JP2001062575A - 金属板のレーザ溶接方法および構造体 - Google Patents

金属板のレーザ溶接方法および構造体

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JP2001062575A
JP2001062575A JP23866599A JP23866599A JP2001062575A JP 2001062575 A JP2001062575 A JP 2001062575A JP 23866599 A JP23866599 A JP 23866599A JP 23866599 A JP23866599 A JP 23866599A JP 2001062575 A JP2001062575 A JP 2001062575A
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Katsuhiro Minamida
勝宏 南田
Masashi Oikawa
昌志 及川
Naoya Hamada
直也 浜田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱歪みを低減し、溶接部強度の低下および構
造体の精度低下を防ぐことができる金属板のレーザ方法
を提供する。 【解決手段】 重ね合わせた2枚の金属板をレーザ溶接
する方法において、閉曲線に沿いナゲット径/ピッチ≧
0.5とし複数のナゲットを形成するようにしてレーザ
スポット溶接する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、金属板のレーザ
溶接方法に関し、特に熱歪みの防止と溶接強度の確保と
を両立させた金属板のレーザ溶接方法、およびその溶接
方法による構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】レーザ溶接は、加工歪みが少なく、高速
溶接が可能であり、残留熱影響部も少ないなどの利点が
ある。このような利点から、レーザ溶接は最近広く用い
られるようになって来ており、様々なレーザ溶接方法が
提案されている。
【0003】2枚の金属板を重ね合わせてレーザ溶接す
る技術として、例えば特開平8−206864号公報で
開示された「レーザ加工機」は、レーザビームを直線状
に集光する工学系を回転させて大面積の円形状のスポッ
ト溶接部を得るものである。この「レーザ加工機」で
は、接合箇所を大きく溶融させるため、溶接1点に対す
る入熱量が大きく、熱歪みの発生は避けられない。この
ため、残留応力による溶接部強度低下および構造体の精
度低下を生じる。特開平5−177375号公報で開示
された「レーザビームスキャナ」は、溶接線幅を広くす
るために、光学系の一部を回転させながら、直線上に加
工物を移動させるものである。この「レーザビームスキ
ャナ」では、直線進行ベクトルと円周方向の速度ベクト
ルとが溶接線の左右で異なるため、安定した溶接部を得
ることができない。特開平7−309138号公報で開
示された「ヘムフランジ溶接法」は、鉄アレイ状の溶接
部を得るために、プラズマ溶接とレーザ溶接を複合した
溶接方法である。この「ヘムフランジ溶接法」では、プ
ラズマ溶接法は大面積となるが、エネルギー密度が低い
ため、両端部での入熱量が大きい。このため、熱歪みの
発生は避けられず、残留応力による溶接部強度低下およ
び構造体の精度低下が生じる。
【0004】また、2枚の金属板を重ね合わせ、直線に
沿ってレーザスポット溶接し、構造体を構成することが
行われている。構造体には、引張、剪断、曲げ、ねじり
など様々な負荷状態が複合して荷重が加わり、複合した
応力が不均一に発生する。単純な引張応力であれば、接
合面積に比例した強度が得られる。しかし、このような
複合応力により、ナゲットが直線状に並ぶスポット溶接
部のある点で局所的に高い応力が発生して破断応力を超
えると、その点で破断する。そして、その隣接点に応力
が加わる。例えば、高応力点の応力を10とし、隣接点
の応力を8とする。高応力点が破断すると、隣接点は応
力が8+10/2となって破断し、以下雪崩式にスポッ
ト溶接部が破断する。特にスポット溶接では、溶融凝固
金属と母材との間に低強度の熱影響部が形成され、熱影
響部が破断しやすい。破断を防ぐためナゲット数を増す
と、熱歪みが累積し、残留応力も大きくなり、強度およ
び構造体精度の低下を招くこともある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、熱歪みを
低減し、溶接部強度の低下および構造体の精度低下を防
ぐことができる金属板のレーザ方法、およびその溶接方
法による構造体を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明の金属板のレー
ザ溶接方法は、重ね合わせた2枚の金属板をレーザ溶接
する方法において、閉曲線に沿いナゲット径/ピッチ≧
0.5とし複数のナゲットを形成するようにしてレーザ
スポット溶接する。
【0007】この発明の金属板のレーザ溶接方法では、
ナゲットが閉曲線に沿って形成されているので、1点当
りの耐荷重が大きいため雪崩式の破断を阻止することが
できる。特にこの発明では、ナゲット径/ピッチ≧0.
5としているので、破断阻止効果は大きい。一般に、あ
る1点の周囲に発生する応力は、点の直径と間隔に関連
がある。点の間隔が無限大とななれば、点の周囲に発生
する応力は周囲の3倍程度となる。この発明のようにナ
ゲット径/ピッチ≧0.5とすれば、2倍程度以下とな
る。強度の向上によりナゲット、つまり低強度の熱影響
部を減らすことができる。この結果、従来法に比べて熱
歪みを低減することができ、構造体の精度を高めること
もできる。
【0008】ナゲットが直線または曲線に沿って並ぶよ
うにレーザスポット溶接し、前記閉曲線内に前記直線ま
たは曲線を含むようにして前記閉曲線に沿うレーザスポ
ット溶接を行うようにしてもよい。閉曲線に沿うナゲッ
ト群は、直線または曲線ナゲット群の強度を補強する。
【0009】また、溶接線が直線または曲線の溶接部の
両端部に、それぞれ前記閉曲線に沿うレーザスポット溶
接を行うようにしてもよい。直線または曲線状溶接部の
端部に生じる集中する応力を、端部のナゲット群により
負担して分散し、応力集中を緩和する。
【0010】この発明の構造体は、前記閉曲線に沿うレ
ーザスポット溶接部を含む構造体である。閉曲線に沿う
レーザスポット溶接部は上述のように高い強度を示すの
で、構造体の強度および精度を高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1(a)〜(d)はそれぞれこ
の発明の実施の1形態を示すもので、円周に沿ってレー
ザスポット溶接した円形ナゲット群の拡大図である。図
1(a)に示す円周の直径は6mm、(b)は4mm、
(c)は3mm、(d)は2mmである。ナゲット 径は
0.5mmである。ナゲット数はいずれも24であり、円
周の直径が小さくなるに従いナゲットのピッチは小さく
なっている。(b)では、隣り合うナゲットはほとんど
接している。この発明で用いられるピッチはナゲット径
の1/2以下であり、これを超えると十分な接合強度を
得ることができない。なお、円周の直径Dは、0.3n
d/π<D<2nd/π程度である。nは、ナゲット数
である。例えば、直径Dは3〜15mmであり、ナゲット
径は0.2〜1mmである。ナゲット数は円周の直径およ
びナゲットのピッチによるが、概ね10〜100程度で
ある。
【0012】図2は、従来法によるナゲット群の1例を
示すもので、直線に沿って2列に並ぶ直線ナゲット群の
拡大図である。この発明と比較するために、ナゲット径
およびナゲット数は、図1に示すものと同じである。同
一列で隣り合うナゲット間のピッチは5mmであり、列間
隔は8mmである。
【0013】スポット溶接部は剥離に対し弱いので、一
般にスポット溶接部の強度試験として剥離試験が行われ
ている。図3は、剥離試験片を示している。L字形に曲
げた2枚の金属板1をスポット溶接して、剥離試験片を
作製する。この試験片を引き剥がすように引張って、2
枚の板が剥離したときの荷重をスポット溶接部の強度と
する。図3で、直線ナゲット群5の試験片は従来法によ
るものである。同図で、一点鎖線は発明による円形ナゲ
ット群3を示している。
【0014】図4は、この発明と従来法とを比較して、
スポット溶接部の剥離試験結果を模式的に示している。
この出願の発明の場合、ほぼ半円周上のナゲット群で剥
離力を負担するので、変位に対し応力は単純に増加しす
る。従来法の場合、直線ナゲット群のうち一端(剥離
側)のナゲットで剥離荷重を負担し、剥離側のナゲット
が破断すると、雪崩式に残りのナゲットが破断する。こ
のため、応力が鋸の刃状に変化している。
【0015】この発明の閉曲線は、円に限られるもので
はなく、例えば図5(a)に示す楕円、または(b)に
示す小判形であってもよい。また、半円や多角形であっ
てもよい。円形の場合は、あらゆる方向に均等な強度を
示す。楕円または小判形の場合は、短径方向が剥離側に
向かうように、ナゲット群を配置するとよい。
【0016】閉曲線の形状、閉曲線の直径、ナゲット
径、ナゲット数などは、構造体のスポット溶接部に作用
するに荷重の負荷状態に応じて選ぶ。なお、閉曲線が楕
円または小判形の場合には長径と短径とを閉曲線の直径
とし、多角形の場合には頂点と対辺との間の距離の最大
値を閉曲線の直径とする。
【0017】レーザスポット溶接では、融接型ナゲット
が形成される。図6に示すように、ナゲットが2枚の板
を貫通させずに、重ね合わせた金属板の下側の板が接合
部である程度溶融しておればよい。所要の溶接強度を得
るためには、板表面のスポット径Aに対する接触部での
溶融部径Bの比は、0.4〜0.8程度とすることが望
ましい。また、下側の板の溶込み深さhは、下側の板厚
tの0.3〜0.6倍程度とすることが望ましい。ナゲ
ットを2枚の板を貫通させないことにより、溶接入熱量
が少なくて済む。この結果、レーザ出力を低くすること
ができる。また、熱影響部が小さくなるので、溶接接合
部の強度および構造体の精度を高めることができる。
【0018】図7は、2列の直線ナゲット群に相当する
部分に、2つの円形ナゲット群を配置した例を示してい
る。入熱量が同じである場合、この発明の円形ナゲット
群は直線ナゲット群に比べて数倍の強度を示す。
【0019】図8は、2列の直線ナゲット群5と円形ナ
ゲット群3とを組み合わせた例を示している。円形ナゲ
ット群3は、直線ナゲット群5の強度を補強する。
【0020】図9(a)は、溶接線が直線の溶接部7の
両端に円形ナゲット群3を配置した例、図9(b)は三
角形のナゲット群8を配置した例、および図9(c)は
半円のナゲット群9を配置した例をそれぞれ示してい
る。いずれの例でも、直線状溶接部7の端部に生じる集
中する応力を、端部のナゲット群により負担して分散
し、応力集中を緩和する。図9では溶接線が直線であっ
たが、構造体の形状に従って曲線となった溶接線であっ
てもよい。
【0021】この溶接方法による溶接部を含む構造体
は、鉄道車輌、船舶、容器、建築部材などに用いられ
る。例えば、自動車ドアの縁部などにこの発明のスポッ
ト溶接が適用される。
【0022】
【実施例】(実施例1)下記の条件で重ね合わせた金属
板のスポット溶接を行い、剥離試験を行った。 1.スポット溶接条件 a.材質:SUS304 板厚1.0mmおよび1.5mm b.レーザ溶接条件 レーザの種類:パルス発振YAGレーザ 伝送光学部品:直径0.8mmの光ファイバ 集光光学部品:焦点距離50mmの光学レンズ パルス幅 :10msec パルスエネルギー:20J/P レーザ発振出力:500W アシストガス:ヘリウム、供給量 50 l/min c.ナゲット群形状 従来法:ナゲットピッチ5mm、列間隔8mmで2列、ナゲ
ット群長さ60mm ナゲット数26 本発明:円周径8mm ナゲット数26 2. 試験結果 a.溶接時間 従来法:1.04秒 本発明:1.04秒 b.入熱量 従来法:20J/P ×26点=520J 本発明:20J/P ×26点=520J c.強 度 従来法:最大25kgf 本発明:最大180kgf d.強度/入熱量 従来法:0.048kgf/J 本発明:0.346kgf/J e.破断形態 従来法:鋸状(1点が破断すると、次々と破断が伝播す
る) 本発明:直角三角形形状(最大荷重で破断する) 上記試験結果によれば、本発明が従来法に比べて7.2
倍の高い強度を示している。また、本発明の溶接時間お
よび入熱は従来法のものと同じであるので、本発明が従
来法に比べて経済的に有利である。
【0023】(実施例2) 1. スポット溶接条件 a.材質:SUS304 板厚0.8mmおよび1.5mm b.レーザ溶接条件 レーザの種類:パルス発振YAGレーザ 伝送光学部品:直径0.8mmの光ファイバ 集光光学部品:焦点距離50mmの光学レンズ パルス幅 :20msec パルスエネルギー:30J/P 、40J/P レーザ発振出力:500W アシストガス:ヘリウム、供給量 50 l/min c.ナゲット群形状 従来法:ナゲットピッチ2mm、列間隔8mmで2列、ナゲ
ット群長さ35mm ナゲット数36 本発明:円周径8mm ナゲット数36 2.試験結果 a.溶接時間 従来法:1.44秒 本発明:1.44秒 b.入熱量 従来法:40J/P ×36点=1440J 本発明:30J/P ×36点=1080J c.強 度 従来法:最大30kgf 本発明:最大237kgf d.強度/入熱量 従来法:0.021kgf/J 本発明:0.219kgf/J e.破断形態 従来法:鋸状(1点が破断すると、次々と破断が伝播す
る) 本発明:直角三角形形状(最大荷重で破断する) 上記試験結果によれば、本発明が従来法に比べて7.9
倍の高い強度を示している。また、単位入熱量当りの強
度は、本発明が従来法に比べて10.4倍となってお
り、本発明が従来法に比べて経済的に有利である。
【0024】円周に沿いナゲットを連続して形成する
と、レーザのパルスとパルスの時間間隔が20〜50ms
ec程度のため、先行するナゲットの蓄熱影響で後ろのナ
ゲットは大きくなる。同じ接合面積を得るには、ナゲッ
トを連続させて蓄熱効果を利用すると、入熱が少なくて
済み、これだけ経済的効果があることになる。
【0025】
【発明の効果】この発明では、閉曲線に沿うナゲット群
が直線ナゲット群よりも多くのナゲットで荷重を負担す
るので、強度は従来の直線ナゲット群よりも高い。強度
の向上によりナゲット、つまり低強度の熱影響部を減ら
すことができる。この結果、従来法に比べて熱歪みを低
減することができ、構造体の精度を高めることもでき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の1形態を示すもので、円周に
沿ってレーザスポット溶接した円形ナゲット群の拡大図
である。
【図2】従来法によるナゲット群の例を示すもので、直
線に沿って2列に並ぶ直線ナゲット群の拡大図である。
【図3】剥離試験片を示す斜視図である。
【図4】この発明と従来法とを比較して、スポット溶接
部の剥離試験結果を模式的に示す線図である。
【図5】この発明の凸形の閉曲線の他の例を示す図面で
ある。
【図6】レーザスポット溶接の溶融型ナゲットを示す模
式的断面図である。
【図7】2列の直線ナゲット群に相当する部分に、2つ
の円形ナゲット群を配置した例を示す図面である
【図8】2列の直線ナゲット群と円形ナゲット群とを組
み合わせた例を示す図面である。
【図9】溶接線が直線の溶接部の両端に円形、三角形
状、および半割円状ナゲット群をそれぞれ配置した例を
示す図面である。
【符号の説明】
1 剥離試験片板 3 円形ナゲット群 5 直線ナゲット群 7 直線状溶接部 8 三角形状ナゲット群 9 半割円状ナゲット群
フロントページの続き (72)発明者 浜田 直也 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4E068 BA01 BF01 DA14 DB01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重ね合わせた2枚の金属板をレーザ溶接
    する方法において、閉曲線に沿いナゲット径/ピッチ≧
    0.5とし複数のナゲットを形成するようにしてレーザ
    スポット溶接することを特徴とする金属板のレーザ溶接
    方法。
  2. 【請求項2】 ナゲットが直線または曲線に沿って並ぶ
    ようにレーザスポット溶接し、前記閉曲線内に前記直線
    または曲線を含むようにして請求項1記載のレーザスポ
    ット溶接を行う金属板のレーザ溶接方法。
  3. 【請求項3】 溶接線が直線または曲線の溶接部の両端
    部に、それぞれ請求項1記載のレーザスポット溶接を行
    う金属板のレーザ溶接方法。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3記載のレーザ溶接
    方法によるスポット溶接部を含む構造体。
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