JP2001108076A - 車両用遊星歯車装置 - Google Patents

車両用遊星歯車装置

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JP2001108076A JP28814599A JP28814599A JP2001108076A JP 2001108076 A JP2001108076 A JP 2001108076A JP 28814599 A JP28814599 A JP 28814599A JP 28814599 A JP28814599 A JP 28814599A JP 2001108076 A JP2001108076 A JP 2001108076A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐久性が十分に得られる車両用遊星歯車式を
提供する。 【解決手段】 ブレーキB1を構成するブレーキプレー
ト136およびブレーキディスク138に対して、潤滑
油を内周側から直接供給するための潤滑油路150を設
ける。これにより、そのブレーキプレート136および
ブレーキディスク138が好適に潤滑され、遊星歯車装
置18の耐久性が十分に得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原動機からの動力
を伝達するために車両に設けられた遊星歯車装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】1軸心まわりに回転可能に設けられたサ
ンギヤと、そのサンギヤと共通の軸心まわりに回転可能
に設けられたリングギヤと、前記1軸心に平行なピニオ
ンピンを備えて上記1軸心にまわりに設けられ、それら
サンギヤおよびリングギヤと噛み合うピニオンを上記ピ
ニオンピンにより回転可能に支持するキャリヤ部材とを
備えた遊星歯車装置が車両の動力伝達経路に設けられ
る。たとえば、トヨタ自動車株式会社サービス部発行の
「アリスト新型車解説書」(1997年8月27日発
行)に記載されているような、複数組の遊星歯車装置の
構成要素を摩擦係合装置を用いて選択的に相互に連結し
或いは非回転部材に連結させることにより変速段を切り
換える自動変速装置や、トヨタ自動車株式会社サービス
部発行の「プリウス新型車解説書」(1997年10月
14日発行)に記載されているような、1組の遊星歯車
装置の構成要素を内燃機関、モータジェネレータ、変速
機、或いはハウジングに摩擦係合装置を用いて選択的に
係合させることにより内燃機関およびモータジェネレー
タからの出力を合成し或いは分配する車両用動力合成分
配装置に用いられる場合がそれである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記車両用
遊星歯車装置では、通常、その軸心に位置するシャフト
内に形成された潤滑油路から外周側に向かって潤滑油を
所定量流出されることにより、シャフトの外周側に位置
する各ギヤおよび摩擦係合装置が潤滑されている。しか
しながら、車両の比較的急な発進などに際して、その摩
擦係合装置をスリップさせつつ係合させることすなわち
半係合させることが行われる場合には、上記従来の潤滑
方式では潤滑が不十分となり、遊星歯車装置の耐久性が
損なわれるという不都合があった。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為された
ものであり、その目的とするところは、耐久性が十分に
得られる車両用遊星歯車式を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めの本発明の要旨とするところは、ハウジング内におい
て、サンギヤ、リングギヤ、それらと噛み合うピニオン
を回転可能に支持するキャリヤが共通の軸心まわりに回
転可能に設けられ、それらサンギヤ、リングギヤ、キャ
リヤが複数の摩擦係合装置を介して入力部材、出力部
材、或いは該ハウジングに選択的に連結させられる車両
用遊星歯車装置において、前記複数の摩擦係合装置のう
ちの少なくとも1つを構成する摩擦部材に対して、その
内周側から潤滑油を直接に供給するための潤滑油路を設
けたことにある。
【0006】
【発明の効果】このようにすれば、複数の摩擦係合装置
のうちの少なくとも1つを構成する摩擦部材に対して、
潤滑油路により導かれた潤滑油がその内周側から直接に
供給されるので、その摩擦部材が好適に潤滑され、その
摩擦係合装置すなわち車両用遊星歯車装置の耐久性が十
分に得られる。
【0007】
【発明の他の態様】ここで、好適には、前記摩擦係合装
置の摩擦部材は、軸心方向に互いに重ねられた複数の板
状部材であり、前記潤滑油路により導かれた潤滑油を収
容するために該複数の板状部材の内周側に形成された潤
滑油収容空間を略液密に閉じるためのシール部材が設け
られたものである。このようにすれば、軸心方向に互い
に重ねられる複数の板状部材の内周側に形成された潤滑
油収容空間がシール部材によって略油密に閉じられるた
め、十分な量の潤滑油が板状部材の内周側に直接供給さ
れる。
【0008】また、好適には、前記車両用遊星歯車装置
において、そのサンギヤは内燃機関に連結され、キャリ
ヤは第1クラッチを介して変速機の入力軸に連結され、
リングギヤは第2クラッチを介して変速機の入力軸に連
結されるとともにブレーキを介して非回転部材に連結さ
れるものであり、前記潤滑油路により導かれた潤滑油は
そのブレーキを構成する摩擦部材に供給されるものであ
る。このようにすれば、たとえばフリクション走行モー
ドにおいて、エンジンおよびモータジェネレータの出力
を同時に伝達することにより比較的大きな駆動力を滑ら
かに発生させることが可能となる。
【0009】また、好適には、前記ブレーキの複数の板
状部材は、前記リングギヤの外周面に対して軸心方向の
移動自在且つ軸心まわりに相対回転不能に係合するリン
グギヤ側板状部材と、ハウジングに対して軸心方向の移
動自在且つ軸心まわりに相対回転不能に係合するハウジ
ング側板状部材とが交互に位置した状態で軸心方向に重
ねられたものであり、前記潤滑油収容空間は、リングギ
ヤの外周面と上記リングギヤ側板状部材およびハウジン
グ側板状部材との間に形成されたものであり、前記シー
ル部材は、上記リングギヤの外周面のうち上記軸心方向
に重ねられたリングギヤ側板状部材およびハウジング側
板状部材の外側位置において上記潤滑油収容空間を略液
密封止するものである。このようにすれば、軸心方向に
互いに重ねられたリングギヤ側板状部材およびハウジン
グ側板状部材が潤滑油収容空間内に貯留された潤滑油に
よって直接潤滑される。
【0010】
【発明の好適な実施の形態】以下、本発明の実施例を図
面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】図1は、本発明が適用された4輪駆動車両
すなわち前後輪駆動車両の動力伝達装置の構成を説明す
る骨子図である。この前後輪駆動車両は、前輪系を第1
原動機を備えた第1駆動装置すなわち主駆動装置10に
て駆動し、後輪系を第2原動機を備えた第2駆動装置す
なわち副駆動装置12にて駆動する形式の車両である。
【0012】上記主駆動装置10は、空気および燃料の
混合気が燃焼させられることにより作動させられる内燃
機関であるエンジン14と、電気モータおよび発電機と
して選択的に機能するモータジェネレータ(以下、MG
という)16と、ダブルピニオン型の遊星歯車装置18
と、変速比が連続的に変化させられる無段変速機20と
を同心に備えている。上記エンジン14は第1原動機す
なわち主原動機として機能している。上記エンジン14
は、その吸気配管の吸入空気量を制御するスロットル弁
の開度θTHを変化させるためにそのスロットル弁を駆動
するスロットルアクチュエータ21を備えている。
【0013】上記遊星歯車装置18は、機械的に力を合
成し或いは分配する合成分配機構であって、共通の軸心
まわりに独立して回転可能に設けられた3つの回転要
素、すなわち上記エンジン14にダンパ装置22を介し
て連結されたサンギヤ24と、第1クラッチC1を介し
て無段変速機20の入力軸26に連結され且つ上記MG
16の出力軸が連結されたキャリヤ28と、第2クラッ
チC2を介して無段変速機20の入力軸26に連結され
且つブレーキB1を介して非回転部材たとえばハウジン
グ30に連結されるリングギヤ32とを備えている。上
記キャリヤ28は、サンギヤ24およびリングギヤ32
とかみ合い且つ相互にかみ合う1対のピニオン(遊星歯
車)34および36を、それらの自転可能に支持してい
る。上記第1クラッチC1、第2クラッチC2、ブレー
キB1は、いずれも互いに重ねられた複数枚の摩擦板が
油圧アクチュエータによって押圧されることにより係合
させられたり、その押圧解除により解放されたりする油
圧式摩擦係合装置である。
【0014】上記遊星歯車装置18とそのキャリヤ28
に連結されたMG16は、エンジン14の作動状態すな
わちサンギヤ24の回転状態においてMG16の発電量
を制御することにより、すなわちMG16の回転駆動ト
ルクである反力が逐次大きくなるようにキャリヤ28に
発生させられることにより、リングギヤ32の回転数を
滑らかに増加させて車両の滑らかな発進加速を可能とす
る電気トルコン(ETC)装置を構成している。このと
き、遊星歯車装置18のギヤ比ρ(サンギヤ24の歯数
/リングギヤ32の歯数)がたとえば一般的な値である
0.5とすると、リングギヤ32のトルク:キャリヤ2
8のトルク:サンギヤ24のトルク=1/ρ:(1−
ρ)/ρ:1の関係から、エンジン14のトルクが1/
ρ倍たとえば2倍に増幅されて無段変速機20へ伝達さ
れるので、トルク増幅モードと称される。
【0015】また、上記無段変速機20は、入力軸26
および出力軸38にそれぞれ設けられた有効径が可変の
1対の可変プーリ40および42と、それら1対の可変
プーリ40および42に巻き掛けられた無端環状の伝動
ベルト44とを備えている。それら1対の可変プーリ4
0および42は、入力軸26および出力軸38にそれぞ
れ固定された固定回転体46および48と、その固定回
転体46および48との間にV溝を形成するように入力
軸26および出力軸38に対して軸心方向に移動可能且
つ軸心まわりに相対回転不能に取付られた可動回転体5
0および52と、それら可動回転体50および52に推
力を付与して可変プーリ40および42の掛かり径すな
わち有効径を変化させることにより変速比γ(=入力軸
回転速度/出力軸回転速度)を変更する1対の油圧シリ
ンダ54および56とを備えている。
【0016】上記無段変速機20の出力軸38から出力
されたトルクは、減速装置58、差動歯車装置60、お
よび1対の車軸62、64を介して1対の前輪66、6
8へ伝達されるようになっている。なお、本実施例で
は、前輪66、68の舵角を変更する操舵装置が省略さ
れている。
【0017】前記副駆動装置12は、第2原動機すなわ
ち副原動機として機能するリヤモータジェネレータ(以
下、RMGという)70を備え、そのRMG70から出
力されたトルクは、減速装置72、差動歯車装置74、
および1対の車軸76、78を介して1対の後輪80、
82へ伝達されるようになっている。
【0018】図2は、前記主駆動装置10の遊星歯車装
置18を種々の作動モードに切り換えるための油圧制御
回路の構成を簡単に示す図である。運転者によりP、
R、N、D、Bの各レンジ位置へ操作されるシフトレバ
ー90に機械的に連結されたマニアル弁92は、シャト
ル弁93を利用しつつ、シフトレバー90の操作に応答
して、Dレンジ、Bレンジ、Rレンジにおいて第1クラ
ッチC1の係合圧を調圧する第1調圧弁94へ図示しな
いオイルポンプから出力された元圧を供給し、Dレン
ジ、BレンジにおいてクラッチC2の係合圧を調圧する
第2調圧弁95へ元圧を供給し、Nレンジ、Pレンジ、
RレンジにおいてブレーキB1の係合圧を調圧する第3
調圧弁96へ元圧を供給する。上記第2調圧弁95、第
3調圧弁96は、ハイブリッド制御装置104によって
駆動されるリニヤソレイド弁97からの出力信号に従っ
て第2クラッチC2およびブレーキB1の係合圧を制御
し、第1調圧弁94は、ハイブリッド制御装置104に
よってデューティー駆動される三方弁である電磁開閉弁
98からの出力信号に従って第1クラッチC1の係合圧
を制御する。
【0019】図3は、図1に骨子図で示した動力伝達装
置の構成を示す断面図である。図3において、遊星歯車
装置18、無段変速機20等を収容している前記ハウジ
ング30には、軸心方向の略中央部にその無段変速機2
0と遊星歯車装置18とを隔てるための比較的肉厚で剛
性の高い円環状の隔壁90が固定されている。ハウジン
グ30の略中央部に上記隔壁90が設けられると、ハウ
ジング30全体の剛性が高くなるので、ギヤノイズおよ
び振動を抑えることができる。また、ハウジング30の
剛性が高くなると、ハウジング30の可変プーリ40、
42を支持する部分が伝動ベルト44の張力により変形
させられにくくなるので、伝動ベルト44の耐久性も向
上する。なお、図3の遊星歯車装置18部分を図3とは
異なる断面で切断した断面図である図4に示すように、
本実施例においては、上記隔壁90はハウジング30に
ボルト92によって固定されている。
【0020】図3に示すように、上記隔壁90の内部に
は、クラッチC2へ作動油を供給する作動油路94とク
ラッチC1へ作動油を供給する作動油路95(図示せ
ず)とが設けられるとともに、その作動油路94が設け
られた部分は、他の部分よりも肉厚とされている。
【0021】図4に詳しく示すように、前記第1クラッ
チC1は、第1クラッチシリンダ96、第1クラッチピ
ストン98、第1クラッチプレート100、および第1
クラッチディスク102を備え、上記第1クラッチシリ
ンダ96と第1クラッチピストン98との間に作動油路
95から作動油が供給される環状の第1作動油室104
が形成されている。
【0022】上記第1クラッチプレート100は外周に
複数の嵌合突起を備え、その複数の嵌合突起が上記第1
クラッチシリンダ96の先端側において内周に形成され
た複数の嵌合溝と嵌合することにより、第1クラッチシ
リンダ96の軸心方向に相対移動可能且つ軸心まわりに
相対回転不能に係合しているが、第1クラッチシリンダ
96の上記第1クラッチプレート100が係合している
部分よりもさらに先端側には、軸方向に移動不能にスト
ッパリング106が固定され、上記第1クラッチプレー
ト100がそれ以上第1クラッチシリンダ96の先端側
へ移動することを禁止している。また、上記第1クラッ
チディスク102は内周に複数の嵌合突起を備え、上記
第1クラッチプレート100と交互に位置する状態で、
その嵌合突起が、前記第1クラッチシリンダ96と平行
な軸心を有する円筒部材108に形成された複数の嵌合
溝と嵌合することにより、第1クラッチシリンダ96の
軸心方向に相対移動可能且つ軸心まわりに相対回転不能
にその円筒部材108と係合している。
【0023】前記第1クラッチシリンダ96は、その第
1クラッチシリンダ96内に摺動可能に嵌め入れられた
前記第1クラッチピストン98とともに第1作動油室1
04を形成し、径方向中心部が入力軸26に溶接により
固定されている第1シリンダ部材112と、その第1シ
リンダ部材112の外周に位置した状態でその第1シリ
ンダ部材112に溶接により固定された第2シリンダ部
材114とから構成されている。第2シリンダ部材11
4は、前記入力軸26に平行な円筒部118とその円筒
部118から垂直方向内側に設けられたリング部120
から成り、円筒部118の外周面のリング部120側に
は第2クラッチC2の構成部材である第2クラッチディ
スク134が嵌合させられる複数の嵌合溝が形成されて
いる。このようにして第1クラッチシリンダ96を構成
すると、第1クラッチシリンダ96がコンパクトに構成
でき、且つ低コストで製造できる。なお、第1クラッチ
シリンダ96を一つの部材として一体プレス成形により
製造しようとする場合、外周面のリング部120側には
嵌合溝を成形することができないので、第1クラッチシ
リンダ96の軸方向の長さが長くなってしまうのであ
る。
【0024】また、第2シリンダ部材114は、リング
部120が周方向において部分的に前記第1シリンダ部
材112に溶接されることにより、周方向の所定間隔毎
に内周側に開口する油受け路122が形成されている。
この油受け路122は中心側から飛散した潤滑油を受
け、油受け路122に受けられた潤滑油は潤滑油孔12
3を経由して第2クラッチC2の内周側に直接導かれ
る。すなわち、第2クラッチC2には、第1クラッチC
1を冷却した温度の比較的高い潤滑油とは別系統の潤滑
油が導かれるので、第2クラッチC2は効率的に冷却さ
れる。
【0025】上記のように構成された第1クラッチC1
において、作動油路95から作動油室104に作動油が
供給されると、第1クラッチシリンダ96が軸心方向に
移動させられて、それにより第1クラッチプレート10
0と第1クラッチディスク102とが係合させられる。
【0026】また、前記第2クラッチC2も前記第1ク
ラッチC1と同様に構成されており、さらに、第2クラ
ッチシリンダ124の内周面に設けられた複数の嵌合溝
の先端には、連結リング126の外周に設けられた嵌合
突起が嵌合し、連結リング126の内周に設けられた嵌
合溝にはリングギヤ32の先端に形成された複数の嵌合
突起が嵌合しているので、第2クラッチシリンダ124
とリングギヤ32は一体的に回転させられる。従って、
作動油路94から第2作動油室128に作動油が供給さ
れ、第2クラッチピストン130により、交互に配置さ
れた複数の第2クラッチプレート132と第2クラッチ
ディスク134とが係合させられて、第2クラッチシリ
ンダ124と入力軸26が連結されると、リングギヤ3
2と中間軸116とが一体的に回転させられる。
【0027】図5は、図3のブレーキB1部分を拡大し
た断面図である。ブレーキB1は、ハウジング側板状部
材として機能する複数(図では3枚)のブレーキプレー
ト136と、リングギヤ側板状部材として機能する複数
枚(図では4枚)のブレーキディスク138とを備え、
そのブレーキプレート136とブレーキディスク138
とが交互に軸心方向に重ねられて配置されている。それ
ぞれのブレーキプレート136は外周に複数の嵌合突起
を備え、その嵌合突起が非回転部材であるハウジング3
0の内周面に設けられた複数の嵌合溝と嵌合することに
より、ハウジング30に対して軸心方向に相対移動可能
且つ軸心まわりに相対回転不能に係合している。
【0028】また、ブレーキディスク138は内周に複
数の嵌合突起を備え、その嵌合突起がリングギヤ32の
外周面に設けられた複数の嵌合溝と嵌合することによ
り、リングギヤ32に対して軸心方向に相対移動可能且
つ軸心まわりに相対回転不能に係合している。
【0029】さらに、上記ブレーキプレート136の軸
心方向においてブレーキピストン139側には、ブレー
キプレート136とブレーキディスク138とが重ねら
れた外側にフランジ140が設けられ、そのフランジ1
40はブレーキプレート136と同様にしてハウジング
30に対して軸心方向に相対移動可能且つ軸心まわりに
相対回転不能に係合している。そのフランジ140とリ
ングギヤ32との間の隙間は、上記ブレーキプレート1
36とリングギヤ32との間よりも狭められている。ま
た、ブレーキプレート136とブレーキディスク138
とが重ねられた外側のうち、上記フランジ140とは反
対の外側にはブレーキカバー142が設けられ、そのブ
レーキカバー142のブレーキディスク138側には、
パッキングプレート144が固定されている。
【0030】潤滑油収容空間146は、ブレーキプレー
ト136とブレーキディスク138とリングギヤ32の
外周面、または、パッキングプレート144とブレーキ
ディスク138とリングギヤ32の外周面、または、フ
ランジ140とブレーキプレート136とリングギヤ3
2の外周面とにより形成され、それぞれの潤滑油収容空
間146はブレーキディスク138に設けられた貫通孔
148により連通させられている。その複数の潤滑油収
容空間146には、ハウジング30およびブレーキカバ
ー142の内部に設けられた潤滑油路150を介して、
電動ポンプにより、図示しないバルブボディー(潤滑油
供給源)から潤滑油が直接に供給される。
【0031】さらに、上記潤滑油路150の潤滑油供給
口152とリングギヤ32との間には、スリーブ154
およびシールリング156が設けられ、潤滑油供給口1
52側において前記潤滑油収容空間146を密閉してい
る。また、潤滑油供給口152から最も遠い側に位置す
るフランジ140とリングギヤ32との間の隙間は狭め
られているので、潤滑油収容空間146は全体として略
液密に閉じられている。すなわち、上記スリーブ15
4、シールリング156、およびフランジ140はシー
ル部材として機能し、上記潤滑油路150からの潤滑油
は効率よく潤滑油収容空間146に収容される。
【0032】上記潤滑油収容空間146に潤滑油が導か
れると、潤滑油は遠心力により径方向外側へと送り込ま
れるので、ブレーキプレート136とブレーキディスク
138との間には十分に潤滑油が供給される。従って、
図4に示す第3作動油室158に作動油が供給され、ブ
レーキピストン139がスプリング160の力に抗して
移動させられ、ブレーキプレート136とブレーキディ
スク138とが半係合させられる場合にも、その半係合
が滑らかに達成されるので、滑らかに駆動力を発生させ
ることができ、さらに、ブレーキプレート136および
ブレーキディスク138の焼きつきが防止される。
【0033】上述のように、本実施例によれば、ブレー
キB1を構成するブレーキプレート136およびブレー
キディスク138に対して、潤滑油路150により導か
れた潤滑油がその内周側から直接に供給されるので、そ
のブレーキプレート136およびブレーキディスク13
8が好適に潤滑され、遊星歯車装置18の耐久性が十分
に得られる。
【0034】また、本実施例によれば、軸心方向に互い
に重ねられるブレーキプレート136およびブレーキデ
ィスク138の内周側に形成された潤滑油収容空間14
6がスリーブ154、シールリング156、およびフラ
ンジ140によって略油密に閉じられるため、十分な量
の潤滑油がブレーキプレート136およびブレーキディ
スク138の内周側に直接供給される。
【0035】また、本実施例によれば、サンギヤ24は
エンジン14に連結され、キャリヤ28は第1クラッチ
C1を介して無段変速機20の入力軸26に連結され、
リングギヤ32は第2クラッチC2を介して無段変速機
20の入力軸26に連結されるとともにブレーキB1を
介してハウジング30に連結されるものであり、潤滑油
路150により導かれた潤滑油はそのブレーキB1を構
成するブレーキプレート136およびブレーキディスク
138に供給されるので、特に、Rレンジに操作されて
エンジン14とMG16とが同時に作動させられる際
に、ブレーキB1が摩擦係合(スリップ係合)させられ
るフリクション走行モードにおいて、エンジン14およ
びMG16の出力を同時に伝達することにより比較的大
きな駆動力を滑らかに発生させることが可能となる。
【0036】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
説明したが、本発明は他の態様においても適用される。
【0037】たとえば、前述の実施例では、ブレーキB
1のブレーキプレート136およびブレーキディスク1
38に、内周側から直接に潤滑油を供給するための潤滑
油路150が設けられていたが、他の摩擦部材(たとえ
ば第1クラッチC1または第2クラッチC2の摩擦部
材)に対して内周側から直接に潤滑油を供給するための
潤滑油路が設けられてもよい。
【0038】また、前述の実施例では、隔壁90はハウ
ング30とは別部材であり、ボルト92によりハウジン
グ30に固定されていたが、ハウジング30が隔壁90
を有する形状として一体的に成形されてもよい。すなわ
ち、隔壁90はハウジング30の一部分であってもよ
い。
【0039】また、前述の実施例では、潤滑油供給口1
50側におけるシール部材としてスリーブ154および
シールリング156が設けられ、潤滑油供給口150と
は反対側におけるシール部材としてフランジ140が設
けられていたが、どちらか一方のみにシール部材が設け
られても一応の効果が得られるので、シール部材は一方
のみに設けられてもよい。
【0040】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳
細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、
本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加
えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のダブルピニオン型遊星歯車
装置を備えた4輪駆動車両の動力伝達装置の構成を説明
する骨子図である。
【図2】図1の遊星歯車装置を制御する油圧制御回路の
要部を説明する図である。
【図3】図1の動力伝達装置の構成を示す断面図であ
る。
【図4】図3の遊星歯車装置部分を図3とは異なる断面
で切断した断面図である。
【図5】図3のブレーキB1部分を拡大した断面図であ
る。
【符号の説明】
18:遊星歯車装置 24:サンギヤ 28:キャリヤ 30:ハウジング 32:リングギヤ 34:ピニオン、36:ピニオン C1:第1クラッチ(摩擦係合装置) C2:第2クラッチ(摩擦係合装置) B1:ブレーキ(摩擦係合装置) 136:ブレーキプレート(摩擦部材) 138:ブレーキディスク(摩擦部材) 140:フランジ(シール部材) 146:潤滑油収容空間 150:潤滑油路 154:スリーブ(シール部材) 156:シールリング(シール部材)
フロントページの続き (72)発明者 村上 新 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 野本 久徳 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 駒田 英明 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 梅山 光広 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3J063 AA01 AB12 AB22 AB53 BA11 BB11 CD24 XD47 XE14

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハウジング内において、サンギヤ、リン
    グギヤ、それらと噛み合うピニオンを回転可能に支持す
    るキャリヤが共通の軸心まわりに回転可能に設けられ、
    それらサンギヤ、リングギヤ、キャリヤが複数の摩擦係
    合装置を介して入力部材、出力部材、或いは該ハウジン
    グに選択的に連結させられる車両用遊星歯車装置におい
    て、 前記複数の摩擦係合装置のうちの少なくとも1つを構成
    する摩擦部材に対して、その内周側から潤滑油を直接に
    供給するための潤滑油路を設けたことを特徴とする車両
    用遊星歯車装置。
  2. 【請求項2】 前記摩擦係合装置の摩擦部材は、軸心方
    向に互いに重ねられた複数の板状部材であり、前記潤滑
    油路により導かれた潤滑油を収容するために該複数の板
    状部材の内周側に形成された潤滑油収容空間を略液密に
    閉じるためのシール部材が設けられたものである請求項
    1の車両用遊星歯車装置。
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