるシリカガラスルツボが用いられている。
このブラウンモールドは、生成したクリストバライトの結晶核が加熱により徐々に成長して拡大したものであり、ルツボ内表面の荒れや剥離を引き起こす。その結果、シリコン融液中に剥離した結晶片等が混入してシリコン単結晶に転位が発生し、シリコン単結晶の歩留の低下を招くこととなる。
このようなエアポケットは、前記シリコン単結晶をスライスして作製されるシリコンウェーハのデバイス特性を低下させることとなる。特に、近年の半導体ウェーハの薄肉化や高集積化に伴って問題視されるようになり、ウェーハの歩留低下の原因の一つになっている。
このような最内層及び内層を備えたシリカガラスルツボによれば、ブラウンモールドの発生が抑制されるとともに、シリコン単結晶におけるエアポケットの発生も抑制することができる。
前記最内層は、ルツボ内のポリシリコンがすべて融解するまでの間、ルツボ内表面を被覆していればよく、このように最内層の溶解速度が大きいことにより、ブラウンモールドの発生を効果的に抑制することができ、内層によるエアポケットの抑制効果も好適に発揮し得る。
したがって、本発明に係るシリカガラスルツボは、シリコン単結晶引上げの歩留向上に寄与し得るものである。
本発明に係るシリカガラスルツボは、直胴部及び底部を有するCZ法によるシリコン単結晶引上げにおいて用いられるシリカガラスルツボであり、最内層がSiOx膜(0<x<2)、内層が透明シリカガラス、外層が不透明シリカガラスである複層構造からなるものである。そして、前記最内層は厚さ0.5〜200μmであり、前記内層は、OH基濃度が30ppm未満、厚さ3〜5mmの前記最内層に接する領域を有している。
その一方で、前記結晶核は、接触しているシリコン融液との反応によりエッチングされていくが、通常、そのエッチレートは、シリカガラスのエッチレートよりも小さい。このため、クリストバライトの結晶核のエッチングされなかったものが、ブラウンモールドとして生じ、その後、結晶片が剥離してシリコン融液中に混入し、シリコン単結晶中に取り込まれることとなる。
すなわち、本発明は、シリコン単結晶引上げ時にシリコン融液に露出しているルツボ内表面にクリストバライトの結晶核が形成される前に、クリストバライトの結晶核が形成してしまったルツボ最内表面を溶損させれば、ブラウンモールドの発生起点がなくなるという見解に基づいてなされたものである。
SiOx膜(0<x<2)は、シリカ(SiO2)に比べて結合する酸素が不足しているシリコン酸化物による膜であり、多孔質の膜として形成されやすい。このため、これを最内層に適用することにより、前記溶解速度を大きくすることができる。しかも、シリコン融液中に溶解しても、シリコン単結晶に対して純度低下等の悪影響を及ぼすことはない。
このような方法によれば、厚さ0.5〜200μmの薄膜で、シリコン融液に適度な速度で溶解し、かつ、アルカリ金属等のシリコン単結晶に対する不純物元素等を含まない最内層を形成することができる。
前記厚さが0.5μm未満の場合、薄すぎて、ルツボ内に収容したポリシリコンが完全に融解する前に最内層が溶解し、最内層によるクリストバライトの結晶核形成の阻害効果が得られないこととなる。
一方、前記厚さが200μmを超える場合、ポリシリコンがすべて融解した後も、最内層が残存するため、その融解が継続することにより、シリコン単結晶の酸素濃度に影響を及ぼすおそれがある。また、最内層は粘性が低いため、ルツボ内表面にポリシリコンが当たって形成されたキャビティ(圧痕)内にArが入り込み、シリコン融液との接触初期に溶けきれずに残った最内層に残存し、このキャビティを起点としてルツボ内表面から気泡が生じ、シリコン単結晶におけるエアポケットの発生を招くおそれがある。
このため、前記最内層の厚さは、エアポケットの発生を抑制する観点から、シリコン融液との接触初期において溶けきれる程度であることが好ましく、200μm以下とする。
このように、最内層の溶解速度が大きいことにより、シリコン単結晶引上げ時にシリコン融液に露出しているルツボ内表面へのクリストバライトの結晶核形成を阻害することによるブラウンモールドの発生の抑制効果とともに、エアポケット発生の抑制効果も奏することが可能となる。
前記最内層はシリコン融液との接触初期に溶損するため、内層のうち、最内層に接している領域、すなわち、最内層直下の領域は、シリコン単結晶引上げ中、シリコン融液と接触する。
上述したように、最内層は、シリコン融液への溶解速度が大きいため、シリコン融解温度付近での粘性が低く、ポリシリコンがすべて溶解する前に、ポリシリコンの荷重によって、ルツボ内表面、特にルツボ底部に、キャビティが形成されやすい。
このため、最内層の直下に高粘性の内層を設けることにより、ポリシリコンがすべて融解する前においても、粘性変形が抑制され、エアポケットの発生原因となる大きなキャビティの発生を抑止することができる。
前記OH基濃度が30ppmを超える場合、ポリシリコンによって形成されるルツボ内表面からのキャビティの容積が大きくなり、エアポケットを引き起こす気泡の発生を十分に抑制することが困難となる。
前記OH基濃度は、1ppm以下であることがより好ましい。
なお、前記最内層は、OH基濃度が高いほどシリコン融液との接触により溶解しやくなるため、内層のOH基濃度よりも高くしておくことが好ましい。
前記厚さが3mm未満である場合、ポリシリコンによって形成されるルツボ内表面からのキャビティの容積が大きくなり、エアポケットを引き起こす気泡の発生を十分に抑制することが困難となる。
一方、前記厚さが5mmを超えても、厚さに見合ったエアポケット抑制効果の向上は図られないため、前記領域の厚さは5mm以下で十分である。
一般に、外層の不透明シリカガラスは、純度は低いものの、耐熱性に優れた、水晶等の天然シリカ原料により形成され、また、最内層及び内層の透明シリカガラスは、シリコンアルコキシドの加水分解等により得られる高純度の合成シリカ原料により形成される。
まず、回転するルツボ成形用型内に、外層を構成するための天然シリカ原料粉、その内側に内層を構成するための合成シリカ原料粉末、次に、OH基濃度が30ppm未満の合成シリカ原料粉を、それぞれ所定厚さで装填し、成形する。
そして、この中にアーク電極を挿入し、減圧アーク溶融にてガラス化することにより、外層を形成する。
次に、前記内層の内表面に、プラズマCVDにて、原料としてヘキサメチルジシロキサンを用い、厚さ0.5〜200μmのSiOx膜(0<x<2)からなる最内層を形成し、本発明に係るシリカガラスルツボを得ることができる。
[実施例1]
回転モールド法により外層及び内層を形成した後、プラズマCVDにより内層を形成し、外径610mm、高さ380mmであり、厚さ10〜150μmのSiOx膜(0<x<2)からなる最内層と、前記最内層に接する領域がOH基濃度20ppm、厚さ3mmである領域を有する透明シリカガラスからなる内層と、前記内層に接する不透明シリカガラスからなる外層とを備えた、全体の厚さが15mmであるシリカガラスルツボを作製した。
実施例1において、最内層を形成せず、それ以外については実施例1と同様にして、シリカガラスルツボを作製した。
実施例1において、最内層を形成せず、かつ、内表面から3mmの領域のOH基濃度を70ppmとし、それ以外については実施例1と同様にして、シリカガラスルツボを作製した。
実施例1において、SiOx膜(0<x<2)からなる最内層の厚さ、前記最内層に接する領域のOH基濃度及び厚さを表1に示す数値となるように設定し、それ以外については実施例1と同様にして、シリカガラスルツボを作製した。
そして、シリコン単結晶引上げ後のルツボ内表面を観察し、最内層の残存の有無を確認し、実体顕微鏡によりブラウンモールドの発生個数を測定した。
また、シリコン単結晶引上げにおける無転位化率(DF率)を求めた。無転位化率は、引上げた本数に対して転位が発生しなかったシリコン単結晶の本数の割合である。
また、引上げたシリコン単結晶をスライスしたウェーハについて、エアポケット発生率を測定した。エアポケット発生率は、引上げたシリコン単結晶の直胴部から得られたウェーハに生じたエアポケットの総数を前記ウェーハ枚数で割った値とした。なお、エアポケットの個数は、ウェーハポリッシュ後のウェーハ表面のエアポケット数をパーティクル測定器により測定した。
これらの評価及び測定結果を表1にまとめて示す。
Claims (2)
- 直胴部及び底部を有するシリカガラスルツボであって、
厚さ0.5〜200μmのSiOx膜(0<x<2)からなる最内層と、
OH基濃度が30ppm未満、厚さ3〜5mmの前記最内層に接する領域を有する透明シリカガラスからなる内層と、
不透明シリカガラスからなる外層と
を備えていることを特徴とするシリコン単結晶引上げ用シリカガラスルツボ。 - 前記最内層は、前記ルツボ内表面にシリコン融液が接触した状態において、2時間以内で溶解可能であることを特徴とする請求項1記載のシリコン単結晶引上げ用シリカガラスルツボ。
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