JP2001025320A - ハタケシメジの人工栽培方法 - Google Patents

ハタケシメジの人工栽培方法

Info

Publication number
JP2001025320A
JP2001025320A JP2000193691A JP2000193691A JP2001025320A JP 2001025320 A JP2001025320 A JP 2001025320A JP 2000193691 A JP2000193691 A JP 2000193691A JP 2000193691 A JP2000193691 A JP 2000193691A JP 2001025320 A JP2001025320 A JP 2001025320A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strain
culture medium
hatakeshimeji
strains
days
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000193691A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3542945B2 (ja
Inventor
義雄 ▲吉▼浜
Yoshio Yoshihama
Katsuhiko Kusakabe
克彦 日下部
Susumu Matsui
侑 松井
Hideo Morita
日出男 森田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takara Shuzo Co Ltd
Original Assignee
Takara Shuzo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takara Shuzo Co Ltd filed Critical Takara Shuzo Co Ltd
Priority to JP2000193691A priority Critical patent/JP3542945B2/ja
Publication of JP2001025320A publication Critical patent/JP2001025320A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3542945B2 publication Critical patent/JP3542945B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 施設において工業的に、高品質かつ安価に、
短期間に効率よく製造することが可能なハタケシメジの
人工栽培方法を提供する。 【解決手段】 ハタケシメジK−3303(FERM
BP−4347)、ハタケシメジK−3304(FER
M BP−4348)、ハタケシメジK−3305(F
ERM BP−4349)、その変異株、又はこれらの
菌株と帯線を形成しない菌株から選択され、かつ培養基
表面に覆土を行わない通常の菌床人工栽培方法で良好な
子実体形成能を有するハタケシメジ新菌株を、培養基表
面に覆土を行わない通常の菌床人工栽培方法で栽培する
ことを特徴とするハタケシメジ菌株の人工栽培方法。前
記寄託された菌株、又はそれと帯線を形成しない菌株を
用いるハタケシメジ菌株の人工栽培方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食用きのことして
有用なハタケシメジ〔学名 リオフィラム デカステス
(Lyophyllum decastes) 〕の人工栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ハタケシメジは、夏から秋にかけて人家
の近くや、畑、林地等に広く発生するきのこで、形はホ
ンシメジに良く似ている。味は非常に良く、肉質はホン
シメジより固くて歯切れの良いきのこであり、好んで食
用とされている。近年、エノキタケ、ヒラタケ、ブナシ
メジ、ナメコ等において、主に鋸屑と米糠を混合した培
養基を用いて栽培を行う菌床人工栽培方法が確立され、
一年を通して四季に関係なく、安定してきのこが収穫で
きるようになっている。ハタケシメジについても食用き
のことして有用なことから、栽培方法が種々検討されて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ハタケ
シメジは腐生性菌のために一般の原木利用の栽培は困難
であるといわれている。福島県林業試験場ではバーク堆
肥を培地素材の主体とし、それに栄養添加剤として米糠
やフスマを加えた培地を用いた袋栽培方法や、培地を野
外に埋め込む自然栽培方法を検討している。バーク堆肥
と米糠を重量比で10:1.5とし、仕込み時含水率で
65%の培地1kgを用いた袋栽培での栽培試験によれ
ば、ハタケシメジ子実体の発生期間は長期間にわたり、
その集中的な発生もなく、発生割合で最も大きな値とな
った期間を接種からの通算日数で見ると、供試菌株間で
差のあるものの、180〜240日と栽培に長時間を要
している。また、栽培中の害菌の発生も多く、本方法に
よる栽培方法では効率が悪いと報告している(福島県林
業試験場研究報告 No.19)。そこで次に、培養培地を
野外に埋め込む自然栽培方法の検討を開始している(福
島県林業試験場研究報告 No.20)。また、特開昭63
−169913号公報においては、鋸屑100に対し、
鶏糞、腐葉土、灰、糠をそれぞれ0.5〜0.6の重量比
で混合した培地を用いたビン栽培によるハタケシメジの
栽培方法が記載されているが、該栽培方法は通常のきの
こビン栽培方法と異なり、菌かき、注水処理後にビン口
を逆にして一週間程度栽培し、あとビン口を上とする元
の状態に戻し、再び栽培する工程を行っており、通常の
きのこビン栽培方法に比べ、操作が煩雑で作業性も悪
い。
【0004】本発明の目的は、上記現状にかんがみ、有
用食用きのこであるハタケシメジを、施設において工業
的に、高品質かつ安価に、短期間に効率よく製造するこ
とが可能なハタケシメジの人工栽培方法を提供すること
にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明の第1の発明は、ハタケシメジ菌株の人工栽培方法
に関し、ハタケシメジK−3303(FERM BP−
4347)、ハタケシメジK−3304(FERM B
P−4348)、ハタケシメジK−3305(FERM
BP−4349)、若しくはこれらの変異株、又はこ
れらの菌株と帯線を形成しない菌株から選択され、かつ
培養基表面に覆土を行わない通常の菌床人工栽培方法で
良好な子実体形成能を有するハタケシメジ新菌株を、培
養基表面に覆土を行わない通常の菌床人工栽培方法で栽
培することを特徴とする。また、本発明の第2の発明
は、ハタケシメジK−3303(FERM BP−43
47)、ハタケシメジK−3304(FERM BP−
4348)、ハタケシメジK−3305(FERM B
P−4349)、又はこれらの菌株と帯線を形成しない
菌株から選択されるハケシメジ菌株を用いることを特徴
とするハタケシメジ菌株の人工栽培方法に関する。
【0006】きのこは一般に、同じ種に属する菌株であ
りながら、採集された場所の違いにより菌糸の生育速度
及び子実体形成能力が著しく異なることが知られてい
る。本発明者らは、通常の菌床人工栽培に適する菌株
が、自然界に必ず存在するはずであるとの考えに立ち、
各地よりハタケシメジの採集を行い鋭意検討した結果、
スイス国内にて採集した菌株等が、容易かつ高収量で良
好な子実体を形成することを見出し、本発明を完成し
た。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明す
る。菌株の検討は、以下のごとく行った。PGY液体培
地(組成:グルコース2.0%、ペプトン0.2%、酵
母エキス0.2%、KH2 PO4 の0.05%及びMg
SO4 ・7H2 Oの0.05%、pH6.0)100mlに
ハタケシメジ各菌株を接種して、25℃で10日間培養
し液体種菌とした。ポリプロピレン製の広口培養ビン
(850ml)に、腐葉土50g、鋸屑50g、米糠10
0gに水350gを加えて良く混合し、湿潤状態にした
ものを圧詰して、中央に直径1cm程度の穴を開け、打栓
後120℃60分間殺菌し、固形培養基を調製した。こ
れに上記の各液体種菌を20mlずつ接種し、まず暗所
で、温度25℃、湿度55%条件下、培養基に見掛け上
菌糸がまわるまで培養し、更に30日間培養を続け熟成
させた。次に、菌かきをして培養基の上部から約1cmほ
どの菌糸層を除いてから、水道水をビン口まで加えて3
時間放置後排水し、照度20ルックス、温度15℃、湿
度90%の条件下で子実体原基が形成されるまで培養を
続けた。原基が形成された培養基は、次に照度500ル
ックス、温度15℃、湿度90%の条件下で成熟子実体
が得られるまで培養を続け、ハタケシメジの各菌株にお
ける子実体収量、総栽培日数、子実体の形状について調
べた。その結果を表1に示す。
【0008】
【表1】
【0009】表1において不可とは総栽培日数180日
を経過しても子実体が形成されない場合をいう。また、
表1における形状とは、◎は子実体の形が優れたもの、
○は子実体の形が良いもの、×は子実体の形が劣るもの
を示す。
【0010】表1で明らかなように、供試した菌株のう
ち、K−3303株、K−3304株、K−3305株
の3株は、総栽培日数約90日と短かく、収量も約14
0g以上と多く、その栽培子実体も、傘色、柄色、形状
等天然採取物と同等であり、特に優れた性状を示した。
なお、表1に示した各菌株について、前述特開昭63−
169913号公報の方法に準じ、菌かき、注水後ビン
口を逆にする工程を加え、栽培試験を行ったが、顕著な
効果は認められず、むしろ減収であった。
【0011】表1で示したハタケシメジ菌株のうち、K
−番号で示した菌株の子実体及び胞子の形態的特徴は、
以下の通りである。
【0012】子実体は群生、傘は径5cm前後、広く凸状
でほぼ円形。表面は灰褐色で、古いものは色が薄くな
る。傘中央部が特にやや粉状のビロード毛で覆われ、縁
部は下方に巻く。肉は白色を帯び、香りは多少粉臭があ
る。ヒダはやや黄色を帯びた白色で、密。柄は長さ5cm
前後、太さ1cm前後で、上下同大あるいは下方がややふ
くらみ、淡灰色で、固く弾力があってしっかり詰まる。
胞子は平滑で球形あるいはほぼ球形。5.5〜7.5
×5〜7μm。
【0013】以上の特徴を今関六也、本郷次雄編著「原
色日本新菌類図鑑 (I)」保育社(昭和62年6月10
日初版発行)の記載と比較すると、これらの菌株はハタ
ケシメジであることが明りょうである。
【0014】これらの供試菌株中、K−3303株は L
yophyllum decastes K−3303と表示し、通商産業
省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP
−4347として、K−3304株は Lyophyllum deca
stes K−3304と表示し、FERM BP−434
8として、K−3305株は Lyophyllum decastesK−
3305と表示し、FERM BP−4349としてそ
れぞれ寄託されている。
【0015】次に、寄託菌株、ハタケシメジK−330
3株、K−3304株、K−3305株の3株の菌学的
諸性質をそれぞれ以下に示す。
【0016】(1)ハタケシメジK−3303株 麦芽エキス寒天培地(20℃)における生育状態 10日目でコロニー径は28mm、白色で密な菌糸、気菌
糸を生じる。15日目でコロニー径は48mm、20日目
でコロニー径は67mmとなり、菌糸は白色で密、直線状
に伸びる。気菌糸が多い。裏面は一様で変色はない。 バレイショ・ブドウ糖寒天培地(20℃)における
生育状態 10日目でコロニー径は28mm、白色で密な菌糸、気菌
糸を多量に生じる。15日目でコロニー径は49mm、2
0日目でコロニー径は64mmとなり、菌糸は白色で密、
マット状に盛り上がる。気菌糸が大変多い。裏面は一様
で変色はない。 オートミール寒天培地(20℃)における生育状態 10日目でコロニー径は34mm、菌糸は薄く放射状に伸
びる。15日目でコロニー径は58mm、20日目でコロ
ニー径は80mmとなり、菌糸は白色で放射状に伸びる。
気菌糸は薄いが20日目では濃くなる。裏面は一様で変
色はない。 フェノールオキシダーゼ検定用培地〔0.1%没食
子酸添加ポテト・グルコース寒天培地〕(20℃)にお
ける生育状態 10日目では生育悪く、コロニー径は9mm、菌糸は白色
で、気菌糸は多い。褐変半径は35mm。20日目でコロ
ニー径は15mm、褐変半径は50mm。菌糸は白色で盛り
上がる。 最適生育温度 PGY寒天培地(PGY液体培地に寒天を加えたもの)
に直径6mmの種菌を接種し、各温度でそれぞれ培養し
て、14日後に各コロー径を測定したところ、最適生育
温度は25℃付近であった。また、5℃ではほとんど生
育せず、30℃では全く生育しなかった。 最適生育pH PGY液体培地40mlを殺菌後、各pHに調整し、直径6
mmの種菌を接種して、25℃、14日間培養した。集菌
後、乾燥して重量を測定したところ、最適pHは6付近で
あった。また、本菌株の生育範囲は、pH4〜pH9の間で
あった。
【0017】(2)ハタケシメジK−3304株 麦芽エキス寒天培地(20℃)における生育状態 10日目でコロニー径は25mm、白色で密な菌糸、気菌
糸を生じる。15日目でコロニー径は44mm、20日目
でコロニー径は65mmとなり、菌糸は白色で密、直線状
に伸びる。気菌糸が多い。裏面は一様で変色はない。 バレイショ・ブドウ糖寒天培地(20℃)における
生育状態 10日目でコロニー径は32mm、白色で密な菌糸、気菌
糸を多量に生じる。15日目でコロニー径は53mm、2
0日目でコロニー径は69mmとなり、菌糸は白色で密、
マット状に盛り上がる。気菌糸が大変多い。裏面は一様
で変色はない。 オートミール寒天培地(20℃)における生育状態 10日目でコロニー径は31mm、菌糸は薄く放射状に伸
びる。15日目でコロニー径は55mm、20日目でコロ
ニー径は76mmとなり、菌糸は白色で放射状に伸びる。
気菌糸は薄いが20日目では濃くなる。裏面は一様で変
色はない。 フェノールオキシダーゼ検定用培地(20℃)にお
ける生育状態 10日目では生育悪く、コロニー径は9mm、菌糸は白色
で、気菌糸は多い。褐変半径は36mm。20日目でコロ
ニー径は18mm、褐変半径は52mm。菌糸は白色で盛り
上がる。 最適生育温度 PGY寒天培地に直径6mmの種菌を接種し、各温度でそ
れぞれ培養して、14日後に各コロー径を測定したとこ
ろ、最適生育温度は25℃付近であった。また、5℃で
はほとんど生育せず、30℃では全く生育しなかった。 最適生育pH PGY液体培地40mlを殺菌後、各pHに調整し、直径6
mmの種菌を接種して、25℃、14日間培養した。集菌
後、乾燥して重量を測定したところ、最適pHは5付近で
あった。また、本菌株の生育範囲は、pH4〜pH9の間で
あった。
【0018】(3)ハタケシメジK−3305株 麦芽エキス寒天培地(20℃)における生育状態 10日目でコロニー径は20mm、白色で密な菌糸、気菌
糸を生じる。15日目でコロニー径は35mm、20日目
でコロニー径は49mmとなり、菌糸は白色で密、直線状
に伸びる。気菌糸が多い。裏面は中央部に放射状のしわ
があり、変色は無し。 バレイショ・ブドウ糖寒天培地(20℃)における
生育状態 10日目でコロニー径は27mm、白色で密な菌糸、気菌
糸を多量に生じる。15日目でコロニー径は42mm、2
0日目でコロニー径は57mmとなり、菌糸は白色で密、
マット状に盛り上がる。気菌糸が大変多い。裏面は中央
部に放射状のしわがあり、変色は無し。 オートミール寒天培地(20℃)における生育状態 10日目でコロニー径は33mm、菌糸は薄く放射状に伸
びる。15日目でコロニー径は53mm、20日目でコロ
ニー径は73mmとなり、菌糸は白色で放射状に伸びる。
気菌糸は20日目でも薄い。裏面は中央部に放射状のし
わがあり、変色は無し。 フェノールオキシダーゼ検定用培地(20℃)にお
ける生育状態 10日目では生育悪く、コロニー径は11mm、菌糸は白
色で、気菌糸は多い。褐変半径は30mm。20日目でコ
ロニー径は14mm、褐変半径は43mm。菌糸は白色で盛
り上がる。 最適生育温度 PGY寒天培地に直径6mmの種菌を接種し、各温度でそ
れぞれ培養して、14日後に各コロニー径を測定したと
ころ、最適生育温度は25℃付近であった。また、5℃
ではほとんど生育せず、30℃では全く生育しなかっ
た。 最適生育pH PGY液体培地40mlを殺菌後、各pHに調整し、直径6
mmの種菌を接種して、25℃、14日間培養した。集菌
後、乾燥して重量を測定したところ、最適pHは5付近で
あった。また、本菌株の生育範囲は、pH4〜pH9の間で
あった。
【0019】更に、ハタケシメジK−3303株、K−
3304株、K−3305株と他のハタケシメジとの異
同について、寒天培地上における対峙培養によって調べ
た。供試したハタケシメジ株は、表1に示した15株す
べてである。供試菌株の二核菌糸を保存スラント(PG
Y寒天斜面培地)より3mm×3mm×3mmのブロックとし
て切り出し、それぞれをPGY寒天平板培地の中央部に
対峙して接種し(2cm間隔)、25℃、20日間培養
後、両コロニー境界部に帯線が生じるか否かを判定し
た。結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】表2に示したように、K−3303株、K
−3304株、K−3305株の3株は、供試菌株すべ
てと帯線を形成したことから、新しい株であることは明
白である。
【0022】本発明のハタケシメジ菌株は、通常の菌床
人工栽培方法で栽培することができる。
【0023】本発明において、通常の菌床人工栽培方法
とは、エノキタケ、ヒラタケ、ブナシメジなどのきのこ
栽培に用いられている方法であって、ビン栽培、袋栽
培、箱栽培等があり、菌かき後にビン口を逆さにする栽
培工程、又は栽培物を覆土する栽培工程は包含しない栽
培方法をいう。ここでは一例としてビン栽培について述
べると、その方法とは通常、培地調製、ビン詰め、殺
菌、接種、培養、菌かき、芽だし、生育、収穫の各工程
からなる。培地調製とは、通常きのこの人工栽培に使用
されている鋸屑と米糠、ふすま、大麦粉砕物などの混合
物に水を加えて湿潤状態にする工程で腐葉土、バーク堆
肥、麦わら堆肥、廃オガ堆肥、コンポストなどを加える
ことが好ましく、水分含量は60〜75%好ましくは6
5%付近が適当である。培地組成はハタケシメジ子実体
形成良好な組成であればよいが、その一例を示せば、鋸
屑、腐葉土、米糠の組合せがある。鋸屑は培地基材とし
て、米糠は栄養源として、腐葉土は腐生性菌の例えば生
長因子として作用する。腐葉土の培地への添加量は重量
比として、1%以上添加されれば良く、好ましくは5%
以上の添加が良い。ビン詰めとは、800〜1000ml
容好ましくは850ml容のポリプロピレン製広口培養ビ
ンに、調製した培地を 450g〜750g好ましくは
550g圧詰し、中央に1cm程度の穴を開け、打栓する
工程をいう。殺菌とは、蒸気により培地中のすべての微
生物を死滅させる工程で、常圧殺菌では98℃、4〜5
時間、高圧殺菌では120℃、30〜90分間行われ
る。接種とは、放冷された培地に種菌を植えつける工程
で、種菌としてはハタケシメジ菌株をPGY液体培地で
25℃、10〜15日間培養したものを用いることがで
き、1ビン当り20mlほど無菌的に植えつける。また、
ここまで説明した工程で得られる液体種菌接種済みの培
養基を、25℃で30〜40日間培養し、培養基全体に
ハタケシメジの菌糸がまん延したものを固体種菌として
用いることができ、1ビン当り15gほど無菌的に植え
つける。培養とは、接種済みの培養基を温度20〜25
℃、湿度40〜70%において菌糸をまん延させ、更に
熟成をさせる工程で、40〜120日間好ましくは80
日間前後行われる。菌かきとは、種菌部分と培養基表面
をかき取り、原基形成を促す工程で、菌かき後は、直ち
にビン口まで水を入れ3〜5時間後排水する。芽だしと
は、子実体原基を形成させる工程で、温度10〜20℃
好ましくは15℃前後、湿度80%以上好ましくは85
〜95%、照度500ルックス以下好ましくは50ルッ
クス以下で10〜20日間培養を続けると、ハタケシメ
ジの原基が形成される。生育とは、子実体原基から成熟
子実体を形成させる工程で温度10〜20℃好ましくは
15℃前後、湿度80%以上好ましくは85〜95%、
照度50ルックス以上好ましくは 200〜500 ルッ
クスで5〜15日間培養を続けると、ハタケシメジの成
熟子実体を得ることができ、収穫を行って栽培の全工程
は終了する。以上ビン栽培方法について説明したが、本
発明はビン栽培に限定されるものではない。
【0024】本発明によれば、施設栽培において、総栽
培日数150日以下で、収量としては、850ml培養ビ
ンの場合100g以上の、形状の良いハタケシメジを集
中的に発生することができる。
【0025】本発明で使用し得るハタケシメジ菌株とし
てはハタケシメジK−3303株、ハタケシメジK−3
304株、ハタケシメジK−3305株等が最適である
が、本発明は、これらの菌株に限定されるものではな
く、上記性質を有する菌株であれば、自然界より分離さ
れた株、交配、変異処理、遺伝子操作などにより創製さ
れた株どれでもすべて用いることができる。
【0026】
【実施例】以下に、本発明によるハタケシメジの菌床人
工栽培方法を、実施例をもって更に具体的に説明する
が、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるもの
ではない。
【0027】実施例1 PGY液体培地(組成:グルコース2.0%、ペプトン
0.2%、酵母エキス0.2%、KH2 PO4 の0.05
%及びMgSO4 ・7H2 Oの0.05%、pH6.0)
100mlにハタケシメジK−3303株(FERM B
P−4347)を接種して、25℃で10日間培養し液
体種菌とした。一方、ポリプロピレン製の広口培養ビン
(850ml)に、腐葉土50g〔(有)コトヒラ製〕、
鋸屑(スギ材)50g、米糠100g、水 350gを
加えて良く混合し湿潤状態にしたものを圧詰して、中央
に直径1cm程度の穴を開け、打栓後120℃60分間高
圧蒸気殺菌を行い、放冷して固形培養基とした。これに
上記の液体種菌約20mlを接種し、まず暗所にて、温度
25℃、湿度55%の条件下、培養基に見掛け上菌糸が
まわるまで35日間培養し、更に30日間培養を続け熟
成させた。次に、菌かきをして培養基の上部から約1cm
ほどの菌糸層を除いてから、水道水をビン口まで加えて
3時間放置後排水し、照度20ルックス、温度15℃、
湿度90%の条件下で10日間培養を続け、子実体原基
を形成させた。原基が形成された培養基は、次に照度5
00ルックス、温度15℃、湿度90%の条件下12日
間培養を続けて、成熟子実体を得た。収穫されたハタケ
シメジは、天然に近く形状に優れ非常に美味であった。
得られた子実体の1ビン当りの重量は147gで、総栽
培日数は、87日間であった。
【0028】実施例2 PGY液体培地100mlにハタケシメジK−3304株
(FERM BP−4348) を接種して、25℃で1
0日間培養し液体種菌とした。一方、ポリプロピレン製
の広口培養ビン(850ml)に、バーク堆肥〔富士見工
業(株)製〕50g、鋸屑(スギ材)50g、米糠10
0g、水350gを加えて良く混合し湿潤状態にしたも
のを圧詰して、中央に直径1cm程度の穴を開け、打栓後
120℃60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷して固形培
養基とした。これに上記の液体種菌約20mlを接種し、
まず暗所にて、温度25℃、湿度55%の条件下、培養
基に見掛け上菌糸がまわるまで35日間培養し、更に3
0日間培養を続け熟成させた。次に、菌かきをして培養
基の上部から約1cmほどの菌糸層を除いてから、水道水
をビン口まで加えて3時間放置後排水し、照度20ルッ
クス、温度15℃、湿度90%の条件下で11日間培養
を続け、子実体原基を形成させた。原基が形成された培
養基は、次に照度500ルックス、温度15℃、湿度9
0%の条件下12日間培養を続けて、成熟子実体を得
た。収穫されたハタケシメジは、天然に近く形状に優れ
非常に美味であった。得られた子実体の1ビン当りの重
量は135gで、総栽培日数は、88日間であった。
【0029】実施例3 PGY液体培地100mlにハタケシメジK−3305株
(FERM BP−4349) を接種して、25℃で1
0日間培養し液体種菌とした。一方、ポリプロピレン製
の広口培養ビン(850ml)に、腐葉土〔(有)コトヒ
ラ製〕50g、鋸屑(ブナ材)50g、米糠100g、
水350gを加えて良く混合し湿潤状態にしたものを圧
詰して、中央に直径1cm程度の穴を開け、打栓後120
℃60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷して固形培養基と
した。これに上記の液体種菌約20mlを接種し、まず暗
所にて、温度25℃、湿度55%の条件下、培養基に見
掛け上菌糸がまわるまで35日間培養し、更に30日間
培養を続け熟成させた。次に、菌かきをして培養基の上
部から約1cmほどの菌糸層を除いてから、水道水をビン
口まで加えて3時間放置後排水し、照度20ルックス、
温度15℃、湿度90%の条件下で12日間培養を続
け、子実体原基を形成させた。原基が形成された培養基
は、次に照度500ルックス、温度15℃、湿度90%
の条件下13日間培養を続けて、成熟子実体を得た。収
穫されたハタケシメジは、天然に近く形状に優れ非常に
美味であった。得られた子実体の1ビン当りの重量は1
50gで、総栽培日数は、90日間であった。
【0030】実施例4 腐葉土50g、鋸屑(スギ材)50g、米糠100gに
水350gを加えて良く混合し湿潤状態にしたものをポ
リプロピレン製の広口培養ビン(850ml)に圧詰し
て、中央に直径1cm程度の穴を開け、打栓後120℃6
0分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷して固形培養基とし
た。これに固形培養基に、実施例1と同様に調製したK
−3303株(FERM BP−4347)の種菌を接
種し、温度25℃、湿度55%の条件下で30日間培養
したところ、種菌用固体培養基が得られた。一方、バー
ク堆肥50g、鋸屑(スギ材)50g、米糠100g、
水350gを用いて実施例1と同様に固形培養基を調製
した。これに上記種菌用固体培養基からの種菌を、無菌
的に接種し、実施例1のごとくハタケシメジの人工栽培
を行ったところ、総栽培日数87日間で、1ビン当り1
45gの形状に優れ非常に美味な子実体が得られた。
【0031】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の栽
培方法によれば、形状に優れ美味なハタケシメジを高収
量かつ短期間に栽培することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松井 侑 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 森田 日出男 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハタケシメジK−3303(FERM
    BP−4347)、ハタケシメジK−3304(FER
    M BP−4348)、ハタケシメジK−3305(F
    ERM BP−4349)、若しくはこれらの変異株、
    又はこれらの菌株と帯線を形成しない菌株から選択さ
    れ、かつ培養基表面に覆土を行わない通常の菌床人工栽
    培方法で良好な子実体形成能を有するハタケシメジ新菌
    株を、培養基表面に覆土を行わない通常の菌床人工栽培
    方法で栽培することを特徴とするハタケシメジ菌株の人
    工栽培方法。
  2. 【請求項2】 培養基表面に覆土を行わない通常の菌床
    人工栽培方法が、ハタケシメジの種菌を固形培養基に接
    種しハタケシメジ菌糸を培養する培養工程、種菌部分と
    培養基表面をかき取る菌かき工程、子実体原基形成の芽
    だし工程、成熟子実体形成の生育工程を包含する人工栽
    培方法である請求項1に記載のハタケシメジ新菌株の人
    工栽培方法。
  3. 【請求項3】 ハタケシメジK−3303(FERM
    BP−4347)、ハタケシメジK−3304(FER
    M BP−4348)、ハタケシメジK−3305(F
    ERM BP−4349)、又はこれらの菌株と帯線を
    形成しない菌株から選択されるハケシメジ菌株を用いる
    ことを特徴とするハタケシメジ菌株の人工栽培方法。
JP2000193691A 1990-03-08 2000-06-28 ハタケシメジの人工栽培方法 Expired - Lifetime JP3542945B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000193691A JP3542945B2 (ja) 1990-03-08 2000-06-28 ハタケシメジの人工栽培方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5504990 1990-03-08
JP2-55049 1990-03-08
JP2000193691A JP3542945B2 (ja) 1990-03-08 2000-06-28 ハタケシメジの人工栽培方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP06526191A Division JP3503954B2 (ja) 1990-03-08 1991-03-07 ハタケシメジ新菌株

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001025320A true JP2001025320A (ja) 2001-01-30
JP3542945B2 JP3542945B2 (ja) 2004-07-14

Family

ID=32827158

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000193691A Expired - Lifetime JP3542945B2 (ja) 1990-03-08 2000-06-28 ハタケシメジの人工栽培方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3542945B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2005040179A1 (ja) * 2003-10-23 2008-02-14 タカラバイオ株式会社 ハタケシメジ子実体由来組成物
CN104322281A (zh) * 2014-10-22 2015-02-04 江苏菇本堂生物科技股份有限公司 一种瓶栽鹿茸菇出菇期培育方法
CN104350954A (zh) * 2014-02-22 2015-02-18 江苏菇本堂生物科技股份有限公司 鹿茸菇栽培方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2005040179A1 (ja) * 2003-10-23 2008-02-14 タカラバイオ株式会社 ハタケシメジ子実体由来組成物
CN104350954A (zh) * 2014-02-22 2015-02-18 江苏菇本堂生物科技股份有限公司 鹿茸菇栽培方法
CN104322281A (zh) * 2014-10-22 2015-02-04 江苏菇本堂生物科技股份有限公司 一种瓶栽鹿茸菇出菇期培育方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3542945B2 (ja) 2004-07-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN103327805B (zh) 香菇菌株gna01
JPS62502865A (ja) モルケラ属菌種の培養法
Mayuzumi et al. III. Cultivation methods of maitake (Grifola frondosa)
US5208159A (en) Antibacterial, anti-nematode and/or plant-cell activating composition, and chitinolytic microorganisms for producing the same
KR100483333B1 (ko) 발효톱밥을 이용한 꽃송이버섯 재배방법
JP2007135565A (ja) コムラサキシメジに属する新菌株と人工栽培法
US5349121A (en) Biologically pure mushroom culture and method for mushroom cultivation
KR100786744B1 (ko) 잿빛만가닥버섯 재배용 배지 및 이를 이용한잿빛만가닥버섯의 재배방법
JP3542945B2 (ja) ハタケシメジの人工栽培方法
CN113040000B (zh) 一种出黄较快的桑黄栽培方法
US5349120A (en) White mushroom
JP3503954B2 (ja) ハタケシメジ新菌株
JPS63273467A (ja) 新菌株の培養及び栽培方法
US5571717A (en) Biologically pure culture of Lyophyllum ulmarium
KR102663030B1 (ko) 곰보버섯 재배용 배지 조성물 및 이를 이용한 곰보버섯의 재배방법
JP2006067929A (ja) エリンギの栽培方法
JP3482410B2 (ja) 新規担子菌ブナハリタケ菌株
KR102333307B1 (ko) 좀나무싸리버섯 인공재배 방법
JP4063707B2 (ja) きのこの人工栽培方法
JP2000300066A (ja) ブナハリタケの栽培方法
KR100309683B1 (ko) 신규 목질진흙버섯 균주 및 이를 이용한 목질진흙버섯의 인공재배방법
JP2008017754A (ja) ホンシメジ新菌株
Teaumroong et al. Using agricultural wastes for Tricholoma crassum (Berk.) Sacc. production
JP3198726B2 (ja) ハタケシメジの室内栽培法
CN115104478A (zh) 一种皇簇菌的大田栽培方法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20031218

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040210

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040324

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040402

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110409

Year of fee payment: 7

EXPY Cancellation because of completion of term