JP4551110B2 - 無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、この方法では、反面、磁束密度の低下は避け得ないという問題点があった。また、単にSiあるいはAl等の含有量を高めるのみではなく、C、S、N等の高純度鋼化や、特許文献1に記載されているようなCa添加等の化学的処置による不純物の無害化等による鉄損低減もなされてきた。
さらに、特許文献2に記載されているような仕上焼鈍条件の工夫等の製造プロセス上の処置もなされてきた。
しかし、上記のような処置により無方向性電磁鋼板の磁気特性の向上はなされても、回転機等の鉄心として電気機器に使用される場合には、通常、JIS C 2552で規定されている鋼板圧延方向およびその鋼板面内直角方向の平均的磁気特性のみでなく、鋼板の板面内全周磁気特性、すなわち、板面内全体での平均的な磁気特性を考慮する必要がある。
この目的のためには、無方向性電磁鋼板において{100}<0vw>集合組織を発達させ、圧延方向からその板面内垂直方向に至るまでのすべての方向について均一に優れた磁気特性を有することが望ましい。
無方向性電磁鋼板においてこのような{100}<0vw>集合組織を発達させるためには、特許文献5に記載されているように冷間圧延の圧下率を85%以上、望ましくは90%以上の強圧下とし、かつ、仕上焼鈍を700〜1200℃で2分〜1時間の長時間とする方法があるが、このような強圧下冷間圧延および長時間仕上焼鈍を施すことは、生産性の低下や製造コストの上昇、さらには設備制約上の問題が生じ、実用化には至っていない。
また、特許文献6や特許文献7に記載されているように、移動更新する冷却体表面によって溶鋼を凝固せしめて薄帯となす急冷凝固法等の特殊な製造方法も提案されているが、やはり設備制約上の問題や安定生産性の問題等が生じ実用化には至っていない。
特に、無方向性電磁鋼板が鉄心素材として打ち抜き加工を受ける場合には、打ち抜き端面やカシメ部等の形状が鉄心性能に影響をおよぼすばかりではなく、鉄心としての積層性、成形性を左右する。
すなわち、鉄心として所定の形状に成形されなければ、無方向性電磁鋼板としての素材磁気特性を発揮することはできない。
その結果、α−γ変態を有する成分系とし、鋼を高純度化することにより、Ac3変態点温度以上で熱延板焼鈍を施し、かつ、冷間圧延の圧下率を適切に選べば、短時間連続仕上焼鈍で鋼板の板面内全周磁気特性を顕著に向上させることができるとともに、仕上焼鈍後の降伏比を0.65以上とすることにより、磁気特性を損なうことなく打ち抜き加工性を向上させることが可能であることを究明した。本発明は上記の知見に基づきなされたものであり、その要旨は下記のとおりである。
C :0.002%以下、
Si:0.1%以上0.8%未満、
Mn:0.1%以上1.5%以下、
S :0.002%以下、
Al:0.1%以上0.6%以下、
N :0.002%以下、
Ti:0.002%以下、
V :0.003%以下、
Zr:0.003%以下、
Nb:0.003%以下、
As:0.003%以下、
P :0.15%以下
を含有し、残部Feおよび不可避不純物元素よりなる鋼を、熱間圧延後、熱延板焼鈍をAc3 変態点温度以上で施し、圧下率を85.4%以上90%以下とした冷間圧延により最終板厚とした後、仕上焼鈍を700℃以上850℃以下で10秒以上1分以下施すことにより、仕上焼鈍後の降伏比を0.65以上とすることを特徴とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
一方、その含有量が増えると、前記のように磁束密度が低下し、かつ、硬度の上昇を招いて打ち抜き加工性を劣化させ、また、無方向性電磁鋼板の製造工程そのものにおいても、冷延等の作業性の低下、コスト高ともなるので0.8%未満とする。
しかし、その含有量が増えると熱延板焼鈍時の結晶粒成長性が低下し、また、熱延板焼鈍後のAc3変態点温度以下への冷却時に結晶粒微細化が生じるので1.5%以下とする。
一方、その含有量が増えると磁束密度が低下し、また、鋼板の板面内磁気異方性が大きくなり板面内全周磁気特性が劣化する。さらに、降伏比の減少を招いて打ち抜き加工性を劣化させるので0.6%以下とする。
また、無方向性電磁鋼板の磁気特性にとって好ましくない{111}集合組織を発達させる。
さらに、TiNやTiC等の微細析出とも相俟って、熱延板焼鈍後の結晶粒径の粗大化、およびこれに伴う熱延板集合組織のランダム化を阻害するので0.002%以下とする。
ただし、Asが含有されるとMnS等の硫化物の微細析出を促進し、熱間圧延後の再結晶および結晶粒成長を阻害することとなり、熱延板焼鈍後の結晶粒径の粗大化およびこれに伴う熱延板集合組織のランダム化を阻むので0.003%以下とする。
上述の成分以外は、Feおよび不可避不純物元素である。
表1に示した成分の鋼スラブを3.0mm厚に熱間圧延後、表2に示した焼鈍条件で熱延板焼鈍を施し、冷間圧延圧下率を変化させ、750℃で20秒の仕上焼鈍を施した後、角度別(圧延方向、22.5度方向、45度方向、67.5度方向、圧延方向に垂直方向)にエプスタイン試料を採取し、磁気特性(磁束密度:B50)を測定した。その測定結果も併せて表2に示す。
この場合、熱延板焼鈍後の結晶粒径粗大化と集合組織ランダム化が促進されており、冷間圧延の圧下率制御との相乗効果により、仕上焼鈍後の{100}<0vw>系集合組織の発達を促進し、鋼板の板面内全周磁気特性の顕著な向上に寄与しているものと推察される。
さらに、打ち抜いた鋼板の真円度が損なわれ、回転機のシャフトを挿入する際に不具合が生じたりする。これらの不具合を回避するためには、打ち抜き加工時の塑性加工開始から完了までの素過程を調整する指標として降伏比を考慮することが有効である。
上記のNo.5の製造条件において、冷延後の仕上焼鈍温度を変化させることにより、降伏比を変えた場合の打ち抜き加工性と磁気特性(磁束密度:B50)を併せて表3に示す。
打ち抜き加工性は、回転機の鉄心を単純形状化したリング試料(外径φ125mm、内径φ100mm)打ち抜きにより評価した。降伏比を0.65以上とすることにより、良好な打ち抜き加工性が得られることがわかる。
尚、本発明に規定した鋼の不純物元素含有量であれば、熱延板焼鈍条件、すなわちAc3変態点温度以上であれば焼鈍温度と時間を、無方向性電磁鋼板の通常の製造工程範囲内で、特に2分未満の短時間焼鈍条件で適宜選定することにより、熱延板焼鈍後の結晶粒径粗大化および集合組織ランダム化を容易に促進することができる。
これは、降伏比が0.65未満の場合には、無方向性電磁鋼板の打ち抜き加工時に、塑性変形開始後、破断に至るまでの伸びが大きくなり、かつ、機械的性質の異方性の影響も受けやすくなり、打ち抜き加工時の端面ダレや真円度不良をもたらすためである。
さらに、磁気異方性は減少するものの無方向性電磁鋼板の磁気特性にとって好ましくない{111}集合組織が発達しやすく、鋼板の磁束密度が低下する。
また、10秒未満では、結晶粒の整粒性が悪く鋼板の磁束密度の低下や鉄損の増加を招く。一方、1分超では、その効果は飽和し、かつ、生産性の低下や製造コストの上昇をも招く。
併せて、リング試料(外径φ125mm、内径φ100mm)打ち抜きにより評価した打ち抜き加工性も表6に併せて示す。
本発明により、鋼板の板面内全周磁気特性に優れるとともに打ち抜き加工性にも優れた無方向性電磁鋼板の製造が可能であることがわかる。
併せて、リング試料(外径φ125mm、内径φ100mm)打ち抜きにより打ち抜き加工性の評価も行った。
No.21からNo.28のいずれの場合も、仕上焼鈍後の降伏比は0.68以上で、端面ダレもなく良好な打ち抜き加工性を示した。
本発明により、鋼板の板面内全周磁気特性に優れるとともに打ち抜き加工性にも優れた無方向性電磁鋼板の製造が可能であることがわかる。
Claims (1)
- 質量%で、
C :0.002%以下、
Si:0.1%以上0.8%未満、
Mn:0.1%以上1.5%以下、
S :0.002%以下、
Al:0.1%以上0.6%以下、
N :0.002%以下、
Ti:0.002%以下、
V :0.003%以下、
Zr:0.003%以下、
Nb:0.003%以下、
As:0.003%以下、
P :0.15%以下
を含有し、残部Feおよび不可避不純物元素よりなる鋼を、熱間圧延後、熱延板焼鈍をAc3 変態点温度以上で施し、圧下率を85.4%以上90%以下とした冷間圧延により最終板厚とした後、仕上焼鈍を700℃以上850℃以下で10秒以上1分以下施すことにより、仕上焼鈍後の降伏比を0.65以上とすることを特徴とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
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