JP2001072677A - パロキセチン塩酸塩無水和物の乾燥方法 - Google Patents

パロキセチン塩酸塩無水和物の乾燥方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】大がかりな装置などを必要とせずに、イソプロ
ピルアルコールの存在下で結晶化されたパロキセチン塩
酸塩無水和物中のイソプロピルアルコールの残存量を短
時間で効率よく低減させ得るパロキセチン塩酸塩無水和
物の乾燥方法を提供すること。 【解決手段】パロキセチン化合物をイソプロピルアルコ
ールの存在下で塩化水素と反応させ、結晶化させ、得ら
れたパロキセチン塩酸塩無水和物を、実質的に水分を含
有しない雰囲気中で常圧以下で60℃以下の温度でイソ
プロピルアルコールの含有率が15重量%以下となるま
で乾燥させた後、該パロキセチン塩酸塩無水和物を20
mmHg以下に減圧された雰囲気中で80〜110℃の
温度でイソプロピルアルコールの含有率が5重量%以下
となるまでさらに乾燥させるパロキセチン塩酸塩無水和
物の乾燥方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パロキセチン塩酸
塩無水和物の乾燥方法に関する。さらに詳しくは、イソ
プロピルアルコールの残存量を低減させるパロキセチン
塩酸塩無水和物の乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】パロキセチン塩酸塩無水和物などのパロ
キセチン塩酸塩は、抗うつ剤として有用な化合物であ
る。
【0003】従来、パロキセチンをイソプロピルアルコ
ールの存在下で塩化水素と反応させることによって得ら
れたパロキセチン塩酸塩無水和物にはイソプロピルアル
コールが含まれているため、その結晶形が崩れないよう
にするために、80℃よりも低い温度に温度調節された
真空オーブンなどを用いた真空乾燥法によって乾燥され
ている。
【0004】しかしながら、前記乾燥法でパロキセチン
塩酸塩無水和物を乾燥させた場合、該パロキセチン塩酸
塩無水和物に含有されているイソプロピルアルコールを
十分に除去することが困難であるため、イソプロピルア
ルコールの含有量が5重量%以下となるように乾燥させ
るのに約100時間以上という長時間を要するという欠
点がある。
【0005】そこで、前記欠点を解消しうる方法とし
て、イソプロピルアルコールを含むパロキセチン塩酸塩
無水和物を単離し、真空下で乾燥し、遊離または非結合
のイソプロピルアルコールを除去した後、結合している
イソプロピルアルコールを水または超臨界二酸化炭素の
ような置換剤で置換する方法が提案されている〔特開平
8−245620号公報9欄1〜9行〕。
【0006】しかしながら、前記方法において、置換剤
として水(水蒸気)を用いた場合、パロキセチン塩酸塩
・ヘミ水和物への結晶変換を生じるおそれがあるととも
に、水(水蒸気)での置換後には、さらに置換された水
分を真空乾燥などにより除去しなければならないという
煩雑な操作を必要とするという欠点がある。また、置換
剤として、超臨界二酸化炭素を用いる場合、該超臨界二
酸化炭素を製造する際には、二酸化炭素を2500ps
i(170気圧)程度の高圧にする必要があるので〔同
20欄19〜38行〕、大がかりな超臨界二酸化炭素の
製造装置を要するという欠点がある。
【0007】前記したように、従来のパロキセチン塩酸
塩無水和物の乾燥法によれば、煩雑な操作や大がかりな
装置を必要とするため、生産効率面で劣るという欠点が
ある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術に鑑みてなされたものであり、大がかりな装置などを
必要とせずに、イソプロピルアルコールの存在下で結晶
化されたパロキセチン塩酸塩無水和物中のイソプロピル
アルコールの残存量を短時間で効率よく低減させること
ができるパロキセチン塩酸塩無水和物の乾燥方法を提供
することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、(A)
パロキセチン化合物をイソプロピルアルコールの存在下
で塩化水素と反応させ、結晶化させることによって得ら
れたパロキセチン塩酸塩無水和物を、実質的に水分を含
有しない雰囲気中で常圧以下で60℃以下の温度でイソ
プロピルアルコールの含有率が15重量%以下となるま
で乾燥させた後、(B)該パロキセチン塩酸塩無水和物
を20mmHg以下に減圧された雰囲気中で80〜11
0℃の温度でイソプロピルアルコールの含有率が5重量
%以下となるまでさらに乾燥させることを特徴とするパ
ロキセチン塩酸塩無水和物の乾燥方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の乾燥方法においては、前
記したように、(A)パロキセチン化合物をイソプロピ
ルアルコールの存在下で塩化水素と反応させ、結晶化さ
せることによって得られたパロキセチン塩酸塩無水和物
を実質的に水分を含有しない雰囲気中で常圧以下で60
℃以下の温度でイソプロピルアルコールの含有率が15
重量%以下となるまで乾燥させた後、(B)該パロキセ
チン塩酸塩無水和物を20mmHg以下に減圧された雰
囲気中で80〜110℃の温度でイソプロピルアルコー
ルの含有率が5重量%以下となるまでさらに乾燥させる
という、2段階の乾燥工程が採られている。
【0011】前記パロキセチン塩酸塩無水和物は、例え
ば、パロキセチン化合物をイソプロピルアルコールに溶
解させたのち、該パロキセチン化合物と塩化水素とを反
応させる方法などにより、パロキセチン化合物をイソプ
ロピルアルコールの存在下で塩化水素と反応させ、結晶
化させることによって得ることができる。このパロキセ
チン塩酸塩無水和物には、通常、イソプロピルアルコー
ルが30〜70重量%程度含まれている。
【0012】前記パロキセチン化合物としては、例え
ば、パロキセチン、N−ターシャリーブトキシカルボニ
ルパロキセチンなどがあげられる。
【0013】パロキセチン化合物との反応に使用される
塩化水素量は、通常、パロキセチン化合物1モルに対し
て1〜5モル程度であることが好ましい。
【0014】パロキセチン化合物の量は、特に限定がな
いが、通常、前記イソプロピルアルコール100重量部
に対して5〜60重量部程度であることが好ましい。
【0015】パロキセチン化合物と塩化水素との反応時
の温度は、通常、常温からイソプロピルアルコールの沸
点までの範囲内にあればよい。
【0016】本発明においては、前記イソプロピルアル
コールとしては、該イソプロピルアルコール単独であっ
てもよく、また本発明の目的が阻害されない範囲内で、
例えば、他の有機溶媒や有機酸などを含むものであって
もよい。
【0017】なお、反応時間には特に限定がなく、通
常、反応が終了するまで反応を行なえばよい。
【0018】かくして生成したパロキセチン塩酸塩無水
和物の反応溶液には、不純物が含まれている場合があ
る。その場合、かかる不純物を除去するために、前記反
応溶液に活性炭処理を施せばよい。
【0019】次に、前記反応溶液を徐冷することによ
り、比較的大きく、濾過性が良好なパロキセチン塩酸塩
無水和物を結晶として得ることができる。
【0020】かくして得られたパロキセチン塩酸塩無水
和物の結晶には、イソプロピルアルコールが含まれてお
り、このイソプロピルアルコールを含有するパロキセチ
ン塩酸塩無水和物の結晶は、熱的に非常に不安定であ
る。
【0021】例えば、前記イソプロピルアルコールを含
むパロキセチン塩酸塩無水和物の結晶を80℃以上の温
度で乾燥させた場合、含有されているイソプロピルアル
コールにより、そのパロキセチン塩酸塩無水和物(結
晶)の一部が溶解し、結晶形が崩れたり、所望の結晶形
を有しないようになる〔後述の比較例2参照〕。
【0022】本発明においては、まずこのイソプロピル
アルコールを含むパロキセチン塩酸塩無水和物を実質的
に水分を含有しない雰囲気中で常圧以下で60℃以下の
温度でイソプロピルアルコールの含有率が15重量%以
下となるまで乾燥させる。
【0023】本発明においては、かかる操作が採られて
いる点に、1つの大きな特徴がある。すなわち、前記操
作が採られていることにより、前記パロキセチン塩酸塩
無水和物を乾燥させる際には、従来のように、イソプロ
ピルアルコールを水(水蒸気)で置換するときにパロキ
セチン塩酸塩無水和物がパロキセチン塩酸塩・ヘミ水和
物に変換するおそれがなく、また超臨界二酸化炭素で置
換するときに超臨界二酸化炭素を発生させるための加圧
装置、圧力容器などの大がかりな設備を必要としないと
いう優れた効果が発現されるのみならず、前記操作を行
なった後に、引き続いて該パロキセチン塩酸塩無水和物
を80℃以上に加熱しても、その結晶形が崩れないとい
う優れた効果が発現される。
【0024】前記実質的に水分を含有しない雰囲気と
は、かかる雰囲気の相対湿度(20℃)が10%以下、
好ましくは5%以下であることを意味する。前記実質的
に水分を含有しない雰囲気としては、例えば、乾燥空気
をはじめ、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスな
どがあげられる。これらの中では、窒素ガス、アルゴン
ガスなどの不活性ガスは、実質的に水分を含有しない雰
囲気を容易に形成させることができるので、好ましい。
【0025】前記実質的に水分を含有しない雰囲気中で
パロキセチン塩酸塩無水和物を乾燥させる際には、該雰
囲気の圧力は常圧以下であればよい。乾燥方法として、
通風乾燥のように開放系での乾燥方法および減圧乾燥の
ような閉鎖系での乾燥方法がある。閉鎖系での乾燥を行
なう場合には、系内の圧力は、乾燥効率を高める観点か
ら、200mmHg以下、好ましくは100mmHg以
下、より好ましくは50mmHg以下の減圧となるよう
に調整することが好ましい。
【0026】パロキセチン塩酸塩無水和物を乾燥させる
際の温度は、パロキセチン塩酸塩無水和物の結晶形を保
つ観点から、60℃以下、好ましくは50℃以下とされ
る。なお、かかる温度は、乾燥効率を高める観点から、
15℃以上、好ましくは20℃以上であることが望まし
い。
【0027】前記パロキセチン塩酸塩無水和物の乾燥
は、該パロキセチン塩酸塩無水和物におけるイソプロピ
ルアルコールの含有率が15重量%以下、好ましくは1
3重量%以下となるまで行なわれる。なお、乾燥後にお
けるイソプロピルアルコールの含有率の下限値には特に
限定がない。しかしながら、次の加熱乾燥操作によれ
ば、パロキセチン塩酸塩無水和物の乾燥を迅速に行なう
ことができるので、乾燥に要する時間を短縮させる観点
から、イソプロピルアルコールの含有率が8〜15重量
%程度に達した段階で、次の加熱乾燥操作を行なうこと
が好ましい。
【0028】以上説明したように、パロキセチン塩酸塩
無水和物を実質的に水分を含有しない雰囲気中で常圧で
60℃以下の温度でイソプロピルアルコールの含有率が
15重量%以下となるまで乾燥させた場合には、意外な
ことに、その後、さらにパロキセチン塩酸塩無水和物を
80〜110℃という高温で乾燥させた場合であって
も、パロキセチン塩酸塩無水和物に結晶に変形が生じな
いという優れた効果が発現される。パロキセチン塩酸塩
無水和物におけるイソプロピルアルコールの含有率が1
5重量%以下となる前に乾燥を終了した場合には、引き
続いて80℃以上という高温で乾燥させたときにパロキ
セチン塩酸塩無水和物の結晶に変形が生じるようにな
る。
【0029】なお、乾燥操作を行なっている際のパロキ
セチン塩酸塩無水和物におけるイソプロピルアルコール
の含有率は、例えば、ガスクロマトグラフィー、核磁気
共鳴スペクトル(NMR)などによって確認することが
できる。
【0030】前記パロキセチン塩酸塩無水和物における
イソプロピルアルコールの含有率が15重量%以下とな
るまで乾燥させた後には、次に、パロキセチン塩酸塩無
水和物を20mmHg以下に減圧された雰囲気中でイソ
プロピルアルコールの含有率が5重量%以下となるまで
80〜110℃の温度でさらに乾燥させる。
【0031】本発明においては、このように、1段階目
の乾燥工程に引き続いて、2段階目の乾燥工程を行なう
点にも、1つの特徴がある。
【0032】前記したように、パロキセチン塩酸塩無水
和物は、80℃以上の温度でその結晶が変形する。
【0033】ところが、本発明においては、このよう
に、80℃よりも高い温度で乾燥が行なわれるにもかか
わらず、パロキセチン塩酸塩無水和物の結晶形が崩れ
ず、所望の結晶を得ることができるという、従来技術か
らではとても予期することができない優れた効果が発現
される。
【0034】このように優れた効果が発現されるのは、
おそらく以下の理由に基づくものと考えられる。
【0035】すなわち、一般にパロキセチン塩酸塩無水
和物の結晶の表面には、その重量に対して20〜60重
量%程度のイソプロピルアルコールが存在し、また該結
晶の内部には、その重量に対して10〜15重量%程度
のイソプロピルアルコールが取り込まれている。この状
態で、パロキセチン塩酸塩無水和物の結晶の温度が80
℃以上となるように調整した場合には、パロキセチン塩
酸塩無水和物の結晶の一部または全部が結晶表面に存在
するイソプロピルアルコールに溶解するため、該結晶形
が崩れるものと考えられる。
【0036】これに対して、本発明においては、前記1
段階目の乾燥操作が採られていることにより、その表面
に存在しているイソプロピルアルコールが除去される。
このように、表面に存在しているイソプロピルアルコー
ルをあらかじめ除去した場合には、結晶形が崩れるとさ
れている80℃以上という高温に加熱した場合であって
も、該結晶がイソプロピルアルコールに溶解することに
よって該結晶に変形が生じるようなことがなく、効率よ
く結晶の乾燥を行なうことができるものと考えられる。
【0037】なお、結晶の内部に取り込まれているイソ
プロピルアルコールを除去するために、ただ単に80℃
以上の温度に加熱するだけでは、本発明の目的は達成さ
れない。ところが、前記2段階目の乾燥操作は、20m
mHg以下に減圧された雰囲気中で行なわれるため、該
結晶の内部からその外部へイソプロピルアルコールが順
次効率よく排出されるものと考えられる。
【0038】前記1段階目の乾燥工程を終了したのち、
2段階目の乾燥工程を行なう前には、雰囲気温度を80
〜110℃の温度に調整した後にその雰囲気を20mm
Hg以下に減圧させてもよく、またその雰囲気を20m
mHg以下に減圧させた後に雰囲気温度を80〜110
℃の温度に調整してもよい。また、1段階目の乾燥工程
を終了したのち、80〜110℃にまで昇温する際に
は、多段階で昇温させてもよく、また連続して昇温させ
てもよい。
【0039】パロキセチン塩酸塩無水和物を乾燥させる
際の温度は、乾燥効率を高める観点から、80℃以上、
好ましくは90℃とされ、またパロキセチン塩酸塩無水
和物の融点が115〜120℃であることを考慮して、
110℃以下、好ましくは100℃以下とされる。
【0040】前記パロキセチン塩酸塩無水和物を乾燥さ
せる際の雰囲気の気圧は、乾燥時間を短縮させ、結晶形
を保つという観点から、できるだけ低いことが好まし
い。本発明においては、かかる観点から、前記雰囲気の
気圧は、20mmHg以下、好ましくは10mmHg以
下とされる。
【0041】なお、本発明においては、前記1段階目の
乾燥工程および前記2段階目の乾燥工程は、同一系内で
連続して行なうことが効率よく乾燥を行なう点で、好ま
しい。
【0042】以上のようにして乾燥を行なった場合に
は、パロキセチン塩酸塩無水和物の結晶形を崩すことな
く、比較的短時間でパロキセチン塩酸塩無水和物に含ま
れているイソプロピルアルコールの含有量を5重量%以
下にまで迅速に乾燥させることができる。なお、このよ
うに、イソプロピルアルコールの含有量が5重量%以下
となるまで乾燥を行なうのは、該パロキセチン塩酸塩無
水和物は、医薬品として好適に使用しうるものであり、
このような用途に対しては、溶媒の含有量はできるだけ
少ないことが望ましいからである。
【0043】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定される
ものではない。
【0044】製造例1 欧州特許出願公開第812827号明細書(1997
年)に記載の方法に準じて得られた〔(−)−(3S,
4R)−1−ターシャリブチルオキシカルボニル−4−
(4−フルオロフェニル)−3−(3,4−メチレンジ
オキシフェニル)オキシメチルピペリジン〕16.5g
をイソプロピルアルコール137mlに溶解させて得ら
れた溶液に、塩化水素を溶解させたイソプロピルアルコ
ールの溶液17.5ml(塩化水素濃度:20重量%)
を約70℃で滴下し、さらに活性炭0.8gを添加して
約15分間攪拌した。
【0045】次に、前記溶液から同温度で活性炭を濾過
により除去した後、得られた濾液を0〜5℃まで徐冷
し、さらに同温度で1時間攪拌し、パロキセチン塩酸塩
無水和物を晶析させ、窒素ガス気流下で濾取した。
【0046】得られたパロキセチン塩酸塩無水和物の結
晶には、イソプロピルアルコールが53.5重量%含ま
れていた。
【0047】実施例1 製造例1で得られたイソプロピルアルコール53.5重
量%を含むパロキセチン塩酸塩無水和物の結晶を室温下
(約20℃)で、2〜20mmHgの減圧下で12時間
乾燥し、イソプロピルアルコールの含有量を9.8重量
%に調整した。
【0048】次に、この結晶の温度を85〜90℃に
し、2〜20mmHgの減圧下で10時間乾燥させた。
乾燥後の結晶におけるイソプロピルアルコールの含有率
は2.4重量%であり、その結晶形を粉末X線回折及び
赤外吸収スペクトルによって調べたが、変形などは認め
られなかった。
【0049】以上の結果から、実施例1の方法によれ
ば、大がかりな装置などを必要とせずに、イソプロピル
アルコールを含有するパロキセチン塩酸塩無水和物の結
晶中のイソプロピルアルコールの残存量を22時間程度
の比較的短時間で効率よく低減させることができること
がわかる。
【0050】実施例2 製造例1で得られたイソプロピルアルコール53.5重
量%を含有するパロキセチン塩酸塩無水和物の結晶を室
温(約20℃)下で窒素ガス気流(相対湿度(20℃)
0.1%)中で24時間通気乾燥させた。その結果、パ
ロキセチン塩酸塩無水和物の結晶におけるイソプロピル
アルコールの含有率は12.6重量%であった。
【0051】次に、このパロキセチン塩酸塩無水和物の
結晶を1〜3mmHgの減圧下80℃で18時間乾燥
し、イソプロピルアルコール2.9重量%を含有するパ
ロキセチン塩酸塩無水和物の結晶が得られた。得られた
パロキセチン塩酸塩無水和物の結晶形を粉末X線回折及
び赤外吸収スペクトルによって調べたが、変形などは認
められなかった。
【0052】以上の結果から、実施例2の方法によれ
ば、大がかりな装置などを必要とせずに、イソプロピル
アルコールを含有するパロキセチン塩酸塩無水和物の結
晶中のイソプロピルアルコールの残存量を42時間程度
の比較的短時間で効率よく低減させることができること
がわかる。
【0053】実施例3 製造例1と同様の方法でパロキセチン塩酸塩無水和物を
製造したところ、該パロキセチン塩酸塩無水和物の結晶
1423.5gが得られた。この結晶には、イソプロピ
ルアルコールが59.3重量%含まれていた。
【0054】次に、このイソプロピルアルコールを含む
パロキセチン塩酸塩無水和物の結晶を50〜60℃の温
度で3〜150mmHgの減圧下で18時間乾燥させた
ところ、パロキセチン塩酸塩無水和物の結晶におけるイ
ソプロピルアルコールの含有量は、10.8重量%であ
った。
【0055】このパロキセチン塩酸塩無水和物の結晶の
温度を85〜110℃に調整し、1〜3mmHgの減圧
下で10時間乾燥させたところ、このパロキセチン塩酸
塩無水和物の結晶には、イソプロピルアルコールが0.
9重量%含まれていた。得られたパロキセチン塩酸塩無
水和物の結晶形を粉末X線回折及び赤外吸収スペクトル
によって調べたが、変形などは認められなかった。
【0056】以上の結果から、実施例3の方法によれ
ば、大がかりな装置などを必要とせずに、イソプロピル
アルコールの存在下で結晶化されたパロキセチン塩酸塩
無水和物中のイソプロピルアルコールの残存量を28時
間程度の比較的短時間で効率よく低減させることができ
ることがわかる。
【0057】実施例4 製造例1と同様の方法でパロキセチン塩酸塩無水和物を
製造した後、得られたパロキセチン塩酸塩無水和物の結
晶を含むイソプロピルアルコール溶液を圧迫濾過器(ド
リュックフィルター)で窒素ガスによる加圧濾過を施し
た。得られたパロキセチン塩酸塩無水和物の結晶26.
0kgには、イソプロピルアルコールが58.5重量%
含まれていた。
【0058】このイソプロピルアルコール58.5重量
%を含むパロキセチン塩酸塩無水和物の結晶を前記圧迫
濾過器内で50℃の温度で、10〜80mmHgの減圧
下で12時間乾燥し、イソプロピルアルコールの含有量
を13.1重量%に調整した。
【0059】その後、さらにパロキセチン塩酸塩無水和
物の結晶の温度を85℃に調整し、1〜3mmHgの減
圧下で約12時間乾燥し、パロキセチン塩酸塩無水和物
の結晶を乾燥させた。この乾燥させた結晶におけるイソ
プロピルアルコールの含有率は2.3重量%であった。
得られたパロキセチン塩酸塩無水和物の結晶形を粉末X
線回折及び赤外吸収スペクトルによって調べたが、変形
などは認められなかった。
【0060】以上の結果から、実施例4の方法によれ
ば、大がかりな装置などを必要とせずに、イソプロピル
アルコールの存在下で結晶化されたパロキセチン塩酸塩
無水和物中のイソプロピルアルコールの残存量を24時
間程度の比較的短時間で効率よく低減させることができ
ることがわかる。
【0061】比較例1 実施例2で得られたイソプロピルアルコール12.6重
量%を含む結晶を1〜3mmHg減圧下で70℃で実施
例2と同じ18時間乾燥させたが、イソプロピルアルコ
ールの含有率は9.6重量%であった。
【0062】このことから、比較例1の方法では、減圧
乾燥時の温度が実施例2よりも低いことにより、イソプ
ロピルアルコールの含有率を充分に低減させることがで
きないことがわかる。
【0063】比較例2 実施例1で得られたイソプロピルアルコール53.5重
量%を含むパロキセチン塩酸塩無水和物に90℃で54
〜85mmHgの減圧下で13時間乾燥を施したとこ
ろ、その結晶の一部が溶融し、結晶形が崩れていた。
【0064】このことから、比較例2においては、イソ
プロピルアルコールの含有率が15重量%以下となる前
に、80℃以上という高温で乾燥させたため、パロキセ
チン塩酸塩無水和物の結晶に変形が生じたことがわか
る。
【0065】
【発明の効果】本発明のパロキセチン塩酸塩無水和物の
乾燥方法によれば、大がかりな装置を必要とせずに、パ
ロキセチン塩酸塩無水和物に含まれているイソプロピル
アルコールの残存量を短時間で、しかも効率よく低減さ
せることができるという、優れた効果が奏される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河田 義弘 大阪市西淀川区歌島3丁目1番21号 住化 ファインケム株式会社総合研究所内 Fターム(参考) 4C063 AA01 BB08 CC81 DD10 EE01 4C086 AA04 BC21 GA02 GA07 GA12 GA13 GA16 NA20 ZA12

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)パロキセチン化合物をイソプロピ
    ルアルコールの存在下で塩化水素と反応させ、結晶化さ
    せることによって得られたパロキセチン塩酸塩無水和物
    を、実質的に水分を含有しない雰囲気中で常圧以下で6
    0℃以下の温度でイソプロピルアルコールの含有率が1
    5重量%以下となるまで乾燥させた後、(B)該パロキ
    セチン塩酸塩無水和物を20mmHg以下に減圧された
    雰囲気中で80〜110℃の温度でイソプロピルアルコ
    ールの含有率が5重量%以下となるまでさらに乾燥させ
    ることを特徴とするパロキセチン塩酸塩無水和物の乾燥
    方法。
  2. 【請求項2】 パロキセチン化合物がパロキセチンまた
    はN−ターシャリーブトキシカルボニルパロキセチンで
    ある請求項1記載のパロキセチン塩酸塩無水和物の乾燥
    方法。
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