JP2001048569A - 光ファイバの線引方法 - Google Patents

光ファイバの線引方法

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JP2001048569A
JP2001048569A JP11221593A JP22159399A JP2001048569A JP 2001048569 A JP2001048569 A JP 2001048569A JP 11221593 A JP11221593 A JP 11221593A JP 22159399 A JP22159399 A JP 22159399A JP 2001048569 A JP2001048569 A JP 2001048569A
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optical fiber
resin
coating
resin coating
capstan
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Kazuya Kuwabara
一也 桑原
Ichiro Tsuchiya
一郎 土屋
Yasuhiro Naganuma
康裕 長沼
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 樹脂被覆に変形を生じさせることなく、製造
効率を向上することのできる光ファイバの線引方法を提
供すること。 【解決手段】 本発明の光ファイバの線引方法は、樹脂
被覆後の外径が300〜600μmとなる光ファイバを線速50m
/min以上で線引きするもので、硬化炉出口からキャプス
タン入線部までのパスライン長zpが、下記式(1)を満た
す状態で線引きすることを特徴とする。 【数1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバを線引
きする光ファイバの線引方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバの周囲には、光ファイバを保
護するなどの目的から樹脂被覆を施すのが一般的であ
る。この樹脂被覆としては、特公昭56-49865号公報に記
載されているもののように、シリコンなどの熱硬化性樹
脂を用いるものがある。熱硬化性樹脂を用いた場合、樹
脂被覆は熱硬化炉で硬化させるため熱硬化炉から出た光
ファイバが高温になるので、熱硬化炉とファイバを引き
取るキャプスタンとの間で光ファイバを冷却するという
考え方があった。また、樹脂被覆としては、紫外線硬化
性樹脂を用いたものもあり、この場合はUV硬化炉から出
た光ファイバの温度は熱硬化性樹脂を用いたものほど高
温とはならない。このため、紫外線硬化性樹脂を用いた
場合は、UV硬化炉キャプスタンとの間で光ファイバを冷
却する必要性は考えられていなかった。
【0003】なお、特開昭62-241846号公報には、紫外
線硬化性樹脂を用いてプライマリ被覆とセカンダリ被覆
とを行うタンデムコートの場合が記載されている。特開
昭62-241846号公報には、セカンダリ被覆を形成させる
以前に光ファイバの温度が上昇してしまうとセカンダリ
被覆の塗布が安定しないため、セカンダリ被覆を形成す
るセカンダリダイス上流側における光ファイバ冷却の必
要性について記載されている。しかし、セカンダリダイ
スとキャプスタンとの間の冷却については何らの考慮も
されていない。
【0004】さらに、樹脂被覆後の外径が250μmとなる
通常一般によく用いられる光ファイバにおいては、被覆
部の熱容量が小さいので、樹脂被覆部での反応熱による
温度上昇が少なく、空冷で充分に冷却が可能であった。
これに対して、樹脂被覆を厚くした光ファイバは以前か
ら存在していたが、線引速度が遅く、空冷で充分に冷却
が可能であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】光ファイバは、その線
引時に周囲に樹脂が被覆されつつ引っ張られて、最終的
に巻取ボビンに巻き取られる。このとき、光ファイバ
は、キャプスタンによって側方から把持されつつ引っ張
られる。被覆させた樹脂が十分に硬化しないうちにキャ
プスタンによって把持すると、被覆樹脂が潰れて変形し
てしまい、伝送特性不良の原因となってしまう。
【0006】近年になって、大容量伝送用分散シフトフ
ァイバなど、伝送特性の観点から樹脂被覆が厚い光ファ
イバの需要も増えており、その製造効率の向上が望まれ
ている。生産性を高めるために高線速化する際に潰れ問
題が顕在化した。この問題の原因は、樹脂被覆が厚くな
ると、それだけ被覆された樹脂は冷却されにくくなり、
さらに、樹脂被覆を硬化させる際の反応熱も増加するの
で、被覆された樹脂がより一層冷却されにくくなる点に
ある。樹脂被覆を充分に冷却するためにパスライン長を
不必要に長くすると、装置の大型化などの弊害が大きく
なり、樹脂被覆を硬化させるために線速を遅くすれば、
製造効率が低下する。
【0007】発明者らは、製造後の光ファイバの品質と
製造効率の向上とを高次元に両立させるために、最適な
パスライン長を光ファイバの線引条件に応じて規定すべ
く鋭意研究を行い、線引条件に応じた最適なパスライン
長を規定し得ることを知見した。本発明は上述した知見
に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、樹脂
被覆に変形を生じさせることなく、製造効率を向上する
ことのできる光ファイバの線引方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の光ファ
イバの線引方法は、樹脂被覆を形成させた後の外径が30
0〜600μmとなる光ファイバを線速50m/min以上で線引き
する光ファイバの線引方法であって、樹脂被覆を硬化さ
せる硬化炉の最下流側出口から、光ファイバを下流側に
引っ張るキャプスタンの最上流側入線部までのパスライ
ン長zpが、下記式(1)を満たす状態で、樹脂被覆を形成
させつつ線引きすることを特徴としている。
【0009】
【数2】
【0010】請求項2に記載の光ファイバの線引方法
は、請求項1に記載の光ファイバの線引方法において、
樹脂被覆を形成させる際に、口出時には前記パスライン
長zpを上述した式(1)に関わらず短くし、生産時にはパ
スライン長zpを上述した式(1)を満たす長さに変更する
ことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の光ファイバの線引方法の
実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】まず、本発明の基本となる上述した式(1)
について説明する。
【0013】光ファイバの線引時における光ファイバの
温度については様々な研究が行われている。このような
研究を記した論文の一つに、Calculation of Cooling R
ateand Induced Stresses in Drawing of Optical Fibe
rs(U.C.PEAK,C.R.KURKJIANによる論文で、Jarnal of Am
erican Ceramic Society Vol.58. No.7-8 P.330,331に
掲載)がある。このなかに、線引時の光ファイバ裸線
(樹脂被覆のない光ファイバ)の温度を、線引時の各種
パラメーターから算出するための式が記されている。こ
の式を下記式(2)に表す。
【0014】
【数3】
【0015】この式(2)は、図1に示されるように、線
速Vfで線引している光ファイバ1上のある点からz座標
軸を光ファイバ1の線引経路上にとり、座標zでの光フ
ァイバ1の温度TF(z)をzの関数として表したものである
(ただし、TF(0)=Tsとする)。なお、熱伝達係数hは、
物質(個体/液体)の表面から熱が奪われる速度を示し
ており、式(2)中の単位は[J/(cm2・sec・℃)]である。ま
た、比熱Cpの単位としては、[J/(g・K)]が用いられるこ
とが多いが、式(2)中の単位[J/(g・℃)]はこれと等価で
ある。
【0016】上述した式(2)は、樹脂被覆のない光ファ
イバ裸線に関する式であるが、実際の光ファイバの線引
時には、光ファイバ裸線の周囲に樹脂被覆が施される。
そこで、樹脂被覆が形成される光ファイバについて以下
に検討する。光ファイバに樹脂被覆を形成させる場合
は、図2に示されるように、光ファイバ1aの周囲にコ
ーティングダイ3を用いて樹脂をコーティングし、この
コーティングした樹脂を硬化炉2内で硬化させる。硬化
炉2内においては、コーティングされた樹脂が化学反応
によって硬化される。最も一般的なのは、樹脂被覆のた
めにUV硬化樹脂を用い、硬化炉2内でUV照射を行って樹
脂を硬化させる方法である。
【0017】なお、ガラスの熱容量(密度×比熱)と樹
脂被覆の樹脂の熱容量とはほぼ等しいので、樹脂被覆を
行った光ファイバについては、その全体を熱的に単一な
線材として近似することができる。具体的には、線引時
のガラスは、密度ρ=2.2[g/cm3]で比熱Cp=1.047[J/(g・
℃)]であり、熱容量ρ・Cp=2.3[J/(cm3・℃)]となる。こ
れに対して、線引時の樹脂は、密度ρ=1.07〜1.1[g/c
m3]で比熱Cp=2.095[J/(g・℃)]であり、熱容量ρ・Cp=2.2
〜2.3[J/(cm3・℃)]となり、熱的にほぼ等価とみなせ
る。
【0018】しかし、樹脂被覆された光ファイバ1bを
熱的に単一の線材とみなすことができたとしても、上述
した樹脂を硬化させる過程で反応熱が発生するため、樹
脂被覆された光ファイバ1bの実際の温度は上述した式
(2)からかい離してしまう。即ち、樹脂被覆された光フ
ァイバ1bに対しては上述した式(2)をそのまま適用す
ることはできない。光ファイバ1bでは硬化炉2を出た
後も硬化反応が続いており(後硬化と呼ばれる)、硬化
炉2を出た後でも反応熱が発生する。樹脂の量(被覆
径)が増加すると、単位長さあたりに発生する反応熱が
増加し、この反応熱によってさらに反応が促進されて発
熱する。即ち、硬化させる樹脂量が増加すればするほ
ど、樹脂被覆された光ファイバ1bは冷却されにくくな
る。
【0019】そこで、発明者らは、上記式(2)に基づい
て、樹脂被覆をした光ファイバ1bについて、座標zで
の光ファイバの温度TF(z)をzの関数として表すべく鋭意
検討を行った。その結果、下記式(3)によって、樹脂被
覆した光ファイバについても、座標zでの光ファイバの
温度TF(z)をzの関数として表すことが可能であることを
知見した。なお、下記式(3)は、少なくとも、150≦d2
300μm、かつ、50≦Vf≦600m/minのときに好適に成立す
る。
【0020】
【数4】
【0021】上述した式(3)中のガラス・樹脂の平均熱
容量avr(ρCp)〔このようにも表すこととする〕は、ガ
ラス部と被覆樹脂との体積比(即ち、断面積比)で重み
付けすることにより得られる。例えば、ガラス部・一次
(プライマリ)被覆・二次(セカンダリ)被覆からなる
光ファイバの場合について説明する。ガラス部の半径を
dg、プライマリ被覆の半径をd1、セカンダリ被覆の半径
をd2とする。また、ガラス部の密度をρg、プライマリ
被覆の樹脂の密度をρ1、セカンダリ被覆の樹脂の密度
をρ2とする。さらに、ガラス部の比熱をCpg、プライマ
リ被覆の樹脂の比熱をCp1、セカンダリ被覆の樹脂の比
熱をCp2とする。
【0022】ガラス部の断面積はπdg 2、プライマリ被
覆の断面積は(πd1 2-πdg 2)、セカンダリ被覆の断面積
は(πd2 2-πd1 2)、光ファイバ全体の断面積はπd2 2であ
る。各部の熱容量(密度×比熱)を断面積に応じて平均
化すると、以下のようになる。 avr(ρCp)=(πdg 2/πd2 2)・ρg・Cpg+[(πd1 2-πdg 2)/πd
2 2]・ρ1・Cp1+[(πd2 2-πd1 2)/πd2 2]・ρ2・Cp2=(dg 2/
d2 2)・ρg・Cpg+[(d1 2-dg 2)/d2 2]・ρ1・Cp1+[(d2 2-d1 2)/d2
2]・ρ2・Cp2 この式からavr(ρCp)が算出される。ここでは、ガラス
部・プライマリ被覆・セカンダリ被覆からなる光ファイ
バの場合について説明したが、ガラス部と一層の樹脂被
覆とからなる光ファイバなど、他の場合も同様の方法で
avr(ρCp)は算出される。
【0023】また、上述した式(3)中の定数Aは、1.5×1
0-6〜4.5×10-6[J/(sec・℃)]の間で任意の値に設定され
る。上述したように、樹脂被覆のある光ファイバ1bに
おいては、上述した式(2)によって座標zにおける温度を
正確に表すことができない。そこで、式(3)において
は、式(2)中の熱伝達係数hに相当するものとして2A/(d2
2-d1 2)という値を用いることによって、樹脂被覆のある
光ファイバ1bの座標zにおける温度TF(z)をzの関数と
して表わしている。即ち、式(2)中の熱伝達係数hに相当
する部分は、樹脂被覆の厚さに依存している。
【0024】この定数Aの値は、自然空冷の場合やヘリ
ウムを用いた強制冷却の場合などで、上述した範囲内で
異なる値をとる。例えば、ヘリウムを用いた強制冷却の
場合の定数Aの値は、自然空冷の場合の定数Aの2〜3倍の
値をとる。ここでは、樹脂被覆後の直径2d2が300〜600
μmとなる光ファイバを線速Vf=50m/min以上で線引きす
る場合〔ただし、式(2)でのd2の単位は[cm]、Vfの単位
は[cm/sec]〕である。通常光ファイバの冷却はガスで冷
却することが行われる。実用上、最も熱伝導率のよいガ
スはヘリウムであり、熱伝導率のよくないガスは空気で
ある。このとき定数Aは、空冷時は1.5×10-6であり、ヘ
リウムガスで冷却したときは4.5×10-6である。
【0025】なお、上述したように、熱容量的に考える
とガラスと樹脂とで熱的に等価な単一の線材として扱う
ことができるので、反応熱を考慮に入れた上述の式(3)
は、ガラス部の周囲に一層の樹脂被覆を形成させる場合
のみならず、プライマリ被覆が行われた光ファイバの周
囲にセカンダリ被覆を形成させる場合にも適用可能であ
る。前者の場合はd1がガラス半径でd2が被覆後半径とな
るが、後者の場合はd1がプライマリ被覆後半径でd2がセ
カンダリ被覆後半径となる。
【0026】プライマリ被覆が行われた光ファイバの周
囲にセカンダリ被覆を形成させる場合について、式(3)
を検証する実験を行った。実験は本発明の線引方法の一
実施形態を実施する線引装置によって行った。この線引
装置は、上述した図2に示されるものである。図2に示
される装置においては、プライマリ被覆がなされた光フ
ァイバ1aは、コーティングダイ3内に挿通されること
によって、その周囲にセカンダリ被覆の樹脂がコーティ
ングされる。ここでは、プライマリ被覆の樹脂及びセカ
ンダリ被覆の樹脂にUV硬化樹脂を用いている。熱的には
プライマリの樹脂とセカンダリの樹脂とは同一に扱え、
一層コートと同一に扱える。
【0027】周囲にUV硬化樹脂がコーティングされた光
ファイバ1bは、一対の硬化炉2内を挿通される。UV炉
である硬化炉2内では、UV樹脂に紫外線を照射して硬化
させる。硬化炉2から出た光ファイバは、ガイドローラ
ー4によって方向を変えられた後、キャプスタン5によ
って引っ張られている。なお、ガイドローラー4は、光
ファイバ1bを側方から圧力をかけて挟み込むことはし
ないので、光ファイバ1bに対して樹脂被覆を変形させ
るような影響を与えない。キャプスタン5は、キャプス
タンホイール5aとキャプスタンベルト5bとからな
る。
【0028】光ファイバ1bは、キャプスタンホイール
5aと、キャプスタンホイール5aに押しつけられたキ
ャプスタンベルト5bとの間に挟まれており、キャプス
タンホイール5a又はキャプスタンベルト5bが駆動さ
れることによって引っ張られる。キャプスタン5によっ
て引っ張られた光ファイバ1bは、巻取ボビン6に巻き
取られる。ここで、z座標軸を光ファイバ1bの線引経
路上にとり、硬化炉2の最下流側出口Xを座標zの原点
(z=0)とする。
【0029】実験結果を図3のグラフに示す。なお、こ
こで、TO=25[℃]、avr(ρCp)=2.3[J/(cm3・℃)]、A=1.5
×10-6[J/(sec・℃)]である。グラフ中の凡例で、290/40
0μm/Vf100とは、プライマリ被覆の直径2d1が290μm、
セカンダリ被覆の直径2d2が400μm、線引の線速Vfが100
m/minであることを表している〔ただし、式(3)中のd1,d
2の単位は[cm]であり、Vfの単位は[cm/sec]である〕。
また、式(3)に基づいて計算値を算出する際に用いるTs
については、対応する実測値の測定を行ったときの光フ
ァイバの実際の温度を用いている。即ち、290/400μm/V
f100の時はTs=130[℃]、290/400μm/Vf230の時はTs=124
[℃]、290/300μm/Vf230の時はTs=105[℃]である。な
お、このTsの測定は、非接触式ファイバ温度計(LUXTRON
社製)を使用して測定した。図3のグラフから分かるよ
うに、上述した式(3)による計算値と実測値とはほぼ一
致しており、上述した式(3)によって樹脂被覆された光
ファイバ1bの座標zにおける温度TF(z)を表わせること
が実験的に確認できた。
【0030】上述した式(3)をzについて解くと、下記式
(4)のようになる。
【数5】
【0031】以上説明したように、上述した式(3)によ
って、樹脂被覆が形成された光ファイバ1bの座標zに
おける温度TF(z)がzの関数として表された。ここで、キ
ャプスタン5によって把持されるときに、樹脂被覆が変
形しない程度にまで冷却硬化されている条件について検
討する。この条件は、被覆した樹脂(ここでは、セカン
ダリ被覆の樹脂)のガラス転移点温度Tg[℃]とすると、
キャプスタン5で側方から把持するときの光ファイバの
温度が(Tg-10)[℃]よりも低ければ、樹脂被覆に変形が
発生しないことが実験的に分かっている。ここで、ガラ
ス転移点温度は、温度に対してヤング率の変化率が最大
となる温度である。
【0032】即ち、硬化炉2の最下流側出口Xからキャ
プスタンの最上流側入線部Yまでの長さをパスライン長
zpとし、上述した式(4)においてTF(z)に(Tg-10)を代入
して範囲を定めると下記式(1)が得られる。パスライン
長zpを下記式(1)で示される長さにすれば、樹脂被覆の
変形を防止することができる。
【0033】
【数6】
【0034】プライマリ被覆が行われた光ファイバ1a
の周囲にセカンダリ被覆を形成させる場合について、上
述した式(1)を検証する実験を行った。ここでも、樹脂
被覆にUV硬化樹脂を用い、硬化炉2としてUV炉を用い、
UV炉の最下流側出口Xを座標zの原点(z=0)としている。
また、avr(ρCp)=2.3[J/(cm3・℃)]、A=1.5×10-6[J/(se
c・℃)]であり、これらの値を式(1)に代入すると、下記
式(5)が得られる。
【0035】
【数7】
【0036】この式(5)を用いて、式(1)を検証する実験
を行った。実験結果を図4の表に示す。図4(a)は、Tg=
80[℃]の場合、即ち、キャプスタン入線部での光ファイ
バの温度が(Tg-10)=70[℃]であれば樹脂被覆に潰れなど
の変形が発生しないと予測される場合である。一方、図
4(b)は、Tg=105[℃]の場合、即ち、キャプスタン入線
部での光ファイバの温度が(Tg-10)=95[℃]であれば樹脂
被覆に潰れなどの変形が発生しないと予測される場合で
ある。
【0037】また、TO=25[℃]である。さらに、計算時
に用いるTsについては、実際に測定した光ファイバの実
際の温度を用いている〔表中の値参照〕。図4の表から
分かるように、上述した式(1)〔即ち式(5)〕が成立して
いる場合は、確実に樹脂被覆に変形が生じていない〔た
だし、式(1),(5)中のd1,d2の単位は[cm]であり、Vfの単
位は[cm/sec]である〕。これとは反対に、上述した式
(1)〔即ち式(5)〕が成立していない場合は、ほとんど樹
脂被覆に変形が生じてしまっている。即ち、上述した式
(1)によって樹脂被覆を変形させないパスライン長zp
範囲を表わせることが実験的に確認できた。
【0038】また、セカンダリ被覆の直径2d2を400μm
に固定し、プライマリ被覆の直径2d1を250,290,330μm
とした場合に、樹脂被覆に変形を生じさせないために必
要となる最小パスライン長(必要長)を算出した。算出
結果を図5に示す。なお、図5に示すのは、avr(ρCp)=
2.3[J/(cm3・℃)]、A=1.5×10-6[J/(sec・℃)]、Tg=80
[℃]、Ts=125[℃]、TO=25[℃]の場合である。
【0039】また、図2に示される装置においては、ガ
イドローラー4が移動可能とされており、パスライン長
zpを可変とすることができるようにされている。これに
より、光ファイバの線引きを始める際に、光ファイバの
端部をガイドローラー4やキャプスタン5、巻取ボビン
6に順に取り付ける口出時には、パスライン長zpを短く
して口出作業の作業性を向上させることができる。そし
て、口出作業が終了して実際に光ファイバを生産する生
産時には、パスライン長zpを上述した式(1)を満たすよ
うに変更し、製造効率良く品質の良い光ファイバを生産
することができる。
【0040】本発明は、上述した実施形態に限定される
ものではない。例えば、上述した実施形態においては、
プライマリ被覆上にセカンダリ被覆を行う場合であった
が、光ファイバ裸線に対して一層の樹脂被覆を行う場合
や、プライマリ被覆とセカンダリ被覆とを同時に行う場
合などにも適用が可能である。また、パスライン長zp
変更するには、ガイドローラー4を移動させずに、キャ
プスタン5を移動するようにしても良い。
【0041】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、樹脂被
覆後の外径が300〜600μmとなる光ファイバを線速50m/m
in以上で線引きする際に、上述した式(1)を満たすよう
にパスライン長zpを確保することによって、キャプスタ
ン入線部で樹脂被覆を確実に冷却硬化させて変形を防止
することができる。これにより、光ファイバの品質を高
く維持しつつ、かつ、光ファイバの製造効率を向上させ
ることができ、光ファイバの品質と製造効率の向上とを
高次元に両立させることができる。
【0042】請求項2に記載の発明によれば、光ファイ
バの線引きを開始するにあたって、光ファイバの端部を
キャプスタンなどに順に取り付ける口出時には、パスラ
イン長zpを短くして口出作業の作業性を向上させること
ができる。また、口出作業が終了して実際に光ファイバ
を生産する生産時には、パスライン長zpを上述した式
(1)を満たすように変更し、製造効率良く、品質の良い
光ファイバを生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ファイバの線引時の様子を示す側面図であ
る。
【図2】本発明の光ファイバの線引方法を行う線引装置
を示す側面図である。
【図3】UV炉出口からの距離zとその位置でのファイバ
温度との関係を示すグラフである。
【図4】パスライン長zp、線速Vf、キャプスタン入線部
温度及び樹脂被覆の変形(潰れ)状況の関係を示す表で
あり、(a)は被覆樹脂のガラス転移点温度Tg=80℃の場合
であり、(b)はTg=105℃の場合である。
【図5】線速Vfと被覆樹脂に変形を生じさせないために
必要な最小パスライン長(必要長)との関係を示すグラ
フである。
【符号の説明】
1(1a,1b)…光ファイバ、2…硬化炉、3…コー
ティングダイ、4…ガイドローラー、5…キャプスタ
ン、6…巻取ボビン。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂被覆を形成させた後の外径が300〜6
    00μmとなる光ファイバを線速50m/min以上で線引きする
    光ファイバの線引方法であって、 前記樹脂被覆を硬化させる硬化炉の最下流側出口から、
    光ファイバを下流側に引っ張るキャプスタンの最上流側
    入線部までのパスライン長zpが、下記式(1)を満たす状
    態で、前記樹脂被覆を形成させつつ線引きすることを特
    徴とする光ファイバの線引方法。 【数1】
  2. 【請求項2】 前記樹脂被覆を形成させる際に、口出時
    には前記パスライン長zpを前記式(1)に関わらず短く
    し、生産時には前記パスライン長zpを前記式(1)を満た
    す長さに変更する、請求項1に記載の光ファイバの線引
    方法。
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