JP2001072462A - アルミナ磁器組成物 - Google Patents

アルミナ磁器組成物

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JP2001072462A
JP2001072462A JP31489599A JP31489599A JP2001072462A JP 2001072462 A JP2001072462 A JP 2001072462A JP 31489599 A JP31489599 A JP 31489599A JP 31489599 A JP31489599 A JP 31489599A JP 2001072462 A JP2001072462 A JP 2001072462A
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tio
phase
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alumina porcelain
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Hideko Fukushima
英子 福島
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 汎用の低純度アルミナ原料を用いて低損失
(高Q値)で、焼結性及び生産性を向上させたアルミナ
磁器組成物を提供すること。 【解決手段】 Mgの含有量がMgO換算で10wt%
以下、好ましくは0.2wt%未満で、且つTiの含有
量がTiO換算で0.2wt%以上、好ましくは0.
5wt%以上で10wt%以下、残部がAlおよ
び不可避不純物からなるアルミナ磁器組成物である。ま
た、このとき組織の一部にAlTiO相を有してお
り、このAlTiO相は粒界に析出し、不可避的不
純物からなる他の粒界相の一部を内包しているアルミナ
磁器組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルミナ磁器組成物
に関し、より詳しくはラジオ周波数(RF)帯域やマイ
クロ波帯域などの高周波帯域において高Q値を有するア
ルミナ磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】高周波帯域で用いられる回路基板やマイ
クロ波通信装置用部品では、伝送損失低減のため誘電損
失の小さなアルミナ磁器組成物が求められている。本来
アルミナ純度99.999%程度の所謂高純度アルミナ
原料は誘電損失の小さい材料である。しかしこれを前記
マイクロ波通信装置用部品等のアルミナ磁器組成物とし
て用いるには、焼結温度が1600℃と高温となり不都
合な問題が生じる。例えば1500℃を越える燒結温度
になるとより高機能の焼結炉が必要となり生産上、また
コスト的に好ましくない。また、原料自体の価格も高価
となり、昨今の高性能で小型且つ安価であることが強く
求められるマイクロ波通信装置用部品等には到底採用で
きない。
【0003】そこで、前記マイクロ波通信装置用部品等
には、アルミナ純度99.8%程度の安価な所謂汎用ア
ルミナ原料に、MgOあるいはTiOをそれぞれ単独
で微量添加して焼結温度を1400〜1500℃に下
げ、燒結性を向上させたアルミナ磁器組成物は一般的に
用いられている。MgO等の添加は焼結温度を下げるの
には効果を示すが、誘電損失の増大を招く要因となる。
その結果、このようなアルミナ磁器組成物は、高純度ア
ルミナ原料を用いたものと比較し誘電損失が著しく大き
く、実用に供するQ値を得られないという問題がある。
【0004】一方、従来、誘電損失を低下させQ値を高
めるアルミナ磁器組成物として、例えば特開平4−35
6922号公報には、アルカリ金属(Na O、K
O)の総含有量を150ppm以下に規制することによ
り、アルミナ磁器組成物の誘電損失(tanδ)を1×
10−4〜1×10−3、すなわちQ値を1000〜1
0000とすることが出来ると記載されている。
【0005】さらに、特開平8−59338号公報に開
示されたアルミナ磁器組成物によれば、同じくNa
O、KO換算のアルカリ金属の総含有量を100p
pm以下にすると共に、Mgの含有量をMgO換算で1
00ppm以下もしくは1000〜50000ppmと
特定範囲内に規制することによってQ値を10000以
上にすることが出来ると記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
特開平4−356922号公報に記載されたアルミナ磁
器組成物にしても、後者の特開平8−59338号公報
に記載されたアルミナ磁器組成物にしても、比較的高い
Q値を得ることを目的としており、いずれも先ずアルカ
リ金属(NaO、KO)の総含有量を100〜15
0ppm以下という極微量に規制することを必要として
いる。そのためには最初から高価な高純度アルミナ原料
を採用するか、また或いは汎用アルミナ原料を用いたと
しても前記アルカリ金属を厳密に除去する工程を余分に
設ける必要がある。よって、手間とコストがかかるとい
う問題がある。
【0007】従来、アルミナ磁器組成物における誘電損
失の増加には、アルミナ磁器組成物の粒界相及びアルミ
ナ結晶中の不純物の固溶量が関与寄与していると考えら
れ、低損失のアルミナ磁器組成物を得る為には前記粒界
相の生成を極力さけるように、また不純物の固溶を避け
るようにその生成原因となるアルカリ金属(NaO、
O)等の不純物の総量を規制した高純度のアルミナ
原料を用いることが一般的となっている。そのため、上
述のようにアルミナ磁器組成物の生産性や焼結性を損な
うという問題があり、結局、従来の低純度アルミナ原料
を用いながら低損失(高Q値)と低温度焼結性を兼ね備
えたアルミナ磁器組成物は無いのが実状であった。
【0008】そこで本発明は、高純度アルミナ原料を用
いることなく、汎用の低純度アルミナ原料を用いる場合
であっても低損失(高Q値)で、且つ焼結性及び生産性
を向上させることができるアルミナ磁器組成物を提供す
ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、Mgの含
有量がMgO換算で10wt%以下で、且つTiの含有
量がTiO換算で0.2wt%以上10wt%以下、
残部がAl相および不可避不純物からなるアルミ
ナ磁器組成物である。
【0010】第1の発明において、Mgの含有量がMg
O換算で0.2wt%以下であるときに特に好ましい効
果が現れ、さらに0.05wt%前後の含有量のときに
最も効果的である。また同時に添加するTiの含有量
は、好ましくはTiO換算で0.5wt%以上10w
t%以下であり、さらに好ましくは0.75wt%以上
5wt%以下である。これらの範囲内でMgとTiのバ
ランスをとり複合添加するものである。また、このと
き、このアルミナ磁器組成物の組織の一部にAlTi
相を有するのが好ましい。
【0011】第2の発明は、Alを主相とし、組
織の一部にAlTiO相を有するアルミナ磁器組成
物であって、X線回折パターンにて同定されるAl
相の(113)面回折強度I(Al)とAlTiO
相の(110)面回折強度I(AT)との比Xが、X
=0.2〜15%(ただしX=I(AT)/I(Al)
×100(%)の範囲としたアルミナ磁器組成物であ
る。
【0012】これら第1及び第2の発明のアルミナ磁器
組成物においては、AlTiO相が粒界に析出して
いることが良く、さらにこのときAlTiO相が不
可避的不純物からなる粒界相の少なくとも一部を内包し
ていることが望ましい。
【0013】第3の発明は、Alを主成分としM
g、Ti、不可避不純物を有するアルミナ磁器組成物で
あって、該アルミナ磁器組成物のAl相のa軸格
子定数と粉末X線回折図形標準データ集(JCPDSカ
ード No.46―1212)のAlのa軸格子
定数標準値との差Δaの値が、―0.003≦Δa<0
(単位:オングストローム)としたアルミナ磁器組成物
である。
【0014】そして上記した第1乃至第3の発明におい
て、測定周波数10GHzにおけるQ値が少なくとも8
50以上、通常で1000以上を有し、ほぼ850〜3
800程度のQ値を持ったアルミナ磁器組成物を得るこ
とが出来る。
【0015】本発明者は、アルミナ磁器組成物の誘電特
性に関し種々の不純物、添加物についてその影響を調査
したところ、先ずアルミナの焼結性を向上させるために
添加されるMgの含有量が一定の範囲内にある場合にQ
値が著しく減少することを知見した。すなわち、Mgの
含有量がMgO換算で0.2wt%以下であるとアルミ
ナ磁器組成物のQ値が小さくなり、特に0.05wt%
付近の場合にアルミナ磁器組成物のQ値は激減すること
を知見したものである。しかしながら、前記Mgの含有
量がMgO換算で0.2wt%以下例えば0.05wt
%であっても、TiをTiO換算で0.2wt%以上
10wt%以下含有することによって激減したアルミナ
磁器組成物のQ値が改善されることを見出したことから
本発明が想到された。言い換えれば上記した従来例で
は、アルカリ金属とMgOの含有量を特定範囲に規定す
ることによって誘電損失の低下を抑制し高Q値を得てい
たのに対し、本発明ではMgとTiを所定範囲で複合添
加することによって低純度アルミナ原料でありながらQ
値の改善効果を発揮せるものである。
【0016】即ち、低純度アルミナ原料において焼結温
度を抑制し焼結性を向上させるためにMgの添加は有効
なものであるが、含有量(以下MgO換算とする。)を
10wt%を越えてもその効果はなく、他方でQ値の減
少が生じるので10wt%以下とする必要がある。しか
し10wt%以下でも0.2wt%〜0.01wt%の
範囲では誘電損失が増大しQ値が激減する範囲であるこ
とから、この減少を食い止め逆に向上させる媒体として
Tiを複合添加してやることが有効なのである。ここで
含有量(以下TiO換算とする。)は0.2wt%未
満では焼結性の向上が期待できず、0.2wt%以上で
特に0.5wt%以上となると急速にQ値は改善され
る、それ以上増加してもQ値の改善効果は保たれたまま
であるが10wt%を越えるとQ値は低下し始めその効
果は見られなくなる。MgとTiを複合的に添加したこ
との作用については明らかではないが、MgOとTiO
は焼結性を向上させながら、AlTiOの生成を
助けアルミナ結晶内への不純物の固溶を抑制する働きが
あり、その結果Q値の改善に寄与しているものと考えて
いる。
【0017】つまり、本発明のアルミナ磁器組成物にお
いては、その組織の一部にAlTiOが生成してい
ることが一つの特徴である。通常、粒界相の生成は避け
るべきであるが、AlTiO相が粒界相に形成され
ることにより、例えばZrO 等の不可避不純物を包囲
あるいは包含する作用を発揮し、これによって粒界に閉
じこめられた不純物がアルミナ結晶内へ固溶することが
阻止され誘電損失の増加が抑制される。つまり不純物が
アルミナ結晶内へ固溶すると損失が増加しQ値が低下す
るのであるがこれを阻止することができる。また、同時
に粒成長が促進され、気孔が減少して緻密な焼結体とな
る。また気孔の減少は誘電率を向上させる結果となり好
ましい。以上のことよりAlTiO相の生成によっ
てQ値の改善と燒結性の向上を同時に促進させることが
できる。
【0018】次に第2の発明によれば、Al相の
(113)面回折強度I(Al)とAlTiO相の
(110)面回折強度I(AT)との比、X=I(A
T)/I(Al)×100は0.2〜15%である。面
回折強度の比は、相対的なAl 結晶とAlTi
結晶の存在量を表しているが、Al結晶に対
しAlTiO結晶が適度に存在することが面回折強
度の点からも好ましいのである。すなわち、Xが0.2
より小さいと燒結性に劣りQ値の改善効果が認められ
ず、15より大きくなるとQ値は劣化しやすい。
【0019】次に第3の発明によれば、Al相の
a軸格子定数とAlのa軸格子定数標準値との差
Δa(Å)の値が、―0.003≦Δa<0とした。こ
れは結晶構造と歪みに関与しているが、Mgや不純物の
一部はAl結晶中に固溶すると、結晶が歪みその
格子定数が変化すると考えられる。その結果Q値が劣化
するもので、標準値との差が―0.003より小さい場
合、またあるいは0以上であると850以上のQ値が得
られないのである。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明のアルミナ磁器組成物は、
例えばアルミナ純度99.9%以下の低純度アルミナ原
料粉末にMgO粉末及びTiO粉末をそれぞれ、Mg
O換算で10wt%以下、TiO換算で0.2wt%
以上10wt%以下添加し、純水と、イットリアによっ
て安定化されたジルコニアボールでボールミルにより粉
砕混合する。混合後のスラリーをスプレードライヤーに
より乾燥させ、解砕し、造粒した。この造粒粉末を金型
プレスで成形し、その後大気中にて、1400〜150
0℃で0.5〜4時間焼成することにより、得られる。
なお、粉砕混合後に、仮焼し、再度粉砕混合してもよ
い。
【0021】本発明のアルミナ磁器組成物では、高純度
アルミナ原料を用いなくてもよく、アルミナ純度が9
9.99%より低く、例えば99.9%程度、さらには
それ以下の99.8%以下の汎用アルミナ原料を用いて
も10GHzで850以上のQ値が得られ、かつ焼結温
度が下がり汎用の焼結炉を使用して生産性を向上させる
ことが可能である。
【0022】本発明のアルミナ磁器組成物で、Mg含有
量をMgO換算で10wt%以下としたのは、10wt
%より多くなると、Q値が850より小さくなるからで
ある。また、Ti含有量がTiO換算で0.2wt%
以上、10wt%以下含有するようにしたのは、0.2
wt%より少ないと焼結性が劣化し、Mg存在下でのQ
値の改善効果が見られず、10wt%より多くなるとM
g存在下でのQ値改善の効果が小さくなる為である。す
なわち、MgとTiの含有量を上記範囲内で複合添加と
することで、高Q値が得られるとともにアルミナ磁器組
成物の焼結性を向上させることができるのである。
【0023】本発明のアルミナ磁器組成物は、不純物を
極力含まないことが望ましいが、製造上の不可避不純物
の混入は避けられず、例えば、Zr,Y,Na,Fe,
Si,Ca,Ga,Cr等の不純物成分を含有していて
もよく、その含有量は酸化物換算で、それぞれZr:2
wt%以下、Y:0.2wt%以下、Na:0.2wt
%以下、Fe:0.05wt%以下、Si:0.02w
t%以下、Ca:0.02wt%以下、Ga:0.01
wt%以下、Cr:0.005wt%以下程度である。
これらの不純物が上記の含有量内であれば、Q値に与え
る影響は極めて小さい。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。先
ず、汎用の低純度アルミナ原料(純度99.5%、平均
粒径0.3μm)とMgO粉末(平均粒径0.1μ
m)、TiO粉末(平均粒径0.3μm)を表1の組
成となるようにそれぞれ秤量し、この混合粉末をY
安定化ZrOボール、純水、とともにポリポットに
投入し、20時間ボールミルにて粉砕混合した。混合後
のスラリーにポリビニルアルコールを1wt%加え、混
合撹拌した。このスラリーを90℃、大気中にてスプレ
ードライヤーにより乾燥し、造粒した。、この造粒粉末
を金型プレスで直径15mm、厚さ7.5mmに成形
し、その後大気中1400〜1600℃にて2時間焼結
した。出来上がった焼結体は試験用に直径10mm、厚
さ5mmに加工研磨して仕上げた。また、Q値はハッキ
・コールマン法にて測定した。そして一部試料について
CuKα線によるX線回折装置にて焼結体の結晶相を同
定するとともに、Al 相の格子定数を測定した。
【0025】また、予め前記汎用アルミナ原料について
組成分析し、不純物としてZr,Y,Fe,Si,C
a,Ga,Crを検出し、酸化物換算でそれぞれZrO
:0.6wt%,Y:0.2wt%,Fe
:0.15wt%,SiO:0.01wt%,Ca
O:0.01wt%,Ga:0.0025wt
%,Cr:0.001wt%含有していることを
確認した。
【0026】表1にアルミナ磁器組成物のQ値、比誘電
率εr、焼結体密度及び焼結温度を評価した結果を示
す。また、一例としてMgOを0.05wt%含む試料
についてTiOの含有量とQ値の関係を図5に、同じ
くTiOの含有量と比誘電率の関係を図6に、同じく
TiOの含有量と焼結体密度の関係を図7にそれぞれ
示す。尚、いずれも焼結温度は1400℃、1500
℃、1600℃の3種について行った結果を示してい
る。また、図8は原料に含まれるMgO量が及ぼすQ値
の影響を調べたものである。このように本例の低純度ア
ルミナ原料においてはMgOの含有量が0.01wt%
から0.2wt%の間でQ値が落ち込んでおり、特に
0.05wt%のときに極めてQ値が低減する特性を持
った原料であることがわかる。
【0027】
【表1】
【0028】さて、表1において試料はNo.1〜36
まで作製しており、試料No.の4〜15、20、2
1、23、24、26、27、30〜35は本発明に係
る実施例であり実施例Noを順次列記した。一方、試料
No.の1〜3、16〜19、22、25、28、2
9、36は比較例であり比較例Noを列記した。表1及
び図5よりこのアルミナ磁器組成物において、MgOが
10wt%以下で、かつTiをTiO換算で0.2w
t%以上10wt%以下含有すれば850以上のQ値が
得られることがわかる。アルミナは、MgOが0.05
wt%のときQ値が激減するのであるが、試料No1〜
No16より、TiOの含有量が増えるほどQ値は増
加し0.75wt%で最大値を示している。また、焼結
温度が高いほどQ値と比誘電率及び焼結体密度と共に増
加するが、1500℃以下で実用上問題ないQ値が得ら
れている。TiOの含有量の効果はその後も継続され
るが10wt%を越えるとQ値は減少する傾向を示す。
MgとTiは複合添加することで効果を示すが添加量の
バランスによってQ値も変動する。しかし概ねTiが無
添加の場合の4〜10倍程度のQ値が得られ、比誘電率
(εr)もほぼ一定の値となることが確認された。一
方、MgOは含有されているがTiOを含有しない試
料No19、22、25、29や10wt%超の試料N
o16や36ではQ値が850未満と小さく、この場合
は1500℃の焼結では十分なQ値が得られない。また
MgOのみ含有した試料No1〜3他においても十分な
Q値が得られなかった。
【0029】次に、表1の試料の一部についてX線回折
測定を行った。表2にX線回折測定(CuKα線)によ
るアルミナ磁器組成物のX線回折結果を示す。また図1
にはTiOを0.75wt%含有した試料No10(実
施例7)の顕微鏡写真と、図2にはTiOを含まない
試料No2.(比較例2)の顕微鏡写真を示す。尚、図
1及び図2はどちらも代表的な研磨面を走査型電子顕微
鏡装置(SEM)により5000倍で撮影したものであ
る。またX線回折結果から図1及び図2において、黒く
認識される領域はAl相、白く認識される領域は
ZrO、前記二つの領域の中間の色調で認識される領
域はAlTiO相であると同定した。尚、図の写真
では認識しずらいので図1に相当する模式図を図3に、
同じく図2に相当する模式図を図4に示す。そして理解
しやすくするためにアルミナ結晶粒界を一部点線で追加
している。
【0030】
【表2】
【0031】X線回折測定の結果、TiOを0.75
wt%以上含有すると、結晶粒界にAlTiO相が
明確に現れることが判明した。尚、0.75wt%未満
でもAlTiO相は生成されていると考えるが0.
5wt%より少ないものでは装置の精度上不明確であっ
た。またTiOを含まない試料では図4に示す様に、
不純物であるZrO等5が主相であるAl相1
の成長を妨げる様に分散して析出している。一方、Ti
を0.75wt%含有した試料(実施例7)では図
3に示すように、アルミナ磁器組成物の組織中にAl
TiO相2が現れ、このAlTiO相2は主相で
あるAl相1の結晶粒界4(点線で示す)、に沿
った粒界の三重点に不純物を取り込む様に析出してい
る。即ち、ここではZrO等からなる不純物相3の周囲
を包囲してAlTiO相2が生成している。これに
よって不純物がアルミナの主相内に固溶しないようにで
き誘電損失を抑制しQ値を高めることが出来る。また図
3試料の破面観察からAl相の平均粒径は約4μ
mであって、TiOを含まない図4試料の約3倍とな
り粒成長が促進され焼結温度が低くても緻密な組織が得
られることが確認されており、AlTiOによる焼
結性向上の効果が見られた。そして、表1、表2よりX
=0.2〜15%の範囲であれば850以上のQ値が得
られることがわかる。
【0032】次に、表3に上記実施例のアルミナ磁器組
成物のAl相の格子定数測定結果を示す。
【0033】
【表3】
【0034】格子定数測定の結果、TiOを含まない
試料のAl相の格子定数は、a軸およびc軸とも
に標準値よりかなり小さくなっており、したがって格子
歪が大きく生じている。この格子歪はAlに固溶
したMgO等の不純物によるものと考えられるが、Ti
を含有することにより格子定数が標準値に近くなり
格子歪は解消されQ値も増加することがわかった。a軸
についてこれを規定すると、―0.003≦Δa<0
(オングストローム)の範囲にあれば良く、表1、表3
よりΔaが―0.003より小さいと850以上のQ値
が得られなくなる。
【0035】
【発明の効果】以上のように本発明のアルミナ磁器組成
物によればでは、MgOとTiOを所定範囲内で含有
することによって、汎用の低純度アルミナ原料を用いて
も850以上の高Q値を得ることが出来るとともに、焼
結性及び生産性を向上させることができる。また、Al
相の(113)面回折強度I(Al)とAl
iO相の(110)面回折強度I(AT)との比X
が、X=0.2〜15%にあるアルミナ磁器組成物にお
いては、AlTiO相が適度に析出していることに
よって不純物の固溶を阻止し誘電損失の増加を抑制しQ
値の改善に効果がある。また、さらにアルミナ磁器組成
物のAl相のa軸格子定数と粉末X線回折図形標
準データ集のAlのa軸格子定数標準値との差Δ
a(Å)が、―0.003≦Δa<0にあるアルミナ磁
器組成物においては、格子歪みが抑えられており誘電損
失の増加を抑制しQ値の改善に効果がある。以上によっ
て、低純度アルミナ原料を用いて焼結性及び生産性が向
上し安価で、かつ高いQ値を持ったアルミナ磁器組成物
を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミナ磁器組成物のセラミック
材料組織写真の一例を示す図である。
【図2】本発明の比較例のアルミナ磁器組成物のセラミ
ック材料組織写真の一例を示す図である。
【図3】図1の組織写真の模式図を示す図である。
【図4】図2の組織写真の模式図を示す図である。
【図5】MgOを0.05wt%含む場合のTiO
含有量とQ値の関係を示す図である。
【図6】MgOを0.05wt%含む場合のTiO
含有量と比誘電率の関係を示す図である。
【図7】MgOを0.05wt%含む場合のTiO
含有量と焼結体密度の関係を示す図である。
【図8】実施例の試料原料に含まれるMgO量とQ値の
関係を示す図である。
【符号の説明】
1:Al相 2:AlTiO相 3:不純物(ZrO)相 4:結晶粒界
【手続補正書】
【提出日】平成12年7月14日(2000.7.1
4)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正内容】
【0009】第1の発明は、Mgの含有量がMgO換算
で10wt%以下で、且つTiの含有量がTiO換算
で0.2wt%以上10wt%以下、残部がAl
相および不可避不純物からなるアルミナ磁器組成物であ
る。ここで、Mgの含有量はMgO換算で8wt%以
下、さらに5wt%以下、さらには1wt%以下が望ま
しく、下限値側としては0.01wt%であり、望まし
くは0.02wt%、最も望ましくは0.05wt%で
ある。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】
【発明の実施の形態】本発明のアルミナ磁器組成物は、
例えばアルミナ純度99.9%以下の低純度アルミナ原
料粉末にMgO粉末及びTiO粉末をそれぞれ、Mg
O換算で10wt%以下、TiO換算で0.2wt%
以上10wt%以下添加し、純水と、イットリアによっ
て安定化されたジルコニアボールでボールミルにより粉
砕混合する。混合後のスラリーをスプレードライヤーに
より乾燥させ、解砕し、造粒した。この造粒粉末を金型
プレスで成形し、その後大気中にて、1400〜160
0℃で0.5〜4時間焼成することにより得られる。な
お、粉砕混合後に、仮焼し、再度粉砕混合してもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】本発明のアルミナ磁器組成物は、不純物を
極力含まないことが望ましいが、製造上の不可避不純物
の混入は避けられず、例えば、Zr,Y,Na,Fe,
Si,Ca,Ga,Cr等の不純物成分を含有していて
もよく、その含有量は酸化物換算で、それぞれZr:2
wt%以下、Y:0.2wt%以下、Na:0.2wt
%以下、Fe:0.05wt%以下、Si:0.02w
t%以下、Ca:0.02wt%以下、Ga:0.01
wt%以下、Cr:0.005wt%以下程度である。
本発明のアルミナ磁器組成物では、アルカリ金属の含有
量はおよそ0.02〜0.2wt%程度、好ましくは
0.02〜0.1wt%、さらに好ましくは0.04〜
0.1wt%程度含まれているものであるが、これらの
不純物が上記の含有量内であれば、Q値に与える影響は
極めて小さい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】また、予め前記汎用アルミナ原料について
組成分析し、不純物としてアルカリ金属、Zr,Y,F
e,Si,Ca,Ga,Crを検出し、酸化物換算でそ
れぞれNaO:0.05wt%,ZrO:0.6w
t%,Y:0.2wt%,Fe:0.15
wt%,SiO:0.01wt%,CaO:0.01
wt%,Ga:0.0025wt%,Cr
:0.001wt%含有していることを確認し
た。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正内容】
【0026】表1にアルミナ磁器組成物のQ値、比誘電
率εr、焼結体密度及び焼結温度を評価した結果を示
す。また、一例としてMgOを0.05wt%含む試料
についてTiOの含有量とQ値の関係を図5に、同じ
くTiOの含有量と比誘電率の関係を図6に、同じく
TiOの含有量と焼結体密度の関係を図7にそれぞれ
示す。尚、いずれも焼結温度は1400℃、1500
℃、1600℃の3種について行った結果を示してい
る。また、図8は原料に含まれるTiOが1.00w
t%の場合のMgO量が及ぼすQ値の影響を調べたもの
である。このように本例の低純度アルミナ原料において
はMgOの含有量が0.01wt%から0.2wt%の
間でQ値が落ち込んでおり、特に0.05wt%のとき
に極めてQ値が低減する特性を持った原料であることが
わかる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正内容】
【0027】
【表1】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正内容】
【0028】さて、表1において試料はNo1〜35ま
で作製しており、試料No.の4〜15、20、21、
23、24、26、27、30〜34は本発明に係る実
施例であり実施例Noを順次列記した。一方、試料N
o.の1〜3、16〜19、22、25、28、29、
35は比較例であり比較例Noを列記した。表1及び図
5よりこのアルミナ磁器組成物において、MgOが10
wt%以下で、かつTiをTiO換算で0.2wt%
以上10wt%以下含有すれば850以上のQ値が得ら
れることがわかる。アルミナはMgOが0.05wt%
のときQ値が激減するのであるが、試料No1〜No1
6より、TiOの含有量が増えるほどQ値は増加し
0.75wt%で最大値を示している。また、焼結温度
が高いほどQ値と比誘電率及び焼結体密度と共に増加す
るが、1500℃以下で実用上問題ないQ値が得られて
いる。TiOの含有量の効果はその後も継続されるが
10wt%を越えるとQ値は減少する傾向を示す。Mg
とTiは複合添加することで効果を示すが添加量のバラ
ンスによってQ値も変動する。しかし概ねTiが無添加
の場合の4〜10倍程度のQ値が得られ、比誘電率(ε
r)もほぼ一定の値となることが確認された。一方、M
gOは含有されているがTiOを含有しない試料No
19、22、25、29や10wt%超の試料No16
や35ではQ値が850未満と小さく、この場合は15
00℃の焼結では十分なQ値が得られない。またMgO
のみ含有した試料No1〜3他においても十分なQ値が
得られなかった。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正内容】
【0031】X線回折測定の結果、TiOを0.75
wt%以上含有すると、結晶粒界にAlTiO相が
明確に現れることが判明した。尚、0.75wt%未満
でもAlTiO相は生成されていると考えるが0.
5wt%より少ないものでは装置の精度上不明確であっ
た。またTiOを含まない試料では図4に示す様に、
不純物であるZrO等5が主相であるAl相1
の成長を妨げる様に分散して析出している。一方、Ti
を0.75wt%含有した試料(実施例7)では図
3に示すように、アルミナ磁器組成物の組織中にAl
TiO相2が現れ、このAlTiO相2は主相で
あるAl相1の結晶粒界4(点線で示す)、に沿
った粒界の三重点に不純物を取り込む様に析出してい
る。即ち、ここではZrO等からなる不純物相3の周
囲を包囲してAlTiO相2が生成している。これ
によって不純物がアルミナの主相内に固溶しないように
でき誘電損失を抑制しQ値を高めることが出来る。また
図3試料の破面観察からAl 相の平均粒径は約4
μmであって、TiOを含まない図4試料の約3倍と
なり粒成長が促進され焼結温度が低くても緻密な組織が
得られることが確認されており、AlTiOによる
焼結性向上の効果が見られた。そして、表1、表2より
X=0.2〜15%の範囲であれば850以上のQ値が
得られることがわかる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミナ磁器組成物の組織写真の
一例を示す図である。
【図2】本発明の比較例のアルミナ磁器組成物の組織写
真の一例を示す図である。
【図3】図1の組織写真の模式図を示す図である。
【図4】図2の組織写真の模式図を示す図である。
【図5】MgOを0.05wt%含む場合のTiO
含有量とQ値の関係を示す図である。
【図6】MgOを0.05wt%含む場合のTiO
含有量と比誘電率の関係を示す図である。
【図7】MgOを0.05wt%含む場合のTiO
含有量と焼結体密度の関係を示す図である。
【図8】実施例の試料原料にTiOを1.00wt%
含む場合のMgOの含有量とQ値の関係を示す図であ
る。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】符号の説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【符号の説明】 1:Al相 2:AlTiO相 3:不純物(ZrO)相 4:結晶粒界

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mgの含有量がMgO換算で10wt%
    以下で、且つTiの含有量がTiO換算で0.2wt
    %以上10wt%以下、残部がAl相および不可
    避不純物からなることを特徴とするアルミナ磁器組成
    物。
  2. 【請求項2】 Mgの含有量がMgO換算で0.2wt
    %以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミ
    ナ磁器組成物。
  3. 【請求項3】 Tiの含有量がTiO換算で0.5w
    t%以上10wt%以下であることを特徴とする請求項
    1又は2に記載のアルミナ磁器組成物。
  4. 【請求項4】 組織の一部にAlTiO相を有する
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のア
    ルミナ磁器組成物。
  5. 【請求項5】 Alを主相とし、組織の一部にA
    TiO相を有するアルミナ磁器組成物であって、
    X線回折パターンにて同定されるAl相の(11
    3)面回折強度I(Al)とAlTiO相の(11
    0)面回折強度I(AT)との比Xが、X=0.2〜1
    5%(ただしX=I(AT)/I(Al)×100
    (%))であることを特徴とするアルミナ磁器組成物。
  6. 【請求項6】 AlTiO相が粒界に析出している
    ことを特徴とする請求項4又は5に記載のアルミナ磁器
    組成物。
  7. 【請求項7】 前記アルミナ磁器組成物の結晶粒界に析
    出するAlTiO 相が不可避的不純物からなる他の
    粒界相の一部を内包していることを特徴とする請求項6
    に記載のアルミナ磁器組成物。
  8. 【請求項8】 Alを主成分としMg、Ti、不
    可避不純物を有するアルミナ磁器組成物であって、該ア
    ルミナ磁器組成物のAl相のa軸格子定数と粉末
    X線回折図形標準データ集(JCPDSカード No.
    46―1212)のAlのa軸格子定数標準値と
    の差Δaの値が、―0.003≦Δa<0(単位:オン
    グストローム)であることを特徴とするアルミナ磁器組
    成物。
  9. 【請求項9】 測定周波数10GHzにおけるQ値が8
    50以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいず
    れかに記載のアルミナ磁器組成物。
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