JP2001026823A - 高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方法 - Google Patents
高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方法Info
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Abstract
性を有し、更に耐食性や低廉性をも兼ね備えたFe−Cr−
Si系合金の製造方法を提案する。 【解決手段】 Cr:1.5 wt%以上20wt%以下、Si:2.5
wt%以上10wt%以下を含有し、かつ、C及びNを合計量
で100wtppm以下に低減し、必要に応じてAl:5wt%以
下、Mn、Pの中から選ばれる1種以上をそれぞれ1wt%
以内で含有させ、残部は鉄及び不可避的不純物からなる
合金素材を熱間圧延及び冷間圧延を経て製造するに当た
り、熱延板焼鈍及び冷延時の中間焼鈍のうち、少なくも
一方の焼鈍を行う。
Description
も高い周波数において電磁鋼板として用いる場合に良好
な磁気特性を有するFe−Cr−Si系合金の有利な製造方法
に関する。
料として知られていて、なかでもSi量が3.5 wt%以下の
Fe−Si合金は、電磁鋼板として商用周波数用の各種鉄心
を中心に多用されている。しかし、使用周波数が商用周
波数よりも高い場合には、かかるSi量3.5 wt%以下の電
磁鋼板では鉄損が大きくなる不利がある。そのため、こ
のような商用周波数よりも高い周波域で用いられる用途
においては、鉄損特性を改善するために、更に電気抵抗
の高い材料が求められている。
増大するから、上記のような高周波域での鉄損を低減す
る上で好都合である。しかし、その一方で、Si量が3.5
wt%を超えると、合金が極めて硬く脆くなり、加工性が
劣ってしまうので圧延による製造、加工が困難となる。
特にSi量が5.0 wt%を超える場合には、冷間加工はもろ
んのこと、温間加工も不可能になってしまう。
度のSiを含有しても工業的に鋼板を製造できる技術とし
ては、特開昭61−166923号公報に開示されてい
る低温強圧下の熱間圧延による方法、特開昭62−22
7078号公報に開示されているSiの拡散浸透処理によ
る方法が代表的である。
61−166923号公報に開示された技術は、合金と
しての脆性を見かけ上改善するために圧延組織を微妙に
調整しなければならない。したがって、製造過程で厳密
な制御を行わなければならず、工業的に安定して生産す
るのは非常に困難である。一方、後者の特開昭62−2
27078号公報に開示された技術では、特殊な拡散浸
透法を用いるため、工業的な製造を行う場合にはコスト
において極めて不利である。また、良好な高周波磁気特
性を得るためにSi量をこれらの方法で増量しても、電気
抵抗の増加には限界がある。特に、通常の工業的な圧延
法で製造できる3.5 wt%以下のSi量の場合には、50μΩ
cm台までの比抵抗しか得られなかった。また、これらの
Fe−Si合金は、耐食性が劣る点も鉄心などの用途におい
ては問題とされる。
に電気抵抗を増大させる効果があり、しかもSiほどは加
工性を劣化させない。そこで、Siの一部をAlで置換する
ことにより、加工性が改善されることが知られている。
Alは、Siよりもコスト高になり、磁束密度の減少が大き
いなどの不利があるが、例えばほぼ同等の電気抵抗を得
られるSi:3 wt%、Al:0.7 wt%の組成の鋼と、Si:3.
7 wt%の組成の鋼とでは、Alを0.7 wt%含有する前者の
鋼が、加工性、冷延性ともに良好である。磁気特性もほ
ぼ同等となる。しかし、Si:3 wt%以上の鋼において、
SiとAlとの合計量が4wt%以上になる場合は、冷間圧延
が不能となり、更に、SiとAlとの合計量が6wt%を超え
る場合には、温間圧延でさえも困難になっていた。ま
た、この成分系の場合においても結局、工業的には60μ
Ωcm未満の比抵抗しか得られていなかった。
ることにより高周波域での鉄損低減を図るよりも、本質
的に加工性の改善された新規な成分系の合金によって、
高周波域にわたる鉄損特性と共に、加工性をも確保し、
更に、耐食性などを満たすことが望ましい。
のFe−Si合金の耐食性を改善する手段として、Crを一定
量添加する方法が、特開昭52−24117号公報及び
特開昭61−272352号公報に開示されている。こ
のように、Crの添加により耐食性を向上させた合金は知
られている。しかし、これらの公報に開示された合金は
いずれも、磁気特性としては従来の合金と同程度で、格
段の改良を加えたものではなかった。
であり、加工性の改善された成分系であるFe−Cr−Si系
合金を素材として、製造条件に工夫を加えることによ
り、一層良好な鉄損特性を得ることを可能にした製造方
法を提案することを目的とする。
成すべく鋭意研究を行った結果、次のような知見を得
た。まず、加工性(ほぼ靱性によって評価することがで
きる。)の確保に関して、Fe−Si合金やFe−Si−Al合金
の靱性向上のためには予想外にもCrを共存させることが
効果があることを見いだした。すなわち、これまではCr
を添加するほど靱性は劣化すると考えられてきたが、Si
が3 wt%以上又はAlが1 wt%以上の含有量であっても、
C+Nの含有量を十分に低減した上で、一定量以上のCr
を含有させることにより、むしろ高い靱性が得られるこ
とを見出した。しかも、更にSi量又はAl量が低いFe−Cr
−Si系合金(Fe−Cr−Si合金の他、Fe−Cr−Si−Al合金
も含む。以下同じ。)であって、比抵抗が60μΩcm以上
となる成分系においても、C+Nの含有量を十分に低減
すれば、同等の比抵抗をもつFe−Si合金やFe−Si−Al合
金よりも加工性が大幅に向上することを見出したのであ
る。
を同時に含有させることにより、電気抵抗の増大に相乗
的な効果が現れることを見いだした。その結果、特に高
周波域での鉄損を、SiやAlのみを含有するFe−Si合金、
Fe−Al合金、更にはFe−Si−Al合金に比べて格段に低減
することができるに至った。しかも、このようにCrを添
加すれば、このCrの効果によって耐食性は従来のFe−Si
系に比べて確実に向上する。
性に優れていることから、熱間圧延及び冷間圧延を経て
製造することきには、熱延後の熱延板焼鈍、あるいは冷
間圧延時や温間圧延時の中間焼鈍を行わないでも製造で
きるが、この熱延板焼鈍や中間焼鈍を行うならば、合金
の集合組織の変化を通じて、鉄損特性が更に向上するこ
とを見出した。
る。すなわち、この発明は、Cr:1.5 wt%以上20wt%以
下及びSi:2.5 wt%以上10wt%以下を含有し、かつ、C
及びNを合計量で100 wtppm 以下に低減し、残部は鉄及
び不可避的不純物からなる合金素材を熱間圧延し、次い
で熱延板焼鈍を行った後、1回又は中間焼鈍を含む2回
以上の冷間圧延又は温間圧延を施して最終板厚とし、更
に、仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする高周波鉄損特性
に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方法である。
20wt%以下、Si:2.5 wt%以上10wt%以下及びAl:5 wt
%以下を含有し、かつ、C及びNを合計量で100 wtppm
以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純物からなる合
金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行った後、1
回又は中間焼鈍を含む2回以上の中間焼鈍を含む冷間圧
延又は温間圧延を施して最終板厚とし、更に、仕上げ焼
鈍を施すことを特徴とする高周波鉄損特性に優れるFe−
Cr−Si系合金の製造方法である。
20wt%以下及びSi:2.5 wt%以上10wt%以下を含み、Mn
及びPから選ばれる1種又は2種をそれぞれ1 wt%以内
で含有し、かつ、C及びNを合計量で100 wtppm 以下に
低減し、残部は鉄及び不可避的不純物からなる合金素材
を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行った後、1回又は
中間焼鈍を含む2回以上の中間焼鈍を含む冷間圧延又は
温間圧延を施して最終板厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施
すことを特徴とする高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si
系合金の製造方法である。
20wt%以下、Si:2.5 wt%以上10wt%以下及びAl:5 wt
%以下を含み、Mn及びPから選ばれる1種又は2種をそ
れぞれ1 wt%以内で含有し、かつ、C及びNを合計量で
100 wtppm 以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純物
からなる合金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行
った後、1回又は中間焼鈍を含む2回以上の中間焼鈍を
含む冷間圧延又は温間圧延を施して最終板厚とし、更
に、仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする高周波鉄損特性
に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方法である。
20wt%以下及びSi:2.5 wt%以上10wt%以下を含有し、
かつ、C及びNを合計量で100 wtppm 以下に低減し、残
部は鉄及び不可避的不純物からなる合金素材を熱間圧延
し、次いで熱延板焼鈍を行うことなく中間焼鈍を含む2
回以上の冷間圧延又は温間圧延を施して最終板厚とし、
更に、仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする高周波鉄損特
性に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方法である。
20wt%以下、Si:2.5 wt%以上10wt%以下及びAl:5 wt
%以下を含有し、かつ、C及びNを合計量で100 wtppm
以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純物からなる合
金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行うことなく
中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延又は温間圧延を施し
て最終板厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施すことを特徴と
する高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方
法である。
20wt%以下及びSi:2.5 wt%以上10wt%以下を含み、Mn
及びPから選ばれる1種又は2種をそれぞれ1 wt%以内
で含有し、かつ、C及びNを合計量で100 wtppm 以下に
低減し、残部は鉄及び不可避的不純物からなる合金素材
を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行うことなく中間焼
鈍を含む2回以上の冷間圧延又は温間圧延を施して最終
板厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする高
周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方法であ
る。
20wt%以下、Si:2.5 wt%以上10wt%以下及びAl:5 wt
%以下を含み、Mn及びPから選ばれる1種又は2種をそ
れぞれ1 wt%以内で含有し、かつ、C及びNを合計量で
100 wtppm 以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純物
からなる合金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行
うことなく中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延又は温間
圧延を施して最終板厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施すこ
とを特徴とする高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合
金の製造方法である。
組成範囲について数値限定した理由について説明する。
まず、Crは、S 更にはAlとの相乗効果によって電気抵抗
を大幅に向上させて高周波域での鉄損を低減し、更には
耐食性を向上させる基本的な合金成分である。しかも、
3.5 wt%以上のSi含有量の場合、又は3 wt%以上のSi含
有量かつ1 wt%を超えるAl含有量の場合であっても温間
圧延可能な程度の靱性を得るのに極めて有効である。そ
の観点からCrは2 wt%以上を要する。Si量やAl量が上記
の場合よりも少ないときには、Cr量を更に減じても加工
性が確保できるが、Crの加工性向上効果を発揮させ、か
つ、合金の比抵抗を60μΩcm以上とするためには、1.5
wt%以上のCrが必須である。一方、20wt%を超えると靱
性向上の効果が飽和するとともに、コスト上昇を招くの
で、Crの含有量は1.5 wt%以上、20wt%以下、好ましく
は2 wt%以上、10wt%以下、より好ましくは、3 wt%以
上、7 wt%以下とする。Crが有する上記の高周波磁気特
性向上、耐食性向上の効果をより一層望む場合には、Cr
量を5.5 wt%を超える量で含有させることが、より望ま
しい。
大幅に上昇させ、高周波域での鉄損を低減するのに有効
な成分である。Si量が2.5 wt%未満ではCrやAlを併用し
ても磁束密度をあまり犠牲にせずに60μΩcm以上の比抵
抗を得るには至らない。一方、10wt%を超えるとCrを含
有させても温間圧延可能なまでの靱性が確保できないの
で、Siの含有量は2.5 wt%以上、10wt%以下、好ましく
は3 wt%以上、7 wt%以下、より好ましくは3.5 wt%以
上、5 wt%以下と規定する。
電気抵抗を大幅に向上させ、高周波域での鉄損を低減す
るのに有効な成分であるので、この発明では必要に応じ
てAlを含有させることができる。しかし、Al量が5 wt%
を超えるとコスト上昇を招く上に、この発明のようにSi
量が2.5 wt%以上含有されている場合にCrを含有させて
も温間圧延可能なまでの靱性が確保できないので、Alの
含有量は5 wt%以下とする。Alの下限は特に限定する必
要がないが、脱酸や結晶粒成長性の改善のために0.005
〜0.3 wt%程度を含有させることがある。更に、Alを積
極的に電気抵抗の増大のために活用するときには、この
発明のようにSiが2.5 wt%以上含有されている合金では
Alが0.5 wt%未満では電気抵抗を更に上昇させるに十分
な効果が得られない。したがって、この好ましくはAlの
含有量は0.005 wt%以上、5 wt%以下、より好ましくは
0.5 wt%以上、3 wt%以下と規定する。
化させるためにできる限り低減するのが好ましく、その
許容量はこの発明のCr量、Si量の場合には、高靱性を確
保するために合計量で100 wtppm 以下に抑える必要があ
る。すなわち、先に述べたとり、この発明では、C+N
の含有量を100 wtppm 以下に低減した上で、一定量以上
のCrを含有させることにより、たとえSiを多量に (3.5
wt%を超える量) で含有させる場合であっても、優れた
高い靱性が得られ、製造時及び製品加工時の加工性が改
善されるとともに、高周波磁気特性が格段に向上するの
である。C+Nの含有量は、好ましくは60wtppm 以下、
より好ましくは30wtppm 以下である。なお、C又はNの
各々は、Cが30wtppm 以下、Nが80wtppm 以下が良く、
より好ましくはCが10wtppm 以下、Nが20wtppm 以下が
良い。また、C、N以外の不純物量は特に限定されない
が、S:20wtppm 以下、好ましくは10wtppm 以下、より
好ましくは5 wtppm 以下がよい。O:50wtppm 以下、好
ましくは30wtppm 以下、より好ましくは15wtppm 以下が
良い。又は、不純物C+S+N+Oの合計量で120 wtpp
m 以下が好ましく、より好ましくは50wtppm 以下が良
い。
することにより、一層の電気抵抗の上昇を与える。これ
らの成分の添加により、この発明の趣旨が損なわれるこ
となく、更なる鉄損の低減が達成できる。そこで、この
発明では、Mn、Pの中から選ばれる1種又は2種を含有
させることができる。とはいえ、これらの成分を大量に
添加するとコスト上昇を招くので、それぞれの添加量は
1 wt%を上限とする。より好ましくは0.5 wt%以下が良
い。なお、Mn量、P量の下限は、特に限定するものでは
ないが、前述したMn、Pの添加効果を十分に発揮させる
ためには、Mnについては0.1 wt%以上、Pについては0.
05wt%以上を含有させることが好ましい。
Cr−Si系合金薄板は、C及びN合計量を100 wt%以下に
するように、原料として純度99.9wt%以上の高純度の電
解鉄、電解クロム、金属Si、金属Alを用い、Mn、Pを添
加する場合には、これらも高純度原料を用いて製造でき
る。あるいは、転炉法で製造する場合には、所定の純度
にまで十分に精錬し、かつ、後工程での汚染を受けない
ようにして製造することができる。溶製に際しては、転
炉法の他、例えば、高真空(10-3Torr以下の圧力)の真
空溶解炉を用いることもできる。
材は、連続鋳造又は造塊−分塊圧延によりスラブとする
ことができる。また、薄スラブ連続鋳造法を用いて、板
厚の薄いスラブを製造することもできる。得られたスラ
ブは、加熱保持後に熱間圧延に供するか、また、CC-DR
法やHCR 法のように、連続鋳造時の顕熱を保持したまま
加熱することなく熱間圧延に供することができる。
とによって、次工程の冷間圧延ないしは温間圧延におけ
る加工性、すなわち圧延性を良好にすることができる。
これは、この発明のFe−Cr−Si系合金組成の場合には、
熱延板の表面部分の方が中心部分よりも靱性が高く、加
工性が優れているとの新知見に基づくものである。その
ための熱延板の厚みは3 mm以下、好ましくは2.5 mm以
下、より好ましくは1.5mm以下とする。
行う。熱延板焼鈍を行うことにより、圧延された素材の
集合組織が改善され、鉄損特性の向上に有利に作用す
る。また、熱延板焼鈍を行うことにより、圧延素材を軟
化できるため、引き続いて行う冷間圧延や温間圧延の作
業性を改善することができる。この熱延板焼鈍条件は、
例えば、温度700 〜1100℃、時間1 秒〜2 時間で行う。
焼鈍温度が高い場合や焼鈍時間が長い場合は、焼鈍効果
が飽和して鉄損特性の一層の改善が見込めないこと及び
コスト上昇の要因となること、焼鈍温度が低い場合や焼
鈍時間が短い場合は鉄損特性の向上効果が小さいことか
ら、これらの作用効果を考慮して上記の範囲内で定めれ
ば良い。
ラスト等により熱延スケールを除去した後に、冷間圧延
や温間圧延を行う。熱延板の靱性が改善されているた
め、更に温間や冷間で圧延して0.4 mm以下の厚みの薄板
とすることができる。一般に、板厚を減じると、とりわ
け高周波において渦電流損が有利に抑制され、低鉄損に
なることは周知である。しかし、これまでは高電気抵抗
の材料は圧延性が悪く、通常の圧延法によっては0.5 mm
程度までしか減厚されていなかった。また、単に厚みを
減じてもヒステリシス損失のために、十分な鉄損低減が
できないとされてきた。この点、この発明では、素材成
分と純度を調整することにより、減厚した場合の高周波
鉄損特性の効果を促進し得る。かかる減厚の効果を得る
ためには、板厚を0.4 mm以下とすることが有効である。
もっとも、0.01mmよりも薄くするには、コスト上、工業
的に無理があるので、板厚の範囲を0.01〜0.4 mm、好ま
しくは0.03〜0.35mmである。
の圧延又は途中焼鈍を含む2回以上の圧延により行う。
途中焼鈍を行うことは、圧延材の集合組織の改善を通じ
て磁気特性の向上に有利に作用する。また、この冷間圧
延や温間圧延の作業性を改善することができる。途中焼
鈍の条件は、例えば、温度600 〜1000℃で時間1 秒〜10
分の範囲とする。焼鈍温度が低い場合や焼鈍時間が短い
場合は鉄損特性の向上効果が小さいこと、焼鈍温度が高
い場合や焼鈍時間が長い場合は、焼鈍効果が飽和して鉄
損特性の一層の改善が見込めないこと及びコスト上昇の
要因となることから、これらの作用効果を考慮して上記
の範囲内で定めれば良い。ここで、冷間圧延及び温間圧
延は、コストの面からできるだけ低い温度とすることが
好ましい。温間圧延を行う場合は、300 ℃程度以下の温
度とすることが望ましい。
板焼鈍と、冷間圧延や温間圧延時の途中焼鈍とのうち、
少なくとも一方を行うことを必須とする。これにより、
圧延材の集合組織の改善を通じて鉄損特性の向上に有利
に作用するとともに、この冷間圧延や温間圧延の作業性
が改善できる。もちろん、熱延板焼鈍及び途中焼鈍の双
方を行うことも可能である。
施し、更に絶縁被膜を被成して製品とする。これらの仕
上げ焼鈍の条件、絶縁被膜の被成条件に関しては、通常
の電磁鋼板や電磁ステンレス鋼板で常用される方法と同
様にすればよい。
部は実質的に鉄の組成よりなる種々の鋼を溶製し、連続
鋳造によりスラブとした。これらのスラブを1100℃に加
熱してから、熱間圧延を行って板厚1.6 mmとした。
ケール処理をした後、850 ℃で20秒の途中焼鈍を含む2
回の冷間圧延又は温間圧延を行って最終板厚0.1 mmとし
た。冷延後、820 ℃の仕上げ焼鈍を行い、絶縁被膜を表
面に被成させて製品とした。かくして得られた製品の機
械的特性、鉄損特性及び耐食性について調べた結果を表
2に示す。なお、表中、延性−脆性遷移温度は、熱延板
からVノッチのシャルピー試験片を圧延方向と平行に採
取し、25℃おきの温度でシャルピー衝撃値を測定して、
脆性破面率が50%になる温度、すなわち延性−脆性遷移
温度を靱性の指標として求めた。また、鉄損特性は、エ
プスタイン試験片を調製して周波数10kHz 、磁束密度0.
1 T における鉄損値を測定した。また、同じ薄板から別
途、幅30mm、長さ280 mmの試験片を切り出して、四端子
法によって比抵抗を測定した。また、耐食性はJIS Z237
1 に準拠した塩水噴霧試験を2 時間行い、板表面の錆発
生面積率が20%以下なら「良」、20%を超え80%以下な
ら「中」、80%超えなら「劣」と判定した。
C+N量が100 wtppm を超えているため、延性−脆性遷
移温度が高い。番号6の鋼は、C+N量が100 wtppm を
超えているため、延性−脆性遷移温度が高い。番号7の
鋼は、Cr量が1.5 wt%に満たないため、延性−脆性遷移
温度が高く、かつ、耐食性が悪い。番号9の鋼は、Crが
添加されていない延性−脆性遷移温度が極めて高く、か
つ、耐食性が悪い。番号10の鋼は、Si量が2.5 wt%に満
たないため、比抵抗が低く、高周波での鉄損特性が劣
る。一方、番号2〜5及び8の鋼は、この発明の成分組
成範囲内にあるため、靱性も鉄損も良好であって磁性材
料として極めて優秀であり、耐食性も優れている。
分組成を含み、残部は実質的に鉄の組成よりなる鋼を溶
製し、連続鋳造によりスラブとした。これらのスラブを
1050℃に加熱してから、熱間圧延を行って板厚2.0 mmと
した。熱延後は、熱延板焼鈍を行うことなく脱スケール
処理をした後、中間焼鈍回数が異なる種々の圧延条件で
冷間圧延又は温間圧延を行って、表3に示す最終板厚に
なる鋼板を得た。なお、中間焼鈍条件は、850 ℃で15秒
であった。 その後、835 ℃の仕上げ焼鈍を行い、絶縁
被膜を表面に被成させて製品とした。
調べた結果を表3に併記する。表2に示した鉄損特性に
加え、周波数1 kHz 、磁束密度1.0 T における鉄損値も
示す。表3より、同一鋼種、同一板厚であっても、中間
焼鈍を施さない鋼に比べて、中間焼鈍を施した鋼は、鉄
損が軽減されていることが分かる。また、同一鋼種の場
合は、板厚が薄いほど、中間焼鈍の回数が多いほど鉄損
の低い製品が得られることがわかる。
残部は実質的に鉄の組成よりなる種々の鋼を溶製し、連
続鋳造によりスラブとした。これらのスラブを1150℃に
加熱してから、熱間圧延を行って板厚1.2 mmとした。熱
延後は、950 ℃で10秒の熱延板焼鈍を行った後、脱スケ
ール処理をした後、900 ℃で10秒の途中焼鈍を含む2回
の冷間圧延又は温間圧延を行って最終板厚0.1 mmとし
た。熱延後、850 ℃の仕上げ焼鈍を行い、絶縁被膜を表
面に被成させて製品とした。かくして得られた製品の鉄
損特性について調べた結果を表4に示す。表4から、こ
の発明に従う成分組成範囲を有する鋼は、良好な鉄損特
性を有することが分かる。
組成を含み、残部は実質的に鉄の組成よりなる鋼を溶製
し、連続鋳造によりスラブとした。これらのスラブを11
00℃に加熱してから、熱間圧延を行って板厚1.6 mmとし
た。
焼鈍を行わない場合との2条件を行い、次いで脱スケー
ル処理をした後、中間焼鈍回数の異なる種々の圧延条件
で冷間圧延又は温間圧延を行って、表5に示す最終板厚
になる鋼板を得た。なお、中間焼鈍条件は、850 ℃で10
秒であった。 その後、820 ℃の仕上げ焼鈍を行い、絶
縁被膜を表面に被成させて製品とした。
調べた結果を表5に併記する。表5より、同一鋼種、同
一板厚であっても、熱延板焼鈍を施さない鋼に比べて、
熱延板焼鈍を施した鋼は、鉄損が軽減されていることが
分かる。また、同一鋼種の場合は、板厚が薄いほど、中
間焼鈍の回数が多いほど鉄損の低い製品が得られること
がわかる。
残部は実質的に鉄の組成よりなる種々の鋼を溶製し、連
続鋳造によりスラブとした。これらのスラブを1050℃に
加熱してから、熱間圧延を行って板厚2.2 mmとした。
ケール処理をした後、950 ℃で10秒の途中焼鈍を含む2
回の冷間圧延又は温間圧延を行って最終板厚0.1 mmとし
た。熱延後、830 ℃の仕上げ焼鈍を行い、絶縁被膜を表
面に被成させて製品とした。かくして得られた製品の機
械的特性、鉄損特性及び耐食性について調べた結果を表
7に示す。なお、表中、延性−脆性遷移温度、鉄損特性
及び耐食性の測定法は実施例1と同様である。
鋼は、Al量が5 wt%を超えているため、延性−脆性遷移
温度が高く、通常の圧延で製造するのが困難である。ま
た、番号49の鋼は、Mn量が1 wt%を超えているため、鉄
損特性が劣っている。一方、番号42, 44, 46〜48の鋼
は、この発明の成分組成範囲内にあるため、靱性も鉄損
も良好であって磁性材料として極めて優秀であり、耐食
性も優れている。
分組成を含み、残部は実質的に鉄の組成よりなる鋼を溶
製し、連続鋳造によりスラブとした。これらのスラブを
1000℃に加熱してから、熱間圧延を行って板厚2.3 mmと
した。
焼鈍を行わない場合との2条件を行い、次いで脱スケー
ル処理をした後、中間焼鈍回数の異なる種々の圧延条件
で冷間圧延又は温間圧延を行って、最終板厚0.1 mmの鋼
板を得た。なお、中間焼鈍条件は、900 ℃で20秒であっ
た。 その後、850 ℃の仕上げ焼鈍を行い、絶縁被膜を
表面に被成させて製品とした。
調べた結果を表8に示す。表8より、同一鋼種、同一板
厚であっても、熱延板焼鈍を施さない鋼に比べて、熱延
板焼鈍又は中間焼鈍を施した鋼は、鉄損が軽減されてい
ることが分かる。
量6.5 wt%までのFe−Si合金やFe−Al合金に比べて格段
に優れた高周波鉄損特性を、良好な加工性とともに確保
することかできる。しかも、耐食性や製造コスト面から
も有利であり、総合的に極めて優秀な磁性材料を与える
ものである。
2)
組成範囲について数値限定した理由について説明する。
まず、Crは、Si更にはAlとの相乗効果によって電気抵抗
を大幅に向上させて高周波域での鉄損を低減し、更には
耐食性を向上させる基本的な合金成分である。しかも、
3.5 wt%以上のSi含有量の場合、又は3 wt%以上のSi含
有量かつ1 wt%を超えるAl含有量の場合であっても温間
圧延可能な程度の靱性を得るのに極めて有効である。そ
の観点からCrは2 wt%以上を要する。Si量やAl量が上記
の場合よりも少ないときには、Cr量を更に減じても加工
性が確保できるが、Crの加工性向上効果を発揮させ、か
つ、合金の比抵抗を60μΩcm以上とするためには、1.5
wt%以上のCrが必須である。一方、20wt%を超えると靱
性向上の効果が飽和するとともに、コスト上昇を招くの
で、Crの含有量は1.5 wt%以上、20wt%以下、好ましく
は2 wt%以上、10wt%以下、より好ましくは、3 wt%以
上、7 wt%以下とする。
Claims (8)
- 【請求項1】Cr:1.5 wt%以上20wt%以下及びSi:2.5
wt%以上10wt%以下を含有し、かつ、C及びNを合計量
で100 wtppm 以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純
物からなる合金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を
行った後、1回又は中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延
又は温間圧延を施して最終板厚とし、更に、仕上げ焼鈍
を施すことを特徴とする高周波鉄損特性に優れるFe−Cr
−Si系合金の製造方法。 - 【請求項2】Cr:1.5 wt%以上20wt%以下、 Si:2.5 wt%以上10wt%以下及びAl:5 wt%以下を含有
し、かつ、C及びNを合計量で100 wtppm 以下に低減
し、残部は鉄及び不可避的不純物からなる合金素材を熱
間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行った後、1回又は中間
焼鈍を含む2回以上の中間焼鈍を含む冷間圧延又は温間
圧延を施して最終板厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施すこ
とを特徴とする高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合
金の製造方法。 - 【請求項3】Cr:1.5 wt%以上20wt%以下及びSi:2.5
wt%以上10wt%以下を含み、Mn及びPから選ばれる1種
又は2種をそれぞれ1 wt%以内で含有し、かつ、C及び
Nを合計量で100 wtppm 以下に低減し、残部は鉄及び不
可避的不純物からなる合金素材を熱間圧延し、次いで熱
延板焼鈍を行った後、1回又は中間焼鈍を含む2回以上
の中間焼鈍を含む冷間圧延又は温間圧延を施して最終板
厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする高周
波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方法。 - 【請求項4】Cr:1.5 wt%以上20wt%以下、 Si:2.5 wt%以上10wt%以下及びAl:5 wt%以下を含
み、Mn及びPから選ばれる1種又は2種をそれぞれ1 wt
%以内で含有し、かつ、C及びNを合計量で100 wtppm
以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純物からなる合
金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行った後、1
回又は中間焼鈍を含む2回以上の中間焼鈍を含む冷間圧
延又は温間圧延を施して最終板厚とし、更に、仕上げ焼
鈍を施すことを特徴とする高周波鉄損特性に優れるFe−
Cr−Si系合金の製造方法。 - 【請求項5】Cr:1.5 wt%以上20wt%以下及びSi:2.5
wt%以上10wt%以下を含有し、かつ、C及びNを合計量
で100 wtppm 以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純
物からなる合金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を
行うことなく中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延又は温
間圧延を施して最終板厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施す
ことを特徴とする高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系
合金の製造方法。 - 【請求項6】Cr:1.5 wt%以上20wt%以下、 Si:2.5 wt%以上10wt%以下及びAl:5 wt%以下を含有
し、かつ、C及びNを合計量で100 wtppm 以下に低減
し、残部は鉄及び不可避的不純物からなる合金素材を熱
間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行うことなく中間焼鈍を
含む2回以上の冷間圧延又は温間圧延を施して最終板厚
とし、更に、仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする高周波
鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方法。 - 【請求項7】Cr:1.5 wt%以上20wt%以下及びSi:2.5
wt%以上10wt%以下 を含み、Mn及びPから選ばれる1種又は2種をそれぞれ
1 wt%以内で含有し、かつ、C及びNを合計量で100 wt
ppm 以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純物からな
る合金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行うこと
なく中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延又は温間圧延を
施して最終板厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施すことを特
徴とする高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合金の製
造方法。 - 【請求項8】Cr:1.5 wt%以上20wt%以下、 Si:2.5 wt%以上10wt%以下及びAl:5 wt%以下を含
み、Mn及びPから選ばれる1種又は2種をそれぞれ1 wt
%以内で含有し、かつ、C及びNを合計量で100 wtppm
以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純物からなる合
金素材を熱間圧延し、次いで熱延板焼鈍を行うことなく
中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延又は温間圧延を施し
て最終板厚とし、更に、仕上げ焼鈍を施すことを特徴と
する高周波鉄損特性に優れるFe−Cr−Si系合金の製造方
法。
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JP19716799A JP3758425B2 (ja) | 1999-07-12 | 1999-07-12 | Fe−Cr−Si系電磁鋼板の製造方法 |
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CN115896620A (zh) * | 2022-11-15 | 2023-04-04 | 中国核动力研究设计院 | 一种耐腐蚀FeCrAl包壳及其制备方法 |
-
1999
- 1999-07-12 JP JP19716799A patent/JP3758425B2/ja not_active Expired - Fee Related
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