JP2001065318A - 内燃機関の動弁機構におけるアルミニウム合金製スプリングリテーナ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウム合金製のスプリングリテーナに
おけるインナーシムが嵌合される嵌合孔の摩耗を防止す
ることにより、がた付きをなくし、動弁系より発する騒
音を低減させる。 【解決手段】 アルミニウム合金製スプリングリテーナ
２の嵌合孔５に、硬質金属製のガイドリング１０を嵌着
し、このガイドリング１０内にインナーシム７を嵌合す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の動弁機
構に用いられるアルミニウム合金製のスプリングリテー
ナに関し、特に、上面に設けたインナーシム嵌合用の嵌
合孔の摩耗を防止しうるようにしたアルミニウム合金製
スプリングリテーナに関する。

【０００２】

【従来の技術】図８は、従来のスプリングリテーナを備
える内燃機関の動弁機構を示すもので、(01)はエンジン
バルブ、(02)は、エンジンバルブ(01)の軸端部に１対の
コッタ(03)(03)を介して止着されたアルミニウム合金製
のスプリングリテーナ、(04)は、シリンダーヘッド（図
示略）とスプリングリテーナ(02)との間に縮設されたバ
ルブスプリングである。

【０００３】スプリングリテーナ(02)の上面の中央部に
は、円形をなす嵌合孔(05)が、エンジンバルブ(01)と同
心的に設けられており、その下端には、嵌合孔(05)の内
径よりも若干小径をなすコッタ(03)を嵌合するための、
下方に向かって漸次縮径するテーパ孔(06)が連続して形
成されている。

【０００４】上記嵌合孔(05)には、耐摩耗性を有する鉄
等の硬質金属よりなる円盤状のインナーシム(07)が、そ
の下面がエンジンバルブ(01)の上端面に当接するように
して着脱可能に嵌合され、インナーシム(07)の上面は、
スプリングリテーナ(02)及びエンジンバルブ(01)の上端
部等を覆う有頂円筒形のタペット(08)の上部内底面に当
接している。

【０００５】有頂円筒状のタペット(08)の上面には、カ
ム(09)が摺接しており、カム(09)の回転によってタペッ
ト(08)を下方に押圧することにより、エンジンバルブ(0
1)が駆動されるようになっている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述のような、上面に
インナーシム(07)を備えるスプリングリテーナ(02)にお
いては、バルブスプリング(04)にサージングが発生した
り、動弁系の振動などにより、インナーシム(07)が嵌合
孔(05)内において、上下又は回転方向に摺動することが
ある。

【０００７】これが繰り返し発生すると、硬質のインナ
ーシム(05)に比して柔らかいアルミニウム合金製よりな
るスプリングリテーナ(02)の嵌合孔(05)の内周面が、次
第に摩耗するようになる。その結果、インナーシム(05)
と嵌合孔(05)との間に隙間が生じ、がた付きが発生し
て、動弁系より発する機械的騒音が大きくなる。

【０００８】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたも
ので、インナーシムが嵌合される嵌合孔の摩耗を防止す
ることにより、がた付きをなくし、動弁系より発せられ
る機械的騒音を低減しうるようにした、内燃機関の動弁
機構におけるアルミニウム合金製スプリングリテーナを
提供することを目的としている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明によると、上記課
題は、次のようにして解決される。 (１) エンジンバルブの軸端部に、バルブスプリングの
上端を受支しうるように止着され、かつ中央部上面に上
下の面がそれぞれバルブ駆動部材とエンジンバルブの軸
端とに当接するインナーシムを嵌合するための嵌合孔を
備えるアルミニウム合金製スプリングリテーナにおい
て、前記嵌合孔に、前記インナーシムが嵌合可能な硬質
金属製のガイドリングを嵌着する。

【００１０】(２) 上記(１)項において、ガイドリング
の下端縁に、内向フランジを連設する。

【００１１】(３) 上記(１)項において、嵌合孔の上端
縁を、ガイドリングの上端に向かってかしめる。

【００１２】(４) 上記(１)項において、嵌合孔の内周
面に雌ねじを形成するとともに、ガイドリングの外周面
に、前記雌ねじに螺合する雄ねじを形成して、ガイドリ
ングを嵌合孔内に螺着する。

【００１３】(５) 上記(１)項において、ガイドリング
を、平面視ほぼＣ字形をなすとともに、その外径が嵌合
孔の内径よりも若干大きく、かつ径方向に弾性変形可能
な材料よりなるものとし、このガイドリングを縮径方向
に弾性変形させて、嵌合孔に嵌合する。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の第１の実施形態を
備える内燃機関の動弁機構について、図１及び図２を参
照しながら説明する。なお、図８に示した従来例におけ
ると同様の部材には、従来例の符号から冒頭の「０」を
除いた符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略す
る。

【００１５】本実施形態のスプリングリテーナ(２)の嵌
合孔(５)には、図２に拡大して示すような、鉄等の硬質
金属よりなる薄肉円筒形のガイドリング(10)が、回転不
能かつ上下方向に移動不能として圧嵌されている。

【００１６】ガイドリング(10)における筒壁(11)の下端
縁には、環状かつ短寸の内向フランジ(12)が連設され、
嵌合孔(５)にガイドリング(10)を嵌合した際、内向フラ
ンジ(12)は嵌合孔(５)の底面に当接するようになってい
る。

【００１７】インナーシム(７)は、ガイドリング(10)内
に着脱可能に適当なクリアランスを設けて嵌合され、嵌
合孔(５)と直接接触しないようになっている。従って、
スプリングリテーナ(２)がアルミニウム合金製であって
も、嵌合孔(５)が摩耗することはなく、従来のような隙
間が発生することもない。

【００１８】また、長期間の使用により、万一、ガイド
リング(10)と嵌合孔(５)との接触面が摩耗して、ガイド
リング(10)が嵌合孔(５)から上方へ抜け出ようとして
も、内向フランジ(12)がインナーシム(７)の下面に当接
するので、ガイドリング(10)が嵌合孔(５)から抜け出す
ことはない。

【００１９】なお、ガイドリング(10)が嵌合孔(５)に対
して相対的に回転したり、上下動を起こすのを確実に防
止するため、ガイドリング(10)を嵌合孔(５)に対して接
着することもある。また、上記内向フランジ(12)は、必
ずしも環状である必要はなく、円周方向に分割された複
数の小片からなっていてもよい。

【００２０】次に、本発明の第２の実施形態を備える内
燃機関の動弁機構について、図３及び図４を参照しなが
ら説明する。なお、上記第１の実施形態と同じ部材に
は、同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略す
る。

【００２１】この第２の実施形態のガイドリング(21)
は、第１の実施形態におけるような内向フランジ(12)を
具備しない薄肉円筒状に形成されている。図４に拡大し
て示すように、ガイドリング(21)は、全体をスプリング
リテーナ(２)の嵌合孔(５)内にがたなく嵌合したのち、
嵌合孔(５)の上端を、下端に尖鋭なコーキング刃を有す
るポンチにより押圧してかしめることにより、嵌合孔
(５)内に回転及び上下動不能として嵌着されている。

【００２２】第２の実施形態によっても、インナーシム
(７)はガイドリング(21)内に嵌合されているので、嵌合
孔(５)の内周面が摩耗することはなく、またガイドリン
グ(21)の嵌合孔(５)よりの抜け出しを確実に防止でき
る。

【００２３】図５は、本発明の第３の実施形態を示す。
なお、第１の実施形態と同じ部材には、同じ符号を付す
に止めて、その詳細な説明は省略する。

【００２４】この実施形態では、嵌合孔(５)の内周面に
雌ねじ(31)を形成するとともに、ガイドリング(32)の外
周面に、雄ねじ(33)を形成し、雄ねじ(33)を雌ねじ(31)
に螺合させるようにして、ガイドリング(32)を嵌合孔
(５)内にねじ込むことにより、抜け止めされている。な
お、ガイドリング(32)の上面における円周方向の２カ所
に、着脱工具を差し込むための下向きの凹部(34)を設け
ておけば、ガイドリング(32)の着脱を容易に行いうる。

【００２５】第３の実施形態においても、上述と同様の
作用効果を奏することができる。

【００２６】最後に、本発明の第４の実施形態を、図６
及び図７を参照しながら説明する。なお、第１の実施形
態と同じ部材には、同じ符号を付すに止めて、その詳細
な説明は省略する。

【００２７】第４の実施形態のガイドリング(41)は、径
方向に弾性変形可能な硬質金属により、その外径が嵌合
孔(５)の内径よりも若干大きい、平面視ほぼＣ字形をな
すように形成されており、縮径方向に弾性変形させた嵌
合孔(５)内に挿入したのち、解放すれば、ガイドリング
(41)は、弾性反発力により拡径して、その外周面が嵌合
孔(５)の内周面に圧接することにより、抜け止めされ
る。

【００２８】第４の実施形態においても、上述と同様の
作用効果を奏しうるとともに、ガイドリング(41)をきわ
めて簡単に嵌合孔(５)に装着することができる。

【００２９】なお、図示は省略するが、円筒状としたガ
イドリングを、単に圧入により嵌合孔(５)内に嵌着して
もよい。この際、ガイドリングの外周面を粗面とするな
どして、抜け止めを図るようにするのがよく、また、本
発明はロッカーアームタイプの動弁機構にも適用しう
る。

【００３０】

【発明の効果】(Ａ) 請求項１記載の発明によれば、硬
質金属製のガイドリングを嵌合孔に嵌着し、このガイド
リング内にインナーシムを嵌合したので、インナーシム
と嵌合孔とが直接接触することはなく、従って、アルミ
ニウム合金製のスプリングリテーナであっても、嵌合孔
が摩耗することはない。その結果、従来のように嵌合孔
とインナーシムとの間に異常に大きい隙間が発生して、
がた付きが生じ、機械的な騒音が大きくなるのが防止さ
れる。

【００３１】(Ｂ) 請求項２記載の発明によれば、万
一、ガイドリングと嵌合孔との接触面が摩耗して、ガイ
ドリングが嵌合孔から上方へ抜け出ようとしても、底片
がインナーシムの下面に当接するので、ガイドリングが
嵌合孔から抜け出すことはない。

【００３２】(Ｃ) 請求項３〜５記載の発明によれば、
いずれも、ガイドリングは嵌合孔内に強力に嵌着される
ので、ガイドリングの嵌合孔よりの抜け出しを確実に防
止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施形態を備える動弁機構の要
部の縦断正面図である。

【図２】同じく、ガイドリングの拡大斜視図である。

【図３】本発明の第２の実施形態を備える動弁機構の要
部の縦断正面図である。

【図４】同じく、スプリングリテーナにガイドリングを
嵌合した状態の拡大縦断正面図である。

【図５】本発明の第３の実施形態を示す拡大縦断正面図
である。

【図６】本発明の第４の実施形態を示す拡大縦断正面図
である。

【図７】同じく、ガイドリングの拡大斜視図である。

【図８】従来のスプリングリテーナを備える動弁機構の
要部の縦断正面図である。

【符号の説明】

(１)エンジンバルブ (２)スプリングリテーナ (３)コッタ (４)バルブスプリング (５)嵌合孔 (６)テーパ孔 (７)インナーシム (８)タペット (９)カム (10)ガイドリング (11)筒壁 (12)内向フランジ (21)ガイドリング (31)雌ねじ (32)ガイドリング (33)雄ねじ (34)凹部 (41)ガイドリング

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンバルブの軸端部に、バルブスプ
   リングの上端を受支しうるように止着され、かつ中央部
   上面に上下の面がそれぞれバルブ駆動部材とエンジンバ
   ルブの軸端とに当接するインナーシムを嵌合するための
   嵌合孔を備えるアルミニウム合金製スプリングリテーナ
   において、 前記嵌合孔に、前記インナーシムが嵌合可能な硬質金属
   製のガイドリングを嵌着したことを特徴とする、内燃機
   関の動弁機構におけるアルミニウム合金製スプリングリ
   テーナ。
2. 【請求項２】 ガイドリングの下端縁に、内向フランジ
   を連設した、請求項１記載の内燃機関の動弁機構におけ
   るアルミニウム合金製スプリングリテーナ。
3. 【請求項３】 嵌合孔の上端縁を、ガイドリングの上端
   に向かってかしめた、請求項１記載の内燃機関の動弁機
   構におけるアルミニウム合金製スプリングリテーナ。
4. 【請求項４】 嵌合孔の内周面に雌ねじを形成するとと
   もに、ガイドリングの外周面に、前記雌ねじに螺合する
   雄ねじを形成して、ガイドリングを嵌合孔内に螺着し
   た、請求項１記載の内燃機関の動弁機構におけるアルミ
   ニウム合金製スプリングリテーナ。
5. 【請求項５】 ガイドリングを、平面視ほぼＣ字形をな
   すとともに、その外径が嵌合孔の内径よりも若干大き
   く、かつ径方向に弾性変形可能な材料よりなるものと
   し、このガイドリングを縮径方向に弾性変形させて、嵌
   合孔に嵌合した、請求項１記載の内燃機関の動弁機構に
   おけるアルミニウム合金製スプリングリテーナ。