JP2001104340A - 歯列矯正ブラケットおよび歯列矯正ブラケット用ツール - Google Patents
歯列矯正ブラケットおよび歯列矯正ブラケット用ツールInfo
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Abstract
作性のよいロック部材を備えた歯列矯正ブラケットを提
供する。 【構成】 歯列矯正ブラケット1は、そのロック部材20
の一端側がベース側に該ベースに沿って延びるベース側
部22と、他端側がアーチワイヤスロット5の長さと略同
じ幅を有する閉じ部を備えてスロット上方側に延びる反
ベース側部21とを備え、ベース側部22の略中央に切欠き
部23が設けられた弾性体から構成されている。また、ブ
ラケット本体2には、アーチワイヤスロット5の開放縁部
に、ロック部材の先端をスロット閉じ位置に係止する閉
じ係止溝6と、該係止溝6とは反対側の縁部にロック部
材の先端をスロット開放位置に係止する開放係止凹部11
が形成されている。そして、係止溝6の長手方向中央部
分には、切欠き部23に対応して該係止溝を埋めるように
突出したリブ7が形成されている。
Description
し、更に詳しくは、ブラケット本体のアーチワイヤスロ
ットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えた歯列
矯正ブラケットおよび歯列矯正ブラケット用ツールに関
するものである。
歯列矯正ブラケットと称されている小さな器具が患者の
歯に固定されて行われる。すなわち、歯列矯正ブラケッ
トは、患者の歯に適宜固定され、この固定された歯列矯
正ブラケット間に掛け渡されたアーチワイヤ等を介して
歯並びの悪い歯に対して外力を加えて矯正するものとし
て、最も普通に用いられている。この歯列矯正ブラケッ
トの構造は、例えば、小さなスロットを有しており、歯
の口唇側もしくは舌側に直接接着されるか或いは歯にセ
メント付けもしくは他の方法で固定された金属バンド等
に付着される本体を有する構成となっている。
は、その使用形態として、歯列弓に沿うように湾曲した
弾性アーチワイヤを該ブラケットのスロットに取付け、
該弾性アーチワイヤの復元力によって、歯並びが奇麗に
なるように時間をかけて歯を移動させることができる。
すなわち、この歯列矯正ブラケットは、例えば、ブラケ
ット本体に形成されたスロットの三次元的な傾斜やアー
チワイヤの任意の曲げなどによって、歯に対して所望の
方向(歯を移動させたり、歯を回転させたり、更には歯
を傾けたりする方向)に力を加えることができる。
グを備え、このタイウィングにリガッチャーワイヤまた
はエラストメリックリガッチャーリングを掛けて、アー
チワイヤをブラケットのスロットから外れないようにし
っかり収納する。治療すべき歯列は不正咬合で、スロッ
トに通されたアーチワイヤは、大きく変形する。アーチ
ワイヤの復元力をブラケットを介して歯根に伝えること
により、歯列矯正治療がなされる。一般的に、治療の初
期では、細いソフトな丸ワイヤを用いて、この丸ワイヤ
が、スロット内で自在に滑る(ノンフリクション)よう
に、ステンレスリガッチャーワイヤを結紮した後に、少
し浮かす操作が必要となる。また、エラストメリックリ
ガッチャーリングは摩擦力を取り除けない。治療の進行
とともに、太いワイヤ、角ワイヤ、より剛性の高いワイ
ヤを用いる。動的治療がほぼ終了すると、後戻り防止の
ためにしばらく保定する。この際は、リガッチャーワイ
ヤで強くしばり、ほとんど動かないように固定する場合
もある。
の歯列矯正の期間中に、数種類の異なるアーチワイヤを
順次使用していく。来院の都度、リガッチャーワイヤを
取り外してアーチワイヤを曲げ調整したり取り替える必
要がある。この作業は、多大なチェアタイムを要し、ま
た患者には不快感を与えるものとなっていた。
ヤの末端は、タイウイング下に捻じ込むようにして収納
する。このような取り付け形態であることから、食物残
渣がこびり付き易いという問題を抱えている。この結
果、口腔内を衛生的に良好な状態に保つために比較的多
くの労力が必要であった。また、このリガッチャーワイ
ヤは、そのねじ曲げた端部がタイウイング下から露出し
て、患者の舌や頬の軟組織に刺激を与えるトラブルを生
じることもある。このリガッチャーワイヤが切れて外れ
るような事態が生じた場合には、外れたリガッチャーワ
イヤを飲み込んでしまったり、治療が停滞してしまうこ
とがあった。また、リガッチャーワイヤを手指に刺して
出血することから生じる各種感染症には、近年、重大な
関心が持たれている。
とによって発生する各種の問題は、ロック式歯列矯正ブ
ラケットによってある程度解消される。すなわち、この
ロック式歯列矯正ブラケットは、結紮用のタイワイヤを
必要としない構造であって、ブラケットに組み入れられ
て該ブラケットのスロットを開閉するために移動できる
ロック部材を備えている。そして、このロック部材とし
ては、例えば回転式やスライド式のロック部材があり、
該ロック部材は移動できることで、アーチワイヤをスロ
ット内に押し止めたり、或いはスロットから外したりす
ることが極めて容易にできる。また、ワイヤの捻じ曲げ
部分などがないスッキリした構造であることから飲食物
やそのカスのこびり付き等を回避しやすい。
ック部材を有する歯列矯正ブラケットでは、例えば、図
13に示すように、ブラケット本体82に設けられたア
ーチワイヤスロット85内のアーチワイヤ50が、ブラ
ケット本体82に装着されたロック部材120の先端部
分によって、スロット内に閉じこめられている。このロ
ック部材120はその先端部分が、例えばスロット85
と連続した係止溝86によって開き方向の動きを制限さ
れている。そして、通常において、スロット85内のア
ーチワイヤ50は、図13に示すように、スロット底面
側に位置している。しかし、アーチワイヤ50に不測の
大きな外力が加わったときには、図14に示すように、
アーチワイヤ50が、係止溝86内に入り込んでしま
い、引っかかった状態になることがある。このような状
態になると、スロット内をアーチワイヤ50が円滑に移
動できなくなり、矯正治療に支障がでてしまう。このよ
うな状態を回避するために、係止溝86の幅Wを小さく
することも考えられるが、該高さWを小さくすると、ロ
ック部材120の機能(細い丸ワイヤからフルサイズの
角ワイヤまで弾性範囲内でしなやかに圧下する機能)が
低下してしまい、望ましくない。また、アーチワイヤ5
0に不測の大きな外力が加わったときには、図15に示
すように、アーチワイヤ50が捻れたときに、ロック部
材120の先端部分121が捻れてしまい、ワイヤ保持
が不安定になるという問題があった。米国特許明細書第
5906486号に開示された構造においては、係止溝
の両端側を閉じるようにして、ロック部材の先端部分の
位置規制をする構成が示されている。しかし、このよう
な構造においては、係止溝の両端部を閉じるように構成
されるために、ロック部材の先端部分の幅を、スロット
長さに比べて小さくせざるを得ない。したがって、ロッ
ク部材の先端部分は、アーチワイヤを押さえる長さが短
いために、ローテーションコントロールが充分でないと
言う欠点を抱えていた。
めになされたものであり、その目的とするところは、ア
ーチワイヤがスロットから外れて係止溝内にはまり込む
ような事態を回避でき、また、アーチワイヤの係止をよ
り確実にでき且つ操作性のよいロック部材を備えた歯列
矯正ブラケットを提供すること。特に、ロンボイド型及
びトルクインベース型の歯列矯正ブラケットにおいて
は、取り扱い性の良い歯列矯正ブラケットを提供するこ
とである。また、本発明の他の目的は、ロック部材の操
作性のよいツールを提供することである。
ラケットは、歯面に固着されるベースを備え、該ベース
から略垂直方向に延びるブラケット本体、該ブラケット
本体の略中央にて近遠心方向に延び前方に開放したアー
チワイヤスロットを備えており、前記アーチワイヤスロ
ットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えた歯列
矯正ブラケットであって、前記ロック部材は、一端側が
前記ベース側に該ベースに沿って延びるベース側部と、
他端側が前記アーチワイヤスロットの長さと略同じ幅を
有してスロット上方側に延びる反ベース側部とを備える
断面形状が略U字形状になされ、かつ該反ベース側部の
略中央に切欠き部が設けられた弾性体から構成されてお
り、ブラケット本体には、前記アーチワイヤスロットの
開放縁部に、前記ロック部材の先端をスロット閉じ位置
に係止する閉じ係止溝と、該係止溝とは反対側の縁部に
前記ロック部材の先端をスロット開放位置に係止する開
放係止凹部が形成されており、該係止溝の長手方向中央
部分には、前記切欠き部に対応して該係止溝を埋めるよ
うに突出したリブが形成されたことを特徴とし(請求項
1)、これにより上記目的を達成することができる。
いて、 ・前記ブラケット本体は、近心側タイウイングと遠心側
タイウイングとによって挟まれた中溝をもつツインブラ
ケットであり、前記リブは前記中溝の全幅にわたって形
成され且つ近心側タイウイング及び遠心側タイウイング
に繋がって形成されていること(請求項2) ・前記ブラケット本体がタイウイングを備えるシングル
ブラケットであること(請求項3)、 ・前記ブラケット本体が、歯の裏面側に装着するリンガ
ルブラケットであること(請求項4)、
と(請求項5)、 ・前記ベース側部の後端部に、凹み又は切欠きからなる
係合端部が形成されたこと(請求項6)、 ・前記ブラケット本体に、近遠心方向に沿って貫通する
開口が形成されたこと(請求項7)、 ・前記ブラケット本体は、前記ロック部材の縁部が摺動
するタイウイング側面に、該縁部に当接可能な突起が設
けられ、ロック部材のスロット閉塞時に該突起が縁部よ
りも外側に位置するように構成されたこと(請求項
8)、
体のタイウイングの近遠心方向に立ち上がって張り出し
たフックが設けられたこと(請求項9)、 ・前記ロック部材は、一枚板材からなり、その歯軸方向
の略中断部分を境にして前記ベース寄りのベース側部
が、ブラケットのアンギュレーションに一致した傾斜角
とし、一方、前記ベース寄りの側とは反対側の反ベース
側部がブラケットアンギュレーションの傾斜角に加え
て、アーチワイヤを押圧するための曲がり分に対応する
角度を補正した傾斜角とし、さらに、前記ベース側部と
前記反ベース側部との両者を結ぶ湾曲部分は、正弦曲線
の一部となるように構成されたこと(請求項10)、
形状であり、前記ロック部材の反ベース側部の近遠心両
縁部および前記ベース側部の近遠心両縁部がブラケット
上方から見たときに、ブラケット近遠心縁部に沿って平
行であり、かつ前記反ベース側部の近遠心方向に延びる
各縁部が前記アーチワイヤスロットに平行に形成された
こと(請求項11)
状であり、かつアーチワイヤスロットが該ブラケット本
体を上方から見たときに該ブラケット本体の縁部の直線
に対して傾斜したカットアンギュレーション型であり、
前記ロック部材の反ベース側部の近遠心方向に延びる各
縁部が前記アーチワイヤスロットに平行になるように構
成されたこと(請求項12)、
れたこと(請求項13)、 ・前記ロック部材がβ・チタニウム合金にて構成された
こと(請求項14)、 ・前記ロック部材がクローム(Cr)およびモリブデン
(Mo)を含有するコバルト−ニッケル基合金(Co−
Ni基合金)にて構成されたこと(請求項15)、 ・前記ロック部材が加工硬化型ニッケル−チタニウム
(Ni−Ti)合金にて構成されたこと(請求項1
6)、 ・前記ブラケット本体がトルクインベース構造にて構成
され、かつ前記ロック部材のベース側部がトルクに応じ
て傾いたベースに平行に位置するように構成されたこと
(請求項17)、 ・前記ロック部材のベース側部が前記ベース上を摺動す
るように構成されたこと(請求項18) を特徴とする。
は、前記ブラケット本体の一部に係合可能な支点部と、
前記ベース側部の後端部に係合可能な作用部とを備え、
前記ブラケット本体の一部を支点にし且つ前記後端部の
係合端部を作用点にすることで、前記ロック部材をスラ
イド操作することを特徴とし(請求項19)、これによ
り、上記目的を達成することができる。
ト用ツールにおいて、 ・前記支点部が前記リブの上端面の凹部の中に係合可能
に構成されたこと(請求項20)、を特徴とする。
によれば、ロック部材は、一端側がベース側に該ベース
に沿って延びるベース側部と、他端側がアーチワイヤス
ロットの長さと略同じ幅を有してスロット上方側に延び
る反ベース側部とを備える断面形状が略U字形状になさ
れ、かつ該反ベース側部の略中央に切欠き部が設けられ
た弾性体から構成されており、ブラケット本体には、ア
ーチワイヤスロットの開放縁部に、ロック部材の先端を
スロット閉じ位置に係止する閉じ係止溝と、該係止溝と
は反対側の縁部に前記ロック部材の先端をスロット開放
位置に係止する開放係止凹部が形成されている。この構
成により、ロック部材は、ブラケット本体上において、
アーチワイヤスロットを開閉するようにスライドでき
る。また、係止溝の長手方向中央部分に、ロック部材の
切欠き部に対応して該係止溝を埋めるように突出したリ
ブが形成されていることにより、アーチワイヤがスロッ
トから外れて係止溝内にはまり込むような事態を回避で
き、さらに、係止溝のリブに対してロック部材の切欠き
部が嵌り込むように対応していることにより、ロック部
材の先端部分のスロット長手方向への動き及び捻れを効
果的に抑える。すなわち、ロック部材の先端部分のスロ
ット長手方向への動きや捻れに対して、これらの動きを
係止溝の中央領域に設けられたリブにより抑えることが
でき、しかも、ロック部材の先端の近遠心方向における
押さえる距離は、ブラケット本体の構造に制約されるこ
となく大きくすることができる。(請求項1)
トにおいて、ブラケット本体が、近心側タイウイングと
遠心側タイウイングとによって挟まれた中溝をもつツイ
ンブラケットで、リブは中溝の全幅にわたって形成され
且つ近心側タイウイング及び遠心側タイウイングに繋が
って形成されている構成によれば、このリブによって、
ブラケット本体を補強することができる。(請求項2)
トにおいて、ブラケット本体がタイウイングを備えるシ
ングルブラケットであることで、捻転歯や歯幅が狭い下
顎前歯でも使用できるロック部材付きの装着性並びに操
作性の良い歯列矯正ブラケットを提供できる。(請求項
3)
トにおいて、ブラケット本体が、歯の裏面側に装着する
リンガルブラケットであることにより、リガッチャーワ
イヤによる結紮が難しい歯裏側でも使用できるロック部
材付きの装着性並びに操作性の良い歯列矯正ブラケット
を提供できる。(請求項4)
トにおいて、前記リブの上端面に凹部が形成された構成
によれば、この凹部にツール等を挿入することができ、
これにより、ブラケット本体あるいはロック部材を操作
するときに利用することができる。また、凹部は、例え
ば三角形状の場合、ドクターが歯軸方向の上下を識別す
るために有効である。(請求項5)
ットにおいて、ベース側部の後端部には凹み又は切欠き
からなる係合端部が形成されたことにより、この切欠き
もしくは凹部にツールを係合することができ、ドクター
が直接にこの係合端部を見なくても手指でツールを操作
することにより、ロック部材の開放を容易にすることが
できる。(請求項6)
トにおいて、ブラケット本体に、近遠心方向に貫通する
開口が形成されたことにより、この開口を利用して、ロ
ック部材を固定する適宜手段を取り付けたり、あるい
は、補助ワイヤを通して、前歯部を牽引したり、アップ
ライティングスプリングやローテーションスプリング等
の補助的手段を用いて効果的に治療を進めることができ
る。(請求項7)
いて、ブラケット本体は、ロック部材の縁部が摺動する
タイウイング側面に、該縁部に当接可能な突起が設けら
れ、ロック部材のスロット閉塞時に該突起が縁部よりも
外側に位置するように構成されたことにより、例えば、
口腔内において不測の外力が作用したときでも、この突
起がロック部材の一部(ロック部材の湾曲した部分)を
押さえることで、ロック部材の意図しない開放を避ける
ことができる。また、ロック部材のU字湾曲部を押圧し
て、スロットを閉じようと操作する時、この突起を越え
る際に、クリック圧を手指に感じることができ、スロッ
ト閉塞の確認が得られる。(請求項8)
いて、ブラケット本体に、該本体のタイウイングの近遠
心方向に立ち上がって張り出したフックが設けられたこ
とにより、ブラケット本体にツールを係合するときに、
フックがブラケット本体から横に逃げるように張り出し
ているので、操作性の支障とならない。(請求項9)
いて、ロック部材は、一枚板から形成されたことによれ
ば、ロック部材は、板材の打ち抜き加工等により極めて
容易に製造できる。また、ロック部材におけるベース側
部へ延びる部分(脚部)の略中断部分を境にして前記ベ
ース寄りのベース側部が、ブラケットのアンギュレーシ
ョンに一致した傾斜角とし、一方、ベース寄りの側とは
反対側の反ベース側部がブラケットアンギュレーション
の傾斜角に加えて、アーチワイヤを押圧するための曲が
り分に対応する角度を補正した傾斜角とし、さらに、ベ
ース側部と反ベース側部との両者を結ぶ湾曲部分は、正
弦曲線の一部となるように構成されたことにより、ブラ
ケット本体を上方から見たときに、反ベース側部の左右
両縁部が直線に見えるようにでき、ブラケット本体が、
ロンボイド形の形状において、反ベース側部の各縁部の
ラインをブラケット位置合わせに利用することができ
る。(請求項10)、
いて、ブラケット本体が、ロンボイド形の形状であり、
ロック部材の反ベース側部の近遠心両縁部およびベース
側部の近遠心両縁部がブラケット上方から見たときに、
ブラケット近遠心縁部に沿って平行であり、かつ前記反
ベース側部の顎側縁部(ベース側部寄りの縁部)および
切欠き部の奥側縁部(切欠きの最深部分の縁部)がアー
チワイヤスロットに平行に形成されたことにより、ブラ
ケット上方から見たときに、ブラケット平行四辺形の各
辺の縁部に沿っており、ロック部材の近遠心方向及び歯
軸方向の各縁部ラインをブラケット位置合わせに利用す
ることができる。(請求項11)
いて、ブラケット本体は、アーチワイヤスロットが四角
形(ノンロンボイド)ブラケットの輪郭線に対して傾斜
したカットアンギュレーション型であり、ロック部材の
反ベース側部の近遠心方向に延びる各縁部(先端縁部、
顎側縁部および切欠き部の奥側縁部)が前記アーチワイ
ヤスロットに平行になるように構成されたことにより、
カットアンギュレーション型の歯列矯正ブラケットにお
いて、ロック部材の上記各縁部を、位置並びに向き合わ
せに利用できる。(請求項12)
て、ロック部材が超弾性部材、すなわち、変形量がある
特定の量以上に増大した場合でも荷重変化が増大せずに
ほぼ一定に保たれる状態を有する部材にて構成されたこ
とにより、該ロック部材が比較的大きく変形した場合で
も荷重の大きな変動がなく、無理のないアーチワイヤの
押さえ並びに治療操作における操作性の良さを維持する
ことができる。(請求項13)
おいて、ロック部材がβ・チタニウム合金にて構成され
たことによれば、変形量の割りに押さえ力(荷重)を大
きくすることができるので、スロットの封止が確実にで
き且つアーチワイヤの確実な押さえが可能である。(請
求項14) さらに、本発明に係る歯列矯正ブラケットにおいて、前
記ロック部材がクローム(Cr)およびモリブデン(M
o)を含有するコバルト−ニッケル基合金(Co−Ni
基合金)例えば、米国エルジン社製の商品名エルジロ
イ、または株式会社マイクロパーツ社製の商品名スプロ
ンと称されているものは、クロムおよびモリブデンを比
較的多く含んでいるので、優れたばね性を持ちながら
も、高い耐疲労性と耐食性を示すことができる。(請求
項15) また、本発明に係る歯列矯正ブラケットにおいて、前記
ロック部材が加工硬化型ニッケル−チタニウム(Ni−
Ti)合金にて構成されていることにより、この合金の
場合も弾性限度が高いので、スロットの封止が確実にで
き且つアーチワイヤの確実な押さえが可能である。(請
求項16)
いて、ブラケット本体がトルクインベース構造であるこ
とにより、ロック部材の反ベース側部がアーチワイヤに
対する押圧向きをほぼ一定にできる。したがって、アー
チワイヤはスロット内で安定した押さえ力の向きと大き
さで維持できるので、正確な治療効果を期待することが
できる。すなわち、形態の異なった複数のブラケット本
体を使用した場合でも、どのような場合でもアーチワイ
ヤとロック部材の関係が一定にできるので、治療効果の
予測が容易であり、確実な治療効果が期待できる。ま
た、ロック部材のベース側部がトルクに応じて傾いたベ
ースに平行に位置するように構成され、いかなるトルク
の場合でも、ボンディングベースに近接しているので、
ベース側部の先端部分がタイウイングの下を塞ぐように
位置せず、食物残渣の詰まりを少なくできる。(請求項
17) また、ロック部材のベース側部がボンディングベース上
を摺動するように構成されたことにより、ベース側部
は、いずれの位置においても該ベースによって保持され
ており、例えば、ツールによって後端を強く押すような
操作をした場合でも、変形することなく、安定して開く
ことができる。(請求項18)
は、ブラケット本体の一部に係合可能な支点部と、ベー
ス側部の後端部に係合可能な作用部とを備え、ブラケッ
ト本体の一部を支点にし且つ後端部の係合端部を作用点
にすることで、例えば、ロック部材を開き操作(スロッ
トを開ける操作)を行うときに、一つのツールでブラケ
ット本体を押さえながらロック部材をスライドさせる力
を加えることができ、スライド操作を円滑にできる。
(請求項19)
ツールにおいて、支点部がリブの上端面の凹部の中に係
合可能に構成されたことによれば、操作力を加えるため
の支点部を、ブラケット本体の中央領域でかつ強度的に
十分な部分を支点部として利用できる。(請求項20)
ケットの実施の形態を、図面を参照して詳細に説明す
る。図1は、本発明に係る歯列矯正ブラケットの第1の
実施形態の分解斜視図である。図2は、本発明に係る歯
列矯正ブラケットの平面図である。図3は、本発明に係
る歯列矯正ブラケットのロック部材の平面図及び側面図
である。図4は、本発明に係る歯列矯正ブラケットのロ
ック部材の展開図である。図5は、本発明に係る歯列矯
正ブラケットのロック部材およびリブの作用を説明する
ための概略断面図である。
分の断面図である。図7は、本発明に係る歯列矯正ブラ
ケットの装着状態を示す平面図である。図8は、本発明
に係る歯列矯正ブラケットの動作並びに第2の実施形態
である歯列矯正ブラケット用ツールの動作を説明するた
めの概略側面図である。図9は、本発明に係る第3の実
施形態である歯列矯正ブラケットの分解斜視図である。
図10は、本発明に係る第4の実施形態である歯列矯正
ブラケットの分解斜視図である。図11は、本発明に係
る第5の実施形態である歯列矯正ブラケットの概略側面
図である。図12は、本発明に係る第6の実施形態であ
る歯列矯正ブラケットの概略平面図である。
第1の実施形態の歯列矯正ブラケット1は、近心側タイ
ウイング4と遠心側タイウイング4とによって挟まれた
中溝17をもつツインブラケットであり、歯面に固着さ
れるベース3を備え、このベースから略垂直方向に延び
るブラケット本体2、このブラケット本体2の略中央に
て近遠心方向に延び前方に開放したアーチワイヤスロッ
ト5を備えている。このアーチワイヤスロット5を開閉
できる移動可能なロック部材20を備えている。
示すように、一端側がベース側で該ベースに沿って延び
るベース側部22(舌側に位置する部分)と、他端側が
アーチワイヤスロット5の長さと略同じ幅を有してスロ
ット上方側に延びる反ベース側部21とを備える断面形
状が略U字形状に構成されている。そして、反ベース側
部21(唇側に位置する部分)の先縁部の略中央に切欠
き部23が設けられた弾性体から構成されている。
スロット5の開放縁部に、ロック部材20の先端をスロ
ット閉じ位置に係止する係止溝6が形成されている。ま
た、この係止溝6とは反対側の縁部には、ロック部材2
0の先端をスロット開放位置に係止する開放係止凹部1
1が形成されている。この係止溝6の長手方向中央部分
には、切欠き部23に対応して該係止溝6を埋めるよう
に突出したリブ7が形成されている。
の凹部8が形成されている。また、ロック部材20にお
けるベース側部22の後端部には、切欠きもしくは凹部
更には突起などにより構成できる係合端部24が形成さ
れている。
ヤスロット5(近遠心方向)に沿って貫通した開口14
が形成されている。この開口14は、ロック部材20を
よりしっかり固定するときに、結紮手段を貫通させて利
用することができる。また、ブラケット本体2には、ロ
ック部材20の湾曲部分の両側縁部に対応する位置に突
起13が設けられている。この突起13は、ベース側部
22の両縁部22a,22aの湾曲した部分に適宜圧力
で当接できる程度の大きさに突出しており、ロック部材
20がアーチワイヤスロット5を閉塞したときに、この
突起13が湾曲部の両側縁部の外側に位置するように構
成されている。したがって、例えば、口腔内において不
測の外力が作用したときでも、この突起13がベース側
部22を押さえ、ロック部材20の開放する方向の動き
を抑える。
ト1は、そのロック部材20が、ブラケット本体2上に
おいて、アーチワイヤスロット5を開閉するように円滑
にスライドできる。そして、係止溝6の長手方向中央部
分に、ロック部材20の切欠き部23に対応したリブ7
が形成されていることにより、係止溝6の高さWが、ア
ーチワイヤ50の直径より大きい構成であっても、例え
ば、図5に示すように、アーチワイヤ50がスロット5
の底部から浮き上がるように付勢したとき、係止溝6内
にはまり込むような事態が回避される。また、係止溝6
の幅方向の中央部分において、ロック部材20の先端部
分の切欠き部23が嵌り込むように係合しているので、
反ベース側部21がしっかりと保持され、該反ベース側
部21のスロット長手方向へのズレ防止、さらには、捻
れを防止することができる。さらに、ロック部材20
は、係止溝6によって、反ベース側21の先端部分が係
止されていることで、意図することなく唇側に開くこと
がない。なお、図5および図6に示す形態は、図2及び
図3に示す形態とは異なった構造を図示した。すなわ
ち、図5および図6に示す形態では、係止溝6の高さ
は、リブ7の高さよりも大きく構成されている。さらに
また、図6に示すように、係止溝6の近遠心方向の幅
は、タイウイング4の幅よりも小さく構成されており、
係止溝6の側壁6aがタイウイング4と繋がった構成と
なっている。
から横方向(遠心側)にその基部10が張り出したフッ
ク9が設けられている。このように構成されていると、
例えば、ブラケット本体2に後述するツール70(図8
参照)を係合するときに、操作性の支障とならない。
ット1において、ロック部材20が例えばニッケル・チ
タニウム合金のごとき超弾性部材にて構成されている場
合には、該ロック部材が比較的大きく変形した場合でも
荷重の大きな変動がなく、アーチワイヤを超弾性下で無
理のないアーチワイヤの押さえができ、また、治療操作
における操作性の良さを維持できる。例えば、細い丸ワ
イヤからフルサイズの角ワイヤまで、ほとんど等しい荷
重でスロット内に圧下でき、生体内に最適な力で、治療
の初期から三次元的なコントロールが可能となる。矯正
力はワイヤの復元力の他に、ロック部材のアーチワイヤ
を圧下する力によっても生み出され、より高次元の治療
が可能となる。
ット1において、ロック部材20がβ・チタニウム合
金、高Cr高MoのCo−Ni基合金または加工硬化型Ni
−Ti合金にて構成された場合には、変形量の割りに押
さえ力(荷重)を大きくすることができるので、スロッ
トの封止が確実にでき且つアーチワイヤの確実な押さえ
ができる。また、ロック部材20がβ・チタニウム合金
及び高Cr高MoのCo−Ni基合金または加工硬化型Ni
−Ti合金にて構成された場合には、ニッケル・チタニ
ウム合金のような超弾性の性質はないものの、細い丸ワ
イヤを圧下しないので、摩擦が全くない状態(フリクシ
ョンフリー)となり、効率的な歯牙移動を達成する。上
記の高Cr高MoのCo−Ni基合金は、例えばコバルトが
約39.25重量%、ニッケルが約15.70重量%、
クロームが約19.95重量%、モリブデンが約7.0
2重量%、その他鉄等を適宜含有するものを用いること
ができる。
のロック部材20は、図4に示すように、略T字形状の
一枚板を素材として形成することができるが、例えば、
図示しない板材を、打ち抜き加工等により略T字形状に
形成し、その後、曲げ加工により以下のように成形す
る。
て、略T字形状のベース側部22の略中断部分Cを境に
して上下の部分が、例えば上顎犬歯用ブラケットの場合
それぞれ10度程の所定角度α2を持って湾曲されてい
る。さらに詳しく説明すると、ロック部材20は、その
脚部の略中断部分を境にしてベース寄りのベース側部2
2が、ブラケットのアンギュレーションに一致した傾斜
角α2(角度10度程度)とし、一方、ベース寄りの側
とは反対側の反ベース側部21は、ブラケットアンギュ
レーションの傾斜角(10度)に加えて、アーチワイヤ
を押圧するための曲がり分に対応する角度を補正した傾
斜角α20(8度程度)となっている。また、ベース側
部22と反ベース側部21との両者を結ぶ湾曲部分は、
正弦曲線の一部となっている。
と、ベース側部22の肉厚み方向の湾曲半径R1(図3
のb参照)との関係は、図3のaに示すように、ロック
部材20を上方から見たときに、湾曲部分でタイウイン
グ4,4の内側に位置する左右両縁部22a,22aが
中央線C3に平行な直線に見えるように対応して構成さ
れている。したがって、ブラケット本体2が、ロンボイ
ド形の形状において、前記縁部22aのラインを、図7
に示すように、ブラケット本体2の近遠心側面と中溝1
7と協働して、例えばFACC(facial axis of cl
inical crown)に合わせるようにして、ブラケット位
置合わせが容易にできる。
ブラケット1は、ロック部材20の略T字形状における
T字頭部である反ベース側部21の左右両縁部21a,
21aおよび湾曲部分の左右両縁部22a,22aがブ
ラケット上方から見たときに、ブラケットのタイウイン
グの近遠心端2a,2aに沿って平行に形成されてい
る。また、ロック部材20は、その反ベース側部21の
近遠心方向に沿った縁部が、咬合面またはアーチワイヤ
ラインに平行となるような目安で取り付けることができ
る。
て示した歯列矯正ブラケット1に対して使用する歯列矯
正ブラケット用ツールについて説明する。本実施形態に
おける歯列矯正ブラケット用ツール70は、例えば、図
8に示すように、第1アーム部71と第2アーム部72
とが適宜連続した構成であれば、特に、図示の形態に限
定するものではなく種々の形態を取ることができる。
実施形態においてはブラケット本体2に設けられたリブ
7の上端面の凹部8に)係合する支点部である第1アー
ム部71と、ロック部材20のベース側部22における
後端部の係合端部24(例えば切欠きもしくは凹部、突
起など)に係合する作用部となる第2アーム部72を備
えている。
のリブ7の上端面の凹部8を支点にし且つ後端部の係合
端部24を作用点として、例えば、係合端部24を図示
のように、X方向へ押すことにより、ロック部材20全
体をX方向へ移動させて、アーチワイヤスロット5の開
き操作を行うことができる。この結果、ロック部材20
は、その反ベース側部21が11上に嵌まり込むように
位置して係止された状態に保たれる。
対方向への操作)は、湾曲部をX方向とは反対方向へ押
すことにより行うことができる。なお、この押圧操作に
おいて、その押圧終段に、湾曲部の左右両縁部22a,
22aが突起13を乗り越えるときにクリック動作によ
って、ロック部材20の閉じ動作完了を認識することが
できる。
3の実施形態について図9を参照して説明する。図9に
示す第3の実施形態の歯列矯正ブラケット91は、ブラ
ケット本体92がタイウイング94を備えるシングルブ
ラケットであり、歯面に固着されるベース93を備え、
このベース93から略垂直方向に延びるブラケット本体
92、このブラケット本体92の略中央にて近遠心方向
に延び前方に開放したアーチワイヤスロット95を備え
ている。このアーチワイヤスロット95を開閉できる移
動可能なロック部材920を備えている。
側で該ベースに沿って延びるベース側部922と、他端
側がアーチワイヤスロット95の長さと略同じ幅を有し
てスロット上方側に延びる反ベース側部921とを備
え、湾曲部には、タイウイングがスロット閉鎖時には露
出する穴が設けられている。そして、反ベース側部92
1(唇側に位置する部分)の先縁部の略中央に切欠き部
923が設けられた弾性体から構成されている。
イヤスロット95の開放縁部に、ロック部材920の先
端をスロット閉じ位置に係止する係止溝96が形成され
ている。また、この係止溝96とは反対側の縁部には、
ロック部材920の先端をスロット開放位置に係止する
開放係止凹部911が形成されている。この係止溝96
の長手方向中央部分には、切欠き部923に対応して該
係止溝96を埋めるように突出したリブ97が形成され
ている。
心側面912の両面にそれぞれ突起913が設けられて
いる。この突起913は、ロック部材920の脚部の湾
曲した部分に適宜圧力で当接できる程度の大きさに突出
している。したがって、ロック部材920がアーチワイ
ヤスロット95を閉塞したときに、この突起913がロ
ック部材920の外面側に位置するようになっている。
これにより、口腔内において不測の外力が作用したとき
でも、この突起913がロック部材920の開放する方
向の動きを抑える。
4の実施形態について図10を参照して説明する。な
お、本実施形態におけるブラケット本体101およびロ
ック部材120についての説明においては、カットアン
ギュレーション型である以外は第1の実施形態と同様で
あり、第1の実施形態と同様の構成要素については、同
符号を付して説明を適宜省略する。
01は、図10の(b)に示すように、ブラケット本体
2は、上方から見たとき、アーチワイヤスロット5がほ
ぼ正方形のブラケット輪郭に対して傾斜(α3)したカ
ットアンギュレーション型である。そして、図10の
(a)に示すように、ロック部材120の反ベース側部
21の先端縁部21d、該先端縁部21dの反対側の縁
部21bおよび切欠き部23の奥側縁部21cがアーチ
ワイヤスロット5に平行になるように構成されている。
したがって、ロック部材120の脚部はα2,α20
(図4参照)のような傾き、R2のような曲線を持たず
真っ直ぐであるが、T字形頭部(反ベース側部)は、角
度α3だけ傾斜している。なお、カットアンギュレーシ
ョン型は、アンギュレーション(角度α3)が大きい
と、タイウイングの強度が低くなるが、リブ8が形成さ
れたことで補強効果がある。また、アンギュレーション
(角度α3)が大きいと、形状が大きくなるが、ロンボ
イド形に比べて歯冠にポジショニングし易い利点があ
る。
5の実施形態について図11を参照して説明する。な
お、本実施形態における歯列矯正ブラケット201は、
トルクインベース構造である以外は第1の実施形態と同
様であるので、本実施形態の特徴部分以外の説明は適宜
省略する。
は、ブラケット本体2の上部の構造に対してベース3が
傾斜している所謂トルクインベース構造(アーチワイヤ
スロット5の側壁が咬合平面に平行な時、ベース3がFA
ポイント(図11参照)における歯冠傾斜角α4だけ傾い
た構造)である。このトルクインベース構造は、アーチ
ワイヤスロット5が傾斜して形成される構成でないの
で、ロック部材20の先端部分が角型アーチワイヤ60
に対する押圧向き(Fの方向)が安定する。ロック部材
20は、トルクに応じた傾斜角α4を有することによっ
て、ベース側部22と反ベース側部21との開き角度を
有している。また、ベース側部22と反ベース側部21
との距離(又はR1の大きさ)は、歯並びのイン/アウ
トに対応したブラケットの高さに対応して変化する。ロ
ック部材20は、角型アーチワイヤ60をスロット内に
押圧する荷重の向きが安定する。この結果、安定した押
さえ力を維持でき、正確な治療効果を期待することがで
きる。このように構成されたことで、形態の異なった複
数のブラケット本体を使用した場合でも、どのような場
合でもアーチワイヤとロック部材の関係が一定にできる
ので、治療効果の予測が容易である。また、トルクイン
ベース構造においては、ロック部材のベース側部がトル
クに応じて(傾き角度α4)傾いたベースに平行に位置
するように構成され、いかなるトルクの場合でも、ボン
ディングベースに近接している。したがって、ベース側
部の先端部分がタイウイングの下を塞ぐように位置せ
ず、食物残渣の詰まりを少なくでき、口腔内衛生を良好
に保つことができる。また、ロック部材のベース側部が
ボンディングベース上を摺動するように構成されたこと
により、ベース側部は、いずれの位置においても該ベー
スによって保持されており、例えば、ツールによって後
端を強く押すような操作をした場合でも、変形すること
なく、安定して開くことができる。
6の実施形態について図12を参照して説明する。な
お、本実施形態における歯列矯正ブラケット301は、
タイウイングの形状以外は第1の実施形態と同様である
ので、本実施形態の特徴部分以外の説明は適宜省略す
る。本実施形態におけるタイウイング4は、アーチワイ
ヤースロット側の端面4aが先細り形状(例えば略円錐
形状あるいは面取り形状)に構成されている。このよう
に略円錐形状あるいは面取り形状に構成することによ
り、例えば、アーチワイヤーの掛け替え操作やロック部
材20の操作時におけるタイウイング4の先端部分の欠
け破損等を回避することができる。
矯正ブラケットによれば、時間の費やすアーチワイヤ結
紮の必要をなくすることができ、また、リガッチャーワ
イヤを用いる必要がないため、これがこわれたり外れた
りしたときの不都合がない。さらに、本発明に係る歯列
矯正ブラケットによれば、ロック部材は、ブラケット本
体上において、アーチワイヤスロットを開閉するように
スライドでき、また、係止溝の長手方向中央部分に、ロ
ック部材の切欠き部に対応して該係止溝を埋めるように
突出したリブが形成されていることにより、アーチワイ
ヤがスロットから外れて係止溝内にはまり込むような事
態を回避でき、さらに、係止溝のリブに対してロック部
材の切欠き部が嵌り込むように対応していることによ
り、ロック部材の先端部分のスロット長手方向への動き
及び捻れを効果的に抑える。すなわち、ロック部材の先
端部分のスロット長手方向への動きや捻れに対して、こ
れらの動きを係止溝の中央領域に設けられたリブにより
抑えることができ、しかも、ロック部材の先端の近遠心
方向におけるアーチワイヤーをローテンション方向に押
さえる距離は、ブラケット本体の構造に制約されること
なく(ロック部材の左右両端部分がブラケット本体にて
位置規制されるような構造ではないことから)大きくす
ることができる歯列矯正ブラケットを提供できる。(請
求項1)
トにおいて、ブラケット本体が、近心側タイウイングと
遠心側タイウイングとによって挟まれた中溝をもつツイ
ンブラケットで、リブは中溝の全幅にわたって形成され
且つ近心側タイウイング及び遠心側タイウイングに繋が
って形成されている構成によれば、このリブによって、
ブラケットの両タイウイングを補強することができる歯
列矯正ブラケットを提供できる。(請求項2)
トにおいて、ブラケット本体がタイウイングを備えるシ
ングルブラケットであることで、歯幅が狭い部分でも使
用できるロック部材付きの装着性並びに操作性の良い歯
列矯正ブラケットを提供できる。(請求項3)
トにおいて、ブラケット本体が、歯の裏面側に装着する
リンガルブラケットであることにより、目立たない歯裏
側でも使用できるロック部材付きの装着性並びに操作性
の良い歯列矯正ブラケットを提供できる。(請求項4)
トにおいて、前記リブの上端面に凹部が形成された構成
によれば、この凹部にツール等を挿入することができ、
これにより、ブラケット本体あるいはロック部材を操作
するときに利用可能な歯列矯正ブラケットを提供でき
る。(請求項5)
ットにおいて、ベース側部の後端部には凹み又は切欠き
からなる係合端部が形成されたことにより、この切欠き
もしくは凹部にツールを係合することができ、ロック部
材の操作を容易にする歯列矯正ブラケットを提供でき
る。(請求項6)
トにおいて、ブラケット本体に、近遠心方向に貫通する
開口が形成されたことにより、この開口を利用して、ロ
ック部材を固定する適宜手段を取り付けたり、あるい
は、補助ワイヤを通して、前歯部を牽引したり、アップ
ライティングスプリングやローテーションスプリング等
の補助的手段を用いて効果的に治療を進めることができ
る歯列矯正ブラケットを提供できる。(請求項7)
いて、ブラケット本体には、ロック部材の脚部の縁部に
対向するタイウイングに、該脚部の縁部に当接可能な突
起が設けられ、ロック部材のスロット閉塞時に該突起が
脚部の外面側に位置するように構成されたことにより、
例えば、口腔内において不測の外力が作用したときで
も、この突起が脚部を押さえることで、ロック部材の意
図しない開放を避けることができる歯列矯正ブラケット
を提供できる。また、ロック部材のU字湾曲部を押圧し
て、スロットを閉じようと操作する時、この突起を越え
る際に、クリック圧を手指に感じることができ、スロッ
ト閉塞の確認が得られる歯列矯正ブラケットを提供でき
る。(請求項8)
いて、ブラケット本体に、該本体のタイウイングの近遠
心方向に立ち上がって張り出したフックが設けられたこ
とにより、ブラケット本体にツールを係合するときに、
フックがブラケット本体から横に逃げるように張り出し
ているので、操作性の支障とならない歯列矯正ブラケッ
トを提供できる。(請求項9)
いて、ロック部材は、一枚板から形成されたことによれ
ば、ロック部材は、板材の打ち抜き加工等により極めて
容易に製造できる。また、その脚部の略中断部分を境に
して前記ベース寄りのベース側部が、ブラケットのアン
ギュレーションに一致した傾斜角とし、一方、ベース寄
りの側とは反対側の反ベース側部がブラケットアンギュ
レーションの傾斜角に加えて、アーチワイヤを押圧する
ための曲がり分に対応する角度を補正した傾斜角とし、
さらに、ベース側部と反ベース側部との両者を結ぶ湾曲
部分は、正弦曲線の一部となるように構成されたことに
より、ブラケット本体を上方から見たときに、脚部の左
右両縁部が直線に見えるようにでき、ブラケット本体
が、ロンボイド形の形状において、脚部の縦のラインが
縦軸に平行にでき、ブラケット位置合わせ易い歯列矯正
ブラケットを提供できる。(請求項10)
いて、ブラケット本体が、ロンボイド形の形状であり、
ロック部材の反ベース側部の近遠心両縁部およびベース
側部の近遠心両縁部がブラケット上方から見たときに、
ブラケット近遠心縁部に沿って平行であり、かつ前記反
ベース側部の顎側縁部および切欠き部の奥側縁部がアー
チワイヤスロットに平行に形成されたことにより、T字
の頭部の横方向のラインがアーチワイヤスロットのライ
ン、位置、咬合面または切端側からの高さを示すので、
ブラケットのポジショニングがし易い歯列矯正ブラケッ
トを提供できる。(請求項11)
いて、ブラケット本体は、アーチワイヤスロットが正方
形、長方形、四角形、ノンロンボイド形などの輪郭線に
対して傾斜したカットアンギュレーション型であり、ロ
ック部材の反ベース側部の先端縁部、顎側縁部および切
欠き部の奥側縁部が前記アーチワイヤスロットに平行に
なるように構成されたことにより、カットアンギュレー
ション型の歯列矯正ブラケットにおいて、ロック部材の
上記各縁部を、位置並びに向き合わせに利用可能な歯列
矯正ブラケットを提供できる。(請求項12)
て、ロック部材が超弾性部材にて構成されたことによ
り、該ロック部材が比較的大きく変形した場合でも荷重
の大きな変動がなく、無理のないアーチワイヤの押さえ
並びに治療操作における操作性の良さを維持することが
できる。(請求項13)
おいて、ロック部材がβ・チタニウム合金及び高Cr高Mo
のCo−Ni基合金または加工硬化型Ni−Ti合金に
て構成されたことによれば、変形量の割りに押さえ力
(荷重)を大きくすることができるので、スロットの封
止が確実にでき且つアーチワイヤの確実な押さえが可能
である。(請求項14、15、16)
いて、ブラケット本体がトルクインベース構造であるこ
とにより、ロック部材の先端部分がアーチワイヤに対す
る押圧向きが安定する。したがって、ロック部材は、ア
ーチワイヤをスロット内に押圧する荷重の向きが安定
し、この結果、安定した押さえ力を維持できるので、正
確な治療効果を期待することができる。すなわち、形態
の異なった複数のブラケット本体を使用した場合でも、
どのような場合でもアーチワイヤとロック部材の関係が
一定にできるので、治療効果の予測が容易であり、確実
な治療効果が期待できる歯列矯正ブラケットを提供でき
る。(請求項17)
は、ブラケット本体の一部に係合可能な支点部と、ベー
ス側部の後端部に係合可能な作用部とを備え、ブラケッ
ト本体の一部を支点にし且つ後端部の係合端部を作用点
にすることで、例えば、ロック部材を開き操作(スロッ
トを開ける操作)を行うときに、一つのツールでブラケ
ット本体を押さえながらロック部材をスライドさせる力
を加えることができ、スライド操作を円滑にできる歯列
矯正ブラケットを提供できる。また、開放する支点をブ
ラケット上におくことできるので、ブラケットの内で作
用・反作用力が加わり、歯牙エナメル質には大きな力が
くわわらないので、ボンド剥がれを生じたり、患者に不
要な苦痛を与えことのない歯列矯正ブラケットを提供で
きる。(請求項19)
ツールにおいて、支点部がリブの上端面の凹部の中に係
合可能に構成されたことによれば、操作力を加えるため
の支点部を、ブラケット本体の中央領域でかつ強度的に
十分な部分を支点部として利用できる。(請求項20)
である。
る。
の平面図及び側面図である。
の展開図である。
およびリブの作用を説明するための部分側面図である。
ある。
着状態を示す平面図である。
第2の実施形態である歯列矯正ブラケット用ツールの動
作を説明するための概略側面図である。
ラケットの分解斜視図である。
ブラケット及びロック部材の平面図である。
ブラケットの概略側面図である。
ブラケットの概略平面図である。
ワイヤが通常の状態でのロック部材の作用を示すための
部分断面図である。
ワイヤが動いたときの状態を示す部分断面図である。
ワイヤが動いたときのロック部材の状態を示す部分断面
図である。
Claims (20)
- 【請求項1】 歯面に固着されるベースを備え、該ベー
スから略垂直方向に延びるブラケット本体、該ブラケッ
ト本体の略中央にて近遠心方向に延び前方に開放したア
ーチワイヤスロットを備えており、前記アーチワイヤス
ロットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えた歯
列矯正ブラケットであって、 前記ロック部材は、一端側が前記ベース側に該ベースに
沿って延びるベース側部と、他端側が前記アーチワイヤ
スロットの長さと略同じ幅を有してスロット上方側に延
びる反ベース側部とを備える断面形状が略U字形状にな
され、かつ該反ベース側部の略中央に切欠き部が設けら
れた弾性体から構成されており、 ブラケット本体には、前記アーチワイヤスロットの開放
縁部に、前記ロック部材の先端をスロット閉じ位置に係
止する閉じ係止溝と、該係止溝とは反対側の縁部に前記
ロック部材の先端をスロット開放位置に係止する開放係
止凹部が形成されており、該係止溝の長手方向中央部分
には、前記切欠き部に対応して該係止溝を埋めるように
突出したリブが形成されたことを特徴とする歯列矯正ブ
ラケット。 - 【請求項2】 前記ブラケット本体は、近心側タイウイ
ングと遠心側タイウイングとによって挟まれた中溝をも
つツインブラケットであり、前記リブは前記中溝の全幅
にわたって形成され且つ近心側タイウイング及び遠心側
タイウイングに繋がって形成されていることを特徴とす
る請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項3】 前記ブラケット本体がタイウイングを備
えるシングルブラケットであることを特徴とする請求項
1に記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項4】 前記ブラケット本体が、歯の裏面側に装
着するリンガルブラケットであることを特徴とする請求
項1から3の何れかに記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項5】 前記リブの上端面に凹部が形成されたこ
とを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の歯列矯
正ブラケット。 - 【請求項6】 前記ベース側部の後端部には凹み又は切
欠きからなる係合端部が形成されたことを特徴とする請
求項1または2に記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項7】 前記ブラケット本体には、近遠心方向に
沿って貫通する開口が形成されたことを特徴とする請求
項1から6のいずれかに記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項8】 前記ブラケット本体は、前記ロック部材
の縁部が摺動するタイウイング側面に、該縁部に当接可
能な突起が設けられ、ロック部材のスロット閉塞時に該
突起が縁部よりも外側に位置するように構成されたこと
を特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の歯列矯
正ブラケット。 - 【請求項9】 前記ブラケット本体に、該ブラケット本
体のタイウイングの近遠心方向に立ち上がって張り出し
たフックが設けられたことを特徴とする請求項1から8
のいずれかに記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項10】 前記ロック部材は、一枚板材からな
り、その歯軸方向の略中断部分を境にして前記ベース寄
りのベース側部が、ブラケットのアンギュレーションに
一致した傾斜角とし、一方、前記ベース寄りの側とは反
対側の反ベース側部がブラケットアンギュレーションの
傾斜角に加えて、アーチワイヤを押圧するための曲がり
分に対応する角度を補正した傾斜角とし、さらに、前記
ベース側部と前記反ベース側部との両者を結ぶ湾曲部分
は、正弦曲線の一部となるように構成されたことを特徴
とする請求項1から9の何れかに記載の歯列矯正ブラケ
ット。 - 【請求項11】 前記ブラケット本体は、ロンボイド形
の形状であり、前記ロック部材の反ベース側部の近遠心
両縁部および前記ベース側部の近遠心両縁部がブラケッ
ト上方から見たときに、ブラケット近遠心縁部に沿って
平行であり、かつ前記反ベース側部の近遠心方向に延び
る各縁部が前記アーチワイヤスロットに平行に形成され
たことを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の
歯列矯正ブラケット。 - 【請求項12】 前記ブラケット本体は、アーチワイヤ
スロットが歯軸に対して傾斜したカットアンギュレーシ
ョン型であり、前記ロック部材の反ベース側部の近遠心
方向に延びる各縁部が前記アーチワイヤスロットに平行
になるように構成されたことを特徴とする請求項1から
9の何れかに記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項13】 前記ロック部材が超弾性部材にて構成
されたことを特徴とする請求項1から12のいずれかに
記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項14】 前記ロック部材がβ・チタニウム合金
にて構成されたことを特徴とする請求項1から12のい
ずれかに記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項15】 前記ロック部材がクローム(Cr)お
よびモリブデン(Mo)を含有するコバルト−ニッケル
基合金(Co−Ni基合金)にて構成されたことを特徴
とする請求項1から12のいずれかに記載の歯列矯正ブ
ラケット。 - 【請求項16】 前記ロック部材が加工硬化型ニッケル
−チタニウム(Ni−Ti)合金にて構成されたことを
特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の歯列矯
正ブラケット。 - 【請求項17】 前記ブラケット本体がトルクインベー
ス構造であり、前記ロック部材のベース側部がトルクに
応じて傾いたベースに平行に位置するように構成された
ことを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の
歯列矯正ブラケット。 - 【請求項18】 前記ロック部材のベース側部が前記ベ
ース上を摺動するように構成されたことを特徴とする請
求項17に記載の歯列矯正ブラケット。 - 【請求項19】 前記ブラケット本体の一部に係合可能
な支点部と、前記ベース側部の後端部に係合可能な作用
部とを備え、前記ブラケット本体の一部を支点にし且つ
前記後端部の係合端部を作用点にすることで、前記ロッ
ク部材をスライド操作することを特徴とする歯列矯正ブ
ラケット用ツール。 - 【請求項20】 前記支点部が前記リブの上端面の凹部
の中に係合可能に構成されたことを特徴とする歯列矯正
ブラケット用ツール。
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