JP2001089930A - ポリビニルアルコール系繊維 - Google Patents

ポリビニルアルコール系繊維

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JP2001089930A
JP2001089930A JP2000209745A JP2000209745A JP2001089930A JP 2001089930 A JP2001089930 A JP 2001089930A JP 2000209745 A JP2000209745 A JP 2000209745A JP 2000209745 A JP2000209745 A JP 2000209745A JP 2001089930 A JP2001089930 A JP 2001089930A
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fiber
tan
pva
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fatigue resistance
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JP2000209745A
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Tomokazu Ise
智一 伊勢
Toshihiro Hamada
敏裕 浜田
Kiyohiko Sho
清彦 庄
Tetsuo Nishizaki
鉄男 西崎
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐疲労性に優れたポリビニルアルコール系繊
維、さらに該ポリビニルアルコール系繊維を用いて得ら
れる耐疲労性に優れたデイップコード及びデイップコー
ドの製造方法を提供する。 【解決手段】 90℃におけるtanδが0.12以上
であり、かつ60〜120℃においてtanδのピーク
を実質的に1つ有し、さらに破断伸度が12%以上であ
るポリビニルアルコール系繊維とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐疲労性に優れたポリ
ビニルアルコール系繊維に関し、さらに該ポリビニルア
ルコール系繊維を用いて得られる耐疲労性に優れたデイ
ップコード及びデイップコードの製造方法に関する。ま
たさらに該デイップコードを用いて得られる耐疲労性に
優れたゴム補強材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、セメント、ゴム、樹脂等の補強材
として繊維が広く使用されており、たとえばゴム補強材
として、繊維束にゴムとの接着性を高めるための処理
(たとえばレゾルシン・ホルマリン・ラテックス処理)
を施したデイップコードが広く使用されている。かかる
デイップコードには機械的性能のみでなく耐疲労性等の
諸性能が要求されるが、なかでも該デイップデイップコ
ードをタイヤコード、ブレーキホース補強材、ベルト補
強材等に用いる場合には耐圧性、耐疲労性、寸法安定性
等の諸性能がより高度に要求される。これまでゴム補強
材として、ポリビニルアルコール(PVA系繊維)、レ
ーヨン繊維、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ア
ラミド繊維等が一般に用いられている。上記の繊維の中
で、レーヨン繊維のように強度の低い繊維を用いる場
合、補強効果を高めるためには繊維を多量に用いる必要
があるためコストや製品サイズの点で問題が生じ、ナイ
ロン繊維は弾性率が低いために外部応力に対する変形が
大きくなる問題があった。ポリエステル系繊維は強度・
弾性率がある程度高いもののゴムとの接着性が低く、ま
た加硫時に収縮して製品寸法が変化する等の問題があ
り、またアラミド繊維は強度・モジュラスに優れるもの
の、ゴムとの接着性が低く耐疲労性に劣る欠点がある。
以上のことから、強度・弾性率に優れ、しかもゴムとの
接着性が高く、さらに加硫での寸法変化がほとんど生じ
ないPVA系繊維が、ホース、ベルト等のゴム補強材と
して広く使用されている。
【0003】
【課題が解決しようとする課題】近年、自動車の居住性
向上のため乗員乗車部の容積が増大する反面、自動車の
コンパクト化のためにエンジンルームやタイヤホイール
スペースが圧縮されている。その結果、ブレーキホース
は以前より狭い空間に曲率半径30mm以下、特に場合
によっては曲率半径20mm以下という非常に小さい曲
げ角度で取り付けられ、過酷な条件下で伸縮及び圧縮が
繰り返されるケースが増加している。また自動車のメン
テナンスフリー化の要求によりブレーキホースはより高
度の耐疲労性が求められるようになっている。また、同
様にタイヤコード、ベルト補強材等についてもより高度
の耐疲労性が求められるようになっている。以上のこと
から、たとえば特開平6―207338号公報では、高
重合度のPVAを用いることにより繊維の強度及び弾性
率を高めるとともに、RFL付着時等の張力を低下させ
てコード内部までRFL液を浸透させ、さらにRFL付
着後の熱処理張力を高めて撚ムラ等を低減させることに
より高強力高弾性率で耐疲労性の改善されたデイップコ
ードを得ることが提案されている。しかしながら、該方
法においてはPVA鎖が高度に配向した高強度高弾性率
繊維が使用されているため、デイップ処理条件等を調整
してもコードの耐疲労性は十分改善されず、たとえば上
記のような過酷な条件における耐疲労性は低いものとな
る。
【0004】一方、特開平7―189066号公報に
は、使用するPVA系繊維の延伸倍率を適度に抑えて破
断伸度を6〜12%の高伸度PVA系繊維を用いること
により耐疲労性を改善したデイップコードが記載され、
また特開平8―218221号公報には、耐疲労性、耐
摩耗性及び寸法安定性を向上させるために1〜15%、
好適には2〜10%の熱収縮処理を施して非晶部の配向
を乱したPVA系繊維をゴム補強材等に使用することが
記載されている。しかしながら、単に破断伸度を高めた
だけではデイップコード及び繊維の耐疲労性を十分に改
善することは困難である。本発明の目的は、上記の問題
に鑑み、耐疲労性等の諸性能に優れたPVA系繊維及び
デイップコードを提供することにあり、さらに耐疲労性
に優れたデイップコードのその製造方法、また該デイッ
プコードを用いて得られるゴム補強材を提供することに
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1) 90
℃におけるtanδが0.12以上であり、かつ60〜
120℃においてtanδのピークを実質的に1つ有
し、さらに破断伸度が12%以上であるポリビニルアル
コール系繊維、(2) 環式多価アルコール誘導体を含
有する(1)に記載のポリビニルアルコール系繊維、
(3) 環式多価アルコール誘導体としてカテコール誘
導体を用いた(2)に記載のポリビニルアルコール系繊
維、(4) ゴム接着性改良剤により処理されているポ
リビニルアルコール系繊維束からなり、90℃における
tanδが0.12以上、かつ60〜120℃において
tanδのピークを実質的に1つ有し、さらに破断伸度
が10%以上であるデイップコード、(5) 環式多価
アルコール誘導体を含有する(4)に記載のデイップコ
ード、(6) 環式多価アルコール誘導体がカテコール
誘導体である(5)に記載のデイップコード、(7)
破断伸度が12%以上であるポリビニルアルコール系繊
維にゴム接着性改良剤を付与して乾燥し、次いで温度1
10〜200℃、張力0.1cN/dtex以上の条件で熱処
理を施して、90℃におけるtanδが0.12以上、
かつ60〜120℃においてtanδのピークを実質的
に1つ有し、破断伸度が10%以上であるデイップコー
ドを製造する方法、(8) ポリビニルアルコール系繊
維にゴム接着性改良剤を付与する工程又は該付与工程よ
り前のいずれかの工程において、ポリビニルアルコール
系繊維に環式多価アルコール誘導体を付与する(7)に
記載のデイップコードの製造方法、(9) (4)〜
(6)のいずれかに記載のデイップコードを用いてなる
ゴム補強材、に関する。
【0006】
【発明の具体的な形態】本発明は、特定のPVA系繊
維、具体的には、90℃におけるtanδが0.12以
上であり、かつ60〜120℃においてtanδのピー
クを実質的に1つ有し、さらに破断伸度が12%以上で
あるPVA系繊維が耐疲労性に優れていることを見出し
たものである。該構成を採用することによって、たとえ
ばホース補強材(ブレーキホース、パワステホース
等)、タイヤコード、ベルト補強材等のように過酷な条
件下におかれた場合であっても高度の耐疲労性が奏され
る。本発明においては、90℃におけるtanδを0.
12以上、好適には0.13以上、さらに好ましくは
0.14以上にすることが重要である。ここでいうta
nδ(損失正接)とは、試料に一定の周波数及び振幅を
有する振動を与えたときの応答をみるいわゆる動的年弾
性のパラメータであり、具体的には入力波に対する出力
波の位相のずれδの正接を示したものである。また貯蔵
弾性率をE’、損失弾性率をE''とするとき、tanδ
=E’’/E’の関係となる。90℃におけるtanδ
の高い繊維は、繊維を構成するポリマーの非晶部の運動
性及び自由度が高く、その結果、外部から応力を受けた
際に該応力を吸収・緩和する力が増大して耐疲労性が顕
著に向上する。
【0007】たとえば自動車のブレーキホースは通常の
使用環境では70℃くらいまでの温度にしかならない
が、長い下り坂でのブレーキの連続使用などの過酷な条
件下では90℃くらいまで温度が上がるとされており、
ブレーキホースの加速耐久テストは専ら90℃近辺の温
度で実施される。本発明のPVA系繊維は90℃におけ
るtanδが高いことから上記のような極めて過酷な疲
労条件で使用されても優れた耐疲労性が奏される。90
℃におけるtanδの上限は特に限定されないが、一般
には0.30以下、特に0.25以下となる。
【0008】さらに本発明においては、90±30℃
(好適には90±20℃)、すなわち60〜120℃
(好適には70〜110℃)においてtanδのピーク
を実質的に1つ有することが重要である。その理由は定
かではないが、かかるピークを有する繊維は、繊維を構
成するポリマーの非晶部が拘束されておらず自由度が大
きいことから、外部応力を緩和吸収する力が大きく耐疲
労性が顕著に改善されるものと推測される。従来のポリ
ビニルアルコール系繊維は90℃におけるtanδが低
く、しかも通常、60〜120℃においてtanδのピ
ークを1つ有するものではなかった。たとえば乾式紡糸
法により得られるPVA系繊維は、温度が上昇するとt
anδが大きくなり70℃程度で第1のピークを示し、
次いで70℃をこえるとtanδが急激に低下し、90
℃付近のtanδは0.06程度以下と低くなる。さら
に温度が上昇するとtanδが再度上昇して120〜1
30℃で第2のピークを示し、また温度上昇とともにt
anδは低下して2つのピークが形成される(図1のB
参照)。これは繊維を構成するPVAの一次構造及び二
次構造に起因するtanδのピークがそれぞれ60〜8
0℃、110〜130℃に形成されたものであるが、通
常のPVA系繊維は二次構造が水素結合等により拘束さ
れていることから全体的にtanδの低いものとなる。
【0009】また湿式紡糸法により得られた繊維は、後
述する理由からPVAの非晶部の自由度が極めて小さ
く、よって全体的にtanδは小さくなる。特にPVA
の二次構造の自由度が小さいことから乾式紡糸法により
得られた繊維のように明確な第2のピークが奏されず、
60〜120℃に大きな凸型ピークが示さない(図1の
C参照)。このような繊維は、本発明に比して非晶部の
自由度が小さく、よって外部から応力を受けた際に(特
に90℃近傍で応力を受けた際に)、外部応力を吸収・
緩和する力が小さくなって耐疲労性の劣ったものとな
る。一方、本発明の繊維は、非晶部の構造が適度に乱さ
れていることから、構造が均質化されてtanδのピー
クが実質的に1つになり、かつ非晶部の自由度が大きく
なってtanδのピークが大きくなっているものと推察
される(図1のA参照)。なお、本発明にいう90℃に
おけるtanδは実施例に記載の方法で測定することが
でき、本発明の繊維は60〜120℃(好適には70〜
110℃)において凸型のピークを示すものである。
【0010】しかしながら、繊維の耐疲労性を高める点
からは、特定のtanδを有するだけでは不十分であ
り、繊維の破断伸度を特定範囲とする必要がある。具体
的には、PVA系繊維の破断伸度を12%以上とする必
要があり、13%以上、特に14%以上、さらに15%
以上、またさらに16%以上とするのがより好ましい。
繊維の破断伸度をかかる範囲にすることにより繊維の耐
疲労性が顕著に向上する。tanδを特定範囲とすると
ともに繊維の破断伸度を高めることにより繊維の耐疲労
性が顕著に高まる理由は定かではないが、繊維の破断伸
度を高めることによりPVA鎖に「余剰(ゆとり)」が
生じ、その結果、より大きな圧縮・伸長に耐えうること
が可能になると推察される。PVA鎖に「余剰(ゆと
り)」がない場合、PVA鎖は実質的に伸長された状態
で存在しているため、仮にtanδが大きく非晶部の自
由度が大きい場合であっても、繊維が大きく圧縮される
と外部応力を十分に緩和することが困難となる。しかし
ながら、PVA鎖が伸長しきっておらずPVA鎖に「余
剰(ゆとり)」がある場合、PVA鎖の余剰分が変形す
ることにより応力を緩和することが可能となり、さらに
繊維がさらに伸長された場合もPVA鎖の余剰分がさら
に伸長することにより応力が緩和されて耐疲労性が向上
するものと推察される。繊維の破断伸度の上限は特に限
定されないが、一般には30%程度以下である。
【0011】PVA系繊維の破断強度は補強効果等の点
から5cN/dtex以上、特に6cN/dtex以上であるのが好ま
しい。破断強度の上限は特に限定されないが、破断強度
が大きすぎると繊維の破断伸度が不十分になる可能性が
高いことから、破断強度20cN/dtex以下、特に10cN/
dtex以下であるのが好ましい。一般にPVA系繊維を高
倍率で延伸して配向結晶化を高めると繊維の破断強度が
高くなるが破断伸度は小さくなる。逆に破断伸度を高度
に高めると繊維の破断強度は低くなる傾向がある。よっ
て、本発明の繊維は繊維の破断伸度が高いために、該繊
維の破断強度は小さくなりやすいが、破断伸度を大幅に
高めると耐疲労性が大きく改善されることから、破断強
度が低減したとしても総合的にみれば優れた効果が奏さ
れる。本発明によれば、実施例で記載されたように過酷
な条件下における耐疲労性が80%以上、特に85〜1
00%となるPVA系繊維を得ることができる。
【0012】本発明のPVA系繊維の製造方法は特に限
定されないが、任意の方法で本発明のPVA系繊維を製
造することは困難である。よって、たとえば下記の方法
により本発明の繊維を製造するのが好ましい。まず、本
発明に用いられるビニルアルコール系ポリマーとして
は、前駆体であるポリ酢酸ビニルの部分ケン化あるいは
完全ケン化が好適に使用できる。もちろんビニルアルコ
ールを含めた2種類以上のモノマーユニットより構成さ
れる共重合体であってもよく、他の成分により変性され
たもの等を用いてもよい。
【0013】ビニルアルコール系ポリマーのケン化度
は、紡糸時の固化性などの点から通常70モル%以上、
さらに90%以上であるのが好ましく、耐熱性、紡糸
性、機械的性能の点からけん化度99〜100モル%と
するのがより好ましい。けん化度を高めることにより繊
維膠着及び膠着に伴う耐疲労性の低下を効果的に抑制で
き、特にゴム接着性改良剤(RFL:レゾルシン・ホル
マリン・ラテックスなど)をディップ処理後に熱処理を
行った場合の膠着防止に有効である。なお、ここでいう
ケン化度とは、PVAの前駆体であるポリ酢酸ビニル又
はその共重合体中の全酢酸ビニル単位に対するケン化後
のビニルアルコール単位の割合を表したものである。ま
たビニルアルコール系ポリマーの平均重合度は、紡糸
性、延伸性、破断伸度、機械的性能、コスト等の点から
1000〜5000程度、特に4000以下、1500
以上とするのが好ましい。
【0014】本発明のPVA系繊維は、かかるビニルア
ルコール系ポリマーのみから構成されている必要はな
く、他の添加剤や他のポリマーが含まれていても構わな
い。たとえば他のポリマーとの混合紡糸繊維(海島構造
繊維等)や複合紡糸繊維であってもよい。しかしなが
ら、繊維の機械的性能、耐熱性等の点からは、PVA系
繊維の50質量%以上、特に80〜100質量%がビニ
ルアルコール系ポリマーであるのが好ましい。
【0015】該ビニルアルコール系ポリマーを用いて紡
糸原液を調製すればよい。紡糸原液の溶媒は水系であっ
ても有機溶剤系であってもかまわないが、製造工程性及
びコストの点、さらに90℃におけるtanδの大きい
PVA系繊維を得る点からはPVA水溶液を紡糸原液と
して用いるのが好ましく、紡糸原液のPVA濃度は10
〜60質量%程度、特に40〜55質量%とするのが好
ましい。PVA濃度を高くすると、ポリマー鎖が伸長し
にくくなるとともにランダムな状態となり、その結果、
90℃におけるtanδが大きくなりやすく、耐疲労性
に優れたPVA系繊維及びデイップコードが得られやす
くなる。もちろん、紡糸原液に他の添加剤等をさらに添
加してもかまわない。
【0016】次いでかかる紡糸原液を紡糸するが、90
℃におけるtanδの大きいPVA系繊維を得る点から
は乾式紡糸法を採用するのが好ましい。湿式紡糸法及び
乾湿式紡糸法を採用する場合、ノズルから吐出して固化
浴で固化させる必要があることから、紡糸原液のPVA
濃度を比較的低濃度にする必要がある。そのため、紡糸
原液中でPVAポリマー鎖が伸長した状態になりやす
く、かつ該紡糸原液がノズルから吐出されてそのまま固
化されることから、PVA鎖は比較的規則的に配列しや
すく90℃におけるtanδは小さくなりやすい。しか
しながら、乾式紡糸法の場合には用いる紡糸原液のPV
A濃度が比較的高いことからポリマー鎖がランダムで伸
長されていない状態になりやすく、しかもノズルから吐
出されてゆっくりと乾燥されることから、PVA鎖はラ
ンダムで余剰が生じやすくなって90℃におけるtan
δが大きくなりやすくなる。よって、乾式紡糸方法、す
なわち紡糸原液を気体中(好適は空気中)に吐出して糸
篠を乾燥する方法を採用するのが好ましい。
【0017】ノズルから吐出された紡糸原糸の乾燥温度
は特に限定されず、たとえば100〜250℃、特に1
20〜250℃程度で乾燥すればよい。次いで、繊維の
機械的性能及び耐膨張性を向上させるために乾熱延伸を
施せばよい。総延伸倍率9倍以上、特に10倍以上、1
1倍以上となるような乾熱延伸を施すのが好ましい。延
伸倍率を高くするほど繊維の破断強度は大きくなり、後
述する1.8cN/dtex加重時の中間伸度は小さくなる
が、延伸倍率が大きくなるほど90℃におけるtanδ
や破断伸度は小さくなる。よって、必要以上に配向度を
高めないのが好ましく、総延伸倍率は30倍以下、特に
20倍以下、さらに15倍以下、またさらに13倍以下
であるのが好ましい。このときの乾熱延伸温度は180
〜250℃程度、特に200〜250℃であるのが好ま
しい。
【0018】次いで所望の90℃におけるtanδ及び
所望の破断伸度とするために熱収縮処理を施す必要があ
る。収縮率13%以上、特に14%以上、さらに15〜
30%の熱収縮処理を施すのが好ましい。前述のように
繊維及びデイップコードの耐疲労性を高めるためにはP
VA系繊維の90℃におけるtanδ及び破断伸度を高
くする必要があり、よって熱収縮処理を施すことにより
tanδ及び破断伸度を高めるのが好ましい。収縮率及
び熱収縮温度等の条件は繊維の繊度、構成ポリマー等に
応じて設定するのが好ましく、所望により熱処理等の他
の処理を行ってもかまわない。PVA系繊維が乾式紡糸
法により製造されている場合には、湿式紡糸法等に比し
てPVA鎖が引き伸ばされておらずPVA鎖に余剰分が
存在することから熱収縮処理により効率的に90℃にお
けるtanδ及び破断伸度を高めることができる。熱収
縮温度は200〜250℃、特に230〜250℃であ
るのが好ましく、乾熱延伸温度と同程度の温度で行うの
が好ましい。
【0019】また本発明の繊維を製造するためには、9
0℃におけるtanδを高め、さらにtanδのピーク
を1つにする手段を採用する必要がある。前述のよう
に、たとえば乾式紡糸法で得られる繊維は90℃におけ
るtanδが小さく、しかもtanδのピークは2つで
あるのが一般的である。よって、本発明の繊維を得るた
めには繊維のtanδを変化させる手段を採用する必要
がある。確かに繊維の破断伸度を高めることにより繊維
の耐疲労性をある程度改善することができるが、tan
δが小さい場合には非晶部が拘束されており自由度が小
さいことから外部応力を十分に緩和することが困難とな
る。90℃におけるtanδを高め、かつtanδのピ
ークを1つにする手段は特に限定されないが、PVA系
繊維に環式多価アルコール誘導体を付与する方法が好適
に挙げられる。環式多価アルコール誘導体を付与するこ
とにより所望の効果が得られる理由は定かではないが、
環式多価アルコール誘導体が繊維を構成するPVAと結
合したり、PVA構造内に進入してPVA鎖の構造を乱
すことにより、PVAの構造が適度にかつ均質に乱され
てtanδが変化するものと推察される。特に繊維の配
向結晶化が進行していない高伸度繊維に付与した場合に
は、環式多価アルコール誘導体が繊維内に浸透しやすく
容易に処理可能であり、しかももともと自由度の高い非
晶領域の自由度がより一層大きくなることからより高温
におけるtanδが一層大きくなる。配向結晶化が高度
に進行した低伸度繊維に同処理を行っても環式多価アル
コール誘導体が繊維内に浸透しにくく処理に時間がかか
り、しかもtanδの上昇幅も小さくなる。
【0020】なお、本発明にいう環式多価アルコール誘
導体には、具体的には2個以上の水酸基を有する環式化
合物及びその誘導体が包含され、好適には2個以上の水
酸基を有する芳香族化合物(具体的にはカテコールやレ
ゾルシン等のベンゼンジオール、ナフタレンジオール
等)及びこれらの誘導体などが挙げられる。また誘導体
としては、環式多価アルコールの塩、エステル化物、エ
ーテル化物、アセタール化物等が挙げられ、かかる誘導
体とすることにより耐揮発性、耐昇華性等を高めること
ができる。本発明においては、複数の環式多価アルコー
ル誘導体を組み合せて使用してもかまわない。
【0021】本発明においては、特に同一ベンゼン環上
に2個以上の水酸基をもつ多価フェノール及びその誘導
体が好適に用いられる。またそのなかでも、2価フェノ
ール及びその誘導体、特に2つの水酸基がオルト位にあ
る2価フェノール及びその誘導体がtanδへの影響の
点から好ましい。具体的にはカテコール誘導体(カテコ
ール及びカテコール誘導体が包含される)が好適に挙げ
られ、なかでもカテコールの塩(特にナトリウム塩)
が、耐揮発抑制性、tanδへの影響、コスト、取扱性
等の点からより好適に用いられる。耐疲労性の点から
は、本発明に用いられる環式多価アルコール誘導体の5
0質量%以上、特に80質量%以上をカテコール及び/
又はその誘導体とするのが好ましい。
【0022】環式多価アルコール誘導体の繊維における
含有割合が大きいほど90℃におけるtanδが大きく
なることから繊維質量に対して0.1質量%以上、特に
1質量%以上配合するのが好ましい。また繊維性能やゴ
ムと繊維の接着性の点からは、繊維質量に対して30質
量%以下、特に20質量%以下とするのが好ましく、さ
らに多量に環式多価アルコール誘導体を付与しても耐疲
労性はそれほど改善されないことから、コスト上10質
量%以下、さらに5質量%以下配合するのが好ましい。
【0023】なお、多価アルコールがブレーキ液中の硼
酸化合物を捕捉することは特開平9―21016号公
報、特開平9―228251号公報、特開平9―291
477号公報に開示されているが、ここでは多価アルコ
ールを配合することにより硼酸化合物が捕捉できること
が開示されているにすぎず、tanδ等について何等検
討されていない。たとえば上記公報の実施例では株式会
社クラレ製「1239」のPVA系繊維が用いられている
が、該繊維は高度に配向結晶化していることから破断伸
度は8%程度であり、よって多価アルコール誘導体の処
理に多大な時間を要するのみでなく、90℃におけるt
anδはせいぜい0.11程度であり、かつ破断伸度が
低いことから本発明のように高度な耐疲労性は奏されな
い。以上のことは、本比較例1からも明らかである。
【0024】環式多価アルコール誘導体の付与方法は特
に限定されるものではなく、繊維の製造時に付与する方
法(たとえば繊維原料に環式多価アルコール誘導体を添
加する、繊維紡糸直後に付与する、繊維紡糸後巻取工程
までに付与する方法等)又は繊維製造後に付与する方法
のいずれを採用してもよいが、工程性の点からは繊維製
造後に付与するのが好ましい。本発明においては、配向
結晶化が進行していない高伸度繊維を用いていることか
ら、繊維製造後であっても環式多価アルコール誘導体が
繊維内に浸透しやすく効率的に処理することが可能であ
る。環式多価アルコール誘導体をそのまま付与してもよ
いが、適当な溶媒に溶解して付与してもよい。
【0025】また本発明の繊維を用いてデイップコード
を製造する場合には、撚糸後に環式多価アルコール誘導
体の溶液に含漬・乾燥する方法、環式多価アルコール誘
導体をゴム接着性改良剤(RFL液、エポキシ処理液、
ゴムのり液など)に添加してゴム接着性改良剤と同時に
付与する方法等を採用してもかまわない。さらに、補強
繊維をホ−ス状に編み上げた後に付与する方法や、内管
ゴムや外皮ゴムの表面や内部に付与する方法を用いても
よい。また複数の方法を組み合わせてもよい。しかしな
がら、工程を簡略にできる点、環式多価アルコール誘導
体を繊維に十分浸透させる点等からは、環式多価アルコ
ール誘導体をゴム接着性改良剤(RFL液、エポキシ処
理液、ゴムのり液など)に添加して付与するのが好まし
い。ゴム接着性改良剤を付与することによりゴムへの接
着性が高まることから一層優れた効果が得られる。な
お、環式多価アルコール誘導体の揮発性が高く乾燥工程
等で揮発することが予想される場合には、予め多量の環
式多価アルコール誘導体を配合しておくのが好ましい。
環式多価アルコール誘導体を配合することにより繊維及
びデイップコードのtanδを高めることができ、また
ブレーキ液中の硼酸化合物の捕捉効果も併せて得ること
ができる。
【0026】かかる方法により得られたPVA系繊維
を、たとえば補強材としてそのまま用いてもかまわな
い。しかしながら、ゴム補強材等として用いる場合に
は、ゴム接着性改善剤で処理されたデイップコードに加
工して用いるのが好ましい。かかるデイップコードを構
成するPVA系繊維の繊度は適宜設定すればよいが、補
強効果、耐疲労性、製造工程性の点からは単繊維繊度1
〜20dtex程度とするのが好ましい。工程性・デイップ
コードの機械的性能等の点からは繊維束(好ましくはマ
ルチフィラメントヤーンを撚糸したもの)に処理を施す
のが好ましく、繊維束を構成する繊維の本数は5以上、
特に10以上であるのが好ましい。具体的には500〜
4000dtex、特に1000〜2500dtex程度のマル
チフィラメントヤーンを20〜120t/mの撚数で撚
りあわせる方法が挙げられる。一般に片撚糸よりも諸撚
糸の方が耐疲労性が高く、また撚数を多くすればするほ
ど耐疲労性が向上することとなるが、その反面製造工程
が煩雑となったりコンパクト化の点で好ましくない場合
がある。本発明においては片撚糸、特に撚数の少ない片
撚糸(具体的には100t/m以下、特に60t/m以
下)にゴム接着性改良剤を付与した場合であっても優れ
た耐疲労性が得られる。
【0027】該デイップコードを構成する繊維として、
機械的強度、耐膨張性に優れていることからPVA系繊
維を用いる必要があるが、デイップコード構成繊維のす
べてがPVA系繊維である必要はなく、他の繊維を併用
してもかまわない。しかしながら、本発明の効果を効率
的に得る点からは、デイップコード構成繊維の60質量
%以上、特に80質量%以上、さらに95〜100質量
%がPVA系繊維であるのが好ましい。
【0028】かかるPVA系繊維束をゴム接着性処理剤
で処理すればよい。ゴム接着性改良剤としては、PVA
系繊維とゴムとの接着性を高めるものであれば特に限定
されず、RFL(レゾルシン−ホルマリン−ラテック
ス)液、エポキシ処理液、ゴムのり液、ウレタン樹脂水
溶液などが挙げられる。なかでも、ゴムとの接着性及び
作業性などの点からはRFL液を付与するのが好まし
い。また繊維に均一に塗布しやすことから水分散系のR
FL処理液で処理するのが好ましい。
【0029】好適なRFL液調製法としては、レゾルシ
ン、ホルムアルデヒド、水酸化ナトリウム及び水を含む
液を10〜40℃で1〜10時間程度熟成したA液と、
ラテックス水分散液(固体分40〜60質量%程度)か
らなるB液を5:95〜30:70(質量比)で混合
し、10〜40℃で10〜30時間程度熟成する方法が
挙げられる。その組成は特に限定されないが、ラテック
ス:レゾルシン=100:1〜20、ラテックス:ホル
ムアルデヒド=100:1〜20、ラテックス:水酸化
ナトリウム=100:0.1〜3程度とするのが好まし
い(いずれも質量比)。ラテックスの種類は一体化する
ゴムの種類等により適宜選択すればよい。たとえばスチ
レンブタジエンラテックス(SBR)、ビニルピリジン
変性SBRラテックス等を用いればよい。RFL液の付
着量(固体分)は、ゴムと繊維の接着性、取扱性、柔軟
性、コスト等の点から20質量%/PVA、特に1〜1
0質量%/PVAとするのが好ましい。ゴム接着性改良
剤の付与方法は特に限定されず、たとえば浸漬法、コー
テイング法、スプレー法等を採用すればよい。
【0030】ゴム接着性改良剤を付与後、乾燥・熱処理
を行ってゴム接着性改良剤を固定させるのが好ましい。
乾燥温度は100〜130℃とするのが好ましい。この
とき90℃のtanδを高める点、さらに1.8cN/dte
x加重時の伸度を抑えて耐膨張性を高める点、また破断
強度を高めて補強効果を向上させる点からは、乾燥工程
後、温度100〜200℃(特に150〜190℃)
で、0.10cN/dtex以上、さらに0.13cN/dtex以上
の張力下で熱処理を施すのが好ましい。一般に張力下で
熱処理を行うと繊維の機械的性能が高まる反面、破断伸
度が低下して繊維の耐疲労性が損われやすくなるが、熱
処理温度を原糸の延伸及び収縮処理温度よりも低く設定
することにより破断伸度の低下を大幅に抑制でき、柔軟
で耐疲労性に優れたデイップコードが得られる。なお工
程性の点からは張力を1cN/dtex以下、特に0.5cN/dt
ex以下に保つのが好ましい。
【0031】本発明においては、デイップコードの90
℃におけるtanδを0.12以上、好適には0.13
以上、さらに好適には0.14以上にする必要がある。
90℃におけるtanδの上限は特に限定されないが、
機械的性能等を確保する点から一般には0.30以下、
特に0.25以下である。かかるデイップコードは、た
とえば90℃におけるtanδの大きいPVA系繊維を
用いることにより得られるが、上記のような張力下での
熱処理を行うことにより、90℃におけるtanδを一
層高めることができる。該処理を採用することにより9
0℃におけるtanδが大幅に高まる理由は定かではな
いが、繊維が固定された状態で結晶化しない程度に加熱
されることにより、PVA鎖の「余剰(ゆとり)」部分
の絡み合いが解除されて非晶部分の自由度が一層改善さ
れてtanδが増大するものと推定される。
【0032】さらに耐疲労性を高める点からは、デイッ
プコードの0℃〜200℃におけるtanδのピークが
60〜120℃、特に70〜110℃にあるのが好まし
く、かつ該ピークは実質的に1つであるのが好ましい。
その理由はPVA系繊維と同様であり、前述の通りであ
る。90℃におけるtanδの上限は特に限定されない
が、機械的性能等を確保する点から一般には0.30以
下、特に0.25以下である。
【0033】デイップコードの破断伸度は、耐疲労性の
点から10%以上、さらに11%以上、またさらに12
%以上、特に13%以上であるのが好ましい。かかる特
定の破断伸度とすることにより、PVAに「余剰(ゆと
り)」部分が形成されて耐疲労性が顕著に向上する。該
構成を採用することにより、実施例で記載されたように
過酷な条件下における耐疲労性が80%以上、特に85
〜100%となるデイップコードを得ることができる。
耐疲労性の点からはデイップコードの破断伸度は高い方
が好ましいが、デイップコードの製造工程性及び寸法安
定性(耐膨張性)の点からは破断伸度を20%以下、特
に17%以下とするのが好ましい。また上記の張力下の
熱処理により破断伸度の低下が生じることから、デイッ
プコードにおいて所望される破断伸度よりも高伸度のP
VA系繊維を用いるのが好ましく、該張力下の熱処理に
よる破断伸度の低下は5%以内、特に0〜4%とするの
が好ましい。
【0034】デイップコードの破断強度は、補強効果及
び寸法安定性(耐膨張性)等の点から、5cN/dtex以
上、さらに6cN/dtex以上であるのが好ましい。デイッ
プコードの破断強度の上限は特に限定されないが、製造
工程性及びコスト等の点からは20cN/dtex以下である
のが好ましく、破断伸度とのバランスの点からは10cN
/dtex以下であるのが好ましい。デイップコードの破断
強度は、用いるPVA系繊維の破断強度を高くするころ
により高めることができる。また上記の張力下による熱
処理により、処理剤付与前の繊維に比して繊維強度を
0.2cN/dtex以上、特に0.5〜2cN/dtex程度高める
ことができる。張力下での熱処理により破断強度が高ま
ることから、比較的破断強度が低い繊維を用いても所望
の破断強度を有するデイップコードが得られる。該張力
下の熱処理において、張力や温度を高めることによりデ
イップコードの破断強度は大きくすることができる。
【0035】寸法安定性、耐膨張性等の点からは、デイ
ップコードの1.8cN/dtex加重時の中間伸度は4%以
下、特に3%以下、さらに2.5%以下、またさらに2
%以下であるのが好ましい。たとえば該デイップコード
をブレーキホース補強材に用いる場合、1.8cN/dtex
加重時の中間伸度が大きすぎると、ブレーキ液の流圧等
によりブレーキホースが容易に膨張し、ブレーキペダル
を踏んだ際の圧力損失が大きく高度の制動性が得られに
くくなる。しかしながら、デイップコードの耐疲労性を
高める点からは、1.8cN/dtex加重時の中間伸度が1
%以上であるのが好ましい。前述の張力下での熱処理を
施すことによりデイップコードの中間伸度が低減するこ
とから、所望の中間伸度よりも大きい中間伸度を有する
PVA系繊維を用いることができる。たとえば、中間伸
度1〜6%程度のPVA系繊維が使用できる。PVA系
繊維の中間伸度は、乾熱延伸倍率を高めたり、収縮率を
小さくすることによって小さくすることができる。
【0036】本発明のPVA系繊維はあらゆる形態で使
用できる。たとえばカットファイバー、フィラメント
糸、集束糸、紡績糸、布帛(織編物、不織布)、コード
等に加工でき、他の繊維と併用してもかまわない。また
用途としては、耐疲労性に優れていることから、たとえ
ばゴム、樹脂、水硬性材料等の補強材、被覆具等として
広く使用できる。また本発明のデイップコードはあらゆ
る形態で使用できる。たとえばコード、組紐、編織物等
として使用でき、他の素材と併用したり他の素材を積層
してもかまわない。また用途としては、機械的強度、耐
疲労性等の諸性能に優れたものであることから、タイヤ
コード、ベルト(コンベアベルト、タイミングベルト、
Vベルト)補強材、ホース(オイルブレーキホース、ラ
ジエーターホース、消防ホース)補強材等のゴム補強材
として好適であり、特に高度の耐疲労性を有しているこ
とからブレーキホース補強材として好適である。ブレー
キホース補強材として用いる場合には編組して所望の構
造体とするのが好ましい。
【0037】以下、実施例により本発明をより具体的に
説明するが、本発明はこれにより何等限定されるもので
はない。
【実施例】[環式多価アルコール誘導体付着量 質量%
/PVA]300mlの三角フラスコに環式多価アルコ
ール誘導体を付与した補強繊維2gと蒸留水100ml
を入れ、常温で24時間放置して環式多価アルコール誘
導体を抽出する。この液を紫外線検出器を使用した高速
液体クロマトグラフィーにて分析し環式多価アルコール
誘導体を定量した。なお本実施例では環式多価アルコー
ル誘導体としてカテコールのナトリウム塩を用いたの
で、逆相ODSカラム、移動相に水/メタノール=1/
1を用いた。 [tanδ]レオロジー社製FTレオスペクトラーDV
E−V4を用い、周波数10Hz、振幅5μmの条件で
−50℃〜250℃の範囲で3℃/minの昇温速度で
昇温して各温度でのtanδを求めた。
【0038】 [RFL液組成] A液 水 300部 レゾルシン 11部 ホルムアルデヒド(37質量%) 24部 水酸化ナトリウム水溶液(10質量%) 11部 上記A液を25℃の温度で6時間熟成した。 B液 SBRラテックス 130部 ビニルピリジン変性SBRラテックス 130部 水 260部 上記B液を熟成済みのA液と混合した後、25℃の温度
で16時間熟成してRFL液を製造した。
【0039】[破断強度 cN/dtex、破断伸度 %、中
間伸度 %]105℃で2時間以上乾燥して試料水分率
を1質量%以下/PVAとした試料を、JIS L10
13「化学繊維フィラメント試験方法」に準じて破断強
度及び破断伸度を測定するとともに、荷重―伸度曲線を
作成して1.8cN/dtex加重時の中間伸度を荷重―伸度
曲線からよみとった。なお、実際のホースの製造工程で
はゴムの加硫工程で150℃以上の温度に加熱されるた
め糸の水分は1質量%以下/PVAになる。従ってブレ
ーキホース補強材としての挙動を見極める点から、試料
水分率を1質量%以下/PVAとすることが重要とな
る。試料(原糸又はゴム接着性改良処理済糸)が空気中
の水分を吸って1質量%以上/PVAの水分を含んでい
た場合、伸度が実際以上に大きく測定される可能性があ
る。
【0040】[耐疲労性 %]PVA系繊維の耐疲労性
は、繊維に90t/mの撚りを加えて撚糸とし、次いで
RFL付着量3質量%となるようRFL液処理を行った
後、JIS L1017のデイスク疲労試験(グッドリ
ッチ法)に準じてデイスク疲労試験(伸長1%、圧縮1
%、回転数2500rpm、温度90℃、10万回)を
行い、試験前の繊維の引張強度をA、処理後の引張強度
をBとしたとき、(B/A)×100として耐疲労性を
算出した。デイップコードの耐疲労性は、下撚300t
/m、上撚300t/mの諸撚撚糸とし、次いでRFL
付着量8質量%となるようRFL液処理を行った後、J
IS L1017のデイスク疲労試験(伸長2%、圧縮
2%、回転数2500rpm、温度90℃、30万回)
を行い、試験前のコードの引張強度をA、処理後の引張
強度をBとしたとき、(B/A)×100として耐疲労
性を算出した。
【0041】[実施例1]重合度1750、ケン化度9
9.9モル%のPVAを用いたPVA水溶液(PVA濃
度45質量%)を孔径0.8mm、孔数200の口金か
ら空気中に吐出して乾燥し、次いで総延伸倍率12倍、
温度243℃で乾熱延伸を施した後、同温度で収縮率1
6%の収縮処理を施して、PVAマルチフィラメント
(1333dtex/200f)を得た。これを原糸として
用いた。なお該原糸の90℃におけるtanδは0.0
57,破断強度6.3cN/dtex,破断伸度17.
4%、中間伸度4.4%であり、耐疲労性は61%であ
った(図1のB1)。
【0042】かかる原糸を環式多価アルコール誘導体水
溶液に張力0.09cN/dtex、速度40m/minの条
件で通過させ、次いで液付着量40質量%/PVAとな
るまで搾液し、続いて90℃の熱風乾燥ゾーンを通して
乾燥した。得られた繊維は、破断伸度及び90℃におけ
るtanδが大きく、しかも60〜120℃にピークを
1つ有するものであり、耐疲労性に優れたものであっ
た。結果を表1及び図2に示す。なお環式多価アルコー
ル誘導体として、カテコール10質量部に水酸化ナトリ
ウム2質量部を処理して得られるカテコールのナトリウ
ム塩を用いた。
【0043】さらに該繊維束にRFL液をディップし、
次いで張力0.15cN/dtex(フルスケール4.9Nの
張力計にて実測)、速度40m/min、乾燥温度12
0℃、キュアリング温度185℃の条件で熱処理を行っ
てデイップコードを製造した(乾燥RFL付着量3質量
%/PVA、環式多価アルコール誘導体付着量2質量%
/PVA)。得られたデイップコードは破断伸度及び9
0℃におけるtanδが大きく60〜120℃において
ピークを1つ有するものであり、耐疲労性に優れたもの
であった。また1.8cN/dtex荷重時の伸度が小さく高
強力であることから、寸法安定性、耐膨張性に優れたも
のであり、ゴム補強材、特にブレーキホース補強材とし
て好適なものであった。結果を表1及び図3に示す。
【0044】[実施例2]カテコール誘導体水溶液をR
FL液に添加して環式多価アルコール誘導体付与処理と
ゴム接着性改良処理を同時に行った以外は実施例1と同
様に行ったところ、効率的に環式多価アルコール誘導体
を繊維に付与することができた。なおカテコール誘導体
/RFLは4.5/2.5(質量比)として処理を行
い、RFL樹脂付着量3質量%、環式多価アルコール誘
導体付着量2質量%/PVAの糸を採取した。得られた
デイップコードは破断伸度及び90℃のtanδが大き
く耐疲労性に優れたものであり、また1.8cN/dtex荷
重時の伸度が小さく高強力であることから、寸法安定
性、耐膨張性に優れたものであり、ブレーキホース補強
材として好適なものであった。結果を表1及び図3に示
す。
【0045】[比較例1]環式多価アルコール誘導体付
与処理をしない以外は実施例1と同様に行った。得られ
た繊維及びデイップコードは90℃におけるtanδが
小さく0〜200℃において2つのピークを有するもの
であり、実施例1に比して耐疲労性の劣ったものであっ
た。結果を表1及び図2、3に示す。 [比較例2]乾式紡糸法により得られた株式会社クラレ
製ビニロンフィラメント(品番1239:1332dtex
/200f)を原糸として用いた以外は実施例1と同様
に行った。乾式多価アルコール付与前の原糸の性能は、
90℃におけるtanδ0.040,破断強度8.3c
N/dtex,破断伸度8.0%、中間伸度1.9%で
あり、耐疲労性は26%であった(図1のB2)。また
実施例1と同様の方法で得られた繊維及びデイップコー
ドは90℃におけるtanδ及び破断伸度が小さく耐疲
労性の劣ったものであった。結果を表1及び図2、3に
示す。
【0046】[比較例3]湿式紡糸法で得られた株式会
社クラレ製ビニロン繊維(品番5506:1332dtex
/600f)を原糸として用いた以外は実施例1と同様
に行った。乾式多価アルコール付与前の原糸の性能は、
90℃におけるtanδ0.028,破断強度9.5c
N/dtex,破断伸度8%、中間伸度1.7%であ
り、耐疲労性は20%であった(図1のC)。実施例1
と同様の方法で得られた繊維及びデイップコードは破断
伸度及びtanδが小さく耐疲労性の劣ったものであっ
た。結果を表1及び図2、3に示す。
【0047】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のPVA系繊維、乾式紡糸方法により
得られた通常のPVA系繊維及び湿式紡糸法により得ら
れた通常のPVA系繊維のtanδと温度の関係の模式
的に示したグラフ。
【図2】 本発明の実施例及び比較例で得られたPVA
系繊維のtanδと温度の関係を示したグラフ。
【図3】 本発明の実施例及び比較例で得られたデイッ
プコードのtanδと温度の関係を示したグラフ。
【符号の簡単な説明】 A: 本発明のPVA系繊維 B1,B2: 乾式紡糸法により得られた通常のPVA
系繊維 C; 湿式紡糸法により得られた通常のPVA系繊維
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06M 15/693 D06M 15/693 // D06M 101:20 101:20

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 90℃におけるtanδが0.12以上
    であり、かつ60〜120℃においてtanδのピーク
    を実質的に1つ有し、さらに破断伸度が12%以上であ
    るポリビニルアルコール系繊維。
  2. 【請求項2】 環式多価アルコール誘導体を含有する請
    求項1に記載のポリビニルアルコール系繊維。
  3. 【請求項3】 環式多価アルコール誘導体としてカテコ
    ール誘導体を用いた請求項2に記載のポリビニルアルコ
    ール系繊維。
  4. 【請求項4】 ゴム接着性改良剤により処理されている
    ポリビニルアルコール系繊維束からなり、90℃におけ
    るtanδが0.12以上、かつ60〜120℃におい
    てtanδのピークを実質的に1つ有し、さらに破断伸
    度が10%以上であるデイップコード。
  5. 【請求項5】 環式多価アルコール誘導体を含有する請
    求項4に記載のデイップコード。
  6. 【請求項6】 環式多価アルコール誘導体がカテコール
    誘導体である請求項5に記載のデイップコード。
  7. 【請求項7】 破断伸度が12%以上であるポリビニル
    アルコール系繊維にゴム接着性改良剤を付与して乾燥
    し、次いで温度110〜200℃、張力0.1cN/dtex
    以上の条件で熱処理を施して、90℃におけるtanδ
    が0.12以上、かつ60〜120℃においてtanδ
    のピークを実質的に1つ有し、破断伸度が10%以上で
    あるデイップコードを製造する方法。
  8. 【請求項8】 ポリビニルアルコール系繊維にゴム接着
    性改良剤を付与する工程又は該付与工程より前のいずれ
    かの工程において、ポリビニルアルコール系繊維に環式
    多価アルコール誘導体を付与する請求項7に記載のデイ
    ップコードの製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項4〜6のいずれかに記載のデイッ
    プコードを用いてなるゴム補強材。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100785396B1 (ko) * 2005-09-02 2007-12-13 김영진 약재를 이용한 혼성주의 제조방법
JP2013028692A (ja) * 2011-07-28 2013-02-07 Unitika Ltd 脂肪族ポリエステル樹脂組成物ペレットおよびそれを成形してなる成形体
JP2015001031A (ja) * 2013-06-14 2015-01-05 株式会社クラレ ゴム補強用ポリビニルアルコール系繊維

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JP2013028692A (ja) * 2011-07-28 2013-02-07 Unitika Ltd 脂肪族ポリエステル樹脂組成物ペレットおよびそれを成形してなる成形体
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