JP4139980B2 - ゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゴムとの接着性が改善されたゴム補強用ポリエステル繊維、特にゴム配合物中に埋め込まれた状態で長時間高温に曝露された場合や高温雰囲気下での耐熱接着性が著しく改良されたゴム補強用ポリエステル繊維材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維は優れた力学特性、寸法安定性を有するが、ナイロン繊維に比べゴムとの接着性、特にゴム配合物中に埋め込まれた状態で長時間高温に曝露された場合の接着力低下が著しいという欠点を持つ。ゴム配合物中での接着力の低下の原因はゴム配合物中のアミンや水分の作用によるポリエステル繊維の劣化が原因であると言われており、この欠点を解消するため従来から多くの提案がなされてきた。例えば、特開昭51-70394号公報ではカルボキシル末端基量が10eq/106g 以下のポリエステル繊維にエポキシ化合物処理およびポリイソシアネート化合物処理およびRFL 処理を施す方法が提案されているが、ポリイソシアネート処理が有機溶剤系で行われることおよび3 段ディップ処理であることなどで実用的でない。特公昭60-31950号公報では少なくとも接着剤処理に先立って、キャリアー含有液による処理を行うことにより、ゴム中で長時間高温に曝露された場合の接着力低下が少ないポリエステル繊維材料の製造方法が提案されており、耐熱接着性に関しその効果を有するものの、強力、耐疲労性が悪化するという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、強力、耐疲労性を犠牲にすることなくゴム配合物中に埋め込まれた状態で長時間高温に曝露された場合や高温雰囲気下での耐熱接着性が著しく改良されたゴム補強用ポリエステル繊維材料およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段、即ち本発明の第1は、処理液は、(A)キャリアーを含む処理液、(B)ブロックドイソシアネート水溶液、(C)エポキシ樹脂の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)の混合液の4者からなり、ブロックドイソシアネートが、3官能以上のポリメチレンポリフェニルイソシアネートの混合体(ジフェニルメタンジイソシアネートが混合されていてもよい)であり、かつブロックドイソシアネート/ラテックスの固形分重量比が0.5/1〜3.0/1であり、ポリエステル繊維材料に含有される樹脂は、下式(1)または(2)を満足することを特徴とするゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料である。
式(1) 2.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm −1 吸収/2920cm −1 吸収)≦5.0
式(2) 8.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm −1 吸収/700cm −1 吸収)≦22.0
【0005】
第2は、キャリアーが、o−フェニルフェノール、p−クロルフェノール等のフェノール誘導体、モノクロルベンゼン、トリクロルベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類およびレゾルシンとp−クロルフェノールとホルムアルデヒドの反応生成物から選ばれたものである第1に記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料である。
【0006】
第3は、ブロックドイソシアネートは、ブロック剤成分の熱解離温度が100℃〜200℃である第1または2に記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料である。
【0007】
第4は、ポリエステル繊維材料が、紡糸または延伸工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理した後150℃〜260℃で熱処理して得られた糸条である第1〜3のいずれかに記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料である。
【0008】
第5は、ポリエステル繊維材料が、紡糸または延伸工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理した後150℃〜260℃で熱処理して得られた糸条を撚糸したコードである第1〜3のいずれかに記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料である。
【0009】
第6は、ポリエステル繊維材料が、紡糸または延伸工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理した後150℃〜260℃で熱処理して得られた糸条を撚糸してコードとし、これを製織した織物である第1〜3のいずれかに記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料である。
【0010】
第7は、下式(1)または(2)を満足する樹脂を3〜15重量%含有し、ガーレ式コード硬さが6000mg〜20000mgであるゴムとの接着性の改善されたゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料の製造方法であって、
ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、処理液として(A)キャリアーを含む処理液、(B)3官能以上のポリメチレンポリフェニルイソシアネートの混合体(ジフェニルメタンジイソシアネートが混合されていてもよい)であるブロックドイソシアネート水溶液、(C)エポキシ樹脂の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液の4者を、ブロックドイソシアネート/ラテックスの固形分重量比が0.5/1〜3.0/1となるように組み合わせて、1段または2段以上の多段により処理を施すことを特徴とする、ゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料の製造方法である。
式(1) 2.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm −1 吸収/2920cm −1 吸収)≦5.0
式(2) 8.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm −1 吸収/700cm −1 吸収)≦22.0
【0011】
第8は、前記の処理を2段階に分けて行い、第1段処理浴に処理液(A)および処理液(B)を、第2段処理浴に処理液(B)、処理液(C)および処理液(D)を含有させることを特徴とする、請求項7に記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるポリエステル繊維材料は、ポリエチレンテレフタレートまたは少量の第3 成分を共重合したポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸して得られる未延伸糸、それを延伸した延伸糸、それを数本撚り合わせた撚糸コード、あるいはそれを製織した織物である。該ポリエステル繊維材料は特公昭47-49768号公報で示されるような、未延伸糸条あるいは延伸糸条の段階でエポキシ化合物またはイソシアネート化合物などで表面活性化したポリエステル繊維よりなるものであってもよく、特に該ポリエステル繊維材料が紡糸または延伸工程で2 個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理した後150 ℃〜260 ℃で熱処理して得られた糸条、それを数本撚り合わせた撚糸コード、あるいはそれを製織した織物である場合には極めて優れた効果が得られる。
【0013】
本発明のディップ樹脂は、式(1)「2.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm−1吸収/2920cm−1吸収)≦ 5.0」または式(2)「8.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm−1吸収/700cm−1吸収)≦22.0」により特徴づけられる。ここで、1510cm−1の吸収は芳香族イソシアネートを用いたポリウレタンウレアの吸収であり、ウレタン結合、ウレア結合のN−H基の変角振動と芳香環の吸収が重なった吸収である。2920cm−1の吸収はC−Hの伸縮振動の吸収であり、主にスチレン・ブタジエン共重合体による吸収である。700cm−1の吸収は1置換ベンゼンのC−H面外変角の吸収であり、ポリスチレンによる吸収である。
【0014】
つまり、式(1) および式(2) は共にディップ液成分のイソシアネートに由来する吸収とラテックスに由来する吸収の吸光度比を表す式である。吸光度比が請求範囲よりより小さい、つまりイソシアネートに由来する成分が少ないと充分な耐熱接着性が確保できず、一方、請求範囲より大きい、つまりラテックスに由来する成分が少ないとコードが硬くなり強力低下、耐疲労性低下といった問題がある。
【0015】
また、繊維に対する樹脂付着量は3 〜15重量%であることが必要である。樹脂付着量が3 重量%より小さいと充分な耐熱接着性が確保できず、15重量%より大きいとコードが硬くなり強力低下や耐疲労性低下すること、またディップ粕の発生量が多くなるなど品位の点から好ましくない。更に、上に示した特徴を有するディップ樹脂を含浸した処理コードのガーレ式コード硬さが6000mg〜20000mg であるとき、強力、耐疲労性を犠牲にすることなくゴム配合物中に埋め込まれた状態で長時間高温に曝露された場合や高温雰囲気下での耐熱接着性が著しく改良されることを見出した。
【0016】
次に、その製造方法について説明する。
ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、処理液として(A) キャリアーを含む処理液、(B) ブロックドイソシアネート水溶液、(C) エポキシ樹脂の分散液および(D) レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL )混合液の4者を、ブロックドイソシアネート/ラテックスの固形分重量比が0.5 /1 〜3.0 /1 となるように組み合わせて、1 段または2段以上の多段により処理を施すことを特徴とする。
【0017】
強力、耐疲労性と耐熱接着性を両立させるには処理液(B) ブロックドイソシアネート水溶液と処理液(D)RFL中のラテックス成分の固形分重量比はブロックドイソシアネート/ラテックス=0.5/1 〜3.0 /1 とする必要がある。更には、ブロックドイソシアネート/ラテックス=1.0/1 〜2.5 /1 が好ましい。先に述べた様にブロックドイソシアネート成分が少ないと充分な耐熱接着性が確保できずラテックス成分が少ないとコードが硬くなり強力低下、耐疲労性低下といった問題がある。
【0018】
処理段数は1 段処理、2 段以上の多段処理のいずれでも良いが、第1 段の処理浴には少なくとも処理液(A) を、最終段の処理浴には少なくとも処理液(D) を含有することが好ましく、更には処理段数が2 段でありかつ、第1 段処理浴が処理液(A) および処理液(B) を、第2 段処理浴が処理液(B) 、処理液(C) および処理液(D) を含有することが好ましい。重量比は処理液(A) /処理液(B)=0.02/1 〜0.50/1 、更には0.04/1 〜0.20/1 が好ましい。
【0019】
本発明のキャリアーを含む処理液(A) とは、キャリアーを水に溶解、分散または乳化せしめたものであり、その中にはキャリアー以外の溶剤、分散液、乳化剤あるいは安定剤等の助剤や紡糸油剤等が含有されていてもよい。ここで言うキャリアーとは、その作用は十分明らかではないが、ポリエステル繊維内部に浸入拡散し、ポリエステル繊維の膨潤を高め、繊維内部構造を接着剤分子が入りやすいよう変化せしめる物質である。つまり、キャリアー作用を活用してブロックドイソシアネート水溶液、エポキシ樹脂の分散液およびRFL 溶液をポリエステル繊維により強固に結合させ耐熱接着性を向上させようとするものである。
【0020】
キャリアーとして好ましいものはp-クロルフェノール、o-フェニルフェノール等のフェノール誘導体類、モノクロルベンゼン、トリクロルベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類およびレゾルシンとp-クロルフェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物等が上げられる。好ましい例のうち特に好ましい例はレゾルシンとp-クロルフェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物である。処理液(D)RFLはレゾルシンとホルマリンを酸またはアルカリ触媒下で反応させて得られる初期縮合物とスチレンブタジエンラテックス、カルボキシル基含有スチレンブタジエンラテックス、スチレンブタジエンビニルピリジンラテックス、アクリロニトリルブタジエンラテックス等の1 種または2 種以上との混合水溶液であり、レゾルシン、ホルマリン、ラテックスの配合比率は公知技術のいづれを適用してもよい。
【0021】
特公昭60-31950号公報ではキャリアー、RFL 以外の成分としてブロックドイソシアネートおよび/またはエポキシの分散液が用いられるが、本発明者が鋭意検討した結果、処理液(B) ブロックドイソシアネート水溶液が3 官能以上、更に好ましくは4 官能以上ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(2 官能のジフェニルメタンジイソシアネートが混合されていてもよい)の混合体であるとき優れた耐熱接着性能が得られる。イソシアネート基を多官能化すると同樹脂付着量で比較してコードが硬くなることから樹脂の架橋密度が向上していることが示唆され、その結果、樹脂付着量を下げても優れた耐熱接着性が得られるという利点がある。
【0022】
ブロック剤成分の熱解離温度は100 ℃〜200 ℃であるもの、好ましい例としてフェノール類、ラクタム類、オキシム類等が挙げられる。熱解離温度が100 ℃より低いと乾燥段階でイソシアネートの架橋反応が開始し、繊維内部への浸入が不均一なものとなる。一方、200 ℃より高いと充分な架橋反応が得られず、いずれも耐熱接着性は低下する。耐熱接着性向上の作用は水溶性ブロックドイソシアネートを用いることでキャリアーによるイソシアネートの繊維内部への浸入拡散がより均一なものとなり、イソシアネートが耐熱接着力の低下の原因となるゴム配合物中のアミンの捕捉剤としてより有効に作用していること及び、多官能イソシアネートにより樹脂架橋密度が高くなり、アミンの繊維内部へ浸入に対するバリア性が向上することの相乗効果によりポリエステルの劣化が抑制された結果と考えられる。このことは過加硫後の強力保持率が極めて優れていることからも示唆される。
【0023】
耐疲労性向上の作用については明らかでないが、屈曲に対して樹脂層のキンクが観察されないことから、強固でありかつ靱性にも優れた樹脂架橋構造が形成されているものと予想される。処理液(D) エポキシ樹脂は特に限定されないが好ましくは2 官能以上の多官能エポキシを用いることで樹脂の架橋密度が高くなり、優れた耐熱接着性が得られる。好ましい例として脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を示す。かくして得られる本発明のポリエステル繊維材料は強力、耐疲労性を犠牲にすることなくゴム配合物中に埋め込まれた状態で長時間高温に曝露された場合や高温雰囲気下での耐熱接着性が著しく改良された画期的なものである。
【0024】
[実施例]
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお各物性値は下記の方法により測定したものである。
【0025】
(赤外吸収スペクトル)
処理コードをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に浸漬させ、ポリエステル成分を溶解させる。つづいて、固形分を分離しメタノールで洗浄後、乾燥する。こうして得られたディップ樹脂をガラス板上で偏平にし、顕微透過法により、IRスペクトルを測定した。
【0026】
(コード硬さ)
JIS-L1096 のガーレ法により評価した。ガーレ式ステフィネステスターの振子支点より下部2inch の位置に25g の荷重を取り付ける。コード長1.5inch の試料を可動アームのチャックに取り付け(チャックと振子の自由端間の試長は1.0inch となる)、可動アーム作動させ、試料が振子の自由端を離れる瞬間の目盛りをRGとし、次式よりコード硬さを求めた。コード硬さ(mg)= RG×98.9/ コードゲージ(inch)
【0027】
(引抜接着力)
JIS-L1017 のTテスト(A法)を改良したHテストにより評価した。
処理コードをゴム中に1cm の長さ埋め込み、140 ℃で40min (初期)または170 ℃で120min(過加硫)加硫した後、常温でゴムからコードを300mm/min で引き抜くのに要する力をkg/cm で表したものである。また、140 ℃で40min 加硫した後、試験片を150 ℃で30min 熱処理しその雰囲気下(熱時)で同様の評価を行った。
【0028】
(ゴム中強力劣化)
処理コードをゴム中に埋め込み、170 ℃で60min (初期)または170 ℃で180min(過加硫)加硫した後、ゴムからコードを取り出して加硫後の破断強力を測定し、加硫前との保持率で表したものである。
【0029】
(耐疲労性)
JIS-L1017 のディスク疲労強さ(グッドリッチ法)により評価した。
処理コード2本をゴム中に埋め込み、140 ℃で40min 加硫してゴムコンポジットを作成する。この試験片を圧縮12.5% 、伸張6.3%を1 サイクルとする変形を2600サイクル/minで50時間与えた後、ゴムからコードを取り出して疲労後の破断強力を測定し、該疲労試験前後の保持率で表したものである。
【0030】
[実施例1]
公知の方法より得られた1500デニール、190 フィラメントのポリエチレンテレフタレート糸条(固有粘度0.88dl/g、強度9.5g/d)を2本撚り合わせ、撚数39×39(t/10cm)の双糸コードを得た。このコードを第1処理液中に浸漬させ処理液の付いたコードを圧力を調整した絞りロールで絞り余剰な液を削除する。処理液を付与させたコードは次いで、120 ℃のオーブンで56秒間乾燥させた後、235 ℃のオーブンで1.6kg/cordの張力下で45秒間熱処理させた。引き続きを第2 処理液中にコードを浸漬させエアーにより余剰な液を削除する。次いで、第1処理と同様120 ℃オーブンで56秒乾燥させた後、235 ℃のオーブンで1.0kg/cordの張力下で45秒間熱処理させた。こうして得られたディップ処理コードの全樹脂付着率は9.2 重量%であった。実施例1で用いた処理液組成を表1 に示す。尚、ここで用いている薬品( B) は官能基数が約3 の水溶性ブロックドイソシアネートである。
【0031】
【表1】
【0032】
[実施例2]
原糸に公知の方法より得られたエポキシ化合物で表面活性化した1500デニール、190 フィラメントのポリエチレンテレフタレート糸条(固有粘度0.88dl/g、強度9.5g/d)を用い、それ以外は実施例1と同様のディップ処理を施した。処理コードの全樹脂付着率は10.2重量%であった。
【0033】
[実施例3 ]
実施例1 の処理液において、第1 処理液および第2 処理液中の薬品( B) を薬品( B')官能基数が約5 の水溶性ブロックドイソシアネートに変更し、かつ第1 処理液の固形分濃度を8%となるようの水で希釈した(処理液組成比一定)。それ以外は実施例2 と同様、エポキシ化合物で表面活性化した原糸を用いディップ処理を施した。処理コードの全樹脂付着率は5.5 重量%であった。
【0034】
[比較例1 ]
実施例1 の処理液において、第1 処理液および第2 処理液中の薬品( B) を薬品( B')官能基数が約5 の水溶性ブロックドイソシアネートに変更した。それ以外は実施例2 と同様、エポキシ化合物で表面活性化した原糸を用いディップ処理を施した。処理コードの全樹脂付着率は15.5重量%であった。
【0035】
[比較例2 ]
実施例1 の処理液において、第1 処理液の固形分濃度を8%となるようの水で希釈した(処理液組成比一定)。それ以外は実施例2 と同様、エポキシ化合物で表面活性化した原糸を用いディップ処理を施した。処理コードの全樹脂付着率は4.9 重量%であった。
【0036】
[比較例3 ]
実施例1 の処理液において、第1 処理液および第2 処理液中の薬品( B) を薬品( B")官能基数が2 の分散性ブロックドイソシアネートに変更した。それ以外は実施例2 と同様、エポキシ化合物で表面活性化した原糸を用いディップ処理を施した。処理コードの全樹脂付着率は6.1 重量%であった。
【0037】
[比較例4 ]
実施例1 の処理液において、第1 処理液は用いず、第2 処理液の固形分濃度を15% となるようの水で希釈した(処理液組成比一定)ものを1 段処理した。それ以外は実施例2 と同様、エポキシ化合物で表面活性化した原糸を用いディップ処理を施した。処理コードの全樹脂付着率は2.5 重量%であった。
【0038】
[比較例5 ]
ブロックドイソシアネート、エポキシを含まない、キャリアー+RFL 処方の代表例として表2 に示す処理液を用い、それ以外は実施例1と同様のディップ処理を施した。処理コードの全樹脂付着率は5.5 重量%であった。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例1 〜3 および比較例1 〜4 の処理条件とコード物性を表3 に示す。
本発明の実施例1 〜3 でエポキシ表面活性させた原糸を用いることで耐熱接着性が更に向上すること、イソシアネートを多官能化させることで、少ない樹脂付着量でも、優れた耐熱接着性が得られることが判る。
【0041】
【表3】
【0042】
実施例1 〜3 が比較例2 〜5 に対し耐熱接着性、ゴム中強力劣化に優れることは明らかでり、コードの化学的劣化が抑制されていることが判る。また、コード硬さが比較例2 〜5 より硬いにもかかわらず、同等レベルの強力、耐疲労性を維持していることは従来技術では予想できなかった本発明の新規な事項である。一方、比較例1 では耐熱接着性は満足できるがコードが極めて硬くなるため、強力、耐疲労性が低下している。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、強力、耐疲労性を犠牲にすることなくゴム配合物中に埋め込まれた状態で長時間高温に曝露された場合や高温雰囲気下での耐熱接着性が著しく改良されたゴム補強用ポリエステル繊維材料が提供される。
Claims (8)
- ポリエステル繊維材料を処理液で処理して、樹脂が3〜15重量%含有され、かつガーレ式コード硬さが6000mg〜20000mgであるゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料であって、
処理液は、(A)キャリアーを含む処理液、(B)ブロックドイソシアネート水溶液、(C)エポキシ樹脂の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)の混合液の4者からなり、ブロックドイソシアネートが、3官能以上のポリメチレンポリフェニルイソシアネートの混合体(ジフェニルメタンジイソシアネートが混合されていてもよい)であり、かつブロックドイソシアネート/ラテックスの固形分重量比が0.5/1〜3.0/1であり、ポリエステル繊維材料に含有される樹脂は、下式(1)または(2)を満足することを特徴とするゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料。
式(1) 2.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm −1 吸収/2920cm −1 吸収)≦5.0
式(2) 8.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm −1 吸収/700cm −1 吸収)≦22.0 - キャリアーが、o−フェニルフェノール、p−クロルフェノール等のフェノール誘導体、モノクロルベンゼン、トリクロルベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類およびレゾルシンとp−クロルフェノールとホルムアルデヒドの反応生成物から選ばれたものである請求項1に記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料。
- ブロックドイソシアネートは、ブロック剤成分の熱解離温度が100℃〜200℃である請求項1または2に記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料。
- ポリエステル繊維材料が、紡糸または延伸工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理した後150℃〜260℃で熱処理して得られた糸条である請求項1〜3のいずれかに記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料。
- ポリエステル繊維材料が、紡糸または延伸工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理した後150℃〜260℃で熱処理して得られた糸条を撚糸したコードである請求項1〜3のいずれかに記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料。
- ポリエステル繊維材料が、紡糸または延伸工程で2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理した後150℃〜260℃で熱処理して得られた糸条を撚糸してコードとし、これを製織した織物である請求項1〜3のいずれかに記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料。
- 下式(1)または(2)を満足する樹脂を3〜15重量%含有し、ガーレ式コード硬さが6000mg〜20000mgであるゴムとの接着性の改善されたゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料の製造方法であって、
ポリエステル繊維材料にゴムとの接着性を付与するに際して、処理液として(A)キャリアーを含む処理液、(B)3官能以上のポリメチレンポリフェニルイソシアネートの混合体(ジフェニルメタンジイソシアネートが混合されていてもよい)であるブロックドイソシアネート水溶液、(C)エポキシ樹脂の分散液および(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液の4者を、ブロックドイソシアネート/ラテックスの固形分重量比が0.5/1〜3.0/1となるように組み合わせて、1段または2段以上の多段により処理を施すことを特徴とする、ゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料の製造方法。
式(1) 2.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm −1 吸収/2920cm −1 吸収)≦5.0
式(2) 8.0≦IRスペクトルの吸光度比(1510cm −1 吸収/700cm − 1 吸収)≦22.0 - 前記の処理を2段階に分けて行い、第1段処理浴に処理液(A)および処理液(B)を、第2段処理浴に処理液(B)、処理液(C)および処理液(D)を含有させることを特徴とする、請求項7に記載のゴムとの接着性の改善されたポリエステル繊維材料の製造方法。
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