JP3054704B1 - アルキニルメチルオキシカルボニル基で保護したアミノ基および水酸基の脱保護方法 - Google Patents

アルキニルメチルオキシカルボニル基で保護したアミノ基および水酸基の脱保護方法

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正一 楠本
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Abstract

【要約】 【課題】 選択的かつ効率的にアミノ基と水酸基を保護
する。 【解決手段】 アルキニルメチルオキシカルボニル基
を、アミノ基あるいは水酸基に結合して保護する。一
方、コバルトカルボニル錯体の存在下に、トリフルオロ
酢酸を使用させることにより、アミノ基あるいは水酸基
を遊離させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルキニルメチル
オキシカルボニル基で保護したアミノ基および水酸基の
脱保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多数の水酸基やアミノ基を有する複雑な
化合物を化学合成することは、それらの新たな機能の発
見に極めて重要である。合成を進める上で、種々の化学
変換や結合の形成反応を行う場合に、反応部位以外の水
酸基やアミノ基は、その過程で変化しないように、適当
な保護基によって「保護」しておく必要がある。しか
し、その後の合成段階において、その中の特定の水酸基
やアミノ基に結合を形成する必要が生じた場合には、そ
れらに結合した保護基を選択的、効率的に除去して「脱
保護」する必要がある。これらの保護、脱保護を自由
に、選択的に行って、複雑な化合物を合成するには、独
立に導入できて、必要に応じて温和な条件で互いに独立
に除去できる多種類の保護基が必要である。しかしなが
ら、この目的に適う十分な方法は得られていない。
【0003】
【発明が解決しようする課題】そこで、本発明は、水酸
基やアミノ基の新規な脱保護方法を提供し、これによっ
て、従来は難しかった多くの水酸基やアミノ基を有する
化合物の効率的な合成等を可能にすることを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、アルキニル
メチルオキシカルボニル誘導体を使用することにより、
以下の構成の本発明を完成した。 (1)アルキニルメチルオキシカルボニル基をアミノ基
あるいは水酸基に結合させて「保護」した後、Co2
(CO)8 等の金属錯体あるいは金属の存在下で、トリ
フルオロ酢酸等の強酸を作用させることにより、アミノ
基あるいは水酸基を遊離させて「脱保護」することを特
徴とする。 (2)「脱保護」に際して、Co2 (CO)8 を使用し
た場合には、アルキンコバルト錯体の形成を介してアミ
ノ基あるいは水酸基が遊離されることを特徴とする。 (3)「脱保護」に際して、Co2 (CO)8 をCH2
Cl2 等の非プロトン性溶媒に溶解させて作用させるこ
とを特徴とする。 (4)「保護」に際して、アルキニルメチルオキシカル
ボニル基がプロパルギルオキシカルボニル基であると好
ましい。 (5)上記の場合において、クロロギ酸プロパルギルを
作用させることにより、これに結合しているプロパルギ
ルオキシカルボニル基を使用することを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
下記の構造1で表されるクロロ炭酸アルキニルメチルを
アルコール2aまたはアミン2bと反応させると、相当
するアルキニルメチルオキシカルボニル誘導体3aまた
は3bとなって、それぞれの水酸基またはアミノ基が保
護される。3a、3bはトリフルオロ酢酸(TFA)を
始め種々の反応条件に安定であるが、コバルトカルボニ
ル錯体の存在下にTFAを作用させると、迅速かつ効率
よく脱保護され、元のアルコール2aまたはアミン2b
が再生される。
【0006】
【化1】
【0007】なお、化学式中、R、R1 、R2 、R
3 は、特に制限されない。好ましくは、Rは、水素、ア
ルキル基、フェニル基、トリメチルシリル基等である。
また、許容されるアルキニルメチルオキシカルボニル基
含有化合物を例示すると、クロロ炭酸アルキニルメチル
の他、ブロモ炭酸アルキニルメチル、ジアルキニルメチ
ルジカルボナート、スクシニミジルオキシ炭酸アルキニ
ルメチル等を挙げることができる。さらに、便宜上、2
aで示すアルコールは一価としたが、一価に限られず、
多価アルコールであってもよく、アミン2bも第二級ア
ミンに限られず、第一級アミンであっても、第三級アミ
ンであってもよい。例えば、R1 は、糖誘導体、アルキ
ル基等、飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖、環式の炭化水
素、およびこれらの誘導体を包含する。R2 およびR3
は、水素、アミノ酸誘導体、アルキル基等、飽和、不飽
和、直鎖、分岐鎖、環式の炭化水素、およびこれらの誘
導体を包含する。
【0008】また、アルキニルメチルオキシカルボニル
基の導入は、常法により容易に行えるが、好ましくは、
出発化合物およびピリジン等の塩基を溶媒に溶かし、ク
ロロ炭酸アルキニルメチルを加えて反応させ、生成物を
得る。
【0009】さらに、アルキニルメチルオキシカルボニ
ル基を脱離させて、遊離のアミノ基あるいは水酸基を得
るには、CH2 Cl2 等の非プロトン性の溶媒に溶解し
たCo2 (CO)8 等の金属錯体あるいは金属の存在下
で、TFA等の強酸を作用させるが、金属あるいは金属
錯体としては、Co2 (CO)8 の他、酢酸亜鉛、酢酸
銅亜鉛(共に酢酸溶媒中で亜鉛あるいは亜鉛銅として存
在)、等を使用でき、非プロトン性溶媒としては、CH
2 Cl2 の他、THF等を使用でき、強酸としては、T
FAの他には、HCl、HBr、CF3 SO3 H等を使
用できる。
【0010】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。実施例1において、クロロギ酸プロパルギル4
(176g(144 μl)、1.4847mmol)をピ
リジン(200μl、2.47mmol)、ジクロロメ
タン(3.0ml、46.8mmol)に溶かし、これ
を表1に示す出発化合物1(107mg、0.496m
mol)に氷冷下加え、その後:窒素雰囲気下、室温で
20分攪拌し、生成物5を100%の収率で得た。な
お、生成物の精製は、中圧シリカゲルカラムクロマトグ
ラフィーにより行った。実施例2において、出発化合物
2(127mg、0.386mmol)を用いた他は、
実施例1と同様にして生成物6を得た。さらに、実施例
3において、出発化合物3(165mg、0.342m
mol)を用いた他は、実施例1と同様にして生成物7
を得た。
【0011】クロロギ酸プロパルギルの調製の例 乾燥CH2 Cl2 (100ml)中にトリフォスゲン
(25.0g、84.2mmol)を溶解し、これに、
プロパルギルアルコール(14.7ml、252mmo
l)と乾燥CH2 Cl2 (100ml)中にピリジン
(20.4ml、252mmol)を溶解した溶液とを
0℃、3時間で滴下する。これを一晩、室温で攪拌して
混合し、これをシリカゲルのショートカラムに通して不
溶物を除去した。減圧下でCH2 Cl2 を除去した後、
蒸留より精製し、沸点58〜60℃の無色の液体(クロ
ロギ酸プロパルギル)を得た。
【0012】実施例1の生成物5を出発化合物5とし
て、実施例4において、表2記載の条件で反応させ、ア
ミノ基を遊離させた。具体的には、次のとおりである。
5%のTFAを含んだCH2 Cl2 中に出発化合物5
(32.9mg、126μmol)を溶解し、これに窒
素雰囲気下でCo2 (CO)8 (43.0mg、126
μmol)を添加する。これを室温で30分間攪拌した
後、NaHCO3 の飽和水溶液と酢酸エチルを添加し
た。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4 上で乾燥
し、真空中で濃縮し、生成物1(23.6mg、収率1
00%)を得た。ここで、TFAとCo2 (CO)8
添加順序を逆にすると、副生成物を生じ、好ましくな
い。なお、開裂したアルキンコバルト錯体は真空排気に
よって除去した。
【0013】実施例5は、出発化合物8(23.3m
g、31.2μmol)を用いた他は、実施例4と同様
にして、水酸基を遊離させた。一方、本発明にかかる保
護状態において、両化合物5、8は、室温で48時間、
単独のTFAに対して安定であった。また、他の保護基
は、本発明にかかる保護、脱保護の条件下で、安定であ
った。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】 このように、プロパルギルオキシカルボニル基は、アミ
ノ基および水酸基の保護基として優れていることがかわ
る。なお、本発明の保護基が結合して保護している状態
では、種々のルイス酸、m−クロロ過安息香酸による酸
化反応、BH3 ・HNMe2 −BF3 −Et2 Oを用い
る還元反応、HCl等に対して安定である。
【0016】
【発明の効果】従来から知られていたt−ブトキシカル
ボニル基等は、保護基として使用でき、TFAの作用で
迅速かつ効率よく除去できるが、本発明のアルキルメチ
ルオキシカルボニル基は、そのままではTFA等に対し
て安定で、酸性条件下での変換反応に対して、水酸基や
アミノ基を保護することができるにもかかわらず、必要
に応じてコバルトカルボニル等を作用させれば、同じT
FA等によって容易に除去して、水酸基やアミノ基を再
生することができる。この保護基を使用することによっ
て、糖質などの複雑な化合物の合成経路設計が大幅に自
由になる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07B 51/00,61/00 CAPLUS(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルキニルメチルオキシカルボニル基を
    アミノ基あるいは水酸基に結合させた後、金属または金
    属錯体の存在下で、強酸を作用させることにより、アミ
    ノ基あるいは水酸基を遊離させることを特徴とするアル
    キニルメチルオキシカルボニル基で保護したアミノ基お
    よび水酸基の脱保護方法。
  2. 【請求項2】 前記金属錯体がCo2 (CO)8 であ
    り、前記強酸がトリフルオロ酢酸であることを特徴とす
    る請求項1記載のアルキニルメチルオキシカルボニル基
    で保護したアミノ基および水酸基の脱保護方法。
  3. 【請求項3】 アルキンコバルト錯体の形成を介してア
    ミノ基あるいは水酸基が遊離されることを特徴とする請
    求項2記載のアルキニルメチルオキシカルボニル基で保
    護したアミノ基および水酸基の脱保護方法。
  4. 【請求項4】 Co2 (CO)8 を、非プロトン性溶媒
    の溶液として使用することを特徴とする請求項2または
    3記載のアルキニルメチルオキシカルボニル基で保護し
    たアミノ基および水酸基の脱保護方法。
  5. 【請求項5】 前記非プロトン性溶媒がCH2 Cl2
    あることを特徴とする請求項4記載のアルキニルメチル
    オキシカルボニル基で保護したアミノ基および水酸基の
    脱保護方法。
  6. 【請求項6】 アルキニルメチルオキシカルボニル基が
    プロパルギルオキシカルボニル基であることを特徴とす
    る請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のアルキニル
    メチルオキシカルボニル基で保護したアミノ基および水
    酸基の脱保護方法。
  7. 【請求項7】 プロパルギルオキシカルボニル基を、ク
    ロロギ酸プロパルギルから得ることを特徴とする請求項
    6記載のアルキニルメチルオキシカルボニル基で保護し
    たアミノ基および水酸基の脱保護方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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Tetrahedron Letters,Vol.29,No.6(1988)p.619−p.622

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