JP3812747B2 - ゴム補強用ポリエステルコードおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明により得られたゴム補強用ポリエステルコードは、タイヤコードとりわけラジアルタイヤのベルト外層部に用いられるキャッププライコードに好適である。
タイヤコード用途では、高強度、高弾性率、低収縮率、接着性、耐疲労性といった特性が要求され、ポリエチレンテレフタレート系繊維は、性能、コスト面の優位性より、ラジアルタイヤのカーカスプライコードの主流となっているが、ベルト外層部に用いられるキャッププライコードにおいては、特に耐熱接着性が強く要求される為、接着性に優れるナイロン66が主流である。
例えば、カルボキシル末端基量が10μeq/g以下のポリエステル繊維にエポキシ化合物処理およびポリイソシアネート化合物処理およびRFL処理を施す方法が提案されている(特許文献2参照)が、ポリイソシアネート処理が有機溶剤系で行われることなどで実用的でない。
1.ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、処理液として(A)キャリアーを含む処理液、(B)ブロックドイソシアネート水溶液、(C)エポキシ化合物の分散液、(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液の4者を組合せて、1段または2段以上の多段処理より、該ポリエステル繊維材料に処理を施し、かつ少なくとも(A)キャリアーを含む処理液が配合された第1処理液で処理した後、少なくとも(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液が配合された第2処理液で処理し、最終段の第2処理液で処理した後、0.2cN/dtex以上に調整されたノルマライジング張力下で熱処理を施すことを特徴とするゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
2.ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、処理段数が2段であって、(A)キャリアーを含む処理液および(B)ブロックドイソシアネート水溶液が配合された第1処理液で処理した後、熱処理を施し、次いで(B)ブロックドイソシアネート水溶液および(C)エポキシ化合物の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液が配合された第2処理液で処理することを特徴とする上記1記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
3.ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、処理段数が3段であって、(A)キャリアーを含む処理液および(B)ブロックドイソシアネート水溶液が配合された第1処理液で処理した後、熱処理を施し、次いで(B)ブロックドイソシアネート水溶液および(C)エポキシ化合物の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液が配合された第2処理液で第2段および第3段の処理をすることを特徴とする上記1記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
4.ノルマライジング張力が0.3cN/dtex以上である、上記1〜3に記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
5.ノルマライジング張力が0.4cN/dtex以上である、上記1〜3に記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
6.ポリエステル繊維材料が、紡糸または延伸または後処理工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理したポリエチレンテレフタレート系繊維を撚糸したコード、およびこれを製織した織物である、上記1〜5に記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
7.上記1〜6に記載の方法で製造されたゴム補強用ポリエステルコードを用いたタイヤキャッププライコード。
8.処理コードの強度が4.5cN/dtex以上、2.0cN/dtex荷重時の伸度が5.0%以下であって、常温の剥離接着試験における、初期加硫後のゴム被覆率が90%以上、過加硫後のゴム被覆率が80%以上であるゴム補強用ポリエステルコード。
9.処理コードの強度が4.5cN/dtex以上、2.0cN/dtex荷重時の伸度が5.0%以下であって、150℃雰囲気下の熱時剥離接着試験における、初期加硫後のゴム被覆率が90%以上、過加硫後のゴム被覆率が80%以上であるゴム補強用ポリエステルコード。
10.処理コードの2.0cN/dtex荷重時の伸度が4.0%以下である、上記8〜9に記載のゴム補強用ポリエステルコード。
11.処理コードの2.0cN/dtex荷重時の伸度が3.5%以下である、上記8〜9に記載のゴム補強用ポリエステルコード。
12.K=T√Dで表される処理コードの撚係数Kが2500以下である、上記8〜11に記載のゴム補強用ポリエステルコード。
ここで、Tはコードの上撚り数(回/10cm)、Dはコードの基準繊度(dtex)
13.上記8〜12に記載のゴム補強用ポリエステルコードを用いたタイヤキャッププライコード。
本発明のポリエステルコードを構成するポリエステル繊維材料は、ポリエチレンテレフタレートまたは少量の第3成分を共重合したポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸して得られる延伸糸(原糸)を撚糸したコード(生コード)、あるいはそれを製織した織物である。
前記ポリエチレンテレフタレート原糸は、特公昭47−49768号公報で示されるような、未延伸糸条あるいは延伸糸条の段階でエポキシ化合物またはイソシアネート化合物などで表面活性化したポリエステル繊維よりなるものであってもよく、特に該ポリエチレンテレフタレート原糸が紡糸または延伸または後処理工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理されたものであることが好ましい。エポキシ化合物の好ましい例としては、グリセロール・ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル等の脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が挙げられる。更には、エポキシ化合物および硬化剤で処理された原糸を40℃〜80℃の温度で24時間〜240時間、加熱処理されたものが好ましい。
ここで言うキャリアーとは、その作用は十分明らかではないが、ポリエステル繊維内部に浸入拡散し、ポリエステル繊維の膨潤を高め、繊維内部構造を接着剤分子が入りやすいよう変化せしめる物質である。つまり、キャリアー作用を活用してブロックドイソシアネート水溶液、エポキシ化合物の分散液およびRFL溶液をポリエステル繊維により強固に結合させ耐熱接着性を向上させようとするものである。
(強伸度)
JIS−L1017 8.5(2002)に準拠し、20℃、65%RHの温湿度管理された恒温室で24時間以上放置後、引張試験機で、強伸度を測定した。
(繊度)
JIS−L1017 8.3(2002)に準拠し、20℃、65%RHの温湿度管理された恒温室で24時間以上放置後、繊度を測定した。
(引抜接着)
JIS−L1017 附属書1 3.1(2002)のTテスト(A法)を改良したHテストにより評価した。
処理コードをタイヤ用ゴム中に1cmの長さ埋め込み、140℃で40分(初期)または170℃で60分(過加硫)加硫した後、常温でゴムからコードを300mm/分で引き抜くのに要する力をN/cmで表したものである。
(剥離接着)
JIS−K6256 5.(1999)の「布と加硫ゴムの剥離試験」を改良した方法により測定した。図1に示す処理コードとタイヤ用ゴムを積層した試験片を作成し(コード−コード間の剥離面のゴム厚0.7mm、幅25mm、コードの打ち込み本数は33本)、140℃で40分(初期)または170℃で60分(過加硫)加硫した後、常温で試験片の切り込み上下部(図1のa部およびb部)をつまみ、引張試験機で50mm/分で剥離させるのに要する力をN/25mmで表したものである。更に、試験片をオーブン内で150℃で10分熱処理し、その雰囲気下(熱時)で同様に剥離力を測定した。
試験後、剥離面のコードのゴム被覆率を目視評価した。コードがゴムで完全に被覆されているものを被覆率100%、全くゴムが付いていない状態を0%とした。
(ゴム中強力劣化)
処理コードをゴム中に埋め込み、170℃で180分加硫した後、ゴムからコードを取り出して加硫後の強力を測定し、加硫前との保持率で表したものである。
固有粘度0.95dl/gのポリエチレンテレフタレートチップを、紡糸温度300℃で孔数190の紡糸口金より溶融吐出させ、320℃の加熱領域を通過させた後、20℃の冷却風により冷却固化させ、紡糸速度550m/分で引き取り、続いて、延伸倍率5.8倍で延伸し、エポキシ化合物であるソルビトール・ポリグリシジルエーテルを付与、3.0%弛緩させた後、巻き取った。こうして得られた1100dtex、190フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸(固有粘度0.88dl/g、強度8.3cN/dtex)を2本撚り合わせ、撚数47×47(t/10cm)の生コードを得た。
このコードを第1処理液中に浸漬させ、処理液の付いたコードを圧力調整した絞りロールで絞り、余剰な液を削除する。次いで、処理液を付与させたコードに4.0%のストレッチ率を与えながら、120℃のオーブンで56秒間乾燥、次いで、235℃のオーブンで45秒間熱処理させた。この時のホットストレッチ張力は11.0N/cord(0.50cN/dtex)であった。
引き続き、第2処理液中にコードを浸漬させ、エアーにより余剰な液を削除する。次いで、処理液を付与させたコードに−2.0%のリラックス率を与えながら、120℃オーブンで56秒間乾燥、次いで、235℃のオーブンで45秒間熱処理させた。この時のノルマライジング張力は5.6N/cord(0.25cN/dtex)であった。参考例1で用いた第1処理液の配合組成を(表1)、第2処理液の配合組成を(表2)に示す。
参考例1の処理において、第2処理液付与後の乾燥・熱処理時のリラックス率を−1.0%に変更した。この時のノルマライジング張力は8.1N/cord(0.37cN/dtex)であった。それ以外は参考例1と同様の生コード、処理液を用いてディップ処理を行った。
参考例1の処理において、第2処理液付与後の乾燥・熱処理時のリラックス率を0%に変更した。この時のノルマライジング張力は10.6N/cord(0.48cN/dtex)であった。それ以外は参考例1と同様の生コード、処理液を用いてディップ処理を行った。
参考例1の処理において、撚数33×33(t/10cm)の生コードを用い、第2処理液付与後の乾燥・熱処理時のリラックス率を0%に変更した。この時のノルマライジング張力は14.1N/cord(0.64cN/dtex)であった。それ以外は参考例1と同様の処理液を用いてディップ処理を行った。
参考例1の処理において、第2処理液の固形分濃度を14%に変更した。また、第2処理液付与後の乾燥・熱処理時のリラックス率を0%に変更した。更に引き続き、同14%の第2処理液を再び付与し、0%のリラックス率を与えながら乾燥・熱処理を行った。この時の最終第3段処理のノルマライジング張力は10.3N/cord(0.47cN/dtex)であった。それ以外は参考例1と同様の生コード、処理液を用いてディップ処理を行った。
参考例1の処理において、第2処理液付与後の乾燥・熱処理時のリラックス率を−4.0%に変更した。この時のノルマライジング張力は3.5N/cord(0.16cN/dtex)であった。それ以外は参考例1と同様の生コード、処理液を用いてディップ処理を行った。
実施例3の処理において、第2処理液付与後の乾燥・熱処理時のリラックス率を−6.0%に変更した。この時のノルマライジング張力は3.1N/cord(0.14cN/dtex)であった。それ以外は実施例3と同様の生コード、処理液を用いてディップ処理を行った。
ブロックドイソシアネート、エポキシを含まない、キャリアー+RFL処方の代表例として第1処理液に(表3)、第2処理液に(表4)に示す処理液を用い、それ以外は参考例1と同様の生コードを用い、同条件でディップ処理を行った。
参考例1、実施例1、2の比較より、ノルマライジング張力を上げることで、中間伸度が低下、すなわち高弾性率化している。
実施例3では、撚数を下げることで、同一リラックス条件下でのノルマライジング張力が上がり、中間伸度は一段と低下している。
実施例4では、第2処理液を2回繰り返し、計3段処理を行っており、同樹脂付着量で過加硫および/または熱時の接着性およびゴム中劣化後の強力保持率が、更に優れている。
比較例1、2では、ノルマライジング張力が低いため、中間伸度が上がり、弾性率が不足である。
比較例3では、耐熱接着性を考慮していない処理液を用いているため、明らかに過加硫および/または熱時の接着性が低下、かつゴム中劣化後の強力保持率が低下しており、耐熱性が不足である
Claims (11)
- ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、2段以上の多段処理により、該ポリエステル繊維材料に対し、(A)キャリアーを含む処理液および(B)ブロックドイソシアネート水溶液が配合された第1処理液で処理した後、熱処理を施し、次いで(B)ブロックドイソシアネート水溶液および(C)エポキシ化合物の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液が配合された第2処理液で処理し、最終段の第2処理液で処理した後、0.3cN/dtex以上に調整されたノルマライジング張力下で熱処理を施すことを特徴とするゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
- ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、処理段数が2段であって、(A)キャリアーを含む処理液および(B)ブロックドイソシアネート水溶液が配合された第1処理液で処理した後、熱処理を施し、次いで(B)ブロックドイソシアネート水溶液および(C)エポキシ化合物の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液が配合された第2処理液で処理することを特徴とする請求項1記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
- ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、処理段数が3段であって、(A)キャリアーを含む処理液および(B)ブロックドイソシアネート水溶液が配合された第1処理液で処理した後、熱処理を施し、次いで(B)ブロックドイソシアネート水溶液および(C)エポキシ化合物の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液が配合された第2処理液を2回繰り返し、第2段および第3段の処理をすることを特徴とする請求項1記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
- ノルマライジング張力が0.4cN/dtex以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
- ポリエステル繊維材料が、紡糸または延伸または後処理工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理したポリエチレンテレフタレート系繊維を撚糸したコード、およびこれを製織した織物である、請求項1〜4のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステルコードの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法で製造されたゴム補強用ポリエステルコードを用いたタイヤキャッププライコード。
- 処理コードの強度が4.5cN/dtex以上、2.0cN/dtex荷重時の伸度が4.0%以下であって、常温の剥離接着試験における、初期加硫後のゴム被覆率が90%以上、過加硫後のゴム被覆率が80%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の方法で製造されたゴム補強用ポリエステルコード。
- 処理コードの強度が4.5cN/dtex以上、2.0cN/dtex荷重時の伸度が4.0%以下であって、150℃雰囲気下の熱時剥離接着試験における、初期加硫後のゴム被覆率が90%以上、過加硫後のゴム被覆率が80%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の方法で製造されたゴム補強用ポリエステルコード。
- 処理コードの2.0cN/dtex荷重時の伸度が3.5%以下である請求項7または8に記載のゴム補強用ポリエステルコード。
- K=T√Dで表される処理コードの撚係数Kが2500以下である、請求項7〜9のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステルコード。
ここで、Tはコードの上撚り数(回/10cm)、Dはコードの基準繊度(dtex) - 請求項7〜10のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステルコードを用いたタイヤキャッププライコード。
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