JP2001032046A

JP2001032046A - エッチング性および低熱膨張特性に優れたＦｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系合金

Info

Publication number: JP2001032046A
Application number: JP2000097179A
Authority: JP
Inventors: Ryoji Inoue; 良二井上; Hiroki Nakanishi; 寛紀中西; Shuichi Nakamura; 秀一中村; Takehisa Seo; 武久瀬尾
Original assignee: Hitachi Metals Ltd
Current assignee: Proterial Ltd
Priority date: 1999-05-17
Filing date: 2000-03-31
Publication date: 2001-02-06

Abstract

(57)【要約】【課題】シャドウマスクへの適用が可能なエッチング
性と低熱膨張特性を備えた合金を低コストにて提供す
る。【解決手段】質量％で、Ｓｉ：０．１％以下、Ｍｎ：
０．１０％未満、Ｃｏ：０．５％を超え３．５％未満、
（Ｎｉ＋Ｃｏ）：３４．０〜３８．０％、好ましくは３
５．０〜３７．０％、Ｂ，Ｃａ，Ｍｇのうち１種または
２種以上を総量で０．００４０％以下（０％を含む）含
有し、残部Ｆｅおよび不可避不純物からなるＦｅ−Ｎｉ
−Ｃｏ系合金である。更には、Ｂ、Ｃａ、Ｍｇのうち１
種または２種以上を総量で０．０００５〜０．００４０
％含有し、好ましくは、Ｓを０．００２０％以下に抑制
したＦｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系合金である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明が属する技術分野】本発明は、カラ−ブラウン管
内で使用されるシャドウマスク用Ｆｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系合
金で、特に低熱膨張特性に優れた材料に関する。

【０００２】

【従来の技術】テレビやパソコンに用いられるブラウン
管の技術動向としては、最近、大型化・フラット化・高
精細化の方向へ進んでいる。これに伴って、シャドマス
ク材に要求される特性としては、現行の通常のＦｅ−Ｎ
ｉ系インバ−合金（Ｆｅ−３６％Ｎｉ）で得られる熱膨
張特性よりも、さらに低熱膨張化が要求されている。

【０００３】通常組成のＦｅ−Ｎｉ系インバ−合金より
さらに低熱膨張化する手法として、下記の２通りの方法
が公表されている。１つは、主要成分がＦｅ−３６％Ｎ
ｉで、不純物を抑制することであり、あと１つは、Ｃｏ
を添加してＦｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系とすることである。これ
らの作用によって低熱膨張を図った公知例として、特開
昭６１−７６６５１、特開平７−３４０１、特開平８−
３１１６２２がある。また、Ｃｏ量を最少限の添加量に
抑制したものとして、特開平８−２０９３０６、特開平
８−３３３６３８、特表平８−５１２３６３がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記の手段は、優れた
低熱膨張特性を得る方法として有効である。しかし、こ
とシャドウマスク用材料となると、優れた低熱膨張特性
に加えその求められる重要な特性にエッチング性があ
り、従来の方法の場合、その見地からＣｏ量の検討や、
そのＮｉ量とのバランス、微量元素の検討が十分とは言
えず、コストと低熱膨張特性、エッチング性の点から不
十分であった。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を
解決し、実用化を図るために、低熱膨張特性に加えコス
トとエッチング性の点からＮｉ，Ｃｏ量とそのバラン
ス、そして微量元素の成分範囲を仔細に調査したとこ
ろ、下記の成分を有す材料が有効であることをつきとめ
た。すなわち、質量％で、Ｓｉ：０．１％以下、Ｍｎ：
０．１０％未満、Ｃｏ：０．５％を超え３．５％未満、
（Ｎｉ＋Ｃｏ）：３４．０〜３８．０％、Ｂ，Ｃａ，Ｍ
ｇのうち１種または２種以上を総量で０．００４０％以
下（０％を含む）含有し、残部Ｆｅおよび不可避不純物
からなるＦｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系合金であり、好ましくは
（Ｎｉ＋Ｃｏ）：３５．０〜３７．０％のＦｅ−Ｎｉ−
Ｃｏ系合金である。

【０００６】さらには、質量％で、Ｂ，Ｃａ，Ｍｇのう
ち１種または２種以上を総量で０．０００５〜０．００
４０％含有し、好ましくは、Ｓを０．００２０％以下に
抑制したＦｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系合金である。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の最たる特徴は、優れた低
熱膨張特性に加え、低コストにて優れたエッチング性を
も備えた合金を達成すべく、そのインバー合金としての
Ｃｏ量およびＮｉ量とのバランス、そして微量元素の成
分範囲による各特性への影響、さらには、エッチング時
に生じる現象をも詳細に考慮した結果として、本発明の
合金を見いだすに至ったところにある。以下、本発明を
構成する合金成分およびその限定理由について説明す
る。

【０００８】Ｍｎ：熱間加工性を改善する元素である
が、Ｆｅ−Ｎｉ系インバ−合金やＦｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系イ
ンバ−合金の熱膨張係数を大きくする作用があるため、
本発明においてはその含有量を０．１０％未満とした。

【０００９】Ｃｏ：Ｆｅ−Ｎｉ系インバ−合金におい
て、熱膨張係数を下げる元素として知られているが、原
料コストが非常に高いため、実用化のためにも３．５％
未満に制限する必要がある。しかし、０．５％以下では
その効果が認められないため、本発明においては含有量
を０．５％を超え３．５％未満とした。

【００１０】そして、本発明では、Ｃｏの含有量に加え
て（Ｎｉ＋Ｃｏ）量をも最適に調整することが、優れた
低熱膨張特性の達成に重要である。つまり、本発明のＭ
ｎ量を満たす合金であっても、Ｃｏを含有しないＦｅ−
Ｎｉ系合金に比して、本発明のＣｏ量を満足しかつ前記
Ｆｅ−Ｎｉ系合金のＮｉ量に等価の（Ｎｉ＋Ｃｏ）量を
有することが、熱膨張係数の低下に有効な手段である。
加えて、本発明の場合、その（Ｎｉ＋Ｃｏ）量を３４．
０〜３８．０％に調整することでシャドウマスクへの適
用に十分な低熱膨張特性を維持することができる。

【００１１】好ましくは（Ｎｉ＋Ｃｏ）：３５．０〜３
７．０％とし、更にはＦｅ−３６％Ｎｉ材よりも熱膨張
係数が低くなる組成範囲として、Ｃｏ：１％の場合（Ｎ
ｉ＋Ｃｏ）が３５．４〜３６．４％、Ｃｏ：２％の場合
（Ｎｉ＋Ｃｏ）が３５．１〜３６．８％、Ｃｏ：３％の
場合（Ｎｉ＋Ｃｏ）が３４．６〜３７．９％である。具
体的に述べておけば、本発明においてＣｏ：２．５％を
超え３．５％未満の場合、Ｎｉ：３２．０〜３４．０％
に調整することが望ましい。

【００１２】Ｂ，Ｍｇ，Ｃａ：Ｍｎ量を従来の０．２５
％レベルから０．１０％未満に制限したことによって、
エッチング孔の内孔輪郭がギザギザ状に変形するという
新たな問題が発生し、この場合、高精細を要求されるシ
ャドウマスク（特にパソコン用シャドウマスク）への適
用に問題を生じる恐れがある。そこで、種々微量元素を
調査したところ、これらの元素を適量含有せしめること
でこの問題が解消でき、正常なエッチング孔を形成でき
得ることを突きとめた。

【００１３】つまり、上記エッチング孔の内孔輪郭がギ
ザギザに変形するという現象は、Ｍｎ量を減らすことに
よってマトリックス中のＳが固定されなくなり、粒界に
存在するＳ量が増えるため、粒界腐食を受けやすくなっ
た結果として生じるものと考えられる。これを解消する
ために、微量元素のＢ，Ｃａ，Ｍｇのいずれかの適量含
有が有効である。本発明の場合、その効果を得るに好ま
しい含有量として、Ｂ，Ｃａ，Ｍｇのうち１種または２
種以上を総量で０．０００５％以上とする。

【００１４】しかし、それらの総量が０．００４０％を
超えるとエッチング速度・ピットの点から問題が発生す
る。つまり、Ｂの場合は、粒界の腐食抵抗が上がり、エ
ッチング速度を大幅に低下させる現象、ＣａやＭｇの場
合は、腐食されやすい介在物を形成して、大きなエッチ
ングピットを発生させる現象が生じる。従って、本発明
における適正な含有範囲は０．００４０％以下であり、
好ましくは０．０００５％以上である。加えて、Ｓを
０．００２０％以下に抑制することが好ましい。

【００１５】Ｓｉ：本発明のＦｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系合金の
場合、例えばその溶製過程での脱酸剤として使用される
Ｓｉの含有も可能であり、具体的には０．１％以下、好
ましくは０．０５％以下のＳｉを含んでもよい。

【００１６】

【実施例】［実施の態様１］Ｆｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系合金を
真空誘導溶解炉で溶解−鋳造して、表１に記載の成分を
有するインゴットを作製した。なお、表１のＢ，Ｃａ，
Ｍｇ量にて“−”で表示するものは、その含有量が各々
０．０００１％以下のものである。このインゴットを鍛
造して、厚さ１０ｍｍの板材とした。熱膨張係数の測定
は、鍛造後の板材から５ｍｍφ×２０ｍｍＬの試験片を
作製した後、８００℃×３０分、Ｎ_２雰囲気の条件で焼
鈍したものを供試材とした。なお、熱膨張係数の測定温
度範囲は、３０〜１００℃とした。結果を表１にまとめ
て示す。

【００１７】

【表１】

【００１８】表１の結果を、各Ｃｏ量に応じた熱膨張係
数に及ぼす（Ｎｉ＋Ｃｏ）量の影響として図２に纏めて
示す。図２より、本発明のＭｎ量を満たす合金であって
も、Ｃｏを含まないＮｉ単独のＦｅ−Ｎｉ系合金に比し
て、本発明のＣｏ量を満足しかつ前記Ｆｅ−Ｎｉ系合金
のＮｉ量に等価の（Ｎｉ＋Ｃｏ）量として３４．０〜３
８．０％に調整した合金の方が熱膨張係数が小さく、そ
して、十分な低熱膨張特性をも達成できることが判る。
そして、熱膨張係数がＦｅ−３６％Ｎｉ材よりも低くな
る組成範囲として、Ｃｏ：１％の場合（Ｎｉ＋Ｃｏ）が
３５．４〜３６．４％、Ｃｏ：２％の場合（Ｎｉ＋Ｃ
ｏ）が３５．１〜３６．８％、Ｃｏ：３％の場合（Ｎｉ
＋Ｃｏ）が３４．６〜３７．９％であることが判る。

【００１９】［実施の態様２］上記実施例１と同様の製
法により、表２に記載の成分を有するインゴットを作製
した後、鍛造・熱間加工により、厚さ３ｍｍの板材とし
た。そして、冷間圧延と焼鈍を繰り返して厚さ０．１２
ｍｍの帯鋼とし、エッチング性評価用の供試材とした。
エッチング性は、ＦｅＣｌ_３溶液を用いて濃度：４７Ｂ
ｅ度、温度：５０℃、スプレ−圧力：１９．６Ｎ／ｃｍ
^２の条件で、シャドウマスクの形状にエッチング孔を形
成した後、エッチング孔内孔輪郭形状と速度とピットの
発生状態で判定を行った。その結果を表２に併せて示
す。

【００２０】

【表２】

【００２１】これから、Ｂ，Ｃａ，Ｍｇを所定量含有す
るとエッチング孔内面形状が改善されるが、０．００４
％以上ではエッチング速度またはピットの点で問題が発
生することが判る。図１は、Ｎｏ．５のエッチング孔を
１５０倍の電子顕微鏡にて観察したものであり、本発明
を満たす場合のエッチング孔内面形状が改善されている
ことが判る。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、従来のＦｅ−Ｎｉ系イ
ンバ−合金より低熱膨張材が得られ、しかも、コスト・
エッチング性についても、シャドウマスクの要求コスト
・性能を満たした材料が得られるため、実用化が可能と
なり、ブラウン管の画質の向上が達成できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の効果の一例を示す電子顕微鏡写真であ
る。

【図２】本発明の効果の一例を示す図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者瀬尾武久島根県安来市安来町2107番地２日立金属株式会社安来工場内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】質量％で、Ｓｉ：０．１％以下、Ｍｎ：
０．１０％未満、Ｃｏ：０．５％を超え３．５％未満、
（Ｎｉ＋Ｃｏ）：３４．０〜３８．０％、Ｂ，Ｃａ，Ｍ
ｇのうち１種または２種以上を総量で０．００４０％以
下（０％を含む）含有し、残部Ｆｅおよび不可避不純物
からなることを特徴とするエッチング性および低熱膨張
特性に優れたＦｅ−Ｎｉ−Ｃｏ系合金。
【請求項２】質量％で、（Ｎｉ＋Ｃｏ）：３５．０〜
３７．０％であることを特徴とする請求項１に記載のエ
ッチング性および低熱膨張特性に優れたＦｅ−Ｎｉ−Ｃ
ｏ系合金。
【請求項３】質量％で、Ｂ、Ｃａ、Ｍｇのうち１種ま
たは２種以上を総量で０．０００５〜０．００４０％含
有することを特徴とする請求項１あるいは２に記載のエ
ッチング性および低熱膨張特性に優れたＦｅ−Ｎｉ−Ｃ
ｏ系合金。
【請求項４】質量％で、Ｓを０．００２０％以下に抑
制したことを特徴とする請求項１ないし３のいずれかに
記載のエッチング性および低熱膨張特性に優れたＦｅ−
Ｎｉ−Ｃｏ系合金。