JP2001064260A - 新規な錫錯体およびそれを構成成分とする有機電界発光素子 - Google Patents

新規な錫錯体およびそれを構成成分とする有機電界発光素子

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JP2001064260A
JP2001064260A JP23789199A JP23789199A JP2001064260A JP 2001064260 A JP2001064260 A JP 2001064260A JP 23789199 A JP23789199 A JP 23789199A JP 23789199 A JP23789199 A JP 23789199A JP 2001064260 A JP2001064260 A JP 2001064260A
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Hideji Iwasaki
秀治 岩崎
Morio Taniguchi
彬雄 谷口
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 低電圧で駆動可能でかつ高効率で発光を得る
ことが可能な有機電界発光層を構成する錫錯体、および
該錫錯体を構成成分とする有機電界発光層を有する有機
電界発光素子の提供。 【解決手段】 相対する陽極および陰極と、これらの間
に挟持された少なくとも1層の有機電界発光層より構成
される有機電界発光素子において、該有機電界発光層が
下記一般式(I) (式中、Xは置換基を有していてもよいアルキル基また
はアリール基を表し、R 1、R2、R3、R4、R5および
6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有し
ていてもよいアルキル基、アラルキル基、アルケニル
基、アルコキシル基、アリール基もしくは複素環基を表
すか、または互いに隣接するものがその結合する2つの
炭素原子と一緒になって環構造を形成していてもよ
い。)で示される錫錯体を構成成分とする層であること
を特徴とする有機電界発光素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な錫錯体およ
び該錫錯体を構成成分とする有機電界発光層を有する有
機電界発光素子(以下、これを有機EL素子と略称する
ことがある)、すなわち有機錫錯体からなる有機発光層
に電界をかけて光を放出する薄膜型デバイスに関する。
本発明により提供される有機電界発光素子は、例えば次
世代フラットパネルディスプレイの表示素子として有用
である。
【0002】
【従来の技術】従来、薄膜型の電界発光素子(以下、こ
れをEL素子と略称することがある)は、電界発光層を
構成する成分として、無機材料のII−VI族化合物半
導体であるZnS、CaS、SrSなどに、発光中心で
あるMnや希土類元素(Eu、Ce、Tb、Smなど)
を発光材料としてドープしたものが一般的であった。し
かし、かかるEL素子は、50〜1000Hzでの交
流電界でのみ発光する素子であり、かつ200V近くの
高い駆動電圧を必要とすることから使用可能な場所が限
定される、発光材料が限定されることから発光色が少
なく(特に青色が問題)、フルカラー化が困難であり、
また、電力を必要とする割に発光効率が低く表示が暗い
ため用途が限定される、周辺駆動回路などが高価にな
り製品全体のコストが高い、という問題点を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、低電圧でかつ
高効率で発光を得ることが可能なEL素子用の材料とし
て、近年、上記およびの問題点の解決を意識し、発
光層として有機化合物を用いた新しい電界発光素子の開
発が行われ、亜鉛錯体、アルミニウム錯体などの種々の
金属錯体が提案されてきた。例えば、Tangらが開発
した、芳香族ジアミンからなる正孔輸送層と8−ヒドロ
キシキノリンのアルミニウム錯体からなる発光層を設け
た有機EL素子では、それ以前のアントラセンなどの単
結晶を用いた有機EL素子に比較して発光効率の点で大
幅に改善が認められ、比較的高い輝度が得られている
[アプライド・フィジクス・レターズ(Appl.Ph
ys.Lett.)、第51巻、913頁(1987
年)参照]。しかしながら、Tangらが開発した有機
EL素子にしても、ディスプレイとして使用できる程度
の発光色が得られてはいないし、また、この有機EL素
子自身を安定に駆動させるためには依然として20Vの
高い駆動電圧が必要であり、駆動電圧が実用化可能なレ
ベルまで低下したとは言えない。さらに該有機EL素子
の作製には、高真空、高電圧などのエネルギーを要し、
かつ工程の複雑な蒸着成膜法のみが有効であるなどの問
題点がある。しかして、本発明の目的は、上記の問題点
をすべて解決し、低電圧で駆動可能でかつ高効率で発光
を得ることが可能な有機電界発光層を構成する錫錯体、
および該錫錯体を構成成分とする有機電界発光層を有す
る有機EL素子を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記の
目的は、(1)下記一般式(I)
【0005】
【化3】
【0006】(式中、Xは置換基を有していてもよいア
ルキル基またはアリール基を表し、R 1、R2、R3
4、R5およびR6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原
子、置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル
基、アルケニル基、アルコキシル基、アリール基もしく
は複素環基を表すか、または互いに隣接するものがその
結合する2つの炭素原子と一緒になって環構造を形成し
ていてもよい。)で示される錫錯体(以下錫錯体(I)
と略称する)、および(2)相対する陽極および陰極
と、これらの間に挟持された少なくとも1層の有機電界
発光層より構成される有機電界発光素子において、該有
機電界発光層が錫錯体(I)を構成成分とする層である
ことを特徴とする有機電界発光素子を提供することによ
り達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】上記一般式中、R1、R2、R3
4、R5およびR6が表すハロゲン原子としては、例え
ばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げ
られる。
【0008】X、R1、R2、R3、R4、R5およびR6
表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、
プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチ
ル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシ
ル基、シクロへキシル基などのアルキル基が挙げられ
る。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、
かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、
臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ
基、エトキシ基などのアルコキシル基;アセチル基、プ
ロピオニル基、ベンゾイル基などのアシル基、メチルチ
オ基、エチルチオ基などのアルキルチオ基、シアノ基な
どが挙げられる。
【0009】X、R1、R2、R3、R4、R5およびR6
表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル
基、アントラニル基などが挙げられる。これらのアリー
ル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基として
は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原
子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基などのアル
キル基; メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル
基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などの
アシル基、メチルチオ基、エチルチオ基などのアルキル
チオ基、シアノ基などが挙げられる。
【0010】R1、R2、R3、R4、R5およびR6が表す
アラルキル基としては、例えばベンジル基などが挙げら
れ、アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニ
ル基、イソプロペニル基、ジメチルアリル基、スチリル
基などが挙げられ、アルコキシル基としては、例えばメ
トキシ基、エトキシ基などが挙げられ、複素環基として
は、例えばピリジル基、イソキノリル基、フリル基など
が挙げられる。これらのアラルキル基、アルケニル基、
アルコキシル基または複素環基は置換基を有していても
よく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素
原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチ
ル基、エチル基などのアルキル基; メトキシ基、エト
キシ基などのアルコキシル基;アセチル基、プロピオニ
ル基、ベンゾイル基などのアシル基、メチルチオ基、エ
チルチオ基などのアルキルチオ基、シアノ基などが挙げ
られる。
【0011】R1、R2、R3、R4、R5およびR6の互い
に隣接するものがその結合する2つの炭素原子と一緒に
なって形成していてもよい環構造としては、例えばシク
ロペンテニル環、シクロヘキセニル環、シクロオクテニ
ル環などの脂肪族環;ベンゼン環、ナフタレン環などの
芳香族環;ジヒドロフラン環、フラン環、ピロール環、
ピロリン環、デヒドロジオキソラン環、ピラゾール環、
ピラゾリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、イソ
オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、
トリアゾール環などの5員環の複素環;ピラン環、ジヒ
ドロピラン環、ピリジン環、ジヒドロピリジン環、テト
ラヒドロピリジン環、デヒドロジオキサン環、デヒドロ
モルホリン環、ピリダジン環、ジヒドロピリダジン環、
ピリミジン環、ジヒドロピリミジン環、テトラヒドロピ
リミジン環、ピラジン環、ジヒドロピラジン環などの6
員環の複素環などが挙げられる。
【0012】本発明の錫錯体(I)は、8−オキシキノ
リン構造を有する配位子を有していることが特徴であ
る。錫錯体(I)の具体例としては、例えばジ(8−オ
キシキノリン)ジn−ブチル錫[X=n−ブチル基、R
1=R2=R3=R4=R5=R6=水素原子]、ジ(8−オ
キシキノリン)ジフェニル錫[X=フェニル基、R1
2=R3=R4=R5=R6=水素原子]、ジ(8−オキ
シキナルジン)ジフェニル錫[X=フェニル基、R1
メチル基、R2=R3=R4=R5=R6=水素原子]など
を挙げることができる。
【0013】錫錯体(I)は、一般式(II)
【0014】
【化4】
【0015】(式中、R1、R2、R3、R4、R5および
6は前記定義のとおりである。)で示される8−ヒド
ロキシキノリン(以下、8−ヒドロキシキノリン(I
I)と略称する)と有機錫化合物を塩基性物質の存在下
に反応させることによって合成することができる。
【0016】有機錫化合物としては、例えばジメチル錫
ジクロリド、ジエチル錫ジクロリド、ジプロピル錫ジク
ロリド、ジn−ブチル錫ジクロリド、ジフェニル錫ジク
ロリド、ジメチル錫ジブロミド、ジエチル錫ジブロミ
ド、ジプロピル錫ジブロミド、ジn−ブチル錫ジブロミ
ド、ジフェニル錫ジブロミド、ジメチル錫ジヨージド、
ジエチル錫ジヨージド、ジプロピル錫ジヨージド、ジn
−ブチル錫ジヨージド、ジフェニル錫ジヨージドなどの
4価の有機錫化合物のジハロゲン化物またはこれらの無
水物もしくは水和物を用いるのが好ましい。有機錫化合
物の使用量は、8−ヒドロキシキノリン(II)に対し
て0.01〜10当量の範囲が好ましく、経済性、操作
性の観点からは0.1〜1当量の範囲がより好ましい。
【0017】塩基性物質としては、例えば水酸化リチウ
ム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ
金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウムなど
のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カ
リウムなどのアルカリ金属炭酸塩;アンモニア;トリエ
チルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンな
どの3級アミンなどが挙げられる。塩基性物質の使用量
は、8−ヒドロキシキノリン(II)に対して0.01
〜10当量の範囲が好ましく、経済性および目的生成物
の選択性の観点からは0.1〜1当量の範囲がより好ま
しい。
【0018】反応は、溶媒の存在下に行うのが好まし
い。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさな
い限り特に制限はなく、例えばメタノール、エタノー
ル、プロパノールなどのアルコール;ジエチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、
1,4−ジオキサンなどのエーテル;ヘキサン、ヘプタ
ン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレ
ン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、
クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素な
どが挙げられる。溶媒の使用量は、有機錫化合物に対し
て0.1〜100重量倍が好ましく、反応効率、選択性
および経済性の観点からは1〜10重量倍の範囲がより
好ましい。
【0019】反応は、−100℃〜200℃の範囲で行
うことができるが、操作性、安全性などの観点からは−
10℃〜160℃の範囲が好ましく、20℃〜140℃
の範囲がより好ましい。反応時間は、有機錫化合物、8
−ヒドロキシキノリン(II)、塩基性物質および溶媒
の種類や量、反応温度などによって変動しうるが、通常
0.1〜10時間の範囲である。
【0020】反応は、有機錫化合物と8−ヒドロキシキ
ノリン(II)を溶媒に溶解させ、この溶液に塩基性物
質を加えて所定温度で攪拌することにより行う。反応は
空気中で実施してもよいが、窒素、アルゴンなどの不活
性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0021】このようにして得られた錫錯体(I)は、
有機化合物の単離・精製において通常行われる操作で単
離・精製することができる。例えば、反応液を濃縮して
溶媒などの低沸成分を留去し、得られた残留物をジメチ
ルホルムアミド−メタノール、ジメチルホルムアミド−
水、ジメチルスルホキシド−メタノール、ジメチルスル
ホキシド−水、THF−メタノール、1,4−ジオキサ
ン−メタノールなどの極性溶媒の混合溶媒から再結晶す
ることによって精製する。さらに、得られた錫錯体
(I)を、例えばトレインサブリメーションと呼ばれる
僅かな気流下での熱勾配による結晶化温度差を利用した
昇華精製手段を用いて、より使用目的に合致した純度に
まで精製することができる。
【0022】なお、8−ヒドロキシキノリン(II)
は、例えば一般式(III)
【0023】
【化5】
【0024】(式中、R4、R5およびR6は前記定義の
とおりである。)で示されるアミノフェノールと一般式
(IV)
【0025】
【化6】
【0026】(式中、R1、R2およびR3は前記定義の
とおりである。)で示されるα,β−不飽和カルボニル
化合物を、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸のような酸
性物質およびベンゾキノン、ナフトキノン、クロラニル
のような脱水素剤の存在下で反応させることにより容易
に合成することができる[ジャーナル オブ ヘテロサ
イクリック ケミストリー(Journal of H
eterocyclic Chemistry)、第3
0巻、17頁(1993年)参照]。
【0027】次に、本発明の有機EL素子について説明
する。本発明の有機EL素子は、相対する陽極および陰
極と、これらの間に挟持された少なくとも1層の有機電
界発光層より構成され、該有機電界発光層が錫錯体
(I)を構成成分とする層であることを特徴とする。か
かる有機電界発光層以外に、必要に応じて正孔輸送層お
よび/または電子輸送層が存在していてもよく、さらに
電子輸送層および/または正孔輸送層と電極の間に注入
層が存在していてもよい。このような多層構造を有する
有機EL素子として、陽極/正孔輸送層/有機電界発光
層/陰極、陽極/正孔輸送層/有機電界発光層/電子輸
送層/陰極などを例示することができる。また、錫錯体
(I)を構成成分とする有機電界発光層自体がこれらの
機能を果たすことも可能である。すなわち、有機電界発
光層、正孔輸送層および電子輸送層は、それらを構成す
る材料として錫錯体(I)を含む。
【0028】有機電界発光層は、正孔と電子を再結合さ
せて電子的に中性化させ、光としてエネルギーを外部に
取り出すという役割を有している。有機電界発光層に
は、量子化学的性質として固体状態での蛍光強度の高い
物質が用いられ、かかる物質として、従来はトリス(8
−オキシキノリル)アルミニウムや、キナクリドン、ク
マリンなどの蛍光色素などが用いられているが、本発明
の錫錯体(I)を構成成分とする有機電界発光層を用い
ることにより、低電圧で安定に駆動させることができ、
かつ高効率で発光を得られる有機EL素子を作製するこ
とができる。錫錯体(I)を構成成分とする有機電界発
光層は、10〜1000nmの範囲の膜厚で使用するの
が好ましく、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパ
ッタリング法、イオンプレーティング法、コーティング
法などの通常の薄膜形成方法で形成することができる。
また、必要に応じて、有機電界発光層における励起効率
を高め、有機EL素子の安定性を図るために、N−メチ
ルキナクリドン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチ
ル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラ
ンなどの蛍光量子収率の高い物質を発光補助材料とし
て、有機電界発光層総重量に対して0.01〜10重量
%の範囲でドープして使用することもできる。
【0029】陽極に用いる材料としては、有機EL素子
の陽極として一般的な厚さである1〜1000nmの薄
膜を形成することができ、光を取り出すために光透過性
を有している材料であれば特に限定されるものではな
く、例えば酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム
などの導電性金属酸化物;金、銀、クロムなどの金属;
ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質;ポリチオフェ
ン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマー
などが挙げられる。これらの中でも、酸化錫インジウム
を使用することが特に好ましい。陽極に用いる材料が有
する電気抵抗は、有機EL素子への通電性が確保でき
て、発光の維持に十分な電流が供給できる範囲内であれ
ば、素子の消費電力の観点から低抵抗であることが好ま
しく、例えば500Ω/□以下であればよく、10Ω/
□以下であるのがより好ましい。陽極の厚みは上記抵抗
値に合わせて任意に選択可能であるが、通常100〜3
00nmの範囲が好ましい。陽極は、通常光学的に透明
なガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板などを基
板として使用し、その上に成膜して形成する。かかる成
膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング
法、ゾルゲル法などを用いることができる。また、光学
的に透明なガラス板としては、例えばソーダライムガラ
ス、無アルカリガラスなどが挙げられ、電圧をかけた時
にガラスから溶出してくるイオンが少ないという観点か
ら無アルカリガラスを使用することが好ましいが、Si
2などでバリアコートされたソーダライムガラスを使
用することもできる。基板の厚みは機械強度を保つのに
十分な厚みであればよく、通常0.1〜5mmの範囲で
あり、0.5〜3mmの範囲であるのがより好ましい。
【0030】陰極に用いる材料としては、電子を有機電
界発光層に効率よく注入できる金属であれば特に限定さ
れないが、一般に白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニ
ウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、
カルシウム、マグネシウムなどが挙げられ、有機電界発
光層への電子注入効率を上げて有機EL素子の特性を向
上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、
カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの低仕事
関数の金属またはこれらの金属を含む合金を用いるのが
好ましい。陰極の形成法としては、有機EL素子への通
電性をとることができる限り特に制限されるものではな
く、例えば抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法、スパッタリ
ング法、イオンプレーティング法、コーティング法など
が挙げられる。陰極の厚みは、通常50〜500nmの
範囲が好ましい。さらに、空気中の酸素および/または
水分から陰極を保護するために、白金、金、銀、銅、
鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属およびこ
れらの金属からなる合金;シリカ、チタニアなどの電気
的に中性な金属酸化物;ポリビニルアルコール、ポリ塩
化ビニル、ポリエチレンなどの炭化水素高分子などのポ
リマーを陰極表面に積層することが好ましい。
【0031】正孔輸送層は、正孔輸送物質を単独で、ま
たはポリピロール、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾ
ールなどの高分子接着剤との混合物としたものを層状に
形成したものであり、その層は一層構造でも多層構造で
もよい。正孔輸送物質としては、有機EL素子の作製に
必要な薄膜を形成し、陽極から正孔を注入することがで
き、かつ正孔を輸送することができる化合物であれば特
に限定されるものではなく、例えば錫錯体(I)、N,
N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニ
ル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン、
1,1−ビス(4−N,N’−ジトリルアミノフェニ
ル)シクロヘキサンなどのフェニレンジアミン誘導体;
N−フェニル−3,5−ジフェニルピラゾリンなどのピ
ラゾリン誘導体;β−(α−スチリル)−トリフェニル
アミンなどのスチルベン誘導体;2,5−ビス(4−ジ
エチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾー
ルなどのオキサジアゾール誘導体;フタロシアニン、銅
フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体などの複素
環化合物、および前記フェニレンジアミン誘導体、ピラ
ゾリン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジアゾール誘
導体を側鎖に有するポリカーボネート、ポリスチレン、
ポリビニルカルバゾール、ポリシランおよびポリチオフ
ェンなどのポリマーが挙げられる。正孔輸送層の厚み
は、正孔輸送物質の抵抗値によって変動しうるが、通常
10〜1000nmの範囲である。
【0032】電子輸送層は、陰極の界面から電子を受け
取り、正孔輸送層または有機電界発光層まで、熱などへ
のエネルギーロスなしに電子を輸送する役割を有してい
る。電子輸送層には、安定なラジカルアニオンを形成
し、イオン化ポテンシャルの大きい物質が用いられ、か
かる物質としては、例えば錫錯体(I)、2,5−ビス
(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサ
ジアゾールなどのオキサジアゾール類、トリス(8−オ
キシキノリル)アルミニウムなどのアルミニウムキノリ
ノール錯体などを挙げることができる。これらの物質を
用いた電子輸送層は、10〜1000nm程度の範囲の
膜厚で使用するのが好ましい。
【0033】上記の正孔輸送層および電子輸送層は、そ
れぞれ抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリ
ング法、イオンプレーティング法、コーティング法など
の通常の薄膜形成方法で形成することができる。
【0034】
【実施例】以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明はそれにより何ら限定されるものでは
ない。
【0035】実施例1 窒素雰囲気下、容量500mlの3口フラスコに8−ヒ
ドロキシキノリン14.5g(0.1mol)およびジ
フェニル錫ジクロリド17.2g(0.05mol)を
入れ、溶媒としてエタノール200gを加えて80℃ま
で昇温し、2時間攪拌した。次に、この溶液に水酸化カ
リウム5.88g(0.1mol)をエタノール40g
に溶解させて調製した溶液を1時間かけて滴下し、滴下
終了後さらに1時間反応させた。反応液を室温に冷却し
た後、酢酸で反応液を中和し、エタノールを留去した。
得られた残留物をジメチルホルムアミド40gと水10
gの混合溶液に加熱下で溶解させた後、得られた溶液を
室温まで冷却して結晶を析出させた。この結晶を濾過
し、冷却したメタノール100mlで洗浄後、2時間真
空乾燥し、レモン色の結晶として、下記の物性を有する
ジ(8−オキシキノリン)ジフェニル錫16.8g(収
率56%)を得た。
【0036】1H−NMR(270MHz、DMSO−
6、TMS、ppm) δ 8.33(d、2H,J=3.2Hz) 7.80(d,2H,J=2.7Hz) 7.12−7.33(m、10H) 7.08(dd,2H,J=2.7、3.2Hz) 6.98(dd,2H,J=2.6、3.1Hz) 6.42(d,2H,J=2.6Hz) 6.20(d,2H,J=3.1Hz) UV(nm) 210,237,310,447 MASS 549(M+) m.p. 212℃
【0037】実施例2 実施例1において、ジフェニル錫ジクロリド17.2g
(0.05mol)に代えてジn−ブチル錫ジクロリド
15.4g(0.05mol)を使用した以外は実施例
1と同様にして反応および単離操作を行い、レモン色の
結晶として、下記の物性を有するジ(8−オキシキノリ
ン)ジn−ブチル錫15.3gを得た(収率59%)。
【0038】1H−NMR(270MHz、DMSO−
6、TMS、ppm) δ 8.33(d、2H,J=3.2Hz) 7.80(d,2H,J=2.7Hz) 7.08(dd,2H,J=2.7、3.2Hz) 6.98(dd,2H,J=2.6、3.1Hz) 6.42(d,2H,J=2.6Hz) 6.20(d,2H,J=3.1Hz) 2.1−2.7(m、12H) 1.12(t、6H,J=3.3Hz) UV(nm) 208,240 ,302,433 MASS 521(M+) m.p. 227℃
【0039】実施例3 実施例1において、8−ヒドロキシキノリン14.5g
(0.1mol)に代えて8−ヒドロキシキナルジン1
5.9g(0.1mol)を使用した以外は実施例1と
同様にして反応および単離操作を行い、レモン色の結晶
として、下記の物性を有するジ(8−オキシキナルジ
ン)ジフェニル錫13.5gを得た(収率61%)。
【0040】1H−NMR(270MHz、DMSO−
6、TMS、ppm) δ 7.80(d,2H,J=2.7Hz) 7.12−7.33(m、10H) 7.08(d,2H,J=2.7Hz) 6.98(dd,2H,J=2.8、3.0Hz) 6.42(d,2H,J=2.8Hz) 6.20(d,2H,J=3.0Hz) 2.32(s、6H) UV(nm) 207,248,325,494 MASS 577(M+) m.p. 228℃
【0041】次に、実施例1〜3で得られた錫錯体を用
いて図1で示される有機EL素子を作製し、その性能を
評価した。
【0042】実施例4 透明ガラス板11の上に形成された酸化錫インジウム合
金からなる透明電極(以下、これをITO透明電極と称
する)12上に、抵抗加熱蒸着法によって、N,N’−
ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−
1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミンからなる正
孔輸送層13を50nm、実施例1で得たジ(8−オキ
シキノリン)ジフェニル錫からなる有機電界発光層14
を50nm、および銀とマグネシウムの合金(原子比5
0:1)からなる上部電極15を200nm、順次蒸着
し、図1に示す有機EL素子を作製した。なお、正孔輸
送層13と有機電界発光層14とは10-6Torr程度
の高真空下で連続蒸着によって形成した。図1に示す有
機EL素子のITO透明電極12を陽極とし、かつ上部
電極15を陰極として、電源から直流電圧またはパルス
電圧を7.5V印加したところ、584nmの発光を観
測した。
【0043】実施例5 透明ガラス板11の上に形成されたITO透明電極12
上に、抵抗加熱蒸着法によって、N,N’−ジフェニル
−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−1,1’−ジ
フェニル−4,4’−ジアミンからなる正孔輸送層13
を50nm、、実施例2で得たジ(8−オキシキノリ
ン)ジn−ブチル錫からなる有機電界発光層14を50
nm、および銀とマグネシウムの合金(原子比50:
1)からなる上部電極15を20nm、順次蒸着し、図
1に示す有機EL素子を作製した。なお、正孔輸送層1
3と有機電界発光層14とは10-6Torr程度の高真
空下で連続蒸着によって形成した。図1に示す有機EL
素子のITO透明電極12を陽極とし、かつ上部電極1
5を陰極として、電源から直流電圧またはパルス電圧を
7.5V印加したところ、568nmの発光を観測し
た。
【0044】実施例6 透明ガラス板11の上に形成されたITO透明電極12
上に、抵抗加熱蒸着法によって、N,N’−ジフェニル
−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−1,1’−ジ
フェニル−4,4’−ジアミンからなる正孔輸送層13
を50nm、実施例3で得たジ(8−オキシキナルジ
ン)ジフェニル錫からなる有機電界発光層14を50n
m、および銀とマグネシウムの合金(原子比50:1)
からなる上部電極15を20nm、順次蒸着し、図1に
示す有機EL素子を作製した。なお、正孔輸送層13と
有機電界発光層14とは10-6Torr程度の高真空下
で連続蒸着によって形成した。図1に示す有機EL素子
のITO透明電極12を陽極とし、かつ上部電極15を
陰極として、電源から直流電圧またはパルス電圧を7.
5V印加したところ、588nmの発光を観測した。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、低電圧で駆動可能でか
つ高効率で発光を得ることが可能な有機電界発光層を構
成する錫錯体、および該錫錯体を構成成分とする有機電
界発光層を有する有機EL素子を提供することができ
る。
【0046】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の構成について、その一
実施態様として、ITO透明電極12を陽極とし、上部
電極15を陰極とする接続を示す。
【符号の説明】
11 透明ガラス板 12 ITO透明電極 13 正孔輸送層 14 本発明の錫錯体(I)からなる有機電界発光層 15 上部電極

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I) 【化1】 (式中、Xは置換基を有していてもよいアルキル基また
    はアリール基を表し、R 1、R2、R3、R4、R5および
    6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有し
    ていてもよいアルキル基、アラルキル基、アルケニル
    基、アルコキシル基、アリール基もしくは複素環基を表
    すか、または互いに隣接するものがその結合する2つの
    炭素原子と一緒になって環構造を形成していてもよ
    い。)で示される錫錯体。
  2. 【請求項2】 相対する陽極および陰極と、これらの間
    に挟持された少なくとも1層の有機電界発光層より構成
    される有機電界発光素子において、該有機電界発光層が
    下記一般式(I) 【化2】 (式中、Xは置換基を有していてもよいアルキル基また
    はアリール基を表し、R 1、R2、R3、R4、R5および
    6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有し
    ていてもよいアルキル基、アラルキル基、アルケニル
    基、アルコキシル基、アリール基もしくは複素環基を表
    すか、または互いに隣接するものがその結合する2つの
    炭素原子と一緒になって環構造を形成していてもよ
    い。)で示される錫錯体を構成成分とする層であること
    を特徴とする有機電界発光素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100481461B1 (ko) * 2001-11-15 2005-04-07 네오메가(주) 유기주석 화합물
JP2019041042A (ja) * 2017-08-28 2019-03-14 日本放送協会 有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法、表示装置、照明装置
JP2021525957A (ja) * 2018-05-29 2021-09-27 ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット シャルロット 6配位ピンサー錯体及びその用途

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