JP2001262289A - 1kHz以上の周波域における磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板 - Google Patents

1kHz以上の周波域における磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板

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JP2001262289A
JP2001262289A JP2000071508A JP2000071508A JP2001262289A JP 2001262289 A JP2001262289 A JP 2001262289A JP 2000071508 A JP2000071508 A JP 2000071508A JP 2000071508 A JP2000071508 A JP 2000071508A JP 2001262289 A JP2001262289 A JP 2001262289A
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Osamu Kondo
修 近藤
Michiro Komatsubara
道郎 小松原
Akio Fujita
明男 藤田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 1kHz 以上の周波数域で特に優れた磁気特性
を有する高周波リアクトル用無方向性電磁鋼板を提案す
る。 【解決手段】Siが2.5 〜10mass%及びCrが1.5 〜20mass
%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、こ
の不可避的不純物中のC及びNをそれぞれ0.005mass%
以下に抑制するとともに、Ti及びNbのうち少なくとも1
種を0.005 mass%以下に抑制してなる鋼板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば高周波リ
アクトルに用いて好適な無方向性電磁鋼板に関し、特
に、1 kHz 以上の周波数域で優れた磁気特性を持つ無方
向性電磁鋼板を提案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境の保護・改善を目的に、
省エネルギー化への機運が高まっている。電気機器に注
目すると、高効率化、省電力化のために、インバーター
方式を採用する製品が増えてきており、その周波数も高
効率化のために高周波域へと年々移ってきている。従来
からインバーター化、高周波化に伴い、力率改善目的で
リアクトルが使用されているが、更に電源汚染を防ぐ目
的でインバーター機器に高周波リアクトルの使用が増し
てきている。これら高周波リアクトルは、1 kHz以上、
更には10kHz 以上の周波数域で使用されることから、従
来からある、通常の高周波対応珪素鋼板を用いたので
は、発熱が大きくなってしまい、使用することが困難で
あったため、特殊な材料を使用せざるを得なかった。
【0003】高周波鉄損を改善するためには、鋼の固有
抵抗を高めることが重要であり、一般にはSiやAlの含有
量を増す手法がとられていた。しかし、Si、Alの含有量
を増すと加工性が劣化し、通常の方法で製造することは
困難であった。この製造性を改善する技術としては、高
珪素鋼板に関する特開昭61−166923号公報に記
載された低温強圧下の熱間圧延による方法や、特開昭6
2−227078号公報に記載されたSiの拡散浸透処理
による方法などがある。しかし、いずれの技術も、高S
i、Al鋼が本質的に具備する脆性を改善するものではな
く、それによって製造された製品は加工性が極めて悪
く、リアクトルコア等に加工するのが困難であった。ま
た、前者の特開昭61−166923号公報に開示され
た技術は、合金としての脆性を見かけ上改善すべく圧延
組織の微妙な調整が必要とするものであり、製造過程で
厳密な制御を行わなければならないことから、工業的に
安定して生産するのは困難である。一方、後者の特開昭
62−227078号公報に開示された技術では、特殊
な拡散浸透法を用いるため、工業的な製造を行う場合に
はコストにおいて極めて不利であり、また、その結晶粒
は粗大となることから、高周波鉄損には不利である。
【0004】実際、Siの拡散浸透処理による高Si材とし
て、6.5 mass%Siを含有させた鋼板が存在し、インバー
ターエアコン用のリアクトルコアとして使用されている
が、その伸びは5 %程度であり、通常の方法では打ち抜
き加工や曲げ加工は困難であるため、短冊状に加工され
た鋼板を積層しリアクトルコアを製造している。通常の
方法で曲げ加工や打ち抜き加工が可能であれば、巻きコ
アやEIコアのような打ち抜き・積層コアを製造でき、
その加工費用の低減に寄与するところは大きい。
【0005】また、高Si量とせずに鋼の固有抵抗を高め
るためにCrを添加する技術が、特開平11−22909
5号公報に記載されている。しかしながら、そのSiの含
有量は通常の珪素鋼板のそれの範囲を超えたものではな
く、また、電気自動車用モータコア用素材を目的とし、
その使用可能周波数域も、従来からの高周波用途の珪素
鋼板と同様に1kHz未満の周波数に対応したものであり、
1 kHz 以上の高周波リアクトル用素材としては十分な高
周波磁気特性が得られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
技術においては、1 kHz 以上の周波数用途に利用できる
まで固有抵抗を高めることは、Si、Alの利用の他は行わ
れておらず、そして、鋼の固有抵抗を高めた高Si、Al鋼
の素材自体が本質的にそなえる脆性を改善することは行
われてなかったのが現状であった。
【0007】そこで、この発明は、上記の点に鑑み、高
Si鋼の脆性を改善することで製造を容易にし製品の加工
性の改善を図り、よって高い固有抵抗と良好な打ち抜き
加工性及び曲げ加工性を併せ持ち、通常の圧延法にて製
造可能で、最終焼鈍にて結晶粒径を高周波用に最適化可
能である、1kHz 以上の周波数域で特に優れた磁気特性
を有する高周波リアクトル用無方向性電磁鋼板を提案す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らはFe−Si合金や
Fe−Si−Al合金について、高い固有抵抗と合金の良好な
加工性の両立を達成すべく研究開発を行った末に、Crを
共存させることが効果があるとの知見を得、その成果を
特開平11−343544号公報に開示している。すな
わち、これまでは、Fe−Si合金やFe−Si−Al合金におい
て、Crを添加するほど靱性は劣化すると考えられてきた
が、Siが3 mass%以上の含有量であっても、C及びNの
含有量を十分に低減した上で、一定量以上のCrを含有さ
せることにより、むしろ高い靱性が得られることを見出
したものである。かかる技術を基に、発明者らは、更な
る冷延性向上と10kHz 以上の高周波磁気特性のみなら
ず、1 kHz 〜10kHz 程度の周波数域の磁気特性を改善さ
せることを目指して鋭意研究を重ねた結果、C及びNを
それぞれ0.005 mass%以下低減させることで、TiやNb等
のC固定元素を添加することなしに冷延性を確保でき、
しかも、低周波域から高周波域までの磁気特性に優れる
鋼板が得られることを見い出したものである。
【0009】また、一般にCr系のステンレス鋼におい
て、TiやNbは、C及びNを固定し加工性を向上させる目
的で用いられているが、Fe−Cr−Si系合金やFe−Cr−Si
−Al合金においては、C及びNを十分に低減することで
十分に加工性が得られるためにTiやNbが必ずしも必要で
はない。むしろ、TiやNb使用によるC及びNの固定効果
は発揮されないことを解明した。このことは、電磁鋼板
においては、鉄損、特に履歴損を劣化させる成分である
TiやNbを用いなくとも加工性を向上できること、更に
は、Cr含有鋼が有する高い固有抵抗を最大限に利用でき
ること、よって、通常の製造法で製造可能な高固有抵抗
の電磁鋼板として応用可能であることを意味する。した
がって、将来的に要求が高まりつつある1kHz 以上の周
波数域での使用でも鉄損が低い電磁鋼板が得られること
を見出したものである。
【0010】併せて、Si量及びAl量が相対的に低いFe−
Cr−Si系合金及びFe−Cr−Si−Al合金(以下、Fe−Cr−
Si−Al合金も含めて「Fe−Cr−Si系合金」という。)で
あって、固有抵抗が60μΩcm以上となる成分系において
も、C及びNの含有量を十分に低減すれば、同等の固有
抵抗を持つCrを含有しない合金よりも加工性が大幅に向
上することを見いだした。
【0011】この発明は上記知見に立脚するものであ
る。すなわち、この発明は、Siが2.5 〜10mass%及びCr
が1.5 〜20mass%を含有し、残部がFe及び不可避的不純
物からなり、この不可避的不純物中のC及びNをそれぞ
れ0.005 mass%以下に抑制するとともに、Ti及びNbのう
ち少なくとも1種を0.005 mass%以下に抑制してなるこ
とを特徴とする1kHz 以上の周波数域における磁気特性
に優れる無方向性電磁鋼板である。
【0012】また、この発明は、Siが2.5 〜10mass%及
びCrが1.5 〜20mass%を含有し、かつ、Alよりなる群、
Mn及びPから選ばれる1種又は2種よりなる群、Sb及び
Snから選ばれる1種又は2種よりなる群、並びに、Ni、
Cu、Coから選ばれる1種又は2種以上よりなる群の1群
又は2群以上の成分を、Alは5 mass%以下、Mn及びPは
それぞれ1 mass%以下、Sb及びSnはそれぞれ1 mass%以
下、Ni及びCoはそれぞれ5 mass%以下、Cuは1 mass%以
下の範囲で含有し、残部がFe及び不可避的不純物からな
り、この不可避的不純物中のC及びNをそれぞれ0.005
mass%以下に抑制するとともに、Ti及びNbのうち少なく
とも1種を0.005 mass%以下に抑制してなることを特徴
とする1kHz 以上の周波数域における磁気特性に優れる
無方向性電磁鋼板である。
【0013】この発明の無方向性電磁鋼板は、鋼板の固
有抵抗が60μΩ・cm以上、平均結晶粒径が5 〜100 μm
であって、鋼板表面に絶縁被膜を付与してなり、鉄損が
W1/1 0000で12W/kg以下、磁束密度がB50 で1.53T以上で
あることを特徴とする請求項1又は2記載の1kHz 以上
の周波数域における磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
であることが、より好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】この発明の無方向性電磁鋼板に関
し、磁気特性については、CrをSi又はSi及びAlと同時に
含有させることにより、固有抵抗の増大に相乗的な効果
が表れる。その結果、特に高周波域での鉄損を、SiやAl
のみ、ないしは、SiとAlを含有する合金系に比べ格段に
低減することができる。
【0015】また、これまでの高固有抵抗の材料は圧延
性が悪く、通常の圧延法によっては、0.5mm 程度までし
か減厚されていなかった。また、単に厚みを減じてもヒ
ステリシス損失のために、十分な鉄損低減ができないと
されてきた。しかし、発明者らの鋭意研究の結果、この
発明にあるように、成分と純度を制御することにより、
減厚した場合の高周波鉄損特性の効果を促進し得る。
【0016】したがって、この発明の無方向性電磁鋼板
は、1kHz 以上の周波域での磁気特性が優れているた
め、インバーターエアコン用のリアクトルや太陽光発電
等のリアクトル素材として最も適しており、この発明の
鋼板を用いることで、各種特性を改善し、発熱が少な
く、効率のよいリアクトル製品が達成できる。
【0017】以下、この発明を詳細に説明する。まず、
この発明の無方向性電磁鋼板における成分組成範囲の限
定理由について説明する。CrはSi及びAlとの相乗効果に
よって鋼の固有抵抗を大幅に向上させて、特に1kHz以上
の周波数域での鉄損を低減し、更には耐食性を向上させ
る基本的な合金成分であり、しかも、3.5 mass%以上の
Si含有量の場合、又は3 mass%以上のSi含有量かつ0.5
mass%を超えるAl含有量の場合であっても通常の圧延可
能な程度の靱性を得るのに極めて有効であり、その観点
からは2 mass%以上を要する。Si量やAl量が上記の場合
よりも少ないときには、Cr量を更に減じても加工性は確
保できるが、Cr含有による加工性向上効果を発揮させ、
かつ、鋼の固有抵抗を60μΩcm以上とするためには、1.
5 mass%以上のCrが必須である。一方、20mass%を超え
ると靱性向上の効果が飽和するとともに、コスト上昇を
招くので、Crの含有量の範囲は、1.5 mass%以上、20ma
ss%以下、好ましくは、2 mass%以上、10mass%以下、
より好ましくは、3 mass%以上、7 mass%以下と規定す
る。
【0018】Siは、単独でも鋼の固有抵抗を上昇させる
が、更に、Crとの相乗効果によって固有抵抗を大幅に上
昇させ、特に1kHz以上の周波数域での鉄損を低減するの
に有効な成分である。Si量が2.5 mass%未満ではCrやAl
を併用しても磁束密度を余り犠牲にせずに60μΩcm以上
の固有抵抗を得るには至らず、このため、良好な高周波
磁気特性は得られない。一方、10mass%を超えると、Cr
を含有させても通常圧延可能なまでの靱性が確保できな
いので、Siの含有量の範囲は、2.5 mass%以上、10mass
%以下、好ましくは、2.5 mass%以上、7 mass%以下、
より好ましくは、3.5 mass%以上、5 mass%以下と規定
する。
【0019】C及びNは、Fe−Cr−Si系合金の靱性を劣
化させるため、できる限り低減することが好ましく、そ
の許容量はこの発明のCr量、Si量及びAl量の場合には、
高靱性を確保するためにC及びNをそれぞれ0.005 mass
%以下に抑える必要がある。好ましくは、それぞれ0.00
3 mass%以下、より好ましくはそれぞれ0.0015mass%以
下がよい。特に圧延性を向上させるためには、Cの低減
が効果的であり、特にC量を0.003 mass%以下とするこ
とで、圧延性が格段に向上する。
【0020】Ti及びNbは、通常のCr含有鋼における加工
性改善成分である反面、磁気特性を劣化させる成分であ
る。この発明における加工性の改善は、Crの添加とC及
びNを低減させることで達成するため、Ti及びNbが有す
る加工性改善作用は必要としない。このため、Ti及びNb
はできる限り低減するのが磁気特性の観点から好まし
い。もっとも、不可避的不純物としてのTi及びNbのう
ち、いずれか一方を低減することにより磁気特性の改善
は可能である。これらのことから、この発明では、Ti及
びNbのうち少なくとも1種を低減することとし、Ti及び
Nbの許容量はそれぞれについて、磁気特性の観点から0.
005 mass%以下に限定する。
【0021】C、N、Ti及びNb以外の不純物量は特に限
定されないが、一般の珪素鋼と同様に、磁気特性及び加
工性を良好に保つためには、以下の範囲に制限すること
が重要である。Sは0.005 mass%以下、好ましくは0.00
2 mass%以下、より好ましくは0.001 mass%以下がよ
い。Oは0.005 mass%以下、好ましくは0.003 mass%以
下、より好ましくは0.0015mass%以下がよい。Vは0.00
5 %以下、好ましくは0.002 mass%以下、より好ましく
は0.0015mass%以下がよい。その他、La、Mg等も極力低
減させることが好ましい。
【0022】この発明の無方向性電磁鋼板は、上述した
Si、Crに加えて、Alよりなる群、Mn及びPから選ばれる
1種又は2種よりなる群、Sb及びSnから選ばれる1種又
は2種よりなる群、並びに、Ni、Cu、Coから選ばれる1
種又は2種以上よりなる群の1群又は2群以上の成分を
含有させることができる。
【0023】Alは、Siと同様にCrとの相乗効果によって
鋼の固有抵抗を大幅に向上させ、高周波域での鉄損を低
減するのに有効な成分であるので、この発明では、必要
に応じてAlを含有させることができる。しかし、Al量が
5 mass%を超えると、コスト上昇を招くうえに、この発
明のようにSiを2.5 mass%以上含有する鋼では、Crを多
量に含有させても通常の圧延が可能なまでの靱性が確保
できないので、Alの含有量は5 mass%以下とする。Alの
下限は特に限定する必要がないが、脱酸や結晶粒成長性
の改善のために0.005 〜0.3 mass%程度を含有させるこ
とがある。更に、Alを積極的に固有抵抗の増大のために
活用するときは、この発明のようにSiが2.5 mass%以上
含有されている鋼ではAlが0.5 mass%未満では固有抵抗
を更に上昇させるに十分な効果が得られない。したがっ
て、好ましくはAlの含有量は0.05mass%以上、5 mass%
以下、より好ましくは0.5 mass%以上、3 mass%以下で
ある。
【0024】Mn及びPは、Fe−Cr−Si系合金に更に添加
することにより、一層の固有抵抗の上昇を与えることが
知られている。これらの成分の添加により、この発明の
趣旨が損なわれることなく、更なる鉄損の低減が達成で
きる。そこで、この発明では、Mn、Pの中から選ばれる
1 種又は2 種を含有させることができる。とはいえ、こ
れらの成分を大量に添加するとコスト上昇を招くので、
それぞれの添加量は1mass%を上限とする。より好まし
くは0.5 mass%以下がよい。
【0025】Sb及びSnは、いずれも集合組織を改善する
作用を有し、それにより製品の磁気特性向上に寄与す
る。したがって、この発明では、Sb及びSnから選ばれる
1 種又は2 種を、それぞれ1 mass%以下の範囲で添加さ
せることができる。Sb量やSn量が1 mass%を超えると効
果は薄れ、また、コストの上昇を招くことからSb量、Sn
量の上限は1 mass%とする。なお、Sb量、Sn量の下限は
特に限定するものではないが、前述したSb、Snの添加効
果を十分に発揮させるためには、それぞれ、0.001 mass
%以上を添加することが好ましい。
【0026】Ni及びCuは、いずれも磁気特性を改善する
作用を有する。また、延性−脆性遷移温度を下げて、加
工性を向上させる。更に、結晶粒径を細粒化する作用を
有するため、渦電流損を低減させる効果がある。また、
いずれも製品の耐食性、耐候性を改善する作用を有す
る。したがって、この発明では、所望の諸特性に応じ
て、NiやCuを含有させることができる。Ni量が5 mass%
を超える場合やCu量が1 mass%を超える場合は、いずれ
も、前述の効果が飽和するばかりか、飽和磁束密度を著
しく低下させるため、また、延性を劣化させ、更には、
コスト上昇を招くことから、Ni、Cuの含有量の上限はそ
れぞれ5 mass%、1 mass%とする。なお、Ni量、Cu量の
下限は特に限定するものではないが、前述したNi、Cuの
添加効果を十分に発揮させるためには、それぞれ、0.00
5 mass%以上を含有させることが好ましい。
【0027】Coは、磁束密度を高め、製品の磁気特性を
向上させる作用を有する。したがって、この発明では、
Coを含有させることができる。Co量が5 mass%を超える
場合、コスト上昇を招くことから、Co含有量の上限は5
mass%とする。なお、Co量の下限は特に限定するもので
はないが、前述した添加効果を十分に発揮させるために
は、0.005 mass%以上を含有させることが好ましい。
【0028】この発明の成分の鋼板においては、板厚を
減じれば高周波鉄損特性改善の効果を促進するが、この
減厚の効果を格段に得るためには、板厚を0.4 mm以下と
することが有効である。ただし、0.01mmより薄くするに
は、製造コストが高くなるばかりか、その鋼板の取扱い
に格段の注意が必要で、製品製造のコストも高くなるた
めに、板厚の範囲を0.01mm以上、0.4 mm以下とするのが
好ましい。更に好ましくは、0.02〜0.25mmである。
【0029】優れた高周波鉄損を達成するには固有抵抗
を高めることが必要であり、この発明の鋼では、少なく
とも60μΩcm以上が望ましい。60μΩcmより固有抵抗が
低いと、板厚をいかに薄くしても所望の高周波鉄損は得
られないため、この発明では固有抵抗は60μΩcm以上と
するのが好ましい。
【0030】この発明の鋼板は、平均結晶粒径が5 μm
以上、100 μm 以下であることが好ましい。高周波域の
鉄損は渦電流損が大きな割合をもち、この渦電流損は鋼
板の平均結晶粒径を小さくすることで低減できる。すな
わち、鋼板の平均結晶粒径を100 μm 以下にすることに
より、高周波域での鉄損特性を一層向上させることが可
能となる。平均結晶粒径が100 μm を超えると高周波域
の鉄損が特に劣化し、所望の鉄損特性が得られなくなる
ために、また、平均結晶粒径が5 μm 未満では、通常の
製造では制御が困難で整粒の組織が得られず、磁気特性
が劣化するために、この発明では平均結晶粒径の上限を
100 μm 以下、下限を5 μm 以上とするのが望ましい。
【0031】この発明は主に1kHz 以上の周波数用途に
使用される鋼板を提供することを目的としており、この
ため鉄損は商用周波数での特性のみならず、高周波域、
特に10kHz 程度の周波数での磁気特性に優れることが必
要である。この周波数域での鉄損が大きいと、機器の発
熱が大きくなり使用ができなくなるために、できるだけ
鉄損を低減する必要がある。また、磁束密度が高けれ
ば、効率の改善、機器の小型化が可能となるために、で
きるだけ磁束密度が高いほうがよい。したがって、この
発明では鉄損値及び磁束密度を、W1/10000≦12W/kg、B
50 ≧1.53 Tとするのが好ましい。特に、例えば板厚が
0.1 mmの鋼板については、W1/10000 は10W/kg以下が好
ましく、より好ましくは8W/kg 以下である。
【0032】この発明の無方向性電磁鋼板は、以下の方
法により製造することができる。前述した成分組成範囲
に調整された合金素材は、連続鋳造又は造塊−分塊圧延
によりスラブとすることができる。また、薄スラブ連続
鋳造法を用いて、厚みの薄いスラブを製造することもで
きる。得られたスラブは、加熱保持後に熱間圧延に供す
るか、また、CC-DR 法やHCR 法のように、連続鋳造時の
顕熱を保持したまま加熱することなく熱間圧延に供する
ことができる。
【0033】その後の熱間圧延は、極力薄く圧延するこ
とによって、次工程の冷間圧延ないしは温間圧延におけ
る加工性、すなわち圧延性を良好にすることができる。
これは、この発明のFe−Cr−Si系合金組成の場合には、
熱延板の表面部分の方が中心部分よりも靱性が高く、加
工性が優れているとの新知見に基づくものである。その
ための熱延板の厚みは3 mm以下、好ましくは2.5 mm以
下、より好ましくは1.5mm以下とする。
【0034】熱間圧延後は、必要に応じて熱延板焼鈍を
行う。熱延板焼鈍を行うことにより、圧延された素材の
集合組織が改善され、鉄損特性の向上に有利に作用す
る。この熱延板焼鈍条件は、例えば、温度700 〜1100
℃、時間1 秒〜2 時間で行う。焼鈍温度が高い場合や焼
鈍時間が長い場合は、焼鈍効果が飽和して鉄損特性の一
層の改善が見込めないこと及びコスト上昇の要因となる
こと、焼鈍温度が低い場合や焼鈍時間が短い場合は鉄損
特性の向上効果が小さいことから、これらの作用効果を
考慮して上記の範囲内で定めれば良い。
【0035】熱間圧延後又は必要に応じて行った熱延板
焼鈍後は、酸洗もしくはショットブラスト等により熱延
スケールを除去した後に、冷間圧延や温間圧延を行う。
素材成分と純度の調整により熱延板の靱性が改善されて
いるため、更に温間や冷間で圧延して0.4 mm以下の厚み
の薄板とすることができる。一般に、板厚を減じると、
とりわけ高周波において渦電流損が有利に抑制され、低
鉄損になることは周知である。しかし、従来は高固有抵
抗の材料は圧延性が悪く、通常の圧延法によっては0.5
mm程度までしか減厚されていなかった。また、単に厚み
を減じてもヒステリシス損失のために、十分な鉄損低減
ができないとされてきた。この点、この発明では、素材
成分と純度を調整することにより、減厚した場合の高周
波鉄損特性の効果を促進し得る。かかる減厚の効果を得
るためには、板厚を0.4 mm以下とすることが有効であ
る。もっとも、0.01mmよりも薄くするには、コスト上、
工業的に無理があるので、板厚の範囲を0.01〜0.4 mm、
好ましくは0.02〜0.25mmと規定する。
【0036】以上のような冷間圧延や温間圧延は、1回
の圧延又は途中焼鈍を含む2回以上の圧延により行う。
途中焼鈍を行うことは、圧延材の集合組織の改善を通じ
て磁気特性の向上に有利に作用する。また、この冷間圧
延や温間圧延の作業性を改善することができる。途中焼
鈍の条件は、例えば、温度600 〜1100℃で時間1 秒〜10
分の範囲とする。焼鈍温度が低い場合や焼鈍時間が短い
場合は鉄損特性の向上効果が小さいこと、焼鈍温度が高
い場合や焼鈍時間が長い場合は、焼鈍効果が飽和して鉄
損特性の一層の改善が見込めないこと及びコスト上昇の
要因となることから、これらの作用効果を考慮して上記
の範囲内で定めれば良い。ここで、冷間圧延及び温間圧
延は、コストの面からできるだけ低い温度とすることが
好ましい。温間圧延を行う場合は、300 ℃程度以下の温
度とすることが望ましい。
【0037】冷間圧延、温間圧延の後は、仕上げ焼鈍を
施し、更に絶縁被膜を被成して製品とする。これらの仕
上げ焼鈍の条件、絶縁被膜の被成条件に関しては、通常
の電磁鋼板や電磁ステンレス鋼板で常用される方法と同
様にすればよい。さらに素材成分を調整すること及び/
又は仕上げ焼鈍の温度条件を制御することにより、平均
結晶粒径を100 μm 以下にすることができる。
【0038】
【実施例】表1に示す成分組成を含み、残部がFe及び不
可避的不純物からなる鋼を溶製し、連続鋳造によりスラ
ブとし、鋳造完了後は保温措置をとり12時間以内に熱延
前の加熱のため、加熱炉へ挿入し、熱間圧延により板厚
2.0 mmの熱延板とした。これら熱延板のスケールを除去
した後に、板厚0.35mmまで冷間圧延を行い、温度800 ℃
で10秒間の中間焼鈍を水素・窒素混合雰囲気中で行っ
た。これら鋼板を更に冷間圧延によって厚さ0.1mm と
し、820 ℃で10秒間の最終焼鈍を水素・窒素混合雰囲気
中で行い、絶縁被膜を付与した。得られた製品をエプス
タイン試料に切り出し、JIS C 2550(1975年)に準じて
磁性を測定結果を表2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】表2に示す結果から、Crがこの発明の範囲
外のNo.15 及び16並びにC、Nがこの発明の範囲外であ
るNo.10 及び13は、冷延過程で鋼板破断が生じ、製板不
可能であった。それに対し、この発明の範囲の成分のも
のは、冷延性も良好で且つ、1 kHz 及び10kHz という周
波数域において良好な磁気特性であった。また、No.1は
Siがこの発明の範囲外で、固有抵抗が60μΩcmに満たな
い比較例であり、冷延性は良好であるが、1kHz 以上の
周波数域での磁気特性が悪いものである。また、No.14
はTi若しくはNbがこの発明の範囲を超えるものであり、
高周波鉄損は良好であるが、低周波側(1kHz)の鉄損
が、Ti、Nbを低減させた実施例と比較し劣化しているこ
とがわかる。
【0042】
【発明の効果】以上のごとく、この発明の無方向性電磁
鋼板は、優れた高周波鉄損と磁束密度を併せ持ち、高周
波用として特に好適であり、その工業的価値は大であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 明男 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 5E041 AA11 AA19 BC01 CA02 NN01 NN06 NN13 NN15

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Siが2.5 〜10mass%及びCrが1.5 〜20mass
    %を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、こ
    の不可避的不純物中のC及びNをそれぞれ0.005 mass%
    以下に抑制するとともに、Ti及びNbのうち少なくとも1
    種を0.005 mass%以下に抑制してなることを特徴とする
    1kHz 以上の周波域における磁気特性に優れる無方向性
    電磁鋼板。
  2. 【請求項2】Siが2.5 〜10mass%及びCrが1.5 〜20mass
    %を含有し、かつ、Alよりなる群、Mn及びPから選ばれ
    る1種又は2種よりなる群、Sb及びSnから選ばれる1種
    又は2種よりなる群、並びに、Ni、Cu、Coから選ばれる
    1種又は2種以上よりなる群の1群又は2群以上の成分
    を、Alは5 mass%以下、Mn及びPはそれぞれ1 mass%以
    下、Sb及びSnはそれぞれ1 mass%以下、Ni及びCoはそれ
    ぞれ5 mass%以下、Cuは1 mass%以下の範囲で含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなり、この不可避的不
    純物中のC及びNをそれぞれ0.005 mass%以下に抑制す
    るとともに、Ti及びNbのうち少なくとも1種を0.005 ma
    ss%以下に抑制してなることを特徴とする1kHz 以上の
    周波域における磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板。
  3. 【請求項3】 鋼板の固有抵抗が60μΩ・cm以上、平均
    結晶粒径が5 〜100 μmであって、鋼板表面に絶縁被膜
    を付与してなり、鉄損がW1/10000で12W/kg以下、磁束密
    度がB50 で1.53T以上であることを特徴とする請求項1
    又は2記載の1kHz 以上の周波域における磁気特性に優
    れる無方向性電磁鋼板。
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