JP2001098164A - コア/シェル状有機−無機複合体とその製造方法、及びコア/シェル状有機−無機複合体含有組成物 - Google Patents

コア/シェル状有機−無機複合体とその製造方法、及びコア/シェル状有機−無機複合体含有組成物

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JP2001098164A
JP2001098164A JP2000225140A JP2000225140A JP2001098164A JP 2001098164 A JP2001098164 A JP 2001098164A JP 2000225140 A JP2000225140 A JP 2000225140A JP 2000225140 A JP2000225140 A JP 2000225140A JP 2001098164 A JP2001098164 A JP 2001098164A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 合成樹脂に配合され、ブロッキング防止、透
明性、耐スクラッチ性に優れるとともに機械的強度を付
与する、無機粒子からなるコアの表面に有機重合体から
なるシェルが複合化された有機−無機複合体を提供す
る。 【解決手段】 粒子(a)の表面に、リン酸カルシウ
ム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ケイ
酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、シリカ、酸化チタ
ン及びアルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種
の無機物(b)を有する無機粒子(A)が、重合性単量
体と反応してなり、前記(A)がコアとなり、重合性単
量体の反応生成物である有機重合体(B)がシェルとな
ることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粒子表面に特定の
無機物を有する無機粒子がコアとなり、有機重合体がシ
ェルとなるコア/シェル状有機−無機複合体及びその製
造方法並びに該複合体を含有した組成物に関する。本発
明の新規なコア/シェル状有機−無機複合体は、合成樹
脂フィルム用ブロッキング防止剤、塗料用顔料、シーラ
ントやゴム等の用途において広汎に使用され、特に、耐
酸性、耐衝撃性、樹脂との親和性、耐スクラッチ性(軟
質性)、分散性などを必要とする各種分野に有用であ
る。
【0002】
【従来の技術】従来より工業用材料の填剤として無機粒
子が広く使用されており、中でも炭酸カルシウム、リン
酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等は安価な白色顔料と
して一般的である。また、それら形状も、球状、板状、
立方状、針状、棒状、紡錘状、柱状、花弁状、コロイド
状など、多岐に渡っている。しかしながら、例えば炭酸
カルシウムを合成樹脂に添加した際、親和性、耐酸性、
軟質性、相溶性等で問題となる場合がある。この問題を
改善するための方法の一つとして、無機粒子表面に有機
重合体を複合化し、無機粒子の表面改質を施した有機−
無機複合体の研究が盛んである。
【0003】このような有機−無機複合体としては、例
えば、特開昭59−71316号公報、特開平4−23
6266号公報、特開平9−194208号公報などの
コロイダルシリカまたはゾル−ゲル法等で調製したシリ
カ等の金属酸化物の有機−無機複合体が挙げられる。し
かし、該複合体は表面自由エネルギーが高いシリカ等の
金属酸化物を使用することが必須であり、例えば炭酸カ
ルシウム等の表面自由エネルギーが低い無機粒子を使用
するには適していない。
【0004】金属酸化物以外では、例えば、特開平3−
281565号公報の粒子表面にリン酸カルシウムが含
有された炭酸カルシウムと予め調製した特定の有機重合
体の複合体が挙げられる。しかしながら、該複合体は、
表面改質の点で一定の効果を有しているが、コア/シェ
ル状構造となるのは困難であり、耐酸性、耐衝撃性、軟
質性などの化学的、物理的強度の点で不十分である。ま
た、該複合体を製造するためには、有機重合体を製造す
る工程と製造した有機重合体と無機粒子を複合化する工
程とが必要であり、工程が煩雑となり生産性の面でも問
題がある。
【0005】また、特開昭63−3004号公報では、
ガラス転移温度の低い有機重合体と無機充填剤を複合化
させ、更にその上にガラス転移温度の高い有機重合体を
複合化させている。しかし、該系では表面自由エネルギ
ーが低い無機充填剤を使用しているため、コア/シェル
状有機−無機複合体としての安定性や均一な複合化の点
で問題が多い。
【0006】一方、特開平7−223813号公報で
は、立方状又は棒状(ウィスカー状)などの炭酸カルシ
ウムにリン酸処理を施すことにより、形状による効果や
炭酸カルシウムの物性を保持したまま、樹脂との親和
性、増粘性、徐放性等の機能を付与した無機系複合体が
提案されている。しかしながら、該無機系複合体は耐酸
性、耐折性、軟質性、クラック防止性などが必ずしも十
分ではなく、特に合成樹脂用途において、該物性の改善
が熱望されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、無機
粒子に有機重合体を均一に且つ強固に結合させたコア/
シェル状有機−無機複合体及びその製造方法並びに該複
合体を含有してなる組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、無機粒子
がコアとなり、有機重合体がシェルとなる複合化を施
し、その無機粒子の諸物性が保持されたまま優れた機能
物性を得るべく鋭意研究した結果、粒子の表面に特定の
無機物を有する無機粒子と重合性単量体とを反応させて
得られるコア/シェル状有機−無機複合体が、優れた機
能性を有することを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0009】すなわち、本発明の第一は、粒子(a)の
表面に、リン酸カルシウム、チタン酸カリウム、塩基性
硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ホウ酸アルミニ
ウム、シリカ、酸化チタン及びアルミナからなる群より
選ばれた少なくとも1種の無機物(b)を有する無機粒
子(A)が、重合性単量体と反応してなり、前記(A)
がコアとなり、前記重合性単量体の反応生成物である有
機重合体(B)がシェルとなることを特徴とするコア/
シェル状有機−無機複合体を内容とするものである(請
求項1)。
【0010】好ましい態様として、(b)が、リン酸カ
ルシウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウ
ム、ケイ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウムからなる群
より選ばれた少なくとも一種の無機物である請求項1記
載のコア/シェル状有機−無機複合体である(請求項
2)。
【0011】好ましい態様として、(b)が、リン酸カ
ルシウムである請求項1記載のコア/シェル状有機−無
機複合体である(請求項3)。
【0012】好ましい態様として、(A)及び/又は
(B)が、オルガノアルコキシシラン(C)を含有して
なる請求項1〜3のいずれか1項に記載のコア/シェル
状有機−無機複合体である(請求項4)。
【0013】好ましい態様として、(B)が、官能性単
量体(D)を含有してなる請求項1〜4のいずれか1項
に記載のコア/シェル状有機−無機複合体である(請求
項5)。
【0014】好ましい態様として、(A)の量が、
(B)100重量部に対し1〜100000重量部であ
る請求項1〜5のいずれか1項に記載のコア/シェル状
有機−無機複合体である(請求項6)。
【0015】好ましい態様として、(C)の量が、
(B)100重量部に対し0.1〜100重量部である
請求項4記載のコア/シェル状有機−無機複合体である
(請求項7)。
【0016】好ましい態様として、(D)の量が、
(B)100重量部に対し0.1〜100重量部である
請求項5記載のコア/シェル状有機−無機複合体である
(請求項8)。
【0017】好ましい態様として、(a)が、カルシウ
ム系化合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の
コア/シェル状有機−無機複合体である(請求項9)。
【0018】好ましい態様として、カルシウム系化合物
が、炭酸カルシウムである請求項9記載のコア/シェル
状有機−無機複合体である(請求項10)。
【0019】好ましい態様として、(B)が、エチレン
系不飽和化合物からなる有機重合体である請求項1〜1
0のいずれか1項に記載のコア/シェル状有機−無機複
合体である(請求項11)。
【0020】好ましい態様として、エチレン系不飽和化
合物が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びアル
ケニルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種
である請求項11に記載のコア/シェル状有機−無機複
合体である(請求項12)。
【0021】好ましい態様として、コア/シェル状有機
−無機複合体が下記の式(α)、(β)を満足する請求
項1〜12のいずれか1項に記載のコア/シェル状有機
−無機複合体である(請求項13)。 (α):0.1≦dw1≦1000 (β):0.1≦Sw1≦300 dw1:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定し
たコア/シェル状有機−無機複合体の平均粒径(μm) Sw1:窒素吸着法によるコア/シェル状有機−無機複
合体のBET比表面積(m2 /g)
【0022】好ましい態様として、コア/シェル状有機
−無機複合体が下記の式(γ)、(δ)、(ε)を満足
する棒状である請求項1〜13のいずれか1項に記載の
コア/シェル状有機−無機複合体である(請求項1
5)。 (γ):0.1≦dw2≦1000 (δ):0.01≦dw3≦50 (ε):7≦dw2/dw3≦100 dw2:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定し
たコア/シェル状有機−無機複合体の平均長径(μm) dw3:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定し
たコア/シェル状有機−無機複合体の平均短径(μm) dw2/dw3:アスペクト比
【0023】本発明の第二は、粒子(a)の表面にリン
酸カルシウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシ
ウム、ケイ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、シリ
カ、酸化チタン及びアルミナからなる群より選ばれた少
なくとも1種の無機物(b)を有する無機粒子(A)の
存在下で、有機重合体(B)を形成する重合性単量体を
重合させることを特徴とする、無機粒子(A)がコアと
なり、有機重合体(B)がシェルとなるコア/シェル状
有機−無機複合体の製造方法を内容とするものである
(請求項15)。
【0024】好ましい態様としては、(A)及び/又は
(B)が、オルガノアルコキシシラン(C)を含有する
請求項15記載のコア/シェル状有機−無機複合体の製
造方法である(請求項16)。
【0025】好ましい態様としては、(B)が、官能性
単量体(D)を含有する請求項15又は16記載のコア
/シェル状有機−無機複合体の製造方法である(請求項
17)。
【0026】好ましい態様としては、有機重合体(B)
を形成する重合性単量体を乳化重合させる請求項15〜
17のいずれか1項に記載のコア/シェル状有機−無機
複合体の製造方法である(請求項18)。
【0027】好ましい態様として、乳化剤が陰イオン性
界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤である請求
項18記載のコア/シェル状有機−無機複合体の製造方
法である(請求項19)。
【0028】本発明の第三は、請求項1〜14のいずれ
か1項に記載のコア/シェル状有機−無機複合体を配合
してなる組成物を内容とするものである(請求項2
0)。
【0029】好ましい態様として、請求項1〜14のい
ずれか1項に記載のコア/シェル状有機−無機複合体を
配合してなる樹脂組成物である(請求項21)。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明で用いられる無機粒子
(A)は、粒子(a)の表面にリン酸カルシウム、チタ
ン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシ
ウム、ホウ酸アルミニウム、シリカ、酸化チタン及びア
ルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種の無機物
(b)を有する無機粒子である。中でも無機物(b)の
凝集性、価格を考慮すれば、無機物(b)はリン酸カル
シウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、
ケイ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウムが好ましく、特
にリン酸カルシウムは無機粒子(A)を製造する際の作
業性、工業性も良いので最も好ましい。図1に無機粒子
(A)の概略図を示す。
【0031】リン酸カルシウムの結晶形態としては特に
限定されず、非晶質リン酸カルシウム(略号ACP、化
学式Ca3 (PO4 2 ・nH2 O)、フッ素アパタイ
ト(略号FAP、化学式Ca10(PO4 6 2 )、塩
素アパタイト(略号CAP、化学式Ca10(PO4 6
Cl2 )、ヒドロキシアパタイト(略号HAP、化学式
Ca10(PO4 6 (OH)2 )、リン酸八カルシウム
(略号OCP、化学式Ca8 2 (PO4 6 ・5H2
O)、リン酸三カルシウム(略号TCP、化学式Ca3
(PO4 2 )、リン酸水素カルシウム(略号DCP、
化学式CaHPO4 )、リン酸水素カルシウム二水和物
(略号DCPD、化学式CaHPO4 ・2H2 O)等を
例示することができ、これらは単独で又は2種以上組み
合わせて用いることができる。中でも組成の安定性が高
いという観点からヒドロキシアパタイト、リン酸八カル
シウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウムが
好ましく、ヒドロキシアパタイトが最も好ましい。
【0032】前記に示す無機物(b)を含有せしめる粒
子(a)は特に限定されないが、無機粒子を使用するこ
とが好ましく、例えば上記した無機物(b)の他に、炭
酸カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、タルク等が
例示できるが、前記の様に粒子(a)の表面にリン酸カ
ルシウムを含有させる場合には(リン)酸に溶解する無
機粒子が好都合であり、例えば、炭酸カルシウム等のカ
ルシウム系化合物が例示できる。
【0033】粒子(a)の表面への無機物(b)の含有
量は特に限定されないが、通常、粒子(a)100重量
部に対し、0.1〜1000重量部が好適である。0.
1未満の場合、無機物(b)の含有効果が得られ難くな
るので十分なコア/シェル状構造の有機−無機複合体を
得るのが難しくなり、一方、1000重量部を越える
と、粒子(a)の諸物性が保持され難くなる。
【0034】以上の如くして得られる無機粒子(A)
は、無機物(b)が粒子(a)の表面に物理的及び/又
は化学的に吸着されている場合、無機物(b)が粒子
(a)の表面全体に均一に又は局所的に吸着されている
場合を包含する。また、無機粒子(A)の形状は特に限
定されず、球状、板状、立方状、針状、棒状、紡錘状、
柱状、花弁状、コロイド状、不定形状等、あらゆる形状
のものが使用でき、それぞれの形状による効果も発揮す
ることができる。具体的には、例えばリン酸カルシウム
被覆アラゴナイト型炭酸カルシウムウィスカー(商品
名:ウィスカルBS−P、丸尾カルシウム株式会社
製)、特許第3072759号記載の分散性が良好なリ
ン酸カルシウム系複合物などが例示できる。
【0035】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
のシェルとなる有機重合体(B)は特に限定されず、例
えば重合性単量体を重合させることによって形成するこ
とができる。重合性単量体としては、エチレン系不飽和
化合物が例示でき、無機粒子に付与される機能性によ
り、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アルケニル
ベンゼン系単量体、ニトリル系単量体、ビニルエステル
系単量体、エチレン基を2個以上有する架橋性単量体、
その他不飽和カルボン酸エステル系単量体等を例示する
ことができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて
用いられる。
【0036】本発明で好適に使用できる具体的な重合性
単量体を例示すれば、下記の如くである。 (メタ)アクリル酸エステル系単量体:(メタ)アクリ
ル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アク
リル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メ
タ)アクリル酸iso −ブチル、(メタ)アクリル酸t−
ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メ
タ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソデシ
ル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸
ステアリル等。 アルケニルベンゼン系単量体:スチレン、α−メチルス
チレン、ビニルトルエン等。 ニトリル系単量体:(メタ)アクリロニトリル、α−ク
ロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル
等。 ビニルエステル系単量体:酢酸ビニル、プロピオン酸ビ
ニル、ラウリル酸ビニル、ステアリル酸ビニル等。
【0037】架橋性単量体:エチレングリコールジメタ
クリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等
のジメタクリル酸エステル類、エチレングリコールジア
クリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等の
ジアクリル酸エステル類、ジビニルベンゼン、アリルメ
タクリレート、トリアリルイソシアヌレート等。 その他の不飽和カルボン酸エステル系単量体:マレイン
酸エステル、イタコン酸エステル、フマル酸エステル、
クロトン酸エステル等。
【0038】前記の中でも、(メタ)アクリル酸エステ
ル単量体、アルケニルベンゼン系単量体が好ましく用い
ることができ、(メタ)アクリル酸エステル単量体の中
でも、(メタ)アクリル酸と、炭素数が1〜18となる
アルカノールとのエステルが作業性、工業性の観点から
特に好ましい。また、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フ
ェノール樹脂などの熱硬化性有機重合体、アセチレン、
ベンゼン、アニリン、ピロール、チオフェン及びこれら
の置換体などからなる導電性有機重合体を単独で及び/
又は2種以上組み合わせて、前記した重合性単量体から
なる有機重合体と共に用いることもできる。
【0039】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
の無機粒子(A)と有機重合体(B)の組成比は特に制
限されないが、有機重合体(B)100重量部に対し、
無機粒子(A)は通常、1〜100000重量部、好ま
しくは10〜10000重量部、さらに好ましくは、1
00〜1000重量部である。1重量部未満の場合、有
機重合体同士が凝集したコア/シェル状有機−無機複合
体が得られ易くなるので無機粒子(A)の諸物性が保持
され難くなり、一方、100000重量部を越えると、
十分なコア/シェル状構造の有機−無機複合体が得られ
難くなる。
【0040】本発明の目的であるコア/シェル状構造を
有する有機−無機複合体は、前記の無機粒子(A)と有
機重合体(B)を形成する前記の重合性単量体を使用す
ることによって十分達成されるが、無機粒子(A)と有
機重合体(B)をより一層強固に結合させたコア/シェ
ル状有機−無機複合体を得るために、好ましくは、結合
剤としてオルガノアルコキシシラン(C)又は官能性単
量体(D)を、更に好ましくは両者を使用するのがよ
い。
【0041】本発明で用いられるオルガノアルコキシシ
ラン(C)は、無機粒子(A)と有機重合体(B)を一
層強固に結合せしめるのに有用であり、無機粒子
(A)、有機重合体(B)のどちらに含有していても構
わない。本発明で使用されるオルガノアルコキシシラン
としては特に限定されず、例えばビニルトリメトキシシ
ラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシ
エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチル
トリエトキシシラン、γ−アクリロキシエチルトリメト
キシシラン、γ−アクリロキシエチルトリエトキシシラ
ン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキ
シシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビ
ニルエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシ
シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が例示でき、
これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
これらの中で、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタク
リロキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキ
シプロピルトリメトキシシラン等の重合性を持つオルガ
ノアルコキシシランは、重合性単量体の無機粒子表面で
の重合効率を高くし、無機粒子(A)と重合性単量体か
らなる有機重合体(B)が結合されやすくなるという点
で好ましい。
【0042】上記(C)の量は特に限定されないが、有
機重合体(B)100重量部に対して、通常0.1〜1
00重量部、好ましくは1〜10重量部である。0.1
重量部未満では添加効果が十分でなく、一方、100重
量部を越えると、(乳化)重合時の安定性及び得られる
コア/シェル状有機−無機複合体の分散安定性を損ない
易く、またコストの面でも問題が生じる。
【0043】本発明で使用される官能性単量体(D)の
官能基としては特に限定されず、例えば、エポキシド
基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物、水酸基、ア
ミド基、N−メチロールアミドとそのエーテル、イソシ
アネート等が例示できる。これらの官能基を有する官能
性単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メ
タクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエ
ステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタ
コン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチ
ロールアクリルアミド、アクリル酸4−ヒドロキシブチ
ル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が例示でき、
これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
この中でもアクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリ
ル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基を有する官能性単
量体は、反応系のpHに影響を与えず無機粒子と反応し
て無機粒子と有機重合体を結合させることができるとい
う点、またオルガノアルコキシシランと共に使用された
場合はオルガノアルコキシシランとも反応して有機重合
体を架橋構造とし、有機−無機複合体のコア/シェル状
構造を強固にすることができるという点で好ましく用い
られる。
【0044】上記(D)の量は特に限定されないが、有
機重合体(B)100重量部に対し、通常0.1〜10
0重量部、好ましくは1〜10重量部である。0.1重
量部未満では添加効果が十分でなく、一方、100重量
部を越えると(乳化)重合時の安定性を損ない易い。
【0045】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
の製造方法は特に限定されず、例えば乳化重合、溶液重
合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられるが、作業性、重
合反応コントロールの点より乳化重合が好ましい。例え
ば、攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた容器に分散
媒、無機粒子及び乳化剤などを添加し、これに有機重合
体を形成する重合性単量体及び重合開始剤などを滴下し
て重合を行う方法が例示できる。重合開始剤、重合性単
量体の滴下は、連続的に滴下する方法、また一部の量を
一括して添加し、残りの量を連続的に滴下する方法など
を用いることができる。また、重合性単量体をそのまま
の状態で滴下するより、水と乳化剤とで別途混合した乳
化液(以下、プレエマルジョンと記す)の状態で滴下す
る方がコア/シェル状構造の有機−無機複合体を形成し
易いので好ましい。
【0046】具体的には、攪拌機、温度計、還流冷却器
を備えた容器に分散媒として水、無機粒子(A)及び乳
化剤を添加して所定の温度で攪拌した後、重合開始剤の
一部の量を一括添加し、更に有機重合体(B)を形成す
る重合性単量体、水、乳化剤とで調製したプレエマルジ
ョンと重合開始剤の残りの量を共に連続的に滴下し、所
定の温度で所定時間攪拌を続けて重合を完結させること
によってコア/シェル状有機−無機複合体を生成するこ
とができる。更に好ましくは、攪拌機、温度計、還流冷
却器を備えた容器に分散媒として水、無機粒子(A)及
び乳化剤を添加して所定の温度で攪拌した後、重合開始
剤の一部の量を一括添加し、更に有機重合体(B)を形
成する重合性単量体、オルガノアルコキシシラン(C)
及び/又は官能性単量体(D)、水、及び乳化剤とで調
製したプレエマルジョンと重合開始剤の残りの量を共に
連続的に滴下し、所定の温度で所定時間攪拌を続けて重
合を完結させることによって無機粒子(A)と重合性単
量体からなる有機重合体(B)がより一層強固に結合し
たコア/シェル状有機−無機複合体を生成することがで
きる。
【0047】尚、コア/シェル状有機−無機複合体の好
ましい調製条件を例示すると、下記の通りである。 (A)無機粒子 :1〜100000重量部 重合性単量体 :100重量部 (C)オルガノアルコキシシランの含有量:0.1〜100重量部 (D)官能性単量体の含有量 :0.1〜100重量部 乳化剤の添加量 :0.1〜100重量部 重合開始剤の添加量 :0.01〜10重量部
【0048】<重合反応条件> 反応温度 :20〜150(℃) 供給滴下時間:1〜1000(分) pH :4以上 攪拌羽根周速:0.1〜50(m/秒) <熟成> 熟成時間 :1〜1000(分)
【0049】本発明で用いられる乳化剤は特に限定され
ず、一般に既知のものを使用することができるが、陰イ
オン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が重合安定性
の点より好ましい。例えば、陰イオン性界面活性剤とし
ては、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム
等の高級脂肪酸のアルカリ金属塩類(石鹸)、ラウリル
硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリ
ウム塩などの高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩
類、ラウリルアルコ−ルエチレンオキサイド付加物硫酸
エステル塩などの高級アルキルエーテル硫酸エステル塩
類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアル
キルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩類等が例示でき、
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノ
ニフェニルエーテル等が例示できる。これらは単独で又
は2種以上組み合わせて用いられる。
【0050】乳化剤の量は特に限定されないが、有機重
合体(B)を形成する重合性単量体100重量部に対
し、通常0.1〜100重量部、好ましくは1〜10重
量部である。0.1重量部未満の場合、該重合性単量体
の分散(乳化)状態が安定しにくく、一方、100重量
部を越えると媒体中にミセルが多く形成し易く、無機粒
子表面外で重合を起こし、単独のポリマー粒子が存在し
易くなる。
【0051】本発明で用いられる重合開始剤は特に限定
されず、所定の温度においてラジカルを発生させる水溶
性、又は油溶性化合物を使用することができる。水溶性
の重合開始剤としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫
酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩類、過
酸化水素などの過酸化物類などが例示できる。油溶性の
重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメ
ンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイ
ド、第三ブチルパーオキサイド、第三ブチルパーオキシ
−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、アゾ
ビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが例示で
きる。また、これらは還元剤と組み合わせて、いわゆる
レドックス系の重合開始剤として使用しても何ら差し支
えない。
【0052】重合開始剤の量は特に限定されないが、有
機重合体(B)を形成する重合性単量体100重量部に
対し、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05
〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部であ
る。0.01重量部未満の場合、形成される有機重合体
の分子量が大きくなり、凝集・斑の原因になり易く、一
方、10重量部を越えると形成される有機重合体の分子
量が小さくなるので強固なコア/シェル状構造ができな
くなる
【0053】本発明の具体的な反応条件としては、反
応温度、滴下時間、pH、攪拌羽根周速が挙げら
れる。の反応温度に関しては、重合開始剤の種類によ
って異なるため特に限定されないが、通常20〜150
℃、好ましくは40〜99℃、さらに好ましくは50〜
95℃である。20℃未満の場合、形成される有機重合
体の分子量が大きくなり、凝集・斑の原因になり易い。
一方、150℃を越えると、重合開始剤が分解し易く、
また、重合収率も低下し易い。
【0054】の滴下時間に関しては特に限定されない
が、通常1〜1000分、好ましくは10〜500分で
ある。1分未満の場合、急激な反応熱により重合温度の
制御が難しく、一方、1000分を越えると重合開始剤
の寄与効果が劣り易く、また、重合収率も低下し易い。
【0055】のpHに関しては、使用する重合開始剤
やプレエマルジョンのpHによって左右され、特に限定
されないが、コアに使用した酸溶解性無機粒子が溶解せ
ず、安定した重合を行うためにはpH4以上が好まし
い。
【0056】の攪拌羽根周速に関しては、反応系全体
が均一に攪拌できる程度の攪拌力であれば特に限定され
ないが、通常、攪拌羽根の周速が0.1〜50m /秒、
好ましくは0.5〜30m/秒である。0.1未満の場
合、均一な混合が難しく、一方、50m/秒を越える
と、重合反応装置を大型化するのに支障をきたすため、
工業化において生産性が著しく低下する傾向にある。
【0057】反応終了後、コア/シェル状構造の反応を
完結させるために熟成を行うのが好ましい。熟成条件は
特に制限されないが、通常、温度20〜150℃、熟成
時間は1〜1000分、攪拌羽根周速は0.1〜50m
/秒程度が好ましい。熟成終了後、必要に応じて、ろ過
・水洗することにより懸濁液中に残存している乳化剤等
を取り除くのが好ましい。
【0058】以上の如くして本発明のコア/シェル状有
機−無機複合体が得られる。尚、本発明のコア/シェル
状構造とはコアとなる無機粒子(A)の表面全体を重合
性単量体からなる有機重合体(B)で覆った構造を指
し、シェルとなる有機重合体(B)がコアとなる無機粒
子(A)に物理的及び化学的に吸着されている場合、シ
ェルとなる有機重合体(B)がコアとなる無機粒子
(A)の表面全体を均一に又は不均一に覆っている場合
を包含する。図2にコア/シェル状有機−無機複合体の
概略図を示す。
【0059】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
の粒子径(dw1)は特に限定されず、通常0.1≦d
w1≦1000(μm)であり、好ましくは0.3≦d
w1≦100(μm)、更に好ましくは0.5≦dw1
≦10(μm)である。0.1μm未満の場合、分散し
たコア/シェル状有機−無機複合体が得られ難くなり、
一方、1000μmを越えると、無機粒子(A)に有機
重合体(B)が局所的に複合化され、複合体としての効
果が得られ難くなる。
【0060】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
の窒素吸着法によるBET比表面積(Sw1)は特に限
定されず、通常0.1≦Sw1≦300(m2 /g)で
あり、好ましくは1≦Sw1≦100(m2 /g)、更
に好ましくは5≦Sw1≦50(m2 /g)である。
0.1m2 /g未満の場合、無機粒子(A)に有機重合
体(B)が局所的に複合化され、複合体としての効果が
得られ難くなり、一方300m2 /gを越えると無機粒
子(A)の内部に有機重合体(B)が入り込んだ複合体
となり易くなるので、複合体としての効果が得られ難く
なる。
【0061】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
の形状が棒状である場合、粒子径は特に限定されず、平
均長径(dw2)は、通常0.1≦dw2≦1000
(μm)であり、好ましくは1≦dw2≦100(μ
m)、更に好ましくは10≦dw2≦50(μm)であ
る。0.1μm未満の場合、該複合体の形状による効果
が発現され難くなり、一方、1000μmを越えると機
械的衝撃性が弱くなって折れやすくなる。平均短径(d
w3)は、通常0.01≦dw3≦50(μm)であ
り、好ましくは0.1≦dw3≦10(μm)、更に好
ましくは0.3≦dw3≦5(μm)である。0.01
μm未満の場合、機械的衝撃性が弱くなって折れやすく
なり、一方、50μmを越えると該複合体の形状による
効果が発現され難くなる。アスペクト比(dw2/dw
3)は特に限定されず、通常7≦dw2/dw3≦10
0であり、好ましくは10≦dw2/dw3≦80、更
に好ましくは15≦dw2/dw3≦50である。7未
満の場合、該複合体の形状による効果が発現され難くな
り、一方、100を越えると、機械的衝撃性が弱くなっ
て折れやすくなる。
【0062】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
は、必要に応じて他の填剤、例えば酸化チタン、炭酸カ
ルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸
バリウム、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク等を併
用しても何ら差し支えない。
【0063】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
は、物性改良剤として様々な材料に配合することができ
るが、特に摩耗性改良剤、衝撃改良剤等として合成樹脂
やコーティング材料への配合が有用である。合成樹脂と
しては特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂で
は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポ
リ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル
酸アミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリ
アミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等又はこ
れらの共重合体物等が例示でき、熱硬化性樹脂ではフェ
ノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、
アルキド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、珪素樹脂
等が例示できる。また、フィルム、繊維に関しては、特
にポリオレフィンや飽和ポリエステル、ポリエチレンが
好適である。合成樹脂製品としては、具体的には、プラ
スチック成型品、塗料、シ−ラント、インク、製紙、ゴ
ム等に使用が可能である。
【0064】本発明のコア/シェル状有機−無機複合体
は、従来のコアと比較し、コアの諸物性を保持したま
ま、耐酸性、耐衝撃性、樹脂との親和性など向上するこ
とが可能であり、且つ製造コストも安価なため、合成樹
脂フィルム用ブロッキング防止剤、塗料用顔料、シーラ
ント、ゴム、製紙、その他各種フィラーや体質顔料等の
用途において、耐酸性、耐衝撃性、樹脂との親和性、ス
クラッチ性(軟質性)、分散性などを必要とする各種分
野に広く使用可能である。
【0065】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるもので
はない。尚、以下の記載において、部または%は特に断
らない限り重量基準である。
【0066】実施例1 10%の炭酸カルシウム水懸濁液を50℃で撹拌させながら
Ca/ p=2.0 になるように10%のリン酸水溶液を滴下混
合し、熟成することによって多孔質リン酸カルシウム無
機粒子を調製した。次に、70℃に調整した5 %の該多孔
質リン酸カルシウム水懸濁液に、10%の炭酸カルシウム
水懸濁液及び20%リン酸塩水溶液を別々に滴下混合し、
熟成することによってコアとなるリン酸カルシウム粒子
表面にリン酸カルシウムが含有されている無機粒子
(A)を調製した。図3にリン酸カルシウム粒子表面に
リン酸カルシウムが含有されている無機粒子(A)のS
EM写真(2万倍)を示す。
【0067】次に、撹拌機、温度計、還流冷却器を備え
た反応容器に、無機粒子(A)100部、水1000部を添加
して十分に攪拌した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナ
トリウム1.25部を添加し、撹拌しながら83〜86℃に加温
した。次に全体量0.25部のうち10%の過硫酸ソーダ水溶
液を添加した後、水25部、ドデシルベンゼンスルホン酸
ナトリウム1.25部、メタクリル酸メチル50部で調製した
プレエマルジョンを全体の80%の過硫酸ソーダ水溶液と
共に同時滴下した。滴下終了後、全体の10%の過硫酸ソ
ーダ水溶液を更に添加して83〜86℃で1時間熟成した。
その後、反応液を冷却し、洗浄濾過し、乾燥することに
よってコア/シェル状有機−無機複合体粒子を得た。
【0068】使用した無機粒子(A)、有機重合体
(B)を形成する重合性単量体、オルガノアルコキシシ
ラン(C)、官能性単量体(D)、有機重合体の被覆状
態、並びに生成物粒子の粒子径、BET比表面積を表1
に、反応条件を表2に示す。
【0069】なお、有機重合体の被覆状態は、走査型電
子顕微鏡(SEM)で確認することによって下記の基準
により評価し、生成物粒子の粒子径は走査型電子顕微鏡
(SEM)を、BET比表面積はNOVA2000(ユ
アサアイオニクス株式会社製)を使用して測定した。 A 有機重合体(B)が無機粒子(A)を完全に被覆し
ている。 B 有機重合体(B)が無機粒子(A)を略完全に被覆
している。 C 有機重合体(B)が無機粒子(A)を概ね被覆して
いる。 D 有機重合体(B)が無機粒子(A)を被覆していな
い。
【0070】実施例2〜6 表1に示す重合性単量体、官能性単量体等を使用し、表
2に示す反応条件とした以外は実施例1と同様に行っ
た。図4に実施例6のコア/シェル状有機−無機複合体
のSEM写真(2万倍)を示す。
【0071】実施例7〜13 表1に示す重合性単量体、官能性単量体等を使用し、コ
アとして、棒状(ウィスカー状)炭酸カルシウムの粒子
表面にリン酸カルシウムが含有されている無機粒子
(A)(商品名:ウィスカルBS−P 丸尾カルシウム
株式会社製)を使用し、表2に示す反応条件とした以外
は実施例1と同様に行った。図5にウィスカルBS−P
のSEM写真(1万倍)、図6に実施例12のコア/シ
ェル状有機−無機複合体のSEM写真(1万倍)を示
す。
【0072】実施例14 脱イオン水を攪拌させながら立方状炭酸カルシウム(商
品名:CUBE−13丸尾カルシウム株式会社製)を添
加し、水酸化ナトリウムを使用してpHが10の炭酸カ
ルシウム水懸濁液を調製した。次に脱イオン水を攪拌さ
せながら酸化チタン(商品名:TTO−55(A) 石
原産業株式会社製)を添加し、希硫酸を使用してpHが
3の酸化チタン水懸濁液を調製した。該炭酸カルシウム
水懸濁液に希硫酸を、また、該酸化チタン水懸濁液に水
酸化ナトリウムを添加して、それぞれpHが6の水懸濁
液に調整した後、炭酸カルシウム水懸濁液中に酸化チタ
ン水懸濁液を添加した。添加後10分間熟成することに
よって、コアとなる立方状炭酸カルシウム粒子表面に酸
化チタンを含有した無機粒子(A)を調製した。表1に
示す重合性単量体、官能性単量体等を使用し、コアとし
て、上記無機粒子(A)を使用し、表2に示す反応条件
とした以外は実施例1と同様に行った。
【0073】実施例15 表1に示す重合性単量体、官能性単量体等を使用し、コ
アとして、実施例14と同様な方法で調製した硫酸バリ
ウム(商品名:沈降性硫酸バリウムB−54堺化学工業
株式会社製)の粒子表面にアルミナ(商品名:アルミナ
ゾル−520日産化学工業株式会社製)が含有されてい
る無機粒子(A)を使用し、表2に示す反応条件とした
以外は実施例1と同様に行った。
【0074】比較例1 表1に示す重合性単量体、官能性単量体等を使用し、コ
アとして、立方状炭酸カルシウム(A’)(商品名:C
UBE−13 丸尾カルシウム株式会社製)を使用し、
表2に示す反応条件とした以外は実施例1と同様に行っ
た。
【0075】比較例2 表1に示す重合性単量体、官能性単量体等を使用し、コ
アとして、硫酸バリウム(商品名:沈降性硫酸バリウム
B−54 堺化学工業株式会社製)の粒子表面に炭酸カ
ルシウム(一次粒子径0.04μmのコロイド状炭酸カルシ
ウム 丸尾カルシウム株式会社製)が含有されている無
機粒子(A’)を使用し、表2に示す反応条件とした以
外は実施例1と同様に行った。
【0076】比較例3 表1に示す重合性単量体、官能性単量体等を使用し、コ
アとして、棒状(ウィスカー状)炭酸カルシウム
(A’)(商品名:ウィスカルA 丸尾カルシウム株式
会社製)を使用し、表2に示す反応条件とした以外は実
施例1と同様に行った。
【0077】比較例4 アクリル酸/アクリル酸メチル共重合体(共重合比7/3
、分子量30000 )をウィスカルBS−Pの10%エチレ
ングリコール溶液に添加し、常温で2時間撹拌して生成
した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】実施例16〜23、比較例4〜7 実施例16〜23は実施例1〜6及び実施例14〜15
の生成物であるコア/シェル状有機−無機複合体粒子
を、比較例4〜5は比較例1〜2の生成物粒子を、比較
例6は粒子を添加しないブランクとして、比較例7は実
施例1で調製した無機粒子(A)を用いて、下記の要領
でポリプロピレン組成物を調製し、二軸延伸ポリプロピ
レンフィルムを得、その品質を評価した。結果を表3に
示す。
【0081】ポリオレフィンフィルムの製造:メルトフ
ローレートが1.9g/10分であるポリプロピレン樹
脂100部に酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル
−p−クレゾール 0.10部、イルガノックス101
0(チバガイギー社の登録商標)0.02部、塩酸キャ
ッチ剤としてステアリン酸カルシウム0.05部、及び
上記各粒子を添加し、スーパーミキサーで混合後押し出
し機でペレット化した。このペレットを押し出し機を用
いてシート状フィルムにし、縦方向に5倍、横方向に1
0倍延伸して最終的に厚さ30μm の延伸フィルムを得
た。延伸フィルムの一面には、コロナ放電処理を施し
た。
【0082】これらの二軸延伸フィルムについて、透明
性、ブロッキング性及び耐スクラッチ性を測定した。フ
ィルム透明性はASTM−D−1003に準拠して、フ
ィルムを4枚重ねて測定した。フィルムのブロッキング
性は、2枚のフィルムの接触面積が10cm2 となるよ
うに重ねて2枚のガラス板の間におき、4.9kPa
(50g/cm2 )の荷重をかけて40℃の雰囲気中に
7日間放置後、ショッパー型試験機を用いて、引っ張り
速度500mm/分にて引き剥して、その最大荷重を読
みとって評価した。耐スクラッチ性は、ガラス板上に二
軸延伸フィルムの1枚を固定し、他方のフィルムを接触
面積が50cm2 なる箱型状物に固定し、加重を4kg
掛けて6回擦り、擦る前後の透明性(ヘーズ差)で評価
した。この値が小さいほどスクラッチ性が良好となる。
【0083】
【表3】
【0084】実施例24〜31、比較例8〜10 実施例24〜31は実施例1〜6及び実施例14〜15
の生成物であるコア/シェル状有機−無機複合体粒子
の、比較例8〜9は比較例1〜2の生成物粒子の、比較
例10は実施例1で調製した無機粒子(A)の各エチレ
ングリコールスラリーをポリエステル化反応前に添加し
てポリエステル化反応を行い、上記各粒子を0.1部
(ポリエチレンテレフタレート100部に対し)含有し
た極限粘度数(オルソクロロフェノール,35℃)62
ml/g(0.62dl/g)のポリエチレンテレフタ
レートを調製した。該ポリエチレンテレフタレートを1
60℃で乾燥した後290℃で溶融押し出し、40℃に
保持したキャスティングドラム上に急冷固化せしめて未
延伸フィルムを得た。引き続き、該未延伸フィルムを加
熱ローラーで70℃に予熱した後、赤外線ヒーターで加
熱しながら縦方向に3.6倍延伸した。続いて90℃の
温度で横方向に4.0倍に延伸した後200℃で熱処理
を行い、厚さ15μmの二軸配向フィルムを得た。この
ようにして得られたフィルムの品質を、以下に示す方法
で評価し、その結果を表4に示す。
【0085】摩耗性評価方法:図7に示した装置を用い
て下記のように摩耗性を評価する。図7中、1は巻だし
リール、2はテンションコントローラー、3,5,6,
8,9及び11はフリーローラー、4はテンション検出
機(入口)、7はステンレス製の固定ピン(直径5m
m)、10はテンション検出機(出口)、12はガイド
ローラー、13は巻き取りリールをそれぞれ示す。温度
20℃、湿度60%の環境で、1.27cm幅(1/2
インチ幅)のフィルム表面を7のステンレス製固定ピン
(表面粗さ0.58)に角度150゜で接触させ、毎分
2mの速さで約15cm程度往復移動,摩擦させる。
(この時、入口テンションT1を60gとする)。この
操作を往復40回繰り返した後、摩擦面に生じたスクラ
ッチの程度を目視判定し、下記の基準により3段階評価
する。 A:スクラッチの発生が認められない。 B:スクラッチの発生がわずかに認められる。 C:スクラッチの発生が全面に多数認められる。
【0086】
【表4】
【0087】実施例32〜39、比較例11〜14 実施例32〜39は実施例1〜6及び実施例14〜15
の生成物であるコア/シェル状有機−無機複合体粒子
を、比較例11〜12は比較例1〜2の生成物粒子を、
比較例13は粒子を添加していないブランクとして、比
較例14は実施例1で調製した無機粒子(A)を使用
し、下記の要領でポリアミドフィルムを得、その品質を
評価した。結果を表5に示す。
【0088】ポリアミドフィルムの製造:ポリアミド系
樹脂として、ε−カプロラクタムを主原料とするナイロ
ン−6と、ポリアミド樹脂100部に対して上記各粒子
0.5部をスーパーミキサーで混合後、260℃で溶融
させた後、Tダイよりシート状に吐出させ、冷却ドラム
にてキャストした。得られたフィルムを50℃に加熱し
て長手方向に3.2倍、120℃に加熱して横方向に4
倍延伸して、厚み15μmのナイロン−6フィルムを得
た。得られたフィルムは、製膜工程でコロナ放電処理を
施した。これらのポリアミドフィルムについて、透明
性、ブロッキング性及び耐スクラッチ性を上記と同じ方
法で測定した。
【0089】
【表5】
【0090】表3、4、5に示すように、本発明のコア
/シェル状有機−無機複合体を合成樹脂フィルムに配合
することにより、ブロッキング防止機能や透明性を保持
したまま良好な耐スクラッチ性を有する合成樹脂フィル
ムが得られることがわかる。
【0091】実施例40〜46、比較例15〜17 実施例40〜46は実施例7〜13の生成物であるコア
/シェル状有機−無機複合体粒子を、比較例15〜16
では比較例3〜4の生成物粒子を、比較例17ではウィ
スカルAを使用して下記の要領でポリプロピレンに配合
し、強度物性を測定した。結果を表6に示す。
【0092】強度物性測定方法 ポリプロピレン樹脂(商品名:MA−3 三菱油化製)
100部と上記各粒子30部を混練してペレット化した
後、射出成型して試験片を作り、JIS K7171に
準拠して曲げ強さ、曲げ弾性率を、またJIS K 7
110に準拠してアイゾット衝撃強度を測定した。
【0093】
【表6】
【0094】上記表6より本発明のコア/シェル状有機
−無機複合体を合成樹脂に配合することにより、曲げ強
さ、曲げ弾性率、衝撃強度を向上させることがわかる。
【0095】
【発明の効果】叙上のとおり、本発明のコア/シェル状
有機−無機複合体は、例えば合成樹脂フィルムに配合し
た場合には、ブロッキング防止機能や透明性を保持した
まま優れた耐スクラッチ性を付与し、また、合成樹脂成
型品に配合した場合には、機械的強度を向上させること
ができる。また、本発明の製造方法によれば、有機重合
体の生成と無機粒子の複合化とが一段階で行うことがで
きるので生産性が高く、更に、複合化する有機重合体に
様々な機能性基を導入することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】無機粒子(A)の概略図である。
【図2】コア/シェル状有機−無機複合体の概略図であ
る。
【図3】実施例1〜6で使用した粒子表面にリン酸カル
シウムを含有した無機粒子(A)のSEM写真(2万
倍)である。
【図4】実施例6のコア/シェル状有機−無機複合体の
SEM写真(2万倍)である。
【図5】実施例7〜13で使用したウィスカルBS−P
のSEM写真(1万倍)である。
【図6】実施例12のコア/シェル状有機−無機複合体
のSEM写真(1万倍)である。
【図7】フィルムの摩耗性を測定するための装置の概略
図である。
【符号の説明】
1 巻きだしリール 2 テンションコントローラー 3、5、6、8、9、11 フリーローラー 4 テンション検出器(入口) 7 ステンレス製固定ピン 10 テンション検出器(出口) 12 ガイドローラー 13 巻き取りリール

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粒子(a)の表面に、リン酸カルシウ
    ム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ケイ
    酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、シリカ、酸化チタ
    ン及びアルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種
    の無機物(b)を有する無機粒子(A)が、重合性単量
    体と反応してなり、前記(A)がコアとなり、前記重合
    性単量体の反応生成物である有機重合体(B)がシェル
    となることを特徴とするコア/シェル状有機−無機複合
    体。
  2. 【請求項2】 (b)が、リン酸カルシウム、チタン酸
    カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウ
    ム、ホウ酸アルミニウムからなる群より選ばれた少なく
    とも1種の無機物である請求項1記載のコア/シェル状
    有機−無機複合体。
  3. 【請求項3】 (b)が、リン酸カルシウムである請求
    項1記載のコア/シェル状有機−無機複合体。
  4. 【請求項4】 (A)及び/又は(B)が、オルガノア
    ルコキシシラン(C)を含有してなる請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載のコア/シェル状有機−無機複合体。
  5. 【請求項5】 (B)が、官能性単量体(D)を含有し
    てなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のコア/シェ
    ル状有機−無機複合体。
  6. 【請求項6】 (A)の量が、(B)100重量部に対
    し1〜100000重量部である請求項1〜5のいずれ
    か1項に記載のコア/シェル状有機−無機複合体。
  7. 【請求項7】 (C)の量が、(B)100重量部に対
    し0.1〜100重量部である請求項4記載のコア/シ
    ェル状有機−無機複合体。
  8. 【請求項8】 (D)の量が、(B)100重量部に対
    し0.1〜100重量部である請求項5記載のコア/シ
    ェル状有機−無機複合体。
  9. 【請求項9】 (a)が、カルシウム系化合物である請
    求項1〜8のいずれか1項に記載のコア/シェル状有機
    −無機複合体。
  10. 【請求項10】 カルシウム系化合物が、炭酸カルシウ
    ムである請求項9記載のコア/シェル状有機−無機複合
    体。
  11. 【請求項11】 (B)が、エチレン系不飽和化合物か
    らなる有機重合体である請求項1〜10のいずれか1項
    に記載のコア/シェル状有機−無機複合体。
  12. 【請求項12】 エチレン系不飽和化合物が、(メタ)
    アクリル酸エステル系単量体及びアルケニルベンゼンか
    らなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項11
    に記載のコア/シェル状有機−無機複合体。
  13. 【請求項13】 コア/シェル状有機−無機複合体が下
    記の式(α)、(β)を満足する請求項1〜12のいず
    れか1項に記載のコア/シェル状有機−無機複合体。 (α):0.1≦dw1≦1000 (β):0.1≦Sw1≦300 dw1:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定し
    たコア/シェル状有機−無機複合体の平均粒径(μm) Sw1:窒素吸着法によるコア/シェル状有機−無機複
    合体のBET比表面積(m2 /g)
  14. 【請求項14】 コア/シェル状有機−無機複合体が下
    記の式(γ)、(δ)、(ε)を満足する棒状である請
    求項1〜13のいずれか1項に記載のコア/シェル状有
    機−無機複合体。 (γ):0.1≦dw2≦1000 (δ):0.01≦dw3≦50 (ε):7≦dw2/dw3≦100 dw2:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定し
    たコア/シェル状有機−無機複合体の平均長径(μm) dw3:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定し
    たコア/シェル状有機−無機複合体の平均短径(μm) dw2/dw3:アスペクト比
  15. 【請求項15】 粒子(a)の表面に、リン酸カルシウ
    ム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ケイ
    酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、シリカ、酸化チタ
    ン及びアルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種
    の無機物(b)を有する無機粒子(A)の存在下で、有
    機重合体(B)を形成する重合性単量体を重合させるこ
    とを特徴とする、無機粒子(A)がコアとなり、有機重
    合体(B)がシェルとなるコア/シェル状有機−無機複
    合体の製造方法。
  16. 【請求項16】 (A)及び/又は(B)が、オルガノ
    アルコキシシラン(C)を含有する請求項15記載のコ
    ア/シェル状有機−無機複合体の製造方法。
  17. 【請求項17】 (B)が、官能性単量体(D)を含有
    する請求項15又は16記載のコア/シェル状有機−無
    機複合体の製造方法。
  18. 【請求項18】 有機重合体(B)を形成する重合性単
    量体を乳化重合させる請求項15〜17のいずれか1項
    に記載のコア/シェル状有機−無機複合体の製造方法。
  19. 【請求項19】 乳化剤が陰イオン性界面活性剤及び/
    又は非イオン性界面活性剤である請求項18に記載のコ
    ア/シェル状有機−無機複合体の製造方法。
  20. 【請求項20】 請求項1〜14のいずれか1項に記載
    のコア/シェル状有機−無機複合体を配合してなる組成
    物。
  21. 【請求項21】 請求項1〜14のいずれか1項に記載
    のコア/シェル状有機−無機複合体を配合してなる樹脂
    組成物。
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